湯 問 とうもん
ことば--------------------------------------------------------------------------------
「われの死すといえども、子ありて存す。子また孫を生み、孫また子を生み、子また子あり、子ま
た孫あり。子子孫孫窮匱(きゆうき)なきなり。而して山は増すことを加えず。いかんぞ平らがが
らんや」「力を量らずして、日の影を迫わんと欲す」「すでに去るに、余音梁欐(りょうれい)を
繞り、三日絶えず。左右その人夫らずと以えり」
----------------------------------------------------------------------------------------
弓の名人
むかし、甘蝿(かんよう)という弓の名人がいた。弓に矢をつがえただけで、獣はたおれ鳥は地に
おちた。その弟子に、飛衛(ひえい)という者がいた。甘蝿に学んで腕前は師をしのいだ。細目が
入門を乞うた。飛衛は紀昌にいった。「教えてもらいたいなら、まず目をつぶらない練習をしてみ
るがいい。弓を教えるのは、それからのことだ」紀昌は家に帰ると妻が織るはたの下にあおむけに
ねて、まねき(織機の一部分。足で踏んで動かす)に目を近づけて訓練した。二年だつと、目にキ
リの先をあてられても、まばたきしないまでになった。よろこんで報告すると、飛衛はいった。
「まだまだ。次は見る練習だ。小さい物が大きく見え、ぼんやりした物がはっきり見えるようにな
ったら、また来たまえ」
紀昌は牛の尾の毛の先にしらみをしぼり、南の窓につるして、じっとみつめた。十日もするとだん
だん大きくみえ、三年だつと車輪ほどになった。ましてほかのものは山のように大きくみえた。そ
こで燕の国の鹿角で飾った弓に、楚の国の竹で作った矢(最上の弓と矢)をつがえてしらみを射る
と、ズバリ心臓を射抜いた。しかも牛の毛は切れず、しらみはつりさがったままだ。それを報告す
ると、飛衛はおどりあがってさけんだ。
「よくものにした」
やがて紀昌は、飛衛の術を学びつくした。そして考えた。
"天下広しといえども、自分の上をいくのは飛衛ただひとり。そうだ、飛衛を殺そう″
ある日二人は野原で出会い、たがいに相手めがけて弓を射た。双方の失はガッとぶつかった。その
まま地におちて砂けむりもたたない。二の矢、三の矢、いずれも同じだった。飛衛の矢が先に尽き
た。紀昌は残った一本を勢いこんで射た。と、飛衛は道ばたのいばらを折り、そのとげの先でハッ
シと受けとめた。二人はともに弓をすて、路上に抱きあって泣いた。腕の血をすすりあって親子の
ちぎりを結び、この秘伝を人に伝えまいと誓いあうのだった。
〈血をすすりあって〉 親子兄弟のちどりを結ぶための儀式として、同じ血をすすりあう。なお、
『孟子』離婁篇(りろう)には「逢蒙(ほうもう)は羿に弓をならった。羿の術を学びつくすと考
えた。自分以上なのは羿だけだ。それで羿を殺した」とある。
【非FIT非化石市場の設計で問われる公平性】
●新電力の利益を吹き飛ばす高度化法
「高度化法は大変なことになると思った」。大手新電力で電力取引を統括する幹部は、4年前、一
律44%の非化石電源を小売電気事業者に課すことが決まったときのことをこう振り返る。それが
今、20年に取引が始まるとされる「非FIT非化石証書」を巡る議論の場で現実のものになろうと
している。「制度設計を誤れば新規参入者は壊滅する」(有識者会合の委員)ことが次第に明らか
になってきたためだ。ここでいう非FIT非化石とは、FIT(固定価格買取制度)を利用していない大
型水力や原子力などの非化石電源のことをいう(「新電力の利益を吹き飛ばす高度化法」、新電力
の利益を吹き飛ばす高度化法、日経 xTECH(クロステック)、2019.01.22)。
