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靄晴れて君が問う木天蓼の花 

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6.雍 也 ようや
ことば-------------------------------------------------------------- 
力足らざる者は、中道にして廃す。いまなんじは画(かぎ)れり」(12)
「質、文に勝てば野。文、質に勝てば史。文質彬彬(びんびん)として、
然る後 に君子」(18)
「人の生くるや直し。これなくして生くるは、幸いにして免るるなり」(19)
「これを知る者はこれを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ
者 にしかず」(20) 「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ」(23)
 ------------------------------------------------------------------
5 孔子が魯の大臣であったとき、弟子の厚恩を自分の領地の
宰領者に任命し、これに俸給として米九百をあたえた。
厚恩が過分だと言って辞退すると、孔子は「まあ受け取ってお
きなさい。村の人たちに分けてやってもよいのだから」

〈原思〉 孔子の弟子。原は姓、名は憲、宇は子息。

子謂仲弓曰、犂牛之子、騂且角、雖欲勿用、山川其舎諸。

Confucius talked about Zhong Gong,
"If a crossbred bull have a red body and good horns, gods
must bless it even if people never offer it as a sacrifice."


靄晴れて君が問う木天蓼の花

軽井沢は温度差が大きいのか薄もやかかる道を散策していたが
日が差し込むほどになり木天蓼の花がそれは鮮やかに光って見
え瞬間(とき)、彼女があの花は何かしらと訊ねるので、木天
蓼の花とこたえると、頷きまた二人歩き出したその日の記憶が
蘇り、この句を詠む。マタタビの語源は疲れた旅人がこれを食
してまた旅に出たという故事に因みなずけられたとか。 

 

蔓は、若いうちは茶褐色で成長と共に黒っぽい紫がかった茶色
となり、葉は蔓状の枝に互生し長い葉柄があり2~7cm、形は
楕円形で細かい鋸歯を持つ。6~7月に径2cmほどの白い花を
咲かせ、雄株には雄蕊だけを持つ雄花を、両性株には雄蕊と雌
蕊を持った両性花をつける。花弁のない雌蕊だけの雌花をつけ
る雌株もあり、花をつけるつるの先端部の葉は、花期に白化し、
送粉昆虫を誘引するサインとか。近縁のミヤママタタビでは、
桃色に着色。実は、2~2.5 cmの細長い楕円形で晩秋にオレ
ンジ色に熟す。虫こぶの実(虫癭果)はマタタビミバエの産卵
により形成、正常な実が熟す前に落ちる。また、効果に個体差
があるものの、ネコ科の動物は揮発性のマタタビラクトンと総
称される臭気物質イリドミルメシン、アクチニジン、プレゴン
などに恍惚を感じることで知ら、イエネコがマタタビに強い反
応を示すさまから「猫に木天蓼」ということわざが生まれたと
いう。





【ポストエネルギー革命序論22】



※クリーンエネルギー基地は、太陽エネルギーで水の電気分解生成「グリーン水素」を製造。

豪州西部で再生可能水素と天然ガスを混合供給

オーストラリア政府は、再生可能な水素製造供給戦略を策定。
カナダのガス通信事業者ATCOの施設で、300kWの電力と400kWh
の蓄電能力の太陽電池パネルとマイクログリッドを備えており、
施設の1日の所要電力の2/5相当の太陽光発電システムでは、
余剰太陽光発電容量を部分的に蓄電され、残りを水電気分解装
置に電力供給し水素を製造に使用。その後、水素は保安発電機
用燃料として貯蔵され、または天然ガスに混合される。家電製
品を含むさまざまな設定条件と用途での水素の検証実験に加え、
クリーンエネルギー基地での水素貯蔵と配給問題のを最適化、
水素とを天然ガスの混合、送電網を支える均衡用水素燃料での
諸問題調査する。このプロジェクトは、オーストラリアの再生
可能エネルギー庁(ARENA)から150万ドルの資金助成された。
西豪州政府は、再生可能水素の主要生産国および輸出国として
位置付けるとともに、再生可能水素戦略を実行。現場での事業
支援の再生可能水素産業への民間からの投資促進に1000万ドル
の再生可能水素基金を設立している。



