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スノーデンの返信 Ⅱ

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             宣公十二年(- 597) 邲(ひつ)の戦い   / 楚の荘王制覇の時代


                                                

    ♞ 晋の知罃(ちおう)、とらわる

    ※ 楚の大夫熊員羈は晋の下軍の大夫荀首(荀林父の弟、知荘子)の子の知罃を生
      捕りにした。萄首は のとなり、その一族郎党を従えて知罃を奪返しようと引
      き返した。厨武子(魏錡)が車御となり、下軍の兵士のの大部分はそのあとに
      従った。

      萄首は弓を射るたびに、よい矢を抜きとって前にいる厨武子の矢袋に入れた。
      厨武子が怒って、「あなたは御子息を取り返そうとなさっているはずだ。それ
      なのに矢を借しむとは何事です。矢の材料なら董沢にそれこそ採り尽くせぬほ
      どあるではありませんか」
      萄首は言った。
      「人の子を捕えないことには、わが子は取り返せぬからな。わたしは無駄矢を
      射るわけに行かぬのだ」

      果たしてかれは楚の連尹襄老を射とめてその死骸を車に載せ、さらに楚の公子
      穀臣(荘王の子)を射てこれを生捕りにし、この二者を連れ帰った。
      日が暮れて、楚軍は筆部に陣営をかまえた。百の敗残部隊は陣営を設営するこ
            とができず、夜になって黄河を渡った。人馬の騒ぐ音が夜通し続いた。

     ★ このようにして晋は敗北した。実力において晋は必ずしも楚に劣っていたわ
       けではなかったが、将軍間の不和がこの大敗をもたらしたのである。その秋、
       晋軍は本国に引きあげた。帰着するや元帥萄林父は、敗軍の責任を負うて、
       晋侯に死を賜らんことを請うた。晋侯は願いをいれようとしたが士貞子(士
       渥独)が、城濮の戦いの後、楚が子玉を自殺せしめた轍を踏むべきでないと
       疎めたので、罰をとりやめた。この判断が正しかったことは、後に荷林父が
       晋のため荻を鍼ぼす大功を立てたことで証明される。

 

   Full Movie

☑ エドワード・ジョセフ・スノーデン 

Edward Joseph Snowden、1983年6月21日 - )は、アメリカ国家安全保障局 (NSA) および中央情報局
(CIA) の元局員。NSAで請負仕事をしていたアメリカ合衆国のコンサルタント会社「ブーズ・アレン・
ハミルトン」のシステム分析官としてアメリカ合衆国連邦政府による情報収集活動に関わる。➲2013
年6月に、香港で複数の新聞社(ガーディアン、ワシントン・ポストおよびサウスチャイナ・モーニ
ング・ポスト)の取材やインタビューを受け、これらのメディアを通じてNSAによる個人情報収集の
手口を告発。(PRISM)。➲2013年6月22日、米司法当局により逮捕命令が出され、エクアドルなど
第三国への亡命を検討しているとされていたが、同年8月1日にロシア移民局から期限付きの滞在許可
証が発給されロシアに滞在中である。➲2014年1月、ノルウェーのボード・ソールエル(英語版)元
環境大臣からノーベル平和賞候補に推薦されている(閲覧出典:Wikipedia,日本語版 2017.08.05)。

✔ 略歴

☈1983年6月21日、アメリカ合衆国ノースカロライナ州エリザベスシティで生まれ、ウィルミントン
市で育てられた。父ロニー・スノーデンは、ペンシルバニア州籍でアメリカ沿岸警備隊に勤務し、母
はボルチモア出身でメリーランド州の連邦裁判所職員を務める。国家公務員として公職に就く両親の
元に育ち、後に自らもCIA職員として公職を務める事になる。16歳の時、両親の離婚により、母方の
故郷であるメリーランド州のエリコット・シティに転居。☈病気療養――伝染性単核球症(キス病
のため、約9ヵ月の間学校を休校――を理由にボルチモアの高校を退校、General Educational Develop-
ment(中等教育修了証)を取得し、メリーランド州のアン・アランデル・コミュニティカレッジ(単
科大学)に入学しプログラミングなど計算機科学を専攻。この時に学んだ知識が後の立場に繋がった
とみられるが、卒業はしておらず中退。☈インターネット上ではテクノロジー・ウェブサイト・Ars
Technicaに文章や写真及びゲームを投稿する常連投稿者として知られる。日本のアニメ・漫画・コン
ピュータゲームなども好み、趣味が高じて日本語を1年半ほど勉強したり、自分の名前を日本語のア
クセント風に「エドワアド」と発音することもある。ゲームについては対戦型格闘『鉄拳シリーズ』
のファンで、困難を物ともせず悪と戦うこのゲームが、自分の道徳観を形成した、あるいは、子供時
代はスポーツやテレビ鑑賞に関心を示さずギリシャ神話を読みふけり影響を受けたと語る。☈2002
年から2004年にはアニメファンの同人サークル「Ryuhana(竜花) Press」の会員として、ウェブサイ
ト管理を引き受ける。

☈2004年5月7日、当時19歳であったスノーデンは大学を離れた後、対テロ戦争により米軍が大幅な
人員増加を進めに応じ、アメリカ合衆国軍に志願入隊。情報工学の知識を評価されて特技兵(技術担
当兵)の兵科に配属、さらにイラク戦争に派兵される予定の特殊部隊に配属され「自由の為の戦い」
のイラク戦争派遣を志願するも、訓練中の事故で両足骨折の重傷を負って同年9月28日に除隊。☈20
05年、ケース・アレクサンダーNSA長官との契約は12か月でスカウトを受け、メリーランド大学言語
研究センターの警備任務に配属される。☈2006年にCIA職員雇用されコンピュータセキュリティ関連
任務に参加。☈2007年スイスのジュネーヴでの情報収集に派遣され、同じくコンピュータセキュリテ
ィを担当。☈2009年2月にCIAを辞職。同年NSAと契約を結んでいたDELLに勤務、スノーデンは横田
基地内のNSA関連施設で任務]。高官や軍将校を対象に中国からのサイバー戦争に対する防衛技術を
指導。このとき、日本語に加え、中国語(普通話)や仏教などにも造詣を得る。☈2011年に彼はDELL
からの主任技術者としてCIAに出向メリーランドへ戻り、☈2012年3月、ハワイのNSA施設で主任技術
者となる。2011年時点でリヴァプール大学に籍を置いていたと報道。ブーズ・アレン・ハミルトンを
通じNSAのハワイ州「クニア地域シギント工作センター」に赴任、同拠点のシステム管理者に就任。

 
Kunia Regional SIGINT Operations Center

✔ 情報収集の告発 

➲2012年3月から2013年3月、アメリカ合衆国の議会はNSA長官のケース・アレクサンダー将軍やジェ
ームズ・クラッパーアメリカ合衆国国家情報長官に対して、NSAが情報収集対象としアメリカ人の人
数の公表を繰り返し求める。2013年3月、クラッパー長官はアメリカ人に対する一切の情報収集を否
定。☈2012年12月1日、スノーデンはキンキナトゥスを名乗り、アメリカのジャーナリスト・グレン・
グリーンウォルド――グリーンウォルドはNSA批判で名が知られる――に電子メールを送る。盗聴を
恐れるスノーデンは、グリーンウォルドが電子メールにGnuPGをインストールして使うなら情報提供
すると持ちかけたがグリーンウォルドは多忙を理由にGnuPGのインストールを拒否、今度はVerax(ラ
テン語で「真実を述べる者」)と名乗り、ドキュメンタリー作家のローラ・ポイトラス(に電子メー
ルを送る。ポイトラスはグリーンウォルドにこの情報を伝え、グリーンウォルドはPGPその他のセキ
ュリティソフトをインストールした上でスノーデンとの折衝開始(なお、この時点のグリーンウォル
ドは「キンキナトゥス」と「Verax」が同一人物であることに気づいていない。

 Glenn Edward Greenwald

☈2013年5月、スノーデンはハワイのオフィスで、告発の根拠となった文書(スノーデン自身のイン
タビューに先立って各紙で報道されたもの)を複写した後、病気の治療のために3週間の休暇が必要
だと上司に伝え、同月20日香港へ渡航した。九龍尖沙咀のホテルにチェックインし、『ガーディアン
』のインタビュー(グリーンウォルド、ポイトラス、ユーウェン・マカスキル)を受け、アメリカ合
衆国や全世界に対するNSAの『PRISM』による盗聴の実態と手口を内部告発。スノーデンは持ち出した
機密資料のコピーを分割して民間の報道機関に提供し、自身の身に危害が及んだ場合は自動的に取得、
全情報が流出すると述べる。香港で暴露した機密情報は、NSAの情報以外に、❶アメリカ合衆国を含
む全世界でのインターネット傍受、❷ IT企業の協力、❸ NSAの海外に対するクラッキング、❹同盟
国に対する情報収集、❺英国による情報収集など、☈2014年5月13日、スノーデンが持ち出した未公
開の機密文書を収めた書籍が、世界24か国で同時刊行。 

  Oct. 9, 2013
※Guardian has handed a gift to terrorists', warns MI5 chief: Left-wing paper's leaks caused, | Daily Mail Online

✔ スノーデンの主張

香港滞在中に、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に応じ以下のような主張を行う。

アメリカを離れて香港に移動したのは隠れるためではなく、アメリカの犯罪を暴くためである。 香港には退去の要請があるまで当分滞在する予定する。 アメリカ政府は市民の同意を尊重せず密かに情報収集作戦を行っていたが、この曝露により今
後は社会への説明責任と監督が求められることになるだろう。 オバマ大統領は人権上問題のある政策を推進している。

✔ 逃亡

☈連邦捜査局(FBI)は情報漏洩罪など数十の容疑で捜査に乗り出す。スノーデンは、「表現の自由を
信じる国に政治亡命を求めたい」として複数のメディアを通じてアイスランドへの政治亡命を求める
もアイルランド拒否、香港の滞在先ホテルを記者らに特定されたために、その後は弁護士の案内で個
人宅に移動。☈ 同年6月23日にスノーデンは、香港国際空港発モスクワ行きの飛行機に搭乗し、モ
スクワのシェレメーチエヴォ国際空港に移動。アメリカは同氏のパスポートの失効手続きをしていた
が、
香港政府は手続きに不備があるとし、スノーデンの香港出国を追認。駐モスクワのエクアドル大使館
でエクアドル政府に亡命申請、同国のリカルド・パティーニョ・アロカ外務大臣は亡命申請を受け取
る。スノーデンは弁護士を通じて、空港内にある露外務省の領事部窓口に、キューバ・ベネズエラ・
中華人民共和国・スイスなど、18カ国の国々に対して亡命申請を行う。☈2014年7月、弁護士により
ロシア内の滞在期間延長が申請され3年間の期限付き居住権を得る。☈2017年1月に、スノーデンに
対するロシアの居住許可は、2020年まで延長される。☈2015年9月29日、スノーデン本人と認証され
たアカウントが突如現れ、僅か2日で118万人のフォロワーを獲得。☈2014年1月14日、アメリカ
のNPO「報道の自由財団」が取締役会の理事として迎える意向をホームページ上に発表。翌2月から
スノーデンは同理事に就任。☈2014年2月、グラスゴー大学の名誉総長に選出。☈2015年2月 エドワ
ード・スノーデンの一連の暴露をドキュメンタリー化した映画"CitizenFour"がアカデミー賞の長編ド
キュメンタリー賞を受賞。アメリカ連邦捜査局(FBI)のモラー長官は、NSAの情報収集について、何
ら違法性はないとの認識を示し、スノーデンの逮捕に向けて全力で捜査していると表明。☈2013年6
月22日、アメリカ合衆国司法省は逮捕状を取得。☈2013年7月に発表されたアメリカのキニピアック
大学の世論調査ではスノーデンを内部告発者だと考える有権者が55%に上り、裏切り者だと考える
有権者は34%に留まる。

 Oct. 30, 2013

➲オバマは各国駐米大使館への盗聴に対して、一般論として「諜報機関を持つ国ならどの国でもやっ
ていることだ」として、同盟国の大使館に対する諜報活動を否定せず。情報収集活動の見直しを指示。
※。☈2013年10月にはクラッパー国家情報長官らがNSAによるドイツのメルケル首相ら35人の外国
首脳に対する長年に亘る盗聴を認める。一部はすでに中止されたが、一部は有益な情報をもたらして
いるとして継続されているという。また、盗聴の対象はNSAが独自に決定、オバマの承認は得ていな
かった――NSAは数多くの盗聴を行っているため、全ての活動について大統領に報告することは現実
的ではないとの弁明を行う。

※ オバマ大統領「情報機関がある国はどこでもやること」アサヒ新聞デジタル, 2017.07.02

✔ 日本政府の対応

菅義偉内閣官房長官は「米国内の問題なので、米国内で処理されることだ」「日米間の外交において
は、しっかりと秘密は守られるべきだ」とのみ述べる]。☈2015年7月31日には、内部告発サイト「ウ
ィキリークス」がNSA(アメリカ国家安全保障局)が少なくとも2006年ごろから日本の内閣、日本銀
行、財務省などの幹部の盗聴を試みていたとして、米政府の関連文書を公開する。菅義偉内閣官房長
官と安倍晋三内閣総理大臣は「事実であれば極めて遺憾」と述べたが、抗議には至らず。 

  

● 事件背景と告発の意味Ⅱ  

    第1章 スノーデンの日本への警告     

  議会はどうでしょうか。実際、アメリカの議会にはこうしたプログラムを監視する義務があ  
 ります。この義務に基づいて、議会はDNI(国家情報長官;Director of National lntelligence)
 というインテリジェンス部門のトップであったジェームズ・クラッパー将軍に対し監視プログ
 ラムに関して証言を求めたことがあります。宣誓に基づく証言なのでここで嘘をつくことは重
 罪になります。質問者は情報機関の活動を監督する上院議員でした。情報機関は法に従って活
 動しているのか、NSAがアメリカ人を対象に大規模な監視捜査を実施していることはないか、
 行っている場合必要な手続きを踏んでいるかということを尋ねました。「はい」という回答を
 予想しますよね。あるいは、国家機密保護法で発言することが法的に禁止されている場合には、「
 公開された議会で回答することはできません。機密が保持される会議において、機密が保持さ
 れる討議をする必要があります」などと答えるはずだと思いますよね。ところが実際には、以
 下のようなやりとりになりました。

  上院議員  NSAは、数百万人あるいは数億人のアメリカ人から情報を収集していますか。
  クラッバー 国家情報長官いえ、ありません。
  上院議員  集めてないのですか。
  クラッパー国家情報長官  意図的には集めていません。NSAが、偶発的に収集してしま
  ったということはあるかもしれませんが、意図的ではありません。

  政府の高官が、議会において一般的・概括的な文脈で質問を受けながら、秘密保持が優先さ
 れると判断したわけです。この事実が、アメリカの民主主義あるいは日本の民主主義にとって
 何を意味するか考えてみて下さい。オサマ・ビン・ラディンのスパイをしていますかと尋ねて
 いるわけではありません。具体的な捜査手法を尋ねているわけでもありません。
  一般論として、この国のすべての人の憲法上の権利は侵害されていないのか、この国の国民
 はスパイの対象になっていないのかと質問され、将軍はNOと笞えているのです。これは危険
 です。これは説明責任に対する大きな脅威です。民主主義社会において秘密とは何かという重
 大な問題を提起しています。

  総力戦の時代、すなわち港に潜水艦や魚雷を配備し、戦時配給態勢に入り、外国からまさに
 侵略されているような事態にあるならば、軍事上の必要性や我々の社会を根本から揺るがす脅
 威が存在することを理由に、法制度を変更することも許されるでしょう。
  しかし、果たして今の世の中に、私たちが享受する市民としてのすべての権利を放棄しなけ
 ればならないような、社会を根本から揺るがす脅威が存在するでしょうか。私たちの社会を素
 晴らしいものにしている環境や、私たちの社会を真似したいと思わせるような理念をすべて投
 げ出さなければならないような脅威が存在するのでしょうか。人々が、日本に住みたい、アメ
 リカに住みたいと思う理由を放棄していいのでしょうか。
  さらに重要なことは、このような秘密主義は政治の意思決定のプロセスや官僚の質を変えて
 しまうということです。ある政策が適切なのか、信頼できるのか、正しいのかといったこと
 は、ジャーナリストが知るべき事実です。政策がどのように実施されているかを知ることも大
 変重要です。

  しかし、政府が安全保障を理由として、政策の実施過程は説明せず、単に法律に従っている
 と説明するだけとなれば、ジャーナリストが政策の実施過程を知ることはできなくなり、やが
 て政府による法律の濫用が始まるでしょう。政府からすれば、何をやっても伝えなくてよいと
 いう普遍的な正当化の盾を持っていると思うわけですから。
  もちろん政府を信頼する人もいるでしょう。それは問題ありません。しかし、信頼するとし
 ても仕組みは必要です。仮に政府が信頼を裏切り、権限を逸脱し、法律に違反した時には、私
 たちが法律に違反した時と同様、説明責任が問われなければなりません。しかし、「秘密」は
 この仕組み自体を危険にさらしてしまうわけです。 


                           第1章 スノーデンの日本への警告 
               イントロダクション:秘密主義は政治の意思決定のプロセスや
                                官僚の質を変えてしまう


                                       メディアは大きな変革をもたらす力を持つ

彼は、政府の権限濫用を抑止するためのメディアの重要性について言及するが、アメリカの主流メデ
ィアの一部はあなたを裏切り者と呼んでいるが、一体主流メディアの役割をどのように見ているのだ
ろうか?主流メディアは、政府の暴走を抑止する役割を果たしうると思うかと問いかけにタイしてつ
ぎのようにこたえる。

   はい。果たしうると思います。私は、自分がどう呼ぼれようとどうでもいいと思っていま
  す。なぜなら問題とされているのは私自身のことではなく私たちのことだからです。自分の
  国を愛していれば、自分が少々批判されても耐えられます。私を非難することは勝手です。
  しかし、ジャーナリズムが生み出した変化を非難することはできないはずです。
   2013年の暴露をきっかけに、アメリカ政府が合法的だと言い続けてきた問題が初めて
  公開の法廷で審査され、裁判所はこのブログラムについて、法律の授権をまったく受けてい
  ないというだけでなく、私が主張していたように、違憲と考えられると判断しました。裁判所
  は、ジョージーオーウェルの書いた『一九八四年』という小説に言及しながら、これらのプロ
  グラムの及ぶ範囲はオーウェル的だと述べています。
   また、議会がほぼ四〇年ぶりに、情報当局の権限を拡大するのではなく制約する法律を制定
  しました。私は彼のファンではありませんが、オバマ大統領(当時)は、私がやったことは絶
  対許すことはできないが、このような問題について議論したことはアメリカを強くしたと述べ
  ています。

   また、オバマ政権の下で、アメリカ史上初めて、日本国民やドイツ国民などの外国人に対し
  て、わずかではありますがプライバシーが保障されることとなりました云)。もちろん規模と
  しては小さいです。意味ある改革ではありません。でも、第一歩ではあります。
   私を嫌いであればどうぞ非難して下さい。それはもちろんフェアなことです。私が選んだ方
  法についても、非難したい人は非難していただいて結構です。でも私が申し七げたような変化
  は、今まで公にされていなかったことが明らかにされなければ生じなかった変化です。それこ
  そがメディアの方にフォーカスしていただきたいことです。私の性格や顔なんてどうでもよい
  のです。もっと本質的な議論をしましょう。

   メディアは大きな変革をもたらす力を持っています。今回の暴露において本当のヒーローは
  私のような内部占発者ではありません。ヒーローはジャーナリストたちです。彼らは、政府の
  脅迫に立ち向かいました。イギリスでは、すでに報告されているように、政府関係者が実際に
  メディアの社内に立ち入って、ジャーナリストに対して、資料をすべて破棄し、ハードドライ
  ブやラップトップを物理的に破壊するように命じたのです1づ詞帽。政府関係者は、確実に破
  壊されたことを確認するために現場に立ち会っていました。 
   けれどもジャーナリストは屈しませんでした。彼、彼女らは、その情報を電子的にニューヨ
  ークに移転したのです。ニューヨーク市であれば、英国政府が情報を破棄させる権限を有して
  いなかったためです。

                           第1章 スノーデンの日本への警告 
              イントロダクション:メディアは大きな変革をもたらす力を持つ  


                                日本の報道は危機的状況

   政府は自分たちの持つ地位と権力を理解しています。政府は放送法の再解釈を通じてプレッ
  シャーをかけています。政府はあたかも公平性を装った警察のようにふるまいます。「この報
  道は公平ではないように思われますね、報道が公平でないからといって具体的に政府として何
  かをするわけではありませんが、公平でない報道は報道規制に反する可能性がありますね」な
  どとほのめかすのです。
   こうした類の脅迫は、メディア各社の上層部に明確に伝わっています。これは驚くことでは 
  ありません。メディアの事情も理解はできますが、脅威に屈してはいけません。政府が嫌いな
  ニュース会社やニュースキャスターを排除してはなりません。今求められていることは連帯で
  す。
   ニュース絹織、TBS、NHK、テレビ朝日、その他のさ末ざまなテレビ・チャンネル、そ
  してジャーナリスト団体が一緒になって、自由な報道というものは政府の言いなりになって書
  くのではないこと、聞かれた社会における報道の自由の目的は政府による情報の独占に対抗す
  ることにあることを訴え続ける必要があります。
   とりわけ、日本社会や日本で暮らす人々の権利に大きな影響を及ぼす事項については、対抗
  していく必要があります。政府の動きを調査できなければ、企業の動きを調査できなければ、
  また調査の結果判明した実態を人々に伝えることができなければ、ジャーナリストではなくな
  ってしまいます、ジャーナリストではなくただの速記者です。それは日本の市民社会にとって
  非常に大きな損失であり、ひいては日本にとっても大きな損失だと思います。

                           第1章 スノーデンの日本への警告 
                      イントロダクション:日本の報道は危機的状況 


                            暗号化技術がプライバシーを守る鍵

Q:アップルのような企業が、政府によるマス・サーベイランランスから個人のプライバシーを守っ
てくれると期待していいだろうか

   過去数十年で監視がこれほど爆発的に拡大したのは、技術的に筒単になり経済的に安くなっ
  たためです。政府からすればやらない理由がないわけです。学術的にも技術的にも難しさはな
  く、またほとんど無料で技術を入手できます。修士号を持っている優秀な学生であれば、今回
  の監視プログラムを数カ月で複製できるでしょう。
   政府にとって現実的な問題は情報を集める際の利益面量だけでした。令状を取得して収集で
  きる範囲はどこまでか、企業にお願いしたり威嚇したりすることで取得できる範囲はどうかと
  いった問題だけが現実の課題でした。
   しかし、今回のリークによってインターネットの安全性に企業が疑問を抱くようになり、政
  府のこの目論見は修正を余儀なくされつつあります。
   2013年のリークによって得られた技術的な教訓は、ネットワークの回路は危険に満ちあ
  ふれているということです。2013年以前から、インターネット通信の傍受が可能であると
  いうことは理論的には明らかでした。ハッカー集団に悪用されうるということも理論的には明
  らかでしたが、証拠はありませんでした。こうした活動を政府が行っているという確証もあり
  ませんでした。
   今回のリークにより、政府がインターネット回禄を傍受して、テロリストだけでなくまった
  く無罪の人をも監視しているということが明らかになりました。
   これを受けて企業もセキュリティ・レベルを上げています。多くの企業が、通信回路が危険
   なネットワークであることに気付きました。たとえば、オープン・ウィスパー・システム社
  (Open Whisper Systems Signalのような暗号化された電話プログラムを用いずに電話をかけたり、
    WhatsAPPのように暗号化されたアプリを用いずにテキストメッセージを送るということは、ま
  ったくの無暗号ということです。裸の通信ということです。誰でもそれを見ることができます。
  保存して、利用することもできてしまいます。暗号化は裸のコミュニケーションに鎧を着せる
  ようなものです。コミュニケーションに服を着せて、安全な形でこの危険な道を歩けるように
  する、そして目的地に安全にたどり着けるようにするということです。

                            第1章 スノーデンの日本への警告 
                  イントロダクション:暗号化技術がプライバシーを守る鍵 





       
                                      この項つづく                                  

   

 


スノーデンの返信 Ⅲ

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    ☀ 今日の名言        

           量子力学が“わかった”と思っているうちは、まだわかっていない

                       リチャード・P・ファインマン


                              
                             May 11, 1918 – Feb. 15, 1988
 

             宣公13年~襄公20年 鞌(あん)の戦い   / 晋の復覇刻の時代


                                                

      ※  邲に敗れた晋にかわって、北方に覇を成さんとの野望を抱く斉の頃公は、成公
        二年春、みずから軍を率いて魯の北愉に攻め入った。その隙を衝いて、衛炭は
        孫良夫らに命じて行の地へ侵入をはかったが、途中、魯を敗って引きあげてく
        る行軍と遭遇した。夏、四月丙戌、行・衛両軍は衛の珀新築で戈を交えた。衛
        軍は敗れ、孫良夫は新築の大夫仲叙于奚に救われてかろうじて脱出し、すぐさ
        ま盟邦晋に救援をもとめる。

        【経】 六月癸酉、季孫行父、臧孫許、叔孫僑如、公孫嬰斉、師を帥いて、晋
            の郤克、衛の孫良夫、曹の公子首に会して、斉侯と鞌に戦う。斉の師、敗
                  績す。

 

● 事件背景と告発の意味 Ⅲ  

    第1章 スノーデンの日本への警告   

ここまで読み進め、スノーデンの教養に驚くことになる。前節(秘密主義は政治の意思決定のプロセ
スや官僚の質を変えてしまう」)で、総力戦の戦時配給態勢に入り、外国からまさに侵略されている
ような事態にあるならば、軍事上の必要性や社会を根本から揺るがす脅威が存在する場合の法制度変
更を許容するという、愛国青年の側面をのぞかせ実際主義(pragmatism) に立脚し日和っているとこ
ろがある。盗聴・監視はどこの国でも行っていると開き直るオバマ前アメリカ大統領と拮抗し曖昧さ
を残し学習課題を残しつつ、「大量監視の問題」として国際的な議論に俎上させることに成功する。
また、「暗号化技術がプライバシーを守る鍵」で暗号化技術が紹介されているが、権力側から暗号解
読技術が高度化されるというマッチポンプと協力企業の回転ドアーが活性化する。例えば、現状では
実用化できないが将来的には、ゲート方式の量子コンピューターでShorというアルゴリズムというア
ルゴリズムを使うと、素因数分解を劇的に高速計算し、RSA暗号を破れることが数学的に証明されて
おり、悪しき権力との戦いは終わることはない。

   

                     プライバシーは、自分であるために必要な権利

  マス・サーベイランスに関与する官僚は、「隠すことがなければ恐れる必要はありません」と
  述べて監視を正当化します。このような説明は第2次大戦中にナチスのプロパガンダで用いら
  れていたレトリックとまったく同じです。第2次回路大戦中のプロパガンダ省のゲッベルス大
  臣は、前代未聞の大規模な人権侵害が起きていた時にこう言いました。
 
  「心配することはありません。政府を信じて下さい。我々は権限を適切に使いますから」

   民主主義とはそういうものではないはずです。開かれた社会ではこのようなことは許されま
  せん。こうしたレトリックは、プライバシーを間違ってとらえています。
   ブライバシーとは、悪いことを隠すということではありません。ブライバシーとは力です。
  プライバシーとはあなた自信のことです。プライバシーは自分であるための権利です。他人に
  害を与えない限り自分らしく生きることのできる権利です。思索する時、文章を書く時、物語
  を想像する時に、他人の判断や偏見から自らを守る権利です。自分とは誰で、どのような人間
  になりたいのか、このことを誰に伝えるかを決めることのできる権利です。
   訪れるところ、関心や趣味、読んだ本の題名は、あなたが共有したいと思わない限り、ほか
  の人が知ることはできません。どこで線引きするかはあなた次第です。

                           第1章 スノーデンの日本への警告                                                     
          イントロダクション:プライバシーは、自分自分であるために必要な権利 

                                権限を有する人が説明責任を果たさねばならない

  Q:あなたの暴露があってから、一般人や政治家の間で、プライバシーと国家安全保障のバラ
    ンスをどうやって取るべきかについての議論が始まりました。実際、アメリカではアメリカ自
  由法(USA Freedom Act) が制定され、国連もプライバシーに関する対策を採りました。ご自
  身のリークがもたらしたこのような影響をどのように見ていますか。予想通りのリアクション
  でしょうか、それとも予想した以上の影響を及ぼしたでしょうか

  予想をけるかに上回る影響だと感じています。これは私個人によるものではなく、メディアの
  力によるものだと感じています。2013年以降、アメリカでは法律が改正され、大統領の政
  策も変わりました。2016年5月には、一年前に退任した前任のアメリカの司法長官、つま
  り、リークの当時、政府の司法部のトップにいた人が、私のリークは公共のためになったと述
  べています。この態度の変化はとてつもないものです。彼が個人的に私を評価するか否かは関
  係ありません。NSAのプログラムを擁護する人たちも、リークされた内容とそれがもたらし
  た結果を見て、アメリカにおいてこの問題に対する見方は完全に変わったと認めています。こ
  れはほかの国でも同様です。

  ヨーロッパは、包括的なマスーサーベイランスを可能にするデータ保持についての指針を撤回
  しました詞祠川。EUは、アメリカとEUのセーフハーバー合意が、基本的人権を侵害すると
  判断しました。国連も大量監視の問題は国際人権条約に違反しプライバシーを侵害すると初め
  て明言し、プライバシーの権利に関する特別報告者を任名しました。こうした事柄は、今まで
  は議論すらされてきませんでした。(中略)

  Oct. 15, 2014

    監視や情報機関について話をする際に、私たちは、直感的にこうした機関は私たちのために活
  動しているのだと思っていたわけです。これは自然な反応かもしれません。ほとんどの場合は
  その通りでしょう。しかし理解しなければならないことは、プロセスが秘密だということ、そ
  して、それが最終的に組織や個人にとってどういう意味を持つのかということです。
  どのような機関でも、説明責任から切り離され法律も適用されないという状況になれば、腐敗
  の影響が忍び寄ってきます。そして、権限が拡大し、影響力が拡大し、特権が拡大し、予算が
  拡大していくということになります。最初はごくわずかだった権力の濫用も次第に大きくなる
  でしょう。

  政府関係者の一部は、「もう心配する理由はない。監視プログラムは用いられない」と述べて
  います。また、「NSAは何ひとつ違法行為を行っていない。メタデータしか集めておらず、
  電話の中身を関いているわけではない」とも主張しています。しかし、裁判所はこのNSAの
  主張を明確に否定しました。実際、NSAの最高ランクの機密文書川利川には、NSAが法律
  やNSAの指針に一年間で2776回にわたって違反したと書かれています。毎年3000回
  近くにわたって違法行為に手を染めているのに、誰もその責任を問われていません。訴追され
  た人も投獄された人もいません。裁判所で検証されたことすらありません。

  自由で公平な社会を維持するためには、安全であるということだけでは足りません。権限を有
  する人たちが説明責任を果たさなければなりません。さもなければ社会の構造が二層化してし
  まいます。私のような一般人たちは法律を破れば厳正に処罰される一方、権力をもった官僚は
  同じように法を逸脱しても、国家安全保障のためであるなどと言い逃れできてしまいます。拷
  問をしても帽個月、国家安全保障のためとして免責されてしまいます。日本でも、たとえば犯
  罪と無関係にムスリム・コミュニティや神道関係のグループを監視しても、「監視する必要が
  あった」という言葉のみで、結果について責任を問われなくなってしまいます。
  こういう傾向が続けば、すなわち、法律に反しても政府の関係者であれば免責されるというこ
  とになれば、自由社会にとって回復できない打撃になるでしょう。坂道を転げ落ちていくよう
  に。

                           第1章 スノーデンの日本への警告                                                     
           イントロダクション:権限を有する人が説明責任を果たさねばならない 


                  人類史上未曽有のコンピューター・セキュリティの危機

  Q:情報技術について東大で勉強している方のようです。質問は、「監視の時代において、技
  術専門家の役割はどのようなものでしょうか。技術専門家の倫理というものはどうあるべきで
  しょうか」というものです。

  技術者が心得ておくべき最も重要なことは、完全に安全なシステムは現在のところ、誰にも作
  ることができないということす。もちろん努力は続けられていますが、メッセージ・プログラ
  ムであれプロトコルであれ、根本的な脆弱性が存在しています。政府が特別なアクセスを求め
  てくる時には、特定のグループに関する通信のセキュリティを突破するマスターキーを作るこ
  とを要請してくるわけです。アメリカ政府は、「そのためには裁判所の令状が必要で、事前に
  第三者が審査するから心配ない」と主張しています。しかし、インターネットの世界において
  ひとつの政府のために働くということは、必然的にすべての政府のために働くことになってし
  まうことを忘れてはなりません。たとえば、日本で何らかのサービスを提供している会社が日
  本の裁判所の令状に基づき日本政府に対し特定の通信にアクセスすることを認めるとします。

  一度認めてしまうとその後に中国政府がやってきて、「中国の裁判所の令状に基づいて情報を
  提供しなさい。さもなければ中国で製品を販売することは許されない」と言われてしまうわけ
  です。さらに、政府は合法的な捜査手続きを経る必要もサービスを提供する会社の協力を待つ
  必要もないということも留意しなければなりません。政府は、独力で特定のシステムに潜入し
  たりハッキングしたりすることができます。政府は、暗号化をすり抜けることができるわけで
  す。NSAは毎日やっています。暗号化か無意昧だと言っているのではありません。暗号化は
  今でも強力な方法です。しかし、暗号化は人々を集合的なレベルで保護してくれるに過ぎませ
  ん。すべての通信の暗号を解読することはできませんからね。他方で、暗号化をすり抜けて特
  定のデバイスにハッキングしてキーを盗むというようなことは可能なわけです。

  技術者として考えなければならないのは、私たちが人類史上未曽有のコンピューター・セキュ
  リティの危機の中に生きているということです。つまり、フェイスブックのメッセージやニコ
  ニコ動画その他のシステムを保護するためのものと同じ基準やプロトコルが、ダムの開閉や東
  京全体の灯りを制御する仕組みにおいても用いられているということです。政府に協力しこれ
  らのシステムを弱体化させるということは、単に自国の政府がシステムに入れるようにするだ
  けではなく、世界中のすべての政府との関係でこれらの基礎的なシステムが脆弱化してしまう
  ということです。

  その結果、システムの脆弱性が悪用され、政府に協力することによってあなたが防止しようと
  した被害よりも大きな被害が発生してしまう可能性もあります。私たちはまず、セキュリティ
  保護の質の問題に目を向けなければなりません。可能な限り強力なセキュリティのシステムが
  なければなりません。さもなければ私たちのすべての安全性が確保されなくなってしまうので
  す。

                            第1章 スノーデンの日本への警告                                                     
         イントロダクション:人類史上未曽有のコンピューター・セキュリティの危機

  May. 13 , 2014

                         民主主義では、市民が政府に法律を守れと言えなければならない

  Q:内部通報者の問題です。チェルシー・マニング(47)やダニエル・エルズバーグーという
    人物が過去にいましたが、こういった内部通報者は、安全な生活を捨て生命のリスクを冒しな
    がら活動し、場合によっては国を出なければならなくなりました。あなたは、政府の内部通報
    者にどのようなメッセージを送りたいと考えているのでしょうか

  アメリカの内部通報制度は現在うまく機能していません。適切な保護制度が存在しないのです。
  実はトーマス・ドレークという人物が、私よりも前にNSAの大量監視」に関して正式の手続
  きを通じて内部通報を行っていました。彼はジャーナリストとは接触せず、その前に政府内の
  監督機関、すなわち政府機関が法律を遵守しているかを確認する機関である監察官に面会して
  告発を申し出ていました。
  彼は議会の情報機関監視委員会にも話をしました。彼の行動は法律の定める手続きに則った正
  当なもので、本来これらの機関には彼を危険から守ることが期待されていました。彼は政府に
  よる典型的な権力濫用を通報したのであって、これらの機関は本来彼のキャリアを守り、彼が
  訴追されないようにするべきでした。
  しかし、彼は検察官に送り付けられました。本来であればNSAで高官の地位にいるべき人物
  であるにもかかわらず、政府から解雇され、家を失い、妻も失い、今はアップル・ストアで・
  iPadを売っています。このように内部通報制度はうまくいっていないのです。このことを理解
    することは重要です。

   ドレークはNSAに所属する最高位の法律家を訪ね、このプログラムは違法で違憲だと訴えま
    した。しかし、当時NSAに所属していた100人のうちナンバー2の役職にあった高官は、
  「私をかかわらせないでくれ。聞きたくない。私には関係ないことだ」と言ったのです。実際
  インタビューで次のように述べています(上図ダブクリ参照)。

  ------------------------------------------------------------------------------------

  ピート・ポテンザ(NSA副ジェネラルカウンセル) 「プログラム」に精通していない者が
  私のところにきて、「我々は狂ったことをやっている。憲法に違反している」と告発したとし
  ても、私としては、「自分の仕事に戻れ。これ以上この問題で私をわずらわせるな」というし
  かありません。彼が、憲法違反だと告発してきたとしても、私は即座に会話を打ち切ったでし
  ょう。彼が憲法違反だといったところで、私はそれ以上彼の話を聞くことはなかったでしょう。

    ------------------------------------------------------------------------------------

  この人たちは政府の違法行為を監督することが仕事です。その彼らが、憲法違反の話に耳を傾
  けず、「私には関係ない。聞きたくない」と言い逃れすることが許されるならば、これは構造
  的な問題です。単発的な人権侵害以上に深刻です。こうした状況が積み重なれば民主的なコン
  トロールが失われてしまいます。小さな権限の濫用が繰り返されやがて大きな濫用になったと
  しても、罰則が定められていないという状況です。濫用の圧力を解放するバルブがないと、事
  態はますます悪化してしまいます。

  トーマス・ドレークこそが、エドワード・スノーデンを2013年のリークに結び付けた直接
  のきっかけといっても過言ではありません。民主的なコントロールを実現するためには、内部
  告発者を適切に保護する法制度を整備しなくてはなりません。これはアメリカだけの問題では
  ありません。日本やヨーロッパその他すべての国において適用される国際的な基準が必要です。
  権力者が自らを罰することに積極的になるはずがありません。「これは恥ずかしい過ちだった
  ね。是非記事にして下さい」などという政治家はいないでしょう。しかし、市民は政府が違法
  行為をしていないか知る必要がありますし、政策が法律に違反している場合には責任者が説明
  責任を果たすよう追及できるようにしなければなりません。

  シンプルなことです。民主主義においては、市民が政府に法律を守れと言えなければならない
  のです。政府がベールに包まれた舞台裏で政策判断を下す限り、何もわからない市民には発言
  権がないわけです。もはや市民ではなく召使です。対等なパートナーではなく、それ以下の存
  在でしかなくなってしまいます。

                            第1章 スノーデンの日本への警告                                                     
    イントロダクション:民主主義では、市民が政府に法律を守れと言えなければならない

  Wikipedia

        判断過程をAIやアルゴリズムに委ねた時、生み出されるものは権力の濫用

  Q:もうひとつ伺います。「最近AIが急速に発達しています。政府は人工知能をどのように
  使っていくでしょうか。市民の監視に用いるのでしょうか。将来の見通しを教えて下さい。

  マス・サーベイランスは、極めて質の悪いAI、無能なAIに喩えられると思います。世界中
  の人のあらゆる情報を集めれば、誰がテロリストかわかるかもしれないというのがマス・サー
  ベイランスの理屈です。しかしこれは誤りです。このような膨大な情報を収集してもテロリス
  トを見つけることはできません。フォルスーポジティブ比率が高い※のでうまくいかないとい
  うことが判明しているわけです。
  ホワイトハウスは2013年のリークを踏まえ、「PCLOB」という独立委員会川洲眉に、
  NSAのマス・サーベイランス・プログラムを検証するよう指示しました。委員会は、プログ
  ラムが憲法に適合するか、実効性が認められるか、改善の必要性はないかなどを検証し、20
  14年に報告書を公開しました。
  結論はプログラムは違法であって、終わらせるべきだというものでした。10年近くにわたり
  3億3000万人の全アメリカ国民と世界中の人々の通信情報を、裁判所の審査なく、意義の
  ある法的な手続きを経ずに収集しながら、ひとつのテロをも防止できなかったと報告されてい
  ます。それどころか、テロ捜査にとって何らかの意味で有意義な情報すらひとつもなかったと
  報告されています。膨大な情報を集めてもまったく意味がないことが明らかになったわけです。
 
  テロ捜査とAIというと、すべての人を監視すればコンピューターに誰がテロリストであるか
  を学習させることができると考えられがちです。そんなことはできません。テロリストは異常
  値なのです。当然のことですが、ほとんどの人はテロリストではありません。テロリストは全
  体の母数からすると極めて希少な例外的な存在です。
  その結果フオルスーポジティブの比率が極めて高くなり、テロリストではない人たちを特定し
  てしまいます。他方でフォルス・ネガティブ比率※、つまりテロリストをテロリストではない
  と特定してしまう確率も非常に高くなります。オサマ・ビン・ラディンすらテロリストではな
  いと判断してしまいます。これがAIの問題です。

  AIが役に立つ場面もあります。たとえば画像認識などの一般的な判断です。ある画像を見せ
  て、リンゴかオレンジか、あるいは自動車かと識別することはできます。このように人間の判
  断をサポートすることはAIにもできるでしょう。
  しかしながら、現在のところ法制度の代わりになるようなものではありませんし、近い将来に
  取って代わるとも思えません。突き詰めれば人間はアルゴリズムよりもけるかに複雑だからで
  す。判断過程をアルゴリズムに委ねた際、生み出されるものは権力の濫用だけでしょう。 

                   
                            第1章 スノーデンの日本への警告                                                     
         判断過程をAIやアルゴリズムに委ねた時、生み出されるものは権力の乱用

※ 誤検知には 2つのパターンがあるとされている。1つは、False Positive(フォールス・ポジティ
  ブ)と呼ばれるもので、もう 1つは False Negative(フォールス・ネガティブ)と呼ばれるもの。
  フォールス・ポジティブは、たとえば正常なメールを迷惑メールフォルダーへ入れてしまう、正
  常なアクセスを不正アクセスと判断して通信を遮断してしまう、正常なファイルをウイルスと認
  識してしまうといったこと。つまり、正常なものを誤って不正と判断する誤検知。
  フォールス・ネガティブは逆に、迷惑メールを見逃して通常の受信フォルダーに入れる、不正ア
  クセスを見落として通信状態を維持する、ウイルスを発見見できないといったこと。つまり、異
  常なものを見落として正常と判断する検知漏れ。

  どちらがより問題が大きいかは状況による。迷惑メールが受信フォルダーに入っていた場合、大
  事なメールが迷惑メールフォルダーに入ってしまって見落とすよりはいいと考えられる。つまり
  フォールス・ネガティブの方がいい。

                                      この項つづく

 ● 今夜の一曲

「風と共に」は、エレファントカシマシのボーカルの宮本浩次が、バンドデビュー30周年を迎え、自
らの半生を振り返り「みんなのうた」に書き下ろした楽曲。人は誰でも、傷つくことを恐れて立ち止
まったりすることもあるが、曇りのち晴れ。夢や希望に向かい、♪行こうチケットなんかいらない、
行き先は自由なんだ。風と共に今を生きていこう!と歌う。聴く人を励ますメッセージソングとなっ
ている。

音楽誌『ROCKIN'ON JAPAN』にて、破格の新人衝撃のデビューの見出しで大々的に紙面に取り上げ
られる。アマチュア時代の楽曲を含むセルフタイトルが冠せられたファーストアルバムは、ストレー
トかつオーソドックスなメロディーとサウンドではあったが、洋楽ロックからの借り物でありながら
日本語であることを不自然に感じさせないという点で新鮮味があり、宮本浩次というアーティストの
才気を充分に感じさせる作品であった[独自研究 ?]。セカンドアルバム以降、政治への強い関心や、
文学作品からの影響を受けた宮本の独裁的とも言える姿勢をより顕著にバンドの楽曲に反映させるこ
とになった。2作目のアルバム「エレファントカシマシⅡ」では、資本主義社会の中で追い詰められ
る人間の姿を真正面から取り上げ、社会の不条理をヘヴィーなサウンドと共に提示して見せる。以降
22枚目のアルバム「RAINBOW」(2015.11.18)発売し、1981年結成から2017年までの35年と活動
を続けてきている。



風に吹かれて

 

   

● 今日は広島「原爆の日」                 

  

元沖縄開発庁長官の上原康助氏が6日午前10時6分、呼吸不全のため沖縄市登川の中頭病院で死去
した。84歳。本部町出身。上原氏は沖縄戦の体験を原点に全沖縄軍労働組合(全軍労)の委員長と
して軍雇用員の待遇改善や反戦平和運動に取り組み、衆院議員10期、県選出の国会議員として初の
国務大臣を務め、沖縄の振興開発や基地問題の解決に尽力した。沖縄返還で現地でお会いしたことを
思い出す。お疲れ様でした。
                                          合唱
今日は早朝から町内一斉、河川道路(犬上川)で草刈り美化。前日にエンジン草刈りで粗刈りしてお
き、高枝鋏と剪定枝鋸で竹、雑木を伐採、昼から刈り残しの雑草をエンジン草刈りで伐採。虫除けで
メンソレターム(近江兄弟社)を使用してみる。持続性など試してみて効果あり。高枝鋏は太い枝は
切り落せず、次回から鋸歯に交換しておくことに。竹は青竹は鋸で簡単に伐採できるが、立ち枯れ竹
は炭化し切り難い、なので次回は鉈も持参することに。色々と勉強になるが、体力・筋力不足は拭え
ない。刈り残しはまた別の日に予定する。

 手をやくアレチウリ

    

量子ドットソーラー製造技術

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             宣公13年~襄公20年 鞌(あん)の戦い   / 晋の復覇刻の時代


                                                 

      ※ 膀(そしり)を分かつ:衛の孫良夫は、新築の戦いで斉軍に敗れ、国都にもどっ
        た。だが、城門を入らず、すぐその足で援軍を乞いに晋へ行った。ちょうどこの
        とき、同じく斉軍に敗れた魯の臧宣叙もまた援軍を乞いに晋に来ていた。二人と
              も、晋侯の臣で斉に恨みをもつ郤克を頼みとしたのである。
             晋侯は、二人の要請にこたえて、七百乗をさしむけようとした。すると、かたわ
        らの郤克が、七百乗と申しますと、城の戦いのときと同数でございます。あの軍
        勢で勝利をおさめることができましたのは、ひとえに文公の明、大夫がたの御器
       量があったればこそ。今度指揮をとる私などは、当時の大夫がたにはとても及び
       ません」と言ってもう一百乗を請うた。この願いが容れられ、八百乗が派遣され
       ることになった。

       かくして、中軍の将に郤克、上軍の将に士燮、下軍の将に欒書、司馬に韓厥、と
       いう編成で、魯・衛救援に出発した。臧宣叔が、魯への案内役をつとめた。この
       援軍に、季文子に率いられた魯軍が合流する。
       衛の地にさしかかったときである。司馬の韓厥が、無実の罪で部下を斬るろうと
       した。この噂を聞いた郤克は、それを止めようと兵車で駆けつけた。が、時すで
       におそく、刑が執行されたあとだった。

       すると郤克は、車中に、あたかも自分の命令で刑を執行したかのようにふれまわ
       らせた。そのわけを、自分の兵車の御者にこう言った。
       「こうすれば、非難はわしにも向けられよう。全軍の団結を乱さぬためだ」
       晋・衛・魯の連合軍は、斉軍を追って斉の地莘(しん)に駒を進めた。


【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅴ】 
✪  エネルギータイリング事業篇
● 量子ドット工学講座  No.43 
今回はエネルギータイリング事業のソーラータイル部門は、変換効率20%超級仕様に該当する、最
新量子ドットソーラー製造技術(※変換層材料はシリコン、無機半導体化合物、ペロブスカイト系ハ
イブリット)の4つの国内公開特許事例を掲載する。

❏ 特開2017-135280  光電変換膜および光電変換装置

【概要】

量子ドットを単純に膜状に集積した光電変換膜は、量子効果に基づき、吸収できる光は、バンドギャ
ップに対応するエネルギーの波長を有す光で、光吸収量を高められない場合があり、光吸収量を高め
られる光電変換膜と太陽電池の提供にあたり、下図の光電変換膜7は、複数の量子ドット7aが集積
され可視光領域の波長に相当する直径Dを有する量子ドットロッド7Aが、周期的にアレイ状に配置
され量子ドットロッド7Aの直径は700~1000ナノメータで、その直径以下の間隔で配置され、
量子ドットロッド7Aは量子ドット7a間に有機分子7bを有す光電変換装置は、2つの導体層間に
光電変換膜7で構成する。

 

【符号の説明】

3 第1導体層 5 リンドープシリコン基板 7 光電変換膜 7A 量子ドットロッド 7a 量子ドット 7b 有機
成分 9 ホウ素ドープアモルファスシリコン膜 11 第2導体層 

【図面の簡単な説明】

【図1】本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に模式的に示す分解斜視図。
【図2】本実施形態の他の態様を示すもので、光電変換膜を部分的に拡大した模式図
【図3】量子ドットロッドが長さ方向に2種類の有機分子を有する状態を拡大して示す断面模式図
【図4】本実施形態の光電変換装置の製造方法を示す工程図

【製造方法】 

次に、光電変換装置の製造方法(下図4)は、本実施形態の光電変換装置の製造方法を示す工程図で
ある。まず、リンドープシリコン基板を準備する。次に、このリンドープシリコン膜5 の表面上に
光電変換膜7を形成する。この場合、慣用のメタルアシストエッチング法を用いる。まず、図4(a)
に示すように、第1導体層3とは反対側のリンドープシリコン基板5上に量子ドット7aの集積膜8
を形成。次に、図4(b)に示すように、量子ドット7aの集積膜8の表面にAgなどの金属粒子
10を置いて、溶解液によって金属が置かれた部分を厚み方向に溶解させていく。このような処理の
後に残った部分が量子ドットロッド7Aとなる。この場合、エッチング溶液としては、過酸化水素と
フッ化水素水との混合溶液を用いる。このとき、集積膜8の下層側を残すようにする。次に、図4
(c)に示すように、量子ドットロッド7Aを除く領域に絶縁性材料12を充填する。絶縁性の材料
としては、有機樹脂または金属酸化物が好適なものとなる。 


【特許請求の範囲】 

複数の量子ドットが集積され、直径が可視光領域から近赤外領域までの波長の範囲内に在る複
数の量子ドットロッドが、アレイ状に配列していることを特徴とする光電変換膜。 前記直径が700~1000nmであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換膜。 前記量子ドットロッドは、前記直径以下の間隔で配置されていることを特徴とする請求項2に
記載の光電変換膜。 前記量子ドットロッドは前記量子ドット間に有機分子を有していることを特徴とする請求項1
乃至3のうちいずれかに記載の光電変換膜。 前記有機分子が、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(Tetrabutylammonium iodide(TBAI) )1,
2-エタンジチオール(1,2-Ethanedithiol(EDT))、トリオクチルホスフィン(trioctylphosphine(
TOP) )、トリオクチルホスフィンオキシド(trioctylphosphine oxide(TOPO))、オレイン酸、
オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオ
ール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDP
A)、オクチルホスフィン酸(OPA)およびポリオキシエチレンの群から選ばれる少なくと
も1種であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換膜。 2つの導体層間に光電変換層を備えた太陽電池であって、前記光電変換層が請求項1乃至5の
うちいずれかに記載の光電変換膜であることを特徴とする光電変換装置。

 

❏ 特開2017-135282  光電変換膜および光電変換装置

【概要】

量子ドットは、通常、その周囲を、量子ドット自身のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを
有する障壁層によって囲まれている。このため、理論的には、電子のフォノン放出によるエネルギー
緩和が起こりにくく消滅し難いと考えられている。複数の量子ドットによって集積部を形成した場合
には、量子ドット内に生成したキャリア(電子、正孔)は、障壁層を含む量子ドット集積部内に存在
する欠陥と結合して消滅しやすく、これによりキャリアの密度が低下し、電極まで到達できる電荷量
の低下が起こり、光電変換効率を高められないという問題がったが、キャリアを収集する部材として、
酸化亜鉛のナノ粒子を用い、これを量子ドット間に多数介在させた、いわゆるナノヘテロジャンクシ
ョンタイプの光電変換膜※が開示されているがキャリアの収集効率が低い。このため、キャリアの収
集効率を高めることのできる光電変換膜と光電変換装置の提供に当たり、下図の光電変換膜10は、
光電変換機能を有する第1ナノ粒子1と集電機能を有する第2ナノ粒子3とを含む集積膜5を有する。
第2ナノ粒子3が球状粒子3aとを有している。第1ナノ粒子1が球状粒子1aと多角形状粒子1b
とで構成されている。扁平状粒子3bは球状粒子3aよりも最大径が大きい。多角形状粒子1bは球
状粒子1aよりも最大径が大きい。光電変換装置20は第1導体層23、第2導体層27間に光電変
換層21を備え構成する。

