第42章 「陰を負いて陽を抱く」
根元たる「道」から一が生まれ、一から二が生まれ、二から三が生まれ、三から万物が生まれる。
万物は、陰と、陽と、この両者を結びつける力とから或る。人はだれしも、「孤」「寡」「不穀」
を忌み婚う。しかるに君主はそれを自己の呼び名とする。損は益に、益は損にと転化するのが、
現象界の法則だ。俗に、「力を諮る特はろくな末路をたどらない」といわれている。遵守すべき
教えの第一条は、このことぱであろう。
〈道から一が生まれ……万物が生まれる〉「一、二、三」の解釈は、古米、まことに多種多様で
ある。一は「無」で、「無」と「無ということば」で二となり、一と二を加えて三となる(王弼)
とか、陽で一、陰で二、両者を結びつける和気で三となる(不惑順)とか、一は混沌未分の本体、
二は天と地、三は路と陽と和気(高亨)とか、ちょっとした知恵くらべの鶴がある。そのおのお
のに意昧づけを施すよりは、一二三と順を追って発展する段階的な宇宙生成説と取る方が、素直
な見方ではないだろうか。
第43章 「無有は無間に入る」
最も柔らかいものは、最も堅いものをも征服する。なぜかといえば、形のないものは、隙間のな
いところへも入りこむことができるからだ。これだけ見ても、無為のはたらきの大きさが判る。
ものいわぬ自然の教え、無為のはたらきの大きさ、これに勝るものは、天下にない。
【均一なサブマイクロメートル球状粒子の大量合成法】
● ディスプレーや化粧品添加剤への応用が期待される結晶粒子
10月9日、産業技術総合研究所と株式会社コガネイと共同で、結晶性のサブマイクロメートル球
状粒子を高い生成率で合成技術を開発と公表。それによると、形状がふぞろいの原料粒子を分散さ
せた液体にパルスレーザー光を照射して結晶性サブマイクロメートル球状粒子を得る液中レーザー
溶融法は金属、酸化物、炭化物など幅広い材料に適用でき、この方法では粒子の生成率は10%以
下にとどまっていた。今回、原料分散液を液膜状に流し、分散液中の全ての原料粒子に効率よくパ
ルスレーザー光を照射できる液膜フロー式レーザー照射法を開発し、球状粒子の生成率を約90%
まで向上させた。結晶性サブマイクロメートル球状粒子はディスプレーに用いるスペーサー、光学
材料、化粧品の添加剤などとして、機械的強度、光散乱といった機能向上のさまざまな応用が考え
られている。大量合成が可能になり、今後、プロトタイプの試作及び製品開発加速が期待されてい
る。
尚、今回開発した液膜フロー式レーザー照射法により、非晶性ホウ素、結晶性酸化銅、結晶性銀を
原料粒子として球状化を試みたところ、いずれの原料粒子でもサブマイクロメートル球状粒子が得
られた(図2)。ホウ素を除き、球状粒子がいずれも結晶性であることもエックス線回折法を用い
て確認できた。生成率は90%%前後で、いずれも1時間あたり200 mg近くの生成量であった(表1)。
従来のバッチ式レーザー照射では、生成率は7 %前後、1時間あたりの生成量は7 mgと見積もられ
液膜フロー式レーザー照射法では結晶性サブマイクロメートル球状粒子を高効率で合成できるとい
える。将来、半導体製造などで使用される高出力の産業用レーザーを用いれば、1台の装置で1日
50gの合成も可能になると考えられている。この技術はネオコンバーテックの有力な手法として成
長していいくだろう。
No.19
【免疫力その場測定装置:長健康寿命福祉立国】
そういえば、吉田さん(守る会の環境計量士)も70代に入り経験したことがない身体不調の体験
談をし思い出す。今年の記録的な猛暑、豪雨、地震、台風もあって彼女もそうだが、身体の不調や
痛み、あるいは胃腸の不調が続き、加齢のによる免疫力低下の影響を感じている。もっとも免疫力
を自体の定義も測定方法も知らずに、なんとなく「免疫力」を使っていることもあり、それじゃ、
免疫力をアップし抵抗力をつけ疲労回復を図りたいと思い立ちネット検索。そして、下図のような
対応にまとめた。因みに、左上のアリナミンはガーリックのかわり、mぎは、酢納豆、しいたけの
酢漬け。シジミの味噌汁、宅トレ励行、いつも笑顔で、そして、入浴(ここでは掲載されていない)。
ネット上で、免疫力とは免疫とは体内で発生したガン細胞や外から侵入した細菌やウイルスなどを
常に監視し撃退する自己防衛システムのこと。 免疫の仕組みは実に精巧にできており、いくつも
の免疫細胞が協調しあって働いている。人間の身体の中では毎日、がん細胞などの異物(身体に害
