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  Aug. 28, 2018

                                             
第13章  わが身を貴べ
人々は、栄誉を得ては胸を騒がせ、恥辱を負うては胸を騒がせる。栄辱を人生最大の関心事とか得
ること、あたかも自分自身と取り違えているかの観がある。
なぜ栄誉を得ては胸を騒がせ、恥辱を負うては胸を騒がせるのか。栄誉をよしとし、恥辱を悪しと
する一面的な考えにとらわれているからである。だからこれを得ても胸を騒がせ、失っても胸を騒
がせ、不安のおさまるときがない。

なぜ栄辱を自分自身と取り違えるのか。栄辱に関心を抱くのも、自身が存在すればこそである。自
身が存在しなければ、そもそも栄辱がどんな意味を持つであろう。自身あっての栄辱なら、自身を
大切にすることこそ本筋ではないか。
自身を大切にする人は、物事の本末をわきまえた人である。政治に熱心なあまりに、自身を忘れて
しまう人、このような人物にはまだまだ天下の政治はまかせられない。



天下より身を貴ぶ 自身を大切にする、それは利己的にふるまえということではなく、わが身に備
わった「道」を貴ぶことである。天下は、これに比べるなら、二義的なものにすぎない。賢人とし
て知られた許由は、帝亮から天下を診るといわれたのを耳の汚れだとして、頴川(えいせん)に耳
を洗ったという。

【下の句×樹木トレッキング:ておもへば紳も仏なりけり×サカキ】 

榊葉に心をかけて木綿四手(ゆうしで)ておもへば紳も仏なりけり  西行『山家集』

榊葉に木綿四手を掛けて、心をこめて祈願しょう。伊勢の神は 国家の神であるが、見方によって
はその本地は大日如来とも いわれていて、私の信仰する仏と同じなのだから。

※木綿四手は木綿で作った四手。
※伊勢神宮はもともと古代日本の天照大神、実は天照大神は大日如来が権現し、神と仏が一体にな
ったものなのという。神宮の神域は曼荼羅がそのまま展開したものであり、外宮は金剛界を、内宮
は胎蔵界をあらわす神仏習合思想を顕す。西行はたびたび伊勢神宮に参拝し、最初のものは出家後
間もない頃だったされ、山家集でその折の気持を歌ったものという。

 

このように、日本では古くから神事に用いられる植物であり、「榊」という国字もそこから生まれ
る。古来から植物には神が宿り、特に先端がとがった枝先は神が降りるヨリシロとして若松やオガ
タマノキなど様々な常緑植物が用いられたが、近年はもっとも身近な植物で枝先が尖っり、神のヨ
リシロにふさわしいサカキやヒサカキが定着している。家庭の神棚にも捧げられ、月に2度1日と
15日(江戸時代までは旧暦の1日と15日)に取り替える習わしになっている。神棚では榊立を
用いる。田舎などでは庭先に植えている家庭が多い。また、常緑樹でもあることから庭木としても
使われていることがある。

 Cleyera japonica

サカキ(榊、Cleyera japonica)は、モッコク科サカキ属の常緑小高木。神棚や祭壇に供えるなど、
神道の神事にも用いられる植物。学名は、植物学者で出島オランダ商館長を務め、サカキをヨーロ
ッパに紹介したアンドレアス・クレイエルにちなむ。常緑性の小高木。低木を見ることが多いが、
高さ12メートル、胸高直径は30センチメートルになる。若枝は緑だが、幹の樹皮は灰淡褐色に
なる。枝先の芽は裸で、若葉が巻いて鎌状になる。葉は二列生の互生で、厚みのある革質、のっぺ
りとした表面で、鋸歯は全くなく、きれいな楕円形である。裏面はやや色薄く、両面ともに無毛。
6月ごろ側枝の基部の側の葉腋から白い小さな花を咲かせる。花は1~4個が束状に出て、いずれ
も葉の下に出て、下向きに咲く。11月ごろには黒くて小さな液果を付ける。 