※A.K.Rath etal 「Remote Trap Passivation in Colloidal Quantum Dot Bulk Nano-heterojunctions and Its in Sol-
  ution-Processed Solar Cells」Adv.Mater.2014,26,4741-4747 


【符号の説明】

1 第1ナノ粒子 1a 球状粒子 1b 多角形状粒子 3 第2ナノ粒子 3a 球状粒子 3b
扁平状粒子 5 集積膜 10 光電変換膜 20 光電変換装置 21 光電変換層 23 第1
導体層 25 ガラス基板 27 第2導体層 

【図面の簡単な説明】

【図1】本発明の光電変換膜の一実施形態を部分的に示す断面模式図
【図2】(a)は、図1の光電変換膜から第1ナノ粒子だけを抽出した断面模式図であり、(b)は、
    図1の光電変換膜から第2ナノ粒子だけを抽出した断面模式図
【図3】本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に示す断面模式図である。
【図4】作製した光電変換装置の短絡電流密度を評価した結果である。 

【特許請求の範囲】 

光電変換機能を有する第1ナノ粒子と集電機能を有する第2ナノ粒子とを含む集積膜を有する
光電変換膜であって、前記第2ナノ粒子が球状粒子と扁平状粒子とを有していることを特徴と
する光電変換膜。 前記第1ナノ粒子が球状粒子と多角形状粒子とで構成されていることを特徴とする請求項1に
記載の光電変換膜。 前記第2ナノ粒子の前記扁平状粒子は前記第2ナノ粒子の前記球状粒子よりも最大径が大きい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換膜 前記第1ナノ粒子の前記多角形状粒子は前記第1ナノ粒子の前記球状粒子よりも最大径が大き
いことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の光電変換膜 前記第1ナノ粒子が硫化鉛であり、前記第2ナノ粒子が酸化亜鉛であることを特徴とする請求
項1乃至4のうちいずれかに記載の光電変換膜 前記集積膜を厚み方向に2等分したときに、前記集積膜の一方の領域には、前記第2ナノ粒子
よりも前記第1ナノ粒子が多く存在し、他方の領域には前記第1ナノ粒子よりも前記第2ナノ
粒子が多く存在していることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載の光電変換膜 前記第2ナノ粒子は、前記集積膜の一方の表面には露出していないことを特徴とする請求項1
乃至6のうちいずれかに記載の光電変換膜 2つの導体層間に光電変換層を備えた光電変換装置であって、前記光電変換層が請求項1乃至
7のうちいずれかに記載の光電変換膜であることを特徴とする光電変換装置  

❏ 特開2017-135223  量子ドット製造装置

【概要】

電子デバイス技術の高度化にともない、量子ドットの離散エネルギー準位を用いた電子制御技術が注
目を集めている。量子ドット製造技術は、❶薄膜製造技術を応用した自己組織化法及び液滴エピタキ
シー法、❷溶媒中でコロイド状量子ドットを得る化学的手法がある。これら従来の手法では、室温以
上において熱揺らぎに負けずに離散エネルギー準位を維持することが可能な2ナノメートル以下の量
子ドットのサイズを原子制御することが難しい。加えて、量子ドット内の電子は量子トンネル効果に
より外側へ浸み出すため、量子ドットの周囲を均一な材料で覆うことも高度な電子制御を行うために
必要である。原子制御された量子ドットを形成する新たな試みに❸溶液中で化学的に金属含有数を制
御した量子ドット前駆体分子を基板上で互いに離隔して配置させ酸化物量子ドットへと化学変換する
新手法が見出されている。但し、酸化物量子ドットの形成においては、量子ドット前駆体分子を基板
上で離隔して配置させるため基板上に施与する量子ドット前駆体溶液の量や濃度の正確な制御が必要
である。施与する方法としては、従来、❹塗布が使用されてきたが、塗布による方法では自動化や大
面積化に限界があり、デバイス製造等の原子制御された量子ドットの応用及び高度電子制御技術の拡
充の大きな課題としてある。❺また、原子制御された量子ドットの周囲を均一な素材で覆う目的で原
子層堆積法(ALD)等の真空薄膜形成技術との組合わせが検討されている。その際、真空状態を維
持したまま連続し両技術の自動化や真空下の原子制御型量子ドット製造装置及びプロセスの自動化が
求められているものの依然として有効な方法は見出されていない。

一般的にスプレー噴霧法は、エア(空気)等のガスの共存による二流体方式があり、真空下での使用
には不適切であり、一般的にはスプレー角度が約30°程度であり噴霧された液流体の分布範囲は狭
く、しかも均一な厚みにするのが難しいという問題がある。これ対して、ガスを用いる二流体方式の
スプレーノズルではなく、液流体のみの一流体スプレーノズルがある。なかでもノズル射出口部への
旋回子(ワーラー)の配置によりスプレー角を大きくとれて、液流体の分布範囲を広くでき、均一な
厚みとすることができる一流体方式のスプレーノズルがある。しかし、一流体スプレーノズルは、減
圧下でノズルの開閉を行うバルブを閉じた後にもバルブからノズル先端部(=ノズルチップ)までに
留まった液流体が陰圧によって引き出され、定量噴霧することができない。接着剤等は蒸気圧も低く
粘稠流体であるので、真空下でディスペンサにより供給するが、量子ドット前駆体の溶液のような低
粘度液流体を減圧噴霧では配慮されていなかった。

そこで、下図8のように減圧下でも定量噴霧が可能な一流体スプレーノズルを備えた量子ドット製造
装置の提供にあたり、真空チャンバと真空チャンバ内に載置して使用される、温度制御可能な基板支
持台と基板支持台上に載置される基板に、量子ドット前駆体溶液を定量噴霧する一流体スプレーノズ
ルとを備え構成する。  


【符号の説明】

1  スプレー射出口部   1A  液流体射出口   1B  通路   2  筐体部   21  前室部   22  後室部  2A 
ロッド   2B  液流体入口   2C  ダイヤフラム   2D  O(オー)リング   2E  O(オー)リング   2F  ピスト
ンロッド   2G  スプリング   2H  エア流出入口   2I  エア流出入口   3  旋回子(ワーラー)   3A  開口
3B  ロッド接触範囲   4  量子ドット製造装置   41  一流体スプレーノズル   42  真空チャンバ   43  基
板支持台 

【図面の簡単な説明】

【図1】本発明における一流体スプレーノズルの一例の、閉位置における構成の断面概略図
【図2】図1のスプレーノズルの開位置における構成の断面概略図
【図3】旋回子の一例について、ロッド2Aの接触範囲と、旋回子の開口とを示した平面図
【図4】(a)、(b)、(c)は、旋回子の種類を例示した図
【図5】旋回子を備える一流体スプレーノズルによりスプレーされた流体膜の断面形状を例示した
    説明図
【図6】従来の二流体方式スプレーノズルによりスプレーされた流体膜の断面形状を例示した説明図
【図7】実施例で得られた膜の、分光エリプソメトリで測定された膜厚分布を示す図
【図8】本発明の量子ドット製造装置の一例を示す概略図

【特許請求の範囲】 

真空チャンバと、 該真空チャンバ内に載置して使用される、温度制御可能な基板支持台と、
該基板支持台上に載置される基板に、量子ドット前駆体溶液を定量噴霧する一流体スプレーノ
ズルと、を備える量子ドット製造装置。 量子ドット前駆体と反応させるための反応性ガス供給部をさらに備える請求項1記載の量子ド
ット製造装置 前記一流体スプレーノズルが、液流体射出口を備えたスプレー射出口部とこれに連通する筐体
部とを有し、前記筐体部には液流体入口が設けられているとともに、前記一流体スプレーノズ
ルの閉位置と開位置の間の移動によって前記液流体入口から注入された液流体の前記流体射出
口からの射出の実施または停止を切替制御するロッドが内装されており、前記液流体射出口と
これに対向する前記ロッドの先端部との間には、開口を有し、液流体を旋回吐出する旋回子が
配置され、前記旋回子の開口が、前記ロッドの前記閉位置への移動により、前記ロッド先端部
の該開口への当接によって塞がれることで、前記スプレー射出口部の液流体射出口からの液流
体の射出が停止され、前記ロッドの前記開位置への移動で前記旋回子の開口が開放されて、液
流体が旋回子から旋回吐出されて前記スプレーの射出口部の液流体射出口からの液流体の射出
が実施される、ことを特徴とする、請求項1又は2記載の量子ドット製造装置 前記ロッドの筐体内にエア操作部が配置され、エアの圧力制御によってロッドの前記移動が制
御されることを特徴とする請求項3に記載の量子ドット製造装置 前記旋回子は板状体であって、その厚み方向に貫通されている複数の開口によって、前記液流
体射出口からの該液流体が円錐状に旋回射出されることを特徴とする請求項3または4に記載
の量子ドット製造装置 射出のスプレー角度が30°超であることを特徴とする請求項5に記載の量子ドット製造装置 前記旋回子が樹脂製であって、前記ロッドは、先端部が樹脂被覆されていてよい金属製もしく
はセラミック製であるか、または前記旋回子が金属製もしくはセラミック製であって、前記ロ
ッドが、先端部が樹脂被覆された金属製もしくはセラミック製であることを特徴とする請求項
3~6のいずれか一項に記載の量子ドット製造装置 液流体射出口を備えたスプレー射出口部とこれに連通する筐体部とを有し、前記筐体部には液
流体入口が設けられているとともに、前記一流体スプレーノズルの閉位置と開位置の間の移動
によって前記液流体入口から注入された液流体の前記流体射出口からの射出の実施または停止
を切替制御するロッドが内装されており、前記液流体射出口とこれに対向する前記ロッドの先
端部との間には、開口を有し、液流体を旋回吐出する旋回子が配置され、前記旋回子の開口が、
前記ロッドの前記閉位置への移動により、前記ロッド先端部の該開口への当接によって塞がれ
ることで、前記スプレー射出口部の液流体射出口からの液流体の射出が停止され、 前記ロッド
の前記開位置への移動で前記旋回子の開口が開放されて、液流体が旋回子から旋回吐出されて
前記スプレーの射出口部の液流体射出口からの液流体の射出が実施される、ことを特徴とする、
一流体スプレーノズルを備えた量子ドット製造ユニット 前記量子ドット製造ユニットを備える薄膜製造装置  

❏ 特開2017-132268  液体噴射ヘッド、液体噴射装置、
             圧電デバイスおよび液体噴射ヘッドの製造方法  

【概要】 

液体噴射のノズル開口に連通する圧力発生室形成された基板と、圧電体層、圧電体層の下方側に形成
された下電極と圧電体層上方側に形成された上電極を有する圧電素子を備える液体噴射ヘッドが知ら
れているが、このような液体噴射ヘッドは、下電極を圧力発生室毎に対応した個別電極とし、上電極
を複数の圧力発生室に対応する複数の圧電素子用の共通電極としする(下図参照)。このように、両
電極間に電圧が印加され変位し圧力発生室内へ撓むが、上電極、圧電体層および下電極が重なる範囲
(能動部)と、能動部では無い部分(非能動部)との境界に大きな応力が発生し歪みが集中、場合に
よっては圧電体層にひび割れ等が生じる。あるいは、振動板の変形により圧力発生室内からノズル開
口外噴射する液体量が増加する不具合の原因となり噴射ヘッド性能の向上が求められていた。

このように圧電体層におけるクラック等の不良発生を防止法の提供ににあたり、ノズル開口に連通す
る圧力発生室が形成された基板と圧電体層とに対応し形成された第1電極と、圧電体層の第1電極側
とは逆側の複数に亘り形成された第2電極と、を有する圧電素子から構成された液体噴射ヘッドの第
2電極は、圧力発生室の長手方向でこの圧力発生室の外側まで延出形成構造とする(図2)。  

 


【符号の説明】

1 記録ヘッド、1A,1B 記録ヘッドユニット、2A,2B カートリッジ、2 下電極膜、3 
圧電素子、4 上電極膜、5 圧電体層、5a 開口部、5b スルーホール、7 タイミングベル
ト、8 プラテン、9 リザーバ、10 基板、11 隔壁、12 圧力発生室、13 連通部、
14 インク供給路、16 キャリッジ、17 装置本体、18 キャリッジ軸、19 駆動モータ、
20 ノズルプレート、21 ノズル開口、30 保護基板、31 リザーバ部、32 圧電素子保
持部、40 コンプライアンス基板、41 封止膜、42 固定板、43 開口部、50 振動板、
51 弾性膜、55 絶縁体膜、60,61 リード電極 

【図1】記録ヘッドの概略を示す分解斜視図。
【図2】記録ヘッドの長手方向に平行な面による断面図

【特許請求の範囲】 

ノズル開口に連通する圧力発生室が形成された基板と、圧電体層と、前記圧電体層の前記基板
側において前記圧力発生室に対応して形成された第1電極と、前記圧電体層の第1電極が形成
された側とは逆側において複数の前記圧力発生室に亘って形成された第2電極と、を有する圧
電素子と、を備える液体噴射ヘッドであって、前記第2電極は、前記圧力発生室の長手方向に
おいて前記圧力発生室の外側まで延出して形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド 前記第1電極と、前記圧電体層と、前記第2電極と、が重なる範囲が、前記長手方向において
前記圧力発生室の外側まで延出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴
射ヘッド 前記圧力発生室間に略対応する領域において前記圧電体層を除去した圧電体層の開口部を形成
し当該開口部は、前記長手方向において前記圧力発生室の端よりも外側まで形成されているこ
とを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッド前記第2電極に対して積層さ
れて配線として機能する金属層が、前記圧力発生室の内外を跨ぐ位置に形成されていることを
特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の液体噴射ヘッド 請求項1~請求項4のいずれかに記載の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装

● 余韻録

8日午前1時すぎ、長浜市内を流れる姉川の大井橋の近くで、川の水があふれているのが確認された
というテレビニュース(NHK NEWS WEB)――「長浜市が、台風による大雨で市内を流れる姉川が
あふれているという情報が入ったため、午前1時すぎ、流域の大井町や国友町、下之郷町の合わせて
417世帯1267人に避難準備の情報を出し、高齢者や体の不自由な人などに早めに避難するよう
呼びかける」――をブログを打ち込んでいる最中にはいる(「滋賀の豪雨対策」彦根市民の飲み水を
守る会 2017.08.08)。 

 長浜市姉川-大井橋罹災地

氾濫場所は、約80年前に築かれた道路が通っており、堤防が途絶した状態になっていたことが、県
長浜土木事務所への取材で分かった。堤防より約3メートル低い「切り通し」と呼ばれる構造で、幅
は約6メートルあった。土木事務所は、増水した川の水がここから流れ出たのが氾濫の一因とみてい
る。「切り通し」は昭和8年に大井橋を架ける際にできた。洪水の危険性は以前から認識され、1993
年に大井橋から下流に約百メートルの地点に新大井橋ができた際、大井橋をふさぐことを提案したが、
住民の要望で残り、大雨の際は板や土のうなどでせきを造り、「切り通し」部分に壁を造ることが想
定されていたものの、今回も市と地元自治体が土のうを準備するなど備えていたが、急激な変化で間
に合わなかったと市は説明している(産経WEST、2017.08.08.20.52)。滋賀県では独自に作成した「地
先の安全度マップ」(前出ブログ参照)など対策を講じているが、中村仁芝浦工業大学教授らの研究
のようなシミュレーション手法での事前調査研究は今や必須条件である(下図ダブ栗参照)。



テレビ放送などの罹災ニュースで親戚や友達から電話がかかってきたが、竹馬の友の片山博臣氏は母
屋が長浜市は木之本町の関係で心配してことので長電話となる。ところが話題はお盆休暇期間中の話
など四方山となる。こちらは浄土宗で宗安寺だが、彼は真宗(大谷派)だが墓地は服部緑地にあるが
納骨(分骨)先の京都は東山にもあり、親類縁者はそちらに参るというが、外人観光客で混雑し迷惑
気味。一度盆明けに暇なときに会おうという約束をしたが、話が地元(大学などの)山岳会になり、
それじゃ10月末までに一緒に登ろうということになり、車での往復が便利な氷ノ山(日本二百名山)
@兵庫県を提案して終えた。

  

 ● 氷ノ山へGO!

氷ノ山周回(福定親水公園→東尾根コース)登山(所要時間:約6時間)

      

世界はラテン模様

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               宣公13年~襄公20年 鞌(あん)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※ 宣戦の使者:六月壬申の日、晋・魯・衛の軍は、靡笄(ぎけい)山のふもとに着
        いた。そこに斉侯から使者が来て、こう口上を述べた。「郤克どのには、晋炭の
              軍を率いて、わが地にわざわざお出ました、まことにご苦労なこと。お粗末な軍
            勢ながら、明朝を期して一戦をつかまつりたい」「わが皆は、魯・衛とは兄弟国。
       その両国が、斉の軍勢にしばしば領土を蹂躙されている、とのこと。わが主君は
       これを黙過するに忍びず、斉軍の罪を責めよ、ただし斉に長居をしてはならぬと
       われわれに兪じられた。したがって、わざわざご挨拶をいただくまでもないこと。
       進みこそすれ、一歩たりとも退きはいたしません」「そのお言葉こそ、当方の伺
       いたかったところ。ご返事のいかんにかかわらず、どのみち一戦を交ええたく存
       じておりました」 


【MEGA地震予測】  JESEA Vol.17,No.32




● 概要

水平方向の変動(水平ベクトル)が、これまでにない変動を観測。 それまで南東方向が主流だ
ったのが、反転して全国的に南西または西南西方向に変動。東北地方はほぼ南方向の水平変動で、
南西諸島は方向がバラバラで不安定な動きを示す。これまで比較的静かであった南海~東南海~
東海、伊豆諸島の動きが活発でした。 これにより、前回レベルダウンした南海・東南海地方を
再度レベルアップ。 これまでのデータと大きく異なり、再度二週間後の最終解(F3データ)で検
証する、大きな地震の前兆の可能性もある(詳細は上図ダブクリ参照)。


                                                  

  
● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

        第2章 「日本の年金制度がつぶれない」これだけの理由

    「年金制度」よりも「健康保険制度」のほうが運営が難しい

    皆さんは、同じ公的保険制度で比べた場合、「年金制度」と「健康保険制度」とでは、
   どちらが難しいと思われるでしょうか。
    結論をいえば、「健康保険制度」のほうが、はるかに難しい問題を抱えています。
    年金の場合は、多くのことが予測可能であり、それをもとに年金数理で計算できます。
   人口減少の問題にしても、戦争や自然災害などが起こらないかぎり、10年後、20年
   後の人口はほぼほぼ予測可能です。予測可能なことに対しては、計算ができます。
    一方、健康保険の場合は、予測が難しい面があります。10年後、20年後に総額で
   どのくらい医療費が必要になるのかを簡単に予測できません。どんな病気が増えるかわ
   かりませんし、さらには、その治療費にどのくらいかかるかも予測できません。医療は
   どんどん進歩し、すばらしい治療法、薬が開発されます。それらはものすごく高額にな
   る可能性もあります,

   「どんなに高い治療を受けてでも助かりたい」と思う人はたくさんいます。たとえば、
   ガンの高度な治療の中には、一回で数百万円するものがあります。現在は、お金持ちの
   人が自費で受けています,そのような治療が効果を上げることもあるようです。
    こういう現実を目にして、自分で何百万円も払えるお金持ちだけが助かって、貧乏な
   人は助からないということに理不尽さを感じる人はいます。「こんなに助かる新薬なら、
   保険適用にして、みんなが使えるようにしてくれ」という声が必ず出てきます。
    高度な治療が開発されたときに、どこまでを保険適用にするのかは、大きな問題です。
    もちろん、可能なかぎり人の命は助けたいと考えるのは人情です。しかし一方で、も
   し大盤振る舞いをしすぎて健康保険制度が破綻してしまったら、保険給付が行きわたら
   なくなって、簡単な病気でも亡くなってしまう人が続出するかもしれません。命がかか
   っていますから、線引きは簡単ではありません。

    延命治療の是非についても議論されるようになるかもしれません。植物人間のように
   なった人の治療費をどこまで保険で出すのか。もはや治癒の見込みがない人の治療費を
   どうするのか。人間の尊厳とも関わる問題ですから、簡胆に結論は出せません。
    際限なく保険適用をすることはできないですから、国民の合意を得ながら、どこかで
   線引きしていくしかおりません,そういうことが決まらないかぎり、給付額の総額を算
   出することができません。予測できないことが多いため、年金よりも医療のほうが計算
   しにくい面を持っています,
    現実的な解決策として、公的健康保険で、一定程度までの治療を保障して、それ以上
   は自費で出すかたちがあります。「差額ベッド」のような状況です。
    また、高度な医療を受けたい人は、その部分だけは自費で受けられるようにする「混
   合診療」も進んでいくだろうと思います,高度な医療に間しては、民間の医療保険がか
   なりカバーするようになってきています。

    一定程度までの保障は「公的健康保険」、それ以上の高度医療の保障は「民間医療保
   険」という棲み分けになっていくでしょう。
    今後、高齢化が進むと、医療ニーズはますます高まりますが、国民が負担できる保険
   料の額には限度があります。おそらく、保険給付できる医療費の総額が設定され、総額
   の範囲内で、医師が患者の症状を選別して、症状の重い人に厚く配分されるようにする
   方法がとられるのではないかと思います,
    今でも医療現場では優先順位付けが行なわれています。病棟ごとに予算が決められて
   いる場合は、重い病気の人のケアにできるだけ予算が使われるように優先順位が付けら
   ます。医師の判断に任せる部分が、さらに多くなるのではないかと思います。

    健康保険の持続可能性を高めるためには、枠組みの見直しは必要です,病気になる確
   率は地域によってかなり差があります。寒い地域と暖かい地域でも、健康状態は追って
   くるでしょう。ある程度、地域分けしたほうがうまくいきます。
    保険原理からいうと、なるべく特性が同じような人を集めたほうがやりやすくなりま
   す。年金の場合は、大きな母集団が必要ですが、医療保険の場合は、そこまで大きな母
   集団は必要ありませんので、地域差を考盧すべきでしょう。
    ただし、あまり細かく地域分けをすると、若年層の多い都市部と高齢者の多い地方部
   が分かれてしまいます。少なくとも道州(現在の47都道府県を10程度の「道」や
   「州」に再編する考え方。様々な区分け案かおるが、一例を挙げれば、北海道、東北、
   北関東、南関東、北陸信越、東海、関西、中国、四国、九州、東京特別、大阪特別など
   の規模感)くらいの大きさが必要です。
    このような規模でブロックをつくり、地域別に分けると健康保険はより効率的に運営
   できます。現在は市町村、都道府県単位ですが、それでは規模が小さすぎていずれ行き
   詰まるでしよう。都道府県を複数集めた道州くらいの大きさが一番うまく回るはずです, 
   今後運営が厳しくなると予想される健康保険に関しては、道州制を含めた議論が必要に
   なります。

           第2章13節 「年金制度」より「保険制度」のほうが運営が難しい

    「公的年金破綻説」はことごとく間違っている

    何度も繰り返しますが、「公的年金が危ない」という情報を流しているのは、多くの
   場合は、年金の仕組みを理解していないメディアの人たちです。
    専門家の中にも、不安をあおるようなことをいう人がいますが、実際には「年金制度
   が危ない」とは思っていないでしょう。「危ない」ことを裏付ける根拠がないからです。
    年金問題の解決法として、「無駄カット」の話がよく出てきますが、本当に危ないの
   であれば、無駄カットどころか、すぐに根本的な対処をしなければいけません。無駄カ
   ットのようなレベルの話が出てくるのは、本当は危ないと思っていないからだろうと思
   います。
    巷の様々な「年金破綻」説に惑わされないように、ここまで述べてきたことを整理し
    てみます,

       Q:少子化で年金制度が成り立だなくなる?
  
          人口が急減するのではなく、漸減していく状態では、保険数理の計算さえしっかりし
   ておけば年金制度が破綻することはありません。負担が少し増え、給付が少し減るとい
   うくらいで調整できます。そのような仕組みとして、すでに「マクロ経済スライド」が
   用意されています,
    また、経済政策によって一人ひとりの「所得」を拡大できれば、徐々に進む人口減少
   分を十分にカバーできます。  

    Q:積立不足額が大きいから危ない?

    非常に長い目で見ると、年金のバランスシートはバランスします。最初のうちは、保
   険料を払わないで年金給付を受ける高齢者がいますから、その分か債務超過になります。
   制度が成熟するにつれて、保険料を納めずに給付を受ける人が減り、不足分の数字はだ
   んだん減っていきます。

    Q:一年金積立金が枯渇する?

    積立金は枯渇するかもしれません。しかし、日本の公的年金の根幹は、積立方式では
   なく、賦課方式です。
    賦課方式は、その年に集めた保険料を、その年の給付に使いますから、積立金はほと
   んど必要ありません。積立金がほぼ枯渇しても年金は破綻しません。
    日本の公的年金は、長期のバランスシートでは170兆円くらいの積立金(積立金の
   取り崩し及び運用収入)を持っていますが、そもそも、それだけの積立金を待つ必要は
   ありません。流動性確保のために10兆円程度の積立金があれば運営できます。

    Q:所得代替率5割を維持できなくなる?

    所得代替率は、はじめから5割を切っています。日本ではなぜか60%くらいの数字
   が示されていますが、OECDの数字では、日本の年金の所得代替率は4割程度です。
   5割という数字を持ち出すほうがどうかしています。
    所得代替率は、保険料負担と連動しています。保険料負担が低ければ、所得代替率は
   低くなります。所得代替率が高いほうが年金制度はより不安定になります。ものは考え
   ようで、所得代替率が4割程度というのは、年金制度の安定化にはつながっています。

    Q:一年金制度の前提となる想定数字が間違っている?

   「名目経済成長率」「利回り」については、四%くらいまでなら、日本の実力からすれ
   ばおかしな数字ではありません。その数字に違しないとすれば、想定数字が間違ってい
   るのではなく、「経済政策」が間違っているということです。
    少子化が想定より加速することはありますが、年率にすると大きな数字ではありませ
   んので、通常程度の経済成長をしていればカバーできます。
    保険料の未納率の数字に間しては、きちんとした徴収をすれば変わります。未納率が
   想定より高くなったのだとしたら、徴収を厳格化する必要があります。

    Q:世代間不公平であり、若者が損をする?

    世代間不公平はあります。しかし、皆年金制度ができた当初から世代間不公平はあり
   ました。当時の高齢者は、保険料を納めていないにもかかわらず年金を受給していたの
   ですから、若い人から見ると、これ以上の不公平はありません。
    保険料を納めずに年金を受給する高齢者の分をどうやって埋めるかが課題となり、国
   費が役人されました。年々、保険料を納めなかった人は減っていきますので、時間が経
   つと穴は埋まっていきます。
    むしろ、就職できない若者がいると、いっそう若者の年金が減りますので、雇用政策
   が重要になります。
    ここで見てきたように、巷の「年金破綻説」はだいたい間違っていますが、もし、本
   当に公的年金が危なくなるとすれば、それは「ずっと経済成長をしなくなった場合」で
   す。

    経済が成長しない場合は、残念ながら年金は破綻します。年金だけでなく、すべての
   社会保障が破綻します。
    年金の制度そのものについては、それほど心配する必要はありません。かなり持続可
   能性の高い制度になっています。ただ、制度が安定するかどうかは、経済の状況次第で
   す。
    そういう意味では、年金のために国がやるべき一番重要なことは「経済政策」だとい
   うことになります。
  
              第2章14節 「公的年金破綻説」はことごとく間違っている


                 第3章 年金に「消費税」はまったく必要ない

      年金が「保険」だと広く知れわたると困る人がいる

      第1章で述べたように、年金は「保険」です。どこからどう見ても「保険」でしかお
   りません。しかし、年金が「保険」であることが広く知れわたってしまうと、困る人た
   ちがいます。それは、財務省の官僚であり、厚労省の官僚です。
    年金が保険だと国民にわかってしまうと、「保険なら、保険料でやればいいじやない
   か」という話になってきます。そうすると、財務省が望む「消費税増税」が吹っ飛んで
   しまいます。第1章でも述べたように、もし、そんな意見が国民のあいだで広がれば、
   保険料が上がることになりますが、保険料を管轄するのは厚労省であって財務省ではあ
   りません。財務省からすると、自分のシマの拡大にはつながりません。
    財務省としては、「消費税があなたの年金になるんですよ。老後の安心のためですよ」
   といって、消費税を増税したいと思っています。年金が保険だということがバレてしま
   うと、財務省のロジックが成り立だなくなります。年金が保険であることをひた隠しに
   して、国民にわからないように、うまくロジックをすり替えています。

     厚労省も似たようなものです。年金が保険だということがバレると、「年金財政が苦
   しいなら保険料を上げろ」という意見が出てきます。保険料を上げたときに、国民から
   の矢面に立だされるのは厚労省です。「保険料負担が重い」「国民いじめだ」と厚労省
   がバッシングを受けます,
    厚労省(日本年金機構)としては、保険料を集めるのが大変ですから、それならば財
   務省の陰に隠れていて、国税庁が集めた消費税をそっくりそのまま、年金財政にいただ
   いたほうがラクです。消費税でやってもらえば、「保険料が高くなった」という批判も
   受けなくて済みます。
   「保険」だということがわかってしまうと、厚労省は財務省の陰に隠れていられなくな
   ります。厚労省も、保険であることを何とかして隠したいと思っています。

    結局、財務省と厚労省は利害で結びついて、手を組んでいるような状態です。保険で
   あることが前面に出てこなくなり、国民の中に「年金は、国からもらえるもの」「年金
   は福祉だ」という誤解を生んでいます。
   「福祉のために消費税を上げるのはやむをえない」という人が増えれば、消費税は増税
   されます。
    消費税増税が経済にどういう影響を与えるかは、2014年4月の消費税率8%への
   増税後の経済状況の落ち込みを見れば明らかです。
    前章の最後に強調したように、年金の安定にとって一番重要なことは、「増税」では
   なく、「経済成長」なのです。もちろんデフレも脱却し、経済成長が軌道に乗ったら増
   税するのもいいと思いますが、現在のような経済状況で消費税増税を強行してしまった
   ら、その一番大事な経済成長の腰をへし折ってしまいます。それは年金制度のことを考
   えても、まさに本末転倒といわざるをえません。

    年金保険に「消費税」はまったく関係ない

   「保険」というのは、披保険者が保険料を納めて、給付を受ける仕組みです。きわめて
   単純な仕組みで、どこにも消費税の話は出てきません。
   民間の保険のことを考えてもらえば、よくわかると思います。保険料とその運用ですべ
   てまかなわれています。
    公的年金保険は、公的な管理がされていることと、皆保険としてすべての国民に義務
   づけられていることが、民間の保険とは違いますが、「保険」であることに変わりはあ
   りません。保険である以上、保険料とその運用によって、すべての支給がまかなわれる
   べきものです。
    しかし現実には、所得が低くて「保険料」を払えない人がいます。民間の保険であれ
   ば、保険料を払えない人は、加入できず、給付もされません。しかし、公的年金は皆保
   険ですから、すべての人が保険料を納めなければなりません。所得が低くて払えない人
   の分は、どこかから持ってくるしかありませんが、どうするのが一番いいでしょうか。

    正解は「所得税」です。所得税の場合、累進課税制度になっています。すなわちお金
   持ちからは厚く、そうでない人からは薄く税金を徴収しています。それによって所得の
   再分配を行なっているのです。
    年金保険料の不足分を所得税で徴収すれば、お金持ちからたくさん税金をもらって、
   そのお金で保険料を支払えない人の分をまかないます。そういう意味では、公的年金保
   険でもっとも公平なのは、「保険料」十「所得税」です。
    一方、プロローグでも触れましたが、「消費税」の場合、金持ちとそうでない人のあ
   いだの所得再分配機能は、あまり期待できません。その意味では、そんな税金で保険料
   をまかなうことにしたら、保険料を払えない貧しい人の保険料を、同じく貧しい人も等
   しく支払っている消費税から持ってくるかたちになってしまいます。別にそれでもいい
   のですが、発想としてはどこか間違っているように思えます。
    つまり、公的年金には税金を役人するにしても、すぐに「消費税だ!」と決めつける
   ことの妥当性はどこからも出てこないのです。「保険料+所得税」――これがきわめて
   まっとうな年金保険の考え方です。

   《保険原理》

   ・公的年金保険→保険料+所得税(保険料を払えない人の分を所得税で補填)
   ・私的年金保険→保険料のみ  (保険料を払えない人は加入できない)

    繰り返し述べますが、つまり保険原理からいえば、消費税はまったく必要ないもので
   す。世界各国ともに保険原理でやっていますから、消費税を社会保障に充てる国はあり
   ません。
  「税と社会保障」という言葉で、「社会保障のためには消費税を上げなければいけない」
   といわれますが、「それ、違うでしょ。消費税は関係ないでしょ」で終わる話です。
    保険原理をわかっていないと、「社会保障のために消費税だ」というまやかしを信じ、
   頭にすり込まれてしまいます,
   「給付が増えて保険料が足りなくなったらどうするの?」という疑問が出てくるかもし
   れません。保険原理からいえば、「保険料を土げる」という解か筋なのです,

                第3章2節 年金保険に「消費税」はまったく関係ない

                                    この項つづく

今夜の寸評:世界はラテン模様

台風5号後の猛暑かと思っていると天候不順で曇り空と小雨があり読みにくい天候だ。欧州では、
場所によっては連日、日中の最高気温が40度を超えるなど、広い範囲で記録的な猛暑・渇水模
様で、イタリアなど11か国は警報を発令している。この間の、スティーブンホーキン博士(
ブログ「地球を金星に変えるトランプ・リスク」2017.07.06)ではないが、気温が上昇すれば、
陽気になりキレやすいラテン気分となり景気の高揚感増し、いざこざや紛争が絶えなくなり暴力
的な季節になる。また千年に一度の地殻変動の季節が加わる。心配だ。




  

ピンチに攻め上げる

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               宣公13年~襄公20年 鞌(あん)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                 

       ※ 甲を擐(つらぬ)き兵を執るは、もとより死に即くなり

       さて、翌朝、斉の高固は、敢然として晋の陣内に兵車をのりいれた。そして
       晋の兵めがけて大石を投げつけ、倒れた兵を捕えて車にのせ、さらに、手近
       にあった桑の木を根もとから引き抜いて車にくくりつけた。自軍のとりでに
       馳せもどるや、大声で叫んだ。
       「勇者になりたいやつはわしを見習え」
       この日、両軍は鞌の地に対陣した。斉侯の軍には、邴夏が御を、逢丑父が右
       をつとめ、一方、晋の郤克の軍には、解張が御を、鄙丘緩か右をつとめてい
       た。
       「朝飯前に、片をつけてしまおう」
       斉侯はこう言いすてると、馬に甲も着せずに鞭をくれた。
       戦端がひらかれるや、郤克は矢傷を負い、流れる血がくつを侵した。それで
       も気力をふりしぼって鼓を打ちつづけていたが、
       「もうだめだ。これ以上は戦えぬ」
       すると、解張が励ました。
       「弱音を吐いてはいけません。わたしも早々に、腕に矢を突き立てられまし
       たが、それを折りとって、馬を御しています。左輪は私の血ですでに真っ赤
       に染まっています。それでも私はくじけません。しっかりしてください」
       鄭丘緩も言った。
       「気をたしかにもってください。いままで兵車がぬかるみにはまったときに
       は、私はかならず降りて車をおしているのです。それはあなたもご承知のは
       ず。もうだめだなどとおっしゃっているときではありません」
       さらに、解張は力づよく、
       「全軍の耳目は、わが旗鼓にあつまっています。進かも退くもすべて将軍の
       下知ひとつ。将軍おひとりが、この兵車に頑張ってさえおられれば勝利はわ
       がもの。負傷したぐらいで、主君のこの大事を失敗させるわけにはまいりま
       せん。いったんよろいを着け武器を手にしたからには、死はもとより覚悟の
       はず。これしきの傷、まだまだ戦えます」
       こう言うと、左手だけでもち、右手に郤克の手から撥(ばち)をとった。そ
       してはげしく鼓をたたく。馬もいきりたち、すさまじい勢いで走り出した。
       全軍、遅れじと後につづく。斉車はこの勢いに抗しきれず敗走をはじめ、華
       不注山のふもとをぐるぐると逃げまわった。 

  

 No.50

♞ 蓄電池の品質❂コストが世界を制す

✔ 世界最軽量クラスを実現 6.5kWhリチウムイオン蓄電システムを事例に

先月27日、京セラは住宅用の定置型リチウムイオン蓄電池の販売を開始。住宅太陽光の自家消
費ニーズの高まりを見据えた製品で、同社のHEMS「ナビフィッツ」と連携し、生活パターンの
学習による最適な充放電制御などが行えるもの(下写真)。このホームエネルギーマネジメント
システムと連携可能な6.5kWh(キロワット時)の蓄電システム「EGS-ML0650」は、重量は52kgと
蓄電池ユニットとしては「世界最軽量クラス」としており、屋内と屋外双方での設置が可能となっている。
希望小売価格は屋外向けが270万円(税別、付属品含む)、屋内向けが268万7000円(同)。

2012年にスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」の買い取り価格は毎
年低下を続ける中、今後は電力の自家消費を目的とした太陽光発電システム、蓄電システムの導
入が増加する見込み。2019年をめどに住宅太陽光発電システムの余剰買い取り期間が終了する住
宅も増え始める。その結果、新たに蓄電システムを導入し、既設の太陽光発電システムを有効活
用して自家消費を行う動きが広がると予想される。このようなニーズに向け、天気予測や電力消
費パターンから、太陽光発電システムによる発電量や余剰電力量などを試算し、蓄電システムや
「エコキュート(ヒートポンプ給湯機)」の自動制御を可能にするHEMS「ナビフィッツ」を
2017年1月に発売した。今回発表した蓄電システムは、ナビフィッツと連携可能な初のモデルで
ある。

 



✔ エネルギー分散型社会のキーテクノロジー・蓄電システム

欧州などの相次ぐ地下化石燃料自動車から電気自動車への政策転換が報道される中、トヨタ自動
車がマツダと共同で進める電気自動車(EV)の開発について、スバルなどの出資先や提携協議
中のスズキに幅広く参加をさせる動きが報じられ、日本政府内にも影響をあたえている。ここで
屋上屋を重ねるつもりはないが、デジタル革命渦論が波及している証であり、蓄電池と電動機と
いう2つの要素技術の研究開発競争の激化し驚くべき早さで技術革新が進行し、同一性能を基準
にして、コストダウン、ダウンサイジング、ボーダーレス、シームレス、イレージング、エクス
パンションが実現されていうだろう。ここではそのことを踏まえ、❶リチウムイオン蓄電システ
ム(京セラ)の2件、❷セパレーター(王子製紙)の1件の計3件の特許公開事例を参考掲載し
今後の技術開発の指針を小考する。対応遅延(誤謬?)に「ピンチに攻め上げる」姿勢で臨む他な
しであることを確認しておこう。



❏ 特開2017-118715 電力管理装置、電力管理システム、および電力管理方法

節電・省エネルギーに対する意識の高まりから電力管理装置(EMS:Energy Management System)
が着目され、さまざまな領域で活用されてきている。ここで、商業施設などの高圧受電者に課さ
れる電力料金の一部(基本料金)は、例えば直近の1年間における最大のデマンド値に応じ決定
される。デマンド値は、所定時限(デマンド時限)における需要電力量を、この時限の平均値で
ある最大需要電力値(デマンド値)に換算した値である。デマンド値が大きい程、基本料金が高
くなる。したがって、電力料金を抑制するために、当月のデマンド値、または、過去11ヵ月の
最大のデマンド値を越えないようにデマンドカットが従来行われる。具体的には、予め設定され
た目標とする電力値(デマンド目標値)よりも予測デマンド値が大きい場合に、負荷機器の動作
を制御して、負荷機器の消費電力を低減することによって、実際のデマンド値がデマンド目標値
を超えないように制御される。ところが、負荷機器の動作抑制にとして電力制御を実行するデマ
ンドカットは必ずしも適切でない――所要の常時動作負荷機器の電力制御を行うと不測の不具合、
あるいは、エアコンまたは照明装置などの電力制御の実行に伴う、需要家施設の快適性が損なわ
れる――可能性があり、デマンドカット手法の改善余地があった。このように、負荷機器に対す
る電力制御の実行を抑制しつつデマンドカット可能な電力管理装置、電力管理システム、および
電力管理方法を提供するにあたり、下図のように負荷制御装置17および蓄電装置14を備える
需要家施設における電力管理を行う電力管理装置18は、負荷制御装置17及び蓄電装置14と
通信可能な通信部22と、制御部25と、を備える。制御部25は、蓄電装置14の残量に係る
情報を蓄電装置14から取得し、現在時刻が属する時限以降の時限のうち予測需要電力量が第1
閾値を超過する予測時限と、予測時限における予測需要電力量のうち第1閾値を超過する予測超
過電力量と、を負荷制御装置17から取得し、蓄電装置14の残量と、予測時限と、予測超過電
力量と、に基づいて、負荷機器16に対する電力制御を決定する。 


【符号の説明】

10    電力管理システム 11    分電盤 12    電力量計 13    最大需要電力計 14    蓄電装置
15    発電装置 16    負荷機器 17    負荷制御装置 18    電力管理装置 19    電力系統
20    ネットワーク 21    サーバ装置 22    通信部 23    表示部 24    記憶部 25    制御部

【図1】本発明の一実施形態に係る電力管理システムの概略構成を示すブロック図
【図2】図1の電力管理装置の概略構成を示すブロック図
【図3】電力管理装置の動作を示すフローチャート

【特許請求の範囲】

負荷機器に対する電力制御を行う負荷制御装置、および前記負荷機器に電力を供給可能な
蓄電装置を備える需要家施設における電力管理を行う電力管理装置であって、前記負荷制
御装置及び前記蓄電装置と通信可能な通信部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記
蓄電装置の残量に係る情報を前記蓄電装置から取得し、現在時刻が属する時限以降の時限
のうち予測需要電力量が第1閾値を超過する予測時限と、前記予測時限における前記予測
需要電力量のうち前記第1閾値を超過する予測超過電力量と、を前記負荷制御装置から取
得し、前記蓄電装置の前記残量と、前記予測時限と、前記予測超過電力量と、に基づいて、
前記負荷機器に対する電力制御を決定する、電力管理装置 請求項1に記載の電力管理装置であって、前記制御部は、前記負荷機器に対する電力制御
を留保させる第1制御信号を前記負荷制御装置へ送信する、電力管理装置 請求項2に記載の電力管理装置であって、前記制御部は、前記予測超過電力量が、前記予
測時限に前記蓄電装置からの放電を許可する上限電力量以下である場合、前記負荷機器に
対する電力制御を前記予測時限の少なくとも一部に亘って留保させる前記第1制御信号を
前記負荷制御装置へ送信する、電力管理装置 請求項3に記載の電力管理装置であって、前記制御部は、前記予測超過電力量が前記上限
電力量以下である場合、前記予測時限において前記蓄電装置を定格出力で放電させるとき
の放電電力量が前記予測超過電力量以上であるときに、前記第1制御信号を前記負荷制御
装置へ送信する、電力管理装置 請求項1乃至3の何れか一項に記載の電力管理装置であって、前記通信部は、ネットワー
クを介した通信機能を有しており、前記制御部は、前記ネットワークを介して、時限毎の
電力料金を示す情報を取得し、対象時限における電力料金が第2閾値以上である場合、前
記対象時限において前記蓄電装置に充電よりも放電を優先させる第2制御信号を前記蓄電
装置へ送信する、電力管理装置 請求項5に記載の電力管理装置であって、前記制御部は、前記対象時限における電力料金
が前記第2閾値以上である場合、前記予測時限に前記蓄電装置からの放電を許可する上限
電力量が前記蓄電装置の残量未満であるときに、前記第2制御信号を前記蓄電装置へ送信
する、電力管理装置 請求項1乃至6の何れか一項に記載の電力管理装置であって、前記通信部は、前記需要家
施設に備えられた発電装置と通信可能であり、且つ、ネットワークを介した通信機能を有
しており、前記制御部は、前記ネットワークを介して、時限毎の電力料金を示す情報と、
前記発電装置による発電電力の時限毎の売電料金を示す情報と、を取得し、  対象時限に
おける売電料金が電力料金未満である場合、前記対象時限において、発電電力の売電より
も前記需要家施設への供給を優先的に行わせる第3制御信号を前記発電装置へ出力する、
電力管理装置 負荷機器に対する電力制御を行う負荷制御装置と、前記負荷機器に電力を供給可能な蓄電
装置と、電力管理装置と、を備え、前記電力管理装置は、前記蓄電装置の残量に係る情報
を前記蓄電装置から取得し、現在時刻が属する時限以降の時限のうち予測需要電力量が第
1閾値を超過する予測時限と、前記予測時限における前記予測需要電力量のうち前記第1
閾値を超過する予測超過電力量と、を前記負荷制御装置から取得し、前記蓄電装置の前記
残量と、前記予測時限と、前記予測超過電力量と、に基づいて、前記負荷機器に対する電
力制御を決定する、電力管理システム。 負荷機器に対する電力制御を行う負荷制御装置、および前記負荷機器に電力を供給可能な
蓄電装置を備える需要家施設に設置される電力管理装置が実行する電力管理方法であって、
前記電力管理装置が前記蓄電装置の残量に係る情報を前記蓄電装置から取得するステップ
と、現在時刻が属する時限以降の時限のうち予測需要電力量が第1閾値を超過する予測時
限と、前記予測時限における前記予測需要電力量のうち前記第1閾値を超過する予測超過
電力量と、を前記負荷制御装置から取得するステップと、前記蓄電装置の前記残量と、前
記予測時限と、前記予測超過電力量と、に基づいて、前記負荷機器に対する電力制御を決
定するステップと、を含む電力管理方法。 

❏ 特開2017-139953 管理システム、管理方法、制御装置及び蓄電池装置

複数の機器と、複数の機器を制御する制御装置とを有する電力管理システムが提案されている。
複数の機器は、例えば、エアーコンディショナー、照明装置などの家電機器、及び、太陽電池、
蓄電池、燃料発電装置などの分散電源である。制御装置は、例えば、HEMS(Home  Energy  M-
anagement  System)、SEMS(Store  Energy  Management  System)、BEMS(Building  Energy 
Management  System)、FEMS(Factory  Energy  Management  System)、CEMS(Cluster/Comm-
unity  Energy  Management  System)などと称される。これらの管理システムの普及には、複数
の機器と制御装置との間のメッセージフォーマットを共通化することが効果的であり試みられて
いる。そこで、下図のように機器を適切に制御することを可能とする管理システム、管理方法、
制御装置及び蓄電装置を提供するにあたり、下図のように、EMS200は、蓄電池装置140
が対応するコード群を要求するコード群要求を蓄電池装置140に送信し、蓄電池装置140か
らのコード群応答に運転モード要求に対応するコードが含まれている場合に、運転モードの通知
を要求する要求メッセージを蓄電池装置140に送信し、蓄電池装置140は運転モードを指定
する応答メッセージをEMS200に送信する。

【符号の説明】

10…需要家、20…CEMS、30…変電所、31…配電線、40…スマートサーバ、50…
発電所、51…送電線、60…ネットワーク、100…エネルギー管理システム、110…分電
盤、120…負荷、130…PV装置、131…PV、132…PCS、140…蓄電池装置、
141…蓄電池、142…PCS、150…燃料電池装置、151…燃料電池、151A…改質
器、151B…セルスタック、152…PCS、153…ブロワ、154…脱硫器、155…着
火ヒータ、156…制御基板、160…貯湯装置、170…給湯装置、180、181、182
…電流計、200…EMS、210…受信部、220…送信部、230…制御部、
300、310、320…ユーザ端末

【図1】図1は、第1実施形態に係るエネルギー管理システム100を示す図
【図2】図2は、第1実施形態に係る需要家10を示す図
【図3】図3は、第1実施形態に係る燃料電池装置150を示す図
【図4】図4は、第1実施形態に係るネットワーク構成を示す図

【特許請求の範囲】

蓄電池装置と、前記蓄電池装置と所定プロトコルを用いて通信を行う制御装置とを有する
管理システムであって、前記制御装置は、前記蓄電池装置に対して、前記蓄電池装置が対
応するコード群を要求するコード群要求を送信し、前記蓄電池装置は、前記制御装置に対
して、前記コード群要求に応じて、前記蓄電池装置が対応するコード群を応答するコード
群応答を送信し、前記制御装置は、前記コード群応答に前記蓄電池装置の運転モードの通
知を要求する運転モード要求に対応するコードが含まれている場合に、前記蓄電池装置に
対して、前記蓄電池装置の運転モードの通知を要求する要求メッセージを送信し、前記蓄
電池装置は、前記制御装置に対して、前記蓄電池装置の運転モードを指定する情報要素を
含むメッセージとして、前記要求メッセージに対する応答メッセージを送信することを特
徴とする管理システム 前記複数の運転モードは、前記蓄電池装置以外の分散電源と前記蓄電池装置が連携する運
転モードを含むことを特徴とする請求項1に記載の管理システム 前記蓄電池以外の分散電源は、太陽電池であることを特徴とする請求項2に記載の管理シ
ステム 前記運転モードは、前記蓄電池を充電するモード又は前記蓄電池を放電するモードである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の管理システム 前記制御装置は、所定トリガーを検出した後に、前記コード群要求を前記蓄電池装置に送
信し、前記所定トリガーは、前記蓄電池装置の初期設定を行うタイミング、停電から復旧
したタイミング、前記蓄電池装置の電源が投入されたタイミング、前記制御装置の電源が
投入されたタイミング、及び前記蓄電池装置の設定を確認する必要が生じたタイミングの
少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の管
理システム


❏ 特開2017-053075 多孔性を有する3層積層シート及びその製造方法、
            並びに3層積層シートからなる蓄電素子用セパレータ

電池、コンデンサー、キャパシターなどの蓄電素子用のセパレータには安全性、コンパクト化、
長寿命化等の観点から高度な性能が求められている。特にリチウム2次電池用のセパレータには
ハイブリッド自動車、電気自動車、高性能蓄電池等の普及に伴い、セルサイズの大型化、電池の
総重量ダウンのための大幅なコンパクト化、大幅なコストダウン、さらには耐熱、安全性の改良
に関して緊急な対応が求められている。このリチウム2次電池用のセパレータは、電解質を均一
に保持し、正極、負極の両面に密着して電極間を確実に絶縁するという基本機能が求められる。
また、他の機能として、電池の単位容量を上げるため40μm以下という薄層化と、高速組み立
てに耐える加工性、そして多回充放電に伴う金属デンドライトの発生による物理的損傷に耐える
強度、さらには極地の極低温、熱帯砂漠の極高温に耐える耐候性、寸法安定性も求められる。こ
の様な多くの機能を達成するには、単体、単層の構成では難しく、多層化や他種機能材との複合
化がされたセパレータが望ましい。

従来からこのリチウム2次電池用のセパレータとしてはハイポア(旭化成株式会社の商標)に代
表されるようなオレフィン系の多孔膜が使用されてきた。近年では、耐熱性の向上の必要から、
耐熱性に優れ、電気化学的に安定性のあるセルロース素材をセパレータ素材として利用する開発
研究がおこなわれている。このようなセルロース素材としては、特に超微細径をもつミクロフィ
ブリル化セルロース(MFC)を高圧ホモジナイザーによりさらに微細化を進めたナノセリッシ
ュ(ダイセル商標)、酢酸菌の培養、分離、精製によって得られるバイオセルロース等のセルロ
ースナノファイバーの開発が行われている。以上のような超微細径をもつセルロース繊維から薄
層化したセパレータを得ようとすると下記のような2つの大きな問題がある。

微細径をもつセルロース繊維は水和性が巨大で、水素結合性が強力のためその水和状態のまま
シート形成するといわゆるパーチメント化したフィルム状シートとなる。その結果、多孔構造は消滅
し、もはやイオンの透過性はほとんどなくなる。 セルロース分子の水酸基を疎水性官能基で置換したり、アルコール類による溶媒置換等により水
素結合の形成をブロックして多孔構造を維持したままのシートを得ようとすると、自着性を喪失し
必要なシート強度を維持することが出来ない。

