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ポストプーチンと国連改革

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Best of Best 近江高, ありがとう近江高.⚾

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん 」



【ポストエネルギー革命序論 420: アフターコロナ時代 230】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」




● 世界最薄級のリニア振動モータ
3月16日、日本電産株式会社が世界最薄のリニア振動モータ「Slider」
を開発。市販されているスマートフォンやスマートウォッチの多くに
は振動モータが搭載されており、以前は偏心モータによる単純な振動
で着信を知らせることが主な目的であったが、近年では振動を制御す
ることで「ボタンを押す感覚」や「ゲームプレイ映像に合わせたリア
ル振動演出できる機能」が付加され、デジタル端末の没入感や臨場感
の向上に必要不可欠となっている。同社の「Slider」には、世界トッ
プシェアを持つHDD用スピンドル用モータ設計で培った磁気回路設計技
術を応用、従来品と同等の振動強度を維持しつつも、必要体積を40%
削減、厚さ 2mmと世界最薄クラスを達成。これによりデジタル端末の
さらなる小型化・薄型化を可能にした。 
 スマートフォン用振動用モータの累計出荷台数が2020年末時点で3
億台を超えており、軽薄短小技術、高効率化技術、制御技術により生
み出される製品はユーザから高い評価をえており、世界No.1の総合モ
ータ・メーカとして快適な社会づくりに貢献する革新的なソリューシ
ョンを提案していくとのこと。主な仕様は、定格電圧が2.0Vrm、共振
周波数と振動量は190Hzで1.00Grmsおよび、240Hzで1.20Grmsとなってい
る。立ち上がり時間(0~50%)は30ミリ秒、定格電流は最大220mArms、
抵抗は9.2Ω、消費電力は440mW。


● テラヘルツ光を電流に変換する原理を発見
⫸ 量子位相効果を用いた格子振動による光起電力効果の実証
3月30日、東京大学と理化学研究所は,強誘電体として最もよく知
られているBaTiO3(チタン酸バリウム)において,テラヘルツ光照射
によるフォノン生成から生じる光電流の観測に成功。
【要点】
1.強誘電体のフォノン(格子振動)の共鳴を用いたテラヘルツ領域
 の光起電力効果の観測に成功
2.量子力学的な位相効果を介することで、電子励起を介さない、全
 く新しい光起電力効果の機構の実証に成功
3.テラヘルツ・赤外領域における革新的な光検出デバイスの開発の
 進展が期待できる


光起電力効果とは光照射することで物質中に電流・電圧が生じる効果
であり、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。例
えば一般的に普及している太陽光発電ではp-n接合を利用したデバ
イスを用いることで光起電力効果を実現。自発的に電気分極を持つ強
誘電体において生じる「バルク光起電力効果」が光起電力効果の新た
な原理として注目され、盛んに研究されるようになってきた。しかし、
既存の光起電力効果のほとんどは、 半導体や絶縁体の電子遷移を介す
るため原理的に可視光などの高いエネルギー領域に限られていた。こ
のため、低エネルギーの光に対する 光起電力効果は困難であると考え
られていた。
 同研究グループは、強誘電体として最もよく知られている BaTi
O3(チタン酸バリウム)において、 テラヘルツ帯での光起電力効果
の実証を行い、テラヘルツ帯は将来の通信などへの応用が期待される
帯域ではあるものの、光検出などの基盤技術は発展途上。強誘電体に
は、テラヘルツ光と強く相互作用するフォノンの共鳴が存在すること
が知られている。この研究では、テラヘルツ光照射によるフォノン生
成から生じる光電流の観測に成功。この現象は、一般的には電子遷移
が不可欠と考えらえてきた光起電力効果の概念を覆すもので、可視光
の千分の一程度の光のエネルギーで発電が可能であることが示されて
いるとのこと。さらに、理論モデルを構築し第一原理計算を行うこと
で、今回観測した光起電力効果において量子力学的な位相効果が重要
な役割を果たしていることを見いだした。
【展望】
固体中に存在するさまざまな励起状態が一般的に光起電力効果を示す
ことを示唆。これにより今まで実現が難しいと考えられていたあらゆ
る帯域の光起電力効果の実現と、それを利用した新しい光デバイスの
開発へとつながっていくことが期待されている。➲全ての光をエネ
ルギー変換!できるかもしれない。



