宣公十二年(- 597) 邲(ひつ)の戦い / 楚の荘王制覇の時代
♞ 晋の知罃(ちおう)、とらわる
※ 楚の大夫熊員羈は晋の下軍の大夫荀首(荀林父の弟、知荘子)の子の知罃を生
捕りにした。萄首は のとなり、その一族郎党を従えて知罃を奪返しようと引
き返した。厨武子(魏錡)が車御となり、下軍の兵士のの大部分はそのあとに
従った。
萄首は弓を射るたびに、よい矢を抜きとって前にいる厨武子の矢袋に入れた。
厨武子が怒って、「あなたは御子息を取り返そうとなさっているはずだ。それ
なのに矢を借しむとは何事です。矢の材料なら董沢にそれこそ採り尽くせぬほ
どあるではありませんか」
萄首は言った。
「人の子を捕えないことには、わが子は取り返せぬからな。わたしは無駄矢を
射るわけに行かぬのだ」
果たしてかれは楚の連尹襄老を射とめてその死骸を車に載せ、さらに楚の公子
穀臣(荘王の子)を射てこれを生捕りにし、この二者を連れ帰った。
日が暮れて、楚軍は筆部に陣営をかまえた。百の敗残部隊は陣営を設営するこ
とができず、夜になって黄河を渡った。人馬の騒ぐ音が夜通し続いた。
★ このようにして晋は敗北した。実力において晋は必ずしも楚に劣っていたわ
けではなかったが、将軍間の不和がこの大敗をもたらしたのである。その秋、
晋軍は本国に引きあげた。帰着するや元帥萄林父は、敗軍の責任を負うて、
晋侯に死を賜らんことを請うた。晋侯は願いをいれようとしたが士貞子(士
渥独)が、城濮の戦いの後、楚が子玉を自殺せしめた轍を踏むべきでないと
疎めたので、罰をとりやめた。この判断が正しかったことは、後に荷林父が
晋のため荻を鍼ぼす大功を立てたことで証明される。
☑ エドワード・ジョセフ・スノーデン
Edward Joseph Snowden、1983年6月21日 - )は、アメリカ国家安全保障局 (NSA) および中央情報局
(CIA) の元局員。NSAで請負仕事をしていたアメリカ合衆国のコンサルタント会社「ブーズ・アレン・
ハミルトン」のシステム分析官としてアメリカ合衆国連邦政府による情報収集活動に関わる。➲2013
年6月に、香港で複数の新聞社(ガーディアン、ワシントン・ポストおよびサウスチャイナ・モーニ
ング・ポスト)の取材やインタビューを受け、これらのメディアを通じてNSAによる個人情報収集の
手口を告発。(PRISM)。➲2013年6月22日、米司法当局により逮捕命令が出され、エクアドルなど
第三国への亡命を検討しているとされていたが、同年8月1日にロシア移民局から期限付きの滞在許可
証が発給されロシアに滞在中である。➲2014年1月、ノルウェーのボード・ソールエル(英語版)元
環境大臣からノーベル平和賞候補に推薦されている(閲覧出典:Wikipedia,日本語版 2017.08.05)。
✔ 略歴
☈1983年6月21日、アメリカ合衆国ノースカロライナ州エリザベスシティで生まれ、ウィルミントン
市で育てられた。父ロニー・スノーデンは、ペンシルバニア州籍でアメリカ沿岸警備隊に勤務し、母
はボルチモア出身でメリーランド州の連邦裁判所職員を務める。国家公務員として公職に就く両親の
元に育ち、後に自らもCIA職員として公職を務める事になる。16歳の時、両親の離婚により、母方の
故郷であるメリーランド州のエリコット・シティに転居。☈病気療養――伝染性単核球症(キス病)
のため、約9ヵ月の間学校を休校――を理由にボルチモアの高校を退校、General Educational Develop-
ment(中等教育修了証)を取得し、メリーランド州のアン・アランデル・コミュニティカレッジ(単
科大学)に入学しプログラミングなど計算機科学を専攻。この時に学んだ知識が後の立場に繋がった
とみられるが、卒業はしておらず中退。☈インターネット上ではテクノロジー・ウェブサイト・Ars
Technicaに文章や写真及びゲームを投稿する常連投稿者として知られる。日本のアニメ・漫画・コン
ピュータゲームなども好み、趣味が高じて日本語を1年半ほど勉強したり、自分の名前を日本語のア
