5.公冶長 こうやちょう
ことば-------------------------------------------------------------------------------------------
全28章のほとんどすべてが人物批評である。
人に禦る(あたる)に口給をもってすれば、しばしば人に憎まる」(5)
「道行なわれず、俘(いかだ)に乗りて海に浮かばん」(7)
「回や一を聞きてもって十を知る。賜や一を聞きてもって二を知る」(9)
「われいまだその過ちを見て、内にみずから訟むる者を見ず」(27)
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12 子貢が孔子に言った。
「人からされてはいやだと思うことを人にしない。わたしはこうありたいと思っています」
「それはむずかしい。おまえにできるかな」
〈人からされてはいやだと……〉 新注による。この読みに従えば、12-2、15-24両章の「おのれの
欲せざるところは、人に施すことなかれ」と同意。古注では原文の「加」を陵ぐ(暴力を加える)と読む。
★子貢の頭の切れ味はしばしば語られている。5-9では孔子の共鳴を得たが、ここでは皮肉られたかっこう。
子貢曰、我不欲人之加諸我也、吾亦欲無加諸人、子曰、賜也、非爾所及也。
Zi Gong said, "The thing that I do not want to be done by others, I also do not want to do it to others."
Confucius said, "Zi Gong, that is beyond you."
13.われわれは、文化問題では先生からいつも教えを受けている。だが、人間の本性、天の法則、こういっ
た問題については、先生はなにも語ろうとされない。(子貢)
★『論語』で、人間の本性(性)に言及している箇所は17-2、天の法則については17-19だけである。
子貢曰、夫子之文章、可得而聞也、夫子之言性與天道、不可得而聞也已矣。
Zi Gong said, "Master often talked about morals.
But master rarely talked about human nature and the law of nature."
【短歌&俳句トレッキング:花檸檬】
ヒマラヤの雨に浮かぶる花檸檬
Looking at the lemon flowers blooming in my garden in the rain of June, I think it like lemon
flowers in the Himalaya.
花言葉:心からの思慕・誠実な愛・熱情・香気
読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』
第3部 ガウェインの追憶-そのI
第12章
下から戦士の声が聞こえてくる。もっとゆっくり登れと言っている。だが、エドウィンは無視した。ウィスタ
ンは遅すぎる。いまがどんなに切羽詰まった事態なのか、わかっていないんじゃなかろうか。この崖をようや
く半分ほど登ったあたりで、なんと言ったと思う。「いま頭の上を飛んでいったのは鷹かな、若き同志」だっ
て。鷹だったらどうだっていうんだろう。熱のあと、戦士は心も体も甘くなったんじゃないか。あと少しだ。
あと少しで、少なくともぼくは崖を乗り越えて、ちゃんとした地面に立てる。そうしたら走れる。ああ、早く
走りたい。でも、走ってどこへ行くんだろう。二人の目的地がどこだったか、いまはぼんやりと しか思い出せ
ない。それに、戦うには何か重要なことを話さなければならなかったような気がする。ぼくは何かのことでウ
ィスタンをいつわってきた。そろそろ正直に言うべきときだと思う。くたびれ果てた馬を山道わきの濯本につ
ないで、崖を豊りはじめたときは、てっぺんに着いたら全部話そうと決めていた。だが、てっぺんはもうすぐ
そこなのに、ぼくの心には 辻褄の合わない話の断片が敗らばっているばかりだ。
最後の岩を乗り越え、体を断崖の上に引きLげた。目の前には剥き出し の土地、風にえぐられた土地が広がり
、水平線上に見える青白い峰に向か って徐々に上っていっている。近くにはヘザーとマウンテングラスの群落