図7.PLIDおよびPLIEの動作を説明する照明下でのSn-HPフィルムの反
応性の図
NaBH4(レドックスメカニズム)の役割は、HP表面からのガス脱着によ
るヨウ素の損失を防ぐために重要。これは、光誘起トラップ形成の抑
制につながる。同じ行で、DipIパッシベーションは、表面へのI2の移
動と、それに続くバルク欠陥の形成を回避して、表面/バルクの不均衡
を補償する。FASnI3のFAIおよびSnI4への分解プロセスをトリガーする
I2の制御。長期的なデバイスの安定性を拡張にも劇的である。⮛

● 1,300時間以上の動作安定!スズペロブスカイト太陽電池
 3月30日、スペインはジャウメ一世大学の研究グループは、これま
で最高の安定性を備えた スズ(Sn)ペロブスカイト太陽電池を開発。
太陽光発電で最も有望成果をえているが、 スズ-ペロブスカイト系太
陽電池は、性能を大幅制限する2つ課題があり、電荷再結合プロセス
による開回路電圧の低下と限定された動作寿命は、最大電力点(MPP)
条件で1,000時間に達しない、これら2つの欠点は Sn(Ⅱ)から酸化
されるスズ固有傾向に密接に関連。課題は、これらのハンディキャッ
プが この材料ファミリーの克服できない固有の制限に対応するかどう
か、または逆に、関与する光電気化学メカニズムと 悪用をより深く理
解することでこれらの弱点を克服できるかであり、 機能性向上できる
添加剤の調整にある、動作中の発光ダイオード(LED)。発光材料とし
てPEA 2SnI4 で作製。太陽電池はヨウ化ホルムアミジニウムスズ(FASnI3)、
還元剤として水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、および ヨウ化ジプロ
ピルアンモニウム(DipI)として知られる小さなサイズのかさばる 二
次アンモニウムカチオンで構築。「NaBH4の還元特性は、溶液処理中に
Sn(Ⅱ)がSn(Ⅳ)に酸化するのを防ぐ役割を果たす。


図3 光起電力性能
(A)チャンピオンFASnI3 + DipI+NaBH4デバイスのJ-V曲線のFスキャン
  とRスキャン。挿入図は、デバイスの概略構成を示す。
(B)平均的な動作を表すFASnI3デバイス(さまざまな添加剤を使用し
  た場合と使用しない場合)のJ-V曲線のFスキャン。表S6を参照。 3
  日間の光浸漬処理後に測定されたJ-V曲線

 これにより、膜の結晶化が促進され、結晶欠陥の数が最小限に抑えら
れると同研究グループは解説。両方の添加剤を使用すると相乗効果が
得られ、10.61%の効率が得られ、優れた安定性が得られることがわか
った。セルは、1,300時間後に初期効率の約96%を維持できた。同グル
ープの戦略により、FASnI 3ベースのデバイスを再現性の高い方法で準
備し、これまでに報告されていない長期的な安定性レベルに到達する
ことができる。さらに、このデバイスは比較的安価で豊富な材料で、
また溶液処理法により低コストな技術実装を実現する戦略でもある。


図式2.デバイス製造手順ステップの概略図
【参考文献】
Title:Tin perovskite solar cells with >1,300 h of operational stability in N2 thr-
ough a synergistic chemical engineering approach: Joule. March 14, 2022



● Beyond 5Gに向けたアレイアンテナ電気光学ポリマー光変調器
     ⮚ 2022.3.9 OPTRONICS ONLINE オプトロニクスオンライン

□ はじめに
  無線信号波形を光ファイバーを用いて光信号として伝送する光ファ
イバー無線(Radio-over-Fiber)の技術が、Beyond 5Gにおける超高速・
大容量の無線通信の実現に向けて注目されている。図1のごとく、フ
ァイバー無線の技術に基づくBeyond5Gで想定される信号変換の模式図
が示されている。光ファイバーにて構成されるモバイルフロントホー
ルにおける一部無線区間の送受信アンテナ部分や、端末との間で無線
信号の送受信を行うリモートアンテナ部分において,光信号と無線信
号の相互変換を行う技術が必要となる。
  光信号から無線信号への変換に関しては,単一走行キャリアフォト
ダイオード(Uni-Traveling-Carrier Photodiode:UTC-PD)などの技術が
有望であり,光信号から無線信号への直接変換が実現されている。し
かしながら,これらの方法は,機構が複雑であるとともに現状では装
置サイズが大きく,高コストであるなどの課題もある。このような背
景の下,著者らは,高性能な2次非線形光学材料である有機電気光学
(EO)ポリマーに着目することで,電気信号への変換を介することな
く,無線信号から光信号への直接変換する無線-光信号変換デバイス
の研究開発を行っている。