【スマートカーペンター事業:小型木材用CNCマシン】
4月21~26日、Human Computer Interactionの世界的な国際会議「CHI2018」で優秀作品賞を受
賞した、この小型木材用数値制御マシン『MatchSticks』はカリフォルニア大学バークレー校のラ
ンドン・ティアンらの研究グループが開発したもので、その特徴は、木材をつなぎ合わせるジョイ
ント部分の複雑な形状でも寸分たがわず加工できるため、木工初心者でも高い精度で作品を完成で
き、木工技術をデジタルネットワークで共有きることにある。



Title :MatchSticks: Woodworking through Improvisational Digital Fabrication



わたし(たち)は、主に天然/加工/改変木質加工材料やの動態的物性を組み込み精密制御した加
工物を様々な大きさに組み立て積層物――日用品、玩具、家具、建材、架台、電化製品、工業製品
の代用/機能硬化品への応用展開業を考えるが、今夜のところでは具体的なものが思いつかないの
で残件扱いに。

● 再エネの主力電源化は世界的な流れ

 Sep. 5, 2018
※ 出典:「再エネの主力電源化は世界的な流れ」、経産省・新エネルギー課の山崎課長に聞く(前半)
   日経 xTECH(クロステック)

● 米国 系統接続蓄電容量前年度68%増

 Sep. 4, 2018

米国のいくつかの州では、ソーラ/蓄電の設置などで急速にエネルギー貯蔵容量が増加。 数時間放
電可能で、より長時間エネルギー貯蔵でき広範囲のバランスが可能となった。スマート・エレクト
リック・パワー・アライアンス(SEPA)の調査によると、米国の電力会社は2017年末までに貯蔵
エネルギー容量が68ギガワット時まで増加。小規模蓄電の増加はわずか31%だが、昨年度は蓄
電池の長寿命化で、大幅増加。数時間の放置が可能な、より長時間、蓄電池の使用で、カリフォル
ニアとハワイのような広域エネルギー貯蔵と、ハワイやフロリダのソーラー/エネルギー貯蔵共同
設備でとのバランス制御が可能になった。

カリフォルニア州の電力会社は、再エネ支援エネルギー貯蔵政策に対応、エネルギー容量が大幅に
増加。同州では、2017年の貯蔵エネルギー容量を75%追加、累積エネルギー容量のほぼ60%を
占めた。SEPAの調査は、カウアイ島ユーティリティ協同組合の最初の太陽光/貯蔵施設の日別プロ
フィール(太陽光発電の微妙な変動に適応する「ディスパッチ可能な」太陽光+ KIUC)をハワイに
送電(下図21)。このシステムは、13MWの太陽光と13MW / 52MWhの蓄電設備を備え、日中は電力を
貯蔵し、午前、夕方、曇りの時間帯に電力送電している。

July 22, 2018

SEPAは、KIUCが年末時点で顧客1人当たり2,036ワット時間貯蔵していたことを計算。サンディエ
ゴガス&エレクトリック(San Diego Gas and Electric) KIUCは、太陽光+貯蔵を増やし続けており、
電力会社は再生可能エネルギー依存を高めている。Florida Power&Light、Arizona Public Service、Pho-
enix 地区のソルトリバープロジェクト、テキサス州のVistra Energyの4つのユーティリティ(既存太
陽光発電所での貯蔵)計画・稼働。SEPAは、KIUCが年末の時点で顧客1人当たり2,036ワットアワー
の蓄電していると推計。


【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅴ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea

第1章 所得配分と貧困の現実――生活の安心は企業でなく国家がまもるべし
国家が国民の生活を守る以前の時代

保険原理の欠陥
企業にとって、あらゆる規制は雇用を削減するように働く。むしろ、企業を生活保障の責務から解
放したほうがよい。企業を使って、人々の安心を確保しようとしたのはドイツの鉄血宰相ビスマル
クだ。ビスマルクが、皇帝ヴィルヘルムー世(1797~1888)の下でドイツ統一を果たした
のは1871年のことだ。当時は、社会主義運動が盛んで、労働者はビスマルクの政府と敵対して
いた。ビスマルクは一方で社会主義者を弾圧したが、同時に、労働者を籠絡するために、災害保険・
健康保険・老齢年金などの社会保障制度を整備した。それはピスマルクなき後も続いた。それが戦
前、内務省、厚生省によって取り込まれていったのが日本の社会保険制度だ。

