彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。
夏燕 美味し拉麺 つたう汗
宇
初夏の頃
words and music by 浜田省吾
蒼い雲が河を流れる此処は僕等の最後の世界
木立に透けて見える初夏の陽差しと甘い憂僻
押し寄せる何もかもまるで夏の雨のように
独り何処かに隠れて生きてゆけたかな
顔を背け何も信じなかった
昨日までのことがまるで夢のように遠い
きっと君も僕と同じように
ひとりぼっちの日を歩き続けてきたんだろう
行ってしまうよ僕が泣き出さないように
君の腕の中に強く抱きしめておくれ
行ってしまうよ僕が泣き出す前に
君の腕の中に強く抱きしめておくれ
Part 1 Chapter 3
ぽくもきみも、互いの家を訪問したりしない。相手の家族と
顔を合わせることもないし、それぞれの友だちを紹介しあうこ
ともない。ぽくらは要するに誰にもIこの世界中のいかなる人
にも-邪魔をされたくないのだ。ぽくときみは、ニ人で時を過
ごしているだけで十分満ち足りているし、他の何かを付け加え
たいとは思わない。また、ただ物理的な観点から見ても、何か
を付け加えるような余地はそこにはない。前にも述べたように、
ぽくらの間には語り合うべきことが山ほどあるし、二人で一緒
にいられる時間は限られているからだ。
きみは自分の家族のことをほとんど語らない。ぽくがきみの
家族について知っているのは、いくつかの細切れの事実だけだ。
父親は地方公務員だったが、きみが十一歳のときに何か不手際、、、
あって辞職を余儀なくされ、今は予備校の事務員をしていると
いうことだ。どんな不手際だったかは知らない。でもどうやら、
きみがその内容を口にしたくない類の出来事であったようだ。
実の母親は、きみが三歳の時こ内蔵の願で亡くなった。だか
ら記憶はほとんどない。顔も思い出せない。きみが五歳の時、
父親は再婚し、翌年妹が生まれた。だから今の母親はきみにと
って親しみをもてるわけだが、父親に対してよりはその母親の
方に「まだ少しは親しみが持てるかもしれない」という意味の
ことを、きみは一度だけ口にしたことがある。本のページの隅
に小さな活字で記された、さりげない注釈みたいに。六歳年下
の妹については、「妹には猫の毛アレルギーがあるので、うち
では猫が飼えない」という以上の情報は得られなかった。
きみが子供の頃、心から自然に親しみを抱くことができたの
は、母方の祖母だけだ。きみは機会があれば一人で電車に乗っ
て、隣の区にあるその祖母の家を訪れる。学校が休みの時期に
は何日か泊めてもらうこともある。祖母は無条件にきみを可愛
がってくれる。乏しい収入の中から細々したものを買い与えて
もくれる。しかし祖母に会いに行くたびに、義母の顔に不服そ
うな表情が浮かぶのを目にして、何かを言われたわけではない
のだが、次第に祖母の家から足が遠のくようになる。その祖母
も数年前に心臓病で急逝してしまった。
きみはそんな事情を細切れにぽつぽつと話してくれる。古い
コートのポケットからぼろぼろになった何かを、少しずつすく
い出すみたいに。
もうひとつ今でもよく覚えていること-きみはぼくに家族の
話をするとき、なぜかいつも自分の手のひらをじっと見つめて
いた。まるで話の筋を辿るためには、そこにある手相(か何か)
を丹念に読み解くことが必要不可欠であるかのように。
ぼくの方はといえば、自分の家族についてきみに語るべきこ
となど、ほとんど見当たらなかった。両親はごくありきたりの
普通の親だ。父親は製薬会社に勤めており、母親は専業主婦。
ありきたりの普通の親のように行動し、ありきたりの普通の親
のように語る。年老いた黒猫を一匹飼っている。学校での生活
についても、とりたてて語るべきことはない。成績はそれほど
悪くはないが、人目を引くほど優秀なわけでもない。学校でい
ちばん落ち着ける場所は図書室だ。そこで、一人で本を読んで
空想のうちに時間を潰すのが好きだ。読みたい本のおおかたは
学校の図書室で読んでしまった。
きみと初めて出会ったときのことはよく覚えている。場所は
「高校生エッセイ・コンクール」の表形式の会場だった。五位
までの入貧者がそこに呼ばれた。ぽくときみは三位と四位で、
座っていた席が隣同士だった。季節は秋で、ぼくはそのとき高
校二年生、きみはまだ一年生だった。
式は退屈な代物だったので、ぽくらはその合間に小さな声で
少しずつ短く話をした。きみは制服の紺のブレザーコートを着
て、揃いの紺のプリーツスカートをはいていた。リボンのつい
た白いブラウス、白いソックスに黒のスリップオン・シューズ。
ソックスはあくまで白く、靴はしみひとつなくきれいに磨かれ
ていた。親切なこびとたちが七人がかりで、夜明け前に丁寧に
磨いてくれたみたいに。
ぽくは文章を書くのがべつに得意なわけではない。本を読む
のは小さな頃から大好きで、暇さえあれば本を手に取ってきた
が、自分で文章を書く才能は持ち合わせていないと思っていた。
でもクラスの全員が、コンクールのために国語の授業中に強制
的にエッセイを書かされ、その中からぼくの書いたものが選ば
れて選考委員会に送られ、最終選考に残り、そして思いもよら
ず上位入賞してしまったのだ。正直言って自分の書いた文章の
どこがそれほど優れているのか理解できなかった。読み返して
みても、取り柄のない平凡な作文としか思えない。でもまあ何
人かの審香具がそれを読んで、賞をやってもよいと思ったから
には、何かしら見どころはあったのだろう。
この項つづく
※めっきり視力が低下し、一旦、スキャナに落とし込んで拡大読ん
でいるわたしに、"そんなに食らいついてまでして、文学したいの
か?”という自問に、"そうだ!"と答えるわたしに、"やめちゃい
なよ!"と叱る彼女の声が頭を過ぎる。
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