 EOポリマーは,大きなEO係数(r33)を有するとともに,屈折率を考
慮した光変調の性能指数(n3r)がニオブ酸リチウム(LiNbO3)などと
比較して大きくなりうる。また、無機非線形光学結晶では、 結晶格子
振動によるテラヘルツ波(0.1-10 THz)の吸収損失のために使用可能
なテラヘルツ領域が制限されるのに対し、アモルファス材料であるEO
ポリマーは,テラヘルツ領域の広範囲で吸収係数が比較的小さいこと
から数百GHz以上の高周波での利用が可能である。また,EOポリマーは,
スピンコートによる成膜が可能であり非線形光学結晶材料と比較して
成膜性に優れるとともに、ドライエッチングなどの一般的な微細加工
プロセスを用いた加工が可能であることから、量産化に向けたデバイ
ス開発の面でも利点を有する。
 EOポリマーを用いることで無線-光信号直接変換デバイスの実現が
期待できるものの,EO分子を配向させるポーリングと呼ばれるプロセ
スが必要であることが,これまでデバイス作製を困難にしていた。そ
こで,著者らは,予めポーリングを行ったEOポリマー膜を転写する技
術を開発することで,EOポリマーとシクロオレフィンポリマー(COP)
などのテラヘルツ波低吸収損失材料を組み合わせたデバイス作製を可
能とした。
 さらに,EOポリマー膜の転写技術を用いることで,パッチアンテナ
アレイを有するEOポリマー光変調器(無線-光信号変換デバイス)の
研究開発を進めている。本稿では,これらの内容について紹介する。


図2.転写法による電気光学(EO)ポリマーデバイスの作製プロセス;
(a)下部電極,EOポリマー層,上部電極の形成,(b)EOポリマー層
のポーリング (c)上部電極の除去 (d)(e)EOポリマー層の転写

□ EOポリマーの転写技術
EOポリマーが2次非線形光学効果を発揮するためには,EOポリマー中
に含まれるEO分子を配向させるポーリングと呼ばれるプロセスが必須
である。そのため,従来のEOポリマーを用いたデバイス作製プロセス
では,EOポリマー層と導電性のクラッド層,およびポーリング電極が
配置されたデバイス構造を先に作製し,電極間に電圧を印加すること
でEOポリマーのポーリングが行われていた。
 しかしながら,この方法では,ポーリング電極の配置に自由度がな
いなどデバイス構造に制約があることに加え,導電性クラッド材料に
よるテラヘルツ波の吸収損失などの問題があり,高効率かつ低損失な
デバイス作製が困難であった。著者らは,予めポーリングを行ったEO
ポリマー膜を材料基板上へ転写するという独自のプロセス技術を開発し,
EOポリマーを用いたテラヘルツデバイスの作製を可能にする。
 上の図2にその転写法のデバイス作製プロセス概要を図示。下部電
極上にEOポリマー溶液を塗布し,熱アニール処理後,上部電極の形成
を行う。その後,EOポリマーをガラス転移温度付近まで加熱した状態
で電極間に電圧を印加することでポーリングを行った。さらに,上部
電極を除去し,COP基板上へEOポリマー膜を転写・接合。この方法を用
いることで,従来方法では作製が困難であったCOPとEOポリマーを組み
合わせデバイスの作製を実現した。

※ ポーリングとは:

□ 無線-光信号変換デバイス
 

図3 パッチアレイアンテナを有するEOポリマー光変調器の(a)模式
  図,(b)断面模式図,(c)デバイスの外観,(d)顕微鏡画像

 