クセント風に「エドワアド」と発音することもある。ゲームについては対戦型格闘『鉄拳シリーズ』
のファンで、困難を物ともせず悪と戦うこのゲームが、自分の道徳観を形成した、あるいは、子供時
代はスポーツやテレビ鑑賞に関心を示さずギリシャ神話を読みふけり影響を受けたと語る※。☈2002
年から2004年にはアニメファンの同人サークル「Ryuhana(竜花) Press」の会員として、ウェブサイ
ト管理を引き受ける。
☈2004年5月7日、当時19歳であったスノーデンは大学を離れた後、対テロ戦争により米軍が大幅な
人員増加を進めに応じ、アメリカ合衆国軍に志願入隊。情報工学の知識を評価されて特技兵(技術担
当兵)の兵科に配属、さらにイラク戦争に派兵される予定の特殊部隊に配属され「自由の為の戦い」
のイラク戦争派遣を志願するも、訓練中の事故で両足骨折の重傷を負って同年9月28日に除隊。☈20
05年、ケース・アレクサンダーNSA長官との契約は12か月でスカウトを受け、メリーランド大学言語
研究センターの警備任務に配属される。☈2006年にCIA職員雇用されコンピュータセキュリティ関連
任務に参加。☈2007年スイスのジュネーヴでの情報収集に派遣され、同じくコンピュータセキュリテ
ィを担当。☈2009年2月にCIAを辞職。同年NSAと契約を結んでいたDELLに勤務、スノーデンは横田
基地内のNSA関連施設で任務]。高官や軍将校を対象に中国からのサイバー戦争に対する防衛技術を
指導。このとき、日本語に加え、中国語(普通話)や仏教などにも造詣を得る。☈2011年に彼はDELL
からの主任技術者としてCIAに出向メリーランドへ戻り、☈2012年3月、ハワイのNSA施設で主任技術
者となる。2011年時点でリヴァプール大学に籍を置いていたと報道。ブーズ・アレン・ハミルトンを
通じNSAのハワイ州「クニア地域シギント工作センター」に赴任、同拠点のシステム管理者に就任。
Kunia Regional SIGINT Operations Center
✔ 情報収集の告発
➲2012年3月から2013年3月、アメリカ合衆国の議会はNSA長官のケース・アレクサンダー将軍やジェ
ームズ・クラッパーアメリカ合衆国国家情報長官に対して、NSAが情報収集対象としアメリカ人の人
数の公表を繰り返し求める。2013年3月、クラッパー長官はアメリカ人に対する一切の情報収集を否
定。☈2012年12月1日、スノーデンはキンキナトゥスを名乗り、アメリカのジャーナリスト・グレン・
グリーンウォルド――グリーンウォルドはNSA批判で名が知られる――に電子メールを送る。盗聴を
恐れるスノーデンは、グリーンウォルドが電子メールにGnuPGをインストールして使うなら情報提供
すると持ちかけたがグリーンウォルドは多忙を理由にGnuPGのインストールを拒否、今度はVerax(ラ
テン語で「真実を述べる者」)と名乗り、ドキュメンタリー作家のローラ・ポイトラス(に電子メー
ルを送る。ポイトラスはグリーンウォルドにこの情報を伝え、グリーンウォルドはPGPその他のセキ
ュリティソフトをインストールした上でスノーデンとの折衝開始(なお、この時点のグリーンウォル
ドは「キンキナトゥス」と「Verax」が同一人物であることに気づいていない。
Glenn Edward Greenwald
☈2013年5月、スノーデンはハワイのオフィスで、告発の根拠となった文書(スノーデン自身のイン
タビューに先立って各紙で報道されたもの)を複写した後、病気の治療のために3週間の休暇が必要
だと上司に伝え、同月20日香港へ渡航した。九龍尖沙咀のホテルにチェックインし、『ガーディアン
』のインタビュー(グリーンウォルド、ポイトラス、ユーウェン・マカスキル)を受け、アメリカ合
衆国や全世界に対するNSAの『PRISM』による盗聴の実態と手口を内部告発。スノーデンは持ち出した
機密資料のコピーを分割して民間の報道機関に提供し、自身の身に危害が及んだ場合は自動的に取得、
全情報が流出すると述べる。香港で暴露した機密情報は、NSAの情報以外に、❶アメリカ合衆国を含