ビスマルクの目的は、労働者を箭絡することで、すべての労働者がドイツ帝国の体制に満足するこ
とを望んでなどいなかった。もちろん、すべての労働者が満足することは望ましい。しかし、それ
にはコストがかかる。多くの支持者がいれば少数の反対派は弾圧すればよい。多くの反対派を弾圧
するのはコストもかかる。したがって、多くの労働者が満足すればよいわけで、すべての労働者を
保護しようなどとは考えていなかった。だから、社会保険から漏れる人がいても何の問題もなかっ
たのだ。企業にいる人々は組織され、団結し、政治的な力も強い。

 飴と鞭

企業から漏れた人々は孤立し、無力で、帝国政府に敵対する力などないとビスマルクは見切ってい
た。何しろ、ビスマルクは、平均寿命が六十歳のときに、六十歳からの年金制度を作って、これで
ドイツ国民は安心だと説いた政治的天才だ。
しかし、今日の福祉国家に、ビスマルクのようなことはできない。国家は、年金保険料を払わなか
った、あるいは、払うことができなかった高齢者が飢えて死ぬのを放置することはできない。親が
医療保険を支払わなかったからといって、子どもに治療を受けさせないなどということもできない。
国家は、本当の意昧での国民皆保険を保障しなければならない。それは、保険制度ではなくて、税
で賄う保障になるしかない。

当時、党勢を拡大しつつあったドイツ社会民主党(SPD)は、社会主義の力を弱めようというビ
スマルクの意図を認識していたが、それに反対することはできなかった。社会民主党は、結局、社
会保険を中道左派に欠かせない原理として採用するようになったという。 イギリスの社会保障制
度も保険主義によって支えられている。イギリスでは、社会保険は、一部には、すでにある制度を
継続するという理由から、また、国庫の枯渇を回避するとの理由から導入されたという。そもそも、
福祉国家建設の設計図である『社会保険および関連サービス』(通称『ベヴァリッジ報告』194
2年)や『自由社会における完全雇用』(1944年)が発表されたときには、すでに保険原理が
定着していた。それは、「人々は年金や給付への権利をただ与えられたとは思っていない。彼ら彼
女らは保険料を支払うことによって獲得したいと思っている」からだろう(この二つの段落は、ト
ニー・フィッツパトリック『自由と保障-ベーシック・インカム論争』126頁~127頁、武川
正吾・菊地英明訳、勁草書房、2005年、による)。



しかし、その保険は、実際には勘定があっていない。より少ない年金保険料を集めて、より多くの
年金を支払う制度になっている。保険料は現在の高齢者に支払ってしまい、将来の高齢者はさらに
将来の若者に保険料を払ってもらう仕組みだ。したがって、日本のように将来の若者が減少してい
く社会では、将来の若者一人当たりの保険料がとめどもなく上昇していき、その負担が不可能にな
れば、破綻するしかない仕組みだ。これは、ビスマルクも気が付かなかった保険主義の欠陥だ。

国民年金の保険料を払わなくても、払わない人には年金を払わなくてよいのだから、国民年金が崩
壊することはないという議論がある。形式的には正しいが、福祉国家の実体としてはまったくの誤
りである。生活できない老人には生活保護費を支給することになるのだから、国民年金会計が崩壊
しなくとも生活保護会計は破綻する。

かつては、政府が個人と直接対応することが実務的に難しいという問題があったかもしれない。し
かし、今日、政府が個人の名前と住所と年齢を把握することに何の問題もない。2007年に明ら
かになった「消えた年金」問題は、コンピュータの能力が十分になってもそうしていなかったとい
う社会保険庁(当時)の組織的な失態で、政府の能力の限界とは関係がない。

雇用重視の財政金融政策の重要性
なお、ウィリアム・ベヴァリッジ(1879~1963)の報告書名の「完全雇用」にもあるとお
り、彼は、ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)やその周辺の経済学者と協力し、
雇用の維持拡大が重要と認識していた。これは現在の日本の福祉専門家にはない優れた視点である。
仕事がなければ、年金保険料が集まらず、失業手当も増大して年金会計が厳しくなるからだ。