をもたらす細胞)ができる。 では多くの人はなぜ、発病しないのでしょうか? それはさまざまな
免疫細胞が連動し、ガンを死滅させるために働いているからであり、もし、免疫というシステムが
体から無くなったとしたら、すぐ何らかの病気にかかってしまう。" 免疫システムは15歳までに
出来上がり20歳を超えると、免疫力は落ちると説かれている。
詳しくは、上図を参照していただくとして、とりあえず免疫力は、ナチュラルキラー細胞数の多寡
で評価することで、その場測定装置を開発し、免疫力を見える化することで、国民的な福祉運動と
して取り組み、、弱った抵抗力を回復させ(免疫系の再生)、長健康寿命を図るという政策を考え
てみた。
この構想は、「患者の免疫状態(ADCC活性)を測定する新手法を開発 様々な抗体薬の効果予測や臨床開
発への利用が期待」(国立がん研究センタ)上/下図を参考とした。因みに、「ADCC(抗体依存性細胞傷
害)活性」とは、抗体薬の作用の一つのADCC活――エフェクター細胞と呼ばれる免疫細胞(末梢単核細胞
やナチュラルキラー(NK)細胞など)が重要な働きをし。がん患者の体内で増加する制御性T細胞(Regulatory
T Cells;Treg)や骨髄由来抑制細胞(Myeloid-derived Suppressor Cells;MDSC)と呼ばれる免疫抑制細胞により
ADCC活性が低下してしまうこともわかっている(下図1)。これらは、患者個々の免疫状態が抗体薬の治
療効果に影響を与えることを示している。
従来のADCC活性測定法は、標的がん細胞に放射線同位元素(Cr51)や緑色蛍光物質(カルセイン)を取り
込ませ、免疫細胞により死滅したがん細胞から放出される放射線同位元素や緑色蛍光物質を測定。新たに
開発した測定方法では、あらかじめ標的がん細胞に緑色色素を取り込ませて、標的がん細胞(緑色色素を
取り込ませたもの)と免疫細胞(緑色色素取り込みなし)を区別できるようにします。さらに、両細胞に
ついて、それぞれ生きている細胞と死滅した細胞を区別できる色素 (Fixable Viability Dye;FVD)で標識
しフローサイトメーター(注2)という装置を用いて測定することにより、がん細胞と免疫細胞をそれぞ
れ別々に、生きている細胞と死んだ細胞に細胞一個単位で区別できるようになる(下図2)。この手法に
より、従来の測定法に比べてより情報量が多く、より精細な測定が可能になりました。実際に比較すると、
新たな測定法では従来の測定法と比べて1/100以下の低濃度の抗体でADCC活性が測定可能であることがわ
かる(同図3)。概略/上滑りだが、免疫力を代表する最適な目的因子を発見し、それを素早く、コンパ
クトにその場で測定するシステムを発明/構築できれば面白い。、
【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である 14】
Yutaka Hrada, Wikipedea
第2章 ベーシック・インカムの思想と対立軸
第17節 報酬返還の実例
実際に本来利益を上げていない、あるいは不正に上げられた利益を返還させることが、ヨーロッパ
の銀行では実際に行われている。ウクライナ国立銀行ウクライナ銀行大学校・研究所のオルガ・ア
ファナシエヴァ研究員は以下のように書いている。
欧州ではすでに多くの実例がある。2011年から13年にかけての英バークレイズ、英HSB
C、英ロイズ、英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、スイスのUBSなど
である。
バークレイズではLIBOR(ロンドン銀行間金利)の不正行為などで、3億ポンド(約51
0億円)の後払い報酬の返還、8・6億ポンド(約1462億円)の報奨金基金の返還。HS
BCでは3億ポンドの債券の違法販売で罰金を受けたことによる200万ポンド(約3匝40
00万円)の後払い株式権の返還。ロイズでは支払い保証保険の違法販売で115万ポンド(
約1億9550万円)の後払い報酬の返還。RBSではLIBORの不正行為で1億1200
万ポンド(約190億4000万円)、UBSでもLIBORの不正行為で6000万スイス
フラン(約68億4000万円)の後払い報酬の返還という事例がある。
後払い報酬とは、利益を上げたことに対して、後から報酬を受ける権利のことである。
これらの場合、この権利を剥奪されたことになる。現金を返還したわけではないが、本来もら