※上海の浦東地区で建設中の臨港松江科技都市の借用屋上太陽
 電池設備(15平方メートル)。

上海のラファエルギャラリで
ハンナー社製1メガワットモジュール公開

中国の薄膜メーカーのハンナー(Hanergy)は、CIGSモジュー
ルを上海で建設中の主要な「ハイテク都市」事業一環として計
画されている「スカイブリッジ」事業の15万平方メートルの屋
上に敷設計画を公表。ハンナー(漢能:Hanergy)は、上海の
浦東地区にあるいくつかの高層ビル群の屋上の建築事業として
太陽電池モジュールを含めた計画であることを公表。それによ
ると、モジュールは、20以上の高層ビルを結ぶ1.5キロメート
ルの「スカイブリッジ」でラファエルギャラリを覆うアルミニ
ウム製の屋上橋梁である。同社によれば、事業は「巨大な浮遊
雲」に似せ設計、世界最大のアルミニウム屋上の世界最長の「
都市型産業用屋根」となる。声明の中で、事業建設の第2段階
に入ったことを伝えた。中国の第13次5カ年計画の最優先事
項であり、ビル統合太陽電池の大規模用途、複数エネルギー源
のエネルギー統合、最適化に関するデータが提供される。

この太陽光発電設備は、1メガワットを超えるハンナーの125
ワットCIGSモジュールで構成。持続可能な建物の概念を世界的
に広める第一歩となる広告建造物である。尚、先週、ハンナー
は中国の南昌市の超高層ビルのファサードに敷設した460kW
の事業の完了を報じ、米国子会社のMiasolé社は フレキシブル
基板上のCIGS技術で新効率記録を樹立、太陽光発電を他の製品
の構造統合のさらなる可能性を開拓した。



ベルギー 義務として太陽光発電を建設

太陽光発電導入に芳しくない計画の第3ステージで、屋上市場
からの驚くべき設置数にもかかわらず、ベルギー政府は欧州共
同体2020年再生可能エネルギー転換目標の実績は低い。こ
のため、ベルギーはより多く再エネを必要とし、その結果、太
陽光発電が急増する見通しで、ベルギーの3つのマクロ地域で
の太陽光発電の展開は、すべて小規模過ぎたものの、10kW超
規模以外の設備であった。小規模セクタの優位性は衰え、最初
の大規模屋上事業や大規模地上設置型設備の発表、あるいは完
成が見込まれる。近い将来どの程度の成長が見込まれるかが不
明だが、PPAの価格設定の最初のベンチマークである大規模セ
グメントの可視欠如が問題となる一方で、サポートレベルでの
適切な太陽光発電がフランダースとベルギー競争が激しくなる
と伝える。

   

【続・引き寄せられる混沌Ⅹ:7040問題を考える】 

階級社会化が進む日本

前出の橋本健二は、『連鎖する貧困』(週刊東洋経済eビジネ
ス新書,2018.04.14)で日本社会は5つの階級───階級ビラ
ミッドの最上位は生産手段を所有し、労働者を使って事業を行
う「資本家階級」。大企業のオーナーや経営者などが入る。
254万人おり、就業人口の4・1%を占める。平均年収が
604万円と少ない印象 を受けるのは、零細企業の経営者も
含むからだ。その下の「新中間階級」は労働者や生産設備の管
理を行う人々で、管理職や上級事務職、医者、弁護士など専門
職で構成される。1285万人 (就業人口の20・6%)
おりへ平均年収は499万円,「旧中間階級」は少量の生産手
段を持ち、自分と家族が働いて生産活動を行う人々のこと。つ
まり自営業者と家族従業者だ。806万人(同1 2・9%)
いて、平均年収は303万円となっている。新中間階級の下に
あるのが「労働者階級」だ。労働力を資本家階級に提供し、賃
金を受け取る,戦後、農家の減少に伴い縮小してきた旧中間階
級に代わり、現在最も厚い層になった─--に分別する(下図)。  