これらの問題の解決手段としては、たとえば特許文献1、2及び3に提案されているように、水
素結合の度合いを化学的にコントロールする試みがある。このような方法により連続的に薄層化
シートを製造しようとすると、条件設定が難しくプロセスも複雑になるので、商業化生産に際し
ては著しく不利である。また、他の手段としては、不織布を強度支持体として、多孔構造をもつ
超微細径セルロース繊維層と不織布を積層してシートを得る方法である。微細セルロース層を成
型する支持体として疎水性シートたとえば不織布を使用し、積層した状態で脱溶媒,乾燥を終っ
たのちに、その支持体不織布を剥離して取り除き、微細セルロースのみからなる薄層を得る方法
が提案されているが、支持体不織布を適切に選択して微細セルロース繊維層と不織布を積層一体
化した状態で利用するほうがより合理的と思われる。また、この一体化したシート方法は条件設
定もしやすくプロセスも比較的簡単で商業化しやすい利点があるが、反面セルロース繊維層にも
不織布にもある程度以上の厚さと目付が必要となり薄層化、超薄層化が難しい。特に不織布は少
なくとも15g/m2を超えないとセルロース繊維層の乾燥収縮によりセルロース繊維層側に大きく
カールしてしまう。セルロース繊維層も単層のため10g/m2以上でないとピンホールの発生を防
止するのが難しい。したがって積層体の目付も25g/m2以上の厚いシートになり、厚さも100μ
m前後になって、リチウム2次電池用のセパレータとしては使用には難点がある。これらを踏ま
え、下図のようにシート強度性及び生産性並びに通気性に優れた3層積層体シート、及び商業的
に連続生産可能な製造方法及びその3層積層体シートからなる蓄積素子用セパレータの提供にあ
たり、熱可塑性の繊維を主たる構成成分とする不織布を中芯材Sとして、その上層及び下層とし
て微細径セルロース繊維を主たる構成成分とする多孔性繊維層P,Qを備えた3層積層シートに
おいて、ガーレ法で測定された3層積層シートの透気度が1,000秒/100ml以下であり、3層積層
シートの目付が2~155g/m2の範囲に在り、3層積層シートの厚さが5~40μmの範囲にあ
り、不織布Sが、EVA,PE,PP,PET等から選ばれた連続フィラメントを構成成分とす
る3層積層シートとした。



【符号の説明】P,Q  多孔性繊維層 S  中芯不織布

【図1】本発明に係わる3層積層シートの代表的な構造を示す構成図
【図2A】比較例として示した2層積層状態の1例を示す模式図
【図2B】単に積層、接合した状態を示す3層積層の構成を示す模式図
【図2C】上下の多孔性繊維層が不織布層に噛みこんだ3層積層の構成を示す模式図
【図2D】上下の多孔性繊維層が相互に近接し薄層化が進行し3層積層の構成を示す模式図
【図3】不織布として4g/m2とより薄く目開きの大きい材料を選択して積層・一体化した3
    層積層シートの例を示す模式図
【図5A】本発明に係わる3層積層シートの製造方法の一実施形態のフローを示す図
【図5B】本発明に係わる3層積層シートの製造方法の他の実施形態のフローを示す図
【図5C】本発明に係わる3層積層シートの製造方法の他の実施形態のフローを示す図
【図5D】本発明に係わる3層積層シートの製造方法の他の実施形態のフローを示す図

【特許請求の範囲】

熱可塑性の繊維を主たる構成成分とする不織布を中芯材として、その上層及び下層として
細径セルロース繊維を主たる構成成分とする多孔性繊維層を備えた3層積層シートにおい
て、 ガーレ法で測定された3層積層シートの透気度が1000秒/100ml以下であり、
3層積層シートの目付が2g/m2~15g/m2の範囲に在り、3層積層シートの厚さが
5μm~40μmの範囲にあり  前記不織布が、EVA,PE,PP,PET,EVA/
PE,PE/PP,PP誘導体/PP,PE/PET,PET誘導体/PETのいずれか
の連続フィラメントを構成成分とする3層積層シート 中芯材となる前記不織布が、繊度2デニール以下の熱可塑性合成繊維を少なくとも50%
wt以上含み、目付が1g/m2~10g/m2の範囲に在り、厚さが2μm~40μmの
範囲にある請求項1に記載された3層積層シート 中芯材となる前記不織布が、「繊維間目開き率」が50%以上である請求項2に記載され
た3層積層シート 中芯材となる前記不織布が、スパンメルト不織布である請求項2又は3に記載された3層
積層シート 中芯材となる前記不織布が、繊度1.7デニール以下、繊維長20mm以下のEVA,P
E,PP,PET,EVA/PE,PE/PP,PP誘導体/PP,PE/PET,PE
T誘導体/PETのいずれかの繊維を構成成分とする、湿式不織布である請求項2又は3
に記載された3層積層シート 微細径セルロース繊維を主たる構成成分とする前記上層及び下層の多孔性繊維層それぞれ
が目付が0.5g/m2~5g/m2の範囲に在り、 厚さが2μm~15μmの範囲にあ
る請求項1~5のいずれか1項に記載された3層積層シート 前記多孔性繊維層が微細径セルロース繊維としてセルロースナノファイバーを少なくとも
20wt%以上含有する請求項6に記載された3層積層シート 前記多孔性繊維層が微細径セルロース繊維としてセルロースナノファイバーとMFCの2
成分を含有し、その合計含有量が少なくとも40wt%以上である請求項7に記載された
3層積層シート 前記多孔性繊維層に平均粒径5.0μm以下の電気絶縁性のある無機物微粒子からなる多
孔化促進剤を前記微細径セルロース繊維重量に対して10wt%~150wt%添加する
請求項6~8のいずれか1項に記載された3層積層シート  前記上層の多孔性繊維層と前記下層の多孔性繊維層が不織布との接触面において、相互に
前記不織布の繊維間空隙を貫通して、上層構成繊維と下層構成繊維が混和、接合状態にな
り一体化されている請求項1~9のいずれか1項に記載された3層積層シート 前記上層の多孔性繊維層と前記下層の多孔性繊維層が易溶融性不織布との接触面において
相互に前記不織布の繊維間空隙を貫通して、上層構成繊維と下層構成繊維が混和、融着、
接合状態になり一体化されている請求項10に記載された3層積層シート 請求項1~11のいずれか1項に記載の3層積層シートにより形成された蓄電素子用セパ
レータ 請求項1~11のいずれか1項に記載された3層積層シートの製造方法であって、前記上
層の多孔性繊維層を層P、前記下層の多孔性繊維層を層Q、前記不織布を布Sとしたとき、
前記層P及び層Qを、あらかじめ準備された前記布Sの両面に重ね合わせ、重ね合わせた
状態で圧着一体化する3層積層シートの製造方法 請求項13に記載された3層積層シートの製造方法であって、
前記層Pと前記層Qのそれぞれの最表面を保護する役割の2枚の疎水性不織布をそれぞれ
保護シートR1、R2としたとき、前記保護シートR1と前記層Pとの合体シートR1P、
及び前記層Qと前記保護シートR2との合体シートQR2をそれぞれ成形し、前記合体シ
ートR1P及び前記合体シートQR2を前記布Sの両面に前記保護シートR1,R2が外
側にくるように重ね合わせて圧着一体化し  圧着一体化されたシートR1P/S/QR2
から2枚の保護シートR1,R2を取り除き、3層積層シートP/S/Qを得る3層積層
シートの製造方法 前記層Qあるいは前記層Pと、前記布Sとで、合体シートS/Qあるいは合体シートP/
Sを成形し、前記層P、前記布S、前記層Qの順の層構成になるように、前記合体シート
S/Qに層P、あるいは前記合成シートP/Sに前記層Qを重ね合わせて圧着一体化する、
請求項13に記載された3層積層シートの製造方法 前記層Pと前記層Qのそれぞれの最表面を保護する役割の2枚の疎水性不織布をそれぞれ
保護シートR1,R2としたとき、前記保護シートR1と前記層Pとの合体シートR1P、
あるいは前記層Qと前記保護シートR2との合体シートQR2を成形し、 前記布Sと前
記Q及び前記保護シートR2とで合体シートS/QR2を成形するか、あるいは前記布S
と前記層P及び前記保護シートR1とで合体シートR1P/Sを成形し、前記合成シート
R1P、前記布S、前記合成シートQR2の順の層構成になるように、前記合体シートS
/QR2に前記合成シートR1P、あるいは前記合体シートR1P/Sに前記合成シート
QR2を重ね合わせ圧着一体化し、圧着一体化されたシートR1P/S/QR2から2枚
の保護シートR1,R2を取り除き、3層積層シートP/S/Qを得る請求項15に記載
された3層積層シートの製造方法。 溶媒含有状態の前記層Qあるいは前記層Pと、前記布Sとで、前記合体シートS/Qある
いはP/Sの成形が溶媒含有状態で行われ、前記層P、前記布S、前記層Q順の層構成に
なるように、前記合体シートS/Qに層P、あるいは前記合体シートP/Sに層Qを重ね
合わせ圧着一体化する工程が溶媒含有状態で行われ、圧着状態を経て脱溶媒、乾燥が行わ
れる請求項15に記載された3層積層シートの製造方法。 前記合体シートR1PあるいはQR2の成形が溶媒含有状態で行われ、  布Sと、層Qあ
るいは層P及び保護シートR2又は保護シートR1とで、前記合体シートS/QR2ある
いはR1P/Sの成形が溶媒含有状態で行われ、前記合体シートS/QR2あるいはR1
P/Sに前記合体シートR1PあるいはQR2を重ね合わせ圧着一体化する工程が溶媒含
有状態で行われ、圧着状態を経て脱溶媒、乾燥が行われ、前記シートR1P/S/QR2
から2枚の保護シートR1,R2を取り除き、3層積層シートP/S/Qを得る請求項15
に記載された3層積層シートの製造方法。

                                        

  

    

国家の自爆前夜

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               宣公13年~襄公20年 鞌(あん)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                 

       ※ 主君の身がわり

       ところで、司馬の韓厥は開戦の前夜、夢を見た。亡父の子興が夢枕に立ち、
       「明日は、兵車の左右さて、翌朝、斉の高固は、敢然として晋の陣内に兵車
       に乗ってはならん」と告げたのである。そこで韓厥は、自ら御者となって斉
       侯を迫った。これを見た邴夏が、斉侯に言った。
       「あの御者を狙いなさい、君子ですぞ」だが、斉侯は首を振った。
       「いや、君子と知りつつ夫を射掛けるのはいかにも礼にもとる」
       と言って韓厥の左乗者を狙い、兵車から射落した。つづいて右乗者を狙い、
       これも車中に射倒した。このとき、兵車を失なった晋の大夫綦母張が、韓厥
       の兵車に追いすがった。
       「たのむ、乗せてくれ」
       そして、左乗者の位置につこうとした。韓厥はそれを肘でおしのけた。する
       とこんどは、右乗者の位置につこうとする。韓厥はまた肘でおしのけ、自分
       のうしろにしか立たせない。そのあと身をかがめて、倒れた右乗者の身体が
       落ちないようにした。このわずかの隙を見て、敵の逢丑父は斉侯と位置を入
       れかわっておいた。
       斉侯の車は、車泉にさしかかったところで、副馬のたづなが木にからまり、
       動きがとれなくなった。
       ところで逢丑父は前夜、車の中に寝たが、車の下から這いのぼってきた蛇を
       うち殺そうとして肘に負傷していた。それを隠して出陣していたので、この
       事態になっても、とびおりて兵車を抑すことができない。とうとう韓厥に追
       いつかれてしまった。
       韓厥は、斉院の馬前に歩みより、たづなを手にとった。そして再拝稽首し、
       持参した盃に璧を添え、斉侯に捧げて言った。
       「わが主君は、魯・衛救援をわれわれに命じてこう申しました。『目的は両
       国を救うことにある。斉の地に深入りしてはならん』と。車を進めるうちに、
       不幸にして貴軍に出くわしてしまいました。とはいえ、逃げ隠れするわけに
       もまいらず、また、故意に避けるのは、主君の名を恥かしめ、君に対しても
       かえって無礼なふるまいかと存じ、あえて 戈を交えさせていだだきました。
       失礼の段、お許しを願いたい。この私がお伴いたしますのでおいでいただき
       たい」このとき、斉侯になりすました逢丑父は、何食わぬ顔で、華泉の水を
       汲んでこい、とかたわらの斉侯に命じた。車をおりだ斉侯は、鄭周父が御を
       宛筏が右をつとめる副単にとび乗って、逃げおおせてしまった。




ぼくらが旅に出る理由(2015年) ※GAMBA ガンバと仲間たちの主題歌

    ● 今夜の一曲

 

              わが恋のごとく悲しやさくら貝 片ひらのみのさみしくありて 

                                                            鈴木義光

鎌倉・由比ヶ浜の近くに住む鈴木義光という青年が、胸を病んで18歳で亡くなった恋人・横山八重子
を偲んでこの歌を作る。この歌をモチーフにして、彼の友人で、当時逗子町役場の職員だった土屋花
情が作ったのがこの歌詞である。山田耕筰が気に入り編曲して、昭和24年にNHK「ラジオ歌謡」と
して放送、問い合わせや楽譜毬藻の歌がほしいという要望が殺到する。ところで、作曲した鈴木は、
この後、八洲秀章(やしま・ひであき)という筆名で、『山のけむり』『あざみの歌』『チャペルの
』『毬藻の唄』など、抒情歌を数多く作くるが、どれもこれも心に深く残る曲である。


   美わしきさくら貝ひとつ
   去りゆけるきみに捧げん
   この貝は去年(こぞ)の浜辺に
   われひとりひろいし貝よ

   ほのぼのとうす紅染むるは
   わが燃ゆるさみし血潮よ
   はろばろと通う香りは
   きみ恋うる胸のさざなみ

   ああ なれど わが思いははかなく
   うつし世の渚に果てぬ

                                                         『さくら貝のうた』
 
                               唄  賠償美津子
                               作詞   土屋  花情
                              作曲  八洲  秀章 

ところで、この曲を歌う倍賞千恵子(1941年6月29- )は、日本の女優、歌手、声優。愛称は「チ
コちゃんはお元気らしい。実妹は女優の倍賞美津子。弟は猪木事務所社長の倍賞鉄夫、日産自動車硬
式野球部元監督の倍賞明。夫は作曲家の小六禮次郎。西巣鴨生まれ。東京都北区滝野川に育つ。戦時
中は茨城県に疎開。北区立滝野川第六小学校、北区立紅葉中学校(現:北区立滝野川紅葉中学校)卒業。
父は都電の運転士、母は車掌であったとか。下町の太陽(1962年)をはじめ、さよならはダンスの後
に(1965年)、忘れな草をあなたに(1971年)、オホーツクの船唄(1976年)、世界の約束(2004年)
(ハウルの動く城の主題歌)、さよならの夏(2011年)(コクリコ坂からの主題歌)。

       

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』        

    第45章 何かが起ころうとしている 

  同時進行させていた二つの絵のうちで、先にできあがったのは『雑木林の中の穴』の方だった。
 金曜日の昼過ぎにそれは完成した。絵というのは不思議なもので、完成に近づくにつれてそれは、
 独自の意志と観点と発言力を獲得していく。そして完成に至ったときには、描いている人間に作
 業が終了したことを教えてくれる(少なくとも私はそう感じる)。そばで見物している人には、
 ――もしそのような人がいたとすればだが――どこまでが制作途上の絵なのか、どこからが既に
 完成に至った絵なのか、まず見分けはつくまい。未完成と完成とを隔てる一本のラインは、多く
 の場合目には映らないものだから。しかし描いている本人にはわかる。これ以上手はもう加えな
 くていい、と作品が声に出して語りかけてくるからだ。ただその声に耳を澄ませているだけでい
 『雑木林の中の穴』も同じだった。ある時点でその絵は完成し、もうそれ以上私の絵筆を受け入
 れなくなった。まるで性的にすっかり満ち足りてしまったあとの女性のように。私はそのキヤン
 バスをイーゼルから下ろし、床に置いて壁に立てかけた。そして自分も床に腰を下ろし、その絵
 を長いあいだ見つめていた。蓋を半分かぶせられた穴の絵だ。

  どうして自分か突然思い立ってそんな絵を描いてしまったのか、私にはその意味や目的をつき
 とめることができなかった。私はあるとき、その『雑木林の中の穴』の絵をどうしても描きたく
 なったのだ。そうとしか言いようがない。そういうことはときとして起こる。何か――ある風景、
 物体、人物――がただ純粋に、とてもシンプルに私の心を捉え、私は筆をとってそれをキャンバ
 スに描き始める。これという意味もなければ目的もない。ただの気まぐれのようなものだ。
  いや、違う、そうじゃない、と私は思った。「ただの気まぐれ」なんかじゃない。私がこの絵
 を描くことを何かが求めていたのだ。とても強く。その求めが私を超勤させ、この絵に取りかか
 らせ、私の背中を手で押すようにして、短い期間のうちに作品を完成に至らせたのだ。あるいは
 その穴自体が意志を持ち、私を使って自らの姿を描かせたのかもしれない――何かしらの意図を
 持って。ちょうど免色が(おそらくは)何かしらの意図をもって、自分の肖像を私に描かせたの
 と同じように。

  ごく公正に客観的に見て、悪くない出来の絵だった。芸術作品と呼ぶことができるかどうか、
 そこまではわからない(弁解するわけではないが、私はそもそも芸術作品を生み出そうとしてこ
 の絵の制作にとりかかったわけではなかった)。しかし技術的なことに限っていえば、ほとんど
 文句のつけようはないはずだ。構図も完璧だし、樹間から差し込む太陽の光も、積もった落ち葉
 の色あいも、どこまでもリアルに再現されていた。そしてその絵はきわめて細密で写実的であり
 ながら、同時にどこかしら象徴的な、ミステリアスな印象を漂わせていた。
  その完成した絵を長いあいだ睨んでいて私が強く感じたのは、その絵の中には勁きの予感のよ
 うなものが潜んでいるということだった。それは表面的に見ればタイトル通り、ただの「雑木林
 の中の穴」を描いた具象的な風景圃だった。いや、風景圃というよりはむしろ「再現圃」と呼ん
 だ方が事実に近いかもしれない。私は曲りなりにも絵を描くことを長く職業としてきたものとし
 て、身につけた技術を駆使し、そこにある風景をキャンバスの上にできる限り忠実に再現した。
 描くというよりはむしろ記録したのだ。

  でもそこには動きの予感のようなものがあった。この風景の中で、これから何かが動き出そう
 としている――私は絵の中からそのような気配を強く感じ取ることができた。今まさに何かがこ
 こで始まるうとしている。そして私はそこでようやく思い当たった。私かこの絵の中に描こうと
 していたのは、あるいは何かが私に描かせようとしていたのは、その予感であり気配だったのだ。
 私は床の上で姿勢を正し、もう一度あらためてその絵を見直した。
  そこにはこれからいったいどのような動きが見られるのだろう? 半分だけ闇いた丸い暗闇の
 中から誰かが、何かが這い出てくるのだろうか? あるいは逆に、誰かがその中に降りていくの
 だろうか? 私は長いあいだ集中してその絵を眺めていたが、そこに出現するのがどのような
 「動き」なのか、画面から推し量ることはできなかった。ただ何かしらの動きがそこに生まれる
 に違いないと、強く予感するだけだった。
  そしてなぜ、何のために、この穴は私に描かれることを求めていたのだろう。それは何かを教
 えようとしているのだろうか? 私に警告のようなものを与えようとしているのだろうか? ま
 るで謎かけのようだ。たくさんの謎がそこにあり、そして解答はひとつとしてない。この絵を秋
 川まりえに見せて、彼女の意見を聞きたいと私は思った。彼女ならそこに何か、私の目には見え
 ないものを見て取るかもしれない。


  金曜日は小田原駅近くの絵画教室で講師を務める日だ。秋川まりえが生徒として教室にやって
 くる日でもある。教室の絵わったあと、彼女とそこで何か話ができるかもしれない。私は車を運
 転してそこに向かった。

  駐車場に車を駐め、教室が始まるまでにはまだ時間があったので、いつものように喫茶店に入
 ってコーヒーを飲んだ。スターバックスのような明るくて機能的な店ではなく、初老の店主が一
 人で切り盛りしている昔ながらの、路地裏の喫茶店だ。濃い真っ黒なコーヒーを、ひどく重いコ
 ーヒーカップに入れて出す。古いスピーカーから古い時代のジャズが流れている。ビリー・ホリ
 デーとかクリフォード・ブラウンとか。そのあと商店街をぶらぷらと歩いているうちに、コーヒ
 ーフィルターが残り少なくなっていることを思い出して、それを買った。そのあと中古レコード
 を売っている店をみつけて中に入り、古いLPを眺めて時間をつぶした。考えてみればずいぷん
 長いおいた、クラシック音楽しか聴いていなかった。雨田典彦のレコード棚にはクラシック音楽
 のレコードしか置かれていなかったからだ。そして私はラジオではAM放送のニュースと天気予
 報以外の番組をまず間かなかった(地形の関係でFM放送の電波はほとんど入らなかった)。



  私が広尾のマンションに持っていたCDとLPは――たいした数ではないが――全部あとに残
 してきた。本にせよレコードにせよ、私の所有する物とユズの所有する物とをひとつひとつ分別
 することが煩わしかったからだ。ただ面倒というだけではなく、それは不可能に近い作業でもあ
 った。たとえばボブ・ディランの『ナッシュヴィル・スカイライン』や、『アラバマ・ソング』
 の入ったドアーズのアルバムは、いったいどちらの持ち物になるのだろう? どちらがそれを買
 ったかなんて、今となってはどうでもいいことだった。とにかく我々は同じ音楽を一定期間二人
 で共有し、一緒にそれを聴いて日々の生活を送ったのだ。物体を区分けすることができても、そ
 れに付随する記憶を区分けすることはできない。だとしたらすべてをあとに残していくしかない。



  私はそのレコード店で『ナッシュヴィル・スカイライン』と、ドアーズのファースト・アルバ
 ムを探してみたが、どちらも見当たらなかった。あるいはCDでならあったのかもしれないが、
 私はやはり昔ながらのLPでそれらの音楽を聴きたかった。それにだいいち、雨田典彦の家には
 CDプレーヤーは置いていない。カセットデッキだってない。レコード・プレーヤーが何台かあ
 るだけだ。雨田典彦は何によらず新しい機器に好意を抱かないタイプの人であったようだ。電子
 レンジのニメートル以内に近づいたこともないのではないだろうか。

  私は結局、その店で目についた二枚のLPを買った。ブルース・スプリングスティーンの『ザ
 ・リブァー』と、ロバータ・フラックとダュー・ハサウェイのデュエットのレコード。どちらも
 懐かしいアルバムだった。ある時点から私は新しい音楽をほとんど聴かなくなってしまった。
 そして気に入っていた古い音楽だけを、何度も繰り返し聴くようになった。本も同じだ。音読ん
 だ本を何度も繰り返し読んでいる。新しく出版された本にはほとんど興味が持てない。まるでど
 こかの時点で時間がぴたりと停止してしまったみたいに。



  あるいは時間は本当に停止してしまったのかもしれない。あるいは時間はまだかろうじて勣い
 てはいるものの、進化みたいなものは既に終了してしまったのかもしれない。ちょうどレストラ
 ンが閉店の少し前に、もう新しい注文を受け付けなくなるのと同じように。そして私ひとりがま
 だそのことに気がついていないだけかもしれない。
  私はその二枚のアルバムを紙袋に入れてもらい、代金を払った。それから近くの酒屋に寄って
 ウィスキーを買い求めた。どの銘柄にしようか少し迷ったが、結局シーヴァス・リーガルを買っ
 た。ほかのスコッチ・ウィスキーよりも少し値段は高かったが、雨田政彦が今度うちに遊びに来
 たとき、それが置いてあればきっと喜ぶだろう。



 そろそろ教室の始まる時刻になったので、゛私はレコードとコーヒーフィルターとウィスキーを
 車の中に置いて、教室のある建物に入った。まず最初に五時からの子供たちのクラスがあった。
 秋川まりえが属しているクラスだ。しかしそこにまりえの姿は見当たらなかった。それはとても
 意外なことだった。彼女はずいぶん熱心にその教室に通っていたし、私の知る限りでは欠席した
 のは初めてのことだ。だから彼女の姿が教室のどこにも見えないと、なんだか落ち着かない気持
 ちになった。そこには何かしら不穏な気配さえ感じられた。彼女の身に何かが起こったのだろう
 か? 急に体調を崩したとか、何か突発的な事件が起きたとか。



  しかしもちろん私はなにごともなかったように、子供たちに簡単な課題を与えて終を描かせ、
 一人ひとりの作品について意見を述べたり、アドバイスを与えたりした。そのクラスが終了する
 と、子供たちは家に帰り、今度は成人のための教室になった。その教室もとくに支障なく終えた。
 人々とにこやかに世間話をした(私のあまり得意とする分野ではないが、やってできなくはな
 い)。それから絵画教室の主宰者と、今後の予定について短い打ち合わせをした。秋川まりえが
 なぜ今日教室を体んだかは、枚も知らなかった。彼女の家からの連絡もとくにないということだ。

  教室を出てから一人で近所の蕎麦屋に入って、温かい天ぷら蕎麦を食べた。これもいつもの習
 慣だ。いつも同じ店で、いつも天ぷら蕎麦を食べる。それが私のささやかな楽しみになっている。
 それから車を運転して山の上の宮号戻った。宮に戻ったときには、もう夜の九時近くになってい
  た。
  電話機には留守番電話機能がついていなかったので(そのような小賢しい装置も雨田典彦の好
 みにはあわなかったようだ)、出かけているあいだに誰かから電話がかかってきたかどうかもわ
 からなかった。私はしばらくのあいだそのシンプルな旧式の電話機をじっと見つめていたが、電
 話機は私に何も敦えてくれなかった。ただじっとその黒々とした沈黙を守っているだけだった。

  ゆっくり風呂に入り、身体を温めた。それから瓶に残っていたシーヴァス・リーガルの最後の
 一杯ぶんをグラスに往ぎ、冷凍庫の角氷を二つ入れ、居間に行った。そしてウィスキーを飲みな
 がら、さきほど買ってきたレコードをターンテーブルに載せた。クラシック音楽以外の音楽がそ
 の山の上の宮の居間に流れると、最初はどうもそぐわない気がしてならなかった。きっとその部
 屋の空気は長い歳月をかけ、古典音楽に合わせて調整されてきたのだろう。でも今そこに流れて
 いるのは、私にとっては聴き慣れた音楽だったから、時間の経過とともに、懐かしさがそぐわな
 さを少しずつ克服していった。そしてやがては、身体の筋肉が各部でほぐれていくような心地よ
 い感覚がそこに生まれた。私の筋肉は自分でも気づかないうちに、あちこちで固くなっていたの
 かもしれない。

  ロバータ・フラックとダュー・ハサウェイのLPのA面を聴き終え、グラスを傾けながらB面
 の一曲眼(「フオー・オール・ウィー・ノウ」、素敵な歌唱だ)を聴いているところで、電話の
 ベルが鳴った。時計の針は十時半を指していた。こんな運くにうちに電話がかかってくることは
 まずない。受話器を取るのは気が進まなかった。しかしそのベルの鳴り方には心なしか差し迫っ
 た響きが聴き取れた。私はグラスを置いてソファから立ち上がり、レコードの針を上げ、それか
 ら受話器を取った。

 「もしもし」と秋川笙子の声が言った。
  私は挨拶をした。
 「夜分まことに申し訳ありません」と彼女は言った。彼女の声はいつになく切迫して聞こえた。
 「先生にちょっとおうかがいしたかったのですが、まりえは今日、そちらの絵画教室にはうかが
 いませんでしたよね?」

  来ていないと私は言った。それはいささか不思議な質問だった。まりえは学校(地元の公立中
 学校だ)の授業が終わると、そのまま教室にやってくる。だからいつも制服姿で絵画の教室にや
 ってくる。教室が終了するころに、叔母が車で彼女を迎えに来る。そして二人は家に帰っていく。
   それがいつもの習慣だった。

 「まりえの姿が見当たらないんです」と秋川笙子は言った。
 「見当たらない?」
 「どこにもいないんです」
 「それはいつからですか?」と私は尋ねた。
 「学校に行くといって、いつものように朝に家を出ました。車で駅まで送るうかと言ったんです
 が、歩くからいいとまりえは言いました。あの子は歩くのが好きなんです。車に乗るのがあまり
 好きじやありません。何かあって遅刻しそうなときは私か車で送りますが、そうでなければ普通
 は歩いて山を降りて、そこからバスに乗って駅まで行きます。そしてまりえは朝の七時半にもの
 ように家を出て行きました」

  それだけを一息で話すと秋川笙子子は少し間を置いた。電話口で呼吸を整えているようだった。
 私もそのあいだに、与えられた情報を頭の中で整理した。それから秋川笙子は話を続けた。

 「今日は金曜日です。学校がひけたあとそのまま絵画教室に行く日でした。いつもは教室の終わ
 る頃に私が車で迎えに行きます。でも今日はバスに乗って帰るから、迎えに来なくていいとまり
 えは言いました。だから迎えにいかなかったんです。なにしろ言い出したらきかない子ですから。
 普通、そういうときには七時から七時半のあいだに家に帰ってきます。そして食事をとります。。
 でも今日は八時になっても、八時半になっても帰ってきません。それで心配になったもので、教
 室に電話をかけて、事務の方に今日まりえが米ていたかどうか確認してもらいました。今日は来
 ていないということでした。それで私はとても心配になってきました。もう十時半ですが、この
 時刻になってもまだ帰宅していません。連絡ひとつありません。それでひょっとして先生が何か
 ご存じではないかと思って、このようにお電話を差し上げたんです」

 「まりえさんの行き先について、ぼくには心当たりはありません」と私は言った。「今日の夕方
 教室に入って、まりえさんの姿が見えなかったので、あれっと思ったくらいです。彼女が教室を
 休むというのは、これまでなかったことですから」

  秋川笙子は深いため息をついた。「兄はまだ帰宅していません。いつ帰宅するかもわかりませ
 んし、連絡もつきません。今日帰ってくるかどうかさえ確かじやありません。私一人でこの家に
 いて、どうすればいいのか途方に暮れてしまって」

 「まりえさんは学校に行く服装で、朝にお宅を出たんですね?」と私は尋ねた。
 「ええ、学校の制服を着て、バッグを肩にかけて。いつもと同じかっこうです。ブレザーコート
 にスカートです。でも実際に学校に行ったのかどうかまではわかりません。もう校も遅いですし、
 今のところ確認のしようがありません。でも学校には行ったと思うんです。もし無断欠席をした
 ら、学校から連絡があるはずですから。お金もその目に必要なぷんだけしか持っていないはずで
 す。携帯電話はいちおう持たせているのですが、電源は切られています。あの子は携帯電話が好
 きじゃないんです。自分から連絡してくるとき以外は、しょっちゅう電源を切ってしまっていま
 す。いつもそのことで注意しているのですが。何か大事なことがあったときのために、電源だけ
 は入れておいてくれと」

 「これまでこんなことはなかったのですか? 夜の帰宅が遅くなるようなことは?」
 「こんなことは本当に初めてです。まりえは学校にはまじめに通う子供でした。親しい友だちが
 いるわけでもなく、学校がそんなに好きというのでもないようですが、いったん決められたこと
 はしっかり守る子供です。小学校でも皆勧賞をもらっていました。そういう意味ではとても律儀
 なんです。そして学校が終わったらいつもまっすぐ家に帰ってきます。どこかでふらふらしてい
 たりするようなことはありません」

  まりえが夜中によく家を抜け出していることに、叔母はやはりまったく気づいていないらしい。
 「今朝、何かいつもとは違う様子みたいなものはありませんでしたか?」
 「いいえ。普段の朝と変わりありません。いつもとまったく同じです。温かいミルクを飲んで、
 トーストを一枚だけ食べて、家を出ていきます。判で捺したみたいに同じものしか口にしません。

よくもまぁ~予定通り読み繫いでいると自分でも感心するぐらいだ。腰痛をが堪えるがなんとか読み
終えたい。 

                                      この項つづく   
 
● 今宵の寸評:どうすれば、尊い人命の犠牲なしに最悪事態を回避できぬものだろうか?!

                         

   

晴れ時々右脳

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               宣公13年~襄公20年 鞌(あん)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                 

       ※ 夫の安否は問わず:

       まんまと謀られたと知った韓厥は、逢丑父を郤克のもとに引っ立てていった。
       郤克は、すぐさま逢丑父の処刑を兪じた。すると逢丑父が大声で、「わが身
       を捨てて主君の命を救ったこのわたしを殺すというのか。さようなことをすれ
       ば、今後、主君のために尽くす人物がいなくなるぞ」
       鄙克は、はっと気づいた。
       「死を賭して主君を逃れさせた忠義者を殺したりしては、わたしの身に天罰が
       くだろう。赦して忠臣の手本といたそう」
       と言って処刑をとりやめさせた。

       一方、逃れた斉侯は、なんとか逢丑父を救出しようと、三たび晋の陣内に押し
       寄せた。出陣のたびに、尻込みする兵士を叱陀して先頭に立ち、ついに狄の陣
       へ突入した(秋は晋とともに出陣していた)。
       ところが、斉を恐れている狄の兵士たちは、斉侯をとらえる気がまるでない。
       晋の手前、戈をふりあげていちおう打ちかかるが、片手の楯で斉侯の身体をま
       もり、衛の陣へ押しやった。衛の軍もわざとこれをとり逃した。こうして斉侯
       は、徐関から都へもどった。
       斉侯は、城邑の守備兵たちに言った。
       「わが軍は敗れた。しっかり守ってくれ」
       都に入り、道で一人の婦人に出会った。その婦人が、斉侯とは知らずにたずね
       た。
       「主君はご無事でしょうか」
       「無事だ」
       「では、鋭司徒は」
       「無事だ」
       「主君と父が無事とうかがえば、それ以上の望みはもちますまい」
       と言って走り去った。
       斉侯は、まず主君の安否を問い、つぎに父の安否を問いて、夫のことはたずね
       なかったことに感じ入り、あとでその婦人の身もとを調べさせた。それは鋭司
       徒の妻であった。石窌の地をあたえて、その心根をほめた。


【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅵ】  

● IoT機器の電池寿命を延ばす超小型の充電IC

8月10日、トレックス・セミコンダクター社は、20~100mAh クラスの小容量リチウム電池で駆動す
る小型IoT機器やウェアラブル端末などに向けて、❶ 待機時の電池消耗を従来比2分の1以下に抑え
ることのできるリニア充電IC「XC6808」を発売。リチウム電池から充電ICへのシンク電流(バッテリ
ー消費電流)を従来比30分の1以下に抑える。充電ICは、充電を行わない待機時でも入力と出力の
電圧比較コンパレーターを動作させる必要があり、蓄電池から微量の電力供給し電力を消費する。こ
の待機時に消費するシンク電流(吸い込み電流)は、スマートフォンなどモバイル機器に搭載される
充電ICであれば、2~3μA程度(詳細仕様は下写真ダブクリ参照)。




尚、このXC6808は、昨今のリチウム電池の充電完了電圧の高電圧化に対応。充電完了電圧として、
従来の4.20Vだけでなく、4.35V、4.40Vにも対応し、幅広いリチウム電池用充電ICとして使用できる。
さらにXC6808は、2.0×1.8×0.33mmサイズの超低背モールドパッケージ「USP-6B07」を採用。「パッケ
ージの高さを0.4mm以下に抑える必要のあるスマートカードにも実装可能。補聴器や完全ワイヤレス
型イヤフォンなど小型パッケージが要求される用途などにも適した充電IC」となっている。また、サ
ンプル価格が100円(税別)である。

この事例のように、蓄電池を構成するデジタルデバイスは、省エネ、ダウンサイジングを実現すると
同時に充電時間を短縮、電池寿命を延ばすことができるなどのメリットをもたらす。下記に特許事例
を参考掲載する。


❏ 特開2010-081790  電子機器 パナソニック株式会社

携帯電話やポータブル型のCDプレイヤー、デジタルスチルカメラ(DSC)等のポータブル型など
の電子機器の電源にはリチウムイオン(Li-ion)やニッケル水素(Ni-H)等の充電式バッテリー(充
電池)が使用されている。従来、この種の電子機器には、その機器本体のシステム制御を行うメイン
マイクロコンピューター(=メインマイコン)が、機器本体を介して、充電式バッテリー(=バッテ
リー)にACアダプターからの電力を充電する制御を行っているが、❶この種の電子機器は、その機
器本体を起動する必要がない充電時であっても、メインマイコンの起動に伴い機器本体が起動して
しまいACアダプターからの電力の一部を機器本体で消費することになり充電効率がい。❷また、電
子機器の機器本体の起動で発生する熱でバッテリーを加熱することとなり、バッテリーの温度上昇し
充電中のバッテリー温度上昇が許容温度以上になり、充電電流を抑える必要が生じ、充電時間が長く
なる。

バッテリーの充電時に、本体機器を制御する制御手段のON動作に伴う機器本体の起動により、充電
動作に寄与しない消費電力が増加し、またバッテリーも加熱されるため、十分な充電電流が流せない
ため、下図のように、自装置としての機器本体10の制御を行う主制御装置としてのメインマイコン
5と、バッテリー6の充電を行う充電IC2と、充電マイコン3とを備え、充電マイコン3は、メイ
ンマイコン5が動作しているか否かを監視し、ACアダプター1が機器本体10に接続されている場
合において、メインマイコン5が動作しているとき、充電IC2による充電動作を禁止する一方、メ
インマイコン5が動作していないとき、充電IC2による充電動作を許可する機構で、主制御手段と
は別に充電制御に特化した消費電力の小さい充電制御手段を設け、主制御手段が動作していないとき、
充電手段による充電動作を許可することで、充電動作に寄与しない消費電力の低減を実現できるよう
にする。

【符号の説明】

1 ACアダプター 2 充電IC(充電手段) 2a メモリー 3 充電マイコン(充電制御手段)
4 電源管理IC  5 メインマイコン(主制御手段)6 バッテリー(充電池)6a メモリー 6b
 温度センサー 10 機器本体

【特許請求範囲】

電力の供給を受けるために外部と電気接続可能な接続手段と、充電池を装着可能な装着手段と、
前記接続手段を介して供給された電力を用いて、前記装着手段に装着された充電池を充電する
充電手段と、自装置を制御する主制御手段と、前記主制御手段が動作しているか否かを監視し、
前記接続手段が外部に接続されている場合において、前記主制御手段が動作しているとき、前
記充電手段による充電動作を禁止する一方、前記主制御手段が動作していないとき、前記充電
手段による充電動作を許可する、充電制御手段と、を備える、 前記充電制御手段は、さらに前記接続手段が外部に接続されたか否かを監視し、前記接続手段
が外部に接続され、前記主制御手段が動作していないことを認識した場合に、前記充電手段に
よる充電動作を開始させる、請求項1に記載の電子機器 前記装着手段には、定格容量の異なる複数種類の充電池が装着可能とされ、前記装着手段に装
着された充電池の種類を検出する種類検出手段をさらに備え、前記充電手段は、前記種類検出
手段により検出された種類の充電池の定格容量に対応する電力を前記充電池に充電する、請求
項1または2に記載の電子機器 充電中に定期的に所定の処理を行わせるために前記主制御手段の起動が必要になった場合に、
前記充電制御手段が、この充電制御手段に設けたタイマーにより所定時間が経過したことを検
知した際に、前記充電手段への通電をOFFさせるとともに、前記主制御手段への通電をON
させて、自装置の制御を開始させて、前記所定の処理を行わせ、この後、前記充電手段への通
電をONさせるとともに、前記主制御手段への通電をOFFさせる、請求項1~3の何れか1
項に記載の電子機器。 充電池に当該充電池の容量を記憶する領域を有するメモリーが設けられ、充電中に、前記充電
制御手段が、この充電制御手段に設けたタイマーにより所定時間が経過したことを検知した際
に、前記充電手段への通電をOFFさせるとともに、前記主制御手段への通電をONさせて、
前記充電池の前記メモリーへの容量の書込み処理を行わせ、この後、前記充電手段への通電を
ONさせるとともに、前記主制御手段への通電をOFFさせる、請求項4に記載の電子機器。 前記主制御手段は、前記充電池の温度情報に基づいて、前記充電池の充電量を補正し、補正し
た値に対応する容量の充電池の前記メモリーへの書込み処理を行わせる、請求項5に記載の電
子機器。 電子機器がビデオカメラであることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の電子機器。 

 

       

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』        

    第45章 何かが起ころうとしている 

 「いつものように拡が朝食を用意しました。今朝あの子はほとんど口をききませんでした。でも
 それはいつものことです。時としていったんしゃべり出すととまらなくなることがありますが、
 普 段は返事だってろくにしません」
  秋川笙子の話を間いているうちに、拡もだんだん不安になってきた。時刻は十一時に近づいて
 いるし、もちろんあたりは真っ暗になっている。月も雲に隠れている。秋川まりえの身にいった
 い何か起こったのだろう?
 「あと一時間待って、もしまりえと連絡がつかなかったら、警察に相談してみようかと思いま
 す」と秋川笙子は言った。
 「その方がいいかもしれませんね」と拡は言った。「もしぼくに何かできることがあったら、遠
 慮なく言ってください。遅くなってもかまいませんから」

  秋川笙子は礼を言って電話を切った。拡は残っていたウィスキーを飲み干し、グラスを台所で
 洗った。
  そのあと私はスタジオに入った。明かりをすべて点し、部屋をすっかり明るくして、イーゼル
 に載せられた描きかけの『秋川まりえの肖像』をあらためて眺めた。絵はあと少し手を加えれば
 完成するところまできていた。そこには十三歳の無口な少女の、あるべきひとつの姿が立ち上げ
 られていた。ただ彼女の姿かたちばかりではなく、彼女の存在が孕んでいる、目には映らないい
 くつかの要素がそこに含まれているはずだった。視覚の枠外に隠されているそのような情報をで
 きるだけ明らかにすること、それらが発するメッセージを別の形象に置き換えていくこと、それ
 が私が自分の作品にもちろん営業用の肖像画は別にして――求めることだった。そういう意味で
 は、秋川まりえは私にとってずいぶん興味深いモデルだった。彼女の姿かたちには、多くの示唆
 がまるで朧し絵のように潜んでいたからだ。そして今朝から彼女の行方がわからなくなっている。
 まるでまりえ白身がその服し絵の中に引き込まれてしまったみたいに。

  それから私は床に置いた『雑木林の中の穴』を眺めた。その日の午後に描き上げたばかりの油
 絵だ。その穴の絵は『秋川まりえの肖像』とはまた違った意味合いで、別の方向から、私に何か
 を訴えかけているようだった。
  何かが起ころうとしているのだ、とその絵を見ながら私はあらためて感じた。今日の午後まで
 はあくまで予感でしかなかったものが、今では現実を実際に侵食し始めている。それはもう予感
 でもない。すでに何かが起き始めているのだ。秋川まりえの失踪はその『雑木林の中の穴』と何
 か繋がりを持っているに違いない。私はそう感じた。私が今日の午後にその『雑木林の中の穴』
 の絵を完成させたことによって何かが起勤し、動き出したのだ。そしておそらくその結果、秋川
 まりえはどこかに姿を消してしまった。
 でもそれを秋川笙子に説明するわけにはいかない。そんなことを言われても、彼女はわけがわ
 からなくて余計に混乱するだけだろう。

  私はスタジオを出て、台所に行って水をグラスに何杯か飲み、口の中に残っていたウィスキー
 の匂いを洗い流した。それから受話器を取り上げて、免色の家に電話をかけた。三度目のコール
 の途中で彼が電話口に出た。その声からは、誰かからの重要な連絡を待っていたときのような、
 いくぶんこわばった響きが微かに聴き取れた。電話をかけてきたのが私であったことに彼は少し
 驚いたようだった。しかしそのこわばりは瞬時にほどけ、普段の冷静で穏やかな声に戻った。

 「こんな夜分に電話をして申し訳ありません」と私は言った。
 「かまいませんよ、ぜんぜん。私は遅くまで起きていますし、どうせ暇な身です。あなたとお話
 ができるのはなによりです」

  挨拶は抜きにして、秋川まりえの行方がわからなくなっていることを、私は手短に説明した。
 その少女は学校に行くと言って朝に家を出たきり、まだ帰宅していない。絵画教室にも姿を見せ
 なかった。免色はそのことを知らされて驚いたようだった。少しのあいだ言葉を失っていた。

 「そのことで、あなたには心当たりみたいなものはないんですね?」、免色はまず私にそう尋ね
 た。
 「まったくありません」と私は答えた。「寝耳に水です。免色さんの方には?」
 「もちろん思い当たることは何もありません。彼女は私とはほとんど口をきいてくれませんか
 ら」
  彼の声にはとくに感情は混じっていなかった。ただ単純に事実を述べているだけだ。
 「もともとが無口な子なんです。誰ともろくに口をききません」と私は言った。「しかしとにか
 く、まりえさんがこの時刻になってもまだ帰宅しないことで、秋川笙子さんはずいぶん混乱して
 いるみたいです。父親はまだ帰ってこないみたいだし、∵Λきりでどうしていいかわからない様
 子です」
  免色はまたひとしきり、電話口で黙り込んだ。校がそのように何度も言葉を失うのは、私の知
 る限りきわめて珍しいことだった。

 「それについて、何か私にできることはありますか?」、彼はようやく目を開いた。
 「急なお願いですが、これからこちらに来ていただくことは可能ですか?」
 「あなたのお宅にですか?」
 「そうです。そのことに関連して、少しご相談したいことかあるんです」
 て私にそう尋ね
  免色は一瞬間を置いた。それから言った。「わかりました。すぐにうかがいましょう」
 「何かそちらでご用事があるわけではないんですね?」
 「用事というほど大したものじやありません。なんとでもなることです」と免色は言った。そし
 て小さく咳払いをした。時計に目をやるような気配があった。「今から十五分ほどでそちらにう
 かがえると思います」
  受話器を置いてから、私は外に出る支度をした。セーターを着て、革ジャンパーを用意し、大
 型の懐中電灯をそばに置いた。そしてソファに座って、免色のジャガーがやってくるのを待った。

 Berliner Mauer

    第43章 高い強固な壁は人を無力にします

  免色がやってきたのは11時20分だった。ジャガーのエンジンの音が聞こえると、私は革ジ
 ャンパーを着て家の外に出て、免色がエンジンを切って車から降りてくるのを待った。免色は紺
 色の厚手のウィンドブレーカーに、黒い細身のジーンズという格好だった。首に薄手のマフラー
 を巻いて、靴は革製のスニーカーだった。豊かな白髪が夜目にも鮮やかだった。
 「これからあの林の中の穴の様子を見に行きたいのですが、かまいませんか?」
 「もちろんかまいません」と免色は言った。「でもあの穴が、秋川まりえの失踪となにか関係し
 ているのですか?」
 「それはまだわかりません。ただ少し前から、不吉な予感がしてならないんです。あの穴に開運
 して何かが持ち上がっているのではないかという予感が」
  免色はそれ以上何も尋ねなかった。「わかりました。一緒に様子を見に行きましょう」

  彼はジャガーのトランクを開け、中からランタンのようなものを取り出した。そしてトランク
 を閉め、私と一緒に雑木林に向かった。月も星も出ていない時い夜だった。風もない。

 「こんな夜中にお呼び九てをして、申し訳ありませんでした」と私は言った。「でもあの穴の様
 子を見に行くのに、あなたに一緒に来ていただいた方がいいような気がしたんです。もし何かあ
 ったとき、一人ではうまく処理しきれないような気がしたものですから」
  彼は手を仲ばし、ジャンパーの上から私の腕をとんとんと軽く叩いた。励ますように。「そん
 なことはぜんぜんかまいません。気にしないでください。私にできることならなんでもします」
  我々は木の根に足をひっかけたりしないように、懐中電灯とランタンで足もとの地面を照らし
 ながら、慎重に歩を連んだ。我々の靴底が積もった落ち葉を踏む音だけが耳に届いた。夜の雑木
 林には、それ以外どんな音もしなかった。まわりにいろんな生き物が身を隠し、息をひそめて
 我々をじっと見守っているような重苦しい気配があった。真夜中の深い関がそのような錯覚を生
 み出すのだ。事情を知らない誰かがこんな我々の姿を目にしたら、これから墓荒らしに出かける
 二人組だと思うかもしれない。

 「ひとつだけ、あなたにうかがいたいことがあるのですが」と免色は言った。
 「どんなことでしょう?」
 「秋川まりえがいなくなったことと、あの穴とのあいだに何か関連性があると、どうしてあなた
 は思うのですか?」

  私は少し前に彼女と一緒にその穴を見に行ったことを話した。彼女は教えられる前から、既に
 この穴の存在を知っていた。この一帯は彼女の遊び場なのだ。このあたりで起こった出来事で彼
 女の知らないことはない。そこで彼女が口にしたことを、私は免色に教えた。その場所はそのま
 まにしておくべきだった、その穴を開いたりするべきではなかった、とまりえは言ったのだ。
 「彼女はあの穴を前にして何か特別なものを感じているみたいでした」と私は言った。「どう言
 えばいいのだろ・・・・・・たぶんスピリチュアルなものを」
 「そして関心を特っていた?」と免色は言った。
 「そのとおりです。彼女はあの穴に警戒心を抱いていたのと同時に、その姿かたちにとても心を
 惹かれているようでした。だからあの穴に関連して彼女の身に何かが起こったのではないかと、
 ぼくとしては心配でならないんです。ひょっとして穴の中から出られなくなっているかもしれな
 いと」

  免色はそれについて少し考えていた。それから言った。「あなたはそのことを彼女の叔母さん
 に言いましたか? つまり秋川笙子さんに?」
 「いいえ、まだ何も言っていません。そんなことを言い出したら、そもそも穴の説明から始めな
 くてはなりません。どういう経緯であの穴を関くことになったのか、なぜそこに免色さんが関わ
 ってくるのか。とても長い話になるし、ぼくの感じているものはうまく伝わらないかもしれませ
 ん」
 「それに余計な心配をさせるだけだ」
 「とくに警察が絡んでくれば、話は更に面倒になります。もし彼らがあの穴に関心を抱いたりし
 たら」
  免色は私の願を見た。「警察が既に絡んでいるのですか?」
 「ぼくが彼女と話をした時点では、まだ警察に連絡はしていませんでした。しかしたぶん今頃は
 もう捜素願が出されているはずです。なにしろもうこんな時刻になっていますから」
  免色は何度か肯いた。「まあ、それは当然のことでしょうね。十三歳の女の子が真夜中近くに
 なっても家に戻ってこない。どこに行ったかもわからない。家の人としては警察に連絡しないわ
 けにはいかない」

  しかし警察が関与してくることを、免色はどうやらあまり歓迎してないようだった。彼の声の
 響きにはそういう雰囲気が聞き取れた。

 「この穴のことは、できるだけあなたと私だけのことにしておきましょう。あまりよそには広め
 ない方がよさそうだ。たぶん話が面倒になるだけです」と免色は言った。私もそれに同意した。

  そして何よりも騎士団長の問題かおる。そこから出てきた騎士団長としてのイデアの存在を明
 かすことなく、その穴の特殊性を人に説明するのはほとんど不可能に近い。そんなことをしても、
 免色が言うようにたぶん話がより面倒になるだけだ(それにもし騎士団長の存在を明かしたとし
 ても、誰がそんなことを信じてくれるだろう? 私の正気が疑われるだけだ)。

  我々は小さな祠の前に出て、その裏手にまわった。ショベルカーのキャタピラに無残に踏みつ
 よされ、いまだに倒れ伏したような格好のままのススキの茂みを踏み越えていくと、そこにいつ
 もの穴があった。我々はまず明かりをかざしてその蓋を照らした。蓋の上には重しの石が並べら
 れていた。私はその配置を目で調べた。ほんの少しではあるが、石が勤かされたような形跡があ
 った。このあいだ私とまりえがその蓋を開けて閉めたあと、誰かがその石をどかして蓋を開け、
 それからまた蓋を閉めて、石をできるだけ前と同じように並べ直したようだった。そのちょっと
 した違いを私は見て取ることができた。

 「誰かが石をどかせて、この蓋を開けた形跡があります」と私は言った。
  免色は私の顔をちらりと見た。
 「それは秋川まりえでしょうか?」

  私は言った。「さあ、どうでしょう。でも知らない人はまずここにやってこないし、我々以外
 にこの穴の存在を知っている人間といえば、彼女くらいのものです。その可能性は大きいかもし
 れない」 もちろん騎士団長はこの穴の存在を知っている。なにしろ彼はそこから出てきたのだ
 から。しかし彼はあくまでイデアだ。そもそも形のない存在だ。中に入るのにわざわざ重しの石
 をどかせたりはしないだろう。