図4.(a)100 GHz電磁波照射時の出力光の光スペクトラム,(b)キャ
リアサイドバンド比の周波数依存性

               (中略)
□ 展望
 実際の無線通信の適用には,光変調効率のさらなる向上が必要であ
るが,デバイス構造と材料の面で改良を進めていく。転写法を用いた
デバイス作製では,従来方法の場合と比較してデバイス構造の制約が
少なく,設計による改良の余地は大きい。また,EOポリマー材料とポ
ーリング方法を最適化することで,EO係数のさらなる向上も期待でき
る。
✔ 5G超世代の通信技術に向けての研究開発の現場レポートとして勉
強させて頂いた。開発の戦略・総合力とそれを担保するヒト・モノ・カ
ネ(特に人材)が問われていることを再確認、面白い。






⛨ オミクロン別系統、5割突破 置き換わり進む 都検査
▶ 2022.3.31 JIJI.COM
東京都は31日、新型コロナの変異株に関する都の検査で、感染力がよ
り強いとされるオミクロン株の別系統「BA.2」疑い例の割合が5割を
超えたと発表。8~14日の1週間では全検体中39.6%だったのに対し、
15~21日では52.3%に増加。主流だったBA.1からの置き換わりが進
んでいる。 



【ウイルス解体新書 112】



序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学 
第9節 感染予防・検査・治療
9-2 ワクチン
9-3-2 万能ワクチン
1 現状
ワクチンとは病原性を除去したり、弱めたりしたウイルスや細菌など
を体内に入れて、病気に対する免疫をつけたり、免疫を強くしたりす
るもの。その効果としては、
(1)集団免疫効果(接種していない人にも波及する効果)を含む感染
  予防(感染者が減少)、
(2)発症予防(発症者が減少)、
(3)重症化予防(死亡・入院などの重症患者が減少)
  以上、3つある。(via 広報誌「厚生労働」2020年11月号)

2.スパイクフェリチンナノ粒子(SpFN)COVID-19ワクチン
【背景】認可および承認されたSARS-CoV-2ワクチンの初期の成功にか
かわらず、強力な細胞性および体液性免疫応答を誘発できる改良され
たワクチンは、進行中のCOVID-19パンデミックと戦うために依然とし
て不可欠です。ここで、ジョイス等が、SARS-CoV-2スパイクタンパク
質フェリチンナノ粒子(SpFN)ワクチンを開発。2回分のSpFNとアジ
ュバントを28日間隔で接種した非ヒト霊長類は、強力なSARS-CoV-2特
異的BおよびT細胞応答を示し、SARS-CoV-2チャレンジに対する防御を
もたらした。ワクチン接種された動物から分離された血清は、デルタ
変異株を含むいくつかの懸念される変異株を中和した。一緒に、これ
らのデータは、このアジュバント添加SpFNワクチンのさらなる開発を
支援する。

【要約】重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異体
の出現は、コロナウイルス病2019に対する幅広い防御をもたらす次世
代ワクチンの継続的な必要性を強調しています。非ヒト霊長類におけ
るアジュバント添加SARS-CoV-2スパイクフェリチンナノ粒子(SpFN)
ワクチンを開発および評価。SARS-CoV-1に対して高用量(50μg)の
SpFNワクチンを28日間隔で2回投与により、Tヘルパー細胞1(TH1)に
偏ったCD4 TH応答が誘導され、SARS-CoV-2野生型および懸念される変
異体に対する中和抗体も誘導された。これらの強力な体液性および細
胞性免疫応答は、高用量のSARS-CoV-2呼吸チャレンジ後、上気道およ
び下気道における複製ウイルスおよび非ヒト霊長類の肺実質の急速な
排除に変換されました。SpFNワクチン接種によって誘発された免疫応
答とその結果としての非ヒト霊長類の有効性は、SARSを引き起こすベ
ータコロナウイルスのワクチン候補としてのSpFNの有用性を裏付けて
いる。