それによると、15年7月に決まった長期エネルギー需給見通しで、日本全体の30年のエネルギ
ーミックスを再エネ22~24%、原子力22~20%などと目指すことが決まった。これを受けて、
高度化法が目指す非化石電源比率の目標が「30年に原則44%以上」に改訂された。44%はエ
ネルギーミックスにおける再エネと原子力の比率を足し合わせた数字であり、目標数値に大手電力
と新電力の区別がなくなり、すべての小売電気事業者に一律に課すことになった。併せて「非化石
価値の取引を可能にすることで小売電気事業者の目標達成を後押しする制度を検討する」(経済産
業省)ことが決まった。新たに創設する非化石市場が大手電力と新電力の差を穴埋めする道具と位
置づけられた。
そこに絡繰り――大型水力や原子力などの非FIT非化石電源はそもそも大手電力に偏在し、取引制
度をつくった途端、それまで埋もれていた非化石価値が経済価値として顕在化し大手電力は「棚ぼ
た利益を得ることになる」があり、FITの非化石価値は国民負担に由来し、小売電気事業者の負担
が過度にならないことの両面から、市場価格は上限と下限の枠をはめ、下限が1.3円/kWh、上限が4
円/kWhと定めている。非FITの価値も同水準と仮定し、新電力の販売電力量シェアに基づいて非化
石比率44%を達成しようとすると、新電力全体の負担は850億~2600億円との推計があり。大手新
電力幹部は、すべての新電力の利益の合計に匹敵するほどの大きな金額。新電力の利益が吹っ飛び
かねないという。
尚、高度化法は大手電力10社のほか、年間の販売電力量が5億kWh以上の比較的大手の新電力が
対象(17年度は36社)、この規模の新電力でも自前で所有している非化石電源はごくわずかで
多くを非化石市場から買ってくる必要がある。
●新電力と大手電力の格差をどう解消
18年12月17日の政府有識者会議の場で、「高度化法の目標を事業者ごとに変える場合の論
点」と題した資料が提出され、そこには事業者ごとに異なる基準を設定する場合の技術的な困難さ
が書き連ねられていた。2018年12月17日に開いた有識者会議の場で、「高度化法の目標を事業者ご
とに変える場合の論点」と題した資料を経産省は提出してきた。そこには事業者ごとに異なる基準
を設定する場合の技術的な困難さが書き連ねられていた。一律目標の見直しを真っ向から否定する
までではないにしても、経産省としては難色を示す。これに対し、新電力代表を含む多くの委員か
ら大手電力と新電力の小売り競争に歪みが生じることに対する懸念――❶大部分の非FIT非化石電
源の価値が大手電力に帰属ても、売却益が電気料金の値引き原資に補填されるようだと小売り競
争の公平性は失われる、❷国全体の非化石比率の向上を目指す高度化法の趣旨にも反する――が噴
出し、そこで経産省から、①非化石証書の売却益を発電部門内にとどめる「資金管理」と、②売却
益は非化石電源の建設や維持などにしか使えない「資金使途の制限」を組み合わせる案が提出され
、
そこで、この2つの資金管理と資金使途の制限ルールのもと、大手電力の小売部門や発電部門を含
めてそれぞれに課された目標達成に市場入札競争すれば公正な競争が実現できるのだろうかという
疑問に非化石価値に関する発販分離が厳格に行われたとしても、大手電力の発電部門が新たな収入
を手にするとし、公平性は保てないとし、供給力確保のための容量市場や、大型水力や原子力の電
力を取引するベースロード電源市場と、他の新市場との整合性も問われ、売り手は大手電力、買い
手は新電力という現状をふまえ、電源の価値の二重取りを防ぐルールや監視は不可欠と結ぶ。
【エネルギー通貨制時代 44】
”Anytime, anywhere ¥1/kWh Era”
Mar. 3, 2017
What's e-AI solution?