この視点を現在の日本の状況に適用すれば、まず財政金融政策によって雇用状況を改善しておくこ
とが重要だということである。2012年12月以降、アベノミクスの第一の矢、大胆な金融緩和
(リフレ政策)で雇用情勢が好転している。好転しているのは非正規雇用だけだという批判はある
が、ともかく雇用は伸びている。ついには人手不足で大変だという議論も現れてきた。このままで
は人手が足りないので成長が止まってしまう、深夜営業ができなくて大都市間の国際競争に勝てな
い、福島原発事故収束、震災復興、東京オリンピックのための工事もできないなどという議論があ
る。

もっとも、人手不足は急に言われ出したことで、賃金高騰の程度もまだまだわずかである。しかし、
人手不足になって賃金がわずかでも高くなったのは、今まで不本意ながら、他に働くところがなく、
安い賃金で働いていた人が、より高い賃金を提示してくれる企業が現れたので、そこに移ったから
だ。より高い賃金を提示できる企業は生産性の高い企業、低い賃金しか出せない企業は生産性の低
い企業である。労働者が、生産性の低い企業から生産性の高い企業に移れば、経済全体の平均の生
産性は上昇する。

また、賃金が上がるので、今まで働いていなかった人々も働き出す。すなわち、より多くの人が働
くことでGDPが増大する。さらに、一般に、人手不足は労働条件の悪いところで起きている。そ
この賃金が上がるのは、今まで賃金の低かった人たちの賃金が上がるということである。これは所
得分配を平等にする。

すなわち、生産性が上がるか、働く人が増えて生産物が増えるか、所得分配がより平等になるか、
いずれか、あるいはすべてが同時に起きている。いずれにしろ、よいことである。
人手不足のおかげて、これまで安い人件費で猛烈に人を使っていた、いわゆる「ブラック企業」も
考え直さざるをえない状況になっている。ブラック企業とは、賃金が安く、とてつもなく働かされ、
ご褒美があるかもしれないと思わせるが、実はないという会社である。

すると、なぜそこで働いてしまうのかという疑問が生じる。理由は、長い不況で、最低賃金に近い
仕事が増え、そこに滞留することを人々が恐れるようになったからだ。若いうちに正社員にならな
ければ、いつ仕事を失うかわからず、一生生活が不安だと、多くの人々が思っている。ブラック企
業は、正社員で採用するということで、不安な若者を取り込むことができる。

正社員で雇っても、自発的退職に追い込むノウハウを持っているので、解雇の容易な非正規を雇う
必要もない。社会保険料は、労働時間にかかわらず一律だから、長時間労働させれば時間単価を切
り詰めることができる。時間当たりにすれば最低賃金なのだが、若者は、それでもここで働いたほ
うがマシと思わされてしまう。

リフレ政策で景気をよくすることが雇用環境を改善するために効果的だというのが、2012年1
2月以降の経験からわかったことである。1990年の初めまで、日本の失業率は2%台たった。
それが上昇することによってブラック企業が現れてきた。安倍音三総理が大胆な金融緩和を唱え、
それを実現に移してから、失業率は低下した。失業率がさらに低下していく過程で、ブラック企業
は人を取ることができなくなっていく。

一方、アベノミクスの第二の矢と位置づけられる財政政策はあまりうまくいっていない。財政策で
雇用を改善するとは、政府が公共事業を発注して建設会社に人を雇ってもらうことである。財政政
策には、減税によって税引き後の所得を高め、消費支出を増やして結果として雇用を増やすという
方法もあるのだが、日本では公共事業が一般に用いられてきた。ところが、それがうまくいってい
ない。日本全体で建設工事をする能力には限りがあり、東日本大震災からの復興、福島原発事故の
処理、東京オリンピックの準備という、必ずしなければならない建設工事があるなかで公共事業を
増やせば、民間の建設工事ができなくなってしまう。建設単価が上がって、実質の工事量が減って
しまうのである。実際、2014年になってからの実質公共投資は伸びていない。

