彦根藩の当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。
【海水有価物回収水素製造並びに炭素化合物製造事業論 ⑪】
🎈テーマ別特許事例考察
✳️二酸化炭素還元光触媒
※考えているいたように、膨大なものになるが、柔軟に掲載する。諄いようだが、再生可
能エネルギーをベースに海水を含めた水素製造と有価希少金属回収を含んだ純水製造と光
触媒で有機化合物合成をも含めたスマートでコンパクトイなプラントとして構想設計する
世界最高水準の仕事と考えている。
人為的温暖化政策・炭素再利用技術
1️⃣特開2025-22681 二酸化炭素還元光触媒粒子及びその製造方法
国立大学法人京都大学・住友金属鉱山株式会
【要約】下図8の如く、母材粒子と前記母材粒子の表面に担持された
金属銀(Ag)粒子とを含み、 前記母材粒子は、酸化タンタル(Ta
2O5)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)、及びタンタル酸
亜鉛(ZnTa2O6)からなる群から選択される1種以上を含み、
拡散反射スペクトルにおいて、200nm以上300nm以下の波長
域に位置するピークAと480nm以上530nm以下の波長域に位
置するピークBを示し、前記ピークAの強度(IA)に対する前記ピ
ークBの強度(IB)の比(IB/IA)が50%以下である、二酸
化炭素還元光触媒粒子。CO選択率を高いレベルに維持しながら大き
いCOガス生成速度を示す二酸化炭素還元光触媒粒子及びその製造方
法を提供すること。
図8 光触媒粒子(例C-1~C—4等)の拡散反射スペクトル
【発明の効果】
本発明によれば、CO選択率を高いレベルに維持しながら大きいCO
ガス生成速度を示す二酸化炭素還元光触媒粒子及びその製造方法が提
供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 母材粒子と前記母材粒子の表面に担持された金属銀(A
g)粒子とを含み、 前記母材粒子は、酸化タンタル(Ta2O5)、
タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)、及びタンタル酸亜鉛(Zn
Ta2O6)からなる群から選択される1種以上を含み、 拡散反射ス
ペクトルにおいて、200nm以上300nm以下の波長域に位置す
るピークAと480nm以上530nm以下の波長域に位置するピー
クBを示し、前記ピークAの強度(IA)に対する前記ピークBの強
度(IB)の比(IB/IA)が50%以下である、二酸化炭素還元
光触媒粒子。
【請求項2】前記金属銀(Ag)粒子の担持量が前記母材粒子に対し
て0質量%超1.0質量%未満である、請求項1に記載の二酸化炭素
還元光触媒粒子。
【請求項3】前記金属銀(Ag)粒子の粒径が0.1nm以上5nm
である請求項1又は2に記載の二酸化炭素還元光触媒粒子。
【請求項4】CO2還元光還元触媒性能評価試験において、CO選択率
が50%以上である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素還元光触媒
粒子。
【請求項5】母材粒子と前記母材粒子の表面に担持された金属銀(A
g)粒子とを含む二酸化炭素還元光触媒粒子の製造方法であって、母
材粒子と銀(Ag)供給源とを還元液に加えて反応液を作製する工程、
及び 前記反応液に超音波を照射して、金属銀(Ag)粒子を担持し
た母材粒子を作製する工程、を含み、前記母材粒子は、酸化タンタル
(Ta2O5)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)、及びタン
タル酸亜鉛(ZnTa2O6)からなる群から選択される1種以上を
含む、方法。
【請求項6】前記金属銀(Ag)粒子の担持量が前記母材粒子に対し
て0質量%超1.0質量%未満である、請求項5に記載の方法。
【背景技術】【0002】
半導体光触媒粒子を用いた水分解及び二酸化炭素還元技術は、エネル
ギー問題や環境問題を解決できる技術として注目を集めている。この
光触媒粒子に助触媒として銀(Ag)などからなる粒子を担持させる
ことで、光励起によって生成した電子をトラップして電荷分離を促進
する効果や二酸化炭素還元生成物を選択する効果が期待できる。例え
ば通常の光触媒では光照射により水が水素(H2)と酸素(O2)と
に分解する。これに対して銀(Ag)粒子を担持した光触媒では、二
酸化炭素(CO2)の還元により一酸化炭素(CO)が水素(H2)
とともに生成する。【0003】 一酸化炭素(CO)は化学工業や産
業における重要な出発物質であり、これを水素と反応させて様々な燃
料や化学物質を合成することが可能である。したがって、二酸化炭素
還元光触媒では、一酸化炭素の生成割合、すなわちCO選択率の高い
ことが望ましい。ここでCO選択率とは、下記(1)式に表されるよ
うに、還元反応により生じる水素(H2)ガスの発生速度(発生量)
と一酸化炭素(CO)ガスの発生速度の合計に対するCOガスの発生
速度の割合である。
ところで、銀(Ag)などの金属粒子を担持させる方法として、化
学還元法、含浸法、及び光電析法(光電着法)などの手法が従来から