があるが、人のくるぶしより高いものはない。だが、奇妙なことに、なか ほどのところに林らしきものがあっ
て、吹きつける風にも平然として青々 とした木が立っている。どこかの神が、なんの気まぐれか、大森林の一
部 を指でつまみLげ、この荒涼の土地にどさりと置いたかのようだ。 急な作りで息が切れていたが、エド
ウィンは体を前に倒して走り出し た。あの木々こそ、ぼくがいるべき場所に違いない、と思った。あそこに
行けば何もかも思い出せる、と。どこか後ろのほうでウィスタンが何か討 っている。では、戦士もやっとてっ
ぺんにたどり着いたんだ。だが、エド ウィンは振り返らず、いっそう速く駆けた。あの木々に着くまで、告
白は 後回しだ。あの林に守られていてこそ、ぼくははっきり思い出せるし、風 の吠え声に邪魔されずに二人
だけの話ができる。
いきなり地面が立ち上がってきた。ぶつかって、うっと息が詰まった。あまりに意外な出来事に何がなんだか
わからずエドウィンはしばらくそこに寝転がっていた。また跳ね起きようとしたとき、何か柔らかくて強力な
ものに押さえつけられているのに気づいた。ウィスタンの膝が背中にあり、エドウィンは後ろ手に縛られてい
た。
「なぜロープを持ち運ぶのかと聞いていたな」とウィスタンが言った。
「ほら、役になっただろう?」 エドウィンは下の山道であったやり取りを思い出した。必要なものを二つの
袋に入れて運ぶことになり、戦士が鞍から袋への移し替えをやっていた。その偵屯な什事ぶりに、日ぃjく登
りたい一心のエドウィンがいらいらした。
「急ぎましょう、戦士さん。なぜそんなにいろいろなものがいるんですか」
「ほら、これを運んでくれ、同志。雌竜はただでさえ強敵だ。こっちが寒 さと空腹で弱れば、もっと強敵に
なる」
「でも、においが消えてしまいます。それに、ロープなんか必要ですか」
「必要になるかもしれないぞ、若き同志。山の木の枝に生るものではないからなI
そのロープはエドウィンの両手首を縛り、腰にも回されていた。ようやく立ち上がって前進を再開したとき、
エドウィンはロープの引きの許す速 度でしか進めなくなっていた。
「戦士さんは、もうぼくの友でも師匠でもないんですか」
「その両方だし、加えて君の保護者でもある。ここからはもっとゆっくり 進んでもらう」
実際に歩いてみると、ロープは気にならなかった。ロープに制限されるこの足取りは、駿馬の足取りと同じだ
と思った。そして、つい最近、ちょうどそんな動物になって荷車の周りをぐるぐる巡ったことを思い出した。
ローブに引き戻されながらこの斜面をめげずに上っていくぼくは、あのときと同じ駿馬だろうか、と思った。
エドウィンは引っ張りに引っ張り、ときには、つぎにロープに引き戻されるまでに五、六歩も進むことがあっ
た。耳で声が嗚っていた。わらべ歌を半分は歌い、半分は唱えていた懐かしい声、幼いころからよく知ってい
た声だ。聞いていると心が体まり、同時に気に障ったが、ロープを引っ張りながら一緒に歌うと、気に障る響
きが少しは消えるような気がした。
だから、エドウィンも歌った。最初は小声で、しだいに大胆に風に向かって歌った。
「エール入りのコップを倒しだのは誰、竜の尻尾を切り取ったのは 誰、手桶の中に蛇を入れたのは誰、それ
は君のいとこのアドニーさ]。
そのあとはエドウィンの知らない歌詞がつづく。だが、あの声と一緒に歌ってさえいれば、正しい歌詞が自然
に口を突いて出てくることに驚いた。木立はもう近い。戦士がふたたびエドウィンを引き戻した。
「ゆっくりだ、若き同志。この妙な木立に入るには、勇気だけでは足りない。あそこを見ろ。この標高なら松
の木があるのは不思議ではないが、横に立っているのはオークと楡ではないか」
「林にどんな木が生えようが、空にどんな鳥が飛ぼうが、いいじやありませんか、戦士さん。時間がないんで
す。急ぎましょう」
ニ人は木立の中に入った。足元で地面が変化した。柔らかい苔があり、蕁麻があり、羊歯までもあった。密な
枝葉は頭上で天蓋を造り、二人はしばらく灰色の薄明かりの中を進んだ。だが、結局、これは森ではない。な
ぜなら、すぐに目の前に空き地が現れ、そのhには丸く開けた空があった。エドウィンはふと考えた。これが