政府支出で雇用をつくるなら、できる限り特定の支出に偏らないほうが望ましい。特定の支出に傾
けば、供給のボトルネックが生まれて価格が上昇し、雇用拡大効果を阻害する。消費税増税で景気
が悪化しているが、増税で景気が悪化するなら、減税で景気が好転するのも道理である。雇用拡大
には、減税も考えるべきである。減税しても、人々が何に使うかわからないのだから、減税は、特
定の支出に偏らない財政面からの雇用拡大政策である。

財政赤字が問題だというなら、金融緩和だけして、財政政策を使わなければよかっただけだ。金融
緩和で雇用が増えれば、必ず税収が増加し、その分だけは財政赤字が縮小するからだ(雇用重視の
金融政策について詳しくは、原田奉『日本を枚ったリフレ派経済学』日経プレミアシリーズ、20
14年、を参照されたい)。



企業を生活保障から解放しよう
個人を老後や疾病や失業から保護するのは、企業ではなくて政府の直接の仕事とすべきである。2
016年から国民一人一人に番号を割り当てるマイナンバー制度が導入されるが、2002年に運
用が開始された住民票ナンバー、1997年に導入された基礎年金番号についてプライバシー侵害
との批判があったように、マイナンバーにも同様の批判がある。だが、政府が個人の名前と住所と
年齢を知ることがプライバシーの侵害だというなら、そもそも福祉国家は成り立たない。個人を保
護するためであるから、政府がその個人の名前と住所を把握することに異議はないだろう。

年金、医療保険、失業保険の維持には費用がかかる。その費用は、個々人から保険料として取り立
てるのではなくて、税を充てる。ただし、悦による年金は基礎年金分だけで、老後も豊かな暮らし
を楽しみたい人は、自ら貯蓄するか、基礎年金以外の年金に加入する。これは、現在二階建て部分
と言われている厚生年金や三階建て部分と言われている企業年金のことである。二階建て以上の部
分については、これまでと同じで、新たに費用が発生するわけではない。ただし、これらの年金は、
完全に年金数理的に公正な年金、加入年によって損得の生じない積み立て型の年金にするべきであ
る。基礎年金、医療保険、失業保険には、これまで入っていない人が入るという意味では、新たな
費用が発生する。しかし、現実問題として、政府は、年金や保険に入っていない人が路頭に迷うの
を放置できないのだから、実質的に新たな負担を作るわけではない。

負担について見れば、所得の多い人ほど負担することになる。年金保険料は月62万円の給与、年
額で150万円のボーナスという上限があるので、年収で894万円(=62×12か月+150
万円)以上の所得では増えずに定額となる(厚生労働省社会保険審議会年金部会では、この上限額
を引き上げようという議論がたびたびなされている)。一方、税は基本的には所得の高い人ほど負
担する額が大きくなるわけだから、税による負担は、これまでよりも累進的になる。税による安心
の制度の利点は、そこから漏れる人がいなくなることだ。悦によってこそ本当の国民皆保険制度が
実現できる。

これに対する反論は、これまで保険料を納めてきた人と納めていなかった人との不公平があるとい
うものだ。反論は正しいが、医療保険、雇用保険は、基本的には掛け捨ての保険であるから、1~
2年の移行期間を設ければ問題はない。問題は年金だ。ただし、基礎年金の部分だけを税で賄うわ
けだから、それほど大きな問題ではない。移行期間は20年を要するが、国民すべてを保障するた
めに必要なことなのだから早くしたほうがよい。

日本の特徴はワーキングツアーが多いこと
何よりも問題なのは、現在の日本の政策が、現実に貧困を減らしていないことである。
貧困の理由は、仕窄のないこと、失業または疾病などにより働けないこと、働いても給与の低いこ
とである。日本の貧困率は、すでに広く指摘されているように先進国のなかでアメリカについで高
い。この指摘は、OECDのレボート(Economic Survery of jgan 2006)によるものである。これに
よれば、日本は相対的貧困率で見ると先進14か国中2番目に不平等だというのである。相対的貧
困率とは、所得が高い人から低い人を並べてちょうど真ん中にある人の所得(中位所得)の半分以
下の所得しかない人の比率である。相対的貧困率は、貧しい人が多いか少ないかの指標である。こ
れまでの日本での議論では、平等社会だった日本が不平等になっているという時系列での変化を問
題にしていたのだが、このレポートは、日本が国際的に見ても不平等であるというのだ。