知られている。例えば、特許文献1には二酸化炭素の還元方法に関し
て、CO2とH2Oと光触媒とに光を照射してCO2を還元する反応
によりCOを生成させる旨、光電着法又は含浸法で銀を酸化ガリウム
に担持した触媒を用いる旨、光電着法では硝酸銀など銀前駆体を含む
アルコール水溶液に酸化ガリウム粉末を入れて混合後、光照射を行っ
て銀前駆体を還元処理する旨、含浸法では銀前駆体水溶液に酸化ガリ
ウムを加えて攪拌し、水を除去した後に加熱乾燥し、更に空気中で焼
成する旨が記載されている(特許文献1の請求項1、2及び[0015])。
【0006】また二酸化炭素還元触媒に関するものではないが、特許
文献2には超音波を照射して溶媒中に1種類以上の貴金属酸化物を分
散させて貴金属酸化物分散液を得る工程と、前記貴金属酸化物分散液
を加熱する工程とを含むことを特徴とする貴金属ナノ材料の製造方法
が開示されている(特許文献2の請求項1)。また、溶媒に貴金属担
持用の担体を更に含有させる旨、担体の表面上に高度な分散性を持っ
て担持された状態の貴金属ナノ材料を得ることが可能であるため、こ
れを燃料電池用触媒、材料合成用触媒等に好適に利用することが可能
となる旨が記載されている(特許文献2の請求項6及び[0014])。
※参考文献1:特開2012-192302 二酸化炭素の還元方法
2:2008-024968 貴金属ナノ材料の製造方法
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らが調べたところ、特許文献1で提案される
含浸法や光電析法で作製された光触媒には、一定の効果があるものの
改良の余地があることが分かった。すなわち、助触媒である銀(Ag)
の効果を十分に発揮させるためには、その担持量をある程度に多くす
ることが望ましい。またAgの粒径を小さく、数十nmオーダー程度
以下にすることが望まれる。粒径が大きすぎると触媒活性が失われて
しまうためである。しかしながら含浸法や光電析法で作製した光触媒
粒子では、助触媒担持量(Ag濃度)を多くすると、Ag粒子が凝集
して粒径が大きくなってしまう問題がある。そのため粒径の小さいAg
粒子を高担持量で担持させることは困難である。
特許文献2は貴金属ナノ材料を二酸化炭素還元光触媒に用いることを
意図しておらず、ましてやナノ材料の粒径を数十nmオーダー程度以
下に小さくすることを目的としていない。実際、特許文献2では実施
例において貴金属(Pt)ナノ微粒子担持球状カーボンや貴金属(Pt)
ナノチューブを作製する旨、燃料電池用触媒、材料合成用触媒、医療
や食品添加剤、導電性ペーストに好適である旨を教示するに過ぎない
(特許文献2の[0043]~[0062])。
一方で金属粒子を合成する際に、原料濃度を低くするとともに多量の
有機保護剤を用いて均一且つ微細な粒子を合成する手法が知られてい
る。しかしながらこのような手法で光触媒粒子を作製すると、光触媒
粒子の収率が低いとともに有機保護剤が粒子表面に付着するという問
題がある。付着した有機保護剤は触媒活性を低下させてしまうため、
これを分解除去するために触媒粒子を高温焼成する必要がある。この
ような焼成を経た触媒粒子では、金属粒子の粒径が大きくなってしま
う。そのため、従来の手法では微細なAg粒子を高分散且つ高担持量
で担持させることは困難であり、触媒性能、特にCO選択率に優れた
光触媒粒子を効率的に製造する上で限界があった。【0011】
本発明者らは、このような従来の問題点に鑑みて検討を行った。その
結果、所定組成の母材粒子を有する二酸化炭素還元光触媒粒子におい
て、超音波還元法により金属Ag粒子を担持することで、所定ピーク
強度比を有する拡散反射スペクトルを示す二酸化炭素還元光触媒粒子
が得られるとの知見を得た。また、この手法で得られた光触媒粒子は、
CO選択率を高いレベルに維持しながら高いCOガス生成速度を示す
との知見を得た。【0012】
本発明は、このような知見に基づき完成されたものであり、CO選
択率を高いレベルに維持しながら大きいCOガス生成速度を示す二酸
化炭素還元光触媒粒子及びその製造方法の提供を課題とする。
ー 中 略 ー
【発明を実施するための形態】
本発明の具体的な実施形態について以下に説明する。ただし本発明は
以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しな
い範囲において種々の変更が可能である。【0023】
<<1.二酸化炭素還元光触媒粒子>>
本実施形態の二酸化炭素還元光触媒粒子(以下、単に「光触媒粒子」
と総称する場合がある。)は、母材粒子とこの母材粒子の表面に担持
された金属銀(Ag)粒子とを含む。母材粒子は、酸化タンタル(T
a2O5)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)、及びタンタル酸
亜鉛(ZnTa2O6)からなる群から選択される1種以上を含む。
また、二酸化炭素還元光触媒粒子は、拡散反射スペクトルにおいて、
200nm以上300nm以下の波長域に位置するピークAと480
nm以上530nm以下の波長域に位置するピークBを有する。ピー
クAの強度(IA)に対するピークBの強度(IB)の比(IB/IA)