【エネルギー制御技術篇:最新イーエーアイ技術】
1月21日、ルネサス エレクトロニクスは白物家と電などでモータの故障検知が行えるマイコン
ベースのソリューションを発表した。低価格のマイコン上で学習済みのモータ故障検知AIを実行
し、モータの異常を検知し、アラートの発報などが行える。ルネサスは15年から、IT機器だけ
でなく組み込み機器でも機械学習などのAIを活用する「組み込みAI/e-AI」というコンセプトを
打ち出し、e-AIを実現する製品、技術の拡充を進めてきた。17年には、e-AIのコンセプトに沿っ
てルネサスは「Caffe」や「TensorFlow」で学習した結果(推論モデル)をマイコンに実装可能なコ
ードに変換するツール「e-AIトランスレータ」などマイコンベースでe-AIを実現する開発環境の提
供を開始。既に世界22カ国250社以上が同開発環境の利用を開始している。
今回、発表したマイコンによる家電向け故障検知用e-AIソリューションも、e-AI開発環境を使って
マイコンで推論モデルを実行させるもの。ハードウェアとしては、ルネサス製32ビットマイコン
「RX66T」を搭載するCPUカードとモータ制御用評価キットを使用。ソフトウェア、ツールとして、
RX66Tで動作するサンプルプログラム一式と、モーターの状態を示す特性データを収集、解析する
ためのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)ツールを提供する。
RX66Tは、最大4つのモーターを制御できるマイコンで、故障検知もRX66Tの1チップで4つのモー
タの異常検知が行えるという。例えば洗濯機では、洗濯槽を回すモータ、ポンプ用モータ、乾燥用
ファンモータの3つを制御しながら、33つのモータすべての消費電流を常時監視し、異常を検知す
ることが可能。「AI処理用のチップや、センサなどを追加することなく低コスト、かつ、手軽に故
障検知AIを導入できる」(ルネサス)とする。
ルネサスでは、同ソリューションを発表した1月21日に都内で記者説明会を開催し、組み込み機
器領域でのAI活用を可能にする製品、ソリューションの展開を強化していく方針を改めて強調する。
尚、18年11月にドイツで開催された「electronica 2018」で公開したデモを披露。
【関連特許事例】
❏ 特開2019-009970 モータ駆動装置およびモータシステム ルネサスエレクトロ
ニクス株式会社
【概要】
例えば、ハードディスクドライブ(明細書では、HDDと略す)等のモータシステムでは、大容量
化、高速化に伴い、モータ回転の高速化、高効率化(言い換えれば電力損失の低減)が求められる。
そのためには、モータを駆動する駆動トランジスタのオン抵抗や、モータのコイル抵抗等を小さく
する、または、トルク定数を高くすることが有益となる。一方、例えば、電源遮断等の緊急時には、
モータを安全かつ早期に停止させる必要がある。モータを停止させる方式として、電源電圧側の駆
動トランジスタ(明細書では、ハイサイドトランジスタと呼ぶ)を全てオフ状態に、接地電源電圧
側の駆動トランジスタ(明細書では、ロウサイドトランジスタと呼ぶ)を全てオン状態に制御する
ショートブレーキが知られている。ショートブレーキを行うことで、ロウサイドトランジスタとモ
ータの間にブレーキ電流が流れるため、モータの逆起電圧が消費され、モータを早期に停止させる
ことが可能になる。
しかし、ショートブレーキ時のブレーキ電流は、前述したように、駆動トランジスタのオン抵抗や
モータのコイル抵抗が小さくなるにつれて、または、トルク定数が高くなることで逆起電圧が大き
くなるにつれて増大する。その結果、例えば、駆動トランジスタの動作点が、最大定格電流、最大
定格電圧、最大温度といった安全動作領域(ASO(Area of Safety Operation))を逸脱し、安
全性が低下する恐れがある。このため、下図3のごとく、PWM変調回路は、ブレーキ電流を流す
際に、3相のロウサイドトランジスタM1(u,v,w)を全てオン状態に制御し、ブレーキ電流
がシンク方向である相が1相の期間では、当該1相のセンス用トランジスタM3s(u,v,w)
をオン状態に制御し、2相の期間では、3相のセンス用トランジスタM3s(u,v,w)を共に
オフ状態に制御する。3相のセンス相制御回路は、ブレーキ電流を流す際に、ブレーキ電流がシン
ク方向である相のセンス用トランジスタM1s(u,v,w)をオン状態に、その逆方向である相
のセンス用トランジスタM1s(u,v,w)をオフ状態に制御することで、ショートブレーキ時
