10 先 進 せんしん
----------------------------------------------------------------
「顔淵死す。子曰く、『ああ、天われを喪ぼせり。天われを喪ぼせり』」(9)
「いまだ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」(12)
「過ぎたるは、なお及ばざるごとし」(16)
「道をもって君に沢え、不可なれば止む」(24)
「なんぞ必ずしも書を読みて、然る後に学ぶとなさんや」(25)
-----------------------------------------------------------------
21.言論が充実しているというだけでは、真の君子であるか、見せかけ
の偽君子であるか、区別がつない。(孔子)
子曰、論篤是與、君子者乎、色莊者乎 子曰わく(論の篤きに是(これ)与
すれば、君子者か、色荘者か)。
Confucius said, "You cannot distinguish between true gentlemen and
superficial gentlemen by their eloquent speech."
新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)描論
新コロナウイルスのパンデミック(及び地域的メルトダウン含)宣言を忙
中閑的にブログで掲載していったが、わたし(たち)は、この件で余りに
無知・無力・混乱にあり、これを整理・整頓する必要がある。
新型インフルエンザの想定は過去の経験を踏まえて作っていますが、
第一波は8週間程度続き、社会の中に免疫を持つ人が増えていって
一度終息します。その数カ月後に第二波が来るとみているのは、し
ばらくすると人の往来で免疫を持っている人の割合が社会の中で変
わるからです。
ミレニアルズも知っておきたい 新型コロナウイル
ス、流行期に備えたいこと (telling, 2020.02.24)
全世界での感染者は7万人を超え、死者は約2000人となった(2月19日現
在)。当初、ウイルスは自然発生と報道されていたが、ここにきて、武
漢にある研究所からの流出疑惑が持ち上がる。中国・武漢市に世界トッ
プレベルのウイルス研究所「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」
がある。この研究所が備える最新鋭の設備の1つが、BSL4(バイオセー
フティーレベル4実験室。実験室では、SARSやエボラ出血熱のような、
感染力が強くて危険なウイルスのコントロールも可能で、洪水の被害が
及ばない場所に設置され、マグニチュード7の揺れにも耐えうるという。
しかしいま、この研究所から新型コロナウイルスが流出したのではない
かという疑惑が持ち上がっている。1月末、インド・デリー大学とイン
ド理工学院に所属する研究者たちがまとめた「新型コロナウイルスにエ
イズウイルスと不自然な類似点がある」とする論文が物議をかもす。さ
らにこの研究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられな
い」と。この論文は大バッシングののちに撤回されたが、一部のネット
ユーザーの間で内容が拡散。「新型コロナウイルスはSARSウイルスとエ
イズウイルスを武漢ウイルス研究所が人工的に合成したものでは」とい
う憶測も飛び交い、不安が高まり、1月28日、ハーバード大学公衆衛生
学教授のエリック・ファイグルーディン博士が自身のツイッターで「武
漢市の海鮮市場はウイルスの発生源ではない」と発信。たちまち世界中
のメディアで取り上げられる。
2月6日、中国メディア『大紀元』は、オンラインゲーム開発会社の会
長が自身のSNSで「武漢の研究所が新型コロナウイルスの発生源」と発言
したと報じている。この人物は、かつて中国の生物学者が動物実験で使
った牛や豚を食肉業者などに転売していた事件があったことから、新型
コロナウイルスに感染した動物が市場で売られたのではないかと疑う。
現在、中国版Googleともいわれる検索サイト「百度」で「武漢病毒研究
所」と検索すると、検索候補に「泄露(漏洩)」という文字が。疑惑は
広まる。過去にも“ヒューマンエラー”が起きる。2004年、北京にある
BSL3の要件を満たす実験室から、SARSウイルスが流出する事件が発生し、
責任者が処罰されており、中国メディアの報道などによると、研究員が