は50%以下である。【0024】
母材粒子は、主触媒として機能するものである。母材粒子は、酸化タ
ンタル(Ta2O5)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)、及び
タンタル酸亜鉛(ZnTa2O6)からなる群から選択される1種以上
を主成分として含む。ここで、主成分とは母材粒子中で50質量%を
占める成分のことである。酸化タンタル、タンタル酸ナトリウム、及
び/又はタンタル酸亜鉛を主成分とすることで、優れた触媒性能を示
す光触媒粒子を得ることができる。母材粒子中の主成分割合は大きい
方が好ましい。主成分割合は60質量%以上、70質量%以上、80
質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。【0025】
金属Ag粒子は助触媒として機能するものであり、その粒径はnmオ
ーダー又はそれ以下である。金属Ag粒子の粒径は0.1nm以上5
nm以下が好ましく、1nm以上5nm以下がより好ましい。このよ
うな微細Ag粒子を担持させることで、光触媒粒子の触媒性能が高く
なる。微細な助触媒を担持させることで、母材粒子の表面活性点が多
くなるからである。なお金属Ag粒子の粒径は、TEM観察により求
めることができる。【0026】
本実施形態の光触媒粒子は、拡散反射スペクトルにおいて、200n
m以上300nm以下の波長域に位置するピークAと480nm以上
530nm以下の波長域に位置するピークBを有する。また、ピーク
Aの強度(IA)に対するピークBの強度(IB)の比(IB/IA)
が50%以下である。拡散反射スペクトルにおけるピーク強度比(IB
/IA)を制御することで、光触媒粒子の触媒性能がより一層優れた
ものになる。具体的には、高いCO選択率を維持しながら大きいCO
ガス生成速度を実現できる。ピーク強度比(IB/IA)は40%以下
が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好まし
く、10%以下が特に好ましく、5%以下が最も好ましい。一方で、
助触媒(Ag粒子)の機能を十分に発揮させる上で、ピーク強度比(
IB/IA)はある程度に高いことが望ましい。ピーク強度比(IB/
IA)は0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以
上がさらに好ましい。【0027】
なお、200nm以上300nm以下の波長域及び480nm以上5
30nm以下の波長域のそれぞれに少なくとも1つのピークが存在す
ればよい。例えば480nm以上530nm以下の波長域に複数のピ
ークが存在する場合には、全てのピークの強度比(IB/IA)が所
定の範囲内(50%以下)を満足すればよい。【0028】
拡散反射スペクトルは、拡散反射法により得られる吸収スペクトルで
ある。粉末などの固体試料に光を照射すると、散乱過程を経てその一
部が試料外に出ていく。散乱過程では、照射した光の一部が試料表面
で反射されて、残りは試料内に侵入する。侵入した入射光は試料の電
子遷移状態により一部が吸収されて、残りが試料外に出ていく。紫外
光や可視光の入射光強度と散乱過程後の光強度から吸収スペクトルを
得ることができる。【0029】
本実施形態の光触媒粒子は、助触媒(Ag粒子)の担持量(Ag濃度)
が母材粒子に対して0質量%超1.0質量%未満であることが好まし
い。担持量をある程度に多くすることで助触媒の効果を十分に発揮さ
せることができる。そのためCO2還元に光触媒を用いたときにCO
ガス発生速度とCO選択率を顕著に高めることが可能になる。一方で
担持量を適度に抑えることでCOガス発生速度の低下を抑制できる。
Ag供給源の配合量や超音波処理条件を制御することで担持量を調整
できる。担持量は0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0030】
本実施形態の光触媒粒子は、触媒性能、特にCO選択率が優れている。
例えばCO2還元光触媒性能評価試験においてCO選択率が30%以上
である。そのためCO2還元により発生するCOガス量の割合を高く
することが可能になる。CO選択率は40%以上であってよく、50
%以上であってよく、60%以上であってよく、70%以上であって
よく、80%以上であってよく、90%以上であってもよい。CO選
択率の上限は特に限定されるものではないが、典型的には98%以下、
より典型的には95%以下である。【0031】
CO2還元光触媒性能評価試験は公知の評価装置を用いて行えばよい。
評価装置の一例を図1に示す。評価装置(2)は槽(4)とこの槽(
4)内部に設けられた高圧水銀(Hg)ランプ(6)とから構成され
ている。槽(4)の内部には評価用溶液(22)が入れられる。また
槽(4)はガス導入管(8)、ガス排出管(10)、pH計(12)、
ゴム栓(14)及びスターラー(16)を備えている。ガス導入管(
8)の先端にはバブリングフィルター(18)が設けられている。水
銀ランプ(6)は、その周囲に流れる冷却水(20)によって冷却さ
れる。【0032】
評価試験は次のようにして行えばよい。純水、炭酸水素ナトリウム(