神の手になる木立だとしたら、その目的は、この先にあるものを木々で.覆い隠すことではなかろうか。そし
て、怒りを込めてロープを引っ張りながら言った。
「なぜぐずぐずしてるんです、戦士さん。もしかして怖いんですか」
「この場所をよく見ろ、若き同志。君の狩人の本能は期待どおりだった。いまわたしたちの目の前にあるこれ
は、まさしく竜の巣に迫いない」
「狩人はぼくですよ、戦士さん。そのぼくが違うと言っているでしょう。あの空き地には竜などいません。そ
のもっと先へ急がないと。先はまだ長 いんです」
「君の傷はどうだ、若き同志。きれいなままか、ちょっと見せてくれない か」
「傷なんてどうでもいいです。においが消えるんですよ、戦士さん。ロープを放して。あなたがどうでも、ぼ
くは走っていきますから」
それを受けてウィスタンがロープを放し、エドウィンはアザミや絡み合った艇を押し分けて進んだ。両手を縛
られたままで、体勢が乱れたとき手るいは思慮分別の足りない人ならで支えることができず、何度かバランス
を崩して転んだ。だが、傷を負うことなく空き地にたどり着くと、その縁に立って、目の前の光景を食い入る
ように見つめた。空き地の中火に池があった。全面が凍っていて、勇気ある人ならあと二歩ほどで渡りきれた
だろう。氷の表面はとても滑らかで、邪魔するものは、向こう岸の近くで水中から突き出ている枯れ木だけだ。
朽ちて空洞になっている。その木からさほど離れていない岸に大きな鬼がいた。鬼は水辺にしやがみ、両膝と
両肘を突いて、頭全体を水中に突っ込んでいた。たぶん、水を飲んでいたのだろう。それとも、水面下に何か
を探していたのだろうかそのとき急に水面が凍って、逃れられなかったのだろうか。不注意な観察者には、頭
のない鬼の死体と見えたかもしれない。喉の渇きを癒そうと這いつくばったとき首をはねられた。とか? 池
の上空から鬼に奇妙な光が射していた。エドウィンはしばらく鬼をながめながら、それがいまにも生き返り、
紅潮した不気味な顔をもたげるだろうと、半ば期待していた。そして目の瑞に入ってきたものに、ぎくりとし
た,向かい側右手の岸にも、まったく同じ姿勢の二匹目がいる,いや、そこにもいる。三匹目はエドウィンの
立つ側の岸に、羊歯にt分覆い隠さ れていた。
いつものエドウィンなら、鬼には嫌悪感しかない。だが、池の周りで死んでいる鬼たちには、不自然な姿勢の
どこかに哀れみを感じた。何が原因でこんな運命をたどったのだろう。鬼の近くに行ことしたが、そこでまた
ロープに引き戻された。すぐ後ろでウィスタンが言った。
「これでもまだ屯の巣ではないと、同志?」
「ここじやありません、戦士さん。もっと先へ行かないと」
「だが、この場所には何かがある。雌竜の巣ではないとしても、水を飲みにきたり、浴びたりする場所ではな
いのかI
「現われた場所です、戦士さん。戦いの場所じやありません。ここで戦っ たら、不運にしか見叫われません。
あの哀れな鬼たちを見てください。戦 士さんがあの晩に殺した悪鬼ほどもあるじやありませんか」
「何のことだ、少年」
「見えないんですか。ほら、あそこにも、こっちにも、こっちにも」
「エドウィン、君は疲れ切っている。恐れていたとおりだ。少し休もう。 確かにいやな感じの場所ではあるが、
風よけくらいにはなるだろう」
「休む? どこからそんな考えが出てくるんです。あの哀れな鬼たちを見 てください。呪われた場所でうろう
ろしてるから、あんなことになるんで す。あの鬼が教訓です、戦士さん」
「わたしにとっての教訓は、君の休息が第一、ということだ。君の心臓を 破裂させるわけにはいかない」
エドウィンは後ろに引かれ、背中が木の皮にぶつかるのを感じた。戦士 がエドウィンの周りをゆっくりと動き、
胸と肩の高さにロープを巻きつけ た。エドウィンはほとんど身動きできなくなった。
カズオ・イシグロ 『忘れられた巨人』
この項つづく
Chapter PartⅢ of the novel opens with Gawain’s First Reverie. Describe the contents of this section.
Why do you think Ishiguro chose to write this section in such an intimate perspective?