最下層よりさらに下のアンダークラスが急増

資本主義社会においては労働者階級が最下層とされている。と
ころが橋本氏によると、労働者階級が二分され、新たな階級が
存在する。それが非正規労働者(パート主婦を除く)を中心と
する従来の階級以下の階級=「アンダークラス」だ。販売員や
非正規の事務職のほか、さまざまなサービス職やマニュアル職
で構成される。ほかの階級との格差は一目瞭然だ。正規労働者
の平均年収が370万円であるのに対し、アンダークラスは、
186万円と約半分にすぎず、貧困率は38・7%と断トツに
高い。人数は右府上がりで増加しており、2015年時点で、
929万人、就業人口の14・9%を占めるまでになった。心
身の状態にも差が見られる。アンダークラスの男性は平均身長・
体重が最も小さい。うつなどの診断や治療を受けたことがある
人の比率も高い。親しい家族や友人の数が少なく、社会的なつ
ながりも希薄だ。さらに日本社会の構造として浮かび上がって
いるのが階級の固定化だ。父親の階級が子どもに継承される傾
向の強さの指標であるオッズ比にそれが見て取れる。資本家階
級の子が資本家階級になる確率(①)と資本家階級以外の子が
資本家階級になる確率(②)に差がない場合にはオッズ比 1、
①のほうが高い場合には1より大きくなる。



どの階級も1より大きく、父親の出身階級を受け継ぎやすい。
特に資本家階級と労働者階級はオッズ比が上昇しており、その
傾向が高まっている。なお新中間階級の直近のオッズ比が低下
しているのは、70年代生まれの就職水所期世代の影響だ。正
社員になれずにフリーターになった人が少なくない。初幟でア
ンダークラスになると新中間階級に移動することは難しく、ア
ンダークラスのままか正規労働者や旧中間階級に移動した。足
元は企業が積極的に採用を行う売り手市場のため、状況が改善
している可能性はあるが、就職環境に左右されやすいため、今
後の動向を見通すのは難しい。根強い自己責任論は本人たちも
持っている。アンダークラスの増加を食い止める道のりは平坦
ではない。事態を複雑にしているのは、日本人の中に貧困に対
する「自己責任論」が根強いことだ。「貧困になったのは努力
しなかったからだ」と回答した人が、アンダークラスにも4割
弱いる。国政は自民党1強で、その支持者は自己責経論を肯定
し、所得の再分配政策に否定的な人が多い。ただしアンダーク
ラスの人たちが努力していないわけではない。週平均の労働時
間は約36時間と新中間階級(約43時間)や正規労働者(約
44時間)より少し短い程度。働いても低収入から抜け出せな
いワーキングプアなのだ。しかも現代社会の利便性や快適性は
アンダークラスの低賃金労働によって支えられている。貧困へ
の転落リスクはどの階級も抱えており、アンダークラスの増加
はひとごとではない。貧困の連鎖を断ち切るためには、アンダ
ークラスの待遇を改善する施策が不可欠だと指摘する。



わたしも賃金労働者だったけれど、企業内組合活動で世界最高
レベルの労働条件を獲得してきたし、賃金も組織労働者レベル
でもそれなりのレベルで、職場で仕事が見つけられなくなった
ら転職しようと考えていたから自己責任論者でもあり、リバタ
リアンや新自由主義の思想に親近感をもっていた(現在は批判
サイドに立つ)。また、子供達の教育は自由放任・自己責任を
貫いたが、いまでは、もっと濃密接すればかった悔やみ、社会
環境が大きく違うのだから彼らに自己獲得した価値観を押しつ
けたことを反省している。

最低賃金の引き上げがアンダークラスを款う

さて、橋本健二は、アンダークラスの増加を食い止めるための
施策とは何かとの問いに、資本主義社会には必ず階級が存在し、
「一億総中流」といわれていた時代の原因は高度成長で目立た
なかっただけで、資本家階級と労働者階級にさほど大きな格差
はなく、労働者階級でも大部分の人は安定雇用の下で、結婚し
子どもを育て、基本的には同じ耐久消費財を持ち、共通の消費
スタイルや文化を持っていたが、バブルの終わり頃から、新卒
でフリーターになってそのまま非正規であり続ける人々が生ま
れ、その規模が大きくなってきた。と、同時に階級間の格差も
拡大してきたこは先回に記述しているので省く。

Q:アンダークラスの登場は日本に限った話なのか。
A:先進国でほぼ共通に見られる現象といっていい。アンダー
クラスはもともと英米で使われ始めた言葉で、大都市部で生活
する少数民族の貧困層を指していた。ところが米国でも非正規
労働者層が拡大したり、あるいは解雇されやすくなったりて、
マジョリティの白人男性が貧困に陥っている。つまりアンダー
クラスは特殊な人々を指すのではなく、労働者階級の最下層部
分であるという見解が強まり、そういう言い方をしている。