NaHCO3)及びサンプル(光触媒粒子)を混合して評価用溶液(
22)を作製する。この評価用溶液(22)を評価装置(2)の槽(
4)に入れて、スターラー(16)で撹拌する。二酸化炭素(CO2)
ガス(30)をガス導入管(8)から吹き込み、それと同時に高圧Hg
ランプ(6)からUV光を評価用溶液(22)に照射する。所定時間
照射した後に、発生したガス(32)を、ガス排出管(10)を通し
てガスクロマトグラフィー(34)に導入し、そこで分析する。この
分析により水素(H2)、酸素(O2)及び一酸化炭素(CO)の発
生速度(生成量)を求める。得られた発生速度を用いて、下記(1)
式に基づきCO選択率を算出する。【0033】【数2】
【0034】 拡散反射スペクトルにおいて特定波長域(200nm以
上300nm以下、480nm以上530nm以下)にピークを有し、
そのピーク強度比(IB/IA)が所定範囲内(50%以下)にある
本実施形態の光触媒粒子が、高いCO選択率を維持しながら大きいC
Oガス生成速度を示す、そのメカニズムの詳細は不明である。しかし
ながら金属Ag粒子の粒子サイズと電子遷移状態とが関係しているの
ではないかと推測している。すなわち拡散反射法により得られるスペ
クトル(拡散反射スペクトル)は種の価数、配位構造、配位子場とい
った試料の電子遷移状態を反映している。また試料が微粒子である場
合には、その粒子サイズによって異なる吸収エネルギーを示す場合が
ある。例えば金属Ag粒子が微粒子である場合には、プラズモン共鳴
に対応する波長域に吸収帯を与えることが知られている。したがって
特定波長域にピークを有する本実施形態の光触媒粒子は、担持Ag粒
子が、微細で特有の電子遷移状態を有するものになっていると考えら
れる。【0035】
図1評価装置の一例を示す断面模式図
【符号の説明】
2 評価装置 4 槽 6 水銀(Hg)ランプ 8 ガス導入管
10 ガス排出管 12 pH計 14 ゴム栓 16 スターラー 18
バブリングフィルター 20 冷却水 22 評価用溶液 30 CO2
ガス 32 発生ガス 34 ガスクロマトグラフィー
図2 光触媒反応のメカニズム
一方でAg粒子の粒子サイズと電子遷移状態は、光触媒の触媒性能、
例えばCO選択率に影響を及ぼすことが予想される。このことを金属
Ag粒子担持光触媒粒子のCO2還元のメカニズム(図2)に基づき
説明する。図2に示されるように、エネルギーhνをもつ光が粒子に照
射されると、半導体光触媒粒子中に電子(e-)と正孔(h+)とが
生じる。この際、金属Ag粒子(助触媒)は電荷分離(電子e-と正
孔h+の分離)を促進する。正孔(h+)が周囲の水分(H2O)と
反応する結果、下記(2)式に示す反応が右方向に進み、酸素(O2)
とプロトン(H+)とが生成される。一方で電子(e-)が二酸化炭
素(CO2)及びプロトン(H+)と反応する結果、下記(3)及び
(4)式に示す反応が右方向に進み、一酸化炭素(CO)と水(H2
O)と水素(H2)が生成する。また下記(2)から(4)式の反応
を合わせると、原理的には下記(5)式に示す反応が進む。
【発明を実施するための形態】【0022】
本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施形態」という)について
以下に説明する。ただし本発明は以下の実施形態に限定されるもので
はなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能で
ある。
<<1.二酸化炭素還元光触媒粒子>>
本実施形態の二酸化炭素還元光触媒粒子(以下、単に「光触媒粒子」
と総称する場合がある。)は、母材粒子とこの母材粒子の表面に担持
された金属銀(Ag)粒子とを含む。母材粒子は、酸化タンタル(T
a2O5)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)、及びタンタル
酸亜鉛(ZnTa2O6)からなる群から選択される1種以上を含む。
また、二酸化炭素還元光触媒粒子は、拡散反射スペクトルにおいて、
200nm以上300nm以下の波長域に位置するピークAと480
nm以上530nm以下の波長域に位置するピークBを有する。ピー
クAの強度(IA)に対するピークBの強度(IB)の比(IB/IA)
は50%以下である。【0024】
母材粒子は、主触媒として機能するものである。母材粒子は、酸化タ
ンタル(Ta2O5)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO3)、及
びタンタル酸亜鉛(ZnTa2O6)からなる群から選択される1種
以上を主成分として含む。ここで、主成分とは母材粒子中で50質量
%を占める成分のことである。酸化タンタル、タンタル酸ナトリウム、
及び/又はタンタル酸亜鉛を主成分とすることで、優れた触媒性能を
示す光触媒粒子を得ることができる。母材粒子中の主成分割合は大き
い方が好ましい。主成分割合は60質量%以上、70質量%以上、8
0質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。【0025】
金属Ag粒子は助触媒として機能するものであり、その粒径はnm