BSL3実験室からSARSウイルスを持ち出し、一般の実験室で研究をしたこ
とで感染が広まている。この頃、研究所からのウイルス流出や実験動物
のずさんな管理が問題----動物実験ではウイルスを動物に感染させたり
するのですが、実験が終わったらウイルスを不活化、無害化させる処理
をしなければいけない----が、処理が完璧ではない状態でゴミ箱に捨て
たり、外に廃棄したりしたことからSARSウイルスの感染が拡大したとい
われている。
武漢ではコウモリに宿るウイルスの研究
冒頭の最新ウイルス研究施設は、新型コロナウイルスの発生源とされる華
南海鮮市場から約30km離れた場所にあり、世界有数のウイルス研究所を擁
するフランスの技術協力を得て完成。SARS事件があったのと同じ2004年頃
から研究所の整備計画が始まり、2015年に竣工し、2018年から稼働(元産
経新聞北京特派員の福島香織、「新型コロナウイルス 「研究所から流出」
説の真偽を追う|NEWSポストセブン」、2020.02.20)。今回疑惑を向けら
れている武漢ウイルス研究所のBSL4実験室の評価は高かく、中国メディア
『財新』は、この実験室のチームが2017年に、複数のコウモリを起源とす
るSARS型コロナウイルスが変異したものがSARSウイルスであることを突き
止めたと報じた。チームリーダーでBSL4実験室副主任の女性研究者は「コ
ウモリ女傑」とも呼ばれている、そのコウモリの実験で発生したウイルス
が華南海鮮市場に流出した可能性を件の女性研究者は、SNSで一連の疑惑
を否定----新型コロナウイルスと研究所は無関係であることを私は命をか
けて保証する----という内容の投稿。中国メディア『財経』も、仮に実験
室から流出したら研究スタッフが真っ先に感染するはずと疑惑を打ち消し
ている。医学誌『ランセット』に中国の医師たちが寄稿した分析によると、
新型コロナウイルスの患者41人を調べ、発生源とされる華南海鮮市場に関
係しているのは27人。最も早い昨年12月1日に入院した初期患者4人のうち、
3人が市場とは無関係であったが、中国当局もSARS の経験を教訓に厳しく
取り締まってきたが緩くなり、武漢では堂々とヤミ市場が開かれている。
違法だからこそ希少価値が出て、野生動物の値段が上がる風潮は、拝金性
行下では当然と考えられ、いまも違法野生動物のヤミ市場は開かれ、武漢
でないところでもウイルスが出てもおかしくない状況にある。
1月27日、香港大学医学院は、新型コロナウイルスの感染者は約1週間
ごとに倍増しており、4~5月頃にピークを迎え、夏頃までに減退していく
と予測。ただ、ひと段落着いたとしても安心はできない。7月24日から
東京五輪が始まり、今年だけで世界中から3600万人もの人が訪日(予想)。
一旦収束したように見えても知らぬ間に感染し、それをまた本国に持ち帰
る人がいてもおかしくなく、本当のパンデミックは夏以降にやってくるか
もしれない(昭和大学医学部二木芳人教授)。また、今回、武漢の研究所
から流出したわけではなかったとしても、今後流出が起こらないとは限ら
ないと、感染症の専門医の指摘を引用しこの記事は結でいる(2020年2月
20日付 NEWSポストセブン)。
✔参考「新型コロナ、武漢「美人すぎる39歳の研究所長」が握る発生の謎
(2020年2月18日付 現代ビジネス)
✔参考「Coronavirus Bioweapon - How China Stole Coronavirus From
Canada And Weaponized It:コロナウイルス生物兵器-中国がカナダか
らコロナウイルスを盗み、兵器化した方法」、(2020年2月17日付 Great
GameIndia):概要:昨年、カナダからのコロナウイルスの密輸が謎の貨物
として発見された。本件はカナダの研究室で働いている中国のエージェン
トに由来する。
✔参考「White House asks scientists to investigate origins of co-
ronavirus:ホワイトハウスは科学者にコロナウイルスの起源を調査する
よう依頼」(2020年2月7日付 abc NEWS)
新型コロナ、インフルやエボラと比べた危険度
単純ではない感染症のリスクの比較、図とともに解説
中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスは、世界中で4万人以
上の感染者を出していが、この新しいウイルスは、他の感染症ウイルスよ
りも危険なのだろうか? おそらく多くの人が気にしている。感染症が流