  それから我々は蓋の上の石をどかせ、穴の士に被せていた厚板をすべてはがした。そして直径
 ニメートル近くの円形の穴が、再びそこに出現した。それは前に見たときよりもより大きく、よ
 り黒々として見えた。でもそれもやはり夜の開がもたらす錯覚だろう。
  私と免色は地面にかがみ込むようにして、懐中電灯とランタンで穴の中を照らしてみた。しか
 し穴の中には人の姿はなかった。何の姿もなかった。いつもと同じ高い石壁にまわりを囲まれた、
 無人の筒型の空間があるだけだった。しかし一つだけ前とは違っていることがあった。梯子が姿
 を消していたのだ。石塚をどかせた造園業者が厚意で置いていってくれた折りたたみ式の金属製
 の梯子だ。最後に見たとき、それは壁に立てかけてあった。
 「梯子はとこにいったんだろう?」と私は言った。
  梯子はすぐに見つかった。それは奥の方の、キャタピラに踏みつよされなかったススキの茂み
 の中に横だわっていた。誰かが梯子を外して、そこに放り出したのだ。重いものではないから、
 持ち運びにそれはどの力は要しない。私たちはその梯子を運んで、元のように壁に立てかけた。
 「私か下に降りてみましょう」と免色が言った。「何かが見つかるかもしれません」
 「大丈夫ですか?」
 「ええ、私なら心配ありません。前にも一度降りたことはありますから」
  そう言うと、免色はランタンを片手に何でもなさそうにその梯子を降りていった。
 「ところでベルリンの東西を隔てていた壁の高さをご存じですか?」と免色は梯子を降りながら
 私に尋ねた。

 「知りません」
 「三メートルルです」と免色は私を見上げて言った。「場所にもよりますが、だいたいそれが基
 準の高さでした。この穴の高さより少し高いくらいです。それがおおよそ百五十キロにわたって
 続いていました。私も実物を見たことかあります。ベルリンが東西に分断されている時代に。あ
 れは痛々しい光景だった」

  免色は底に降り立ち、ランタンであたりを照らした。そしてなおも地上にいる私に向けて語り
 続けた。

 「壁はもともとは人を護るために作られたものです。外敵や雨風から人を護るために。しかしそ
 れはときとして、人を封じ込めるためにも使われます。そびえ立つ強固な壁は、閉じ込められた
 人を無力にします。視覚的に、精神的に。それを目的として作られる壁もあります」
  免色はそう言うと、そのまましばらく口を閉ざした。そしてランタンをかざしてまわりの石壁
 と、地面を隅々まで点検した。まるでピラミッドのいちばん臭にある石室を調査する考古学者の
 ように、怠りなく丹念に。ランタンの明かりは強力で、懐中電灯よりずっと広い範囲を照らし出
 した。それから検は地面の上に何かをみつけたらしく、膝をつくようにして、そこにあるものを
 子細に観察していた。しかしそれが何なのか、上からはわからなかった。免色も何も言わなかっ
 た。彼がみつけたのはどうやら、とても小さなものであるらしかった。検は立ち上がり、その何
 かをハンカチにくるんでウィンドブレーカーのポケットに入れた。そしてランタンを頭上に掲げ、
 地上にいる私を見上げた。

 「今から上がります」と検は言った。
 「何かみつかりましたか?」と私は尋ねた。

  免色はそれには答えなかった。そして梯子を注意深く登り始めた。一歩上がるごとに身体の重
 みで梯子は鈍く軋んだ。私は検が地上に戻ってくるのを、懐中電灯で照らしながら見守っていた。
 身の動かし方を見ていると、検が日頃から身体中の筋肉を機能的に鍛え、整えていることがよく
 わかった。身体に無駄な動きがない。必要な筋肉だけが有効に使用されている。検は地面の上に
 立つと、一度大きく身体を仲ばし、それからズボンについた上を丁寧に払った。それほど多くの
 上がついていたわけではなかったのだけれど。

 Israeli West Bank barrier

  一息ついてから免色は言った。「実際に下に降りてみると、壁の高さにはずいぶん威圧縮かあ
 ります。そこにはある種の無力感が生まれます。私は同じような種類の壁をしばらく前にパレス
 チナで目にしました。イスラエルがこしらえた八メートル以上あるコンクリートの壁です。てっ
 ぺんには高圧電流を通した鉄線がめぐらせてあります。それが五百キロ近く続いています。イス
 ラエルの人々は三メートルではとても高さが足りないと考えたのでしょうが、だいたい三メート
 ルあれば壁としての用は足ります」

  彼はランタンを地面に置いた。それは私たちの足もとを明るく照らし出した。

 「そういえば、東京拘置所の独房の壁の高さも三メートル近くありました」と免色は言った。
 「なぜかはわかりませんが、部屋の壁がとても高いのです。来る日も来る目も目にするものとい
 えば、その高さ三メートルののっぺりした壁だけです。ほかには何も見るべきものがありません。
 もちろん壁には絵とかそういうものは飾られていません。ただの壁です。まるで自分か穴の底に
 置かれているような気がしてきます」

  私は黙ってそれを聞いていた。

 「少し前のことになりますが、私はわけあって一度、東京拘置所にしばらく勾留されていたこと
 があります。それについては、たしかまだあなたにお話ししていませんでしたね?」
 「ええ、まだうかがっていません」と私は言った。彼が拘置所に入っていたらしいことは人妻の
 ガールフレンドから聞いていたが、もちろんそれは言わなかった。
 「私としては、その話をあなたによそから耳に入れてもらいたくなかったのです。ご存じのよう
 に噂話というのは、おもしろおかしく事実をねじ曲げてしまうものですから。ですから私の口か
 ら直接事実をお伝えしておきたいのです。とくに愉快な話でもありませんが、ことのついでとい
 うか、今ここでお話ししてもかまいませんか?」
 「もちろんかまいません。どうぞ話してください」と私は言った。

  免色は少し間を置いてから話を始めた。「言い訳するのではありませんが、私には何ひとつや
 ましいところはありませんでした。私はこれまでいろんな事業に手を染めてきました。多くのリ
 スクを背負って生きてきたと言っていいと思います。しかし私は決して愚かではありませんし、
 生来用心深い性格ですから、法律に抵触するようなことにはまず手を出しません。そういう線引
 きには常に留意しています。しかしそのとき私がたまたま手を組んだ相手が、不注意で無考えだ
 ったのです。おかげでひどい目にあわされました。それ以来、誰かと手を組んで仕事をするよう
 なことは一切避けています。自分ひとりの責任で生きるようにしています」

 「検察が持ち出した罪状は何だったのですか?」

 「インサイダー取り引きと脱税です。いわゆる経済犯です。最終的に無罪は勝ちとりましたが、
 起訴にはもち込まれました。検察の取り調べが厳しく、かなり長いあいだ拘置所に入れられてい
 ました。いろんな理由をつけて、勾留期限が次々に延長されました。壁に囲まれた場所に入ると、
 今でも懐かしささえ感じてしまうくらい長い期間です。さっきも申し上げたように、私の側には
 法で罰せられるような落ち度は何ひとつなかったのです。それはあくまで明白な事実でした。し
 かし検察は起訴のシナリオを既に書いてしまっていて、そのシナリオには私の有罪もしっかり組
 み込まれていました。そして彼らは今更そのシナリオを書き直したくなかった。官僚システムと
 いうのはそういうものです。いったん何かを決めてしまうと、変更することがほとんど不可能に
 なります。流れを逆行させると、どこかの誰かがその責任をとらなくてはなりません。そんなわ
 けで払は長期にわたって東京拘置所の独房に収容されることになったのです」

                                     この項つづく

 

 ● 今夜の一曲


「悲しい自由」(かなしいじゆう)は、1989年7月26日にリリースされたテレサ・テンのシングル。
発売元はトーラスレコード(のちに解散。現在はユニバーサルミュージックから発売)。

     ひとりにさせて 悲しい自由が
     愛の暮しを 想いださせるから
     ひとりにさせて 疲れた心が
     いつか元気を とりもどすまで
     あなたを近くで愛するよりも
     心の宝物にしていたいから
     So-long このまま ちがう人生を
     So-long あなたの 背中見送るわ 

     ひとりにさせて 淋しい約束
     何も言わずに 時のせいにするわ
     ひとりにさせて 優しくされたら
     きっと昨日に 帰りたくなる
     あなたのすべてを 愛するよりも
     綺麗なお別れ 選びたいから
     So-long 涙を いつか微笑に
     So-long 想い出だけを置きざりに 

     So-long このまま ちがう人生を
     So-long あなたの 背中見送るわ



     スピーカー大音量に迷ひぴと八十二歳をさがすゆふぐれ 

     真夜中に点けしラジオにテレサ・テンの繊く優しき歌ごゑひびく 

     もはや世にあらぬ歌ごゑテレサ・テンの人を慰撫してやまぬ歌ごゑ 

     歌ごゑに時をり交じる拍手よし鄧麗君の母語ライプ版 

     正調の北京語にテレサ・テンうたふ「夜来香」の”香”に聞き惚る 

                           丹波真人 / 𩛰(たべ)る禽(とり)

 ● 晴れ時々右脳

本当に歌が書けなくなるんだ。目一杯左脳を使いパンパンの日々をつづけていると、あれほど短歌を
書き綴った日々が嘘のようで何も浮かばない。ということで「角川 短歌」7月号を購読し時折眼を
通していて、今夜は鄧麗君を読める「丹波真人/𩛰る禽」がめにとまる。中国から帰国する1982年の
個人的に開催してくれた送別会(通訳をつとめてくれた青年一名、女性二名)を思いだし、その後、
「天安門事件」につながっていったことを思いだし(このエピソードはブログ掲載)、鄧麗君の「悲
しい自由」をユーチューブし思い出を再確認する。その話はさておき、右脳を使わなくてはと考え、
前はテーマが浮かばないときは「花言葉」をつづることで連想空間を広めるという手法をとっていた
ので、今回も、関心のある「植物図鑑」を整理し、それをプロモータに「短歌の宅トレ」を再開させ
ようと考える。が、本家の「宅トレ」は日曜の奉仕作業の疲れで腰痛が再発し中止中とうまくいかな
いものだ。

 

 

 

ノンストップ・ドジャース

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                   成公三年( -588) 楚囚十年   / 晋の復覇刻の時代 

                                 

       ※ 知罃(ちおう)(荀罃)は晋の中軍の副将荷首の愛児。邲召の戦いに捕虜と
       なり、楚囚十年の辱しめを受けている。今や晋が新たに斉と鞌(あん:斉の
       地・山東省済南付近)に戦って大勝し、意気大いにあがっているのに反し、
       楚は荘王没してその子共王が立ったばかり。晋から捕虜父換の申し入れがあ
       ったので、渡りに船と受諾した。経の文はない。

     ※ 「晋いまだともに争うべからず」
       晋は楚に対し、知罃の身柄を返還するよう申し入れた。晋が抑留している楚
       の公子穀臣、連尹、襄老(衛の夏姫の夫)の遺体を楚に引き渡すことが交換
       条件となっていた。当時、知罃の父荀首(知荘子)は、斉の中軍の副将であ
       った。禁としてもこの取引きは損でないと判断して、この申し入れに応じた。
       楚の共王は、知罃を晋に送り出すに際し、その心境を問うた。

       「わたしを怨んでいるかね」
       「いいえ。国と国との戦いに、捕虜となったのは、わたしの責任です。それ
       にもかかわらず、血塗りの儀式(抽肩を殺して太鼓に血を塗る)もなさらず、
       いま本国に節して罪に服させようとのお心づかい、感謝に耐えません。責め
       られるべきはこのわたくし、誰を怨んだりいたしましょう」
       「では、わたしに言を感じているのか」
       「国と国とが、互いの利益と人民の利益とを考えたうえで、妥協点を見出し
       たのです。双方がそれぞれ捕虜を釈放する条件で交渉が成立しました。これ
       は、あくまで国と国との取引きであり、わたくし個人のあずかり知るところ
       ではありません。したがって、誰に言を受けたとも思いません」

       「帰国の上は、何か返礼を考えているであろうが……」
       「いま申しあげたとおり、わたくしにはあなたを怨む理由はない、あなたに
       はわたくしに思を着せる理由はない。言も怨みもないというのに、何で返礼
       の必要がありましょう」
       「そういえばそれまでだが、もっと腹蔵のない考えを聞かせてもらいたい」
       「あなたのおかけをこうむり、いったん捕虜となったわたくしが本国に骨を
       埋めることになりました。帰国のうえ、処刑を受けることができるのです。
       あなたへの感謝は、死んでも忘れません。
        もし、おかげを蒙り、処刑をまぬがれた場合には、わたくしの身柄は、父
       荷首に引渡され、父は主君に願い出て、わたくしを先祖の廟でみすがら成敗
       することでしょう。その場合もわたくしはあなたへの感謝を忘れません。
        また、父の願いがいれられず、わたくしが生き永らえて家付を継ぐことに
       なるかもしれません。そして、もし、戦が起こり、わたくしが兵を率いて国
       境を固める事態に立ちいたった場合には、たとえ、貴国の軍勢と対峙しても、
       けっして逃げはしません。全力をあげ兪をかけて、二心を抱くことなく、晋
       の臣下として本分を尽くしたいと恩います。これをあなたへの御恩返しと思
       っていただきたい」

        知罃との会見を終えると、共王は感服のおももちで臣下に言った。
       「あの男がいるうちは、晋を敵にまわすことはできないぞ」
        そして、充分に礼をつくしたうえで、知罃を晋におくり返した。





✪  勝率7割超 ドジャースは誰も止められない!

✔ Will the 2017 Los Angeles Dodgers Break the MLB Record For Wins?



MLBの記録を塗り替えるかどうかで話題となっている。故障者リストのカーシューの復帰しダルビ
ッシュのトレードで(前田健太もいっしょだ)、その可能性もでてきた。これは目が離せないぞ。

 

 
Critical flood situation in Assam, 2.3 million affected, death toll mounts to 104  Aug. 13, 2017

【世界大規模季候変動情報:豪雨・洪水篇】



ネパール 洪水と地滑りで47名死亡

13日、豪雨によって引き起こされた地すべりと洪水により、ネパール南部で少なくとも47人が死
亡し、数千人のホームレスが残っているとの警察が明らかにしている。ヒマラヤ国の少なくとも9つ
の南部地区で長豪雨の3日後にさらに死者が約2人が増え死亡者が続出する恐れがあると、警察の報
道官はいう。先週金曜日に始まった洪水と地すべりにより、電話塔・電源線を崩壊させ、広域で通信
電力不通に陥入り、少なくとも約3万1千世帯が避難している。また、絶え間ない雨や多くの場所で
のため救助活動が妨げられ、ネパールの主要な東西高速道路の交通が分断された。東部の Biratnagar
市では、滑走路が水深0.5メートル以上で没したため空港を閉鎖している。ネパール地方では毎年
6月から9月にかけモンスーンの雨期に入る( Floods, landslides triggered by heavy rain kill 47 in Nepal、
ABC News, Aug. 13, 2017  )。

 ヒマチャル・プラデーシュ州 地滑りでバス2台の乗客者48名死亡

13日、地滑り被害を受けた2台のバスの死亡者数は、少なくとも同乗者数が50~60人と推定される
ため、はるかに高くなる可能性ある。48名の死亡者のうち23名のの身元確認できている。救助活動は
地滑りの恐れの、日曜日の夜遅く中断。救助活動は月曜日の朝に再開する。国家災害対応軍隊、陸軍
と州警察のチームが現場に駆けつけ、2台のバスが瓦礫から掘り起す土木重機を配備し救済にあたっ
ている能っている(Landslide kills 48 in Himachal Pradesh, The Asian Age、Aug. 14, 2017)。

 中国内陸部で大雨による浸水被害相次ぐ

13日、中国の内陸部では先週から続く大雨で浸水の被害が相次ぎ、甘粛省では、観光客約300人
が集中豪雨による増水で、一時、身動きが取れなくなる、その後当局によって救助されている。中国
の内陸部では先週から続く大雨で各地で被害が出ていて、このうち24時間の雨量が257ミリを記
録した江西省では、広範囲にわたって住宅や商店など浸水。中国では、湖南省でもおよそ4万8千人
が避難しており、各地で浸水の被害が相次いでいる。


❏ インフレ目標の達成の意味を問う

秋の臨時国会では補正予算が提出される。政府が掲げる「2%物価目標」を実現するには、その規模
はどの程度が適切なのだろうか。そのカギを握るのが、「GDPギャップ」である。それを埋めるに
は25兆円程度の有効需要を上乗せすればよく、いまの国債市場の玉不足を考えれば、国債増発による
財政出動は正当化される(安倍内閣内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成、高橋洋
一の俗論を撃つ!  2017.08.10, ダイヤモンド・オンライン)。ここで、鍵語の「潜在GDP」の見
積もり誤差が問題となる。つまり、経済の過去の動向の平均的な水準で、資本や労働力などの生産要
素を投入した時に実現可能なGDPと定義されるが、GDPギャップの大きさについては、前提とな
るデータや推計方法などにより結果が大きく異なる。このため相当の幅(誤差/許容幅)をもって見
る必要がある。


上の2つのグラフから、インフレ目標2%とのGDPギャップとの差に宗とする+4.5%とあり、
25兆円のギャップがあることになる。従って、処々考慮しても政府による財政出動に余裕があると
の結論が導出されているが、わたし(たち)も同意である。 

 

       

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』        

   第46章 高い強固な壁は人を無力にします

 「どれくらい長くですか?」
 「四百と三十五日です」と何でもなさそうに免色は言った。「この数字を忘れることは一生ない
 でしょうね」 
  狭い独房の中の四百三十五目が恐ろしく長い期間であることは、私にも容易に想像できた。
 「あなたはこれまで、どこか挟い場所に長く閉じ込められたことはありますか?」と免色は私に
 尋ねた。
  ない、と私は言った。引っ越しトラックの荷室に閉じ込められて以来、私にはかなりひどい閉
 所恐怖の傾向がある。エレベーターにさえうまく乗れない。もしそんな状況に置かれたら、神経
 がすぐに壊れてしまうだろう。
  免色は言った。「私はそこで挟い場所に耐える術を覚えました。日々その上うに自分を訓練し
 ていったのです。そこにいるあいだにいくつかの語学を習得しました。スペイン語、トルコ語、
 中国語です。独房では手元に置いておける書物の数が限られていますが、辞書はその制限に含ま
 れなかったからです。ですからその勾留期間は語学を習得するにはもってこいの機会でした。幸
 い私は集中力に恵まれている人間ですし、語学の勉強をしているあいだは、壁の存在をうまく忘
 れることができました。どんなことにだって必ず良い側面があります」

  どんなに暗くて厚い雲も、その裏側は銀色に輝いてる。

  免色は続けた。「しかし最後まで恐ろしかったのは地震と火災でした。大きな地震が来ても、
 火事が起こっても、なにしろ檻の中に閉じ込められているわけですから、すぐに逃げ出すことが
 できません。その挟い空間に閉じ込められたまま押しつよされたり、焼け死んだりすることを考
 え始めると、恐怖のために息が詰まってしまいそうになることもありました。その恐怖はなかな
 か克服できませんでした。とくに夜中に目が覚めたときなんかは」 
 「でも耐えたんですね?」
  免色は肯いた。「もちろんです。連中に負けるわけにはいかなかった。システムに押しつよさ
 れるわけにはいかなかった。とりあえず相手の用意した書類に署名さえすれば、私はその檻から
 出て、普通の世界に戻ることができました。でもいったん署名をしてしまったらおしまいです。
 自分がやってもいないことを認めることになります。これは天から自分に与えられた大事な試練
 なのだと考えるようにしました」
 「あなたはこの前、この暗い穴の中に一時間一人でいたとき、そのときのことを思い出していた
 のですか?」
 「そうです。ときどきそうやって原点に立ち戻る必要があります。今ある私を作った場所に。人
 というのは楽な環境にすぐに馴染んでしまうものですから」

  特異な人物だ、と私はあらためて感心した。普通の人は何か過酷な目にあった経験があれば、
 それを少しでも早く忘れてしまいたいと望むものではないのだろうか?
  それから免色は、ふと思い出したようにウィンドブレーカーーのポケットに手を入れ、何かを
 くるんだハンカチを出した。
 「さっき、穴の底でこれをみつけました」と彼は言った。そしてハンカチを間いてそこから小さ
 なものを取り出した。
  小さなプラスチックの物休だった。私はそれを受け取り、懐中電灯で照らしてみた。黒い紐の
 ストラップのついた全長一センチ半ほどの、白と黒に塗装されたペンギンの人形だった。よく女
 子生徒が、鞄だか携帯電話につけているようなフィギュアだ。汚れてはいなかったし、まだ真新
 しいもののように見えた。



 「この前、私が穴の底に降りたときにはそんなものはここにはありませんでした。それは間違い
 ありません」と免色は言った。
 「じやあ、そのあとでここに降りた誰かが、それを落としていったということでしょうか?」
 「どうでしょう。それはたぶん携帯電話につける飾りのようなものです。そしてストラップは切
 れていません。おそらく自分でほどいて外しています。ですから、落としていったというよりは
 むしろ、意図してあとに残していったという可能性の方が大きいのではないでしょうか?」
 「穴の底まで降りて、これをわざわざ置いていった?」
 「あるいはただ上から落としたのかもしれません」
 「でも、いったい何のために?」と私は尋ねた。
  免色は首を振った。わからないというように。「あるいはその誰かは、護符のようなものとし
 てそれをここに残していったのかもしれません。もちろん私の想像に過ぎませんが」
 「秋川まりえが?」
 「おそらくは。彼女のほかにこの穴に近づきそうな人はいないわけだから」
 「携帯電話のフィギュアを護符として置いていった?」
  免色はもう一度首を振った。「わかりません。でも十三歳の少女はいろんなことを考えつくも
 のです。そうじやありませんか?」

  私はもう一度、自分の手の中にあるそのペンギンの小さな人形を見た。そう言われてあらため
 て見ると、たしかに何かのお守りのように見えなくはなかった。そこにはイノセンスの気配のよ
 うなものが漂っていた。
 「でもいったい誰が梯子を引き上げて、あそこまで持っていったのでしょう? そして何のため
 に?」と私は言った。

  免色は首を振った。見当がつかないということだ。
  私は言った。「とにかくうちに縁ったら、秋川笙子さんに電話をかけて、このペンギンのフィ
 ギュアがまりえさんの持ち物かどうか、確かめてみましょう。彼女に訊けばたぶんはっきりする
 はずです」
 「それほとりあえずあなたが持っていてください」と免色は言った。私は肯いて、そのフィギュ
 アをズボンのポケットに入れた。

  それから我々は梯子を石壁に立てかけたまま、もう一度穴の上に蓋を彼せた。その木材の上に
 重しの石を並べた。私は念のためにもうコ皮、その石の配置を頭に刻んでおいた。それから雑木
 林の小径を抜けて帰路についた。腕時計を見ると、時刻はすでに午前0時をまわっていた。帰り
 道、私たちは目をきかなかった。二人とも子にした明かりで足下を照らしながら、押し黙ったま
 ま歩を運んだ。それぞれの考えを順に巡らせていた。
  家の前に着くと、免色はジャガーの大きなトランクを開け、ランタンをそこに戻した。それか
 らようやく緊張を解いたように閉じたトランクに身をもたせかけ、しばらく空を見上げていた。
 何も見えない暗い空を。
 「少しお宅にお邪魔してもかまいませんか?」と免色は私に言った。「家に縁ってももうひとつ
 落ち着けそうにないので」
  
 「もちろん、どうか寄ってください。ぼくもしばらくは眠れそうにありませんから」
  しかし免色はそのままの姿勢で、何かを考え込むようにじっと勣かなかった。
  私は言った。Tっまく説明できないのですが、秋川まりえの身に何か良くないことが起こって
 いるような気がしてならないんです。それもどこかこの近くで」
 「でもそれはあの穴ではなかった」
 「そのようです」
 「たとえば、どんな悪いことが起こっているのですか?」と免色は尋ねた。
 「それはわかりません。でも、彼女の身に何か危害が及ぼうとしているような気配を感じるの
 です
 「そしてそれはどこかこの近くなのですね?」
 「そうです」と私は言った。「この近くです。そして梯子が穴から引き上げられていたことが、
 ぼくにはとても気になるんです。誰がそれを引き上げて、わざわざススキの茂みの中に隠してお
 いたかが。それが意味しているのはいったいどういうことなんだろう?」
  免色は身を起こし、また私の腕にそっと手を触れた。そして言った。「そうですね。私にもま
 ったく見当がつきません。しかしここでただ心配していてもらちがあかない。とにかく家の中に
 入りましょう」




    第47章 今日は金曜日だったかな?

  うちに帰って革ジャンパーを説ぐと、私はすぐに秋川笙子に電話をかけた。三度目のコールで
 彼女が受話器をとった。
 「あれから何かわかったことはありましたか?」と私は尋ねた。
 「いいえ、まだ何もわかりません。何の連絡もはいってきません」と彼女は言った。うまく呼吸
 のリズムがつかめないときに人が出す声のようだった。
 「警察にはもう連絡をしましたか?」
 「いいえ、まだしていません。どうしてだかはわからないけれど、警察に話をするのはもう少し
 だけ待ってみようと思ったんです。今にもふらりとうちに帰ってきそうな気がして―――

  私は穴の底でみつかったペンギンのフィギュアの形状を彼女に説明した。それを見つけた経緯
 には触れることなく、ただ秋川まりえがそういうフィギュアを身につけていたかどうかを尋ねた。
 「まりえは携帯電話にフィギュアをつけていました。たしかペンギンだったと記憶しています。
 ・・・・・・ええ、そうです。たしかにペンギンでした。間違いありません。小さなプラスチックの人
 形です。ドーナッツ・ショップの景品でもらったものだと思うんですが、あの子はそれをなぜか
 とても大事にしていました。お守りみたいにして」
 「それで彼女はいつも携帯電話を持ち歩いていたんですね?」
 「ええ、だいたい電源を切ったままにしていましたが、持ち歩くことはちゃんと持ち歩いていま
 した。応答はしなくても、用事があってたまに自分の方から電話をかけてくることはありました
 から」と秋川笙子は言った。それから数秒間かあった。「ひょっとして、そのフィギュアがどこ
 かで見つかったのですか?」

  私は返答に窮した。本当のことを打ち明ければ、私はあの林の中の穴の存在を彼女に教えなく
 てはならなくなる。そしてもし警察が関与してくれば、彼らにもやはり同じ説明を――より納得
 のいく説明を――しなくてはならないだろう。そこで秋川まりえの持ち物が発見されたとなれば、
 警官たちはその穴を細かく検証するだろうし、あるいは雑木林の中の捜索が行われることになる
 かもしれない。私たちは根掘り葉掘り質問を受けるだろうし、免色の過去もたぷん蒸し連される
 ことだろう。そんなことをしたって役に立つとは思えない。免色が言うように、話がややこしく
 なるだけだ。

 「うちのスタジオの床に落ちていたんです」と私は言った。嘘をつくのは好むところではないが、
 本当のことは言えない。「掃除をしているときに見つけました。それでひょっとして、これはま
 りえさんの持ち物ではないかと思ったものですから」
 「それはまりえのものだと思います。間違いなく」と少女の叔母は言った。「それで、どうした
 らいいでしょう? 警察にはやはり連絡をするべきでしょうか?」
 「お兄さんとは、つまりまりえさんのお父さんとは連絡がついたのですか?」
 「いいえ。まだ連絡がつきません」と彼女は言いにくそうに言った。「今どこにいるのかわから
 ないんです。もともとあまりきちんとは家に帰ってこない人なもので」
  いろいろと複雑な事情がありそうだったが、今はそんなことを詮議している場合ではなかった。
 警察に届けた方がいいでしょうと、私は彼女に簡潔に言った。時刻は既に真夜中を過ぎて、日付
 も変わっている。どこかで事故にあったという可能性も考えられなくはない。すぐに警察に連絡
 すると彼女は言った。

 「ところで、まりえさんの携帯はまだ応答がありませんか?」
 「ええ、何度もかけてみましたが、どうしてもつながりません。電源が切られているようです。
 あるいは電池が切れてしまったか。どちらかです」
 「まりえさんは今朝、学校に行くと言って出ていって、そのまま行方がわからなくなってしまっ
 た。そうでしたね?」
 「そうです」と叔母は言った。
 「ということは、今でもたぶん中学校の制服を着ているということですね」
 「ええ、制服を着ているはずです。紺色のブレザーコートと白いブラウス、紺色のウールのヴェ
 スト、格子柄の膝までのスカート、白いハイソックス、黒のスリップオンです。そしてビニール
 のショルダーバッグを肩にかけています。学校の指定したバッグで、学校のマークと名前が入っ
 ています。まだコートは着ていません」
 「他に画材を入れたバッグも持っていたと思うんですが?」
 「それは普段は学校のロッカーに入れてあります。学校の美術の時間に使うためです。金曜日に
 はそれを持って、学校から先生の教室に行きます。うちからは持って行きません」

  それは彼女が絵画教室にやって来るときのいつもの格好だった。紺色のブレザーコートと白い
 ブラウス、タータンチェックのスカート、ビニールのショルダーバッグ、画材の入った白いキャ
 ンバス・バッグ。私はその姿をよく覚えていた。
 「他に荷物は何も持っていないのですね?」
 「え兄え、持っていません。だから遠くに行くようなことはないはずです」
 「もし何かあったら、いつでもいいから電話をください。どんな時刻でもかまいませんから、遠
 慮なく」と私は言った。
  そうすると秋川笙子は言った。
  そして私は電話を切った。
  免色はそばに立って、ずっと我々の会話を聞いていた。私が受話器を置くと、彼はそこでよう
 やくウィンドブレーカーを脱いだ。その下に彼は黒いVネックのセーターを着ていた。

 「そのペンギンのフィギュアはやはりまりえさんの持ち物だったのですね?」と免色は言った。
 「そのようです」
 「つまり、いつだったかはわからないけれど、彼女はおそらく∵人であの穴の中に入った。そし
 て自分にとっての大事なお守りであるペンギンのフィギュアをそこに残していった。どうやらそ
 ういうことになりそうですね」
 「つまり、護符みたいなものとして残していったということでしょうか?」
 「おそらくは」
 「でもこのフィギュアが護符であるとして、それはいったい何を護るためですか? あるいは誰
 を護るためですか?」

  免色は首を振った。「私にはそれはわかりません。でもこのペンギンは彼女がお守りとしてい
 つも身につけていたものです。それをわざわざはずして置いていくからには、そこにははっきり
 した意図があったはずです。人は大事なお守りを簡単に手放したりはしません」
 「自分よりも大事な、護るべきものが他にあったということかな?」
 「たとえば?」と免色は言った。

  二人ともその問いに対する答えは思いつけなかった。
  我々はしばらくそのまま口を閉ざしていた。時計の針がゆっくりと確実に時を刻んでいた。
  刻みごとに世界が少しずつ前に押し出されていった。窓の外には夜の闇が広がっていた。そこ
  に勣きらしきものはなかった。  

  そのとき私は鈴の行方について騎士団長が言ったことをふと思い出した。「そもそも、あれは
 あたしの持ち物というわけではないのだ。あれはむしろ場に共有されるものだ。いずれにせよ、
 消えるからにはたぶん消えるなりの理由があったのだろう」

  場に共有されるもの?

  私は言った。「ひょっとして、秋川まりえがこの人形を穴に置いていったのではないかもしれ
 ません。あるいはあの穴はとこか別の場所に繋がっているのではないでしょうか。閉ざされた場
 所というより、むしろ通路のようなものなのかもしれない。そしていろんなものを自らのうちに
 呼び込んでいくのかもしれません」
  頭に浮かんだことを実際に口に出してみると、それはずいぶん愚かしい考えに聞こえた。騎士
 団長ならおそらく私の考えをそのまま受け入れてくれるだろう。しかしこの世界では無理だ。
  深い沈黙が部屋の中に降りた。 

 「あの穴の底から、いったいどこに通じることができるのだろう?」と免色がやがて自らに問い
 かけるように言った。「あなたもご存じのように、私はこのあいだあの穴の底に降りて、一時間
 ばかり一人でそこに座っていました。真っ暗闇の中で、明かりもなく梯子もなく。その沈黙の
 中で意識を深く集中しました。そして肉体存在を消してしまおうと真剣に努めました。ただ思念
 だけの存在になるうと試みました。そうすれば石の壁を越えてどこにでも抜け出せます。拘置所
 の独房にいるときにもよく同じことを試みたものです。しかし結局どこにも行けなかった。それ
 はどこまでも、堅牢な石の壁に囲まれた逃げ場所を持たない空間でした」

  あの穴はひょっとして相手を選ぶのかもしれない、と私はふと思った。あの穴から出てきた騎
 士団長は私のもとにやってきた。彼は寄宿地として私を選んだ。秋川まりえもまたあの穴に選ば
 れたのかもしれない。しかし免色は選ばれなかった
 何らかの理由によって。
  私は言った。「いずれにせよ、さっきも話し合ったように、警察にはあの穴のことは教えない
 方がいいと思うんです。少なくとも今の段階ではまだ教えない方がいい。しかしこのフィギュア
 を穴の底で見つけたことを黙っていれば、明らかに証拠の隠匿になります。もし何かあってその
 ことが明らかになったら、我々はまずい立場に置かれるのではないでしょうか」 

凄い展開になってきたぞと思ったところで体調が悪くなった。この続きはまた別の日に。

                                                         この項つづく


ロキソニンとモノクローナル抗体

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                   成公三年( -588) 楚囚十年   / 晋の復覇刻の時代 

                                 
 
       ※  鄭の商人

       萄偕(知偕)が楚に囚われていたとき、鄭の商人がかれの脱出計画を立てた
       ことがある。かれを衣裳袋の中にかくして、国外に運び出そうとしたのであっ
       た。すでに手はずはととのい、実行するばかりになっていたとき、楚は晋と協
       定を結び、かれの身柄を晋に返した。その後、この商人が晋を訪れた。知偕は
       かれが実際に自分を逃がしてくれた恩人であるかのように、手厚くもてなした。
       するとその商人は、わたくしは何のお役にもたてませんでした。こんなにして
       いただいては困ります。わたくしのような下賤な人間が、立派なお方をだます
       わけにはまいりません」と言って、そのまま斉に去った。

     ※ 鄭の商入獄高が鄭の危機を救ったことは、すでに禧公32年に見える。鄭の開
       国の際、郎の商人が鄭伯と商業保護の契約を結んで以来、鄭では伝統的に商人
       の社会的地位が高く、またそれだけの実力もそなえていた。これによって見れ
       ば、かれらの道徳観念も高かったのである。知偕はその後、晋の大夫として属
       公・悼公を補佐し、晋の復刮に貢献した。若年ながら、楚の共王に対する応答
       の堂々として自信に満ちているのも当然である。

 



気管支系に持病をかかえているため、昨夜から体調を崩す。いつものようにベンザブロックL錠を服
用したもの扁桃腺の腫れは今朝まで残る。これは5つの効能は、❶熱をさげ、痛みを和らげるイブプ
ロフェンが主成分とし、そのほか、❷鼻づまり・鼻水を和らげる塩酸プソイドエフェドリン、❸鼻水・
くしゃみを和らげるクロルフェニラミンマレイン酸塩、❹せきを和らげるジヒドロコデインリン酸塩、
❺頭痛を和らげる 無水カフェインで構成され、30錠(税込み・送料別)で、1,173円と1錠39.1円
(上図参照)で、卵1個17円とする約2個分だから、これに生ニンニクを加え目玉焼きなどにして
食べて栄養補給として摂取できるが、約1時間半から緩和効果が自覚されるベンザブロックの方が便
利だと考えるが、それでも高い気がするので別の錠剤ではと考え、「ロキソニンS錠」(下図参照)
で代用を検討してみたが、60銃(税込み・送料無料)1錠46.5円となるが、送料を 500円としてい
錠当たり8.3円差し引き38.2縁となり0.9縁/錠と計算上安くなる。しかし、服用錠剤数は、前者が1
日9錠錠、後者は1錠であり、服用リスクが前者が第2種類医療品に対し、後者は第1種医薬品とな
り副作用リスクがロキシニンの方が高く、さらに薬能という点では、前者は風邪の諸症状全般対対応
できるが、後者は痛み緩和に限られており、実際に服用してみないわからないし、さらに詳細に検討
する必要がある。 



❏ 事例研究:特開2017-031144  経口用医薬組成物

【概要】

ところで、ここでは痛みとは、「実際に何らかの組織損傷が起こったとき、または組織損傷を起こす
可能性があるとき、あるいはそのような損傷の際に表現される不快な感覚や不快な情動体験である」
と定義さる。また、痛み原因の分類から、❶外部から刺激が与えられたときに生ずる外的侵害刺激、
❷生体の病変に伴う内的侵害刺激、❸第一次ニューロンやそれより上位の中枢神経の異常により生じ
る神経系の異常、❹ストレスなどの精神的誘因の精神身体的原因、❺痛みの原因が身体と関わりのな
い心因反応による痛みの5るに分類される。❹、❺の精神身体的原因や心因反応が関与する痛みには
女性の生理痛に伴う「イライラする」「ゆううつになる」「不安になる」など含まれが、痛みと心理
的症状は密接な痛みに対する予防・治療薬がなかった。

さて、ロキソニンS錠のロキソプロフェンナトリウムは、フェニルプロピオン酸系の非ステロイド性
抗炎症薬であり、優れた鎮痛・抗炎症・解熱作用を有し、特に、消化管より速やかに吸収されること
で、鎮痛・抗炎症・解熱効果の発現が早く、プロドラッグタイプで、消化管障害が少ない。アリルイ
ソプロピルアセチル尿素は緩和な鎮静成分で、SG配合顆粒に配合され、感冒の解熱、耳痛、咽頭痛、
月経痛、頭痛、歯痛、症候性神経痛、外傷痛に用いられる。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは胃
腸薬の制酸成分であり、胃酸を中和することにより、一時的な胃の痛みを緩和する作用が知られてい
る。カフェインは解熱鎮痛成分の鎮痛作用を助けたり、中枢に作用して眠気を抑えたりするために配
合される。一方、これらの成分を含有する組成物として、❶ロキソプロフェンナトリウムとケトチフ
ェンを併用すると、ロキソプロフェンナトリウムの解熱作用が増強する。❷ロキソプロフェンナトリ
ウムにアリルイソプロピルアセチル尿素を併用すると、ロキソプロフェンナトリウムの鎮痛作用がさ
らに増強する。ロキソプロフェンナトリウム、アリルイソプロピルアセチル尿素、カフェインを含有
する組成物が開示されている。❸ロキソプロフェンナトリウムに、アリルイソプロピルアセチル尿素
とカフェインを配合すると、保存安定性が向上される。しかし、これらの配合に、心因的要因(イラ
イラ感、不安感、ゆううつ感など)を伴う痛みに対する優れた効果は不明であり、ロキソプロフェン
ナトリウム、アリルイソプロピルアセチル尿素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びカフェイン
の配合については知らされていい。

ロキソプロフェンナトリウムにアリルイソプロピルアセチル尿素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウ
ム及びカフェインから選ばれる1種以上を含有させた医薬組成物は、よりいっそう優れた心因的要因(
イライラ感、不安感、ゆううつ感など)を伴う鎮痛作用を有するため、特に、頭痛症状や、または生
理痛症状の予防や、または治療に有用なものである。

※ 心因的要因とは、イライラ感、不安感、ゆううつ感などストレスなどによって心のアンバランス
  を引き起こすものをいう。心因的要因を伴う痛みとは、❶ストレス病やうつ病など精神的要因(
  疾患)によって引き起こされる痛み、❷何年も同じように続き、朝方に調子が悪く夕方に改善す
  ることが多い例、❸精神的要因が強いものの中には,うつ病や身体表現化障害、統合失調症など、
  精神疾患の専門医による速やかな治療が必要な精神的疾患が含まれており,他の慢性の痛みとは
  異なった、精神科・心療内科専門医による治療や対応が必要となるもの、❹不眠や四肢の冷感,
  動悸や,めまいなどの様々な多くの症状を伴うものをいう。具体的には、心因性頭痛、心因性月
  経痛、心因性月経困難症をいう。

以上、この特許事例は、心因的要因(イライラ感、不安感、ゆううつ感など)を伴う痛みの予防及び
または治療効果を有する新規の医薬組成物を提供にあたり、特に、心因的要因(イライラ感、不安感、
ゆううつ感など)を伴う頭痛・生理痛の予防及び/又は治療に優れた組成物を提供にあたり、ロキソ
プロフェンにアリルイソプロピルアセチル尿素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びカフェイン
を含有させたものが、顕著な心因的要因(イライラ感、不安感、ゆううつ感など)を伴う生理痛・頭
痛の改善作用を有することを見出す。

【特許請求の範囲】

以下の(a)~(d)を含有する解熱鎮痛剤組成物。(a)ロキソプロフェン又はその塩(b)
アリルイソプロピルアセチル尿素、およびブロムワレリル尿素から選択される1種以上(c)
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(d)カフェイン又は無水カフェイン心因的要因を伴う痛
みを改善することを特徴とする、請求項1に記載の鎮痛用組成物 心因的要因を伴う痛みが生理痛である、請求項1又は請求項2に記載の鎮痛用組成物 心因的要因を伴う痛みが頭痛である、請求項1又は請求項2に記載の鎮痛用組成物 剤形が経口用である、請求項1~4のいずれか1項に記載の鎮痛用組成 

❏ 事例研究:特開2008-013542 去痰又は気道杯細胞過形成抑制のための医薬組成物

【概要】 

正常な気道の表面の多くは線毛上皮細胞で被われその中に気道粘液を産生する杯細胞が散在し、気道
分泌液と線毛との協調作用により異物を排除している。しかし、気道分泌が亢進すると、気道内にそ
れらが貯留し、細菌増殖の温床となるため、気道感染を反復したり気道閉塞をきたしたりする。また、
喫煙、種々の大気汚染物質やアレルゲンの吸入、気道感染等で、気道分泌亢進のみならず杯細胞の過
形成等が惹起され、これが長引くと急性呼吸器疾患から慢性難治性呼吸器疾患へ移行してしまう恐れ
がある。このような悪循環を防ぐため、急性期における通常の去痰剤による治療のみならず杯細胞過
形成を抑制するための対処も必要である。

 一方、非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(=NSAID) の1種であるロキソプロフェンは、体内で活性
代謝物に変換されて解熱鎮痛消炎作用を示すプロドラッグ型薬剤であり、そのために同種薬剤の主要
な副作用である消化管障害が軽減され安全性が高く即効性もあり、急性上気道炎における解熱・鎮痛
の効能・効果も認められている。また、ロキソプロフェンの杯細胞の作用は知られていないが、同じ
NSAIDのイブプロフェンやアセトアミノフェンでは杯細胞の過形成を抑制する効果は無いか、逆に過
形成を促進する結果が報告されていることから、ロキソプロフェンナトリウム単独では杯細胞がわず
かながら増加することを示唆する。塩酸アンブロキソールは、気道潤滑型の去痰剤として知ら、医療
用薬では急性及び慢性気管支炎や気管支喘息等の去痰の効能・効果を有する。また、ラットへのリポ
ポリサッカライド(=LPD)暴露による気道杯細胞過形成に対し、極端に高用量の塩酸アンブロキソ
ール100mg/Kgを、暴露前30分、暴露後1日及び2日の3日間経口投与しても抑制されなか
った結果(非特許文献5のFig.6参照)と、同100mg/Kgを暴露後4日目から10日目まで経
口投与して有意に抑制されたという結果がこれまでに報告されてきた。

一方、塩酸ブロムヘキシンは、気道粘液溶解型の去痰剤として知られ、医療用薬では急性及び慢性気
管支炎等の去痰の効能・効果を有し、ラットへのLPS暴露による気道杯細胞過形成に対し、極端に高
用量の塩酸ブロムヘキシン100mg/日を、暴露前30分、暴露後1日及び2日の3日間経口投与
して抑制された結果が報告され、これまでに、ロキソプロフェンと、アンブロキソールまたはブロム
ヘキシンの併用例として、❶ロキソプロフェンナトリウムと塩酸ブロムヘキシンを併用すると、カラ
ゲニン誘発性の足浮腫を顕著に抑制した。❷ロキソプロフェンナトリウムに、塩酸ブロムヘキシンま
たは塩酸アンブロキソール併用すると、カプサイシン誘発性咳嗽を顕著に抑制があり、❶と❷の結果
から、気道杯細胞過形成抑制作用及び去痰作用を直接示唆するものでもないことが明らかにされる。
したがって、この特許事例は、去痰または杯細胞過形成抑制作用を有する医薬組成物の提供にあたり、
ロキソプロフェンと、アンブロキソールまたはブロムヘキシンから選ばれる1種または2種以上とを
含有する去痰又は気道の杯細胞過形成を抑制するための医薬組成物を提供する。

【特許請求範囲】

ロキソプロフェンと、アンブロキソール又はブロムヘキシンから選ばれる1種又は2種以上とを含有する
去痰又は気道の杯細胞過形成を抑制するための医薬組成物 ロキソプロフェンが、ロキソプロフェンナトリウムである請求項1に記載の医薬組成物 アンブロキソールが、塩酸アンブロキソールである請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物 ブロムヘキシンが、塩酸ブロムヘキシンである請求項1乃至請求項3から選択されるいずれか1項に記
載の医薬組成物 ロキソプロフェンと、アンブロキソール又はブロムヘキシンから選ばれる1種又は2種以上とが同一の医
薬組成物中に含有する配合剤である請求項1乃至請求項4から選択されるいずれか1項に記載の医薬
組成物 ロキソプロフェンと、アンブロキソール又はブロムヘキシンから選ばれる1種又は2種以上とからなるキ
ットである請求項1乃至請求項4から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物 ロキソプロフェンと、アンブロキソール又はブロムヘキシンから選ばれる1種又は2種以上とを同一の医
薬組成物中に含有する請求項1乃至請求項4から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物の製
造方法 哺乳動物に、ロキソプロフェンと、アンブロキソール又はブロムヘキシンから選ばれる1種又は2種以上
とを同時に、順次又は別個に投与し、去痰又は気道の杯細胞過形成を抑制する方法

❏ 事例研究:特開2017-137306  トリプタンとアスコルビン酸を含有する医薬組成物

【概要】 

片頭痛の病態は、頭蓋内血管の異常拡張による血管説、大脳皮質神経細胞の過剰興奮による神経説、
三叉神経と周囲の神経原性炎症による三叉神経血管説等がある。片頭痛の詳細は現在でも不明である
が、三叉神経血管説が最も有力である。何らかの原因で頭蓋内の大血管が拡張して三叉神経を圧迫す
ると、拍動に同期した痛みが片側頭部で生じるため片頭痛と呼ばれている。この圧迫刺激を受けた三
叉神経は、神経ペプチド(痛み原因物質)を放出して血管炎を発症する。そうなると、血管はより膨
らみ三叉神経をさらに圧迫するという悪循環を起こす。これらによる刺激が大脳に伝わると、痛み(
頭痛)を感じるようになる。 

ここで、三叉神経は、こめかみの位置の深部にある三叉神経節から、眼神経、上顎神経、下顎神経の
3つに分かれる混合神経で、脳神経の中では最大の神経である。そのため、三叉神経が刺激を受ける
片頭痛では、前兆症状としてギザギザした光が見えたり、視野の一部が見え難くなったりすることも
ある。セロトニン(=5-HT/5-ヒドロキシトリプタン)は、血管の緊張を調節する物質として発見さ
れた脳血管の収縮に関わる神経伝達物質でもあり、セロトニン受容体に作用して拡張した脳血管を収
縮させて元の状態に戻して片頭痛を治療する。なお、セロトニン(5-HT)受容体には多くの種類があ
り、その中でも脳血管に多く分布する受容体として、セロトニン1B受容体(5-HT/1B受容体、血管収
縮作用)とセロトニン1D受容体(5-HT/1D受容体、血管拡張物質の放出抑制作用)があり、何れも片
頭痛が治療できることになる。一方で、片頭痛治療薬のトリプタンは、セロトニンと化学構造が類似
しており、セロトニン1Bとセロトニン1D受容体の両方にアゴニストとして作用して、拡張した血管
を収縮させるとともに、血管拡張性の神経ペプチドの放出を抑制し、さらに、三叉神経の活動も鎮静・
正常化すると言われる。

この事例の使用可能なトリプタン製剤は、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リ
ザトリプタン及びナラトリプタンの5製剤である。いずれも、頭蓋血管平滑筋に存在する5-HT/1B受
容体、及び、頭蓋血管周辺の三叉神経終末に存在する5-HT/1D受容体に対して選択的に作用し、片頭
痛の発生原因である頭蓋内外の血管を選択的に収縮させて偏頭痛を改善する。さらに、三叉神経に作
用して起炎性神経ペプチド(サブスタンスPやCGRPなど)の放出を抑制して片頭痛の緩和に寄与する。

先行技術として、これまでに、スマトリプタンコハク酸塩を含有する液剤において、アスコルビン酸
を添加すると、スマトリプタンコハク酸塩の保存安定性が高まり類縁物質の増加が抑制されることが
開示されている。また、ゾルミトリプタンを含有する液剤において、酸味料のクエン酸を加えるとゾ
ルミトリプタンの安定性が低下(含量低下)するが、抗酸化剤(アスコルビン酸など)を配合すると
ゾルミトリプタンの残存率が改善することが開示されている。さらに、エレトリプタンヘミスルフェ
ートを含有する液剤において、クエン酸やエタノールを含有するとエレトリプタンの含量が低下する
が、カフェインを配合するとエレトリプタンの残存率が改善することが開示されている。さらに、酸
化防止剤(アスコルビン酸など)を添加すると安定性がいっそう増すとされるもののデータ開示はな
い。なお、トリプタンとアスコルビン酸を含有する固形内服剤については全く知られていない。一方
で、非ステロイド性解熱鎮痛消炎薬のイブプロフェンに、ビタミンB1(ベンフォチアミン)またはビ
タミンC(アスコルビン酸)を併用すると、いずれも浮腫抑制作用(抗炎症作用)は減弱し、ロキソ
プロフェンにビタミンB1又はビタミンCを併用すると、いずれも増強することが報告されている。従
って、一般的に鎮痛剤にチアミン又はアスコルビン酸を併用することの効果は普遍的なものではなく、
薬剤の種類によって異なっている。

以上のことを踏まえ、トリプタンの鎮痛作用のより優れた製剤を提供するにあたり、トリプタンにア
スコルビン酸を含有させることで、トリプタンの薬理作用が高まるトリプタン含有医薬組成物を提供
する。

【特許請求範囲】

有効成分として、スマトリプタン、リザトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン及び
ナラトリプタンから選択されるトリプタンまたはそれらの薬理上許容される塩と、アスコルビ
ン酸又はその薬理上許容される塩とを配合してなる医薬組成物 アスコルビン酸又はその薬理上許容される塩が、アスコルビン酸カルシウムである、請求項1
に記載の医薬組成物 スマトリプタン、リザトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン及びナラトリプタンか
ら選択されるトリプタン又はそれらの薬理上許容される塩が、スマトリプタンコハク酸塩であ
る、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物 鎮痛用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物 頭痛用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物 内服用固形製剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物

これらの情報を踏まえ「市販薬 ロキソニンS」を服用してみることにし、その顛末Ⅵを後日掲載する
(要注意副作用)。それとは別途、「即効性」を除いた、卵食事法による治療との対費用効果の自宅
テスト(1日6錠(イブプロフェン系)/1錠(ロキソニン系)=1日、2パックの玉子)やってみ
る。



● 危険ドラッグの特定成分 その場検出デバイス開発で成果

8月9日、パナソニックは、免疫反応を利用した新型抗体(モノクローナル抗体)を開発したことを
公表。危険ドラッグに含まれる成分を、現場で簡易的に検出することができるという。これまで危険
ドラッグの成分を検出するためには、現場で採取したサンプルを検査室などに持ち帰り、大型測定装
置で前処理などを行う必要があった。このため、短時間で検出結果を出すことが難しかったが、免疫
反応を利用した新型抗体(モノクローナル抗体)を開発。これにより、危険ドラッグに含まれる成分
を、現場で簡易的に検出することが可能となる(上図ダブクリ参照)。

パナソニックが新たに開発したモノクローナル抗体は、低分子化合物の機能を維持したまま高分子化
する技術と、この技術で作製した生成物(免疫原)を用いて免疫反応させることにより実現した。一
般的に抗体を作製するための免疫応答は、対象物質の分子量が10000以上の高分子であることが必須
であった。このため、分子量が10000未満の低分子化合物では免疫応答が起こらず、抗体を得ること
はできなかっが、分子量が300前後の危険ドラッグでも、その構造を維持したまま、キャリアタンパ
ク質に結合させて高分子化することによって、ナフチル系合成カンナビノイド構造を有する免疫原の
合成に成功する。ところで、測定時間はどの程度なんだろう?