図1.SpFNワクチン接種は、アカゲザルの結合および中和抗体反応を
誘発。(AおよびB)動物に0週目と4週目に5または50μgのSpFN、また
は4週目にのみ50μgのSpFNをワクチン接種した。対照動物にはPBSを与
えた。血清検体は、エレクトロケミルミネッセンスベースの多重免疫
プラットフォーム(A)およびSARS-CoV-2シュードウイルス中和(B)
により、ワクチン接種後2週間ごとおよびウイルスチャレンジ後1?2週
間ごとにSARS-CoV-2スパイクタンパク質特異的IgGについて評価された。
 データは、IgG結合のミリリットルあたりのAUおよびウイルス中和の
逆数50%阻害希釈(ID50)としてそれぞれ示されている。太い線は各
グループ内の幾何平均を示し、細い線は個々の動物を表す。 (C)本
物のウイルス中和も最後のワクチン接種から4週間後に評価され、最大
有効濃度の半分(EC50)の逆数として表す。 (D)最後のワクチン接
種から4週間後に収集された血清サンプルが、ACE2受容体のRBDへの結
合を阻害する能力を測定し、(A)と同様に1ミリリットルあたりのAU
で報告。 (E)偽ウイルス中和活性を、ヒト回復期血清サンプルのパ
ネルと比較した(n = 41サンプル)。箱ひげ図では、水平線は幾何平
均(対数変換されたデータの算術平均)を示し、上部と下部は最小値と
最大値を反映している。シンボルは個々の動物を表し、制約されてい
る場合は等しい値で互いに重なる。有意性は、クラスカル・ウォリス
検定とそれに続く事後ダン検定を使用して評価された。 α=0.05での
統計的に有意な差のみが示される。

【関係論文】
・A SARS-CoV-2 ferritin nanoparticle vaccine elicits protective immune res-
   ponses in nonhuman primates,Science Translational Medicine 16 Dec  2021 ,
   Vol 14, Issue 632 , DOI: 10.1126/scitranslmed.abi5735

9-3 治療薬
9-4 万能治療法・技術・薬剤
9-4-1 現状


1.すべての変異型を逃さない新型コロナウイルス感染症治療薬候補の
  開発 ⮚ 2022.6.21 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
【概要】京都府立医科大学らの研究グループは、新型コロナウイルス
が感染する際の受容体であるACE2タンパク質を改変してウイルスとの
結合力を 約100倍にまで高め、抗体製剤と同等の治療効果を持つウイ
ルス中和タンパク質(改変ACE2受容体)を開発。この改変ACE2受容体
は抗体製剤等を用いた治療で懸念されるウイルス変異株による治療効
果の減弱が起こらない大きな利点をもつ。今年に入り感染拡大の原因
となったイギリス株(N501Y変異)や免疫逃避型系統株(E484K変異)
に対しても有効で、直近の検討では今後広がりが懸念されるインド株
(L452R変異)に対しても効果が確認。またウイルスが変異により改
変ACE2受容体から逃避した場合、その変異ウイルスは細胞表面のACE2
タンパク質にも結合できず細胞侵入を果たせなくなる。そのため将来
にわたり本受容体に対する逃避変異株が生じる心配がなく、新型コロ
ナウイルス感染症が克服されるまで使い続けることができる。


【要点】
1.新型コロナウイルスの感染受容体であるACE2タンパク質を指向性
 進化法と呼ばれるタンパク質工学的手法により改変し、ウイルスと
 の親和性を約100倍高めることに成功した。
2.この高親和性ACE2を用いた中和タンパク質(改変ACE2受容体)は
 ハムスターの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)モデルにおい
 て高い治療効果を示した。
3.中和抗体などの抗体製剤は薬剤耐性をきたす逃避変異が問題とな
 なるが、本改変ACE2受容体は、新型コロナウイルスの感染受容体で
 あるACE2タンパク質を用いているため、逃避変異株の出現は観察さ
 れず、感染症を克服するまで使い続けることができる。
4.改変ACE2受容体は、これまでに問題となってきた感染力が強いN
 501Y変異や免疫逃避型E484Kを持つ変異株に対しても良好な中和活
 性を示す。
【内容】
□ 指向性進化法による高親和性ACE2の開発
 今回採用した、受容体の細胞外領域をヒト免疫グロブリンIgG1の重
鎖定常領域(Fc領域(注3))と繋げた融合タンパク製剤は、既に関
節リウマチ等の治療薬として実用化されています。しかし、ACE2の場
合は新型コロナウイルスとの結合力がそれほど強くなく、通常のタン
パク製剤の血中濃度では有効な中和活性を示さない。指向性進化法と
呼ばれるタンパク質工学的手法を用い、①増幅エラーが入りやすい核
酸増幅法でACE2遺伝子にランダム変異を導入し、約10万種類のACE2変
異体ライブラリを作製。②このライブラリを発現した細胞に新型コロ
ナウイルスのスパイク(S)タンパク質を反応させて、強く結合した
ACE2変異体発現細胞を回収し、高親和性ACE2変異体の遺伝子を抽出。
③その後、この変異体遺伝子に再度10万種類のランダム変異を追加し
たライブラリを作製し、そこからさらに高親和性の変異体遺伝子を抽
出た。今回はこのサイクルを3回繰り返すことで、野生型ACE2タンパ
ク質よりウイルスとの結合力が約100倍亢進した高親和性ACE2を3種類
取得することに成功した(図1)。