む全世界でのインターネット傍受、❷ IT企業の協力、❸ NSAの海外に対するクラッキング、❹同盟
国に対する情報収集、❺英国による情報収集など、☈2014年5月13日、スノーデンが持ち出した未公
開の機密文書を収めた書籍が、世界24か国で同時刊行。
Oct. 9, 2013
※Guardian has handed a gift to terrorists', warns MI5 chief: Left-wing paper's leaks caused, | Daily Mail Online
✔ スノーデンの主張
香港滞在中に、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に応じ以下のような主張を行う。
アメリカを離れて香港に移動したのは隠れるためではなく、アメリカの犯罪を暴くためである。 香港には退去の要請があるまで当分滞在する予定する。 アメリカ政府は市民の同意を尊重せず密かに情報収集作戦を行っていたが、この曝露により今後は社会への説明責任と監督が求められることになるだろう。 オバマ大統領は人権上問題のある政策を推進している。
✔ 逃亡
☈連邦捜査局(FBI)は情報漏洩罪など数十の容疑で捜査に乗り出す。スノーデンは、「表現の自由を
信じる国に政治亡命を求めたい」として複数のメディアを通じてアイスランドへの政治亡命を求める
もアイルランド拒否、香港の滞在先ホテルを記者らに特定されたために、その後は弁護士の案内で個
人宅に移動。☈ 同年6月23日にスノーデンは、香港国際空港発モスクワ行きの飛行機に搭乗し、モ
スクワのシェレメーチエヴォ国際空港に移動。アメリカは同氏のパスポートの失効手続きをしていた
が、
香港政府は手続きに不備があるとし、スノーデンの香港出国を追認。駐モスクワのエクアドル大使館
でエクアドル政府に亡命申請、同国のリカルド・パティーニョ・アロカ外務大臣は亡命申請を受け取
る。スノーデンは弁護士を通じて、空港内にある露外務省の領事部窓口に、キューバ・ベネズエラ・
中華人民共和国・スイスなど、18カ国の国々に対して亡命申請を行う。☈2014年7月、弁護士により
ロシア内の滞在期間延長が申請され3年間の期限付き居住権を得る。☈2017年1月に、スノーデンに
対するロシアの居住許可は、2020年まで延長される。☈2015年9月29日、スノーデン本人と認証され
たアカウントが突如現れ、僅か2日で118万人のフォロワーを獲得。☈2014年1月14日、アメリカ
のNPO「報道の自由財団」が取締役会の理事として迎える意向をホームページ上に発表。翌2月から
スノーデンは同理事に就任。☈2014年2月、グラスゴー大学の名誉総長に選出。☈2015年2月 エドワ
ード・スノーデンの一連の暴露をドキュメンタリー化した映画"CitizenFour"がアカデミー賞の長編ド
キュメンタリー賞を受賞。アメリカ連邦捜査局(FBI)のモラー長官は、NSAの情報収集について、何
ら違法性はないとの認識を示し、スノーデンの逮捕に向けて全力で捜査していると表明。☈2013年6
月22日、アメリカ合衆国司法省は逮捕状を取得。☈2013年7月に発表されたアメリカのキニピアック
大学の世論調査ではスノーデンを内部告発者だと考える有権者が55%に上り、裏切り者だと考える
有権者は34%に留まる。
➲オバマは各国駐米大使館への盗聴に対して、一般論として「諜報機関を持つ国ならどの国でもやっ
ていることだ」として、同盟国の大使館に対する諜報活動を否定せず。情報収集活動の見直しを指示。
※。☈2013年10月にはクラッパー国家情報長官らがNSAによるドイツのメルケル首相ら35人の外国
首脳に対する長年に亘る盗聴を認める。一部はすでに中止されたが、一部は有益な情報をもたらして
いるとして継続されているという。また、盗聴の対象はNSAが独自に決定、オバマの承認は得ていな
かった――NSAは数多くの盗聴を行っているため、全ての活動について大統領に報告することは現実