Q:アンダークラスの増加に歯止めをかけられるか。  
A:2つある。1つは生活保護制度の整備。日本は生活保護が
機能不全の状態で、受給資格がある貧困層のうち、実際に受給
している人の比率(捕捉率)は、私の推計だと15%と異常に
低い,理由は財源の4分の1が自治体負担になっていること,
国の負担が100%になれば、自治体は財源を考える必要がな
くなり住民サービスとして積極的に貧困層を掘り起こすと思う。
資産チェックも厳しすぎる。(?自治体により異なる)低所得
世帯でも貯金を使い果たさないと受給できないのが実態(?不
正受給するものもいる)。もう1つは労働時間を短縮し正社員
の数を増やすこと。そうすれば非正規のかなりの部分が正社員
になり、貧困から脱出する。そうなるとこれまで低賃金だった
仕事や非正規の仕事も人手不足になって賃金が上昇することに
なる。

Q:生活保護制度を手厚くすると自己責任論が巻き起こるのは
A:格差の拡大は社会全体の不利益になることがさまざまな研
究で明らかになってきている。たとえば格差が大きい社会ほど
平均寿命が短くなる傾向かおる。貧困層が増大すると犯罪が増
え、精神的なストレスが高まることから、富裕層も含めて健康
状態が悪化する。こうした認識を広めないといけない。

Q:財源の問題はどうしますか。
A:金融資産に課税をしたほうがいいと思っている。不動産に
は固定資慶祝があるのに金融資産に課税されないのはおかしな
話だ。ただ、再分配に頼るとどうしても自己責任論者からの「
働け」という批判が強まる。非正規もきちんと働いているのだ
が、賃金が低すぎるため貧困に陥っている。それならば、最低
賃金を大幅に引き上げたほうがいい。日本の水準は先進国の中
で最低レベルだ。いくら単純労働や非熟練労働であろうと、生
活できる最低限の賃金は払うということが絶対に必要だ。親で
あれば子どもがフリーターになる恐怖を抱えている。ただ、最
低賃金で働いても大卒初任給ぐらいの水準になるのであれば、
それほど恐れる必要はなくなる。年金だけでは生活を維持でき
ない高齢者にとってもメリットだ。最低賃金が上がり生活保護
を利用する人が減るとなれば、合意を形成しやすい。

本来なら、「ネオ小市民化」した企業内労働組合が企業内最低
賃金などをしっかりと交渉し、総労働賃金低下を食い止めるべ
きころだが、わたし(たち)の経験からもそれは叶わないこと
もは予期できることであった。

アンダークラスに大打撃
切り下げられる生活保護費

低所得のアンダークラスの命を守る最後の砦が切り崩されてい
る。政府は生活保護費のうち食費や光熱費などの生活費分(生
活扶助費)を18年10月から段階的に下げ、3年かけて国費
を160億円削減する。生活保護世帯の67%が減額になる見
通しで、減額幅は最大5%に上る。中でも大きな影響を受ける
のが、子どもを複数抱える世帯と高齢者だ。子2人(中学生と
小学生)を持つ40代夫婦は月18・5万円から17・6万円
に、子2人(同)を持つ40代母子世帯は月15・5万円から
14・7万円に、高齢単身世帯は65歳の場合、月7・9万円
から7・5万円に減る(母子加算と児童養育加算を除いて計算)。
生活保護基準は総務省が行う全国消費生活実態調査の結果を参
照して、5年置きに見直されている。前回も13年度から3年
間にわたって段階的に引き下げられた。子2人の40代母子世
帯の場合、18年10月の引き下げも踏まえると、12年度比
で1割以上も下がることになる(フリーランスライター・みわ
よしこ )。



一方で子I人の30代母子世帯や50代夫婦世帯のように、今
回の見直しで引き上げになる世帯もある。が、12年度比では
どの世帯も切り下がるのが実態。また15年度には生活扶助に
含まれる冬季加算(寒冷地を中心とした暖房費など冬の出費増
加に対する加算)や住宅扶助も引き下げられたほか、生活保護
費を算出する際に多人数世帯でのスケールメリットを考慮する
ため用いられる係数が見直されるなど、目立ちにくい引き下げ
も多数行われてきた。引き下げの于定か公表されて以後、生活
保護世帯の人々からは、「もう節約の余地がない」「世の中か
ら死ねと言われているようだ」といった声が数多く聞かれる。