オーダー又はそれ以下である。金属Ag粒子の粒径は0.1nm以上
5nm以下が好ましく、1nm以上5nm以下がより好ましい。この
ような微細Ag粒子を担持させることで、光触媒粒子の触媒性能が高
くなる。微細な助触媒を担持させることで、母材粒子の表面活性点が
多くなるからである。なお金属Ag粒子の粒径は、TEM観察により
求めることができる。【0026】
本実施形態の光触媒粒子は、拡散反射スペクトルにおいて、200
nm以上300nm以下の波長域に位置するピークAと480nm以
上530nm以下の波長域に位置するピークBを有する。また、ピー
クAの強度(IA)に対するピークBの強度(IB)の比(IB/IA)
が50%以下である。拡散反射スペクトルにおけるピーク強度比(IB
/IA)を制御することで、光触媒粒子の触媒性能がより一層優れた
ものになる。具体的には、高いCO選択率を維持しながら大きいCO
ガス生成速度を実現できる。ピーク強度比(IB/IA)は40%以
下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ま
しく、10%以下が特に好ましく、5%以下が最も好ましい。一方で、
助触媒(Ag粒子)の機能を十分に発揮させる上で、ピーク強度比(
IB/IA)はある程度に高いことが望ましい。ピーク強度比(IB/
IA)は0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以
上がさらに好ましい。
【0027】 なお、200nm以上300nm以下の波長域及び4
80nm以上530nm以下の波長域のそれぞれに少なくとも1つの
ピークが存在すればよい。例えば480nm以上530nm以下の波
長域に複数のピークが存在する場合には、全てのピークの強度比(IB
/IA)が所定の範囲内(50%以下)を満足すればよい。【0028】
拡散反射スペクトルは、拡散反射法により得られる吸収スペクトルで
ある。粉末などの固体試料に光を照射すると、散乱過程を経てその一
部が試料外に出ていく。散乱過程では、照射した光の一部が試料表面
で反射されて、残りは試料内に侵入する。侵入した入射光は試料の電
子遷移状態により一部が吸収されて、残りが試料外に出ていく。紫外
光や可視光の入射光強度と散乱過程後の光強度から吸収スペクトルを
得ることができる。【0029】
本実施形態の光触媒粒子は、助触媒(Ag粒子)の担持量(Ag濃度
)が母材粒子に対して0質量%超1.0質量%未満であることが好ま
しい。担持量をある程度に多くすることで助触媒の効果を十分に発揮
させることができる。そのためCO2還元に光触媒を用いたときにC
Oガス発生速度とCO選択率を顕著に高めることが可能になる。一方
で担持量を適度に抑えることでCOガス発生速度の低下を抑制できる。
Ag供給源の配合量や超音波処理条件を制御することで担持量を調整
できる。担持量は0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
【0030】本実施形態の光触媒粒子は、触媒性能、特にCO選択率
が優れている。例えばCO2還元光触媒性能評価試験においてCO選
択率が30%以上である。そのためCO2還元により発生するCOガ
ス量の割合を高くすることが可能になる。CO選択率は40%以上で
あってよく、50%以上であってよく、60%以上であってよく、7
0%以上であってよく、80%以上であってよく、90%以上であっ
てもよい。CO選択率の上限は特に限定されるものではないが、典型
的には98%以下、より典型的には95%以下である。【0031】
CO2還元光触媒性能評価試験は公知の評価装置を用いて行えばよ
い。評価装置の一例を図1に示す。評価装置(2)は槽(4)とこの
槽(4)内部に設けられた高圧水銀(Hg)ランプ(6)とから構成
されている。槽(4)の内部には評価用溶液(22)が入れられる。
また槽(4)はガス導入管(8)、ガス排出管(10)、pH計(12)、
ゴム栓(14)及びスターラー(16)を備えている。ガス導入管(8)
の先端にはバブリングフィルター(18)が設けられている。水銀ラ
ンプ(6)は、その周囲に流れる冷却水(20)によって冷却される。
評価試験は次のようにして行えばよい。純水、炭酸水素ナトリウム
(NaHCO3)及びサンプル(光触媒粒子)を混合して評価用溶液
(22)を作製する。この評価用溶液(22)を評価装置(2)の槽
(4)に入れて、スターラー(16)で撹拌する。二酸化炭素(CO
2)ガス(30)をガス導入管(8)から吹き込み、それと同時に高
圧Hgランプ(6)からUV光を評価用溶液(22)に照射する。所
定時間照射した後に、発生したガス(32)を、ガス排出管(10)
を通してガスクロマトグラフィー(34)に導入し、そこで分析する。
この分析により水素(H2)、酸素(O2)及び一酸化炭素(CO)
の発生速度(生成量)を求める。得られた発生速度を用いて、下記(
1)式に基づきCO選択率を算出する。【0033】【数2】
【0034】 拡散反射スペクトルにおいて特定波長域(200nm
以上300nm以下、480nm以上530nm以下)にピークを有
し、そのピーク強度比(IB/IA)が所定範囲内(50%以下)に