❏ 特開2016-124835  免疫原、それを用いた抗体の製造方法、
                     及び、そのモノクローナル抗体

【概要】 

法的管理および健康管理などの産業分野において、合成カンナビノイドの検出方法には、❶ガスクロ
マトグラフ質量分析(GC-MS)や液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)あるいは❷イオナ
イザ/コレクタ装置による測定方法があったが、GC-MSやLC-MSの感度は約ppmオーダー
であり、さらには不純物が存在した場合に、著しく感度低下を引き起こす問題や前処理としてある程
度の不純物を除去する必要があり、結果として測定時間も長時間(30分以上)かかるという問題が
あった。合成カンナビノイドを検出するために必要なモノクローナル抗体、及びその作製方法の提供
にあたっては、合成カンナビノイドに対して特異的な抗体の製造するために有用なハプテンが下記式
とキャリヤータンパク質であるキーホールリンペットヘモシアニンが結合した免疫原を準備。免疫原
を動物(マウス、ウサギなど)に免疫し、特異的な抗体を作製する。


このプロセスで重要となるのが、危険ドラッグとキャリアタンパク質との距離である。この距離が短
いと、危険ドラッグ成分だけに結合する抗体を得ることが難しいという。逆に、その間隔が長すぎて
も、危険ドラッグ成分とキャリアタンパク質をつなぐ鎖(リンカー)が折れ曲がり、危険ドラッグ成
分だけに結合する抗体を得ることが困難である。リンカー長の最適化を行い、長さの異なるリンカー
を有した危険ドラッグ成分の誘導体を新たに合成した。さらにキャリアタンパク質と結合させて高分
子化した。これを免疫原として用いることで、免疫応答を生じさせることが可能となり、危険ドラ
ッグ成分の構造のみに結合するモノクローナル抗体を作製することに成功する。

【特許請求範囲】

下記の構造式(化1)の化合物とキャリヤータンパク質であるキーホールリンペットヘモシア
ニンが結合した免疫原 請求項1に記載の免疫原を接種する段階を有することを特徴とするモノクローナル抗体産生細
胞ライン作製方法 求項2に記載のモノクローナル抗体産生細胞ライン作製方法により作製され、前記化合物に結
合能を有するモノクローナル抗体を産生する細胞ラインである、下記のうちのいずれかのモノ
クローナル抗体産生細胞ライン、
寄託番号NITE  BP-01955として寄託された細胞ライン、
寄託番号NITE  BP-01956として寄託された細胞ライン、
寄託番号NITE  BP-01957として寄託された細胞ライン 請求項3に記載の細胞ラインにより産生されるモノクローナル抗体であって、前記化合物と反
応することを特徴とするモノクローナル抗体

❏ 特開2016-136158  診断キット及びその使用方法

 【概要】 

診断キットにより、少量の生体試料によって容易に赤血球中の外来生物を検出できる診断キットにあっては
赤血球を含有する生体試料と、核酸を染色することができる染色液とを用いて赤血球中の外来生物の
有無を検出するように構成されている。その診断キットは少なくとも1つの診断プレートを備える。
診断プレートは、生体試料が注入されるように構成された第一のチャンバーと、第一のチャンバーと
接続された流路と、流路に接続された検査プレートとを備える。検査プレートには第二のチャンバー
が接続されている。流路は、赤血球を抽出するよう構成されている。第二のチャンバーは生体試料の
一部を捕集することができる。この診断キットにより、少量の生体試料によって容易に赤血球中の外
来生物を検出できる方法を提供する。 




【図1】図1は実施の形態1における診断キットの上面図。
【図2】図2は図1に示す診断キットの線2-2における断面図
【図3A】図3Aは実施の形態1における診断キットの要部拡大図
【図3B】図3Bは実施の形態1における診断キットの要部拡大図
【図4A】図4Aは実施の形態1における診断キットの他の壁部の断面図
【図4B】図4Bは実施の形態1における診断キットのさらに他の壁部の断面図
【図4C】図4Cは実施の形態1における診断キットのさらに他の壁部の断面図
【図4D】図4Dは実施の形態1における診断キットのさらに他の壁部の断面図



【符号の説明】

100   診断キット 100b  基材プレート 101  診断プレート 102   チャンバー(第
一のチャンバー) 103  流路 104  検査プレート 105   チャンバー(第二のチャンバー
) 108   対象物通過部 109   非対象物捕捉構造物 109a   繊維状物質 110 非対
象物捕捉プローブ 111  貫通板 112  スリット 115   キャビティ 117  フォトデ
ィテクタ 118  蛍光フィルタ 215  キャビティ 216   キャビティ

【特許請求の範囲】

赤血球を含有する生体試料と、核酸を染色することができる染色液とを用いて前記赤血球中の
外来生物の有無を検出するように構成された診断キットであって、前記生体試料が注入される
ように構成された第一のチャンバーと、第一のチャンバーに接続された一端と、前記一端の反
対側の他端とを有し、前記生体試料から前記赤血球を抽出するよう構成された流路と、前記流
路の前記他端に接続された、前記抽出した赤血球を配置するように構成された検査プレートと、
を備えた診断キット 前記流路に設けられる非対象物捕捉構造物を、さらに備える、請求項1に記載の診断キット 前記非対象物捕捉構造物は、複数の繊維状物質からなり、前記複数の繊維状物質は、互いに絡
み合う請求項2に記載の診断キット 前記非対象物捕捉構造物は、前記生体試料に含まれる白血球を捕捉し、赤血球を通過させる請
求項3に記載の診断キット 前記複数の繊維は、酸化珪素を主成分とする請求項3に記載の診断キット 

   

  ● 今宵このひと 

 強い現場を作るための条件は七つある。その中の最も重要な要素の1つが、「見える仕組み」す
 なわち「見える化」である。現場力とは問題解決能力である。その問題解決の第一歩は問題発見
 だ。問題解決能力の高い会社は、問題発見能力が高い。その問題発見を効果的に行う仕組みとし
 て生まれたのが、「見える化」である。多くの会社では、問題発見自体が遅れている。だから、
 企業におけるあらゆる問題を見えるようにすることが、入り□となる。

                         「見える化」の役割と価値, Jun. 21, 2007

 

パチンコ・おばけ屋敷・信長

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           成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                 
 
       ※  宋の大夫華元の提唱した和平運動が効を奏して、成公十二年(-579)の夏、晋・
       楚両国は宋の国都西門外で盟を結んだ。いわゆる「宋の盟」である。南顧の憂
       いがなくなった晋は、そこで西方、狄を伐ち、さらに秦を伐って、これを麻隧
       燧(陝西涇陽県)に破った。それから三年たって、楚の共王は司馬の子反の意
       見を容れ、盟約に背いて北上、鄭、衛二国を侵した。鄭は反撃して楚の新石地
       方を奪取し、晋は呉と鍾離(安徽省鳳陽県)に会して(呉が中原の国と血盟し
       た始まり)、楚を伐つ気構えを示した。情勢不利とみた楚は、にわかに汝陰を
       鄭に割譲したので、鄭は晋に背いて楚と同盟し、楚のために宋を伐った。衛は
       晋のために鄭を伐った。かくて中原の平和はわずか三年にして破れて、晋・楚
       はふたたび戦場に椙まみえるに至った。

       【経】 十有六年六月丙寅、朔、晋侯(厲公)、欒黶をして来たりて師を乞わ
       しむ。甲午、晦、晋侯、楚子(共王)・鄭伯(成公)と鄢陵(鄭の地、河南省
       鄢陵県)に戦う。楚子・鄭師敗績す。楚、その大夫の公子側(子反)を殺す

 

 

 No.51

♞ さらに、エネルギータイリング事業が加速!

  
Dubai The Sustainable City(Wikipedia)

● 6MW分の太陽光を分散設置、ドバイ「サステナブル・シティ」

8月14日、中国の大手太陽光パネルメーカーであるトリナ・ソーラーが、アラブ首長国連邦(UAE)
のドバイで開発中のスマートコミュニティ「サステナブル・シティ(Sustainable City)」で、約2万
4千枚の同社製パネルを採用した分散型の太陽光発電所が稼働を開始したことを公表。サステナブル・
シティは、ドバイ都心から約30km南方に位置し、面積は500万平方フィート(約46ha)。最終的に2
千人の居住人口を見込むDiamond Developers社がマスターデベロッパーとして開発を進める中東で最
大規模のスマートコミュニティである。500戸の住宅、170室のホテル1棟、モスク、学校、オフィス
や商業施設などを建設、環境に配慮した省エネ性能の高い建築物が特徴で、サステナブル・シティの
グリーン建築物の評価基準としては、北米の『LEED』やアブダビの『Estidama』よりも高い(日経
BP総研 クリーンテック研究所 2017.08.15)。

  The Sustainable City

トリナ・ソーラーは、サステナブル・シティに約4万枚の両面ガラスでフレームのないタイプのパネ
ル(「Duomax」)を供給する。現在、開発の第1段階として約2万4千枚のパネルを設置し、約6
MW分が稼働を開始する。第2段階で残りの約1万5千枚を設置する。すべての太陽光パネルが稼働
すると出力が約10MWW、年間の発電量は約16GWhを見込む。温室効果ガスについては、年間に8
千トンの排出量を抑制できる。トリナ・ソーラー社の説明では、砂漠気候という厳しい条件に適合す
る、 ❶フレームレス設計のため、フレームに溜まる砂やホコリ清掃不要、❷両面ガラスにより耐久
性や信頼性が高い仕様となっている。

 Aug. 13, 2017

尚、従来、マスダールシティでは敷地内にメガソーラー(大規模太陽光発電所)を建設し、発電した
電力をコミュニティ内に配電するといった、中央集中型のエネルギーシステムでの利活用が多かった。
サステナブル・シティでは、こうしたセントラルタイプのメガソーラーはなく太陽光パネルが生み出
すエネルギーは主に各住宅やビルで使用する、居住者がコミュニティ内の資産を区分所有し、収益を
共有する、などの特徴がある。Diamond Developers社によると、「サステナブル・シティ全体の開発
投資は、4年で回収する計画」という。地元メディアは、サウジアラビアやエジプトなどから、同様
のスマートコミュニティをもっと大きな規模で開発して欲しいといったプロジェクトの依頼も同社に
寄せられているという。



● 旅客船では日本で初めて オフグリッド電力船が日光で就航

8月10日、日光・中禅寺湖に導入される新型の遊覧船「男体」に、太陽光発電を主電源としたオフグ
リッド電力システム「パーソナルエナジー」が搭載された。太陽光発電を主電源としたオフグリッド
電力システムは、船内に設置される52カ所のコンセントと客室内LED照明、Wi-Fi  サービスの電源
をすべてオフグリッド電力で供給でき、停泊中ゼロ・エミッション(CO2排出量ゼロ)を実現。

太陽光発電を利用した船用電力システムは、既に一部の船舶に採用されているが、発電量が天候に左
右されるため、安定的な電力供給に課題があった。一方、従来のディーゼル発電機は、スマートフォ
ンなどの充電電源として安定した電力を供給することに課題があり、ACアダプターの損傷や電源不安
定による電気機器の故障を引き起こす恐れがある。


船用電力システムに慧通信技術工業(神戸市)のオフグリッド電力システム「Personal Energy(パー
ソナルエナジー)」を搭載した。合計4.2kWのCIS化合物型太陽光パネル(175W/枚・24枚)と、オ
リビン酸リン酸鉄Liイオン蓄電池を組み合わせた。蓄電池の最大交流出力は3kW、最大直流入力は4
kW、容量は2.4kWh。データセンターなどで使用される通信用インバーターを採用し、常時安定した
電圧、周波数の交流を供給できるという。曇天や雨天などの悪天候時に太陽光発電からの電量が不足
する場合、船内発電機からの電力をオフグリッド電力システムで整流して供給する。このほかにも新
型遊覧船では、主機関エンジンのCO2排出量を従来エンジンと比べて50~60%に低減。出力は245kW×
2基。定員は400人(うち客席312席、特別展望室)。全長24m×幅員8.8m(上表ダブクリ参照)。

 Aug. 14, 2017

● 米国でもプラグイン自動車の普及拡大を後押し

8月14日、日産とBMWは、サンディエゴガス&エレクトリック(SDG&E)社と連携して、日産LEAF
または、BMWi3を購入するSDG&E社の顧客に10,000ドルの割引、但し、9月30日までの神聖期限付
き。さらに、カルフォルニア州が行っているプラグイン購入払い戻し 2,500ドルと、同じく連邦政府
の税控除の 7,500ドルを申請すれば合計で消費者は20,000節約できるほか、電力会社に対し、電気自
動車運転者は年間最高200ドルの払い戻し請求ができる。SDG&E社によると電力の43%が再生可能
エネルギーが占めることになる話す。

  Aug. 8, 2017

● ペロブスカイトとシリコンを組みわせたのタンデム構造で変換効率 23.9%!

8月8日、ベルギーの IMECなどが、ぺロブスカイトとシリコンを組みわせたのタンデム構造の太陽
電池モジュールを開発。従来のシリコン太陽電池を上回る23.9%の変換効率を達成したと公表。
次世代の太陽電池として実用化が期待されている、ペロブスカイト太陽電池。シリコン系の太陽電池
より高い変換効率を実現できるポテンシャルを持ちながら、低い製造コストを実現できると見込まれ
ている。ペロブスカイト太陽電池は、さまざまな光学的および電子的特性を実現するように設計でき
る特徴がある。そのため、シリコンセルのスペクトル吸収範囲を補うような特性に設計したペロブス
カイト太陽電池やモジュールを組み合わせ、標準的なシリコン太陽電池の効率を高めるという手法も
期待しうる。ベルギーの研究開発機関であるIMECとEnergyville、ドイツ、ベルギー、オランダの薄膜
太陽電池の研究開発コンソーシアムのSollianceは、シリコン太陽電池の上にぺロブスカイト太陽電池
を積層した、開口面積4cm2のタンデム構造のモジュールを改良し、モジュール変換効率を23.9%
を達成。このタンデム構造のモジュールで、従来のシリコン太陽電池の変換効率を上回るのは初めて。
既にIMECは2016年にSollianceと共同で、4端子のタンデム構造を持つ裏面電極型の単結晶シリコンの
上に、ペロブスカイトを積層したモジュールを発表している。このモジュールの開口面積も同じく
4cm2だが、変換効率は20.2%だった。今回はこのモジュールに次の改良を加え、同じ開口面積で
変換効率23.9%を達成。

異なる種類のぺロブスカイト材料(CsFAPbIBr)を採用。これにより、ぺロブスカイト太陽電
池モジュールの変換効率を15.3%に向上 ペロブスカイトモジュールの上に反射防止膜を加え、さらにシリコン太陽電池セルとの間に屈
折率整合液を挟み、積層構造を光損失を最小化できるよう工夫

尚、IMECによると、ペロブスカイトとシリコンセルの組み合せには、まだ大きな伸びしろが残され
ている。理論上は30%を超える変換効率の実現が期待できる。

 May 25, 2016

※ 関連技報

 What are perovskite? 

Reducing hole transporter use and increasing perovskite solar cell stability with dual-role polystyrene mi-
crogel particles, DOI:10.1039/C7NR02650A Electrospray-Assisted Fabrication of Moisture-Resistant and Highly Stable Perovskite Solar Cells at Am-
bient Conditions, DOI:10.1002/aenm.201700210


23.6%-efficient monolithic perovskite/silicon tandem solar cells with improved stability, DOI:10.1038/ne-
nergy.2017.9

※  この「Four-terminal tandem Perovskite / siliconSolar cells」は後日小考する。

【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅶ】  

● 最新太陽電池技術/国内特許篇

 ❏ 特開2017-132900  ポリマー及びそれを用いたペロブスカイト型太陽電池

【概要】

ペロブスカイト型太陽電池の基本構造は、通常、透明電極の上に、n型バッファ層、光吸収層(ペロ
ブスカイト層)、p型バッファ層及び金属電極をこの順に積層する。n型バッファ層とペロブスカイト
層との間にメソポーラスチタニア層(電子輸送層)を備えることもある。このうち、p型バッファ層
には、一般的には、有機半導体の正孔輸送性材料が用いられる。しかし、従来のペロブスカイト型太
陽電池は、その光電変換効率が十分とは言えず、現在、ペロブスカイト型太陽電池の光電変換効率の
熾烈な高効率化競争が国内外で展開されている。なかでも、光電変換効率の高効率化のためにはp型
バッファ層として用いられる優れた有機半導体材料の開発が高効率化の鍵を握る。これまでに、いく
つかの正孔輸送性材料の開発されているが、ペロブスカイト型太陽電池として有用と言えるほどの化
合物は報告されていない。現在は、色素増感型太陽電池用の正孔輸送材料として開発されたSpiro-
OMeTADを正孔輸送材料に使用しているが、1gあたり8.8万円程度(Merck)と高価であり、PTAA
(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン])とよばれるトリフェニルアミン
骨格をもつポリマー材料もp型バッファ層用の正孔輸送材料に用いるが、同様に1gあたり34.2万円程
度(Aldrich)と高価である。さらに、これらの材料をp型バッファ層用の正孔輸送材料として用いる
場合、添加物としてLiTFSI塩(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いる必要
があり、これが素子の劣化の原因の一つになってしまうと考えられている。これらの現状から、他
にp型バッファ層として優れた光電変換特性を示す材料が求められている。ペロブスカイト型太陽電
池のp型バッファ層として優れた光電変換特性を示し、かつ安価な化合物として、下式(1)で表され
る繰り返し単位及びその類似構造体から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有するポリマー。
好ましくは、最低空軌道のエネルギー準位(LUMO)が-3.60~-2.00eVであり、最
高被占有軌道のエネルギー準位(HOMO)が-5.45~-4.90eVである、ポリマーを提供
する(詳細は下図/表ダブクリ参照)。

 

 ❏ 特開2017-133077  ペロブスカイト膜の製造方法 

【概要】

ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法には、鉛系強誘電体膜を形成技術として、、❶物理気相成長
法、❷化学気相成長法、❸ゾル-ゲル法、❹MOD法等が挙げられており、さらに、❺ミストCVD
法も挙げられているが、これら手法により、基板上に形成された膜は、熱処理しなければならず、特
に正方晶系ペロブスカイト構造とするためには、600℃~800℃で結晶化アニールを施す必要が
ある。また、正方晶ペロブスカイト膜をミストCVDで製造した例はなく、ミストCVD法は、最近
になってα-Ga2O3系半導体の製法として検討されているミストCVD法とは異なり、ミスト化し
た原料溶液を基板上に塗布した後、熱処理する方法である。また、ペロブスカイト型複合酸化物の製
造方法として、❶スピン塗布法、❷化学気相成長(CVD)法、❸スパッタ法などが挙げられ、❹さ
らに、ミスト化した強誘電体材料溶液を基板上に塗布し、熱処理するミストCVD法も挙げられてい
るが、これらの方法により、堆積して得たペロブスカイト型複合酸化物は、そのままでは実用に足る
特性を示さないため、アニール処理して結晶化する必要がある。

そして、❶高温でアニール処理した場合、界面において反応が起こったり、薄膜構成原子が拡散ある
いは離脱したり、薄膜構成原子の酸素が離脱するなどして、ペロブスカイト構造の特性が劣化すると
いう問題がある。そこで、アニールの代わりに、連続発振レーザービームを照射することが検討され
ているが、このようなレーザを照射する方法も、酸化物層に照射されたレーザの熱が、酸化物層の下
に配置されたベース層を介し逃げやすく、酸化物層の温度を選択的に十分に高めることが困難であり、
酸化物が十分に結晶化されなかったり、ベース層が酸化されたりするという問題がある。❷また、ペ
ロブスカイト膜をミストCVDで実際に製造した例示はない。そして、ミスト化した原料溶液を基板
上に塗布し、熱処理する方法がミストCVD法として特許文献2に記載されているとおり、最近にな
ってα-Ga2O3系半導体の製法として検討されているミストCVD法とは異なる。

ペロブスカイト構造体の❶前駆体溶液を霧化または液滴化し、❷得られたミストまたは液滴をキャリ
アガスで基体まで搬送し、❸ついで、ミストまたは液滴を熱反応させて基体上にペロブスカイト構造
体を成膜した後、❹低温でアニール処理をすれば、良質なペロブスカイト構造を有するペロブスカイ
ト膜を容易に形成できることを知見し、さらに、このような方法が大気圧下で実現可能であり、得ら
れたペロブスカイト膜が、良好な物性を有していること等も知見し、このような製造方法が上記した
従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出だす。このように、良質なペロブスカイト構造
を有するペロブスカイト膜を、簡便且つ容易に、工業的有利に製造にあたり、γ-ブチロラクトンを
含むペロブスカイト構造体の前駆体溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴をキャリ
アガスで成膜室内に設置されている基体まで搬送し、ついでミストまたは液滴を熱反応させて基体上
に前記ペロブスカイト構造体を成膜した後、アニール処理する。そして、得られたペロブスカイト膜
を光電変換素子に適用する方法提供する(詳細は下図ダブクリ参照)。

【符号の説明】

1  ミストCVD装置  2  キャリアガス源  3  流量調節弁  4  ミスト発生源  4a  原料溶液 
4b  ミスト  5  容器  5a 水  6  超音波振動子 7 成膜室  8 ホットプレート  9  供給管
10    基板

※ 関連技報

・Strongly Enhanced Photovoltaic Performance and Defect Physics of Air-Stable Bismuth Oxyiodide (BiOI), 
    DOI: 10.1002/adma.201702176  Jul. 17,  2017(Non-toxic alternative for next-generation solar cells | Univer-
    sity of Cambridge )

  Jul. 18, 2017

● 今夜の寸評:パチンコ・おばけ屋敷・信長が観光スポットに

観光省によると、2017年月の訪日外客数は、前年同月比16.8%増の268万2千人。2016年7
月の229万6千人を38万人以上上回り、単月として過去最高となった公表。多くの市場で
夏期休暇シーズンを迎え、旅行需要が高まる中、航空路線の新規就航や増便、訪日クル
ーズの就航が訪日者数増加の追い風となった。さらに、この時期の需要獲得に向けて進
めてきた訪日旅行プロモーションも訪日意欲を後押しした。市場別では、東アジア4市
場(韓国、中国、台湾、香港)が単月として過去最高を記録。11市場(シンガポール、
フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、
スペイン)が7月として過去最高となった。祝日の変動や減少などを受けて、東南アジ
アを中心に需要が伸び悩んだ市場もあったが、ピークシーズンを迎えた東アジア4市場
が全体を大きく牽引したことも影響し、訪日外客数全体としては堅調に推移したとのこと。
ところで、観光左にも変化が起きているという。珍しいところでいえば、秋葉原のパチ
ンコ店、東京タワーのおばけ屋敷、さらに、「信長の野望」の影響か織田信長に興味を
しめしているという。三重県の「信長の城」に観光客が殺到するかもしれない。ところ
で、観光産業は風評被害脆い。安全衛生が重要なキーワードでもある。
 

 

萬屋『環海』の向日葵

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           成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                 

 

       ※  晋軍の編成:晋の厲公は鄭を討つにさきだって、臣下の意見を求めた。まず
       范文子(士燮)が進み出た。現在のわが国には試練が必要です。全天下がわ
       が国に敵対するような事態が、かえって将来の発展をもたらすのではないで
       しょうか。鄭一国を敵にまわすくらいでは、将来のためになりません」
       欒武子(欒書)がこれに反論する。
       「いや、ここで天下の信望を失ってはなりません。鄭を討伐して、天下にわ
       が晋の威力を示すべきです」
       鄭討伐の方針が決定され、晋軍は戦時編成を行なった。
       中軍の将に欒書、同じく副将に士燮、上軍の将に郤錡(郤克の子)、副将に
       荀偃、下軍の将に韓厥、新車の副将に郤至。荀鎣(知鎣)は守備役として都
       に残った。援軍を求める使者が諸国に派遣された。郤犨が衛から斉へ、そし
       てわが魯には、欒黶が派遣されて来た。魯の卿、孟献子(仲孫蔑)はかれと
       会見し、晋の勝利を確信すると語った。戊寅の日、晋軍は行動を開始した。 
 鄢陵の戦い

 

 No.52

♞ さらに、エネルギータイリング事業が加速!Ⅱ

先日、ベルギーの IMEC(アイメック・ヴェーゼットウェー社)などが、ぺロブスカイトとシリコンを組みわ
せたのタンデム構造の太陽電池モジュールを開発を取り上げ詳細考察にを残件扱いとする。
今回、2016年にSollianceと共同で、4端子のタンデム構造を持つ裏面電極型の単結晶シリコンの上に、
ペロブスカイトを積層したモジュールの特許をはじめ、同社の3つの関連及び「エネルギータイリン
グ事業構想」に関連する特許を考察(下記掲載)し詳細検討を行ったが、さらに詳細考察を行う。

 May 25, 2016

● アイメック・ヴェーゼットウェー社の特許技術

 ❏ 特開2016-056084 薄膜カルコゲナイド層の形成方法 

【概要】

Cu2SiS3(CSiS),Cu2SiSe3(CSiSe),Cu2ZnSiSe4(CZSiSe)および
Cu2ZnSiS4(CZSiS)などの材料が、マルチ接合薄膜太陽電池での吸収層として使用するための
有望な候補である。マルチ接合太陽電池セルが上部セルと下部セルを有し、上部セルは、下部セルの吸収層
材料より広いバンドギャップを持つ材料で製作された吸収層を特徴とした、例えば、1eVのオーダーのバン
ドギャップ(例えば、結晶シリコンまたはCuInSe2)を持つ下部セルの吸収層が好ましくは、約1.7
eV~2.2eVの範囲のバンドギャップを持ち、可視光範囲で高い光吸収係数を持つ吸収層を有する上部セ
ルと組み合わせられる。Cu2SiS3(CSiS),Cu2SiSe3(CSiSe),Cu2ZnSiSe4(
CZSiSe)およびCu2ZnSiS4(CZSiS)などの材料が、こうしたマルチ接合太陽電池セルの上
部セル吸収層に適したバンドギャップを有することができる。しかしながら、こうした薄膜吸収層の形成のた
めの製造方法が未だ利用できない。

さらに、Cu2SiS3(CSiS),Cu2SiSe3(CSiSe),Cu2ZnSiSe4(CZSiSe)
およびCu2ZnSiS4(CZSiS)などの材料が、現在用いられる四元ワイドバンドギャップ吸収層、
例えば、CuInxGa(1-x)S2(CIGS),CuInxGa(1-x)Se2(CIGSe),Cu2ZnSn
S4(CZTS)およびCu2ZnSnSe4(CZTSe)にとって興味深い代替品になれる。その理由は、
これらは、希少材料、例えば、GaおよびInなどを含有しておらず、SiによるSnの置換は、より大き
なバンドギャップ値に到達できるためである。三元材料  Cu2SiS3およびCu2SiSe3は、先行技術
の四元ワイドバンドギャップ吸収層材料と比べて簡単な構造である。太陽電池セル用の四元CIGS,CIG
Se,CZTSおよびCZTSe薄膜吸収層を形成する既知の方法が、2段階プロセスをベースとしており、
最初に(全ての)金属層を堆積し、次にセレン及び/または硫黄含有雰囲気の下で単一のアニールプロセスが
行われるが、Cu2ZnSiSe4またはCu2ZnSiS4薄膜層の形成のためにこうしたプロセスシーケン
スを用いることは、SiおよびZnの制限された相互拡散に起因して、600℃を超える高い温度を要すだろ
う。600℃を超える温度は、薄膜太陽電池セルに典型的に使用されるソーダ石灰ガラス基板と適合しない。
下図1の様に、元または四元薄膜カルコゲナイド層を形成する方法は、銅層を基板上に堆積するステップと、
シリコン層を銅層の上に堆積するステップであって、[Cu]/[Si]原子比率は、少なくとも0.7であ
るステップと、その後、不活性雰囲気で、堆積した層の第1アニール工程を実施し、これによりCu-Si
層を形成するステップと、その後、アニールした層の第1セレン化工程または第1硫化工程を実施し、これ
により三元薄膜カルコゲナイド層を基板上に形成するステップとを含むの方法では、600℃を超えない温度
で実施でき、CuおよびSiを含有する三元および四元薄膜カルコゲナイド層を容易に形成できる。 


【図1】本開示の実施形態に係る三元カルコゲナイド層を形成するための方法の処理ステップ図
【図2】図2(a)~図2(d)は、本開示の実施形態に係る三元カルコゲナイド層を形成するため
    の方法の処理ステップ図
【図3】本開示の方法に係るプロセスでの中間ステップとして、銅シリサイド相の形成を説明するX
    RD(X線回折)スペクトル
【図4】本開示の方法に係るプロセスにおいてCu2SiSe3相の形成を説明するXRDスペクトル

【図5】本開示の方法に係るプロセスにおいてCu2SiS3相の形成を説明するXRDスペクトル
【図6】図6(a)は、本開示の方法に従って形成された薄膜Cu2SiS3層について測定した透
    過スペクトルを400nm~1200nmの波長範囲で示し、図6(b)は、本開示の方法
    に従って形成された薄膜Cu2SiS3層について測定した反射スペクトルおよび吸収スペク
    トルを200nm~1200nmの波長範囲図
【図7】本開示の方法に従って形成されたCu2SiS3層について(αE)2のエネルギー依存性に
    基づいたバンドギャップの決定図
【図8】本開示の方法に従って形成されたCu2SiS3層の測定したフォトルミネセンススペクトル
【図9】本開示の実施形態に係る四元カルコゲナイド層を形成するための方法の処理ステップ図

尚、 図6(a)は、本開示の方法に従って調製されたCu2SiS3薄膜(約700nm~800n
mの厚さ)について測定した光透過測定の結果を、400nm~1200nmの波長範囲で示す。光
透過測定は、積分球を用いて行った。図6(b)は、この膜の吸収および反射を200nm~120
0nmの波長範囲で示す。反射測定は、積分球を用いて行った。吸収値は、反射測定および透過測定
に基づいて計算した(吸収=1-反射-透過)。光学特性は、明確なバンドギャップを示し、650
nm未満の波長で高い光学吸収を有し、750nmより大きい波長で低い光学吸収を有す。

(αE)2(=(αhν)2)(αは光吸収係数)のエネルギー依存性の線形部分からのバンドギャッ
プの外挿に基づいて、本開示の方法に従って形成されたCu2SiS3層について、1.82eVの光
学バンドギャップが得られる。これは図7に示す。図8に示すCu2SiS3層の測定したフォトルミ
ネセンス(PL)スペクトルもまた、1.82eVの直接バンドギャップを示す。垂直な破線は、吸
収体材料のエネルギーギャップの場所に対応する。本開示の方法に従って形成される三元膜30(
Cu2SiS3およびCu2SiSe3)は、太陽電池セルでの吸収体層として、例えば、マルチ接合ま
たはタンデム型太陽電池セルでのワイドバンドギャップ吸収体層として使用できる。これらの三元薄
膜は、他の用途、例えば、オプトエレクトロニクス、半導体用途にも使用できる。


【図10】図10(a)~図10(d)は、本開示の実施形態に係る四元カルコゲナイド層を形成す
     るための方法の処理ステップ図
【図11】本開示の方法に係るプロセスにおいてCu2ZnSiSe4相の形成を説明するXRDスペ
     クトル
【図12】本開示の方法に従って形成されたCu2SiSe3層およびCu2ZnSiSe4層について
     測定した透過スペクトル
【図13】本開示の方法に従って形成された薄膜Cu2ZnSiSe4層について測定した反射スペク
     トルおよび吸収スペクトルを200nm~1200nmの波長範囲図
【図14】本開示の方法に従って形成されたCu2ZnSiSe4について(αE)2のエネルギー依
     存性に基づいたバンドギャップの決定図
尚、図13は、薄膜Cu2ZnSiSe4層について測定した反射スペクトルおよび吸収スペクトルを
200nm~1200nmの波長範囲で示す。垂直な破線は、吸収体材料のエネルギーギャップの場
所に対応する。より大きな波長での高い吸収値は、第二相の存在に起因するであろう。この層を太陽
電池セル、例えば、タンデム型セルで使用する場合、第二相は、例えば、KCN中のエッチングによ
って選択的に除去できる。

 【特許請求の範囲】 

銅およびシリコンを含有する三元または四元薄膜カルコゲナイド層を形成する方法であって、
銅層を基板上に堆積するステップと、 シリコン層を銅層の上に堆積するステップであって、[
Cu]/[Si]原子比率は、少なくとも0.7であるステップと、その後、不活性雰囲気で、
堆積した層の第1アニール工程を実施し、これによりCu-Si層を形成するステップと、そ
の後、アニールした層の第1セレン化工程または第1硫化工程を実施し、これにより三元薄膜
カルコゲナイド層を基板上に形成するステップとを含む方法 第1アニール工程は、400℃~600℃の範囲の温度で行われる請求項1記載の方法 第1アニール工程は、400℃~450℃の範囲の温度で行われる請求項2記載の方法。 第1セレン化工程または第1硫化工程は、400℃~600℃の範囲の温度で行われる請求項
1~3のいずれかに記載の方法 三元薄膜カルコゲナイド層の上に金属層を堆積するステップと、その後、不活性雰囲気で、該
層の第2アニール工程を実施するステップと、その後、アニールした層の第2セレン化工程及
び/又は第2硫化工程を実施し、これにより四元薄膜カルコゲナイド層を基板上に形成するス
テップとをさらに含む請求項1~4のいずれかに記載の方法 属層を堆積することは、Zn層を堆積することを含む請求項5記載の方法 第2アニール工程は、350℃~450℃の範囲の温度で行われる請求項5または6記載の方
法 第2セレン化工程及び/又は第2硫化工程は、400℃~600℃の範囲の温度で行われる請
求項5~7のいずれかに記載の方法 基板と、前記基板上にある三元または四元薄膜カルコゲナイド層とを備え、薄膜カルコゲナイ
ド層は、CuおよびSiを含有し、基板は、600℃より高い温度に耐えられないものである、
複合構造 基板は、ソーダ石灰ガラス基板である請求項9記載の複合構造 薄膜カルコゲナイド層は、50ナノメータ~30マイクロメータの範囲の厚さを有する請求項
9記載の複合構造 薄膜カルコゲナイド層は、1.5eVより大きいバンドギャップを有する請求項9~11のい
ずれかに記載の複合構造 請求項9~12のいずれかに記載の複合構造を備えた太陽電池セル

  ❏ 特開2016-058720  結晶太陽電池の製造方法 

 【概要】

プロセス工程の数および/または熱量が、公知の製造プロセスに比較して低減された、結晶シリコン
太陽電池のような良好な結晶太陽電池を製造する方法の提供に当たり、半導体基板10の表面上の第
1の所定の位置に誘電体層を堆積する工程と、半導体基板10の表面上の、第1の所定の位置とは異
なりかつ重ならない第2の所定の位置に、ドープされたエピタキシャル層を成長する工程とを含む。
誘電体層は、太陽電池中に、表面パッシベーション層12として維持される。ドープされたエピタキ
シャル層は、太陽電池のエミッタ領域13、または表面電界領域11を形成する。 

 

 

 

 

 ❏ 開2017-098529 再構成可能な太陽電池モジュール

【概要】

太陽電池パネルは、現場でのクリーンエネルギー製造に有利に使用することができる。この分野では、
モジュールを直列に接続してモジュールレベルの複数のストリングを形成することが知られており、
同様に、例えば商業的な太陽電池設備に使用されるように、並列に接続されて太陽電池(PV)アレ
イを形成する。従って、太陽光システムは、太陽光を電気に変換するために多くの相互接続された太
陽電池セルを使用する。太陽電池システムは、例えば、機械的及び/または電気的コネクタ及びマウ
ント、電圧レギュレータ、電気的な出力を変更又は変調するための他の手段、太陽に対する方向を調
整するための追跡手段などの、他の構成要素を備えてもよい。アレイは、例えば、インバータに接続
されてもよく、例えば、生成された電力を最大にするために最大電力点トラッカー(MPPT)を備
える。このようなPVシステムは、例えば、均一な照明条件下で最適に動作しても、実際に遭遇する
様々な条件及び/または様々な条件は、PVアレイにおける不都合なミスマッチの影響をもたらす可
能性がある。予測できない遮光事象は、一時的にセル間の強い相違を引き起こす可能性がある。PV
システムが不均一な方法で照射されると、大きな電力損失を起こす。この電力損失は、例えば遮光領
域及び/または遮光濃度など、必ずしも投影された遮光部に直線的に関連するとは限らない。例えば、
不明瞭ではないセル動作にあって、完全に照射されたセルは、例えば少なくとも部分的に遮光される
別のセルへのシリアル接続により、遮光の影響を受けることがある。さらに、ローカルのホットスポ
ットがシステムの正常な動作を脅かす可能性があり、恒久的な損傷を引き起こす可能性もある。

このように、確率的遮光を処理するため、❶バイパスすること、❷グローバルMPPT、❸分散型M
PPT、❹並列解、及び❺相互接続トポロジの最適化のアプローチがある。ここで、方法を比較する
際し総合的に要因――設置コストや複雑さなど――の問題を考慮する必要がある。遮光条件は典型的
には確率的で、セル相互接続のトポロジ(位相幾何学)はフィールド内で有利に再構成され、このよ
うなモジュールは、ランタイム(実行)時に実際の遮光条件に調整することができ、モジュールのす
べての潜在的なエネルギー収量または実質的にすべての潜在的なエネルギー収率を回収できる。例え
ば、モジュールが部分的に遮光される場合、同様に遮光されたセルをグループ化することができ、各
グループはローカルコンバータに独立して接続でき、これにより、アクティブな(能動)電流パス内
のアクティブ(能動)素子の最小化できる上図3の様に、セルストリングを形成する非再構成可能な
相互接続部と、再構成可能な相互接続部を備える太陽電池モジュールを――セルストリングは直列に
接続された少なくとも4つのセル2を備え、最初のセル(in)と最後のセル(out)はグリッド
の同じ縁端部に設けられる。再構成可能な相互接続部6は複数のセルストリングを電気的に直列接続
することからなるように相互接続し、少なくとも2つの隣接するセルストリングの並列回路を確立す
るために使用され、再構成可能な相互接続部6は、不均一照射下でマッチングする複数のセルをクラ
スタ化するように複数のセルストリングの並列-直列及び/またはハイブリッド接続を形成するため
にコントローラから制御信号を受信する構成を提供する。


【図面の簡単な説明】

【図1】本発明の実施形態にかかる太陽光発電モジュールの第1の例示的なテンプレートアーキテク
    チャ図
【図2】本発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールの第2の例示的なテンプレートアーキテクチ
    ャ図
【図3】本発明の実施形態にかかる太陽電池モジュール図
【図4】本発明の実施形態にかかる太陽電池モジュールの第1の例示的なテンプレートアーキテクチ
    ャにおけるセルストリングの配列図
【図5】本発明の実施形態にかかる、太陽電池モジュールの第2の例示的なテンプレートアーキテク
    チャにおけるセルストリングの配列ず
【図6】本発明の実施形態にかかる、太陽電池モジュール内の2つのセルストリングの詳細図
【図7】本発明の実施形態にかかる、直列に接続されて電圧増分構成を形成するDC/DCコンバー
    タ図
【図8】本発明の実施形態にかかる、直列接続された動的なコンバータを実行時にアクティブにする
    ためのスイッチネットワーク構成図
【図9】本発明の実施形態にかかる、電流蓄積構成を形成するために並列に接続された出力を有する
    DC/DCコンバータ図

  【特許請求の範囲】

論理的な行及び列を有する格子状に設けられた複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セ
ルのサブセットを電気的に相互接続して複数のセルストリングを形成する複数の非再構成可能
な相互接続部と、複数の再構成可能な相互接続部とを備えた太陽電池モジュールであって、前
記各セルストリングは、最初のセルから最後のセルまで電気的に接続された少なくとも4つの
太陽電池セルを備え、最初のセル及び最後のセルは、グリッドの同じ縁端部に設けられ、最後
のセルは隣接するセルストリングの最初のセルに隣接し、及び/又は、最初のセルが隣接する
セルストリングの最後のセルに隣接し、前記複数の再構成可能な相互接続部は、複数のセルス
トリングを接続する電気的直列からなるグローバル太陽電池ストリングを制御可能に確立する
ように、前記複数のセルストリングを電気的に相互接続するように適合化され、前記複数の再
構成可能な相互接続部は、隣接するセルストリングを電気的に並列に制御可能に接続するよう
にさらに適合されることで、少なくとも2つの隣接するセルストリングによって形成される並
列回路レッグ部を有する少なくとも1つの並列電気回路を確立し、前記太陽電池モジュールは
さらに、前記複数のセルストリングを、出力ラインを介して出力電力を供給するための少なく
とも1つのDC/DCコンバータに接続するように適合され、前記複数の再構成可能な相互接
続部は、非均一な光刺激に応答してマッチングする複数の太陽電池セルをクラスタ化するよう
に、複数のセルストリングを、動作中に並列接続、直列接続及び/又はハイブリッド接続する
ために、少なくとも1つのコントローラから少なくとも1つの制御信号を受信するように適合
化される太陽電池モジュール。 前記少なくとも1つのDC/DCコンバータは、前記複数の再構成可能な相互接続部を介して
前記複数のセルストリングに電気的に接続される請求項1に記載の太陽電池モジュール。 前記少なくとも1つのDC/DCコンバータは、複数のDC/DCコンバータを備え、複数の
再構成可能な相互接続部は、動作中に積極的に使用されるDC/DCコンバータの数を動的に
選択するためのDC/DCコンバータ間に設けられた少なくとも1つのスイッチを備える請求
項2に記載の太陽電池モジュール。(後略) 

● 萬屋『環海(おおみ)』設立準備

いよいよ、環境リスク本位制への社会、政治、生活のトータル領域に浸潤し変容を迫る。わたし(た
ち)はこの運動の中衛を担うべく萬屋『環海(おおみ)』設立準備段階に入る。

  

今日は金曜日だったかな?

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           成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                 

 

       ※  申叔時の予言:晋軍出撃の報に接して、鄭は急遽楚に使者を送り援軍を求めた。
       訪楚を予定していた大夫の眺句耳もこれに同行した。楚は鄭救援を決定し、司
       馬の子反を中軍の将、令尹の子重を左軍の将、右尹子辛(公子壬夫)を右軍の
       将として、軍を編成した。申を通るとき、子反はその地に隠栖していた元の大
       夫の申叙時(しんしゆくじ)を訪れ、戦の見通しをたずねた。
       「わが軍の前途をどうお考えになりますか」
       「わたくしは、徳(賞)、刑、祥(祭)、義、礼、信、この六つが戦いの武器
       だと思います。徳によって人民に恩恵をあたえ、刑によって悪をただし、祥に
       よって神に仕え、義によって利を興し、礼によって時を得、信によって連緊を
       強める。この働きを正しく用いることが大切なのです。そうすれば人民の生活
       は豊かになり、道徳観念が確立します。経済は活発になり、秩序が整います。
       また、耕作の時期が正しくなり、作物は順調に成長します。こうなれば、上下
       関係は安定し、すべては順調に運び、人民はその分をわきまえるようになりま
       す。

        ”王の下、人民の 分わきまえぬ者はなし”

       という詩(周頌、思文)は、まさにこの境地をうたったものです。
       為政者がこのようにつとめれば、神も福をあたえ、災害を下そうとはされない
       でしょう。人民の生活は豊かになり、性質は従順になって、よろこんで上から
       の指図にしたがうにちがいありません。命令には全力をつくし、命をかけて危
       険にたちむかうことでしょう。こうなってはじめて勝利を得ることができるの
       です。
       ところが、いまの楚はどうでしょうか。国内では人民の生活に気を配らず、国
       外では孤立している。斉との同盟をふみにじり、誓約を裏切っている。農繁期
       にある人民を無理に戦いにかりたてて、疲れさせている。そのため、人民は国
       家にたいし信頼を持ちえず、いつ罰を受けるかとびくびくしながら菖すありさ
       ま、これでは命をかけようとするはずがありません。
       というわけで、とても勝利を得る見込みがあるとは巾せませんが、まあ、しっ
       かりやってください。ふたたびあなたにお目にかかれるとは思えませんが ・・・」 

       一方、衛の眺句耳は使者よりも一足先に楚から帰国した。子副が楚軍の様子を
       たずねると、かれは、 「とても当てにはできません。行車は速すぎるし、隊
       列は道が悪いとたちまち乱れます。あんなに速く行軍したのでは、考える余
       裕がありません。あの統制ぶりでは崩壊は時間の問題です。あんな軍隊では、
       どうして戦うことができましょう。とても役には立ちますまい」 

 


  
     

 No.53

♞ さらに,自動車(トラック)の電化を促進!

  Aug.16, 2017

● ハイブリッドトラックの架線充電高速道路の実証実験

ドイツは貨物の二酸化炭素排出量を削減するためにアウトバーンを一部電化する。シーメンス社とドイツのヘ
セツは、アウトバーンの架線充電高速道路を10キロメートル敷設。ハイブリッドトラックは、高速道路の充
電架線に接続、電気高速道路を離れるとディーゼル電源に切り替えるというもの。シーメンス社のeハイウェ
イイニシアティブは装備エネルギー効率を2倍に高め、高速道路の設計によりあらゆるトラックに対応できる。
今後30年間で貨物輸送量は200%増加すると予想されており、地球温暖化対策は必至である。昨年はスト
ックホルムでeハイウェイが開設され、現在は、シーメンス社が別のシステムをカルフォルニアで実証実県中
である。
ところで、わたし(たち)は望むべきは高架線方式ではなく、非接触電磁誘電方式を採用することを希望する。

 

 

【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅲ】  

 今回も「ペロブスカイトハイブリッド太陽電池の高い変換効率の謎を解明」(再生可能エネルギー)、「イ
リジウム触媒1つで、水素の貯蔵・放出」(水素エネルギー)、「音波を用いて銅から磁気の流れを生み出す
ことに成功」(レアーメタルフリー)の3つの最新技術研究成果を掲載する。特にペロブスカイトハイブリッ
ド太陽電池の研究成果は、ソーラータイリング事業と深く関係している。



● ペロブスカイトハイブリッド太陽電池の高い変換効率の謎を解明

8月10日、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構などの研究グループは、太陽電池の素材としてシリコン
系ではなく、ペロブスカイト半導体と呼ばれる有機-無機ハイブリッド系材料に注目しペロブスカイト半導体
の特徴は、光エネルギーが熱として逃げてしまう割合が小さい点と、高い変換効率にあるが、なぜそうなるの
かは不明だったが、ペロブスカイト半導体の中の有機分子中の電気双極子が独特の運動をしていることと、励
起エネルギーの低い音響フォノンのみが熱伝導に寄与していることが、その原因であることを突き止めたこと
を公表。

 doi:10.1038/ncomms16086

現在開発が進む太陽電池の多くには、シリコンでできた半導体が使われているが、シリコン樹脂を作るにはか
なりの電力が必要です。また、太陽電池自体に起因する問題として、シリコン系太陽電池のエネルギー効率向
上が限界に近づきつつあること、波長が異なる太陽光をすべて電気エネルギーに変換することが難しいこと、
変換する際に一部の光エネルギーが熱となって逃げてしまう問題がある。このため研究チームは、中性子非弾
性・準弾性散乱実験装置を用いて、MAPbI3の原子運動を調べ、❶MAPbI3の中に含まれる有機分子の中に存在
する正負の電荷が対となった電気双極子が独特の運動をしていること、❷この物質で熱を伝えているのは「光
学フォノン」ではなく励起エネルギーがとても小さい「音響フォノン」であり、その伝搬速度が遅く、かつ寿
命が短いため、熱伝導が極めて低く抑えられていることがわかった。❸さらにMAPbI3では、半導体が光を吸収
することで生成される「電荷キャリヤー」という状態が、再結合により消滅するまでにきわめて長い距離を移
動できるという、太陽電池素材として有利な性質をもっており、低い熱伝導がこのキャリヤーの長い寿命を支
えていることも解明した。




● イリジウム触媒1つで、水素の貯蔵・放出 

7月31日、京都大学らの研究グループは、イリジウム触媒を用いた水素の有機ハイドライド貯蔵手法を開発し
たことを公表。「ジメチルピラジン」という窒素を含んだ複素環式化合物を水素と反応させ、「ジメチルピペ
ラジン」という物質として水素を蓄える。同一のイリジウム触媒を用い、脱水素化反応によって水素を取り出
すことも可能。この2つの反応を比較的穏やかな条件で達成することにも成功する。 今回研究グループが利
用した窒素を含む複素環式化合物は、炭素環式化合物と比較して脱水素化反応に必要な温度が低くて済むとい
う利点があるため、有機ハイドライドとして有望だが、これまで研究されてきた手法では、水素を貯蔵すると
きと取り出すときに異なる触媒を用いなければならず、加がて水素貯蔵の際に50気圧程度以上の高圧水素と大
量の溶媒を用いる必要があり実用化ネックとなっていた(詳細、上図ダブクリ参照)。

今回開発した水素貯蔵システムでは、有機ハイドライド分子と溶媒の合計100g当たり、3.8gの水素を貯蔵でき、
溶媒を用いない場合は4.1gを貯蔵できる。研究グループは、これらの数値は、これまでに報告されていた窒素
を含む有機化合物を用いた水素貯蔵システムに比べれば格段に低い数値だが、実用的な水素貯蔵システムへと
発展させるためには100g当たり5gを超えるような貯蔵量を持つ新しい有機ハイドライド分子を探索するととも
に、より高活性な触媒を開発する必要がある。

 Aug. 18, 2017
● 音波を用いて銅から磁気の流れを生み出すことに成功

8月18日、慶應義塾大学らの研究グループは、銅に音波を注入することによって電子の持つ磁気の流れ「スピ
ン流」を生み出すことに成功しましたことを公表。これにより、❶銅に音波を注入して磁気の流れ「スピン流
」を生成し、❷生成したスピン流によって磁石の磁気量を変化させることに成功し、❸磁石や貴金属を必要と
しない画期的な磁気デバイス実現の道を拓ける。

今回、1秒間に10億回以上の速さで原子が回転するレイリー波と呼ばれる音波を銅に注入、スピンの方向が周
期的に変化する「交流スピン流」を生み出し、磁石の磁気量を大きく変化させることに成功。上図(a)に示す
ようなSAWフィルター素子※5を作製し、レイリー波を生成するアンテナ1と、伝搬したレイリー波を検出するア
ンテナ2の間に銅と磁気を持つニッケル・鉄合金を重ねて貼り付ける。レイリー波が銅に注入されると、銅原子
が高速に回転し、ニッケル・鉄合金の方向に流れるスピン流が生成(図(b))。このスピン流は、ニッケル・鉄
合金の磁気量を変化させる能力を持ちます。この時、レイリー波のエネルギーの一部は、磁気量の変化に利用
されるため、注入されたレイリー波の振幅が小さくなる(図(c))。磁場を用いてレイリー波と磁気量の変化の
周波数を一致させたとき、レイリー波の振幅が大きく変化する現象を発見しました(図(d))。この現象は、銅
を取り除いたり、銅とニッケル・鉄合金の間にスピン流を通さない酸化シリコンを挟むと、ほとんど消失した。。

 May 20, 2017

今回、交流スピン流の生成に用いたSAWフィルター素子は、スマートフォンなどの携帯情報通信端末に広く搭
載。実証された新しいスピン流生成法は、このSAWフィルター素子を用いてスピン流を生成し、携帯端末内で情
報記録やデジタル情報処理を行う磁気デバイスの機能動作を省電力に制御できる可能性を提供し、従来のスピ
ン流生成法とは異なり、磁石や貴金属を必要とせず、磁気デバイスの高性能化・省電力化だけでなく、安価な
レアメタルフリー技術として大きく貢献される。

 

       

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』        

 Pablo Picasso - Guernica

    第47章 今日は金曜日だったかな?