図1.ランダム変異導入と高親和性ACE2変異体選択による指向性進化
法の概念図
□ 高親和性ACE2の結合力とウイルス中和活性
□ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ハムスターモデルにおけ
 る治療効果➲COVID-19モデル動物実験はハムスターを用いて行う。
 鼻粘膜にウイルスを感染させた後に改変ACE2受容体を投与し、体重
 変化と肺炎所見を評価。ウイルス感染により対照群では体重が4.3%
 低下したが、改変ACE2受容体投与治療群では7.3%増加し、非ウイ
 ルス投与群(非感染対照群)と同等まで回復(図2A)。また肺組織
 のウイルス量も10分の1程度まで抑制され(図2B)、CT画像でもウ
 イルス投与により広範囲にすりガラス陰影が出現するのに対し、治
 療群では陰影が顕著に減少していました(図2C)。また、肺病理組
 織では治療群で肺胞出血や炎症細胞浸潤が少なく、肺炎の重症化も
 抑制された。

図2.COVID-19ハムスターモデルにおける改変ACE2受容体の治療効果
A:感染後のハムスターの体重変化。
B:肺組織のウイルスタイターとRNAゲノムコピー数。
C:CT画像。感染対照群で認めるすりガラス陰影は改変ACE2受容体を投
 与した治療群で抑制されている。
D:肺病理所見。感染対照群では肺胞出血や炎症細胞浸潤が顕著だが、
 治療群では著明に抑制されている。

□ 逃避変異抵抗性と変異株への有効性
新型コロナウイルスの感染受容体ACE2に基づく改変ACE2受容体では、
ウイルスが変異により改変ACE2受容体に結合しなくなった場合、細
胞表面のACE2とも結合できずに感染力を失うことになる。そのため実
質的に逃避変異が生じないと考えられる。この仮説を、ウイルスに対
する耐性株が出現しやすくなる評価系(改変ACE2受容体を部分的有効
濃度にして新型コロナウイルスの培養を繰り返す)を用いて確認した。
コントロールとして用いたモノクローナル抗体(中和抗体)では、4
継代目で完全に耐性株に置換されたが、改変ACE2受容体では15継代を
経ても耐性株は出現せず、実際に逃避変異が出現しないことが確認で
きた また現在脅威となっているウイルス変異株に関しては、感染力
が強いN501Y変異をもつイギリス株(WHO分類:α株)に対しても有効
で、ワクチンや一部のモノクローナル抗体が効きにくい免疫逃避型
E484K変異をもつ南アフリカ株(WHO分類:β株)に対して、現在米国
で使用が許可されているリジェネロン社のREGN10933抗体は中和活性
の大きな低下を認めたが、改変ACE2受容体では中和活性が良好に維持
された(図3)。

図3.ウイルス変異株に対する中和活性;改変ACE2受容体と抗体製剤
(REGN10933)における各種変異株に対する中和活性
【展望】抗体製剤と同等の中和活性を有し、かつ逃避変異に抵抗性で
ある高親和性ACE2変異体の作出が可能であることが証明。今回のACE2
変異体では、ウイルスのスパイク(S)タンパク質との複合体の立体構
造の決定にも成功し、高親和性獲得のメカニズムが明らかにできただ
けでなく、体内寿命が長い安定なタンパク質製剤をデザインするヒン
トも得られた。今回の指向性進化法による高親和性ACE2変異体の作出
は1か月程度で可能で、また抗体製剤とは異なり患者検体を必要とし
ない利点もあります。今回のCOVID-19だけでなく将来の新たなウイル
スパンデミックにおいても、薬剤耐性株出現の懸念なく迅速な治療薬
開発が可能な新規モダリティとして期待できる。