のブレーキ電流を検出することが可能になる。
● 存在確認信号の誤判定を防止する送電装置
❏ 特開2019-009835 送電装置 オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
【概要】
スマートフォンなどの携帯端末が普及する中で、非接触で充電を行うための規格が複数登場してき
ている。たとえば、Qi規格、PMA規格、A4WP規格などであり、互いに、ハード・ソフト両
面において互換性のあるものとないものがある。Qi規格とPMA規格は、電磁誘導方式を採用し
ており、ハード(送電コイル)を共用することが可能である。一方、A4WP規格は、磁界共鳴方
式を採用しており、送電コイルにおいてQi規格等とは互換性がなく、専用の送電コイルが必要に
なる。使用者の使いやすさを考慮した場合、1台の非接触充電器にて複数の規格に対応できること
が好まれる。
1台の非接触充電器で複数の規格に対応するためにそれぞれの送電方式に則った複数の送電コイル
とこれらを制御する制御部を備える必要があるが、昨今は即時性や制御のしやすさから、送電コイ
ル毎に制御部を備えることが求められるようになった。しかし、係る非接触充電器においては、受
電装置の接近を検知するため間欠的にその存在を確認するための信号(Qi規格ではAnalog Ping A4
A4WP規格ではShort Beeconと言う)を送信し続けなければならないので、その存在を確認するため
の信号を誤判定するという問題があった。そこで、下図のごとく、送電装置は、第2制御部は、第
2送電コイルから受電装置の存在を確認するための第2存在確認信号を所定間隔で送信するように
制御し、第1制御部は、第2制御部が第2存在確認信号を送信していない場合に第1送電コイルか
ら受電装置の存在を確認するための第1存在確認信号を送信するように制御し、第2制御部が第2
存在確認信号を送信している場合に第1送電コイルから第1存在確認信号を送信しない。複数の送
電コイルを制御する制御部が複数あったとしても、存在確認信号の誤判定を防止する送電装置を提
供することができる。かかる事情を鑑みて考案されたものであり、複数の送電コイルを制御する制
御部が複数あったとしても、存在確認信号の誤判定を防止する送電装置を提供する。
【読書録:2019年の経済予測Ⅲ】
今夜は高橋の第2章5節「中国に技術者を引き抜かれている日本」に着目。
ところで、トランプ大統領が声高に叫んでいる知的所有権の問題だが、日本もかなりの被害を受け
ている。たとえば、2012年5月に、新日銀が、韓国の鉄鋼メーカーであるポスコと新日銀の元
技術者を提訴した。1990年代に新日銀が数十年と数百億円をかけて間発していた「高性能鋼板
」の技術を、元技術者がポスコに流していたのだ。
また2014年には、東芝のパートナー企業であるサンディスクの元技術者が、東芝のNAND型
フラッシュメモリの研究データを、韓国のSKハイニックスに不正に提供したことが明るみに出て
逮捕されたこともあった。
だが、そうして表沙汰になるのは、氷山の一角にすぎないだろう。仮に技術の漏出があったとして
も、起訴することで技術情報がオープンになるのを恐れたり、管理の甘さを指摘されることを避け
るために表に出さないケースが多い。また、技術革新が目まぐるしく進む中、時間がかかる訴訟を
起こして賠償金を取れたとしてもペイしないと判断して泣き寝入りする場白も多いからだ。
また、日本の場合は、そういう形で先端技術を盗まれる以前に、技術者や研究者を引き抜かれると
いう情けない状態になっている。企業が、優秀な労働者、技術者、研究者をうまく使いこなせず、
人材が中国や韓国の企業に引き抜かれているのだ。当然、彼らの持っていた技術や知識は、中国や
韓国の企業に吸い上げられている。
少々古いデータだが、2006年、経済産業省が、この問題について、「我が国製造業における技
術流出問題に問する実態調査」を行った。
そのとき、35%以上の製造関係企業が一技術流出があった」とし、流出先については、63・5%の
企業が中国、34・I%の企業が韓国と回答。また、「コアな人材の引き抜きについて脅威を感じる
か、また、どこの国・地域からの引き抜きの脅威を感じるか」という質問に対して、50・9%の企
業が「常に脅威を感じている」と答え、「中国からの引き抜きに脅威を感じている」と答えた企業
が60・9%、「韓国から」と答えた企業が50・6%に上った。
そういう意味では、日本も知的所有権保護にもっと力を入れるべきだし、トランプ政権に追随して
中国からの投資にも制限をかけたほうがいいかもしれない。中国は、自由貿易体制をうまく使って