    免色はしばらくのおいた考えを巡らせていた。それからきっぱりと言った。「そのことについ
   ては、二人でしっかり口を閉ざしていましょう。それしかありません。あなたはこの家のスタジ
   オの床でそれをみつけたのです。それで押し連すしかない」
   「誰かが秋川笙子さんのところに行ってあげるべきなのかもしれない」と私は言った。「彼女は
   一人きりで家にいて、戸惑っています。どうしていいかわからず混乱しています。まりえの父親
   とはまだ連絡がつかない。彼女には支えてあげる人が必要じやないでしょうか?」
    免色はそのことについてもしばらく真剣な顔で考えていたが、やがて首を振った。「でも私が
   今からそこに行くわけにはいきません。私はそういう立場にはないし、彼女のお兄さんがいつ帰
   ってくるかもしれない。そして私は彼と面識はまったくありませんし、もし
   免色はそこで言葉を切って、そのまま黙り込んだ。

    私もそれについては何も言わなかった。

    免色は指先でソファの肘掛けを軽く叩きながら、長いあいだ一人で何かを考えていた。考えて
   いるうちに、頬が心持ち赤らんだように見えた。
   「しばらくこのまま、お宅にいさせていただいてかまいませんか?」と免色は少し後で私に尋ね
   た。「何か秋川さんから連絡が入るかもしれませんし」
   「もちろんそうしてください」と私は言った。「ぼくもすぐには眠れそうにありません。好きな
   だけここにいらしてください。泊まっていかれてもちっともかまいません。寝支度は調えますか
   ら」
    そうさせてもらうかもしれない、と免色は言った。
   「コーヒーはいかがですか?」と私は尋ねた。
   「ありかたくいただきます」と免色は言った。

    私は台所に行って豆を挽き、コーヒーメーカーをセットした。コーヒーができると、それを居
   間に運んでいった。そして二人でそれを飲んだ。
   「そろそろ暖炉に火を人社主しよう」と私は言った。真夜中を過ぎて部屋はさっきより二股と冷
   え込んでいた。もう十二月に入っている。暖炉に火を入れてもおかしくない頃合いだ。
    私は前もって居間の隅に積んでおいた薪を暖炉の中に人社た。そして紙とマッチを使って火を
   つけた。薪はよく乾燥していたらしく、すぐに全休に火がまわった。この家に来てから、その暖
   炉を使うのは初めてだったので、煙突の換気がうまく機能するものかどうか不安だったが(暖炉
   はすぐにでも使えるはずだと雨田政彦は言っていたが、実際に使ってみるまではそんなことはわ
   からない。鳥が巣を作って煙突を塞いでしまうこともある)、煙はうまく上に抜けてくれた。私
   と免色は暖炉の前に椅子を置いて、そこで身体を温めた。

   「薪の火というのはいいものです」と免色は言った。

 Boskovsky & Kraus (1955)

    私は彼にウィスキーを勧めようかと思ったが、思い直してやめた。今夜はたぶん素面でいた方
   がよさそうだ。これからまた車を運転することだってあるかもしれない。我々は暖炉の前に座っ
   て、揺れ勧く生きた炎を眺めながら音楽を聴いた。免色はベートーヴェンのヴァイオリン・ソナ
   タのレコードを選んでターンテーブルに載せた。ゲオルク・クーレンカンプのヴァイオリンと、
   ブィルヘルム・ケンプのピアノ、冬の初めに暖炉の火を眺めながら聴くにはうってつけの音楽だ
   った。しかしどこかで独りぼっちで、寒さに震えているかもしれない秋川まりえのことを思うと、
   それほど落ち着いた気持ちにはなれなかった。

    三十分後に秋川笙子から電話がかかってきた。兄の秋川良信が少し前にようやく帰宅して、彼
   が警察に電話をしてくれたということだった。これから警官が事情を聞くために家にやってくる
   (秋川家はなんといっても富裕な地元の旧家だ。誘拐の可能性を考えて警察はすぐに飛んでくる
   だろう)。まりえからまだ連絡はないし、携帯電話にかけても相変わらず応答はない。心当たり
   の先には――それはどの数ではないにせよ――すべて連絡を入れてみたが、まりえの行方はやは
   りまったくわからない。
   「まりえさんが無事でいてくれるといいのですが」と私は言った。もし何か進展があったらいつ
   でも電話をしてほしいと言って、私は電話を切った。

 Thielemann · Berliner Philharmoniker

    それから我々はまた暖炉の前に座り、古典音楽を聴いた。リヒアルト・シュトラウスのオーボ
   エ協奏曲だった。それもレコード棚から免色が選んだ。そんな曲を聴いたのは初めてだった。
   我々はほとんど口をきくこともなく、その音楽に耳を傾け、暖炉の炎を眺めながらそれぞれの思
   いに浸っていた。

    時計が一時半をまわった頃、私は急にひどく眠くなってきた。目を開いていることがだんだん
   むずかしくなってきた。私は苦から早寝早起きの生活に慣れていて、夜更かしが苦手だ。

   「あなたはどうか眠ってください」と免色は私の顔を見て言った。「秋川さんから何か連絡があ
   るかもしれませんから、私はもうしばらくここで起きています。私はあまり眠る必要はないんで
   す。眠らずにいるのは苦痛ではありません。苦からそうでした。だから私のことは気にしないで
   ください。暖炉の火は絶やさないようにします。こうして音楽を聴きながら、一人で火を眺めて
   います。かまいませんか?」

    もちろんかまわないと私は言った。そして台所の外にある納屋の軒下からもう丁抱え薪を持っ
   てきて、暖炉の前に積み上げた。それだけあれば、朝まで火は十分保たれるはずだった。
   「申し訳ないけれど、少し眠らせてください」と私は免色に言った。
   「どうかゆっくり眠ってください」と彼は言った。「交代で眠りましよう。私はたぶん明け方に
   少しだけ眠ると思います。そのときはこのソファで眠りますから、毛布か何かを貸していただけ
   ますか?」

    私は雨田政彦が使ったのと同じ毛布と、軽い羽毛布団と枕とを持ってきて、ソファの上に寝支
   度を調えた。免色は礼を言った。

   「もしよかったらウィスキーがありますが?」と私は念のために尋ねた。
    免色はきっぱり首を振った。「いや、今夜はお酒は飲まないでいた方がよさそうだ。何かある
   かわかりませんから」
   「もしお腹が滅ったら、台所の冷蔵庫の中のものを自由に召し上がってください。大したものは
   ありませんが、チーズとクラッカーくらいはあります」
   「ありがとう」と免色は言った。

    私は彼を居間に残して自分の部屋に引き上げた。そしてパジャマに着替え、ベッドに潜り込ん
   だ。枕元の明かりを消して、眠るうとした。しかしなかなか寝付けなかった。ひどく眠いのだが、
   頭の中で小さな虫が高速で羽ばたきしているような感触かおり、どうしても眠ることができなか
   った。そういうことがたまにある。あきらめて明かりをつけ、身体を起こした。

   「どうだい、うまく眠れないだろう?」と騎士団長が言った。

    私は部屋の中を見渡した。窓の敷居のところに騎士団長が腰掛けていた。いつもと同じ白い装
   束に身を包んでいた。先の尖った奇妙な靴を履き、ミニチュアの刺を帯びていた。髪はきちんと
   結われていた。相変わらず、雨田典彦の絵の中で刺殺されていた騎士団長とまったく同じ格好だ
   った。
   「眠れないですね」と私は言った。
   「いろんなことが起こりよるからな」と騎士団長は言った。「人はみな、なかなか心安らかに眠
   られない」
   「お見かけするのはひさしぷりですね」と私は言った。
   「前にも言ったように、ひさしぶりもごぶさたも、イデアにはうまく解せない」
   「でもちょうどよかった。あなたに尋ねたいことがあったんです」
   「どんなことだろう?」
   「秋川まりえが今日の朝から行方がわからなくなり、みんなで探しています。彼女はいったいど
   こに行ったのですか?」

    騎士団長はしばらく首を傾げていた。それからおもむろに口を間いた。

   「知ってのとおり、人間界は時間と空間と蓋然性という三つの要素で規定されておる。イデアた
   るものは、その三つの要素のどれからも自立したものでなくてはならない。であるから、あたし
   がそれらに関与することは能わないのだ」
   「言っていることがよく理解できませんが、要するに行き先はわからないということですか?」
    
    騎士団長はそれには返事をしなかった。

   「それとも知ってはいるけれど教えられないということですか?」
   騎士団長はむずかしい顔をして目を細めた。「責任回避するわけではあらないが、イデアにも
   いろいろと制約があるのだよ」

    私は背筋を伸ばし、騎士団長をまっすぐ見た。

   「いいですか、ぼくは秋川まりえを教わなくてはなりません。彼女はとこかで助けを求めている
   はずです。どこだかわからないけれど、簡単には出られないところに、たぶん迷い込んでしまっ
   たのでしょう。そういう気がする。でもどこに行ってどうすればいいのか、今のところ見当もつ
   きません。でも今回の彼女の失踪には、あの雑木林の中の穴が何らかのかたちで関係していると
   思うんです。筋道立てて説明はできないけれど、ぼくにはそれがわかる。そしてあなたは長いあ
   いだあの穴の中に閉じ込められていました。どうしてそんなところに閉じ込められることになっ
   たのか、その事情は知りません。しかしとにかくぼくと免色さんが、重い石の塚を重機を使って
   どかせて、穴の目を関いた。そしてあなたを外に出してあげた。そうですね? そのおかげで、
   あなたは今では時間と空間を好きに移動できるようになった。姿を消したり現したりも好きなよ
   うにできる。ぼくとガールフレンドのセックスも存分に見物した。そういうことですよね?」
   「まあ、だいたい合っておるよ」
   「どうすれば秋川まりえを救い出せるか、その方法を具体的に教えてくれとまでは言いません。
   イデアの世界にはいろいろと制約があるみたいだから、そこまで無理は言いません。でもヒント
   のひとつくらいはくれてもいいんじやありませんか9切心はあってもいいでしょう」

 A Priori

    騎士団長は深いため息をついた。
  
   「遠回しにはのめかしてくれるだけでいいんです。今すぐ民族浄化をなくせとか、地球温暖化を
   止めろとか、アフリカ象を救えとか、そんな大がかりなことを求めているわけじやありません。
   ぼくとしては挟くて暗いところに閉じ込められているかもしれない十三歳の少女を、この普通の
   世界に取り戻したいのです。それだけです」

    騎士団長は長いあいだ腕組みをしてじっと考え込んでいた。彼の中に何か迷いが生じているみ
   たいに見えた。

   「よろしい」と彼は言った。「そこまで言うなら、仕方あるまい。諸君にひとつだけヒントをあ
   げよう。しかしその結果、いくつかの犠牲が出るかもしれないが、それでもかまわんかね?」
   「どんな犠牲ですか?」
   「それはまだなんとも言えない。しかし犠牲は避けがたく出るだろう。比喩的に言うならば、血
   は流されなくてはならない。そういうことだ。それがいかなる犠牲であるかは、後目になればお
   いおい判明しよう。あるいは誰かが身を棄てねばならん、ということになるやもしれない」
   「それでもかまいません。ヒントを与えてください」
   「よろしい」と騎士団長は言った。「今日は金曜目だったかな?」
    私は枕元の時計に目をやった。「ええ、今日はまだ金曜日です。いや、遠う、もう既に土曜日
   になっています」

 Spanish Armada  


    第48章 スペイン人たちはアイルランドの沖合を航海する方法を知らず

    目を覚ましたのは午前五時過ぎで、あたりはまだ真っ暗だった。私はパジャマの上からカーデ
   ィガンを羽織り、居間に様子を見に行った。免色はソファの上で眠っていた。暖炉の火は消えて
   いたが、おそらくついさっきまで起きていたのだろう、部屋はまだ暖かかった。積み上げておい
   た薪はずっと少なくなっていた。免色は身体に布団をかけて横向きになり、とても静かに眠って
   いた。寝息ひとつたてていない。眠り方までどこまでも端正なのだ。部屋の空気でさえ、彼の眠
   りを妨げないように息をひそめているようだった。

    私は彼をそのまま寝かせておいて、台所に行ってコーヒーをつくった。トーストも焼て食堂の
   椅子に座り、バターを塗ったトーストをかじり、コーヒーを飲みながら読みかけの本を読んだ。
   スペインの「無敵艦隊」についての本たった。エリザベス女王とフェリペニ世とのあいだで繰り
   広げられた、国運を賭けた激しい戦い。どうして私がこの今、十六世紀後半の英国沖での海戦に
   ついての書物を読まなくてはならないのか、その理由はよくわからなかったが、読み始めると面
   白くて、ずいぶん熱心に読んだ。雨田典彦の書棚でみつけた古い本だ。

    一般的な定説としては、戦術を間違えた無敵艦隊はイングランドの艦隊に海戦で大敗し、それ
   によって世界の歴史は大きく流れを変えた、ということになっているが、実際にはスペイン軍の
   こうむった被害のおおかたは、正面切っての戦いによるものではなく(双方の大砲の弾はさんざ
   ん撃ち合ったわりには、ほとんど相手に当たらなかった)、難破によるものだった。地中海の穏
   やかな海に馴れたスペイン人たちは、難所の多いアイルランドの沖合をうまく航海する方法を知
   らず、そのために暗礁に乗り士げて多くの船を沈没させてしまったのだ。
    私が食堂のテーブルの前で、二杯のブラック・コーヒーを飲みながら、スペイン海車の気の毒
   な運命を辿っているあいだに、東の空かゆっくり白んできた。土曜日の朝だ。 

    今日の午前中にかかってくる電話で、誰かが諸君を何かに誘う。それを断ってはならない。
    私は頭の中で、騎士団長の言ったことを反復した。そして電話機に口をやった。それは沈黙を
   守っていた。おそらく電話はかかってくるのだろう。騎士団長は墟はつかない。私はそのベルが
   鴫るのをただじっと待っているしかない。
    私は秋川まりえのことを考えた。叔母に電話をかけて彼女の安否を確かめたかったが、まだ朝
   が早すぎた。電話をかけるのは少なくとも七時ごろまでは待った方がいいだろう。それにもしま
   りえの行方が判明したら、彼女はきっとここに連絡してくるはずだ。払が心配していることを知
   っているから。連絡がないのは、進展がないということなのだろう。だから私は食堂の椅子に座
   って、無敵艦隊についての本を読み続け、読むのに疲れると、電話機をただじっと眺めた。でも
   電話機は相変らず沈黙を守っていた。


ここにきて"イデア"とは、つまりものの「姿」や「形」をさして、イドス(図形)とは異なり、「ものごとの
真の姿」をさし、真の認識のは「想起」(アナムネーシス)であり、古代ギリシアでは学問一般を意味し、近
代における諸科学の分化・独立により、新カント派・論理実証主義・現象学など諸科学の基礎づけを目ざす学
問、生の哲学、実存主義など世界/人生の根本原理を追及する学問のる「死の練習」の愛知(philosophia)で
あり、経験的(アプリオリ)認識に先立つ先天的、自明的な認識や上位概念として定立するものだと騎士団長
は言おうとしている。それはまた仏教の唯識論と通底するところでもある。と、再確認。
                                   
                                           この項続く 

   

● このワンプレートから朝がはじまる

 

 

  

 

ゲルニカの藁の男たち

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                 

 

       ※  外患で内憂を防ぐ: 五月、鄭にむかう晋の軍勢が黄河を渡ったところで、
       楚軍出動の報がもたらさ れた。范文子は退却を進言した。 「退却して敗戦
       の形をつくることが、将来の困難を避ける道です。いまのわれわれには、わ
       が君を天下の判者とするほどの力はありません。しかるべき人物の出現を待
       つべきでしょう。われわれのつとめは、一致団結してわが甘を補佐していく
       ことだと思います」。しかし、欒武子が異議をとなえ、この進言はとりあげ
       られなかった。

       六月、晋・楚両軍は 鄢陵の地(鄭、現在の河南省鄢陵県)に対峙した。范
       文子は、ここでもなお退却を主張した。郤至が反論を加える。「韓の戦い(
       僖公一五年、秦・晋の戦い)では、恵公は全軍を率いて帰ることができなか
       った。箕の戦い(僖公三三、晋・狄の戦い)では、先斡が狄中におちいって
       死に、復命することができなかった。邲の戦い(宣公-二年、晋・楚の戦い)
       でも、荀伯(荀林父)が敗戦にこりて戦いを避け通した。これらはみな晋の
       恥、あなたも十分承知なはずだ。この恥をすすごうとせず、ここで背を見せ
       るとすれば、恥の上塗りというものだ」

           范文子は答えた。「むかしは戦うだけの理由があったのだ。秦、狄、斉、楚がいず
           れも強国で、もしわが国が戦いを避けて力を尽くさなければ、子孫の衰退は目に
           見えていた。しかし今はちがう。かつて敵であった秦、秋、斉はわが国に服従し、
           残るは楚一国となっている。完全に内憂外患をなくせるのは聖人だけ、普通は外
           患がなくなってしまえば、必ず内憂が起こるものだ。この際は楚を外患として残し、
           国内の団結強化に役立てるべきであろう」  

                              

● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

        第3章 年金に「消費税」はまったく必要ない

              関係者のエゴむき出しで年金制度がゆがめられてきた

    消費税が社会保障の財源になりかけだのは、小潮政権の一九九九年にさかのぼります。
    当時は自自公(自民党、自由党、公明党)連立政権でしたが、自由党の小沢一郎党
   首は財務省から「消費税を上げるために、社会保障に使うといってください」と持ちか
   けられました。財務省が小沢氏を利用したことで、「消費税で社会保障をやろう」とい
   うことになり、予算総則に「消費税収入を社会保障に使う」と記述されました。
    年金に関心の高い高齢の有権者ほど、「消費税の社会保障目的税化」といわれると、
   「それならば仕方がない」と受け入れてしまいます。

    当時の大蔵省は、一九九〇年代に税調答申に「消費税を社会保障目的税にしている国
   は存在しない」という一文を書き入れました。その後、この一文が必ず入っていました
   が、二〇〇〇年代から消されてしまいました。
    財務省は、社会保障を人質にとって、「消費税を上げないと、社会保障ができなくな
   る」といっていますが、保険方式の社会保障が大変であれば、「保険料」を上げるのが
   筋です。それでも足りなかったら、「所得税」の投入を検討するしかないでしょう。
    しかし、なぜか日本は、年金に税金を役人する国庫負獄卒を増やしています。以前は
   基礎年金に対する国庫負担率は三分の一でしたが、平成十六年(二〇〇四年)の法改正
   で、平成二十一年度までに国庫負担率を二分の一に引き上げることに決まりました。国
   庫負獄卒が三分のIでも多いと思いますが、国庫負獄卒が二分の一に達しています。
   「保険料引き上げ」が本来のやり方であるのに、それができないのは、反対する勢力か
   あるからです。それは、経済界です。
    企業は、従業員の保険料の半額を負担しなければなりません。保険料の引き上げに
   よって負担が重くなるので、保険料引き上げに反対しています。
    保険料の引き上げができないのであれば、「法人税を上げる」といえばいいのです
   が、これに対しても経済界は強硬に反対します。保険料も法人税も上げられたくないの
   で、「保険料ではなく消費税で」ということになっています。
   「社会保障は消費税で」というのは、まったくロジカルな話ではなく、関係者たちのエ
   ゴむき出しで、恥ずかしくなるようなレベルです。こうした政治力学の積み重ねで保険
   料引き上げができずに、制度がどんどんゆがめられていきました。

             第3章4節 関係者のエゴむき出しで年金制度がゆがめられてきた 

                   税金の仕組みを知れば、スッキリとわかる

    税金のことを詳しく知らない方も多いと思いますので、ここで税金について簡単に説
   明をしておきます。税金の体系がわかると、年金に使うべき税金の種類がわかると思い
   ます。
    税金は、何種類あると思いますか。
    いろいろな名前の税金がありますので、たくさんの種類があると思っている人もいま
   すが、もっとも単純化していえば、

     1 所得税
     2 消費税

   の二つしかおりません。
    所得税は所得源泉で、消費税は消費源泉(支出源泉)です,個人の財布に入る入り口    
   で税金を取るか、財布から出ていく出口で税金を取るかどちらかです。割り切っていえ
   ば、この二つしか税金はありません。ただし、所得税の中には資座視を含めています。
   「法人税はどうなの?」と疑問に思う人がいるかもしれません。実は、法人税は、所得
   税をきちんと取ることができれば、取る必要のない税金です,
    そもそも法人というのは、架空の「人」であり、存在しない「人」です。法人が得た
   所得は、最終的には給与と配当になり、実在の「人」に渡ります。給与は従業員の手元
   に渡り、配当は株主の手元に行きます。ですから、給与所得と配当所得をきちんと「捕
   捉」することができれば、法人税はゼロにしてもいいくらいなのです。しかし日本で
   は、長年、クロヨン(サラリーマン九割、自営業者六割、農林水産業者四割)、トー
   ゴーサン(サラリーマンー○割、自営業者五割、農林水産業者三割)といわれてきたよ
   うに税金の補足率が低いままなので、それができないのです。
    給与所得、配当所得という名が付いていることでわかるように、どちらも「所得税」
   です。
    企業が内部留保したらどうなるのか。その企業の株の価値が上がります。株主に対し
   て資産課税をすれば、税金を取ることができます。
   つまり、「法人の所得」はすべて分解できて、「個人の所得」に還元できます。個人
   の所得をきちんと捕捉できれば、所得税ですべて取ることができます。実在の「人」か
   ら税金を取れば、法人という存在しない「人」から税金を取らなくてもいいのです。こ
   れが基本的なロジックです。
    よく「法人税を下げないと、国際競争力が下がる」という人がいます。「鶏と卵」的
   な議論としてはわからなくはありませんが、しかし、本来のロジックとしては間還って
   います。
    他の国は「労働所得(給与所得)も配当所得も資産所得もきちんと捕捉できるように
   なって、所得税で取れるようになったから、法人税は下げてもいいよね」というロジッ
   クで法人税を下げています。所得を完全に捕捉して所得税で取ることができれば、法人
   税を取ると二重課税になってしまいます。本来、法人税下げの趣旨は、「国際競争力強
   化のため」ではなく、「二重課税をなくすため」です。

    個人所得の完全な捕捉はできませんから、法人税は少し残りますが、所得税の捕捉率
   が高まれば、「二重課税排除」の趣旨から法人税を下げるのが世界のセオリーです。
   捕捉率が高まれば、法人税はゼロに近づいていき、所得税だけになります。ゼロになる
   税金を保険料の穴埋めに使うことはできません。その意味でも、法人税は保険料の穴
   埋め候補から外されます。                  

            第3章5節 関係者のエゴむき出しで年金制度がゆがめられてきた

読めば読むほど、眼から鱗の、驚きの連続。いったい政治家は何をしていたのだと愕然とする。

                                     この項つづく            

  

        

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』        

 Pablo Picasso - Guernica 

    第48章 スペイン人たちはアイルランドの沖合を航海する方法を知らず

        七時過ぎに私は秋川笙子に電話をかけてみた。電話にはすぐに彼女が出た。まるで.電話機の
   前でベルが鳴るのをじっと待ち受けていたみたいに。

   「まだ何の連絡もありません。行方はわからないままです」と彼女は最初に言った。
    おそらくほとんど(あるいはまったく)限っていないのだろう。その声には疲れが滲んでいた。
   「警察は動いてくれましたか?」と私は尋ねた。
   「ええ、昨夜のうちに警察の方が二人うちに来てくださって、お話をしました。写真を渡したり、
   服装の説明をしたり・・・・・・。家出をしたり、夜遊びをしたりするような子供ではないことも話し
   ました。情報があちこちに送られて、たぶん捜索が行われているはずです。今のところもちろん
   公開捜査のようなことは控えてもらっていますが」
   「でも成果はあがっていないのですね?」
   「ええ、今のところは何の手がかりもありません。警察の方々も熱心に動いてくださっているよ
   うですが」

    私は彼女を慰め、何かわかったことがあったらすぐに教えてほしいと言った。そうすると彼女

    免色はすでに目を覚ましていて、洗面所で時間をかけて顔を洗っているところだった。私が用
   意した客用の歯ブラシで歯を磨き、それから食堂のテーブルの私の向かいに座って熱いブラッ
   ク・コーヒーを飲んだ。トーストを勧めたが、彼はいらないと言った。ソファで眠ったせいだろ
   う、彼の豊かな白髪はいつもより少しだけ乱れていたが、それもいつもに比べればという程度の
   ものだった。私の前にいるのは、例によって冷静で身だしなみの良い免色だった。

    私は秋川笙子が電話で話したことをそのまま免色に伝えた。
   「これはあくまで私の勘ですが」と免色はそれを聞き終えて言った。「今回の件に関して、警察
   はあまり役に立たないような気がします」
   「どうしてそう思うんですか?」
   「秋川まりえは普通の女の予ではないし、これは普通のティーンエージャーの失踪とは少しわけ
   が違うからです。そして誘拐というのでもないと思います。ですから警察のとるような通常の方
   法では、彼女を見つけるのはむずかしいでしょう」
    私はそれについてはとくに意見を述べなかった。でもたぶん彼の言うとおりだろう。私たちが
   直面しているのは、関数ばかり多くて、具体的な数字がほとんど与えられていない方程式のよう
   なものだ。何よりもひとつでも多くの数字を見つけ出さなくてはならない。
   「もう一度あの穴を見に行ってみませんか?」と私は言った。「何か変わりがあるかもしれませ
   ん」

   「行きましょう」と免色は言った。

    ほかにやるべきこともないし、というのが我々のあいだの共通の、そして暗黙の認識だった。
   留守をしているあいだに秋川里子から電話がかかってくるかもしれない、あるいは騎士団長の言
   う「誘いの電話」がかかってくるかもしれない、と私は思った。でもたぶんまだかかってはくる
   まい。そういう漠然とした予感があった。
    我々は上着を着て外に出た。よく晴れた朝だった。昨夜空を覆っていた雲は、南西からの風に
   すっかり吹き払われていた。そこにある空は不自然なほど高く、どこまでも透き通っていた。空 
   をまっすぐ見上げていると、透明な泉の底を上下逆にのぞきこんでいるような気がした。ずっと
   遠くの方から、電車の長い車両が線路を進んでいく単調な音が聞こえてきた。ときおりそういう
   目がある。空気の誼み具合と風向きによって、いつもは聞こえない遠くの音が妙にくっきりと耳
   に届く。そういう朝だった。

    我々は雑木林の中の小径を、無言のうちに祠のあるところまで歩き、それから穴の前に立った。
   穴の蓋はまったく昨夜の通りだった。その上に並べた重しの石の位置も変化していなかった。二
   人で蓋をどかせると、梯子はそのまま壁に立てかけてあった。そして穴の中にはやはり誰もいな
   かった。兎色は今回は底に降りてみようとは言わなかった。明るい目差しで穴の底は隅々まで見
   渡せたし、昨夜と変わったところは何ひとつなかったからだ。明るい昼間に見る穴は、夜中に見
   る穴とは別のもののように見えた。そこには不穏な気配はまるで感じられなかった。

    それから我々は再び穴に厚板の蓋をかぶせ、その土に重しの石を並べた。そして雑木林を抜け
   てうちに帰った。家の前の車寄せには、免色のしみひとつない寡黙な銀色のジャガーと、私の埃
   だらけのつつましいカローラ・ワゴンが隣りあって駐車していた。

   「払はそろそろうちに引き上げることにします」と兎邑はジャガーの前に立ち削まって言った。
   「こにに腰を据えていても、あなたのお邪魔になるだけだし、今のところあまりお役に立てそう
   にありませんから。かまいませんか?」
   「もちろんです。うちに帰ってゆっくりお休みになってください。何かあったら、すぐに逓信し
   ます」
   「ええ、今日はたしか土曜日でしたね?」と免色は尋ねた。
   「そうです。今日は土曜日です」





    免色は肯いて、ウィンドブレーカーのポケットから車のキーを取り出し、しばらくそれを眺め
   ていた。何かを考えているようだった。心を決めかねているのかもしれない。私は彼が考え終わ
   るのを待っていた。

    免色はようやく口を開いた。「あなたにお話ししておいた方がいいことがひとつあります」

    私はカローラ・ワゴンのドアにもたれて、彼の話の続きを待った。

    免色は言った。「あくまで個人的なことなので、どうしようかとずいぶん述ったのですが、い
   ちおう礼儀として、あなたにお知らせしておいた方がいいように思いました。無用の誤解を招く
   のは好むところではありませんし……。つまり、私と秋川笙子子さんとは、なんと言えばいいの
   だろう、かなり親密な間柄になっています」
   「男女の関係ということですか?」と私は単刀直入に尋ねた。
   「そういうことです」と気色は一瞬間を置いてから言った。頬が微かに赤らんだようだった。
   「ずいぶん迷い展開だと思われるかもしれませんが」
   「速度はそれほど問題にはならないと思います」
   「そのとおりだ」と気色は認めた。「たしかにおっしゃるとおりです。問題は速度じゃない」
   「問題は――」と払は言いかけてやめた。
   「問題は動機だ。そういうことですね?」

    私は黙っていた。しかし払の沈黙が意味するものがイエスであることは、彼にはもちろんわか
   っていた。 
  
    免色は言った。「わかっていただきたいのですが、払は何も最初から計算をして、そういう方
   向にものごとを進めたわけではありません。あくまで自然な成り行きだったのです。自分でもよ
   く気がつかないうちに、そうなってしまっていたのです。すんなりとは信じてもらえない
   かもしかませんが」

    私はため息をついた。そして正直に言った。「ぼくにわかるのは、もしあなたが最初からそう
   しようと計画していたとしたら、それはとても簡単なことだったに違いないということくらいで
   す。皮肉で言っているわけじやありませんが]
   「たぶんおっしやるとおりでしょう」と免色は言った。「それは認めます。簡単というか、それ
   ほどむずかしいことではなかったかもしれない。しかし実際にはそうではありませんでした」
   「つまり、あなたは秋川生子さんを一目見て、ただ慨純に恋に落ちてしまったということなので
   すか?」

    免色は困ったように少しだけ唇をすぼめた。「恋に落ちたか? 正直、ぼって、そこまでは、
   私には断言できません。払が最後に恋に落ちたのは たぶんそうだったと思うのですが 大昔の
   ことです。それがどんなものだったか、今となってはうまく思い出せません。しかし一人の男と
   して、女性としての彼女に強く心を惹かれているのは間違いのないところです」
   「秋川まりえの存在を抜きにしても?」
   「それはむずかしい仮説です。そもそもの出会いがまりえさんを勤賎にしたものですから。でも
   もしまりえさんの存在がなかったとしても、私はおそらく彼女に心を惹かれたのではないでしょ
   うか」

    どうだろう、と払は思った。免色のような深く込み入った意識を抱えた男が、秋川笙子のよう
   な、どちらかといえばあまり屈託のないタイプの女性にそこまで強く心を惹かかるものだろうか? 
    しかし私にはなんとも.dえなかった。人の心というものは予測のつかない良き方をするもの
   だから。とくに性的な要素が加わった場合には。
   「わかりました」と私は言った。「とにかく正直に言ってくださって、ありがとうございました。
   正直であることは結局はいちばんよいことだと思います」
   「私もそうであることを願っています」
   「実をごうと、秋川まりえは既にそのことを知っていました。あなたと笙子さんがそういう関係
   になっているであろうことを。そしてぼくにそのことで相談をしてきました。何日か前に」
    免色はそれを聞いて少し驚いたようだった。
   「勘の鋭い子だ」と彼は言った。「そういう気配はまったく見せないようにしていたつもりなの
   ですが」
   「とても勘の説い子です。でも彼女がそのことに気づいたのは叔母さんの言動からであって、あ
   なたのせいではありません」
    秋川生子はある程度感情を抑制できる、育ちのよい知件的な女性だが、強固な仮面までは持ち
   合わせていない。そのことはもちろん兎邑にもわかっていた。
    免色は言った。「それであなたは……まりえさんがそれに気づいたことと、今回の失踪とのあ
   いだには何か関連があると思っている?」
    私は首を振った。「そこまではわかりません。ただぼくに言えるのは、あなたは笙子さんと二
   人でよく話し合った方がいいだろうということです。まりえさんがいなくなったことで、彼女は
   今とても混乱し、不安を感じています。たぶんあなたの助力と励ましを必要としているはずです。
   かなり切実に」
   「わかりました。家に帰ったらさっそく彼女に連絡をとってみます」

    免色はそう言ってから、またしばらく一人で考え込んでいた。

   「正直に言えば」と彼はひとつため息をついてから言った。「私はやはり恋に落ちたというので
   はないと思います。それとは少し違う。私はそういうことにはもともと向いていないようだ。た
   だ私には自分でもよくわからないのです。もしまりえさんという存在がなければ、笙子さんにそ
   んなに心を惹かれていたかどうか。そこにうまく線を引くことができません」

 The Hollow Men

    私は黙っていた。

    免色は続けた。「でもそれは前もって計算したことでもありません。それだけは信じてもらえ
   ますか?」
   「免色さん」と私は言った。「どうしてそう思うのか自分でも説明はつかないのですが、ぼくは
   あなたは基本的に正直な人だと思っています」
   「ありがとう」と鬼色は言った。そしてほんの少しだけ微笑んだ。いかにも居心地の悪そうな微
   笑みだったが、まったく嬉しくないというのでもなさそうだった。
   「もう少しだけ正直になってかまいませんか?」と免瓦は言った。
   「もちろんです」
   「でも私は自分のことがときどき、ただの無であるように感じられます」と免色は打ち明けるよ
   うに言った。談い微笑みはまだ彼の目元に残っていた。
   「無?」   
   「からっぽの人間です。こんなことを言うといかにも傲慢に聞こえるかもしれませんが、私は自
   分のことをずいぶん頭の切れる有能な人間だと思って、これまで生きてきました。勘も優れてい
   るし、判断力も決断力もあります。体力にも恵まれています。何を手がけても失敗する気がしま
   せん。実際、望んだものはだいたいすべて手に入れてきました。もちろん東京拘所所の件は明ら
   かな失敗ですが、あれは数少ない例外です。若い頃は、自分にはどんなことだって可能だと思っ
   ていました。そして将来、自分はほぼ完璧な人間になれるはずだと考えていました。世界をそっ
   くり見下ろせるような商い場所にたどり着けるだろうと。しかし五十歳を過ぎて、鏡の前に立っ
   て自分自身を眺めてみて、私がそこに発見するのはただのからっぽの人間です。無です。T・S・
   エリオットが言うところの藁の人間です」

    どう言っていいのかわからなかったので、私は黙っていた。 

  T.S. Eliot  hollow people

The Hollow Men Mistah Kurtz-he dead
            A penny for the Old Guy

                       I
    We are the hollow men
    We are the stuffed men
    Leaning together
    Headpiece filled with straw. Alas!
    Our dried voices, when
    We whisper together
    Are quiet and meaningless
    As wind in dry grass
    Or rats' feet over broken glass
    In our dry cellar
   
    Shape without form, shade without colour,
    Paralysed force, gesture without motion;
   
    Those who have crossed
    With direct eyes, to death's other Kingdom
    Remember us-if at all-not as lost
    Violent souls, but only
    As the hollow men
    The stuffed men.......                                                              この項つづく

 
 

エクアドル沖に跋扈する禿鷹

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● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

   第3章 年金に「消費税」はまったく必要ない

    「二重課税排除」を知らないと、いつまでも税金をニ重取りされる

    二重課税排除の問題では、よく「相続税」が挙げられます。間違いなく、これも二重
   課税です。すでに税金をかけて残った財産まで、人が死んだのをいいことに召し上げよ
   うというのですから。
    相続税という仕組みがかろうじて許されるのは、「生前に所得の段階ですべてを捕捉
   できないときには、死後に遺族から取るしかない」ということがあるからです,しか
   し、所得をきちんと捕捉できていれば、所得段階で税金を取れますから、相続税も取る
   必要はなくなります。

Double tax exclusion

    生きているときに払うか、死んでから払うかという遣いだけですから、所得税と相続
   税は同じ範躊にあります,理論上は、どちらかを高く取れば、もう一方は低くなるよう
   に徴収します。単純な理論ですが、知っている人は少ないと思います。
    一般的には、政府は早く税金を払ってほしいので、なるべく生きているときに所得税
   で取るうとします。それを毎年続けていくと、最終的には「今までに、もういただきま
   したから、これ以上はいただきません」ということになって、相続税をゼロにしている
   国がいくつもあります。その反対に、所得税を低くして、相続税をたっぷり取るやり方
   もあります。どちらでもいいのです。どちらを国民が好むかで、政治で選択してもらっ
   てかまわないのです。日本の場合は、所得の捕捉率が低いために、相続税が高くなって
   いるだけです。



    このようなことを知らないでいると、所得の捕捉率が上がっても、いつまで経っても
   税金の二重取りをされてしまうかもしれません。お気をつけください。
    繰り返しますが、もし完全な所得捕捉ができるのであれば、法人税も相続税もいらな
   くなります。所得税一本で徴収できます。法人税や相続税を下げたいのであれば、まず
   は所得捕捉を厳格化することが必要になります。
    実際に、所得捕捉の方向に勤いています。マイナンバーの導入は、税率を変えないで
   所得捕捉を増やして税収を高める効果をもたらすでしょう。所得捕捉が高まり、所得税
   が増えれば、法人税減税ができます。
    他の多くの国は、日本より先に国民番号を導入し、所得捕捉を増やして、さらに法人
   税を引き下げようとしています。

      第3章6節 「二重課税排除」を知らないと、いつまでも税金をニ重取りされる


              なぜ「消費税」を年金に投入すべきではないのか?

    さて、多くの税金は、今述べてきた「所得税」のカテゴリーに入りますが、もう一方
   のカテゴリーは、「消費税」です。こちらはまったく性質が違います。「お金が入って
   くる」所得段階ではなく、「お金が出ていくとき」に課税されるものです。
   消費税について考えるには、税金とその使われ方の関係について知っておく必要があ
   ります,

    税金は、行政の業務に使われますが、地方と国では業務の役割分担があります。

    基礎的業務は地方の自治体で行ない、自治体でできないことは国が行なうという地方
   自治の大原則があり、「補完性原則」と呼ばれています。補完性原則は、EUと加盟国
   のあいだの原則としても採用されています,
    基礎的業務というのは、わかりやすい例でいえば、ゴミ収集です。ゴミ収集業務は、
   基礎的な業務ですから、国ではなく地方の自治体単位でやるのが原則です。ゴミ収集が
   滞ると、住民は困ります。基礎的業務は、「景気の良し悪し」などに左右されてはなら
   ず、常に行なわれるようにしなければなり社会保障・税番号制度 - 内閣府ません。
    そのような性格の基礎的業務にふさわしい財源は、景気に左右されにくい「消費税」
   です,



    税金には、「応益税」と「応能税」という分け方があります。応益税は、受ける行政
   サービスに応じて払う税金で、応能税は負担能力に応じて払う税金です。
   消費税は、応益税です。消費税はゴミ収集など地方の基幹業務のサービスのために使
   われるのがふさわしい税金です。一方、所得税は応能税であり、こちらは国の業務のた
   めに使われるのがふさわしい税金です,

   《応益税と応能税》

   ・応益税(消費税など)――受ける役務に応じて払う悦――地方の基幹業務向き
   ・応能税(所得税など)――負担能力に応じて払う税 ――国の業務向き

   「応益税は、地方の基幹業務に充てる」という税理論に基づけば、消費税を年金保険料
   の穴埋めに使うことは、筋道いです。
   「保険のロジック」で考えると、保険料を支払えない人の穴埋めには「どの財源を使っ
   てもいい」という考え方もでき、消費税を排除できないことになります。しかし、「税
   のロジック」の発想からいえば、応益税である消費税は地方の基幹業務に使うべきもの
   であり、保険料の穴埋めに使うのは、間違っているという結論になります。
    年金保険料の穴埋めに使うべきは、応能税である所得税、法人税などです。前述した
   ように、法人税は所得税に帰着させられます。したがって、「所得税によって保険料の
   穴埋めをするのが一番合理的」という結論になります。
    先ほど、「年金財源としては、累進課税制度の所得税を入れたほうが公平性が高い」
   と述べました。現象としてはそうなのですが、しかし実はそれ以前のレベルの話で、年
   金財源に所得税を役人するのが当たり前なのです。あくまでも、「保険のロジック」と
   「税のロジック」の二つによって他の税金が排除されるので、投人すべきは所得税とい
   うことになるのです,
    財務省の「社会保障のために消費税増税を」という主張は、「保険のロジック(保険
   は保険料で)」から見ても、「税のロジック(国の基幹業務は応能税で)」から見て
   も、まったく論理性>がありません。

           第3章7節 なぜ「消費税」を年金に投入すべきではないのか?



     第4章 欠陥品「厚生年金」がつぶれるのは当然だった 

                   90年代にはわかっていた「厚生年金基金」の制度欠陥 

       プロローグで、私は理学部数学科出身だったので、卒業するときに厚生省からお誘い
   があったという話を紹介しました。厚生省には数学のプロ中のプロが就く「年金数理窟」
   という専門職があります。
    数学好きの私からすると、数理窟の仕事はとても魅力的でしたが、専門職ですから幅
   広い仕事はできません。その点を考えて、私は大蔵省に行くことにしました,

    数学科の先輩で、生命保険会社でアクチュアリーをしている人がいましたが、ときど
   き担当者として大蔵省に説明しにきていました。アクチュアリーは、「数理専門家」と
   訳されますが、数学のプロでないと受からない試験です。先輩から「アクチュアリー会
   の名誉会員になってほしい」と頼まれました。大蔵省の役人が名誉会員にいると、会に
   とって都合が良かったのでしょう。実力で会に入るわけではないので恥ずかしかったの
   ですが、一応引き受けました。(中略

    1990年代に日米金融協議があり、アメリカから投資顧問参入要求などが突きつけ
   られました。投資顧問というのは、年金など資産を運用する会社です。日米協議の際に、
   大蔵省では私が交渉担当になり、厚生省からも担当者が来ていました。
    このときに、年金制度についてかなり深く勉強し、いろいろな問題点に気がついてし
   まいました。とりわけ、「これはマズイ」と思ったのは、「厚生年金基金」のことでし
   た,
    それで、実は私はペンネームを使って、1994年から年金の制度欠陥について指摘
   する論文を書き、発表しました。当時、私は大蔵省証券局に勤めていましたが、大蔵省
   の人間が厚生省管轄の年金制度を批判するわけですから、ペンネームを使わざるをえま
   せんでした。私のペンネームは三つありました。「日野利一」「大野興一そして「笠井
   隆」です。(中略)

    まず私は、日野和一のペンネームで金融業界誌「金融財政事情」※に年金についての
   論文を書きました(巻末に、当時の論文を掲載します)。指摘したのは、「積立金の運
   用」と「厚生年金基金」の問題点です。
    この論文が、厚生省の痛いところを突いてしまったので、厚生省がものすごい剣幕で
   怒り、「誰が書いたんだ。探せ!」ということになりました。編集部は秘密を守ってく
   れましたが、厚生省は「大蔵省の高橋に違いない」と当たりを付けてきました。もちろ
   ん私は、徹底的にしらを切りました。

    一雑誌に出た論文にすぎませんから、厚生省が問題視しなければ何もなく終わったの
   ですが、厚生省が騒いだことで、かえって注目が集まりました。私の論文に対する厚生
   省側の反論も載りました,
   「金融財政事情」の編集者からは、「この議論は面白いからさらにやりましょう」とい
   う注文が入り、私は、どんどん書きました。厚生省は激怒したようで、最終的に、「金
   融財政事情」の購読停止をちらつかせてきたようです。

    議論は、もはや決着していたようなものでした。雑誌にこれ以上迷惑をかけるといけ
   ませんので、私は書くのをやめました。
    ところが、「この議論がとても面白かった」と「日経ビジネス」の編集者にいわれ、
   今度は、笠井隆のペンネームで「日経ビジネス」に論文を書きました。PHP研究所の
   月刊誌「Vouce」にも論文を載せました。

           第4章1節 90年代にはわかっていた「厚生年金基金」の制度欠陥

 

          性質の違うものを一緒にしてしまった「厚生年金基金」

    なぜ、そんなことをしたかといえば、日米金融協議を担当したのを機に、厚生年金基
   金についても勉強してみたら、知れば知るほど、「この仕組みは必ず破綻する」という
   結論に至ったからでした。
    先述のように、「厚生年金基金」は、厚生年金に上乗せする三階部分で、企業や業界
   がつくる私的な年金です。

    なぜ破綻すると予想したのか,

    それは、厚生年金基金には厚生年金の「代行部分」かおるからでした。厚生年金基金
   は、「私的な上乗せの年金」ですが、国に納めろ「公的年金」の厚生年金の一部(代行
   部分)と合わせて運用する仕組みになっています。
    しかし、まったく性質の運う「厚生年金の一部(公的年金)」と「上乗せ分(私的年
   金)」を一緒に運用することなど、できるはずがありません。そもそも、公的年金は、
   集めた保険料をすぐに老齢世代に支払う賦課方式。私的年金は、自分の払った保険料を
   積み立てておいて老齢になったらもらう積立方式です。まったく性質の運うものを一緒
   に運営するという発想自体、どうかしています。

    数学的に考えても運営は困難です。

    厚生年金は、全国民の人口構成・平均寿命で計算して、どのくらい保険料を取ったら
   いいかを計算します。
    一方、厚生年金基金の上乗せ部分は、業種、業界、企業によって、事情がまったく違
   います。一般的には、社歴の浅い企業は若い人が多くなり、社歴の古い企業は年齢の高
   い人が多くなります。業界別に見ても、高齢化が進んでいる業界もあれば、若い人が多
   い業界もあります。企業や業界によって年齢構成や平均寿命が違います。
   「上乗せ部分」は企業・業界の状況に基づいた年金数理の計算、「代行部分」は全国民
   の状況に基づいた年金数理の計算です。どうやって、両者を合わせて運用できるでしょ
   うか,

    どう考えても、「上乗せ部分」の予定利回りと、「代行部分」の予定利回りが違った
   数宇になるのですから、数学的に考えれば、破綻することは目に見えていました。代行
   部分が合まれていることが間違っているのです,

    《厚生年金基金 二つを合わせたもの》 

    ・厚生年金の代行部分(公的年金)― 全国民の状況に基づいて利回り計算
    ・上載せ部分(私的年金)    ― 企業・業界の状況に基づいて利回り計算

    私は日野和一のペンネームで、「金融財政事情」1994年11月21日号)に
   「厚生年金基金は年金制度を冒すガンである」という論文を載せ、代行部分の問題点を
   指摘したのでした。それに対して、厚生年金基金連合会の常勤顧問から反論記事が載
   り、さらに私は「厚生年金基金はやはりガンである」1995年3月6日号)という
   論文を載せました。
    私は、数学理論上、代行部分を一緒に運用するのはうまくいかないと予測しただけで
   すが、結果的に、そのとおりになりました。代行部分が必要な利回りに達しない基金が
   たくさん出てきたのです,
    厚生年金基金の問題が、世の中にはっきりと認知されるようになったのは、2012
   年に発覚したAII投資顧問事件です。AII投資顧問は、多くの厚生年金基金を運用
   していましたが、運用の失敗と経営者たちが不正な利益を得ていたことで、運用資金が
   消失してしまいました。AII投資顧問が運用していた厚生年金基金は、運用資産がほ
   とんどなくなり、解散せざるをえなくなりました。この基金の加入者はみな被害者です。

    問題は、厚生年金の「代行部分」まで必要な積立金がなくなり、「代行割れ」になっ
   てしまったことです。
    はじめから代行部分などつくらず、完全に分離しておけば、問題は起こりませんでし
   た。私は、1994、95年時点で、代行部分をすべて返上するべきだと主張しました
   が、聞いてもらえませんでした。
    そのときに、私が予測に使ったのは、日本証券業厚生年金基金でした。証券業界の人
   に、「この基金は破綻しますよ」といったのですが、「我々は運用のプロです。自分た
   ちで運用しているから大丈夫です」といわれておしまいでした。私は何度も、「これは
   「運用」が上手かどうかの問題ではなくて、「仕組み」の問題なんです」といったので
   すが、「運用のプロ」をバカにしているとでも思われたのか、聞き入れてもらうことが
   できませんでした。結局、日本証券業厚生年金基金は2005年に解散しました。

    2000年代以降、厚生年金基金の行き詰まりが現実化し、代行返上する基金が相次
   ぎました。上乗せ部分どころか、代行部分まで大幅な積立不足になってしまった基金も
   あります。
    基金に入っていた会社員は、上乗せの保険料を納めたのに、それがすべてパーになり
   ました。厚生年金は国の制度ですから、「代行部分」に穴を開けた場合は、基金に加入
   している会社は国から「代行部分」の穴埋めを求められます。厚生年金基金がつぶれて
   も、「代行部分」の年金は支給してもらえますが、「上乗せ分」はあきらめるしかあり
   ません。
    厚生年金基金に入って、お金だけ取られて被害を受けた人がたくさんいるにもかかわ
   らず、厚労省は間違った制度をつくった非をいまだに認めていません

                  第4章2節 性質の違うものを一緒にしてしまった「厚生年金基金」


※ 日米金融協議の焦点、「年金運用問題」は財テクリスクに満ちている(「金融財政事情」1994年11
    月14日号より転載)

   日米金融協議で、米国当局が主張しているテーマのIつが米国投資顧問によるわが国公的年金資金
    運用である。これに伴って、国内金融機関の業際問題にも発展しつつあるが、年金問題への基本認
    識が欠けてはいないか。

    年金運用問題は修正積立方式に起因

   誰でも老いを避けられないからこそ、老後の年金は多くの人の関心事である。年金、受給者からみ
    れば、若いときに掛金を支払い、老後にそれ以上の額の給付を受けるので金融貯蓄商品と同じであ
    る。掛金より給付が大きいのは、その間年金の支給者が掛金を積立金として運用するからである。
  ただし、これは私的年金の話である。
  諸外国の公的年金では、若年層の支払った保険料(公的年金では掛金のことを保険料という)を老
  年層に給付、つまり所得移転(世代間扶養)しているので、積立金は少な一般諭として、諸外国に
  おいては、公的年金は制度の永続性によって受給権が保証されている賦課方式(給付の原資を現在
  の保険料で賄う方式)であるので、積立金が少なく所得移転による世代間扶養の投割に徹する一方、
  私的年金では積立金により将来の年金給付を確保する必要があるので積立方式(給付の原資を過去
  の掛金の積立金とその運用収入で賄う方式)を採用している。積立金は年金受給者各々の老後の給
  付に要する貯蓄の総計であるので、受給者の代わりに一括して運用することが重要になっている。

  ところで、日本の年金をみると、私的年金には当然積立金かおるが、公的年金である厚生年金(サ
  ラリーマンの年金)も私的年金を上回る積立金を有している。これは、厚生年金において、急速な
  高齢化による保険料の急増を避けるため、制度が未成熟なうちは給付を上回る保険料を課して積立
  金を有し運用収入を得て、制度が成熟するにつれて徐々に賦課方式に移行する「修正積立方式」を
  とっているからである。このため、この積立金を巡る財テクビジネスが注目され、信託・生保と投
  資顧問(背後に銀行・証券がいる)との業際問題が生じている。


  アメリカの要求は理論的に両立しない

  こうした国内情勢を背景として、アメリカから、金融摩擦問題のなかで、公的年金の積立金の運用
  について米系投資顧問会社を参入させよとの要求が出されている(投資顧問参入要求)。他方、こ
  の積立金は政府部門の貯蓄超過=黒字の一因となり、民間の貯蓄超過とともに、ISづフンス諭に
  よれば、結果として日本の巨額な経常黒字を招いている。このため、アメリカは、貿易摩擦問題の
  なかで、その経常黒字の削減のために、政府による国債発行と公共投資の拡大も日本に求めている
  (公共投資拡大要求)。(なお、アメリカの社会保障基金は全額連邦債に運用され、おもに政府消
  費支出を賄っている)この二つの要求の内容は、積立金の運用という観点から好対照である。

  「投資顧問参入要求」は、収益率は多少高まる可能性はあるもののリスクのある運用となり、株式
  市場等への多少のテコ入れ効果はあるが、マクロ経済効果としては直接的には資本形成に資するも
  のではない。一方、「公共投資拡大要求」は安定的な収益になるリスクのない運用であり、マクロ
  経済的には直接資本形成に貢献するものである。

  このため、これら二つの要求を両立させることはかなり難問である。たとえば、マクロ経済効果に
  ついては、公共投資拡大要求に応えて、公的年金資金を財投を通じて融資し公共事業を行えば、マ
  クロ経済効果としては国債発行と公共投資の拡大と同じになるが、この場合、積立金の財テク運用
  は不要となり、ましてや投資顧問会社の参入の余地はない。逆に、投資顧問参入要求に対して、広
  く投資顧問会社に財テク運用を開放すれば、その分、財投を通じる融資が減少し、十分な公共投資
  を確保できなくなる。
  したがって、かりに要求を受け入れるとすれば、いずれか一つにならざるをえないが、日本経済の
  将来を思えば、「公共投資拡大要求」を選びたい。その第一の理由は、社会資本整備の必要性であ
  る。日本の社会資本整備は都市部を中心に遅れており、アメリカの要求がなくとも、短期的な景気
  対策とは別に長期的な観点から進めていかなければならない。また、今後高齢化の進展とともに貯
  蓄率が低下することも予想されているが、まだ活力かおり貯蓄率の高いままのうちに社会資本整備
  は行っておきたい,

  なお、社会資本整備のために、一般会計による国債発行という手段もあるが、これは、政治的な思
  惑に左右され、非効率・硬直的な資源配分に陥る可能性かおる。ところが、財投を通じる公的年金
  の活用については、有償であるものの逆に効率性基準が優先されるため、政治的プロセスに惑わさ
  れず弾力的な資源配分ができるというメリットかおる。さらに、これは、公的年金という強制貯蓄
  による資金調達であるが、国情と比べてクラウディングアウトによる金利の上昇を招く可能性は低
  く、この意味で金融こ官本市場への撹乱は少ないであろう。