第2章 COVID-19パンデミックとは何だったのか
終 章 パンデミック戦略「後手の先」




書籍:大豆と人間の歴史
著者:クリスティン・デュボワ
【内容概説】
人類が初めて手にした戦略作物・大豆。その始まりは、日本が支配し
た満州大豆帝国だった。サラダ油から工業用インク、肥料・飼料、食
品・産業素材として広く使われ、南北アメリカからアフリカまで、世
界中で膨大な量が栽培・取引される大豆。大豆が人間社会に投げかけ
る光と影、グローバル・ビジネスと社会・環境被害の実態をあますと
ころなく描く。
--------------------------------------------------------------
第8章 毒か万能薬か

  GMO表示は義務か必要ないか 
 情報の広がりを阻害しようとする企業側に消費者が苛立つというの
はじつに理屈の通る話だ。QRコードでは用が足りず、楽し気な農家
や、柔らかい太陽光の下の牧歌的な緑と黄金色の収穫の畑を映した広
告は、非常につまらない情報源なのだ。しかし消費者がGE反対の運
動家たちに対しても同様のいら立ちを感じるのもまた当然なのだ。こ
うした運動家たちはしばしば重大な科学的詳細をすっと通り越して、
リスクをごちゃまぜにし、政治的に中立な多くの科学者から繰り返し
批判を受けている研究手法で行った、ごくわずかな数の研究を自信満
々で無批判に引用するからだ。
 たとえば、2016年、子どもの食品リスクに関するウェブサイトのト
ップには「食品アレルギーを定義する」という表現があった。そこを
クリックすると医学的に証明されたアレルギーについてまったく議論
をしないで、GE技術だけについて焦点を合わせたページが出てきた。
このページはオーストラリアのエンドウマメの実験を引用していたが、
豆の遺伝子組み換えが実験用マウスに何らかの特別な免疫反応を引き
起こしたかどうか、後日の研究が疑義を唱えていることについては言
及がなかった。またこのウェブサイトではその他3件のGM食品に関
する研究について、多数の専門家がその三研究ともいい加減な科学的
手法によって正しい結果を出していないと徹底的に非難しているにも
かかわらず、あたかも市民の懸念を呼ぶだけの強力な理由を提示して
いるかのように述べていた。その後、ウェブサイトは人々の注意を引
きつける画像を更新し、研究よりも報道記事を多く掲載したが、行動
指針は、GEアレルゲンは「今やアメリカの食料供給の中に入ってき
ている」と、証明もされていない主張を声高に宣言し続けているので
ある。

 遺伝子組み換え食品議論のアイロニー
 科学的研究を否定したりあるいは表面的にだけ適用したりする姿勢
にとって、非科学的だと言って気候変動の問題と同様に重大な問題だ。
強力なGE養護者の中には気候変動を強力に否定する人もいるし、非
科学的だと言って気候変動を否定する人を非難する左隣に科学的な厳
密さがほとんどないままにGE技術に意見する人がいることには、あ
きれはてる。一人の研究者が研究成果を発表したからという理由だけ
では何の役にも立たないのである。科学というのは研究の「プロセス」
であって、一人の特別な専門家でも一研究でもない。大きな科学的認
識に至るためには、異なる研究所が取った数値による苦労の多い調査
研究、何百万時間もの努力、厳格な査読、議論、考察、修正とデータ
集積の繰り返し、それから大量の証拠をもとに意見を出し合う膨大な
数の研究者だちとの合意を経なければならないのだ。自分の数少ない
研究に言及するほんの一握りの研究者ではないのである。
 抽象的な概念として「科学」は尊重されている。しかし、科学的プ
ロセスの厳格さが無視されていることはあまりに多い。この二分法は
遺伝子組み換えに間する議論の両サイドにアイロニーを生みだしてい
る。たとえばフランケンシュタインとGM食品との間の類似性には重
要なアイロニーが合まれている。メアリー・シェリーの小説では、こ
の怪物は孤独な生き物で、彼を作りだした人物も社会も彼を否定した
ために、凶暴になったのだ。人類は彼のことを不快で、自然に反する
存在と見て、彼は危険であると考え、彼を軽蔑したのだ。彼の持って
いるかもしれない価値について調べることもせず、彼が社会に何らか
の貢献をするチャンスも与えなかったのだ。したがって、受け入れら
れることでどんな行動が期待されているのかを理解して、行動を緩和
させるといった一連の体験もなかった。彼は思慮深い評価も効果的な
規制も受けることがなかった。したがって、フランケンシュタインの
話は、この遺伝子技術を、自然に反する(実際にはそうではない)と
いう推測をもとに、自動的に危険だとして、即座に拒否するGE反対
運動家のメタファーと言ってもいい。彼らは、全否定は強硬な押し返
しを招き、バイオテクノロジーの企業は規制に対していっそう敵意を
持つようになるという教訓を学んでいない。