えるはずだった報酬がもらえなくなるので、報酬返還の一つのかたちと考えてよいだろう。
また、報酬返還の対象となったのは、バークレイズでは15人の現および前職員、HSBCでは
前CEOとメキシコ部門の長、ロイズでは前CEOと12人の前取締役、RBSでは2人の専
務取締役である。UBSでは、ボーナスが200万ドル(約2億400万円)以上の投資銀行
部門の職員が対象となった。ここで前とい立肩書が出てくることからも分かるように、職を辞
しても責任は追及される。
ちなみに、米国がリーマン・ショック後に制定した不良資産救済プログラム(TARP)にも、
報酬返還の規定があるが、実現はしていない。米国の経営者は報酬を返還するようなヘマはし
な いということかもしれない。
欧州の実例を見ると、後払い報酬の返還が多いので、報酬を後回しにするのとあまり違わない
のではないかという議論がある。だから、経営者の報酬は、バブルが崩壊して利益または損失
が確定してから払うべきだという議論もある。例えば、すべてのボーナスは5年後に払うべき
だという議論だ。
もちろん、証券価格の一時的な高騰で高い報酬を得るような場合には、後払いが適正かもしれ
ない。しかし、そうすると、経営者にバブルの期間を長引かそうという動機が生まれるという
問題が生じる。もちろん、バブルの期間を完全にコントロールすることができるとは思えない
が、金融機関の経営者が、中央銀行に働きかけて過大な金融緩和を続けさせて、なんとかバブ
ルを5年間続けさせるということはあり得る。
さらに、これら実例から、LIBORのスキャンダルは不正行為だから、罰金や刑罰で処置す
べきことで、報酬返還で終わるのはおかしいという議論もある。しかし、不正を調査しても、
誰がどのように不正を行ったのか、誰の責任なのかがなかなか特定できないので、処罰が難し
い、あるいは処罰するまで時間がかかるが、不正が行われていたこと、それによって利益を上
げたことは確実という場合もある。このような場合、報酬返還という手段が適切になる。(オ
ルガ・アファナシエヅァ「世界金融危機を防ぐ仕組み経営者の報酬返還が有効だ」、『エコノ
ミスト』2014年6月24日号)
さらに、イギリスでは、銀行の幹部や従業員が経営に重大なリスクをもたらすような行為を した
場合、賞与を七年間遡って返上させる新規則案を中央銀行が公表している(「英中銀、賞与7年分
返上の新規則案」、『日本経済新聞』2014年7月31日)。
Sep. 19, 2018
私は、前記のジョルジーノ教授とアファナシエヴァ研究員にインタビューしたのだが、二人とも、
「報酬制限の議論には、1%の人が過大な報酬を受け取るべきではないというイデオロギー的、ま
たは倫理的要素が含まれていると考える人もいるようだが、私たちの考えは違う。あくまでも正し
いインセンティブを経営者に与え、金融機関の経営を真の意味で効率化し、金融危機の可能性を少
しでも軽減することが目的だ。もちろん、利益を得ていないのに高い収入を得た人が、その所得を
奪われることに喝采する人がいることは事実だが、報酬返還の目的は、喝采ではなく、盲六の効率
を高めることだ」(アファナシエヴァ前掲論文)というのが、彼らの考えである。
富は必ずしも正当なものではない。しかし、社会が安定するためには、冨が正当的であると人々に
感じられていることが必要である。特に豊かな人々が、富が正当的であると認められるために努力
することが必要である。強固な自由主義者ノージックもそのことを認めている。しかし、近衛のよ
うに、富が正当でないと言い出せば、それはとてつもない災厄を世界にもたらす。冨は創造できる
ものと考えること、現実にそうである社会を維持することがいかに重要かという認識が必要である。
※ここでも近衛の言を批判しているのだが、彼は共産主義者ではなく超国家主義者なのだと訂正し
ておく。
Dec. 4, 2017
第15節 BIと家父長主義
貧しいことはお金のないことなのだから、BIを給付すれば貧困を解消することができるという発
想は、私には単純で強力に思えるが、これまでのところ、この制度を採用した国はない(フィッツ
パトリック前掲書、10~16頁)。
なお、ブラジルでは「市民ベーシック・インカム法」が制定され、BIの例とされているが、これ
はBIの段階的導入を謳った法律で、必要な税制改革がなされた後に給付に至るとされている。現