的ではないとの弁明を行う。
※ オバマ大統領「情報機関がある国はどこでもやること」アサヒ新聞デジタル, 2017.07.02
✔ 日本政府の対応
菅義偉内閣官房長官は「米国内の問題なので、米国内で処理されることだ」「日米間の外交において
は、しっかりと秘密は守られるべきだ」とのみ述べる]。☈2015年7月31日には、内部告発サイト「ウ
ィキリークス」がNSA(アメリカ国家安全保障局)が少なくとも2006年ごろから日本の内閣、日本銀
行、財務省などの幹部の盗聴を試みていたとして、米政府の関連文書を公開する。菅義偉内閣官房長
官と安倍晋三内閣総理大臣は「事実であれば極めて遺憾」と述べたが、抗議には至らず。
● 事件背景と告発の意味Ⅱ
第1章 スノーデンの日本への警告
議会はどうでしょうか。実際、アメリカの議会にはこうしたプログラムを監視する義務があ
ります。この義務に基づいて、議会はDNI(国家情報長官;Director of National lntelligence)
というインテリジェンス部門のトップであったジェームズ・クラッパー将軍に対し監視プログ
ラムに関して証言を求めたことがあります。宣誓に基づく証言なのでここで嘘をつくことは重
罪になります。質問者は情報機関の活動を監督する上院議員でした。情報機関は法に従って活
動しているのか、NSAがアメリカ人を対象に大規模な監視捜査を実施していることはないか、
行っている場合必要な手続きを踏んでいるかということを尋ねました。「はい」という回答を
予想しますよね。あるいは、国家機密保護法で発言することが法的に禁止されている場合には、「
公開された議会で回答することはできません。機密が保持される会議において、機密が保持さ
れる討議をする必要があります」などと答えるはずだと思いますよね。ところが実際には、以
下のようなやりとりになりました。
上院議員 NSAは、数百万人あるいは数億人のアメリカ人から情報を収集していますか。
クラッバー 国家情報長官いえ、ありません。
上院議員 集めてないのですか。
クラッパー国家情報長官 意図的には集めていません。NSAが、偶発的に収集してしま
ったということはあるかもしれませんが、意図的ではありません。
政府の高官が、議会において一般的・概括的な文脈で質問を受けながら、秘密保持が優先さ
れると判断したわけです。この事実が、アメリカの民主主義あるいは日本の民主主義にとって
何を意味するか考えてみて下さい。オサマ・ビン・ラディンのスパイをしていますかと尋ねて
いるわけではありません。具体的な捜査手法を尋ねているわけでもありません。
一般論として、この国のすべての人の憲法上の権利は侵害されていないのか、この国の国民
はスパイの対象になっていないのかと質問され、将軍はNOと笞えているのです。これは危険
です。これは説明責任に対する大きな脅威です。民主主義社会において秘密とは何かという重
大な問題を提起しています。
総力戦の時代、すなわち港に潜水艦や魚雷を配備し、戦時配給態勢に入り、外国からまさに
侵略されているような事態にあるならば、軍事上の必要性や我々の社会を根本から揺るがす脅
威が存在することを理由に、法制度を変更することも許されるでしょう。
しかし、果たして今の世の中に、私たちが享受する市民としてのすべての権利を放棄しなけ
ればならないような、社会を根本から揺るがす脅威が存在するでしょうか。私たちの社会を素
晴らしいものにしている環境や、私たちの社会を真似したいと思わせるような理念をすべて投
げ出さなければならないような脅威が存在するのでしょうか。人々が、日本に住みたい、アメ
リカに住みたいと思う理由を放棄していいのでしょうか。
さらに重要なことは、このような秘密主義は政治の意思決定のプロセスや官僚の質を変えて
しまうということです。ある政策が適切なのか、信頼できるのか、正しいのかといったこと
は、ジャーナリストが知るべき事実です。政策がどのように実施されているかを知ることも大
変重要です。