生活保護と連動する制度が47もある

影響を受けるのは、実は生活保護世帯だけではない。生活保護
の収入基準は個人住民税の非課税限度額の設定に使われている。
つまり、生活保護水準が下がると、住民税の非課税限度額も下
がって無税だった世帯が課税されたり、医療や介護、教育など
で低所得者向けの減免を受けられなくなったりする可能性かあ
る。こうした生活保護基準と連動する国の制度は47もあるう
え、地方自治体には独自の制度がある。政府は「できるかぎり
影響が及ばないように対応することを基本的な考え方」として
いるが、低所得層の不安はぬぐえないし、さらに現在、物議を
醸しているのが政府が提出した生活保護法の改正案。後発医薬
品の使用を原則とすることに関心が集まっているが、それ以外
に筆者が注視しているポイントは2つある。

1つ目は生活保護世帯の子どもへの進学支援だ。子どもの貧困
問題の解消は、政府の重点的な取り組みのIつとなっている。
現在の生活保護制度は子どもが高校卒業後に働くことが前提だ。
大学などに進学する場合には世帯分離して子どもを生活保護か
ら外し、家族の保護費を減らす。こうした事情もあり、生活保
護世帯の子どもは低学歴になりやすい,大学へ進学しても、生
活費や学費などは自らアルバイトで稼がないといけない。足り
ない分は日本学生支援機構の奨学金などを借り入れる必要があ
る。子どもたちは心身の負荷と不安に耐えながら苛酷な学生生
活を送っている。  

政府案には大学進学時に自宅通学で10万円、自宅外通学で3
0万円の一時金を給付する施策が盛り込まれている。また生活
保護法の改正とは直接関係ないが、日本学生支援機構が18年
度から最大月4万円の給付型奨学金をスタートするなど、子ど
もの貧困を解消するための施策は打ち出されている。ただ、高
校卒業後に働く前提は維持される見通しだ。世帯分離をして生
活費と学費を稼がないといけない状況の中では、一時金として
最大4万円をもらっても抜本的な改善にはらない。そのうえ、
生活保護世帯の親にとって喜べない話もある。  

現在は現金で給付されている学習支援費(小学生2630円~
高校生5150円)が10月から実費ベースの後払いとなる。
用途もクラブ活動と教科外活動に限定され、これまで認められ
ていた絵本代や参考書代には使えなくなる。「科学の好きなわ
が子に図鑑を買い与えたい」といった親の希望すらかなえられ
ないのだ。しかも申請が必要で、手続きが困難な事情を抱えた
親の子どもは、事実上の対象外になりかねない。政府案が実現
しても、生活保護世帯に生まれ育った子どもたちにとって、所
得の高い世帯と比べて勉強に打ち込む環境を得るのが難しい状
況は変わらず、貧困から脱却するのは容易ではない,野党6党
は18年3月29日、政府案に対抗する法案を共同で提出した。
政府案の意図を実現させず、生活保護基準および児童扶養手当
など関連する給付制度の引き下げに歯止めをかけることが狙い
だが、成立は不透明だ。

悪質性がない過誤受給も天引きに

2つ目は受け取りすぎた保護費(過誤受給)の「天引き」徴収。
生活保護費の返還には、生活保護法63条に基づく過誤受給の
「返還金」と78条に基づく不正受給の「徴収金」の2つがあ
る。徴収金は保護費からの天引きが認められているが、返返金
については本人の意思による返還が原則だ。ところが政府案で
は返還金も天引きが可能になる。たとえば福祉事務所の手返い
で少しだけ多く給付されていたにもかかわらず、返還を求めら
れ、保護費から天引きされる事態になったら、受給者の生活は
一気に苦しくなる。

さらなる懸念は、返還金が徴収金と同じように非免責債権にな
る可能性があることだ。現状、返還金は自己破産すると免責さ
れるが、天引きでは"なし崩し"で非免責として扱われかねない。
こうした諭理がまかり通るようになった場合、筆者が恐れる最
悪のシナリオの一つは日本学生支援機構の奨学金が非免責債権
になることだ。多額の奨学金を返還できず自己破産し、生活保
護を受給することになっても、保護費から天引きで回収される
となれば、まさに「人生が詰んだ」状態だろう。ちなみに米国
では教育ローンの多くが「政府からの助成金が財源になってい
る」という理由で非免責債権となっており、大学教育が低所得
層の人生設計を狂わせることの一因となっている。ナショナル
ミニマム(国民に保障される最低限の生活水準)である生活保
護水準を切り下けることが本当に正しいのか。貧困の連鎖を断
つうえでも、あらためて考える必要がある。