行するたびに、こうした話題が持ち上がるのも無理はない。衛生当局も一
般市民も、公衆への総合的なリスクに基づいて自らの優先順位を決定。例
えば、世界保健機関(WHO)は 2月5日、流行発生からわずか1カ月余りの
新型コロナウイルス対策に、6億7500万ドル(約740億円)を支出する計画
を立ち上げ、加盟国に資金援助を要請。それに対して、2018年8月からア
フリカ中央部で猛威を振るっているエボラ熱の対策費用に関しては、WHO
が加盟国から集めた金額は、この3分の1ほど。 こうした感染症の危険
度を互いに比較するには、複雑な計算が必要。感染のしやすさ、致死率、
症状の重さ、地域の封鎖に伴う社会的・経済的な影響の大きさなどを勘
案することになる(参考:「新型肺炎、封鎖された武漢で一体何が起き
ているのか」)。単純に致死率を比較するだけでは、どれが最悪の感染症
かを判断しがたい場合もある。例えばインフルエンザは、従来型のもので
あれH1N1のような新型のものであれ、感染者は何百万人にも上りうるが、
死亡に至る割合は比較的低く、そのうち0.1%ほど。対して、SARS(重症急
性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、そして今回の新型コロナ
ウイルス感染症「COVID―19」は、致死率の点でははるかに深刻で、SARS
は致死率が10%ほどに上ったが、感染が確認されたのはわずか8000 例ほど
だった。現時点で、新型コロナウイルスの感染者数はSARSを大きく上回わ
る。そのうち死亡に至るのは2%ほど。致死率でいえばインフルエンザの
20倍ほどとなる。新型ウイルスの脅威は早期に終息するだろうと予測する
科学者もいる一方、中東で2012年から流行が続いているMERSではそうなっ
ていない。
中国東部、浙江省の中央部に位置する永康市は「中国ハードウェアの都」
と呼ばれている。市内約1万あるとされる工場では、ロボットのアーム
や自動車部品、家電製品など、年間40億ドル相当の製品が日々生産さ
れ世界中へ輸出される。少なくとも、中国で新型コロナウイルスが発生す
る前は、それが永康の日常。新型肺炎患者の4分の3は、ウイルスが発生
した湖北省に集中し、感染拡大を防ぐためにここ3週間は全国的に交通が
規制され、出稼ぎ労働者の移動に影響が出ている。特に、永康のように製
造業に大きく依存する地域では、被害は深刻だ。金融リスク管理会社ムー
ディーズ・アナリティクスは、中国のGDPがコロナウイルスによって1%、
約1410億ドル減少すると予測。同社は、調理器具などを製造する小さな工
場で、永康での感染確定例はまだ5例にとどまる、浙江省全体では1131人
の感染を確認。これは、中国で3番目に多い数字。世界保健機関は、この
新型コロナウイルスを「SARS-CoV-2」と命名(参考:「新型コロナ、イン
フルやエボラと比べた危険度は」)。工場は春節明けに生産を再開するは
ずだったが、感染拡大を受けて中央政府は全国的に春節休暇を延長。その
延長期間ももうすぐ終了するが、出稼ぎ労働者が戻ってこない、すぐに工
場を再開させるのは難しいと懸念する。
天然ガスは期待したほどクリーンでなかった
カーボンニュートラルへの橋渡 過大評価なのか
2015年、ベンジャミン・フミエル研究チームは、グリーンランドの氷床に
深い穴を開け、氷のサンプルを掘り出し、大気中のメタンのうち、天然ガ
スや石油といった化石燃料産業から排出された量はどれくらいかを計測調
査(メタンは、最も強力な温室効果ガスの1つである(参考:「石油・ガ
ス産業が直面するメタン問題」)。これまでは、大気中に毎年放出される
メタンの約10%が、火山などの地質学的発生源に由来すると考えられ
ていた、2月19日付けの論文によると、自然に放出される地質由来のメ
タンの割合は、それよりも大幅に少ないことを示す。その分、産業由来
の排出量が従来の推定より多い。今回の論文では、化石燃料由来のメタ
ン排出量は最大40%も少なく見積もられていた。件の研究者によると、
石油や天然ガスの生産が、これまでの推定よりも多量の温室効果ガスを
排出。つまり、化石燃料由来聞部分は、思ったより大きいが、人類が制
御可能なものでもある(参考「木がメタンガスを放出、温暖化の一因、
証拠続々」)。 強力な温室効果ガスであるメタンは、炭素44つの水素
が結合した分子、特に熱を吸収しやすく、メタンが大気中に熱を閉じ込め
る効果は、20年間のタイムスケールで比べると二酸化炭素(CO2)のおよ