しかし、政府が安全保障を理由として、政策の実施過程は説明せず、単に法律に従っている
と説明するだけとなれば、ジャーナリストが政策の実施過程を知ることはできなくなり、やが
て政府による法律の濫用が始まるでしょう。政府からすれば、何をやっても伝えなくてよいと
いう普遍的な正当化の盾を持っていると思うわけですから。
もちろん政府を信頼する人もいるでしょう。それは問題ありません。しかし、信頼するとし
ても仕組みは必要です。仮に政府が信頼を裏切り、権限を逸脱し、法律に違反した時には、私
たちが法律に違反した時と同様、説明責任が問われなければなりません。しかし、「秘密」は
この仕組み自体を危険にさらしてしまうわけです。
第1章 スノーデンの日本への警告
イントロダクション:秘密主義は政治の意思決定のプロセスや
官僚の質を変えてしまう
メディアは大きな変革をもたらす力を持つ
彼は、政府の権限濫用を抑止するためのメディアの重要性について言及するが、アメリカの主流メデ
ィアの一部はあなたを裏切り者と呼んでいるが、一体主流メディアの役割をどのように見ているのだ
ろうか?主流メディアは、政府の暴走を抑止する役割を果たしうると思うかと問いかけにタイしてつ
ぎのようにこたえる。
はい。果たしうると思います。私は、自分がどう呼ぼれようとどうでもいいと思っていま
す。なぜなら問題とされているのは私自身のことではなく私たちのことだからです。自分の
国を愛していれば、自分が少々批判されても耐えられます。私を非難することは勝手です。
しかし、ジャーナリズムが生み出した変化を非難することはできないはずです。
2013年の暴露をきっかけに、アメリカ政府が合法的だと言い続けてきた問題が初めて
公開の法廷で審査され、裁判所はこのブログラムについて、法律の授権をまったく受けてい
ないというだけでなく、私が主張していたように、違憲と考えられると判断しました。裁判所
は、ジョージーオーウェルの書いた『一九八四年』という小説に言及しながら、これらのプロ
グラムの及ぶ範囲はオーウェル的だと述べています。
また、議会がほぼ四〇年ぶりに、情報当局の権限を拡大するのではなく制約する法律を制定
しました。私は彼のファンではありませんが、オバマ大統領(当時)は、私がやったことは絶
対許すことはできないが、このような問題について議論したことはアメリカを強くしたと述べ
ています。
また、オバマ政権の下で、アメリカ史上初めて、日本国民やドイツ国民などの外国人に対し
て、わずかではありますがプライバシーが保障されることとなりました云)。もちろん規模と
しては小さいです。意味ある改革ではありません。でも、第一歩ではあります。
私を嫌いであればどうぞ非難して下さい。それはもちろんフェアなことです。私が選んだ方
法についても、非難したい人は非難していただいて結構です。でも私が申し七げたような変化
は、今まで公にされていなかったことが明らかにされなければ生じなかった変化です。それこ
そがメディアの方にフォーカスしていただきたいことです。私の性格や顔なんてどうでもよい
のです。もっと本質的な議論をしましょう。
メディアは大きな変革をもたらす力を持っています。今回の暴露において本当のヒーローは
私のような内部占発者ではありません。ヒーローはジャーナリストたちです。彼らは、政府の
脅迫に立ち向かいました。イギリスでは、すでに報告されているように、政府関係者が実際に
メディアの社内に立ち入って、ジャーナリストに対して、資料をすべて破棄し、ハードドライ
ブやラップトップを物理的に破壊するように命じたのです1づ詞帽。政府関係者は、確実に破
壊されたことを確認するために現場に立ち会っていました。
けれどもジャーナリストは屈しませんでした。彼、彼女らは、その情報を電子的にニューヨ
ークに移転したのです。ニューヨーク市であれば、英国政府が情報を破棄させる権限を有して
いなかったためです。
第1章 スノーデンの日本への警告
イントロダクション:メディアは大きな変革をもたらす力を持つ
日本の報道は危機的状況
政府は自分たちの持つ地位と権力を理解しています。政府は放送法の再解釈を通じてプレッ