【ポストエネルギー革命序論 Ⅸ】
【再エネ産業の雇用 2018年世界で1100万人】
6月13日、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、世界の再エネ産業における雇用総数が2018年には、
1100万人に達したことを公表している。それによると、グローバルの再エネ産業全体で2017年比6.8%
増となる70万人の雇用が2018年に創出。中国など主要な再エネ市場における成長が鈍化したにもかかわらず、
再エネの雇用は過去最高の水準に成長。しかも、再エネのサプライチェーンの多様化により、供給側の地域に
も変化を指摘。具体的には、マレーシア、タイ、ベトナムなどの国々で2018年の再エネ分野の雇用の成長率が
高まり、世界全体で同分野の雇用におけるアジアのシェア80%の維持寄与。エネ産業の中でも、太陽光と風
力が2017年に引き続き最も力強く成長を牽引。太陽光は再エネの全雇用の3分の1となる360万人で、2018
年もトップの座を維持している。太陽光関連の雇用では、世界全体の雇用の90%近くとなる300万人分以
上をアジア諸国が占めたとし、特にインドと東南アジアで雇用が拡大した。アジア諸国以外では、南米のブラ
ジルで雇用が伸び、一方、中国、米国、日本、EU諸国では雇用が失われている。
❦ 世界全体の再エネ雇用1100万人のうち、太陽光は360万人と3分の1
❦ 電気自動車事業篇:VWに2年遅れのトヨタ、EV本格投入で30年規制に備え
6月7日、トヨタ自動車が、電気自動車(EV)専用プラットフォーム(PF)を開発する。2021年後半~22年
前半に量産するとみられ、出遅れるEVに本腰を入れた。EVとハイブリッド車(HEV)の“2本立て”で、厳し
くなる環境規制に臨む。電動化のコア技術は「モーター」「バッテリー「インバーター」の3つ。そのまま使
えば「EV」だが、ここに固有の技術を足すと様々なユニットになる。エンジンを組み合わせれば「ハイブリ
ッド(HEV)」、エンジンと充電機能を追加すれば「プラグインハイブリッド(PHV)」、フューエルセルと水
素燃料タンクを組み合わせれば「FCV」だ。トヨタの電動化技術は、1998年に登場した初代プリウス以降20
年以上の知財と実績を持つ。ちなみにトヨタは2030年までにEV、HEV、PHV、FCVなどの電動化車両の販売は年
間550万台と言う目標を掲げているが、それを実現するにはバッテリーの供給問題をクリアさせる必要があが、
パナソニックに加えて、中国のBYD、CATLとも提携、世界のバッテリー生産量トップ3とタッグを組む。
まずは超小型EVから展開
本格的なEV普及に向けてトヨタは、まず日本では、テスラのような高性能・高付加価値路線でも、日産リーフ
のようなオールラウンダーでもなく、EVのメリットが最も活きる小型/近距離用の「超小型EV」と「歩行領域
EV」を導入。超小型EVはiQをより先進的にしたデザインの2名乗車モデルで、全長 約2500×全幅 約1300×全
高 約1500mm、最高速は60km/h、航続距離は約100km。 一方、歩行領域EVは立ち乗りタイプ、座り乗りタイプ
車椅子連結タイプが用意されており、最高速は2/4/6/10km/hの切り替え式(10km/hは立ち乗りタイプのみ)で
航続距離は10~20kmだ。歩行領域モデルにはユーザーの後ろを自動追従する機能も付く。これらは昨今の高齢者
による事故で免許返納の声が叫ばれている中、「すべての人に移動の自由を」と言うスローガン。通常販売
だけでなくリースの活用、更にバッテリー耐久性向上によるリセールバリュー向上や中古車ビジネスなど、ユ
ーザーの負担をできるだけ抑える。
環境規制のクリア
環境規制には、大きく2種類ある。販売した車両の平均燃費で規制する「CAFE(企業別平均燃費基準)」とEV
や燃料電池車(FCV)の販売か生産を一定比率で求める「ZEV(ゼロエミッション車)規制」。トヨタは2030年
にかけて、ZEVよりCAFEがものすごく厳しくなる」(同社副社長の寺師茂樹氏)と見る。かねてEVはZEV規制
対応にとどめて、プラグインハイブリッド車(PHEV)を含むHEVがCAFE規制対応の主力と考えていた。だが今
後はEVの位置付けを高めて、EVとHEVの“2本立て”でCAFEに臨む方針である。特に意識するのが、2030年ま
でに乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量を2021年比で37.5%削減する欧州規制である。2019年3月に決まった。
現在の燃費を「ほぼ半分にする規制」で、生半可な対策で乗り切れない。トヨタが得意のHEVとPHEVだけでは、
対応しきれない可能性がある。
トヨタのe-TNGAは、VWのMEBと「基本思想は同じ」(トヨタ技術者)である。例えば電池を床下に配置し、全
車種で共通にする「固定部位」と、車種ごとに変えられる「変動部位」に分ける方針、なおe-TNGAの固定部位
は主に、前輪側モーターと後輪側モーター、運転席の位置、電池パックの幅などである。これに対して変動部
位は、全長や全幅、ホイールベースなど車両の外観に大きく関わる要素になる。基本思想が同じトヨタとVWの