状では、所得制限付きの児童手当がその第一段階として導入されているだけである(山森亮「なぜ
今ベーシック・インカムなのか第5回‥導入めぐる世界の動き」「The Peace」2014年8月8日
httP://thePage‐jP/detail/20140808‐00000023‐wordleaf)。 多少とも類似性のある制度を挙げれば、ア
メリカで一九七五年に採用された、給付付き勤労税額控除がある(給付付き勤労税額控除について
は、森信茂樹編著『給付つき税額控除――日本型児童税額控除の提言」中央経済社、2008年、
参照。仕組みの詳しい説明とアメリカ、韓国、カナダの実例が説明されている)。
ただし、所得のない人にBIを与えるのではなくて、勤労所得が増大するにつれて所得を給付する
というものである。BIの、あらゆる人に無条件でという発想には批判が多いことから、働くこと
を援助するという制度になったものと思われる。所得の低い人の労働参加を促して貧困を解決すべ
きだという発想である。
しかし、すでに働いている人の所得が低い、ワーキングプアーが多い日本では、労働参加意欲を高
めるという発想は現実に適合しないのではないだろうか。ただし、政府が賃金を補助することであ
るから、貧しい人の時給は高まる。この意味では、貧困のある部分を減らすことができる。しかし
何より、給付付き勤労税額控除は、働けない人には給付しないのであるから、貧困の解消策にはな
らない。
ではなぜ、貧しいことはお金がないことなのだから、お金を給付すれば、貧困の問題の多くは解決
するはずだという単純なアイデアが現実化しないのだろうか。一つは、金額についての合意が得ら
れないからである。フリードマンの考えている程度の金額であれぼ、いつでも実現できる(本章で
も説明したが、第3章でさらに具体的に詳しく説明する)。しかし、金額が大きくなれば、財政的
な問題が大きくなる。大きな所得再分配政策について合意が得られないのだろう。
もう一つは、福祉政策についての家父長的発想が根強いからである。要するに、貧しい人は、勤労
意欲や態度、生活習慣に問題があるから貧しいのであって、それゆえ彼らを教育し、正しい生活態
度を身に付けさせなければいけないというのである。
自由主義者は、これを傲慢とし、実際に、それに成功しているのかと問うわけだが、ここではまず
自由主義者も認める、国家の家父長的役割の例について考えてみよう。
Jul. 21, 2018
第16節 パレンス・パトリエ政策の限界
貧しいことは所得の少ないことなのだから、絶対的貧困線を超えるだけの所得を給付すればよいと
いう発想に対する反論は、貧困は単に所得がないことではなく、社会から排除され、「正しい」生
活を送れないという問題なのだという考えから来る。
この批判が適応される部分はもちろんある。パレンス・パトリエ(Parens Patriae' 国親思想)という
考え方がある。パレンスーパトリエとは、本来ならば親によって与えられるものを国が親の代わり
に与えなければならない、という思想である。一般に、国家の家父長的介入を嫌うアメリカ人も限
定的にはこの考えを認めていると思われる。
そもそも、パレンス・パトリエとはイギリスの国王大権から来たもので、国の親(Parent of his or her
country)という意味である。
国王は法的観念においては臣民の守護者である、未成年者、生来の精神遅滞者、精神障害者と
いった臣民の世話をすること、彼ら自身と彼らの財産に適切な配慮をすることは、国王に与え
られた権利(というよりもむしろ義務である)。(飯泉明子「アメリカのパレンス・パトリエ
訴訟に関する一考――環境法の視点から」より19世紀の法学者チティの著作を引用、『企業
と法創造』第7巻第2号、291~329頁、2010年11月、http://www.win‐cls.sakura.ne.i
p/pdf/24/21.pdf)
この考えは、アメリカにも受け継がれ、州政府および連邦政府の権限となり、政府は、自己決定権に欠ける
人々を保護するべきだとされた。未成年若に対し、その親が責任を果たさないとき、誰かが責任を果たさな
ければならないことは当然で、人々の自発的な意思によってできないのであれぼ、政府がすることをリバタ
リアンも認めるだろう。
しかし、それは必ずしもうまくいっていない。アメリカでは、少年犯罪はパレンス・パトリエ思想
によって処理されることになり、少年を犯罪者として罰しないという少年法が生まれ、社会的に不