成長してきたということはここまで書いてきたが、「自由貿易体制をずっと使う気なら、資本の自
由化をしろ。知的所有権も大事にしろ。それができないのなら、投資もさせない」というロジック
で攻めるのがいちばん簡原だ。
確かに中国は経済的にアメリカに次ぐ国になった。軍備も増強している。それを潰そうとしてもな
かなか難しい。一方、中国が先進国に投資をしているのは、M&Aで会社を手に入れて、最先端の
技術を手に入れたいからだ。それができなくなったら大変だ。もう、最先端の技術を手に入れられ
なくなる。
今、中国は、電気自動車、ドローン、AIなど、目につくところに飛びついて、伸びている。しか
し、元となった技術は中国がっくり出したものではない。もし、先進国への投資を止められたら、
次世代につながる先瑞枝碩を独自に開発しなければならなくなるが、果たしてそれが中国に可能な
のか。できなければ、新しいイノベーションが起こったときに、それについていけなくて、結局行
き詰まることになる。
要するに自由貿易体制の中で中進国まではなったが、その後、さらに発展させることは難しい。そ
れを中国もわかっているから、先進国への投資を加速させていたのだ。ならば、中国の暴走を止め
るためには、投資をさせないことだ。
第2章5節 「中国に技術者を引き抜かれている日本」
ここでかかれていることは、バラク・オバマ元大統領時代に推進されようとしたTPPに対中国包
囲戦略意と同質のものがかかれているが、日本政府の政策方略として推進されなければならないと
いうわたし(たち)の立場と順逆不二で異なる。次は、同章第6節「中国共産党が恐れる。"本当
の選挙"」に移る。
社会主我国が最終的に崩壊するのは、国民がある程度の豊かさや自由を手に入れ、不満を感じるよ
うなったときである。今、習近平政権は、それを抑えようと躍起になっている。
中国経済成長が右肩上がりで国民の所得が上がっているうちは、それでもなんとか国民の不満を抑
えておける。そういう意味では、中国経済が発展し、国民の所得が上がっていく限りにおいて、中
国共産党による一党支配が崩壊することはないだろう。
しかし、それがいつまで続くかはわからない。中国の長い歴史を見ても、いろいろな王朝が勃興し
ては滅亡するという歴史を繰り返してきたが、筆者は、経済的な発展を続けていくには、政治的な
自由が絶対に必要だと思う。
国民は、経済的な自由をある程度謳歌すると、政治的な自由が必ず欲しくなる。経済的な自由と政
治的な自由の両者が並立してこそ、国家はうまく機能していく。
その観点で中国共産党のこれまでのやり方を見ると、限定的に経済的な自由を与えて、民衆の不満
を和らげてきた。実際、庶民もある程度の収入を得られるようになり、海外旅行にも行けるように
なってきた。しかし、問題はこれからだ。
中国共産党にとっていちばん怖いのは、中国の国民が、今のように統制された選挙ではない。「本
当の選挙」を求めるようになることだ。
だから、中国共産党は、たとえば香港での選挙を絶対に許さない。
そもそも1997年、香港がイギリスから中国に返還の際、中国当局は「香港返週後50年間政治体
制を変更しない」ことを確約した。「一国二制度」だ。しかし、それは守られなかった。
香港基本法(香港特別行政区基本法)には、2007年以降、行政長官や立法会(香港の立法機関)
の選出方法を直接選挙に移行することが可能となると記されていた。だが、直接選挙が行われるこ
とはなかった。
2004年3月に全人代(全国人民代表大会)の常務委員会で都合よく基本法解釈を行い、200
7年と2008年の行政長官や立法会における直接選挙への移行を否定した。
さらに、2017年の行政長官選挙についても、2014年8月の全人代常務委員会では中国政府
の意に沿わない人物の立候補を事実上排除する方針を決定した。
中国共産党は、徹底して。"本当の選挙"をやりたくないのだ。中国が、自国の一部であると主張す
る台湾の選挙に神経質になるのもそのためだ。国民の目に。"本当の選挙"を触れさせたくないので
ある,
筆者は、中国の共産党支配を終わらせるには、中国国民に「選挙って面白い」と感じさせればいい
と思っていた。たとえば、AKB48を中国に進出させて、その売りの「総選挙」を中国でもやれば
いいのだ。きっと若者が盛り上がるはずだ、と-。そう思って調べてみたら、上海にはAKB48を
真似たSNH48というグルーブがあり、総選挙をやっていた。中国共産党としては苦々しいことか
もしれないが、SNH48で自由選挙の面白さを知った苦い中国人たちが、いずれ声を上げる日が来
るかもしれない。
第2章6節「中国共産党が恐れる。"本当の選挙"」
この項つづく