ある本実施形態の光触媒粒子が、高いCO選択率を維持しながら大き
いCOガス生成速度を示す、そのメカニズムの詳細は不明である。し
かしながら金属Ag粒子の粒子サイズと電子遷移状態とが関係してい
るのではないかと推測している。すなわち拡散反射法により得られる
スペクトル(拡散反射スペクトル)は種の価数、配位構造、配位子場
といった試料の電子遷移状態を反映している。また試料が微粒子であ
る場合には、その粒子サイズによって異なる吸収エネルギーを示す場
合がある。例えば金属Ag粒子が微粒子である場合には、プラズモン
共鳴に対応する波長域に吸収帯を与えることが知られている。したが
って特定波長域にピークを有する本実施形態の光触媒粒子は、担持A
g粒子が、微細で特有の電子遷移状態を有するものになっていると考
えられる。【0035】
一方でAg粒子の粒子サイズと電子遷移状態は、光触媒の触媒性能、
例えばCO選択率に影響を及ぼすことが予想される。このことを金属
Ag粒子担持光触媒粒子のCO2還元のメカニズム(図2)に基づき
説明する。上図2に示されるように、エネルギーhνをもつ光が粒子に
照射されると、半導体光触媒粒子中に電子(e-)と正孔(h+)と
が生じる。この際、金属Ag粒子(助触媒)は電荷分離(電子e-と
正孔h+の分離)を促進する。正孔(h+)が周囲の水分(H2O)と
反応する結果、下記(2)式に示す反応が右方向に進み、酸素(O2)
とプロトン(H+)とが生成される。一方で電子(e-)が二酸化炭素
(CO2)及びプロトン(H+)と反応する結果、下記(3)及び(4)
式に示す反応が右方向に進み、一酸化炭素(CO)と水(H2O)と
水素(H2)が生成する。また下記(2)から(4)式の反応を合わ
せると、原理的には下記(5)式に示す反応が進む。【0036】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0037】 上記(3)式の反応と(4)式の反応が同じ程度で起こ
ると、上記式(5)に示されるようにCO選択率(CO発生速度/(
H2発生速度+CO発生速度))は一定である。しかしながら実際に
は、これらの反応が同じ程度に起こるとは限らない。上記(3)式の
反応が優先的に起こることで、CO選択率が高くなる。【0038】
上記(3)式の反応では、二酸化炭素(CO2)が炭酸塩種(carbo
-nate species)として触媒表面に吸着し、光照射により反応中間体で
あるギ酸塩種(formate species)に変化した後に水分子と相互作用し
て一酸化炭素(CO)になるとの報告がある。またこの報告ではAg
助触媒が反応中間体の生成を促進することが示唆されている。したが
って金属Ag粒子(助触媒)による電荷分離の作用及び反応中間体生
成の作用を高めることで、上記(3)式の反応が優先的に起こり、CO
選択率がより一層に改善されると期待される。【0039】
この点、後述するように、本実施形態の光触媒粒子は超音波還元法に
より助触媒(Ag粒子)の担持が行われている。そして、拡散反射ス
ペクトルの特定波長域にピークを有し、そのピーク強度比が所定範囲
内にある。このような光触媒粒子では、担持したAg粒子が、透過型
電子顕微鏡(TEM)で観察できないほど微細(Åオーダー)なクラス
ターとなった状態で母材粒子表面に存在していると推定される。また、
超音波処理時に発生したホットスポットやラジカルにより特有の電子
遷移状態になっていると考えられる。特有の電子遷移状態を有するク
ラスター状超微細なAg粒子が担持されることで、光触媒粒子のCO2
還元サイトが他の手法で担持した場合に比べて多くなり、このことが
触媒活性、特にCO生成速度向上につながっているのではないかと考
えられる。【0040】
<<2.光触媒粒子の製造方法>>
本実施形態の光触媒の製造方法は、以下の工程;母材粒子と銀(Ag
)供給源とを還元液に加えて反応液を作製する工程(混合工程)、及
びこの反応液に超音波を照射して、金属銀(Ag)粒子を担持した母
材粒子を作製する工程(超音波処理工程)、を含む。また、母材粒子
は、酸化タンタル(Ta2O5)、タンタル酸ナトリウム(NaTa
O3)、及びタンタル酸亜鉛(ZnTa2O6)からなる群から選択さ
れる1種以上を含む。各工程の詳細について以下に説明する。
【0041】 <混合工程>
混合工程では、母材粒子と銀(Ag)供給源とを還元液に加えて反
応液を作製する。母材粒子は市販品をそのまま又は粉砕して用いても
よい。あるいは、合成してもよい。例えば、タンタル酸ナトリウム(
NaTaO3)は、炭酸ナトリウム(Na2CO3)及び酸化タンタル
(Ta2O5)の混合物を焼成して合成できる。タンタル酸亜鉛(Zn
Ta2O6)は、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化タンタル(Ta2O5)
の混合物を焼成して合成できる。合成した母材粒子を粉砕してもよい。
【0042】
粒子の大きさも特に限定されない。例えば粒子の平均粒子径は0.3
~5.0μmである。さらに粒子の形状も特に限定されない。例えば球
状、不定形状、異方形状(ロッド又は板状等)が挙げられる。粒子が