OECDのレポートによると、図1‐3の上図に見るように、日本はこの貧困率が税引き・社会保
障給付後の可処分所得で、2000年で、図中の14か国中アメリカに次いで二番目に高い。下図
には1990年代央のデータもあるが、これで見ても、日本はアメリカ、イタリアに次いで三番目
に相対的貧困率が高い。日本の格差の本質は、とてつもなく豊かな人が多いのではなくて、貧しい
人が多いということになる。

相対的貧困率とは、真ん中の所得の人に比べて所得の低い人がたくさんいるということである。こ
れにも、日本は平等社会であると考えている人からは反論がある。反論は、年功賃金の傾向のある
国では不平等になるというものだ。確かに、若いときに所得が低いが年齢を重ねるとともに所得が
上がる国では、一生涯を通じての不平等は少なくても、ある一時点の所得分布を見れば不平等度は
高くなる。しかし、この反論は1990年ごろまでは説得力があったかもしれないが、現在では説
得力がない。一九九〇年代になって正社員になれない若者が増大し、その上うな若者が将来、年功
に従って高い賃金を得られるとは考えられないからだ。相対的貧困率が高い理由について説得力が
あるのは、OECDレポートが指摘している、個人への所得再分配が少ないことだろう。

図1‐3に見る上うに、市場所得(悦・社会保険料控除前かつ社会保障給付前の所得)での相対的
貧困率では、日本は2000年(上図)で、一四か国中六番目で、北欧、オランダ、カナダに次い
で平等な国である。1990年代史(下図)では、一四か国中一番目で、もっとも平等な国である。
しかし、最終的な可処分所得で不平等になるのは、児童手当、失業給付、生活保護などの支給額
が少ないからである。例えば、前項で述べた上うに、日本の生活保護制度は、支給額は高いが限ら
れた人にしか配らないという奇妙な制度となっている。また、失業給付制度も、職を失うことの少
ない正社員には厚いが、職を失うことの多い非正規社員はその制度に入っていないという、これも
奇妙な制度になっている。この上うな制度の下では、可処分所得で見た相対的貧困率が高くなるの
は当然である。

これまでの日本の社会安定機能は、組織を通じて生活の安定を図るという方法だった。公共事業を
増大するのは、建設会社にお金を渡して人々を雇ってもらうという方法だった。雇われた人々が、
社会にとって必要なインフラストラクチャー(インフラ)を建設しているのなら一石二鳥でよいこ
とに違いない。しかし、それが無駄な公共事業だったら、高いコストに見合わない。日本の制度も、
西欧諸国のように、個人に直接分配する社会安定制度に置き換える必要があるのではないか。

一方、日本の失業率は、2008年9月のリーマンショック後の不況、世界金融危機の不況で上昇
していたときでも、他の先進国が10%以上になったことに比べれば、五%あまりと低かった(2
012年6月以降、アベノミクスの効果によりほぼ三%台となっている)。ということは、日本人
は働いているが貧しい人、つまりワーキングブアーが多いことになる。ワーキングブアーは先進資
本主義国にとって、あってはならないことだった。なぜなら、働きたい人には仕事が与えられ、そ
れによってきちんと暮らせることが、資本生殺が社会主義よりも優れている証拠とされてきたから
だ。貧ハしいのは、本人が怠けているか、疾病などによるものであり、前者は自己責任であり、後
者は別途手当すればよく、資本主義は機能しているというのが基本的なアイデアだったからだ。

           原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

今夜は社会保障政策史のお復習い。
                                      この項つづく

  Sep. 4, 2018
 Shohei Ohtani takes a left handed pitcher deep for first time in his career
大谷翔平、左投手から初ホームラン

● 今夜の寸評:彦根で風速毎秒46.2メートルを観測

台風21号が多くの被害を残し足早に過ぎ去った。彦根城は連日のように多発する豪雨や強風で石
垣や白壁が剥離し修復が追いつかない。関西国際空港は高潮で復旧の目途が立たないでいる。無電
柱化・空港の浮体(メガフロート)化を急ぐべきであったことを思い返す。あらためて『環境リス
ク本位制』を宣言する。

   Aug. 28, 2018


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