PFで異なるのが、想定する車両の大きさである。なおe-TNGAの固定部位は主に、前輪側モーターと後輪側モー
ター、運転席の位置、電池パックの幅などである。これに対して変動部位は、全長や全幅、ホイールベースな
ど車両の外観に大きく関わる要素になる。EVの駆動形式は、電費性能を重視する車両はFF、走行性能をウリに
するときはRR、悪路走破性を重視する車両には4WDというのが、よくありそうな使い分けになる。FFにすると、
制動時の荷重は前輪側に多くかかるために、モーターによる回生電力を大きくしやすい。スポーツカーに使わ
れるRRは、旋回性能を高めやすい。4WDにすれば、雪道などで滑りにくくなる。一足先にEVの本格販売に舵を
切るVW。トヨタに先駆けた約2年間で、どれだけEV販売の牙城を築けるだろうか。また、日産は。プリン
ス(中島航空機→タマ電気自動車→タマ自動車)との合併によるエンジン・電気自動車の技術知財で先行して
いる。それとても資本調達力・営業力で克服できるかわからない(2年遅れのトヨタ、EV本格投入で30年規制
に備え PFはVWに似る、 日経 xTECH(クロステック20019.05.19))。
❦ 省エネ事業篇:直流給配電の導入
直流(DC)による配電や給電の導入例が世界的に急増している。その背景にあるのは、交流(AC)から直流に
切り替えれば、電力損失を削減できることにある。使用する条件によって違いはあるが、「10〜20%の損失削
減が可能」という。2019年5月20日〜23日に島根県松江市で開催されたDC(直流)マイクログリッド関連の国
際会議では、世界各地で進む、直流給電/配電の導入プロジェクトが数多く紹介れている。
北海道胆振東部地震を停電なしで乗り切る
日本から、データセンタ事業者さくらインターネットは、日本国内の3カ所にデータセンタを設置し、その1
つが北海道の石狩市(石狩データセンタ)にある。2018年9月6日の北海道胆振東部地震では大規模な停電が発
生したが、データセンタを止めることなく、送電再開まで乗り切れた。そこにDCマイクログリッドが大きく貢
献した事例を紹介。石狩データセンタは2011年に開設された。340Vや380Vといった直流電圧で給配電する
HVDC(High Voltage Direct Current)方式が採用されている。「HVDC方式を採用することで、交流方式に比べて
、変換効率を10〜20ポイント高められ、さらに構成部品を削減でき故障を減らせる。
オランダでは、すでに直流給電/直流配電の導入が始まっている。例えば、LED照明を使った街灯る。全長で
240kmもの道路に敷設済み。直流を使う最大のメリットはコストにある。構成部品は、交流用に比べると高い
が、システム構成を簡素化でき、全体的なコストを削減できる。交流を使う競合他社のシステムに比べるとコ
ストを20%削減を実現。また、サッカースタジアムや、トンネル、温室(グリーンハウス)、オフィスビル
などにも直流給電/直流配電を導入。サッカースタジアムを直流化するメリットは、電力の可用性を高められ
ることを挙げた。「サッカースタジアムで停電が発生すれば、試合ができなくなり、スポンサーや観客、主催
者などが大きな損失を被る。直流化すれば、停電の発生確率を限りなくゼロに近づけられる。
❦ 省エネ事業篇:世界初 超伝導ケーブル実証実験
電力損失を95%削減、工場への送電
NEDOと昭和電線ケーブルシステム、BASFジャパンが工場の省エネを目的とした超電導ケーブルシ
ステムの実証試験に取り組むことを公表。それによると、BASFジャパンの戸塚工場の敷地内で、低コスト超電
導ケーブルシステムの実証試験を実施する。民間プラントで実際の系統に三相同軸超電導ケーブルを適用した
実証試験は世界初。現在使われている電線には、金属(銅あるいはアルミニウム)が導体として使われており
その導体抵抗による発熱などにより送電ロスが発生してしまうため、さまざまな対策がなされてきた。その1
つの方法に抵抗の低い材料を導体に使用した送電ロス低減があり、以前から“抵抗ゼロ”の超電導体を使った
送電ケーブルによる、大幅な省エネルギー効果が期待されていた。しかし、超電導状態を維持するためには液
体窒素などで冷却し続ける必要があり、このエネルギーとコストが大きな課題だった。冷却コストを削減し、
省エネルギーによる経済効果を生み出すためには、ケーブル全体の冷却に必要なエネルギーを小さくし低コス
ト化ができる技術の開発が不可欠となっている。こうした背景から三者は、低コスト化が可能な三相同軸超電
導ケーブルシステムを開発し、実証試験を実施。
実証試験では既設6.6kVの系統の一部に長さ約250mの超電導ケーブルを設置し、プラント内の既存の冷熱の利
用により、超電導ケーブルの冷却に必要なエネルギーを大幅に削減することを目指す。今後、今年中に敷設工
事を行い、2020年2月に運転を開始する予定だ。この一連の試験によって民間のプラントでの敷設工法、運用
管理方法、省エネルギー効果などを検証し、今後の超電導ケーブルの実用化および普及につなげる。
●今夜の一曲
中島みゆき 「慕情」
竹内まりや もう一度