  年金運用にはリスク管理が欠如している

  次に、公的年金の財テクに係る各種の問題である。その第一はリスク管理の点てある。私的年金で
  は、インフレによる積立金の減価を防ぐために株式等財テク運用が必要であるが、その場合厳格な
  リスク管理のもとで行われている。具体的には、積立金の現在額〔資産項目〕と将来給付の現在価
  値との差額をリスク許容バッフアーとして、リスクがその範囲で収まるよう財テク運用を行ってい
  る。これは、生保におけるソルベンシーマージンの考え方である。ところが、公的年金の財テクに
  ついては、物価スライド制によるインフレヘッジ機能をもつので本来不要であるのに加え、かりに
  限定的に行うとしても、このようなリスク管理がない致命的な欠陥かおる。

  たとえば、予算書における厚生年金のバランスシートをみると、資産としては資金運用部預託金と
  いう形の積立金が計上されているが、負積には収支差額(=利益)の累が計上されているだけで、
  この積立金でカバーされるべき将来給付の現在価値は記載されていない(したがって、複式記帳の
  意味がまったくない)。 理論的には、全体の将来給付の現在価値から将来保険料(国庫負担を含
  む)で賄う給付の現在価値を差し引いた額を積立金でカバーされるべき負積とすべきであり、積立
  金とこの負積との差額にリスクが収まるように財テクは制限されるべきであろう(現実には財テク
  は厚生保険特別会計本体が行っているのではなく、年金福祉事業団が行っているが、同事業団サイ
  ドでもこのリスク管理の考え方を援用できる)。

  ところが、全体の将来給付の現在価値は財政再計算の際に算出されていると思われるが、負債とし
  ての現在の積立金でカバーされるべき将来給付の現在価値やリスク許容バッフアーはディスクロー
  ズされていない,かりにこうした計算がなされたとしても、公的年金の財テクの上限は積立金の三
  分の一という「腰だめ」数字であって、リスク管理上の理論的根拠があるとは思えない。このよう
  な状況において、リスクのある財テクを行うことは、海図のない航海を行うのに等しく、必要ない
  ばかりか、かえって過大なリスクを背負うことになる。実際、厚生年金は財テクにより巨額の含み
  損を抱えているといわれている。

  財テク運用は決して許されない

  第二に、積立金の運用は、長期的には年金給付の流動性準備のためにリスクを排した安全・確実性
  が求められている点てある。実際問題として、厚生年金の積立金のうち厚生年金基金(サラリーマ
  ンの上乗せ年金)の代行部分を除いた厚生年金本体分の積立金は、10年足らずで減り始め、20
  年ほどでゼロになるという試算もあることを考えれば、株式運用のような中短期的なリスク・流動
  性コストがあるものは、年金財政の流動性管理の観点からも適切とはいえないであろう。
  第三に、財テクにより、保険料を軽減しつつ、給付の引上げが可能であるとの誤った幻想をもたら
  す弊害かおる。厚生年金の積立金は90兆円であるが、一人当りにすると200万円程度しかなく、
  全体の給付の一年分程度しかない。 公的年金の本質は世代間扶養であることからわかるように、
  給付の八割以上は若年層からの保険料であり、私的年金とは異なり公的年金の場合、積立金の運用
  収入に大きな期待をかけるべきではない。

  最後に、公的年金は強制加入という点も考慮する必要かおる。私的年金において、かりに積立金の
  財テク運用に失敗したとしても、私的年金であるがゆえに、年金の受給者にはまことに気の毒であ
  るが、託した人が悪かったという自己責任の問題として処理することができる,しかし、公的年金
  では脱退の自由はなく、財テク運用の失敗は絶対納得できない。いずれにしても、公的年金は、無
  用な財テク運用で傷を深める前に、世代間扶養の投割に徴してもらいたい。強制加入により税金と
  同じ保険料を徴収し、公共投資に使わずに財テクを行い、経常黒字となって貿易摩擦問題を引き起
  こし、リスク管理がないため運用に失敗するような公的年金であれば、行革によって民営化しても
  らいたい。

                                       この項つづく 

 Aug. 15, 2017

● 今夜の寸評:アフリカ沖に跋扈する禿鷹

         蛸を揉む力は夫に見せまじもの      八木 三日女(みかじょ) 

         冬枯れや蛸ぶら下げる煮売り茶店   正岡  子規
          

50数年前、モーリタニアの真だこが世界各国から注目を浴びるようになる。当初行われていたトロー
ル漁は、150~350トンクラスの船が、深いところでは水深40メートルにもなる海底に網を這わせながら、
魚介類を根こそぎ漁獲するという底引き漁で、まだ育ち切っていない子供のたこまで乱獲していたため
に、たこの漁獲量は激減する。天然資源の保護が叫ばれ、1985年から本格的に行われ「壺漁(つぼりょ
う)を採用。「壺漁」は、狭い岩の隙間に潜り込むたこの習性を利用して、1つの壷で1匹ずつ漁獲す
るという日本古来の漁法。たこの餌が豊富な浅瀬が漁場でもあるため、足が太く身の引き締まった
“たこ質”の良い真だこが漁獲される。ところで、広大なサハラ砂漠が広がるモーリタニアに国を支え
る産業はなく貧困に苦しんでいたが、中村正明氏がのモーリタニアにタコ漁を伝え、モーリタニア貢献
した話は有名で、1990年代初頭、モーリタニアに20カ所以上の「壺たこ」生産工場が生まれている。



8月16日、エクアドルの海軍は、漁業が違法であるガラパゴス海洋保護区で数千のサメを漁獲したとし
て中国の漁船を拿捕している。エクアドルの環境大臣は、サン・クリストバル島の東方約34海里に船上
には300トンのサメや他の海の生き物を発見。当局者はガラパゴスの保護区で不法に漁獲されたと疑い
これまで当局は摘発した最大の違法漁獲量になる可能性があると伝えている(Ecuador navy arrests Chin-
ese crew for fishing 'thousands' of sharks in Galapagos,  UPI.com, Aug. 16, 2017)。また、先月13日、サンマな
ど漁業資源の保護について話し合う北太平洋漁業委員会の第3回会合が開催されたが、日本側が提案し
たサンマの漁獲量制限は中国、ロシア、韓国の反対で合意できず不調に終わっている。今後、海洋資源
を巡り関係国の競技とルールづくりが活発になるなか、冷戦時、世界を三つに割って革命を輸出してい
た中国だが、その地域周辺で海賊活動を行い拿捕されるという、国際協調時代にあってその流れに反動
するかの行為を前に率先垂範すべき国の有り様が問われている。


 

人為的地球温暖化の記録

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  楚軍の弱点を利用せよ: 甲午の日、晦日、夜が明けると、楚軍は晋陣のまぢ
       かにせまって陣を布いた。晋軍の士兵に動揺の色が現われた。晋の范匃(范文
       子の子)は、厲公の前に進み出た。「こうなったら決戦です。長居は無用、井
       戸を埋め、かまどを取りこわして、出撃の準備を整えましょう。晋も楚も、も
       とをただせば天がつくった対等の国、楚を恐れるにはあたりません。これを聞
       くと范文子はかんかんに怒り、戈をとってわが子を迫いかけた。「国の存亡は
       天が決めることだ。おまえのような若造に何かわかる」だが、晋軍の内部では、
       積極論が優勢を占めた。欒書は言った。「楚軍は軽挙盲勤しているだけです。
       こちらが守りを固めて三日も持ちこたえれば、必ず退却します,その機をのが
       さず迫撃に移れば、勝利はわがものです」郤至も言った。「禁軍には六つの弱
       点があります。これを利用しなければいけません。まず第一に、二人の卿(子
       反と子重)の間が不仲であること。第二に、共王の親兵がすべて旧臣であるこ
       と。第三に、楚陣の一翼をになう鄭の陣が不備であること。第四に、かりあつ
       めた蛮族の軍が陣の布き方を知らぬこと。第五に、陣を布くのに縁起のわるい
       晦日を選んだうえ、物音をたて放題にたて行動を秘密にしなかったこと。しか
       も、陣を布いてからも、あのようにざわざわと落ち着かずにいること。第六に
       兵士たちが戦いが終わったあとの刑罰を恐れて、最初から戦意を失っているこ
       と。これが六つの弱点です。旧臣が必ずしも精鋭とはかどりません。そのうえ、
       忌むべき晦日を選んでいるのです。勝利は必ずやわが軍のものです」
       
       〈縁起のわるい晦日〉 戦いには陽を貴ぶ。晦日は月の終りで陰である。

Aug. 9, 2017
 
【珊瑚が人為的地球温暖化を記録】

8月21日、海洋研究開発機構らの研究グループは、父島(小笠原諸島)・喜界島(奄美群島)に生息
する、サンゴの一種、ハマサンゴの骨格のホウ素同位体比(注1)および炭素同位体比を分析し、海洋
酸性化による海水の pH低下が、石灰化母液のpHをも低下させ、石灰化に悪影響を及ぼし始めている可
能性があり人為的気候変化に伴う水温上昇の結果、サンゴ礁は近年頻度と強さが増しつつある白化現象
の脅威にさらされ、海洋酸性化もまたサンゴの石灰化に影し始めている可能性を示唆。サンゴ礁生態系
の未来を予測する上で重要な知見が得られたことを公表する。

♞ 公表ポイント

測定が難しい生物源炭酸カルシウムの、ホウ素同位体比の高精度分析に成功 過去100年間の人為起源の二酸化炭素の地球表層への排出に伴う海洋酸性化の履歴を、サンゴ骨格
のホウ素・炭素同位体から明らかに 海洋酸性化がハマサンゴの骨格形成に悪影響を及ぼしている可能性を示唆。

産業革命以降、大気中の二酸化炭素の濃度は上昇し、海水のpHも急速に低下しつつある。海洋酸性化は、
炭酸カルシウム(CaCO3)骨格を生成する海洋生物(サンゴ、貝、ウニなど)の石灰化阻害を通じて海
洋生態系だけでなく、人間の経済活動にまで悪影響することが懸念される。

従来、海洋酸性化による海水のpH低下は、石灰化母液のpHを大きく低下させることはないという説が一
般的であった。石灰化母液にはホメオスタシス機能(恒常性:人間の体温のように、環境の変化によら
ず状態を一定に保とうとする生理作用)があり、サンゴが能動的にpHを調整している可能性が指摘され
ている。しかしながら、本研究の結果は、先行研究の予想に反して石灰化母液のホメオスタシス作用の
機能が低下している可能性を示唆するものである。pH指示役と共焦点顕微鏡を用いて石灰化母液のpHを
可視化した別の先行研究からも、石灰化母液のpH低下は、炭酸カルシウム飽和度を低下させ、最終的に
石灰化を阻害することが示唆されている。従って、海洋酸性化は父島・喜界島に生息する塊状ハマサン
ゴの石灰化母液に対してすでに悪影響を及ぼし始めていると考えられる(上/下図ダブクリ参照)。 


♞ 今後の展望

塊状ハマサンゴは造礁サンゴの中でも特に環境ストレスに対する耐性が高いことが分かっており、赤道
湧昇や火山性の二酸化炭素漏出によって自然状態で海水が酸性化しているガラパゴス諸島やパプアニュ
ーギニアなどでもその生息が確認されている。従って、塊状ハマサンゴよりも海洋酸性化に対して脆弱
な他の造礁サンゴは、より大きな影響を被っている可能性がある。今後は、ハマサンゴ以外の造礁サン
ゴの骨格についても、ホウ素同位体測定を行い、海洋酸性化による影響をより詳しく評価する必要があ
る。

 Keita Fukumoto

【未来の農業:培養肉時代とは何か】

培養肉(ばいようにく:Cultured meat )とは、動物の個体からではなく、可食部の細胞を組織培養する
ことでつくられた肉のこと。動物を屠殺する必要がない、厳密な衛生管理が可能、食用動物を肥育する
のと比べて地球環境への負荷が低い、などの利点があり、従来の食肉に替わるものとして期待されてい
る。現在のところ、高価であることが培養肉の課題11つである。しかし、技術の発展によって、従来
の食肉と同等程度までに低価格化することができると予測されている。一方で、人工的に生産された肉
を食することに否定的な意見もあるなか、21世紀において、いくつかの培養肉研究プロジェクトが実施
されている。2013年8月にオランダのチームによって世界初の培養肉ビーフバーガーが実現し、ロンドン
でデモンストレーションとして食されている(ヤバすぎる!「培養肉ハンバーグ」の衝撃 ,東洋経済オン
ライン、 2014.12.27)。 

  Cultured meat < Wikipedia

2013年8月、マーストリヒト大学のマーク・ポスト博士が、世界で初めて 再生医療に用いられているも
のと同じ多くの組織工学技術を用いて製造され、ロンドンで「カルチャー・ビーフ・バーガー・パティ
ー」として公表されている。日本でも理化学研究所の精神生物学研究チームのメンバーである福本景太
氏――培養ベンチャー技術責任者は培養肉を大量生産する目標を掲げ、牛の胎児の血清(1リットル10
万円)代替ビール酵母を使い成長因子のタンパク質(不詳)を加え製造(特許出願中?)――らが研究
開発を行っている。申請中の特許はわからないが、下のような関連特許※で示されている「ミオシンや
アクチンなどの筋肉タンパク質を含む原料」を「代替ビール酵母」の導出(あるいは遺伝子改変)タン
パク質を使えば、保健的機能性と嗜好性向上効果に優れた新しい食品に変換できる。でも、でも、何か
気味悪い感じは拭えないね。

※ 関連特許

❏ 特開2017-086079  メイラード反応を利用して機能性を強化した素材および
                        これを用いた食品・ペットフード

【概要】

家畜、家禽、魚介類等の筋肉タンパク質(ミオシンやアクチン)をプロテアーゼ処理(タンパク質を分
解)して得られる分解物中には、血圧降下ペプチドや抗酸化ペプチドなどの生理活性ペプチドが見つか
っている。筋肉タンパク質(豚骨格筋アクトミオシン)分解物中から Asp-Leu-Tyr-Ala、Ser-Leu-Tyr-Ala、
Val-Trpといった抗酸化ペプチドを発見し、これらの経口投与が抗疲労作用等の保健的機能を示すことを
明らかにしている。また、筋肉(畜肉および魚肉)タンパク質をプロテアーゼ処理(酵素分解)させる
ことにより得られるペプチド性素材が、嗜好性向上効果を有することも見出している。一方、動物(家
畜、家禽、魚類等)の皮膚、骨、軟骨、腱などを構成する重要なタンパク質としてコラーゲンがある。
コラーゲンをプロテアーゼ処理(分解)して得られるペプチド(コラーゲンペプチド)も、食品や化粧
品などに利用されている。しかし、コラーゲンが極端に偏ったアミノ酸組成(グリシン33%、プロリ
ン+ヒドロキシプロリン22%、アラニン11%)であるために、分解により生成するペプチドの機能
は非常に限定され、抗酸化活性も筋肉タンパク質分解物と比べるとかなり低く、嗜好性の面でも魅力を
欠く。そこで、保健的機能性(抗酸化作用)や嗜好性の面で魅力に乏しいコラーゲンペプチドを、食品
やペットフードに利用できる付加価値の高い素材にするために、メイラード反応を利用。すなわち、コ
ラーゲンペプチドに還元糖を加え、これを加熱処理することによりメイラード反応生成物を生じさせ、
保健的機能性(抗酸化作用など)と嗜好性向上効果を備えた食品・ペットフード素材を完成させる。

 JP 2017-86079 A 2017.5.25

すなわち、上図の様にミオシンやアクチンなどの筋肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理(タ
ンパク質を分解)して得られるペプチド含有物にペプチド含有物に対し、重量比で0.1~2の還元糖
を加え、これを加熱処理することによって得られる素材で、加熱処理に伴い生じるメイラード反応生成
物と残存するペプチドにより保健的機能性と嗜好性向上効果に優れた素材を得る。

【特許請求範囲】

筋肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理して得られるペプチド含有物に、該ペプチド含
有物に対して重量比で0.1~2の還元糖を加え、これを加熱処理することによって得られる素
材であり、前記加熱処理に伴い生じるメイラード反応生成物と残存するペプチドとを含むことを
特徴とする、保健的機能性と嗜好性向上効果を備えた食品素材またはペットフード素材であって、
前記保健的機能性が、抗酸化作用、抗ストレス作用、または抗健忘作用によるものである食品素
材またはペットフード素材 筋肉タンパク質がミオシンおよびアクチンである、請求項1記載の食品素材またはペットフード
素材プロテアーゼがパパインである、請求項1または2記載の食品素材またはペットフード素材 加熱調製時にpH調整剤を添加して調製される、請求項1~4のいずれかの項記載の食品素材
またはペットフード素材 加熱調製時にpH調整剤を添加して調製される、請求項1~4のいずれかの項記載の食品素材ま
たはペットフード素材 pH調整剤が炭酸ナトリウムである、請求項5記載の食品素材またはペットフード素材 請求項1~6のいずれかの項記載の素材を用いて製造した食品またはペットフード 筋肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理して得られるペプチド含有物を、還元糖を含む
組成物に加え、これを加熱処理することによって調製される食品またはペットフードであり、前
記加熱処理に伴い生じるメイラード反応生成物と残存するペプチドを含むことを特徴とする、保
健的機能性と優れた嗜好性を備えた食品またはペットフードであって、前記保健的機能性が、抗
酸化作用、抗ストレス作用、または抗健忘作用によるものである食品またはペットフード

           

 ● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

        第4章 欠陥品「厚生年金」がつぶれるのは当然だった 

               天下り役人に食い物にされた「厚生年金基金」

    本来、性質の違う厚生年金の「代行部分」と「上乗せ部分」を無理やりくっつけるべ
    きではありませんでした,木に竹を接いだようなものです。
    少し考えればわかるようなものなのに、なぜ、こんな不合理な制度をつくってしまっ
   たのでしょうか。

    それは、厚生省の役人にとっても、金融機関にとってもメリットがあったからです。
   上乗せ部分(三階部分)に厚生年金の代行部分(二階部分の一部)を合わせて基金を
   つくると、金額が大きくなります。基金の運用を担当する金融機関にとっては、運用談
   が大きくなって利益が増えます。

    厚生省の役人は、厚生年金基金を天下り先にすることができます。厚生年金は国の制
   度ですが、厚生年金基金は、企業、業界ごとにつくられる私的年金ですから、天下り先
   がたくさんできます,

    業界で厚生年金基金をつくると、加盟各社が、運営するための事務員を出さなければ
   いけませんが、加盟各社は事務員を出すのを嫌がりました。「じやあ、うちから出しま
   しょうか」と厚生省が中し出ると、「それは、ありがとうございます」と業界の人はみ
   んな喜びます。こうして、厚生省からたくさんの人が天下りしました。厚生省にとって
   は、厚生年金基金は天下り先として非常に重要だったのです。

    AII投資顧問事件をきっかけに、厚労省が厚生年金基金への天下りを調べたところ、
   厚生年金基金の約三分の二に当たる366基金に天下りしており、その時点で、国家公
   務員のOBは721人に上っていることがわかりました(2012年3月厚生労働省公
   表),

    基金のほうからすると、厚労省から役人を迎えているから大丈夫だと思っていたよう
   です。ところが、制度に欠陥がありましたので、多くの基金が結果的に破綻してしまい
      ました。天下りを受け入れたのに破綻してしまって、基金の人たちは困惑しました。
      天下った厚労省の役人たちも、制度の欠陥をよく知らないで天下っているので、破綻
   して驚いたのではないかと思います。天下った人たちは、石もて追われるような状態に
   なりました,

    かつては厚生年金基金の加入者は1000万人くらいいましたが、厚生年金基金が成
   り立だなくなり、多くの基金が解散をしたことで、確定給付企業年金などに移行してい
   ます。確定給付企業年金は、厚生年金の代行部分はなく、厚生年金とは分離されていま
   す。企業による純粋な私的年金です。

               第4章3節 天下り役人に食い物にされた「厚生年金基金」

   
                    「国民年金基金」も役人の天下りに利用された

    私が大蔵省にいたころ、厚生省のある役人が、「実は、国民年金についても、厚生年
   金基金と同じスキームで基金をつくりたい」と相談を持ちかけてきたことかあります。
    私は、一階部分の国民年金にしか入っていない自営業者などには、二階部分に相当す
   るものとして、民間の年金保険の保険料を全額控除にしてあげたらどうかと奨めました。

    保険料を所得から全額控除できるようにすれば、その分だけ所得税が安くなります。
    個人年金は「生命保険料控除」の晨高額が五万円(現在は四万円)でしたが、それを
   「社会保険料控除」の扱いで全額控除にしてあげれば、メリットが大きくなります。基
   金をつくらなくても民間の保険でも同じことができますので、あえて基金をつくる必要
   はないと思っていました。
    しかし、それでは厚生省にとって「うまみ」かおりません。基金をつくらないと天下
   りができないからです。その意図は、見え見えでした。
    国民年金基金は、一九九一年に制度が施行されました。都道府県ごとの地域型国民年
    金基金と、同種の事業による職能型国民年金基金があります。結局、地域型四七基金、
    職能型25基金の計72基金がつくられました。

    2012年時点で、厚労省は72の国民年金基金のうちの約9割の63基金に、厚労
   省と日本年金機構(社会保険庁)のOBが159人天下りしていたと公表しています。
    国民年金基金をつくった役人は、天下り先をたくさんつくったというわけです。皮肉
   を込めていえば、国民の老後ではなく、自分たちの老後の仕組みを考えていたのです。
    驚いたことに、私のところに「国民年金基金をつくりたい」と相談しにきた厚生省の
   役人は、その後、国会議員になりました。100人以上の天下り先をつくったのですか
   ら、役人にとっては大ヒット企画ですし、さぞかし厚生省の同僚から「よくやった」と
   熹ばれたのでしょう。役人は、天下り先をつくることに間しては、本当に知恵が働きま
   す。

    国民年金基金は、全額控除の考え方は取り入れています。それならば、基金をつくら
   なくても民間の年金保険を全額控除してあげれば、まったく同じことができたはずで
   す。民間の年金保険も、国民年金基金も、運用をしているのは信託銀行や投資顧問です
   から、運用に間しては同じです。
    民間の商品に悦の恩典を付けるだけでできるものを、あえて余計な組織をつくったの
   は、天下り先の確保のためでしょう。こうした役人たちのもくろみで、年金制度は食い
   物にされているのです,
    ただし、国民年金基金が厚生年金基金と決定的に運うのは、国民年金基金には代行部
   分はなく、国民年金と完全に切り離されている点です。したがって、どんなに運用に失
   敗しても、国民年金に穴が空くことはありません。
    私は、国民年金基金の話が持ち上がったときに、「厚生年金基金と同じ仕組みをつ
   くったら破綻する」と強く主張しました。それを間いてくれたのか、国に納める国民年
   金部分と、私的年金である国民年金基金は別立てになっています。
    保険料の納付先も、国民年金は日本年金機構ですが、国民年金基金は、それぞれの基
   金に納めます。

    《性質の迫う二つの基金》

    ・厚生年金基金――公的年金の「代行部分」あり
    ・国民年金基金――公的年金と分離

    繰り返しますが、厚生年金基金のように運う性質の保険を一体化させて運用すること
   は、困難なことです。国民年金基金の場合は独立していますから、厚生年金基金のよう
   な運用の複雑さはなく、制度の安定性は高くなっています。
    国民年金基金の加入員数は平成二十七年度末で約四2万7000人。全額社会保険料
   控除されるという税制の恩典かおりますから、貯蓄代わりに利用している人も多いよう
   です。

                      第4章4節 「国民年金基金」も役人の天下りに利用された

※  「厚生年金基金問題」についての指摘  厚生年金基金は年金制度を冒すガンである
                   (「金融財政事情」1994年11月21日号 より転載)

    11月14日号では、公的年金には財テク運用は不適であることを指摘した。今回は、現在の
   わが国年金制度の問題点として、実態は企業年金という私的年金でありながら、公的年金である
   厚生年金の一部を「代行」する制度を俎上に上す。

     運用問題が制度の欠陥を浮き彫りにする
     最近の報道によれば、日米金融協議がいよいよ佳境に入っているようである。


    官庁や業界の担当者は日夜大変であろうが、部外者からみると、意外に興味深いものが含まれ
   ている。その代表例は年金資産の運用問題である。
    といっても、本邦系対外資系、信託・生保対投資顧問(銀行・証券)といった内外業際問題で
   はなく、運用問題を媒介としてみた年金制度問題である。年金資産の運用のおり方を検討すると、
   年金制度問題の本質が浮彫りにされる(図8)。

   
    年金資産の運用問題において、おもなアメリカの要求は、各々の積立金の運用について、

   ①厚生年金では投資顧問会社を参入させよ(享年要求)、
   ②厚生年金基金では(すでに投資顧問会社が参入しているので)運用規制を緩和せよ享年基金要
    求)、
   ③適格年金でも投資顧問会社を参入させよ(通年要求)、
  という三点であると報じられている。
  「享年要求」については、本誌(11月14日号36ページ)において現在の厚生年金では適切な
  リスク管理が行われていないことなどから投資顧問による財テク運用には重大な問題があることを
  指摘した。
   そこで、ここでは、「享年基金要求」と「通年要求」を通じて厚生年金基金と適格年金という企
  業年金のおり方を論ずることにしたい,

   ところで、前回の議論の前提として、諸外国において、公的年金では制度の永続性によって受給
  権が保証されているので賦課方式〔給付の原資を現在の保険料で賄う方式〕をとり、積立金は少な
  く所得移転による世代間扶養(世代と世代を思いやりの心で給ぶこと)の投割に徹している。一方
  私的年金では積立金により将来の年金給付を確保する必要があるので積立方式〔給付の原資を過去
  の掛金の積立金とその運用収入で賄う方式〕を採用しているが、積立金は年金受給者各々の老後の
  給付に要する貯蓄の総計であるので、受給者の代わりに一括して運用することが重要になっている
  ことを紹介した。

   企業年金の本質は私的年金である

   しかし、日本では、厚生年金基金(サラリーマンの上乗せ年金)や国民年金基金(自営業者の上
  乗せ年金)について、それらは任意加入の積立方式で運営されながら「公的年金」と称されている。
  その証拠に、掛金の税制上の取扱いは社会保険料控除の対象とされ、テレビコマーシヤルでも有名
  女優が「公的年金ですからお得」と加入を呼びかけている。しかしながら、それらは、いずれも任
  意加入で積立方式により自分の掛金で自分の老後をみる自助努力であるが世代間扶養の役割はない。
  このため、諸外国の基準からみれば「私的年金」といわざるをえない。なぜ、「公的」と称されて
  いるかといえば、それらが単に官製の制度であるからにほかならない。まずこの点を指摘しておき
  たい。

   また、周知のとおり、適格年金は任意加入でその財政運営は積立方式となっている。
   したがって、厚生年金基金と適格年金のいずれも、世代間扶養の役割はなく、自助努力により自
  分の老後のために自分の掛金を積み立て、その運用が不可欠な要素となっていることから、「私的
   年金」であるといってもよいであろう(ただし、厚生年金基金の代行部分を除く),
   私的年金の積立金について、効率的な運用が必要であるため投資顧問会社の参入など運用委託先
  の多様化を図ることや自己責任に基づき運用を行うために運用規制を緩和することは基本的な方向
  として正しい。とりわけ、適格年金は私的な上乗せ年金としては世界中で採用されている標準的な
    スキームであり、運用委託先の多様化や運用規制の緩和をぜひとも推進すべきである。

   厚年基金の代行制度は一元化に反する

   ただし、厚生年金基金には、この考え方をストレートに適用できない事情かおる。
   それは、厚生年金基金の代行制度である。つまり、厚生年金基金は、厚生年金の老齢年金給付を
  政府に代わって行い(代行)、さらにそれ以上(三割以上)の上乗せ給付を行う目的で設立されて
  いる。この結果、厚生年金基金の加人員は、厚生年金基金が代行している老齢年金給付に相当する
  保険料を政府に納めないで、その保険料を含む掛金を厚生年金基金に払い込むこととなり、その積
  立金の一部は厚生年金の資金ともいえるのである。

   そもそも、この代行制度は、年金専門家から財政運営が技術的に困難であるなどの問題点が指摘
  されており、世界中でもイギリスを除き採用されていないきわめて特殊な制度である。また、日本
  では、なぜ代行制度が必要であるのか、これまでまともに議論されたこともなく、その理由は必ず
  しも明確ではない。しかるに、現行の代行制度は、次のような現実問題を抱えている。
   まず第一に、代行制度は公的年金制度の一元化に反する。つまり、代行部分の保険料は本来厚生
  年金の給付のための原資となって世代間扶養のために使われるべきものであるが、代行制度のため
  脱漏してしまう。
   一方、各種の公的年金制度全体を長期的に安定化させるために、年金制度間調整などを行いつつ、
  199年をメドに年金制度の一元化が進められている。ところが、今後代行制度による脱漏額は巨
  額になることが予想され、この一元化の足かせとなりかねない。たとえば、1994年財政再計算
  による厚生年金の財政見通しや今後の厚生年金基金残高の伸びを一定(13%程度)と見込み、代
  行部分をその半分して、将来の姿を試算すれば、あと20年程度で厚生年金の本体分の積立金はほ
  とんどなくなる(図9)。

 

    なお、20年後における企業年金残高と公的年金残高の比率、つまり厚生年金基金残高(代行
   部分を除く)と適格年金残高(厚生年金基金の代行部分と同じと仮定する)の合計と厚生年金残
   高(代行部分を含む)の比率はI・九程度であるが、これは現在のアメリカにおける企業年金残
   高と公的年金残高の比率とほぼ同じであり、この試算の妥当性を示すものといえよう。

      厚生年金本体の財政を悪化させる

    第二に、代行制度はいわゆる逆選択を生じさせ、厚生年金本体に悪影響を与える。厚生年金基
   金を設立した場合、政府に納めないですむ保険料を免除保険料というが、免除保険料でより有利
   な給付が可能になることがある。これはいわゆる代行メリットといわれ、一般的には年齢構成の
   若い加入者を有する企業が享受することが多い。このような企業は、厚生年金基金を設立し、代
   行部分は厚生年金本体から抜け落ちる。
    この結果、厚生年金の本来の役割である世代間扶養に振り向けられる資金は減少するのみなら
   ず、抜け落ちた代行部分の代行メリットは、厚生年金本体のデメリットとなり、その財政を悪化
   させる。

    第三に、厚生年金基金の事務管理費が高いことである。その理由は、代行事務かおるからであ
   るといわれているが、このような社会保険事務は、個々の厚生年金基金でバラバラに行うより、
   すべて国等の窓口で一元的に行うほうが効率的である。 

    第四に、厚生年金基金に係る資産運用制度や税制上の優遇である。厚生年金基金は、官製の制
   度であるがゆえに、これまで多くの税制上の優遇を受けてきた。もっとも、最近、適格年金に対
   する税制が改正され、一定の適格年金については、厚生年金基金と同様に代行給付の2・7倍相
   当額まで特別法人税が免除されているので、厚生年金基金と適格年金の差はかなり少なくなって
   いる。
    しかし、資産運用面では、厚生年金基金について、信託・生保による運用のほか、残高の三分
   の一までではあるものの、投資顧問会社による運用が可能である。一方、適格年金については、
   信託・生保による運用のみで投資顧問会社による運用は認められていない。諸外国では、企業年
   金といえば適格年金をいい、その積立金の運用は投資顧問会社に最もふさわしいものとされて
   いる,                                   (日野利一)

                                                            この項つづく

  ● 今夜の技術

強誘電体]など空間反転対称性の破れた結晶構造を持つ物質は、p-n接合を形成しなくても光起電力が発
生することが知られていた。この光起電力は、シフト電流と呼ばれる量子力学的な光電流発生機構で生
じることが近年理論的に提案されている。シフト電流は、エネルギー散逸がほとんどない電流で、光電
変換効率の大幅な向上につながる可能性がある。しかし、シフト電流である明確な証拠は実験的に得ら
れておらず、実証に適した物質系も不明なままだった。東大などの研究グループは、今月21日、この
シフト電流=量子力学的な光電流の発生を、有機分子性結晶のtetrathiafulvalene-p-chloranil(TTF-CA)で
実証できたことを公表する。このことで異なる光照射条件でも駆動する環境発電デバイスなどへの応用
につながるというのだ。途方もない幾何級数的(exponentially)な科学進歩の社会に改めて驚かされる
と同時に、大きな溜め息をついている。


   


小形雀蜂退治

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  晋からの亡命者:一方、楚の共王は兵車の上に組んだ櫓に登って晋軍の働きを
       観察した。子重が大宰(官名)の伯州犁(晋の伯宗の子、前年楚に亡命して来
       た)に、解説役を命じた。かれは共王の後に付き、質問に答え、晋軍の行動を
       逐一説明する。

       「馬に乗っていそがしく動きまわっているのは」
       「士官を召果しているのです」
       「おや、中軍に人が集まって来たぞ」
       「作戦を立てるためです」
       「こんどは、幕を張っている」
       「祖先の言にト(うらな)いを立てるのです」
       「幕をとりはらったが」
       「これから命令を下すのです」
       「何回かいやに騒がしくなってきた。土煙までたちのぼってきたが」
       「井戸を埋め、かまどをとりこわしているからです」
       「みな車に乗ったな。武器をとっこ。おや、御者だけ残してみな降りてしまったが」
       「出陣の誓いをたてるのです」
       「では、いよいよ米るのか」
       「いいえ、まだです」
       「みな車に乗ったな。……今度も御者だけ残して降りてしまった」
       「行使はいよいよ出陣の祈りです」

        このように伯州犁は晋軍の様子を王に教えた。

 

 ● 京都・福井・滋賀 警戒レベル5の要注視!

 

   

 【DIY日誌:コガタスズメバチ駆除Ⅰ】

 Vespa analis


       白藤の花にむらがる蜂の音あゆみさかりてその音はなし  佐藤佐太郎

8月22日(火)、午後、コガタスズメバチが2階玄関上の軒下からコガタスズメバチが出入りしてい
る騒ぐ。女王蜂が出入りしていることを現認。アヤハ南彦根店で専用殺虫剤スプレーと瞬間凍結スプレ
ーを購入し2階に駆け上がり、風上から蜂たち出入りする箇所に二つのを噴霧、気がついた蜂たち飛び
出してくる(おとなしいく攻撃する様子がない)。10分すると飛び出し飛散する蜂もいなくなり手探
り開口部を確認し、壁と軒棟の開口に殺虫剤を噴霧。羽音が騒がしくなり直に静かになる。雷と共に雨
が降り出しスプレーがなくなったので、一旦部屋に待避。彼女が買ってきたスプレー二本が届いたので
作業再開。飛散する蜂も見あたらなくなり、”二丁拳銃連射”の作業をやめる。程なく、専門業者が訪
問。壁との隙間に巣作りが残っているので、開口して排除する必要があると言い、後日作業見積書を提
出すると言い残し帰る。23日(水)夕暮れ前、1階の天板の一部から衰弱した蜂が這い出してきたと
騒ぐので、殺虫剤を天板海溝部から噴霧しガムテープで仮封止を施す。明日(24日)に業者が来る予
定。


           

 ● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

      第5章 利権の温床GPIFは不必要かつ大間違い 

          第1節 年金積立金の「運用損失」五兆円の何か問題か

    2016年、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人、旧年金福祉事業団)の問
   題がメディアでよく取り上げられました,
    GPIFとは、そのホームページの説明によれば「厚生労働大臣から寄託された年金
   積立金の管理及び運用を行なうとともに、その収益を年金特別会計に納付することによ
   り、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的としている」
   組織です,つまり、国民年金・厚生年金の年金積立金を運用する組織です。
    年金積立金とは何か、そして、それをどのように運用するのか。それについてGPI
   Fは次のように解説しています。

    《日本の公的年金制度(厚生年金保険及び国民年金)は、基本的には、サラリーマン、
   自営業者などの現役世代が保険料を支払い、その保険料で高齢者世代に年金を給付する
   という「世代間扶養」の仕組みとなっています。つまり、現在価いている世代の人達が
   受け取る年金は、その子ども遠の世代が負担することになります(自分が積み立てた保
   険料が将来年金として戻ってくる仕組みではありません),
    しかしながら、日本は、少子高齢化が急激に進んでいます。現在価いている世代の人
   達の保険料のみで年金を給付すると、将来世代の負担が大きくなってしまいます。そこ
   で、保険料のうち年金の支払い等に充てられなかったものを年金積立金として積み立て
   ています,この積立金を市場で運用し、その運用収入を年金給付に活用することによっ
   て、将来世代の保険料負担が大きくならないようにしています。なお、年金積立金の運
   用にあたってば、「長期的な観点から安全かつ効率的に運用」することを心がけていま
   す。

    そのGPIFがニュースで騒がれたのは、「安全かつ効率的に運用」するとうたって
   いるのに、2015年度に5兆円を超える運用損失を出したからでした。
    実はGPIFは、2014年10月に運用基準を見直し、国債など国内債券の比率を
   60%から35%に引き下げ、株式投資(外国株を含む)の比率を24%から50%に
   引き上げていました。しかし、基準見直し後の2015年には株安となってしまいまし
   た。それで、2015年度の運用損失が五兆円を超えてしまったのです。
    これに対して、民進党が批判を繰り広げました。ところが、民進党の指摘はまったく
   レベルの低いものでした。株安によって起こった一時的な運用利回りの低下だけを捉え
   て、「5兆円も損失が出ている」という批判を繰り返すだけだったからです。
    株式で運用していれば、株価が上がれば運用益が出ますし、株価が下がれば運用損が
   出ます。そもそも、民主党政権のときには運用利回りが低く、安倍政権になってから大
   幅に運用益を伸ばしました。それが一時的に下がっただけです。なんと5兆円下がって
   も、民主党政権のときよりも、トータルでは収益を取れている計算になるのです(図7
   参照)。

    にもかかわらず民進党は、「年金損失5兆円追及チーム」なるものまでつくりまし
   た。しかし、その後、また株価が上昇し、収支が好転しました。すると民進党は、ほと
   んど批判しなくなりました。
    短期的な運用利回りの低下を捉えて批判するのは、まったくの無意味であることは、
   少し考えただけでわかりそうなものです。目先の数字だけを捉えて批判するから、民進
   党は「経済音痴」といわれるのでしょう。GPIFの運用損失を持ち出して、たんに政
   府を批判したかっただけではないかと思います。
    もし、本気で批判をしたいのであれば、「GPIFの存在そのもの」を問題にするべ
   きでしたが、民進党は、それはしませんでした。
    民進党はGPIFが不要だとは考えていないようです。民主党政権時代に、当時の原
   ロー博総務大臣が株や外債などへの積極運用を求め、長妻昭厚生労働大臣が国情での安
   全運用を主張したことかありました。どちらも、GPIFの存在を前提にした議論でし
   た。私は民主党政権に対して「GPIFの廃止」を提言しましたが、即座に反対されま
   した。
    5兆円の運用損失を批判した際の民進党の主張も、「損失が拡大したのは、運用基準
   を見直しだのが悪い」というものした。その対処法として、GPIFの廃止ではなく、
   運用基準を元に戻せといっていただけです,
    私は、GPIFそのものに根本的欠陥かおり、GPIFは不要だと考えています。


        第2節 インフレヘッジされた公的年金に「株式運用」はまったく不要

    日本の年金制度は、昭和36年に国民皆年金になりました。それ以前は皆年金では
   ありませんでしたが、厚生年金制度かおり、積立方式で行なわれていました。自分が積
   み立てた分を受け取る方式です。
    ところが、急激なインフレが発生したため、給付が厳しくなりました(どうして急激
   なインフレが発生したかは、ぜひPHP新書の拙著「戦後経済史は嘘ばかり」をご一読
   ください)。積立方式はインフレに弱い方式です。そこで、積立方式を修正し、将来世
   代につけ回すことによって、当時の老齢世代への給付を増やすようにしました。部分的
   に事実上の賦課方式が取り入れられた状態です。
    その後、昭和36年に国民皆年金の仕組みにして、全員が年金に入りましたが、
   「今まで積み立てていない人には払いません」というわけにはいきませんでした。すべ
   ての老齢世代の人に年金が給付されることになり、現役世代の保険料を老齢世代の給付
   に充てる賦課方式が主体となりました。
    ただ、制度が未成熟なうちは、給付を上回る保険料を課して「積立金」を持ち、運用
   収入を得て、制度が成熟するにつれて徐々に賦課方式に移行する方式がとられました。
    この「積立金」を巡って、金融機関が財テクビジネスにつながると目を付けました。
   これが、GPIFの積立金運用問題につながっています。
 
    私が大蔵省にいた1990年代には、積立金の額はこ一五兆円くらいになっていまし
   た。年金積立金は厚生省から大蔵省の資金運用部に預けられました。このうち100兆
   円は国債の金利で運用され、残りの二五兆円は厚生省の特殊法人・年金福祉事業団(現
   GPIF)に貸し付けされて、市場運用されていました。
    厚生省に貸し付けるわけですから、形式としては財政投融資事業です。厚生省は、大
   蔵省の国債金利での運用よりも高い運用利回りを出すことが必要でした。もちろん、実
   際に運用するのは、年金福祉事業団から委託された金融機関です。
    当時の大蔵省理財局長は、「なぜ、年金運用を株式でしなければいけないのか」と、
   非常にシンプルな疑問を我々職員に投げかけてきました(この局長は、あの「火砕流」
   といわれた人です)。誰も考えたことがなかったので、多くの職員は「えっ、それは当
   たり前でしょ」という反応でした。

    私は、こういう質問を突き詰めて考えるのが好きなので、年金のバランスシートをつ
   くって考えました,

    左側の「資産」の欄には積み立てられた保険料と運用資産を書きました。右側の「負
   債」の欄には、約束した年金の支払い(債務)を書きました。
    通常、年金給付は物価スライドの仕組みを入れています。インフレが進んだときに
   は、年金給付額を増やしてあげないと、お金が目減りしていて受給者は生活できなくな
   ります。したがって、インフレが進んだときには「負債」が膨らみます。
    右側の「負債」が膨らむのであれば、それに合わせて、左側の「資産」を増やさなけ
      ればなりません。バランスするようにしないと、債務超過になってしまい、年金を給付
      できなくなります。
       左側の「資産」は、インフレに備えて運用する必要が出てきます。債券と株のどちら
      がインフレに強いかというと、株のほうが少し強いことがわかっています。だから、株
      式を待つ必要がある、という結論です。これが「積立方式の年金がなぜ株を待つ必要か
      おるのか」という理論的基礎です。インフレに備えて積立金を株で運用するのです。
       次に、日本の公的年金のバランスシートを考えました。日本の公的年金は、賦課方式
      ですから、たとえば、第二章に掲載したようなづフンスシート(下図5)になります,
   積立金      は一割未満で、九割以上は将来にわたって徴収する保険料です。



    完全な賦課方式のバランスシートの場合は、「資産」の将来保険料と「負債」の将来
   給付が一致します。将来の給付額はインフレによって上がりますが、将来集める保険料
   もインフレに連動して上がります。ですから、インフレヘッジをする必要かおりません。
    つまり、「賦課方式の場合、株式で運用する必要はない。株式で運用する必要がない
   のは、将来保険料が入ってくるから」という結論になります。
    この話を理財局長にしたところ、「目からウロコだ」といって喜んでいました。

    《株式運用が必要か》

    ・積立方式↓インフレヘッジのために株式運用必要
    ・賦課方式↓インフレヘッジされているから株式運用不要

    こうした内容をペンネームで雑誌に書いたため、私が書いたことがほぼバレてしまい
   ましたが、もちろん私は「知りません」といい続けました。
    GPIFについての結論をいえば、「賦課方式では積立金は必要ない。せいぜい流動
   性確保のために10兆円程度の積立金があれば運営できる。したがって、GPIFは不
   要」です。
    積立金がゼロならば、運用リスクゼロです。積立金を集めたとしても、その年金の運
   用をするのであれば、年金制度の根幹である「安心・安全」が最優先です。運用する必
   要のない積立金を集めて、しかも株式で運用するのはまったく間違った考え方です。

       第3節 許認可や税制を決める政府が、民間企業の株を買っていいのか?

    1998年から、私はアメリカのプリンストン大学に留学し、日本経済などを教えて
   いました。英語はあまり得意ではありませんので言語障壁の少ない数学や年金数理を
   使って、年金の講義をしていました。
    当時、アメリカ政府の関係者から日本の年金積立金の運用を教えてほしいと依頼があ
   りました。「アメリカも日本と同じように運用をしたいと思うが、どう思うか?」と聞
   かれたので、即座に「ノー」と答えました。
    アメリカの年金制度は、老齢・遺族・障害保険( OASDI:01d,‐Age, Survivors, and Dis-
     ability lnsurance)  が積立金を持っていましたが、すべて非市場性国債引き受けで、市場運用
   はしていませんでした。
    日本の場合は、GPIFの前身の年金福祉事業団が積立金を市場運用していました。
    運用方法は、複数の民間金融機関への運用委託。言い換えれば「丸投げ」です。
    私は公的年金の市場運用ほど、国が行なう事業として不適切なものはないと考えてい
   ました。国が国民から強制徴収したお金を、民間金融機関に丸投げして、国民に代わっ
   て財テクをする必要はありません。年金は安全運用すべきものです。積極運用したい国
   民がいれば、自分自身で財テクをすればいいのです。
    私はアメリカ政府関係者に、市場での運用はしないほうがいいと伝えました。そうこ
   うしているうちに、当時のクリントン大統領が公的年金の株式運用を発表しました。
    ところが、グリーンスパンFRB議長をけじめとして、市場運用への反対論が相次い
   だため、クリントン大統領は、あっさりと提案を徴回しました。
    グリーンスパン議長の言い分は明快でした。私が主張したような「政府の活動として
   市場運用は不適切だ」という一般論に加えて、次のような論理を展開しました。

    「政府は健康のためにタバコ会社に対して厳しい措置をしなければいけないが、その
   ときに、公的年金でタバコ会社株を持っていたらどうするのか」
    とてもわかりやすく、インパクトのある論理です。

    もし政府が、公的年金の株式運用を気にしてタバコ会社への厳しい措置をためらった
   ら大問題ですし、逆に、タバコ会社に厳しい措置を取ることを公表する前に公的年金の
   タバコ株を売ったらインサイダー取引になってしまいます。
    日本の運用関係者は、「情報の遮断をしている」とか「個別株ではなくインデックス
   運用をしているから問題はない」といいます。しかし、2009年の予算編成期に厚労
   省が、たばこ税の大幅アップを主張したときに、JT株が15%くらい低下したことか
   あります。大幅なたばこ税の増税にはなりませんでしたので、株価は戻りましたが、株
   価が下がれば、JT株を持っている年金は運用損失が発生するところでした。運用損失
   を出さないために、たばこ税増税を見送るということになれば、政策がゆがめられてし
   まいます。公的年金の積立金を政府が運用すべきではないのです。

        第4節 一般国民の年金を株で運用している国はほとんどない
      
    1986年ごろの日本は「財テクブーム」でした。その財テクブームに乗じて、政府
   は年金資金を市場運用する方向へと転じました。年金資金の運用を行なったのが、厚生
   事務次官の天下り指定席であった年金福祉事業団です。「官の財テク」として1986
   年度からスタートし、2000年度まで財政投融資の中で行なわれていました。
    年金福祉事業団は、ありあまるほどの金を使うことから、「満腹事業団」と郵楡され
   ていました。ちなみに、巨額の年金資金をつぎ込み、各地でリゾート施設をつくり、不
   良積権化させたグリーンピア事業も年金福祉事業団の仕事でした。
    国会では、当時の厚生省年金局長が「1・5%の利差稼ぎ」と豪語していました。と
   ころが、2000年度までの財テク事業の最終的な収支は、累積損失約2兆円。官の財
   テクの運用実績は上がりませんでした。しかし、グリーンピア事業と同じく、誰も責任
   を取っていません。

    2001年度からは、厚労省の責任で資金運用される方式になり、2006年からは
   GPIFと名を変えましたが、「官の財テク」としての性格は変わっていません。
    いうまでもないことですが、官僚には自前で運用する能力などありませんので、民間
   金融機関への「丸投げ」です。

    民間金融機関としては、巨額の運用資金を獲得できます。100兆円を超える資産を
   運用し、その信託報酬をI%得られるとしたら、金融機関には1000億円が転がり込
   むおいしいビジネスです。実際、業界では「カ予不ギ」とまでいわれていたとか。今で
   はそれはどの報副はないのですが、公的年金資金を運用しているというステータスで、
   他の業者の売買を誘発できるので、受託金融機関はそれなりに儲かっています。
    では、海外ではどうなっているのか。一般国民に対する公的年金で、市場運用をして
   いる国は多くはありません。
    2008年の経済財政諮問会議に提出された資料では、積立金の割合が多い国の中
   で、カナダ(積立金万12兆円、以下カッコ内は積立金額)、スウェーデン(15兆円)
   が株式投資比率の高い国となています。

    積立金が多い国の中でも、日本(149兆円)は株式投資比率の高くない国、アメリ
   カ(244兆円)は、市場運用をしていない国です。イギリス、フランス、ドイツは、
   そもそも積立金の少ない国です。
    同会議の有識者資料では、ほかに市場運用を行なっている国として、ノルウェー政府
   年金基金(36兆円)、オランダ公務員総合年金基金(34兆円)、アイルランド国民
   年金積立基金(3兆円)が挙げられています。
    ノルウェーの場合は、石油収入かおり、石油収入を将来の年金財源にしようとしてい
   るのであって、国民から強制徴収したお金を財テクすろのとは意味が追っています。ま
   た、オランダは公務員の年金であって一般国民の年金ではありません。アイルランドの
   場合は、積立金の規模が少額です。
    公的年金の市場運用の例としてよく持ち出されるのは、カルパース(カリフォルニア
   州職員退職年金基金)です。カルパースは、国の年金ではなく、州の年金です。しか
   も、州公務員の年金であって、州民が加入している年金ではありません。「公的機関」
   の年金は、すべて「公的年金」と考えられがちですが、それは間違いです。
    各国の例を見るかぎり、国レベルで一般国民の年金を市場運用している国はほとんど
   ないことがわかります。


            第5節  民間レベルのリスク管理すらできていないGPIF

    賦課方式の年金は、子供の世代が親の世代に仕送りをするものとしてたとえられま
    す。このたとえを使えば、GPIFのしていることは、財テクして増やしてから仕送り
      をすることです,
    子供が「10万円を仕送りしようと思うけど、まず、10万円を財テクで増やしてか
   ら仕送りするよ」と親にいっているようなものです。このロジックは、もっと極端な言
   い方をすれば、こうなるでしょう。
   「10万円を仕送りする前に、株でパーツと儲けて、倍にして送ってあげるよ」
   ほとんどの親御さんは、そういう子供を叱るか、苦言を呈するのではないでしょうか。
   財テクをしてお金が増えればいいですが、仕送りする前に減ってしまう可能性もあるか
   らです。そんなことで虎の子の資金がなくなってしまったら一大事です。

    これは国民の誰もがわかる論理だと思うのですが、なぜかGPIFは、運用リスクの
   認識が不十分です。
    通常は、年金保険を運用するときには、年金ALM(資産負債総合管理)というもの
   でリスク管理をします。仮に運用損失が出るとしても、「リスク許容バッファー」の範
   囲内に収まるようにする必要があります。
   前列の図5のように、バランスシートの左側に資産、右側に負債を書き、資産が負債
   を上回る状態でないと、年金を支払えなくなります。
    積立方式の私的年金の場合は、支払う年金債務(負債)よりも、積立金(資産)のほ
   うが少し多くなるようにしています。その差額が「リスク許容バッファー」であり、仮
   に運用に失敗して損失を出したとしても、この範囲内に収まるようにリスク管理をしま
   す。損失が許容範囲内に収まれば、年金を支払えなくなることはありません。

    これは、年金ALMの常識として知られていて、アメリカ企業会計FASB87号(年
   金会計)や生保のソルベンシーマージン(支払余力)の考え方です。
    日本の厚生年金のバランスシート(図5参照)は、資産と負債が一致しています。こ
   れはリスク許容バッファーが存在しないということです。保険料をギリギリまで低く抑
   えた結果ともいえます。
    厚生年金のバランスシートには、リスク許容バッファーがないのですから、市場リス
   クを取る余地はありません,
    結論として、「厚生年金では、積立金の市場運用が不要であり、そのために積立金を
   保有する必要がない。GPIFは不要」ということになります。


昨日も掲載したように、今体験していることと流布されている言説は、付和雷同せず、すべて懐疑して
おく必要がある。従って、「愚図にあやかり」(内村剛介)の物言いに従っていくことにする。ここは
自分を信じ、最後まで熟っくりと読み進めていくことにしよう。それにしても、この著者の『戦後経済
史は嘘ばかり』を早く読みたいという衝動に駆られているが。

                                       この項つづく

 



【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅳ】

  August 23, 2017


❏ 139カ国の百パーセント再生可能エネルギーロードマット/2050

・139カ国の「風力+水力+太陽光」の百%クリーンで再生可能エネルギー
・1.5℃の地球温暖化と大気汚染死亡者(数百万人)の回避
・社会的エネルギーコスト削減と2430万人の雇用創出
・停電事故を削減するとともに世界的なエネルギーアクセス増を実現