ロッド状である場合、例えば長軸径が1.0~5.0μm、短軸径が
0.3~1.0μmのものを用いることができる。【0043】
銀(Ag)供給源は、銀(Ag)を供給できるものである限り限定さ
れない。具体的には、酸化物、無機金属塩及び/又は有機金属化合物
が挙げられる。無機金属塩として硝酸塩、塩化物及び/又は硫酸塩な
どが挙げられる。Ag供給源は還元液に溶解するものであってもよい
し、あるいは溶解しないものであってもよい。好適なAg供給源は酸
化銀を含む。酸化銀は銀イオンと酸素イオンのみで構成されるため、
ハンドリングが容易であり、廃棄物処理等の問題が無い。酸化銀には、
銀の酸化数が異なるAg2O、AgO及びAg2O3が知られており、
いずれも使用が可能である。しかしながら入手がより容易なAg2O
が好ましい。Ag供給源の大きさも特に限定されない。例えばAg供
給源の平均粒子径は0.3~3.0μmである。
【0044】母材粒子とAg供給源の配合割合は、最終的に得られる
光触媒粒子中の助触媒(Ag粒子)担持量が所望の値となるように調
整すればよい。助触媒担持量が過度に少ないと助触媒の効果を十分に
発揮させることが困難になる。そのためCO2還元に光触媒粒子を用
いたときにCOガス発生速度とCO選択率が低くなる。一方で助触媒
担持量が過度に多いとCOガス発生速度が低下する。
【0045】
還元液は、還元性を有する液体である限り限定されない。それ自体が
還元性を有する液体であってもよく、あるいは還元性を有しない液体
に還元剤を溶解させたものであってもよい。しかしながらそれ自体が
還元性を有する液体であることが好ましい。また別個の還元剤を含ま
なくともよい。このような還元液として、毒性が低く入手が容易なエ
タノールやプロパノールなどのアルコール類が好ましい。またアルコ
ール類と水との混合液も使用可能である。ただし混合液を用いる場合
には、水の含有量が過度に多いと十分な還元作用を発揮させることが
困難になる。したがって還元液中の水の含有量は、50容積%以下が
好ましく、25容積%以下がより好ましい。水の含有量の下限値は特
に限定されるものではなく、0容量%であってもよい。
【0046】 <超音波処理工程>
超音波処理工程では、得られた反応液に超音波を照射して、金属Ag
粒子を担持した母材粒子を作製する。この際、反応液中のAg供給源
の表面部が超音波還元されて、金属Ag粒子となり、これが母材粒子
の表面に担持される。金属Ag粒子を担持した母材粒子を光触媒粒子
として用いることができる。【0047】
金属Ag粒子担持のメカニズムを、図3を用いて説明する。超音波が
照射されると反応液中に粗密波が生じ、この粗密波により正負の繰り
返し圧力が生じる。負圧サイクル時には蒸発により無数の微細な気泡
が反応液中に生じる。正圧サイクル時に、この気泡は圧壊して強力な
衝撃力を周囲に与える。この現象を超音波キャビテーションという。
キャビテーションにより反応液中の母材粒子とAg供給源とが均一に
分散されるとともに、その表面が清浄化される。またキャビテーショ
ンにより微小かつ高温且つ高圧のホットスポットが生成する。生成し
たホットスポットは、Ag供給源を分解還元させるとともに、反応液
に作用してラジカルが発生し、このラジカルがAg供給源の分解還元
を促進する。このようにしてAg供給源から金属Ag粒子が生成する。
【0048】例えば固体である酸化銀(Ag2O)をAg供給源に用
いた場合には、Ag2Oにホットスポットやラジカルが作用し、Ag
2Oが表面で分解及び還元されてAg粒子が析出する。このAg粒子
は徐々に成長し、ある程度にまで成長するとAg2OとAg粒子の界
面応力が限界になり脱離する。あるいは超音波の作用によりAg2O
から中間生成物が生成し、この中間生成物にホットスポットやラジカ
ルが作用してAg粒子が反応液中に生成する。脱離又は生成したAg
粒子は、超音波の物理的な作用により母材粒子表面に移動し、そこに
吸着する。このようにしてAg粒子を担持した母材粒子が得られる。
超音波還元により生成したAg粒子は微細である。また有機保護剤や
高温焼成が不要であるため、Ag粒子を微細な状態で担持した母材粒
子(光触媒粒子)の作製が可能である。【0049】
光触媒粒子がAg粒子以外のAg供給源を含むと、助触媒の効果を十
分に発揮させることが困難になることがある。この点、超音波処理に
よれば、Ag供給源(酸化銀等)を殆ど含まない光触媒粒子を得るこ
とが可能である。例えばX線回折パターンにおいて、酸化銀(Ag2
O)のピークが観察されない光触媒粒子を得ることが可能である。
【0050】超音波処理には特別な装置を用いる必要はなく、通常の
超音波発振源を備えた装置を用いればよい。例えば市販の超音波洗浄
機を使用してもよい。処理も通常の条件で行えばよい。例えば超音波
の周波数は20~100kHzであってよく、28~45kHzであ
ってよい。超音波処理を同一の周波数で継続して行ってもよく、ある
いは周波数発振切替モードを用いて処理の途中で周波数を切り替えて
もよい。周波数切り替えの回数は1回でもよく、あるいは複数回であ
ってもよい。周波数発振切替モード(例えば28kHz/45kHz
の2周波切替発振モード)で処理することで、母材粒子の液中での分