   jp.Wikipedia

  しかし、政府からすでに十二分に監督を受けているバイオテクノロ
ジー企業側の主張にもアイロニーがあるのだ。確かに、2002~2012年
では、市場に出まわっているGM食品を食用に摂取しても実際の危険
は現れていないというのが、およそ 770の科学的研究から出た一致し
た意見だ。GE技術は今のところ有効だ。しかし、これからも常にそ
うなのか。
 企業側はリスクに関するもっともな質問を極小化する。それはプロ
セスが基本的で理解可能な実際的なステップを持っているということ
だけで、リスクがないということは言えない。企業は大衆相手に何度
も繰り返して、自分たちの仕事は高度に規制されていて、驚くほどに
安全なのだと主張するが、GE技術には本当に十分に規制が行きとど
いているのだろうか。会社が信じているほどにプロセスは安全なのか。
あるいはまた、GE反対治効家たちが主張するように危険なものなの
か。お互いに相手を断罪し合う騒音の中では、筋の通った論争はいと
も簡単に筋道を失うのだ。
 歴史上には、十分な統制が取れないままの技術が生みだした、意図
しない有害な結果が数多くある。ビジネスを自由に行うことを目指し
て、自分たちを放っておいてくれるように、企業は多額の資金を政治
家に対して注ぎこむ。自分たちのことは自分たちで統制すると企業は
誓う。しかしそれぞれの会社は、自分たちのビジネスが原因となって
害を及ぼすリスクとビジネスが失敗するリスクとを比較する。特にリ
スクが徐々に明らかになり、危機が向かっている先が企業経営者やそ
の家族以外である場合、環境や人間の健康に対するリスクヘの甘さは
容認できないレベルに達しうる。もしも自社ビジネスを競争で負ける
ことから守るのが、健康や安全性を脅かすのを承知の上で行動するこ
とを意味するのであれば、彼らはビジネスに有利なように行動するこ
とが多い。同様に、原油の流出や肥満人目の増加、タバコ会社の欺隔
的広告、先天性疾患、微生物による食品汚染、鉱山崩落、海のデッド
ゾーン、地球温暖化など、企業活動の結果、姿を現すさまざまな問題
が見えてくる,人間の歴史は、自分で自分のことは統制できる。法的
な介入は要らないという企業の主張の中のアイロニーを強調している。
 透明性の欠如がGE企業の気がかりな傾向だ。企業が秘密を公開す
ることはできないが、ビジネスの安全性と透明性と有効性に関する正
確な情報は提示すべきである。ダウ社がエンリスト・デュオをめぐっ
て行ったような規制のごまかし(第7章参照)は許容されるものでは
ない。また大学研究機関も、企業の製品を支持する意見を交換条件と
して、企業の研究助成金を受けるべきではない。一応公正だと考えら
れている象牙の塔から出されるGE賛成の意見の背後に、最低でもア
グリビジネスからの投資がないかどうかは完全に公にすべきだ。
                         この項つづく
風蕭々と碧い時代


イマジン John Lennon

●今夜の寸評:ポストプーチンと国連改革
虐殺映像が流れるな中でどれほどの人が正常な精神状態で居られるだ
ろうか。抵抗なくして自由なし。連帯なくして勝利なし。

 We shall overcome !


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