そ90倍に上り、長期的な地球温暖化の鍵を握っていると大気中のメタン
濃度は、産業革命以前に比べ、少なくとも2.5倍に増加。温室効果が強
力なため、大気中のメタン濃度が高くなるほど、地球の気温上昇を国際的
な目標以下に抑えるのが難しくなる(参考:「パリ協定の目標を達成でき
る国はわずか、報告書」)。メタンの由来をめぐる謎は、世界中の科学者
を何十年も悩ませ、今の温暖化を引き起こしている過剰なメタンは、正確
にはどこから来たか。ウシのげっぷや水田から発生したものか、それとも
石油や天然ガスを生産する際に漏れたものか、あるいは泥火山や断層、プ
レート境界から吹き出したものなのだろうか(参考:「温暖化に朗報かメ
タン排出少ないウシの秘密解明」)過去数十年で、CO2排出量の削減要求が
高まったのに加え、水圧破砕法(フラッキング)などの技術を使って安価
に天然ガスを回収できるようにり、米国では2010年以降、500カ所を超え
る石炭火力発電所が閉鎖。多くの場合、天然ガス(メタンガスが主成分)
を燃料とする火力発電所に転換され、現在、米国のエネルギー需要の40
%近く賄う。メタンは石炭よりCO2や大気汚染物質の排出が少ない。また、
大気中に留まる時間もCO2よりはるかに短い。そのため天然ガスは、CO2の
排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」社会へ円滑に転換の「
橋渡し燃料」とよく言われる。つまり、再生可能エネルギーやCO2排出量を
実質マイナスにする「カーボンネガティブ」の技術が発達するまでの間を
天然ガス火力発電でつなぐという発想。そこで問題となるのは、天然ガス
が本当に橋渡しになり、非常に長く使われることになるのか、という点で、
市場の動向を見ると、おそらく長期間になると考えられている。天然ガス
は気候への負荷が低いとされるのは、他のエネルギー源よりも炭素排出が
少ないという基本的な仮定がある。だが近年、天然ガスが生産工程でどれ
だけ失われるかを調べ、その仮定に疑念が浮上(参考:「天然ガス、CO2
排出量の削減効果低い」)。生産工程での漏出や損失が数%未満と非常に
少なければ、天然ガスの炭素排出量は他のエネルギー源と比べて同等以下
になる。そこが天然ガスの「損益分岐点」だ。だが、「漏出率」がガス回
収量全体の約1%を超えた段階で、炭素排出が本当に少ないか、はっきり
したことは言えなくなる。最新論文によると、天然ガス生産工程における
ガスの漏出率は、全米平均で2%超になることが示され、また、米国の主
要採掘地域にある特定の「スーパー排出源」を調べた別の論文では、漏出
率はさらに高いことが示されている。メタンが橋渡しになるという議論は
すべて水泡に帰す。もし議論をふりだしに戻して、それでもしばらくの間
は天然ガスが必要だと言うのなら、それはメタンの損益分岐点次第となり、
現在はその値が不明にあると件の研究者たちは話す。これまでは、地質に
由来する「天然メタン」の量推定に、特定の泥火山などからのメタン放出
量を慎重に測定し、それを元に地球全体での放出量を計算してきた。この
方法ではほとんどの場合、地質由来の天然メタンの放出量は年間約5000万
トンと推定され、メタンの年間総排出量の約10%となる一方、化石燃料
の採掘や燃焼によるメタンの年間排出量は、最近の推定によると2億トン
弱となるが、地質由来のメタンは実際にはもっと少ないのではないかと疑
っていた。この疑念について調査するのに適した場所を探し、広大で平坦
なグリーンランド氷床であることを突き止め、地下100メートル超にある
氷には、1800年代の産業革命以前の大気に含まれていたメタンが、小さな
気泡の内部に閉じ込められている。同研究チームは重さ900キロを超える氷
を掘り出し、氷に閉じ込められた気泡からメタンを含む空気を収集。
含まれている放射性炭素の違いにより、自然の地質由来のメタンは、湿地
などの他の発生源からのメタンと区別できる。250年前の氷から採取した
メタンには、地質由来のものはごく微量にしか含まれていなかった。また、
このサンプルは産業革命以前のものであるため、化石燃料由来のメタンの
痕跡は検出されなかった。これに対し、産業革命が始まった後のサンプル
からは、化石燃料の動かぬ証拠が見つかった。だが、重要な発見は、氷に
含まれていた地質由来のメタンの少なさだ。化石燃料に依存するようにな
る前は、地質由来のメタンの年間放出量が、わずか500万トン程度にすぎ
なかったのである。地質由来の量がこれほどの短期間で変化するとは考え