散性をより一層に向上させることが可能になる。また超音波の出力は
10~500Wであってよく、50~200Wであってよい。さらに
処理時間は1~10時間であってよい。処理時間を長くすることで、
Ag供給源の全てをAg粒子に変換させて母材粒子に担持させること
が可能である。一方で処理時間を短くすることで、助触媒(Ag粒子)
の担持量を調整することが可能である。処理時間は2時間以上10時
間以下が好ましい。【0051】
超音波処理により得られた生成物(Ag粒子を担持した母材粒子)は
反応液中に分散又は沈殿した状態で存在する。したがって反応液から
生成物を回収して、これを乾燥すればよい。回収には、ろ過や遠心分
離等の公知の分離手段を用いればよい。また乾燥は、Ag粒子が過度
の粒成長を起こさない条件、例えば100℃以下で行えばよい。
【0052】最終的に得られる光触媒粒子における助触媒(Ag粒子)
の担持量は、Ag供給源の配合量や超音波処理条件を制御することで
調整できる。金属Ag粒子の担持量は母材粒子に対して0質量%超
1.0質量%未満が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下が
より好ましい。【0053】
<熱処理工程>
必要に応じて、金属Ag粒子を担持した母材粒子に熱処理を施しても
よい。超音波担持法で作製したAg担持母材粒子に熱処理を施すと、
粒子表面に残留した有機物、例えばエタノール由来の有機物を除去で
き、さらにAg粒子の粒径を小さくすることができる。この熱処理の
作用により、CO2還元光触媒として利用した際にCOをより選択的
に生成させることができる。【0054】
熱処理は、酸素を含む雰囲気中100℃以上で行うことが好ましい。
熱処理に特別な装置を用いる必要はなく、大気中での焼成が可能な一
般的な電気炉を用いることができる。100℃未満の温度では、有機
物の分解やAg粒子の粒径へ与える影響が小さく、その効果を期待で
きない。但し、本実施形態の光触媒粒子は熱処理を施したものに限定
される訳ではない。熱処理を施さなくても、触媒活性が十分に高い光
触媒粒子を得ることができる。【0055】
このようにして、金属Ag粒子担持母材粒子からなる光触媒粒子を得
ることができる。【0056】
このような製造方法を採用することで、触媒性能、特にCO選択率の
点で優れた触媒粒子を簡易に得ることが可能である。その詳細な理由
は不明であるが、超音波還元により生成した担持Ag粒子が微細で特
有の電子遷移状態を有するためと推測している。すなわち超音波還元
処理で生成した銀(Ag)は、その大部分がTEMで観察されないほ
ど超微細(Åオーダー)なクラスターとなっていると考えられる。ま
た超音波処理時に発生した高温且つ高圧のホットスポットやラジカル
の作用によって特有の電子遷移状態になっていると考えられる。実際、
超音波により生じたホットスポットは5000℃近くの高温であると
の報告があり、このような高温のホットスポットが瞬間的にでも作用
することで、電子遷移状態が変化することは容易に予想される。そし
てこの微細な粒子サイズと特有の電子遷移状態とが複合的に作用して
CO生成速度及びCO選択率といった触媒性能の向上をもたらすと推
測している。【0057】
さらにこのような製造方法によれば、限定されるものではないが、反
応液に溶解しない酸化銀などの化合物を固体状態のままAg供給源に
用いることが可能である。反応液に溶解しない化合物を用いた場合に
は、反応液がアニオン等の有害物を含んでおらず、廃液処理が容易で
ある。【0058】
これに対して、化学還元法、含浸法又は光電析法といった他の手法で
は、超微細なクラスターの生成は進まない。また、担持の際にホット
スポットの生成、及びそれによる電子遷移状態の変化は起こらず、触
媒性能を向上させる上で限界があると考えられる。また、含浸法や光
電析法では、硝酸銀を溶解させた水溶液などの前駆体溶液を用いる必
要がある。このような前駆体溶液に含まれる硝酸イオンなどのアニオ
ンは大気汚染の原因となる有害物質である。したがって含浸法や光電
析法では有害物質を無毒化するための廃液処理が必要である。
【0059】
ただし本実施形態の製造方法は、反応液に溶解する化合物を用いるこ
とを排除するものではない。そのような場合であっても、金属Ag粒
子を高分散且つ高担持率で析出させる効果が得られる。
【実施例】【0060】
本発明を、以下の実施例及び比較例を用いて更に詳細に説明する。し
かしながら本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】 [実験例A]
実験例A(例A-1~A-3)では、母材粒子として酸化タンタル
(Ta2O5)粒子を用い、これに助触媒たるAg粒子を担持させて
光触媒粒子を作製した。助触媒担持は、超音波還元法、化学還元法、
又は含浸法で行った。また、助触媒(Ag粒子)の母材粒子に対する
担持量(Ag濃度)を0.5質量%に固定した。
【0062】
ー 中 略 ー
●
今日の言葉:コンパクト化で大切なのは熱設計(縮膨張代・安全性)
春が来ても、鳥たちは姿を消し鳴き声も聞こえない。
春だというのに自然は沈黙している。
レイチェル・カーソン 『沈黙の春』