利な条件にある子どもたちを保護し、矯正しなけれぼならないこととなった(この思想は、日本の
少年法にも受け継がれている)。
ところが、アメリカではパレンス・パトリエ思想によって、少年が大人と同じ罪を犯しても、むし
ろ、大人よりも長期の拘束を受けることもあるようになった。隣家の婦人にいたずら電話をかけた
少年が、大人であれば50ドル以下または2か月以下の徴役ですむところを、子どもだという理由
で6年間少年院に収容するという処分がなされたことがある。これを連邦最高裁は、1967年、
少年の裁判を受ける権利を奪ったものとして処分を違憲とした。すなわち、戦後のアメリカにおい
ては、パレンス・パトリエ思想は、いらぬおせっかいによって、子どもの正当な権利を奪うものと
されるようになったのである(黒沼克史『少年法を問い直す』10~11頁、講談社現代新書、2
000年)。
第17節 日本政府はパレンス・パトリエであるのか
日本は、親から虐待されている子どもたちを十分に守ることができないでいる。児童相談所での児
童虐待に関する相談対応件数は、2012年で6万6701件となっている(厚生労働省「児童虐
待の現状」平成24年度)。1990年には1101件にすぎなかったので、それが61倍にも拡
大しているわけだ。しかも、拡大したというより、表に現れてきたと考えたほうがよい。なぜなら、
児童虐待によって子どもが死亡した件数が高い水準で推移しているからだ。さすがに子どもが死ね
ば、多くの場合、虐待の事実が明らかになる。「子ども虐待による死亡事例などの検証結果等につ
いて」(第一次報告、2003年7月1日から12月31日)では虐待死は25人である(これは
半年の調査なので1年では50人となる)。同じ調査の第9次報告(2011年4月1日から20
12年3月31日)では虐待死58人入である。すなわち、2003年から現在まで、同じような
虐待があったに違いなく、それは1990年でも、あるいはそれ以前でもほぼ同じと考えたほうが
よいということである。
ここでの私の目的は、子どもへの虐待を根絶するという難しい仕事をどうしたらできるのかを論じ
ることではない。その仕事をするための資源を確保するためにも、単なる貧困という問題の解決に
政府の仕事を増やすべきではないと主張したい。政府は、自らのなすべきパレンス・パトリエの仕
事を正しくするべきである。
パレンス・パトリエは、自由主義者も認める政府の権利であり、義務でもある。もちろん、政府で
はなく地方自治体が、社会が行使するべきものでもあろう。また、どこまで行使できるのか、すべ
きなのかという議論はある。しかし、誰が力を行使するかに議論があるとしても、無力な幼い子ど
もが虐待されるなど、あってはならないことである。
さらに国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩社会保障応用分析研究部長によれば、日本は、OE
CD諸国のなかで、社会保障や税による再分配政策によって、子どもの貧困率がむしろ高くなる唯
一の国であるという(阿部彩『子どもの貧困-日本の不公平を考える』95~96頁、岩波新書、
2008年)。なぜそうなるかといえば、高齢者には年金と医療の給付が十分になされているが、
子どもを持つ現役世代には少額の子ども手当しか給付されていないからである。
原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』
"the FOUR"脅威論が話題なるほど第5次産業革命(=『デジタル革命渦論』)がこの世界を席巻し、
”暗号通貨”、"ブロックチェーン"、”クラウド・ファウディング”なる言葉が飛び交っている。
想いかえせば古代ローマ時代の情報伝達速度は10キロメートル、活版印刷と製本と暗号の情報技
術の(=第3次産業革命)を経て地下化石燃料革命(=第4次産業革命)により生産力は幾何級数
的に飛躍、デジタル情報通信技術力を背景に、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック(
マイクロソフトは凋落?)が技術と富を独占するのはいわば歴史的必然、しかし、これらの企業も
あと30年もすれば退席しているかもしれないが、"情報/通信/画像処理”の第4次産業のアドバ
ンテージの不変と裏腹に、"富の再配分の公正さ"が問われることもまた必然である。どっしりと腰
をすえた政策研究の日々新々がつづくことになる。