にくいため、この推定値は現在に当てはめても妥当な仮定である。
極めて重大なのは、その量が、これまでの推定値より1桁も少ないこと。
従来の推定値は、米環境保護局や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
などが、科学的評価や政策決定を行う際に用いていたもので、毎年大気中
に放出される全メタン量は、昔から正確にわかっており、約5億7000万ト
ンだという数字は変わらない。したがって、自然の地質由来のメタン量が
はるかに少ないならば、他の放出源がその差を埋めなければならない。最
も可能性が高いのが、石油や天然ガスの産業だということも、今回の論文
は示す。石油や天然ガス由来のメタンが、これまでの推定よりもはるかに
大量に排出されていたのだとしたら、天然ガスの使用量を減らすことはも
ちろん、生産工程で無駄に失われるガスをなくすことで、排出量を削減で
きるということでもあると考えており、現在、風力や太陽光と天然ガスの
どちらに注力すべきかで悩んでいる電力会社は、もし天然ガスを選択する
のなら、発電所を今後何十年も運用することになる点を理解すべきだと指
摘する。それでも決定を変えないだろうか。10年、20年、30年、40年後の
メタン排出量にも影響を及ぼすというのに」(参考:「発電所、CO2目標
を達成するにはすでに多すぎ、研究」)。
古いメタン源は現代の気候温暖化にそれほど影響しない
新しい研究によると、融解する永久凍土や北極氷床の下から、古代に貯蔵
されたメタンが大気中に放出されても、将来の気候温暖化に及ぼす影響は
これまで考えられていたほど大きくなく、むしろ、現行の活動で排出され
る温室効果ガスのほうが、近い将来に及ぼす影響は大きいという。メタン
(CH4)は、地球温暖化の原因となりうる強力な温室効果ガスであり、二
酸化炭素の何倍も強力である。現在、CH4排出量全体に占める自然放出の
割合は40%程度である。しかし、古い低温のCH4が、永久凍土のように
気候に敏感な蓄積域の中や、氷床の下の水和物として、大量に閉じ込めら
れている。地球温暖化が続いていることから、数千年前に貯蔵されたこう
したCH4が大気中に放出され、将来急激な温暖化を引き起こす可能性があ
る。しかし、こうしたメタン源の気候に対する感度や全体的な影響はまだ
解明されていないため、気候変動の予測はさらに不確実になる。Michael
Dionyisiusらは、最終退氷期(現代とほぼ同じように大気が温暖化した期
間)に、こうした古い炭素源が気候に及ぼした影響を調査した。南極の氷
床コア内に閉じこめられた小さな気泡を用いて、Dionyisiusらは最終氷期
末期の大気における、古い、つまり「放射性炭素が枯渇した」CH4を測定
した。著者らは、古い炭素貯蔵域から排出されたCH4は少なく、この期間
における大気中CH4の大部分は、新しい有機物の分解や燃焼といった当時
の発生源に由来することを見出した。この結果から、将来温暖化に反応し
て排出される古いCH4は、これまで考えられていたほど多くない可能性が
示唆される。興味深いことに、著者らは産業革命前の完新世に排出された
バイオマス燃焼由来のCH4が、今日の排出量に匹敵することを見出した。
この研究成果は、現代のCH4排出量が低く見積もられていることや、まだ
知られていない双方向の人為的影響が現代の燃焼活動に及んでいることを
示唆している。関連するPerspectiveでは、Joshua Deanがこの研究成果
について詳しく論じている。
【ポストエネルギー革命序論144】
全固体電池複合電極充放電の電位分布変化を連続可視化
充放電反応に伴う電位分布の変化を連続的に可視化することに初めて成功。
従来は反応開始前と終了後しか観測できなかった電極内の充放電反応機構
の微視的理解が進むことで、全固体リチウムイオン二次電池の性能を向上
させる新たなデバイス設計指針の獲得につながると期待される。
【要点】
①全固体リチウムイオン二次電池の複合電極において、充放電反応に伴う
電位分布の変化を連続的に可視化することに初めて成功しました。従来は
反応開始前と終了後しか観測できなかった電極内の充放電反応機構の微視
的理解が進むことで、全固体リチウムイオン二次電池の性能を向上させる
新たなデバイス設計指針の獲得につながると期待される。
②全固体リチウムイオン二次電池の複合電極において、充放電反応に伴う
電位分布の変化を連続的に可視化することに初めて成功。従来は反応開始
前と終了後しか観測できなかった電極内の充放電反応機構の微視的理解が