始まった無期転換ルール
非正規は款われるのか  

アンダークラスを構成する非正規労働者。低収入で不安定な立
場にいる彼らに政府も無策でいるわけではない。2018年4
月に開始されたのが無期転換ルールだ。これは改正労働契約法
18条によって契約社員やパート、派遣など有期雇用で通算5
年を超えて契約更新する有期社員が、希望すれば期間の定めの
ない無期雇用に転換できるという制度だ。転換対象者は約45
0万人と推計されている。総務省の労働力調査によれば非正規
労働者の数は2120万人(2018年2月)。全雇用者に占
める割合は4割に迫る。多くの会社にとって非正規労働者は戦
力として定着しているにもかかわらず、日本人材派遣協会の調
査によれば、3ヵ月以内の雇用契約が有期雇用派遣の8割を占
める。そこで08年のリーマンショックで雇い止めが社会問題
化されたのを機に、有期社員の雇用安定を図るための法改正が
行われた。

だが早くも暗雲が立ち込める。「正社員と同様の仕事を長年担
ってきたのに、突然雇い止めされた」。医薬品会社で事務職の
パートタイマーとして働いてきた50代の女性は話す。女性の
勤続年数は14年を超え、これまで19回の契約更新を繰り返
してきた。それが17年9月、契約期間の満了を理由として雇
い止めされた。
「最初は家計の足しになればと始めた仕事だったが、離婚を経
て生活のために働き続けたいと強く望むようになった」と女性
は言う。だが突如雇い止めされたのは、「『無期転換ルール』
が開始される前に切っておこうと会社が考えたためだろう」と
憤る。



人手不足の一方雇い止めも横行  

本来、多くの産業で空前の人手不足が深刻化している今ほど、
無期転換を進めやすい時期はないはず。有効求人倍率は急伸を
続けており、財務省の調査によると7割超の企業で人手不足感
があり、その要因として「採用が進まない」ことが真っ先に挙
げられている。研究機関や経営者団体の調査でも、6割前後の
企業が無期転換に積極的な姿勢を見せている。ところが労働組
合などが実施した電話相談では、先の女性のように長年働いて
きた有期社員から雇い止めに関する案件が相次いでいる。NP
O法人派遣労働ネットワークと全国ユニオンが1月下旬に実施
したホットラインには、2日間で109件の相談が寄せられ、
そのうち約半数が雇い止めを通告されたというものだった。「
雇い止めに当たって、経営悪化など具体的理由を挙げているケ
ースはまれ。むしろ無期転換ルールを回避するためなど、脱法
意図を明らかにしているほうが目立った」と、担当した全国ユ
ニオンの関口達矢事務局長は語る。勤続年数も5年以上と長期
にわたっている人からの相談が約半数だった。「その後も相談
は多数寄せられている。勤続20年ぐらいの人が雇い止めされ
たケースもある」(同),ハードルが高い無期雇用派遣有期社
員のうち派遣社員に間しては、この4月に続いて9月以降にも
大きな制度転換が生じる。有期雇用派遣の期間制限ルールの変
更だ。15年9月末の改正労働者派遣法施行によって、すべて
の有期雇用派遣は最長3年に制限された。それ以降も同一の派
遣社員を同一組織で受け入れ続けるには、自社で直諭雇用する
か、派遣会社がスタッフを無期雇用(無期雇用派遣)すること
が必要となった。この影響が特に大きいのは事務系の派遣社員
たち。改正法以前の派遣制度は業務内容で派遣期間を区分して
おり、事務用機器操作や秘書など事務系派遣の多くは「専門2
6業務」として期間制限がなかった。このため事務職は比較的
長く同じ派遣会社から同じ職場に派遣されていた人が多く、あ
る製造業大手の人事部長によれば、現場では自社経験が豊富で
優秀な人材を活用し続けたいので、無期雇用派遣への転換を望
む声が強いという。だが転換する場合、「派遣料金は今の3割
増になると言われた。この水 準ではとても受け入れられない」
と話す。今回の法改正はどれも有期社員の安定雇用を目指した
ものだが。今後も反作用の雇い止めが広がる懸念は小さくない,
無期転換ルールによってアンダークラスが消滅に向かう見込み
は薄そうだと報告している。  
               
            週刊東洋経済編集『連鎖する貧困』

                     この項つづく 
                                       

 


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