シャーをかけています。政府はあたかも公平性を装った警察のようにふるまいます。「この報
道は公平ではないように思われますね、報道が公平でないからといって具体的に政府として何
かをするわけではありませんが、公平でない報道は報道規制に反する可能性がありますね」な
どとほのめかすのです。
こうした類の脅迫は、メディア各社の上層部に明確に伝わっています。これは驚くことでは
ありません。メディアの事情も理解はできますが、脅威に屈してはいけません。政府が嫌いな
ニュース会社やニュースキャスターを排除してはなりません。今求められていることは連帯で
す。
ニュース絹織、TBS、NHK、テレビ朝日、その他のさ末ざまなテレビ・チャンネル、そ
してジャーナリスト団体が一緒になって、自由な報道というものは政府の言いなりになって書
くのではないこと、聞かれた社会における報道の自由の目的は政府による情報の独占に対抗す
ることにあることを訴え続ける必要があります。
とりわけ、日本社会や日本で暮らす人々の権利に大きな影響を及ぼす事項については、対抗
していく必要があります。政府の動きを調査できなければ、企業の動きを調査できなければ、
また調査の結果判明した実態を人々に伝えることができなければ、ジャーナリストではなくな
ってしまいます、ジャーナリストではなくただの速記者です。それは日本の市民社会にとって
非常に大きな損失であり、ひいては日本にとっても大きな損失だと思います。
第1章 スノーデンの日本への警告
イントロダクション:日本の報道は危機的状況
暗号化技術がプライバシーを守る鍵
Q:アップルのような企業が、政府によるマス・サーベイランランスから個人のプライバシーを守っ
てくれると期待していいだろうか
過去数十年で監視がこれほど爆発的に拡大したのは、技術的に筒単になり経済的に安くなっ
たためです。政府からすればやらない理由がないわけです。学術的にも技術的にも難しさはな
く、またほとんど無料で技術を入手できます。修士号を持っている優秀な学生であれば、今回
の監視プログラムを数カ月で複製できるでしょう。
政府にとって現実的な問題は情報を集める際の利益面量だけでした。令状を取得して収集で
きる範囲はどこまでか、企業にお願いしたり威嚇したりすることで取得できる範囲はどうかと
いった問題だけが現実の課題でした。
しかし、今回のリークによってインターネットの安全性に企業が疑問を抱くようになり、政
府のこの目論見は修正を余儀なくされつつあります。
2013年のリークによって得られた技術的な教訓は、ネットワークの回路は危険に満ちあ
ふれているということです。2013年以前から、インターネット通信の傍受が可能であると
いうことは理論的には明らかでした。ハッカー集団に悪用されうるということも理論的には明
らかでしたが、証拠はありませんでした。こうした活動を政府が行っているという確証もあり
ませんでした。
今回のリークにより、政府がインターネット回禄を傍受して、テロリストだけでなくまった
く無罪の人をも監視しているということが明らかになりました。
これを受けて企業もセキュリティ・レベルを上げています。多くの企業が、通信回路が危険
なネットワークであることに気付きました。たとえば、オープン・ウィスパー・システム社
(Open Whisper Systems Signalのような暗号化された電話プログラムを用いずに電話をかけたり、
WhatsAPPのように暗号化されたアプリを用いずにテキストメッセージを送るということは、ま
ったくの無暗号ということです。裸の通信ということです。誰でもそれを見ることができます。
保存して、利用することもできてしまいます。暗号化は裸のコミュニケーションに鎧を着せる
ようなものです。コミュニケーションに服を着せて、安全な形でこの危険な道を歩けるように
する、そして目的地に安全にたどり着けるようにするということです。
第1章 スノーデンの日本への警告
イントロダクション:暗号化技術がプライバシーを守る鍵