進むことで、全固体リチウムイオン二次電池の性能を向上させる新たなデ
バイス設計指針の獲得につながると期待される。
③今回、研究チームは、これまでに開発した断面試料作製技術とケルビン
プローブフォース顕微鏡技術に電気化学測定系を組み込むことで、動作中
の電池の内部電位変化を連続的に可視化する技術を開発。さらに、この手
法を用いて、実際の全固体リチウムイオン二次電池の複合正極で進行する
充放電反応の様子を観察した結果、充電反応は集電体側から負極側不均一
に進行していくのに対し、放電反応は複合正極全体で均一に進むことが分
かった。これは、充電過程では複合正極中で電子伝導ネットワークがうま
く形成されていないことを示す。
④この手法は、従来の電気化学測定では困難だった電池性能の劣化原因の
詳細な解析など、様々な電池評価技術への応用ができる。今後、電池開発
の現場において、電池の高性能化に向けた電池設計・構造制御指針を得る
ための重要な技術として利用されることが期待される。
⑤本研究は国立研究開発法人物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点
表面物性計測グループらの研究チームによって行われた。
【世界の工芸:#CraftsOfTheWorld#YaichiKusube】
楠部 彌弌 KUSUBE, Yaichi
池畔暮色
Flower vase entitiled "Twilight by a pond"
23.2(h)×14.2(d)cm
楠部 彌弌(1897年(明治30年)9月10日 - 1984年(昭和59年)12月18日)
は、陶芸家。京都市東山区生まれ。本名は彌一。作風は多技多彩で知られ
る。特に彩埏と名付けた釉下彩磁は独自のものである。また京焼の伝統を
踏まえた色絵は優美と言われる。作風は多技多彩で知られる。特に彩埏と
名付けた釉下彩磁は独自のもの。また京焼の伝統を踏まえた色絵は優美と
評される。明治45年京都市立陶磁器試験場付属伝習所に入所、同期生に八
木一艸がいた。大正4年卒業、家業を継がせたい父の意志に反し、東山の
粟田山にアトリエを構え創作陶芸を始める。7年粟田口の古窯元跡の工房
に移り本格的に陶芸を始めると共に河井寛次郎、黒田辰秋、川上拙以、池
田遥邨、向井潤吉らと交流を深める。国画創作協会の活動にも刺激され、
9年八木一艸、河村己多良(喜多郎)ら5人と「赤土」を結成、陶芸を生活
工芸から芸術へ高めるべく運動を始める。第1回展を大阪で開催し4回ま
で続けるが、12年同会は自然消滅。13年パリ万博に「百仏飾壷」を出品し
受賞、一方木喰の展覧会準備を通じて柳宗悦を知り、「劃華兎文小皿」(13
年)「鉄絵牡丹花瓶」(14年)など民芸運動の影響を示す作品を作る。しかし
まもなくこの運動からも離れ、昭和2年八木一艸らと新たに「耀々会」を
結成、また同年工芸部が新設された第8回帝展に「葡萄文花瓶」が入選。
8年第14回帝展で「青華甜瓜文繍文菱花式龍耳花瓶」が特選を受賞しこの
年彌一を彌弌と改名。翌年帝展無鑑査となり、この頃朝鮮の古陶磁や仁清
などの研究に没頭する。12年パリ万博で「色絵飾壷」が受賞、この年の第
1回新文展に後年楠部芸術を特色づける「彩埏」の技法を用いた「黄磁堆
埏群鹿花瓶」を出品する。彩埏は釉薬を磁土に混ぜ何度も塗り重ねること
で独特の深い色あいを生むものである。戦後一時日展改革要求が容れられ
ず京都工芸作家団体連合展を組織(23年)、日展をボイコットしたことがあ
ったが、26年第7回日展「白磁四方花瓶」が芸術選奨文部大臣賞を受賞。
28年京都の若手陶芸家達を中心に青陶会を結成し指導にあたると共に伊東
陶山らと搏埴会を結成。同年の第9回日展出品作「慶夏花瓶」により翌29
年日本芸術院賞を受賞、37年日本芸術院会員となる。また中国古来の彩色
法を研究しながら早蕨釉、蒼釉(碧玉釉)などの発色法を考案し、「早蕨釉
花瓶」(37年第1回現代工芸美術家協会展)「萼花瓶」(44年第1回改組日展)
などを発表する。27年日展参事となって以後33年評議員、37年理事、44年
常務理事、48年顧問、また54年日本新工芸家連盟を結成。44年京都市文化
功労者、47年毎日芸術賞、文化功労者、50年京都市名誉市民、53年文化勲
章を受章。晩年は彩埏に一層の洗練を加え、52年パリ装飾美術館で「日本
の美・彩埏の至芸楠部彌弌展」が開催された。『楠部彌弌作品集』(43年
中央公論美術出版)『楠部彌弌展』(46年毎日新聞社)『楠部彌弌展』(52年
講談社)『楠部彌弌』(56年集英社)など。