100%の再生可能エネルギーの将来への最新ロードマップは、すべてのエネルギーセクターの電化の後、
2050年までに139カ国が風力、水力、太陽光によって完全に動力を与えられるインフラストラクチャー
の変化を概説しています。そのような移行は、清潔で再生可能な電力の効率のために世界的なエネルギ
ー消費が少なくなることを意味し、2400万人以上の長期雇用の正味増加をもたらすと言う(How 139 co-
untries could be powered by 100 percent wind, water, and solar energy by 2050。Cell Press、August 23, 2017)。

❏ バクテリアをサイボーグ化、光と二酸化炭素から酢酸を高効率に生成

8月22日、米国化学学会は、バクテリアに光合成の機能を付加することで、光と二酸化炭素(から高
効率に酢酸を合成することに成功したことを公表。この人工光合成の標準太陽光(AM1.5G)に対する量
子効率は、2.0~2.5%。植物の多くは太陽光に対する光合成の量子効率が0.2~1.6%であるため、植物
を大きく超える効率を実現できたとする。光合成機能付加に利用するカドミウム(Cd)を環境に優しい
材料で代替できれば、バイオ燃料、または人工光合成の利用にとってブレークスルーとなる。

   

発電するソーラーメガネ

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  南国の勢力衰焉 : 晋軍のほうも、厲公のかたわらに楚からの亡命苗賁皇(びょ
       うふんこ)が付いて、楚車の様子を教えた。晋軍の兵士の間では、戦の前途に悲
       観的見方をとる者が多かった。楚軍には行の内情にくわしい伯州犂付いているう
              え、兵力も優勢であるという理由からであった。だが、苗賁皇の見方はちがって
              いた。かれは厲公に言った。「楚軍の精鋭は中軍の親兵だけです。こちらの精鋭
       を二手に分けて、敵の左右を撃ち、残りの軍勢が総がかりで中軍を雨けば、犬勝
       利を収めるにちがいありません」厲公、さっそく占いを立てさせた。占師が報告
       する。「吉です。復の卦☷☳で”南国の勢力衰う。王を射てその目を当つ”と出
       ました。楚の勢力が弱まり、その王が傷つく、という意味です。わが軍の勝利に
       まちがいありません」そこで、厲公は苗賁皇の意見に従うことにした。

        〈雨国の勢力……〉 復の卦は、たらこめる陰の気(五本の陰爻)の中に隔の
        気(初陽)からきざしはじめる、の意。ここに記されていろ卦辞は『周易』に
        は見られない。

  apple watch series-2

 No.54

【エネルギータイリング事業篇:発電するソーラーメガネ】Jun. 6, 2017

♞ モバイルアプリケーション用有機半導体型太陽電池

8月2日、カールスルーエ工科大学の研究グループは、サングラスのレンズに半透明な有機半導体型太
陽電池の実装成果を報告している。これは、レンズが取り付けた太陽電池で温度/照度センサを読み取
り作動する「ソーラーメガネ」をテンプルに組み込んだディスプレイ及びマイクロ電子回路の2つを実
装、屋内/屋外の拡散光で 500ルクス未満の照明強度で作動する有機太陽電池を活用したモバイルアプ
リケーション向け自己統合型太陽電池実装サングラスである。

さて、このよう薄膜・軽量・フレキシブルな有機半導体系太陽電池やキャパシター(電気二重層コンデ
ンサ)など電子デバイスを衣服類やプラスチック製品に織り込んだ機能性ウェアラブル(装着型のコン
ピューター搭載機器)のスマートフォンやタブレット、パソコンの普及・進化してきているが、これら
の電源は小型蓄電池などを使用するが、充電/交換する手間が面倒であり、大きくて重い蓄電池は敬遠
される。そこで、太陽電池なら高性能の超小型のコンデンサ部品を併載すれば問題解決できる。そこで
エネルギータイリング事業のソーラータイルには「ウェアラブル・タイリング事業」として「サングラ
ス・眼鏡」はその対象となる。


 DOI: 10.1002/ente.201700226

図4.(a)ガラス基板と封止ガラスとの間に挟まれた有機太陽電池を有する太陽ガラス組立体図
   (b)異なる照度スペクトルおよび強度で測定された典型的なレンズ取り付け太陽電池の出力パワ
      ー:屋内照明を表すASTM AM1.5Gスペクトルおよび人工室内照明をシミュレートする白色
      光LEDスペクトル
      (c)レンズ付き太陽電池の代表的な透過スペクトルと写真

● 太陽光発電するソーラーメガネ

❏ マイクロプロセッサに電力供給する眼鏡の半透明有機太陽電池、
            将来の太陽光発電のモバイルアプリケーション事例研究

【概要】 

有機太陽電池は、柔軟性、透明性、軽量性があり、任意の形状や色で製造できる。従って、それらは、
従来のシリコン太陽電池では実現できない様々な用途に適す。現在、 KIT  の研究グループは、マイクロ
プロセッサーと2つのディスプレイに電力を供給するレンズに色付き半透明太陽電池の装着サングラス
を展示している。これは、有機太陽電池を窓や貼り合わせ統合するなど、将来の他の用途――ファサー
ドとウィンドウの統合、モバイル家電やスマートウェアラブルに至るまでの市場――への道を開くもの
建物向けには、変換効率は勿論のこと、意匠、防災、耐久などの高いハードルが残件する。また、製造
プロセスは、ロールツーロールなどの印刷/塗布処理で、エネルギー回収時間の短縮、、低コスト生が
を可能となる。この研究では、溶液処理された半透明有機太陽電池のスマートサングラスへの統合につ
いての報告である(以降、「ソーラーメガネと呼称」)。2つの半透明太陽電池をレンズに組み込み、
小さな信号処理ユニットに電力を供給し、常時周囲温度と太陽照度の情報を2個のディスプレイへ提供
するというもの。

信号処理ユニットとディスプレイは、ソーラーガラスのテンプル(眼鏡フレーム)に組み込む。アプリ
ケーションは、低光度と低電力を前提としたバッテリーを使用し、特定強度の有機太陽電池を活用。ソ
ーラーメガネは太陽光エネルギー源として完全に自己給電する。明るい日差し、低照度(屋内)、斜光入射、
直射光、拡散光で動作できるように設計する。

【結果及び考察】

材料の選択にあたっては、2つのフラーレンを含む3元ブレンド――polymer PBTZT-stat-BDTT-8/ fulle-
renes [6,6]-phenyl C61-butyric acid methyl ester (PC61BM)/[6 ,6]-phenyl C71-butyriand [6c acid methyl ester
(PC71BM) (1.0:2.7:0.3 w/w/w) は、有機太陽電池の電力変換効率(PCE)および熱安定性で優れている。
それはまた、250nmを超える厚さの吸収層を大規模に堆積するのに適し、装置の性能または安定性に有
害な影響を与えることなく常圧処理できる。さたに、吸収剤ブレンドを、溶媒o-キシレンと共溶媒p-ア
ニスアルデヒドとの混合物――有毒なハロゲン化溶媒の速乾の代替物――で溶解処理形成する(下図1
参照)。


図1.(a)PBTZT-stat-BDTT-8、PC61BM、およびPC71BMの化学構造ならびに半透明太陽電池の(反転し
     た)デバイス構造
   (b)不透明なMoOx / Ag(光活性領域:0.105cm2)または透明PEDOT:PSS(光活性領域:0.24 cm2、
      (c)上部電極を含む太陽電池のJ-V曲線

(ZnO)/ PBTZT-stat-BDTT-8:PC61BM:PC71BM /酸化モリブデン(MoOx)/銀(Ag)を用いた不透明参
照太陽電池を、素子構造および0.105cm 2のかなり小さな光活性面積を有し、Jsc = 14.2mAcm-2    の短絡電
流密度、VOC = 757mVの開放電圧、FF = 70%の充填率、および結果として得られるPCE = 7.4 %。次に、
不透明 MoOx / Ag電極を溶液処理された透明導電性ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(
スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)層で置き換え、技術的理由から、太陽電池の光活性領域を0.24
cm 2。 反射電極の欠如およびポリマー電極の増加した直列抵抗にもかかわらず、半透明デバイスはPCE
= 4.8%(Jsc = 12.2mAcm-2、VOC = 756V、FF = 52%)を示した。 最適化された不透明および透明太陽
電池の典型的な電流密度 - 電圧(J-V)曲線を図1bに示す。 ITO電極を通した照明下のそれぞれの光起
電力性能データ(Jsc、VOC、FF、およびPCE)を表1に要約する。

さまざまな照明設定でのパフォーマンス:Performance at various illumination settings

半透明基準デバイスはまた、調査されたデバイスコンセプトの低光性能に関する最初の研究にも使用さ
れた。持続的な電力供給を達成し、低照度性能を達成する自己給電ソーラーメガネは、遮光k時間ロス
を埋めるため蓄電池を設置していない。ASTM AM 1.5Gスペクトル分布で照明下で得られた半透明太陽
電池の強度依存性性能データ(Jsc、Voc、FF、PCE)を下図3に示す。 0.01太陽の照射強度の太陽電池の
PCEは、FFの増加および対数的に減少するVocのために、1太陽の下でのPCEと同等またはそれ以上で
ある。半透明太陽電池のPCEは最大約6%に達する。FFはVocの急速な低下に伴い25%に近づき、両
方の現象がシャント抵抗によるデバイス性能の制限を反映する。



図3.照射強度(0.24cm 2、ITO電極を通して照射)に対する半透明有機太陽電池の性能。0.01太陽まで
   の照度では、PCEは、主として強化されたFFおよびゆっくりと減少するVocに続いて、1日照明下
   でPCEを超える。

レンズ付き太陽電池:Lens-fitted solar cells

上記の考察に基づいて、太陽電池製造プロセスを拡大し、標準電極を置き換えて、ITO電極が外
側を向くように太陽電池のシャーシに半透明の太陽電池を搭載する(最上図4a)。より大きい基材
(17.8cm 2)をレンズ枠に適合させるように成形し、エネルギー収穫の基材面積の約90%を使用し
て光活性領域を150〜15.5cm 2の割合で増加する。レンズの丸い形状のために、スピンコーティン
グを層堆積のために使用し、基板の全領域にわたって均質なコーティングを得た。吸収体層およ
びポリマー対向電極の厚さはそれぞれ300nmおよび150nmに設定され、AVT = 24%の平均可視
透過率が得る。小規模の基準デバイスとは対照的に、カプセル化されたサンプルボリューム内の
酸素または水分含有物を避けるために、窒素雰囲気下でレンズ付き太陽電池を製造することに
留意。

さまざまな照明条件下でレンズ付き太陽電池の性能を調べるために、調整可能な出力スペクトル
と強度を備えた26チャンネルのLED(発光ダイオード)ソーラーシミュレーターを採用。屋外の状況
をシミュレートするために、ソーラーシミュレータにASTM AM 1.5Gスペクトルをロード。 人工の屋
内照明条件をシミュレートに、自宅やオフィスの照明によく使用されるLED照明器具のスペクトル
を適用。レンズが取り付けられた太陽電池の面積が大きいため、電極直列抵抗は、小規模の基
準デバイスの直列抵抗よりも大幅に増加。PSS電極はPEDOTの使用で低減できる(後略)。

※ 詳細は、http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ente.201700226/abstract を参照。

  

【DIY日誌:コガタスズメバチ駆除Ⅱ】 

24日、午後5時に業者がスズメバチ駆除作業に入り約2時間ほどで一連の作業を終える。下写真の蜂
の巣を切除。一連の作業は約2時間で終了。蜂は夕暮れに帰巣sるのでこの時間帯で作業するらしい。
巣の構築は春から1年以内で構築する。作業費用は7万円。わたしならこれより安くやれるだろう(ご
免なさい)。

蟻地獄とオアシス

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  「退け、国に大任あり」: 行く手にぬかるみがあったので、進軍はこれを避け
       て、左右二手に分れて進んだ。晋の厲(れい)公には、歩毅が御として、また
       欒鍼(らんけい:欒書の子、欒懕の弟)が車右としてつき従った。一方、楚の
       兵共王には、彭名(ほうめい)が御として、また潘党(はんとう)が車右とし
       てつき従い、鄭の成公には、石首が御として、また唐荀(とうこう)が車右と
       してつき従った。晋軍は、欒書と范文子の二人が手勢をひきいて厲公の左右に
       つき従った。途中、厲公の乗った兵車がぬかるみにおちこんだ。欒書が自分の
       兵車に乗り移らせようとしたが、欒鍼が押し止めた。
       「父上、手をお引きください。あなたには中軍の将としての責任があります。
       それを忘れて、他のことに気をとられるとは何事です。だいいち、他人の職分
       に手を出すのは、越権行為であります。自分の任務をなおざりにするのは、怠
       慢行為であります。そして、自分の持ち場を離れるのは、反逆行為であります。
       あなたの行為は、この三つの罪に触れます。どうか手をお引きください」そし
       て、自分が飛び降りて、厲公の兵車をぬかるみから引き上げた。

     Q:軍律優先か杓子定規か 

 

 No.55



【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅴ】

 Aug. 22,  2017 

❏ 音響作動式超小型NEMS磁電子アンテナ技術【情報通信篇】

超小型アンテナは小型頭脳を移植を示唆

電波受信機を百分の1にダウンサイサイジング

8月23日、米国はボストンのノースイースタン大学の研究グループは、テレビ信号とラジオ電波を送
受信する金属製のアンテナが、百分の1小さな薄膜に置き換えることができ、より小型のスマートフォ
ンやウェアラブル技術、脳細胞に刺激を与える超小型の植込み型デバイスなどの分野に応用展開可能な、
EM(電磁)信号を新しい方法で感知し中継する小型アンテナの作製したことを報告(Nan, T. et al. Nature
Commun. http://dx.doi.org/10.1038/s41467-017-00343-8 (2017))。なお、この電波を感知し放射するアンテナサ
イズは1ミリメートル未満になる可能性がある。

プロトタイプのアンテナは、音波(材料内の振動)を電磁波と結合しで機能する。電流受けて振動する
薄い圧電膜を使用。この振動は、磁性粒子を内包薄膜圧延し、振動磁場を形成し電磁波を生成するもの。
そのプロセスは、電波を収集し入射電波は薄膜に振動磁界をセットし、変化形状により電気信号を生成
し、取付けられた膜に振動を誘導する。このアンテナは、膜内の音波が生成する電磁波よりもゆっくり
と伝搬することで、非常に小さく――1ギガヘルツの超高周波電波は、毎秒10億回発振するし、この
波動では光の速度で、30センチメートル移動するものの、同じ周波数で振動する薄膜は、わずか数百
ナノメートルとなる。超小型磁気アンテナのアイデアは2年前に提案されている。この研究は、元の概
念を現実に近づける大きな一歩となったが、この小さなアンテナがあらゆる点で従来のアンテナよりも
優れていると断言できないとしながら、この2,3年を目処に商用化したいと担当者は話している。 

バイオメディカルインプラント

このアンテナは脳内のチップ上で使用されるかもしれない。生物医学の研究者はすでに頭蓋外に位置す
る磁気コイルが脳内に電流を誘導してうつ病および片頭痛を治療する経頭蓋磁気刺激を使用。その技術
は学習障害を治療するために研究されているが、コイルからの電磁波の誘導は難しい。電磁放射を受信
して放射する移植可能で制御可能なチップは、そのアンテナがニューロンが収縮する可能性のある場合、
正確に刺激することができる。また、ウェアラブル技術やスマートフォンなどのコンシューマアプリケ
ーションも応用できる。アンテナサイズはスマートフォンにとり、制約要因ではないが、Wi-Fi、GPS、
非接触の近距離無線通信などのサービスのに、サイズの異なる複数のアンテナを詰め込むことが増える
と予想されている。

 
✪ NEMS(ネムス:Nano Electro Mechanical Systems)とは

主に半導体集積回路作製技術を用いて作製されたnmオーダーの機械構造を持つデバイスのこと。電子集
積回路との集積化も可能である。 加工技術の微細化により、MEMSよりも小さな機械構造を作製できる
ようになり、NEMSの実現が可能となる。材料としてはMEMSで使用されたものに加え、カーボンナノ
チューブやDNA、生体分子などが使用される。 今のところバイオテクノロジーやnano領域での計測、操
作が主な応用先。

  May 13, 2016


 ❏ 寿命2.5倍の風力発電用軸受【風力発電篇】

8月24日、NTNは風力発電装置の主軸向けに、長寿命化と耐摩耗性の向上を図った軸受け「左右列非
対称自動調心ころ軸受」を開発したことを公表している。これは、軸受け内部のころを左右列で非対称
とすることにより、計算寿命を従来品比で約2.5倍に延ばすとともに、接触面圧(P)と転がりすべり速
度(V)を掛け合わせたPV値を約30%低減して耐摩耗性を高めている(詳しいことはこのブログでも掲載
)。 開発品は、従来品に比べてフロント列(ブレードに近い側)の接触角を小さくする一方でリア列
(ブレードに遠い側)では大きくした(図2)。ころの長さについてはフロント列よりリア列を長くする
ことで、風によるアキシャル荷重をリア列で、ラジアル荷重をフロント列で効率よく受けられる。

 

 

           

 ● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり   

      第5章 利権の温床GPIFは不必要かつ大間違い 

           第6節「物価連動国情」で運用すれば、GPIFは即廃止できる

    どうしても公的年金で市場運用をしたいのであれば、リスクについて国民への「説明
   義務」があります。

   「市場運用のために割増保険料を徴収させてください。財テクは、割増保険料をリスク
   許容バッフアーとして、その範囲にリスクが収まるように行ないます。市場運用がうま
   くいけば、その分、将来の保険料を軽減します」と国民に説明するしかありません。
 
    それでリスクについての説明義務は果たしたことになりますが、この提案を国民が受
   け入れるとは思えません。
    仮に、国民がこの提案を受け入れたとしても、それでもGPIFは不要です。GPI
   Fは運用を民間金融機関に丸投げしていますから、国民が民間金融機関を選択する仕組
   みを導入すればGPIFは中抜きにできます。

    年金理論上は、どう考えても必要のない機関であるにもかかわらず、なぜ、GPIF
   が存在しているのか?

    それは、官僚が重要な天下り先を失いたくないからでしょう。GPIFがなくなる
   と、厚生労働省の官僚だけでなく、他省庁の官僚も影響を受けます。
    今は、厚生年金に一本化されましたが、国共済、地共済、私学共済という共済組合が
   あります。それぞれ所管の役所かおり、官僚たちの有力な天下り先です。GPIFの仕
   組みが崩れると、他の省庁の天下りにも影響を及ぼすのです。

    厚生労働省……GPIF
    財務省…………国共済(国家公務員共済組合連合会)
    総務省…………地共済(地方公務員共済組合連合会)
    文部科学省……私学共済(私学事業団)

    国民にリスクを与えない現実的な解決策としては次のような方法があります。

    積立金は、株式等の市場運用ではなく、全額「物価連動国債」で運用する。年金運用
   上はまったく問題ありません。物価連動国債は、物価に連動しますのでインフレヘッジ
   ができます。
   「物価連動国債」を購入するには、厚労省に担当者一人を置き、ニカ月に一回、財務省
   の国債担当者に私募形式の物価連動国債の発行を電話で連絡するだけで済みます。
    かつて郵貯の自主運用の際、郵貯資金で国債購入をしていたときには、このような電
   話連絡だけでできていました。運用のための特別な組織は必要ありませんでした。
    ニカ月に一回の電話連絡で済むことですから、やはりGPIFは不要という結論に至
   ります,


 Jun. 12, 2012
 

    第6章 「歳入庁」をつくれば多くの問題が一挙に解決する

             第1節 皆保険の「保険料」は、「税金」とまったく同じ性質

    日本の年金が「保険」であることは、これまで何度もお話ししてきましたが、さらに
   いうならば「皆保険」です。

    1.「保険」であること
    2.「皆」であること(すべての国民が対象)

    この二つが重要です。ここをきちんと理解しないと、年金のことを理解することはで
   きません。
    ここでは、皆保険であるという点に着目していきます。
   「皆」保険とは、「すべての国民が入らなければいけない保険」だということです。す
   べての国民が保険料を支払わなければなりません。
    そういう意味では、「保険料」は「税金」と同じ性質を持っています。
    皆保険でなければ、一部の人が保険料を納めるだけですから、税金と同じにはなりま
   せん。「すべての人が納めなければいけない」ということによって、税金と同じ性質に
   なっています,

    ここで重要なのは、「年金保険料は税金と同じである」という認識です。
    国民年金法を見ると、第88条(保険料の納付義務)で、「披保険者は、保険料を納
   付しなければならない」と規定されています。さらに、同法第95条(徴収)には、
   「保険料その他この法律の規定による徴収金は、この法律に別段の規定かおるものを除
   くほか、国税徴収の例によって徴収する」とあります。

    このように、徴収上、保険料は、税金と同じ扱いであると法律に明記されています。
   皆保険の保険料は税金と同じ扱いですから、すべての滞納者に対して強制徴収するのが
   筋です。
    これまで、社会保険料を納めなくても強制徴収されることはほとんどありませんでし
   たが、2016年9月に、厚労省と日本年金機構が国民年金保険料の強制徴収の基準を
   引き下げると新聞が報道をしました。2017年度からは、基準を引き下げて、年間所
   得300万円以上で、13ヵ月以上の滞納者から国民年金保険料を強制徴収することに
   したという内容でした。
    報道の中には、「一定以上の所得がある人に強制徴収を実施」という言葉がありまし
   たが、そもそもこの言葉の選び方自体が間違っています。「保険料を払わなければ年金
   給付を受けられない」ので、そこから「払わなくてもいい」という発想が出てくるのか
   もしれませんが、皆保険の保険料は本来、「すべての国民から強制徴収するもの」なの
   です,

    年金の保険料を「払わなくていい」と思っている人がいますが、大きな間違いです。
   「未納」という表現も、正しくありません。年金保険料を納めていない人は、「未納」
   ではなく、「滞納」です。意図的に納めていないとしたら、「脱税」といってもおかし
   くないものです,
    もし、税務署が年金保険料を徴収していたとしたら、「あなたは未納です」とはいい
   ません。「滞納処分します」というでしょう。滞納処分というのは、財産を没収して納
   めさせるものです,

    保険原理からいえば、年金財政が厳しくなったときには、税の役人ではなく保険料の
   引き上げをすべきですが、しかし何よりもまず、その前にやるべきことは「徴収漏れを
   なくすこと」です。徴収漏れを見逃していて、保険料を上げるわけにはいきません。
    かつての「消えた年金」問題では、中小企業が従業員から保険料を徴収しながら、社
   会保険庁に払い込みをしていなかったケースがかなり存在していたことが明らかになり
   ました。そういうことを許してはいけないのです。そんなことを放置していたら、真面
   目に保険料を納めている人が損をするばかりです。
    まずは、国民年金保険料を納めていない人から徴収すること。さらに、企業が厚生年
   金を正しく納めていないケースをなくすことが必要です。


            第1節 歳入庁なら、「保険料」と「税金」を一緒に集められる

    年金の「保険料」と「税金」は、払い込む先が、日本年金機構と税務署で追っていま
   すので、別のものと思われがちです。社会通念もそうなっていますので、何も考えなけ
      れば「別物」と思ってしまうことでしょう。
       しかし、少し考えれば、両方とも強制徴収される性質のものであることがわかりま
   す。もし日本年金機構ではなく税務署に一緒に納める形式であれば、保険料は税金と同
   じという認識が強くなるはずです。
    税金は、国から見ると租税債権になります。債権ですから、税金が払い込まれなけれ
   ば、滞納処分ができます。督促状が送られ、それでも納税しなければ財産を差し押さえ
   ます。税金の滞納処分では、給料を差し押さえることもできます。生活費はもちろん残
   してもらえますが、給料といえども差し押さえの対象です。細かい規定は国税徴収法に
   記されています。

    社会保険の場合は、国から見ると社会保険料債権です。こちらも、法律上は、国税徴
   収の例によることになっています。税金と同じですから、保険料を納めない人に対して
   は、給料を差し押さえることもできます。
    法律の性格が同じであり、しかも「国税徴収の例による」とされている以上、徴収の
   方法も一元化できます。それぞれに徴収するのは二度手間でバカらしいから、一本にま
   とめてしまえばいいのです,
    その発想から導き出されるのが、「歳入庁」の考え方です。国税庁と日本年金機構の
   徴収部門を統合してしまって「歳入庁」にするのです。
    考えれば考えるほど、「歳入庁」にしたほうが合理的です。現に、他の国ではほとん
   どは歳入庁をつくっていて、税金と社会保険料は歳入庁が徴収しています。歴史上、別
   々に徴収する国がなかったわけではありませんが、今でも律儀に組織を二つに分けて、
   別々に徴収している日本は、珍しい国です。

    アメリカのSSA(社会保障局)には、全世界の社会保障を調べた調査(Social Secur-
            ity Programs Throughout the xvorld)があります。徴収の形態を見ると、日本のように税金
      と別に保険料を集める国はまずありません。
    歳入庁をつくって税金と社会保険料の徴収を一体化しておけば、個人事業主や企業の
   調査も簡単になります。個人事業主に対して税務調査に入るときに、社会保険について
   も一緒に調査をすれば、徴収漏れを減らすことができます。
    税務署は、企業の法人所得を調べるときに、法人税の調査とともに源泉徴収税も調べ
   ます。社員などから源泉した所得税をきちんと納付しているかどうかを調査するので
   す。源泉徴収税と社会保険料は、社員の給料から一緒に源泉徴収しますので、帳簿を見
   ると両方とも書いてあります。もし、社員から天引きした社会保険料を年金機構に納め
   ていなければ、すぐにわかります。

    しかし、税務署の所管外のことですから、見て見ぬふりをするしかおりません。税務
   署員の中には日本年金機構に連絡する人がいるかもしれませんが、役所が連うため、や
   りにくいのが実状です。
    社会保険のほうは、日本年金機構による別の調査があります。個人別の源泉徴収簿や
   賃金台帳を調べ、源泉所得税の領収書も調べます。年金機構も源泉所得税を確認するわ
   けですから、それならば税務署に任せてしまったほうが効率的です。保険料を納めてい
   ない場合の滞納処分もすべて税務署に任せてしまえば、より確実な徴収ができます。
    税務署の人は、帳簿を見て、源泉徴収税を調べるのは普通の仕事ですから、ついでに
   調べれば社会保険料の納付状況もすぐにわかります。
    歳入庁をつくって、徴収や調査を一元化すると、日本年金機構の徴収部門は必要なく
   なります。

    社会保険料は銀行引き落としにしているケースが多いですから、引き落とし先が日本
   年金機構であろうが、国税庁であろうが、払う側にとってはどちらでも同じです。通帳
   の引き落とし先の名前が変わっていても気がつかないかもしれません,支払う側にとっ
   ては、国のどの機関に徴収されてもかまわないのです。




           第2節 歳入庁に反対するのは、国税庁のポストを失う財務省役人

    このように考えてくると、どう考えても、国税庁と日本年金機構の徴収部門を統合し
   てしまって「歳入庁」にしたほうが、圧倒的に合理的です。
    それなのに、なぜ、そのような議諭がいっこうに実現化しないのでしょうか。それぞ
   れの省庁の事情を考えてみましょう。
    まずは、厚労省・日本年金槌溝淵です。
    歳入庁をつくると、日本年金機構(旧社会保険庁)が必要なくなるといわれます。し
   かし、年金事務は、もともと、徴収部門より給付部門のほうが人数を要します。徴収部
   門に相談に来る人はあまりいませんが、給付部門に相談に来る人はたくさんいます。

    「私は、年金を受ける資格かおりますか」とか「どのくらい年金をもらえますか」な
   ど、いろいろな相談がきます。個別事情がありますので、事務手続きは大変です。それ
   に対応するには、人員が必要です,
    一方、徴収部門は、給付部門ほど人数は必要ありません。厚労省としては、徴収部門
   の人数分の定数を減らされることに抵抗かおるかもしれませんが、しかし、歳入庁が給
   付部門まで持っていくわけではありません。暫定措置、経過措置として、定数を減らさ
   ずに、徴収部門の人を給付事務に移す方法もあります。
    徴収事務を委任された歳入庁は、国税庁が母体です。保険料徴収は、各税務署の職員
   が普段やっていることにプラスアルファするくらいですから、それほど手間が増えるわ
   けではありません。

    ただ、国税庁としては、「日本年金機構の徴収部門の人を全員引き受けてくれ」とい
   われるのは困るかもしれません。消えた年金で社保庁の問題が明らかになったときに、
   労働組合系の「働かない職員」の存在が大きな問題となりました。日本年金機構に移行
   したときにかなり辞めていますが、国税庁としてはどうしても警戒してしまいますか
   ら、「定員だけ増やしてくれ、採用は自分たちでやりたい」というでしょう。
    国税庁は、定員を増やしてもらって、独自採用を認めてもらって歳入庁になるのであ
   れば、飲めるはずです。厚労省も、すでに社保庁改革をしていますので、それほど抵抗
   勢力はいないでしょう。

    では、最大の抵抗勢力はどこか。それは、財務省です。
    国税庁は財務省の機関ですが、日本年金機構と一緒になって歳入庁になると、内開府
   の機関になるはずです。そうなると、これまで財務省が牛耳っていた国税庁の人事がで
   きなくなります。
    歴代の国税庁長官はみな財務省キャリア(大蔵省キャリア)でした。財務省で事務次
   官になれなかった人が、国税庁長官になるのです。
    実は、国税庁は自前で採用をしており、国税庁キャリアという人たちがいます。しか
   し、国税庁キャリアは、トップの長官にはなれない慣習になっています。
    国税庁長官は財務省キャリア。東京国税局長、大阪国税局長、名古屋国税局長もみな
   財務省キャリアのポストです。国税庁の部長職のうち、国税庁キャリアのポストは一つ
   だけで、それが最高位です。それより上のポストはみな財務省キャリアで占められま
   す。

    この暗黙の慣習は、今でも続いています。もし国税庁が歳入庁になって、財務省の手
   を離れると、財務省はかなりのポストを失います。
    それだけのこと、といえばそれだけのことです。そんな程度のことなら、やっぱり歳
   入庁にしたほうが合理的だと、世の中のほとんどの人は思うでしょう。
    しかしこれは、財務官僚にとっては、まことに切実な問題なのです。自分自身のポス
   トの話なのですから。第4章で、国民年金基金をつくって国会議員にまで上り詰めた厚
   生省の官僚の例を紹介しましたが、もし、財務省内で一挙にこれはどのポストを失う改
   革の旗を振ったら、逆に、それこそ総スカン状態に置かれてしまうことでしょう。
    ただ、そのことを悟られたくないので、財務省キャリアはいろいろと理屈を付けて、
   歳入庁にならないように反対論を述べます。官僚たちの身勝手な理屈で、制度の議論が
   ゆがめられているのです,

    2009年に民主党(当時)に政権交代したときに、民主党のマニフェストには歳入
   庁のことが記載されていました。

     民主党マニフェスト2009

    《20 歳入庁を創設する
     社会保険庁は国税庁と統合して「歳入庁」とし、税と保険料を一体的に徴収する》

    ところが、この約束は実行されず、露と消えました。財務省が反対したことが理由と
   いわれています。

               第3節 所得の捕捉を高めれば、保険料の徴収漏れも減る

    年金保険料を正しく徴収するには、まずは所得の捕捉率を高めることが必要です。
    前述したように、昔から、クロヨン(サラリーマン9割、自営業者6割、農林水産業
   者4割)、トーゴーサン(サラリーマン10割、自営業者5割、農林水産業者3割)と
   いわれてきました。月給から天引きされるサラリーマン以外の部分では、捕捉できてい
   ない所得がたくさんあると見られています。実際にどのくらいあるかはわからないので
   すが、かなりの取り漏れかおるはずです。
    しかし今後、それも大きく改善していくと思われます。マイナンバー制度が導入され
   ましたが、これは所得をきちんと捕捉するために、大いに有用なものだからです。今後
   は所得の捕捉が進んでいくに違いありません。
    このようなマイナンバー制度への挑戦は過去に2回検討されています。一番簡単な方
   法は、基礎年金番号を使うことでした。20歳以上の国民には基礎年金番号が付いてい
   ますから、そのまま使えるはずでした。

    ところが社会保険庁は、その基礎年金番号の管理をきちんとしていませんでした。
   「年金手帳をなくしました」と申請した人に、新しい番号を出したりしていたため、一
   人で、二つも三つも番号が割り振られている人が出てきたのです。本来は元の番号をも
   う一度使わなければいけなかったのですが、重複していくつも番号を出したため、一国
   民一番号ではなくなっていました。それでは基礎年金番号を「マイナンバー」として使
   うことはできません,
    次は、仕法ネットの番号を使おうという案が出ました。しかし、仕法ネットは手続き
   の不備などがあり、普及しませんでした。そもそも交付を受けていない人がたくさんい
   て、不評で誰も使ってくれませんでした。

    基礎年金番号だけでなく佳話ネットも使えないことがわかり、マイナンバーは三度目
   いわれてきました。月給から天引きされるサラリーマン以外の部分では、捕捉できてい
   ない所得がたくさんあると見られています。実際にどのくらいあるかはわからないので
   すが、かなりの取り漏れかおるはずです。
    しかし今後、それも大きく改善していくと思われます。マイナンバー制度が導入され
   ましたが、これは所得をきちんと捕捉するために、大いに有用なものだからです。今後
   は所得の捕捉が進んでいくに迫いありません。

    このようなマイナンバー制度への挑戦は過去に2回検討されています。一番簡単な方
   法は、基礎年金番号を使うことでした。20歳以上の国民には基礎年金番号が付いてい
   ますから、そのまま使えるはずでした。
    ところが社会保険庁は、その基礎年金番号の管理をきちんとしていませんでした。
   「年金手帳をなくしました」と申請した人に、新しい番号を出したりしていたため、一
   人で、二つも三つも番号が割り振られている人が出てきたのです。本来は元の番号をも
   う一度使わなければいけなかったのですが、重複していくつも番号を出したため、一国
   民一番号ではなくなっていました。それでは基礎年金番号を「マイナンバー」として使
   うことはできません,

    次は、住基法ネットの番号を使おうという案が出ました。しかし、仕法ネットは手続き
   の不備などがあり、普及しませんでした。そもそも交付を受けていない人がたくさんい
   て、不評で誰も使ってくれませんでした。
    基礎年金番号だけでなく住基ネットも使えないことがわかり、マイナンバーは三度目
   の挑戦です。基礎年金番号、仕法ネットの反省を踏まえてマイナンバーは計画されたの
   だろうと思います。
    マイナンバーはいずれ、基礎年金番号とリンクさせるはずです。先述のように複数の
   基礎年金番号を持つ人もいますので、一つのマイナンバーに複数の基礎年金番号という
   人が出てくるかもしれません。
    税金の場合は、納税番号というものがあります。税務署は、一人の納税者に二つも三
   つも番号を割り振っていないはずですから、マイナンバーとのリンクはさせやすいだろ
   うと思います。
    また、省庁ごとに独自に国民に番号を割り振っていることかあります。各省庁が割り
   振っている番号もマイナンバーにリンクさせることになるでしょう。


本著出版以前から論点は理解しているので違和感はない。ところで、従来は「基礎年金番号制」(参考:
国民総背番号制)は、戦前の言語統制の歴史認識あるいはトラウマから左派は、導入に反対もしくは消
極的で、これは自由経済主義的な保守派も同調している。このような監視社会化の弊害に過剰反応に対
して、例えば、情報漏洩にたいする運用罰則規定(特に、公務員によるリーク)の強化、国民の人権保
護強化の「内部補償法規」や「関連国際連携強化」を具備し早期実現すべきだと考えている。次回は「
第6章4節 所得補足率よりさらに補足率が低い年金保険料」に移る。                                                       
                                                            この項つづく 

今宵の寸評:蟻地獄とオアシス

戦争は外交の失敗であるとはドラッガーの言葉であるが、戦争を煽る政治家が戦前もいたが、米国と北
朝鮮の緊張が高まるなか、元自衛官の政治家が戦争を煽っている。情けないね。情けないと言えば、生
き仏赤色専制国家の北朝鮮も同じ、さらに、米国、ロシア、中国の指導者も同じ類で、北朝鮮を巡る
「蟻地獄絵図」は収まらない。とはいえ、阪神-巨人戦の実況中継で阪神が勝ちそうで炎天下の生け垣
の手入れで右手がままならないが、ビーツが美味い。一時のオアシスを楽しんでいる。

 

思えば叶う

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  弓の名人養由基: 戦いの始まる前日、楚の陣内である。共王の前に、潘尫の子・
       潘党と養由基の二人が進み出た。かれらは幾重にもかさねたよろいを的に矢を
       射て見せた。矢はそれぞれ七枚のよろいを射抜いていた。潘党は得々として言
       った。「わが軍にはわれわれ二人がついておりますゆえ、明日の戦いは決して
       ご心配なさらぬよう」。だが、共王はよろこぶどころか、かれを叱りとばした。
       「弓で戦さに勝てると言うのか。恥ずかしいと思え。明朝の戦いで弓を使わね
       ばならぬようなら、もうそれまでだ」。その日、晋軍の陣内では、呂錡が夢を
       見た。

        ――かれは月に向かって矢を射た。矢は見事月に命中したのである。だが、
       二三歩うしろにさがったたん、かれは泥の中に落ちこんでしまった。目がさめ
       ると、かれはこの夢を占ってもらった。占師はこう言った。「百は姫姓の国(
       周王室と旧姓である)、たとえるならば太陽です。したがって、この場合、月
       は楚を意味します。あなたが夢でうちあてたのは楚王にちがいありません。そ
       のあと、あなたが記に落ちこんだのは、あなた自身も命を落とすという意味で
       す」

       実際の戦闘ではこうであった。
       呂錡が放った矢は、共王の目に命中した。共王はすぐさま養由基を呼んで矢を
       二本あたえ、呂錡を射るように命じた。養由基がねらいうつと、矢は呂錡の後
       頭部に突きささり、呂錡は弓袋の上にうつぶせに倒れた。養由基は、失一本を
       余して、共王に復命した。

       《養由基》 かれが弓の名人あったことは『孟子』その他にも見える。
 



  

 No.56

【ZW倶楽部とRE100倶楽部の提携 Ⅵ】

♞ 重水でミドリムシの光合成能力を解析【オールバイオマス篇】

8月24日、九州大学の研究グループは、重水を使って、藻類の一種であるミドリムシの光合成能力を
調べる方法を開発したことを公表。ところで、ミドリムシは光合成で、水と二酸化炭素から糖類生産し
ストレス環境下で、この糖類をパラミロン顆粒として備蓄、さらにバイオ燃料にも使える油脂に転換す
る。光合成能力の高いミドリムシ個体を探し出すことができれば、再エネ燃料の実用化に寄与する。こ
のグループでは、光合成の原料となる水の代わりに、重水素水(重水)を使い、光合成で重水素をミド
リムシに取り込ませ。ラマン分光法を用いた顕微鏡観察し、重水素標識された個体の発見に成功する。
現在開発中の超高速細胞分取装置と組み合わせることで、バイオ燃料を高効率に生産する「スーパーミ
ドリムシ」を探し出せると期待されているが、これが実現すれば、食糧・エネルギー・燃料分野の課題
がすべて解決できるほどのインパクトをもち、数十兆円規模のオールバイオマスシステム事業の創業に
つながるかも。

 Aug. 24, 2017

・Monitoring photosynthetic activity in microalgal cells by Raman spectroscopy with deuterium oxide as a tracking  
  probe ,ChemBioChem, 10.1002/cbic.201700314

❏ 関連特許事例:特開2017-42137 細胞分取装置

【概要】

細胞材料は、他の材料と異なり、細胞ごとの個体差が大きいため、細胞生物学および細胞工学において、
その個体差を理解し、操作・選別することの重要性が高まり、単一細胞分析技術によって個々の細胞の
特性を判別し、判別した細胞を個々に分取することが可能となっている。代表的な単一細胞分析技術と
しては、蛍光標識細胞分取がある。また、ガラス等の基板にマイクロ流路を設けたマイクロチップを用
い、標識された細胞を含む液体をマイクロ流路に流し、細胞特性に応じて流路変更分取する技術も知ら
れている。例えば、標識された細胞を含む液体をマイクロチャネル内に流し、マイクロバブルの圧力に
より、選択された細胞を別の流路に押し出して分取する細胞選別装置が提案されている。

より確実に、より効率よく標的細胞を分取することが可能な細胞分取装置の提案にあっては、基板と、
基板に形成され、流れ方向に沿って細胞15が1つずつ並んだ細胞列16を含む液体が上流から下流に
向け流通し、一面が開放した開放面を備えた細胞分取領域13を有する流路12と、細胞分取領域13
の液体14に、開放面の逆側から開放面に向けた圧力波20を与え、第1の標的細胞15aを細胞列
16から分離し、開放面に向けて移動させる第1の圧力波付与機構と、細胞分取領域13の開放面側に
配置され、第1の標的細胞15aを含む液滴を受け取る第1の収液槽24を備えている(下図2参照)。

【符号の説明】

10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H    細胞分取装置  11  基板  11a   一端
11b    他端  12  流路  13   細胞分取領域  14  液体  15   細胞  15a   第1の標的細胞
16      細胞列  20    圧力波  22   第1の圧力波付与機構  22A フェムト秒レーザー光 22B 
ナノ秒レーザー光  23   対物レンズ  24,24A   第1の収液槽  26   収液室  28  金属膜
32   干渉軽減素子  33   干渉軽減領域  34   圧力波吸収部  38   表面弾性波デバイス
40   分離補助素子  44   収液流路  46   流体  48   受容開口  CB  キャビテーションバブル
PW   圧力波

【図面の簡単な説明】

【図1】第1実施形態に係る細胞分取装置の構成を説明する斜視図
【図2】第1実施形態に係る細胞分取装置のX-X断面における模式図
【図3】フェムト秒レーザー光の照射により液体中の細胞が分離されるメカニズムを説明する図
【図4】第1実施形態の変形例(1)の細胞分取装置の流れに沿った縦方向の断面における模式図

 

 Aug. 24, 2017

♞ 画期的な分子記憶装置、百倍の高密度化【電子記憶装置篇】

8月24日、マンチェスター大学の研究グループは、-213℃ で個々の分子で磁気ヒステリシスが実現可
能であること検証したことを公表。これは、単分子磁石によるデータの保存が以前考えられたものより
も実現可能であり、理論的には現在の技術よりも百倍高い密度を与えることができるという。スーパー
コンピュータの小型で高エネルギー効率化の必要性が高まり、より高密度のデータストレージが最も重
要な技術課題の1つになっている。同研究グループは、単分子磁石として知られているクラスの分子で
データを保存できることを証明(下図ダブクリ参照)。❶これは、磁気ヒステリシス、任意のデータス
トレージの前提条件である高価な液体ヘリウム(-269°C)ではなく、安価な液体窒素を使用し冷却モリ
効果を発揮する。❷また、分子データ容量は非常に大きい、例えば、アップルの最新のiPhone 7  が、最
大記憶容量が256 GBであるのに対し、50ペンスコインサイズのスペースに25,000 GB  の情報が保存でき
る。単一分子磁石は、任意のデータ記憶の要件である磁気記憶効果を示し、ランタニド原子を含む分子
は、これまでの最高温度でこの現象を示している。ランタニドは、スマートフォン、タブレット、ラッ
プトップなどのあらゆる日常的な電子デバイスで使用される希土類金属。研究グループは、ランタノイ
ド元素ジスプロシウムを用いてその結果を達成。単一分子の磁気ヒステリシスはバイナリデータ記憶装
置能力を意味し、単一分子を使用すると、理論的には現在のテクノロジよりも百倍もの高密度データが
得られる。


このような分子レベルのデータ記憶装置が実用化すれば、より少ないエネルギーで、ダウンサイジング
したデータセンタ――例えば、現在、Googleは世界中に15のデータセンタが存在し、毎秒平均4000万
件の検索処理、1日あたり35億件/1年あたり1.2兆件の検索が行われている。そのすべてのデータ
処理に、昨年7月、Googleには各データセンタに約250万台のサーバーが稼働、その数は逓増傾向に
あり、その消費されるエネルギーは、世界の温室効果ガス総排出量の2%を占める――が誕生すること
になる。

 ● 今宵の一枚の写真

8月26日、単独無寄港でヨットによる世界一周を果たした立尾征男さん(76歳)、が母港にしてき
た堺市の堺出島漁港に戻って来た。約5万5千キロ、394日間に及ぶ航海は波乱の連続で、南インド
洋で食料が尽きかけ「コンビニでパンを買う夢ばかり見た」と話す。全長約9メートルのヨット「EO
LIA号」で入港し、約30人のヨット仲間らに迎えられた。偉業は2001年に続き2度目、「一言
で言うと疲れました」と挨拶。昨年7月5日に小笠原初等のの父島を出航、今月2日に帰港。当初は向
かい風の多い難コースの西回りを目指したが、、南下途中のソロモン諸島でサメが船尾にぶつかり、自
動操舵装置の部品を海中なくす。そこで普通なら中止するが、なんとかあり合わせの部品で修理し、東
回りに変えて航海を続ける。最も苦労したのは、南アフリカ沖から豪州へ向けての約2カ月に及ぶ南イ
ンド洋。2、3時間続く嵐が断続的に襲われ、マストを支えるワイヤが切れ、食料が1カ月分足らなく
なるった。疑似餌でマグロを25匹釣って食べ、大きさは80センチ級。1匹で5日はもったと語る。
「太平洋一人ぼっち」で衝撃を受けたわたしたちは、76歳にして世界一周を成し遂げた立尾征男さんの勇気
に感服する。「人間、思え叶うものだ!」励まされているようだ。

                                                                 


  ● 今日の朝食

干しぶどうのパンのバタートースト、トマトとルッコラのゴマダレドレシングとコーヒ、そして万歩計。そろそろ、自分で朝食をつくろうと想っているが、当面、許可されないので、イメージクッ
キングを始める。

  ● 今夜の一曲

名月赤城山

  男ごころに男が惚れて
  意気が解け合う赤城山
  澄んだ夜空のまんまる月に
  浮世横笛誰が吹く 

  意地の筋金 度胸のよさも
  いつか落目の三度笠
  云われまいぞえ やくざの果と
  悟る草鞋(わらじ)に散る落葉 

  渡る雁(かり)がね 乱れて啼いて
  明日はいずこのねぐらやら
  心しみじみ吹く横笛に
  またも騒ぐか夜半の風

                                 作詞 :  矢  島   寵  児
                                                                  作曲 : 菊  池    博
                                                                   唄  : 東海林   太  郎
                                                                                                            

日本ポリドール蓄音機株式会社(現:ユニバーサルミュージック (日本))で吹込んだ「赤城の子守歌」
が、1934年2月に新譜で発売され、空前のヒットとなった。その年には「国境の町」も大ヒットし、歌
手としての地位を確立した。その後ポリドール専属となり、澄んだバリトンを活かして「むらさき小唄」
「名月赤城山」「麦と兵隊」「旅笠道中」「すみだ川」「湖底の故郷」などのヒット歌謡で東海林太郎
時代を到来させた。また、「谷間のともしび」など外国民謡においても豊かな歌唱力を示した。大戦中
はテイチクへ移籍し、「あゝ草枕幾度ぞ」や「琵琶湖哀歌」、「戦友の遺骨を抱いて」などを吹き込ん
でいる。

戦後は、戦前のヒット曲が軍国主義に繋がるとして国粋的なヤクザものが禁止され、また進駐軍からも
監視され、不遇の時代が続いた。1946年、ポリドール復帰第一作が「さらば赤城よ」。1949年、キング
レコードへ復帰。1953年、日本マーキュリーレコードへ移籍。その後、次第に地方公演で人気を回復し
1957年、東京浅草国際劇場で「東海林太郎歌謡生活25周年記念公演」を開催。1963年に任意団体(当時)
日本歌手協会初代会長に就任。空前のなつかしの歌声ブームのなか東海林太郎の人気が復活し、懐メロ
番組に出演するなどして脚光を浴びる。1972年9月26日午後2時30分頃、立川市内の知人宅で、調子の悪
そうな歩き方を心配したマネージャーに「大丈夫ですか」と問われ、「眠いだけだよ」と横になり、そ
のまま意識不明となり、翌日午前には立川中央病院へ入院。次男、妹の手を握り、数人のファンに見守
られ、10月4日午前8時50分に脳内出血のため死去した。享年73。葬儀は史上初めての「音楽葬」だった
という(Wikipedia)。

♪ 男ごころに男が惚れて~浮世横笛誰が吹く~の、この印象的な歌詞が心に響く名曲だと想う。

   

彦根梨を食べる

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         成公16年( -575) 鄢陵(えんりょう)の戦い   / 晋の復覇刻の時代 

                                  

       ※  国君への礼:晋の郤至(げきし)は楚の共王の軍勢に三たび遭遇したが、共王
       を見るたびに、かれは冑を脱いですみやかに軍をひいた。共王は郤至のもとに
       工尹襄を使者として送った。工尹襄は弓を贈って共王の言葉を伝えた。「戦い
       のさなか、あざやかな赤で身をかためたお姿、さだめし君子とお見受けした。
       いつも挨拶をしてくださるが、わたしをご存知のお方と推察し、お怪我でもな
       いかと、お見舞い申しあげる次第」 郤至は鎧を脱いで使者に対面し、この言
       葉を受けた。「わたくしはいま鎧胃に身をかためて主君の戦に加わっている身
       です。ありかたいお言葉に接しながら、拝礼するわけにもいかぬことを残念に
       思います。お使いの方に粛礼(立ったまま少し手を下げる礼) するにとどめ
       て失礼いたします」。郤至は使者に丁寧に粛礼して帰した。晋の韓厥(かんけ
       つ)が敗走する鄭の成王迫撃していた。御者の杜溷羅(とこんら)が、「もう
       少しです。相手の御者は後にばかり気をとられて肝心な馬に気を配る余裕さえ
       ありません。この分ではきっと追いつけます」 と言ったが、韓厥は、いや国
       君をはずかしめるようなことを二度までしてはならなと言って、成圧を迫うの
       をやめてしまった。また、郤至も成王を追ったことがある。車右の茀翰胡(ふ
       つかんこ)が言った。

       「先に待伏せの兵を置いてください。わたしはあの車に追いついて乗りこみ、
       捕虜にしてまいります」しかし、郤至は、「国君に傷を負わせれば、いつかは
       刑に処せられよう」といって追うのをやめた。成王の御者の石首(せきしゆ)
       は、「むかし、熒(けい)の戦い(閔公二年)のとき、衛の懿(い)公は旗を
       おろさなかったばかりに敗れた」と言って、旗を弓袋のなかにしまった。車右
       の唐苟(とうこう)は石首に言った。「主君のそばを離れないでくれ、大変な
       敗け戦だ。わたしよりもあなたのほうが俊敏だから、主君を守ってほしい。わ
       たしは踏み止まろう」、唐萄は車から降り、防戦して死んだ。

        〈二度まで〉 韓厥は㮤の戦い(成公二年)で斉の頃公(身代り)を捕えた
        ことがある。

         

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』      

    第48章 スペイン人たちはアイルランドの沖合を航海する方法を知らず

    どう言っていいのかわからなかったので、私は黙っていた。 

      「私のこれまでの人生はすべて間違っていたのかもしれない。そう思うことがあります。私はと
      こかでやり方を間違えたのかもしれない。そして無意味なことばかりやってきたのかもしれない。
      だからこそ前にも言ったように、私はあなたを見ていてよくうらやましく感じるのです]
     「たとえばどんなところを?」と私は尋ねた。
     「あなたには望んでも手に入らないものを望むだけの力があります。でも私はこの人生において、
      望めば于に入るものしか望むことができなかった」

       彼はおそらく秋川まりえのことを詰しているのだろう。秋川まりえこそが、彼にとっての「望
   んでも手に入らないもの」なのだ。しかしそれについて何かを述べることは、私にはできなかっ
   た。
    免色はゆっくり自分の車に乗り込み、わざわざ窓を開けて払に一礼し、エンジンをかけて去っ
   ていった。私は車が姿を消してしまうのを最後まで見届けてから家の中に入った。時刻は八時を
   まわっていた。
    電話のベルが鴫ったのは朝の十時過ぎだった。かけてきたのは雨田政彦たった。
   「急な話なんだが」と雨田は言った。「これから伊豆まで父親に会いに行く。よかったら一緒に
   行かないか? うちの親父父仮に会いたいって、このあいだ言ってただろう?]
 
    明日の御膳中にかかってくる電話で、誰かが諸君を何かに誘う。それを断ってばならない。

   「うん、大丈夫、行けると思う。連れて行ってくれ」と私は言った。
   「今、透明高速に乗ったところだ。港北パーキング・エリアから電話をかけている。そちらには
   たぶんあと一時問のうちに首けると思う。そこでおまえをピックアップして、それから伊豆高原
   まで行く」
   「急に行くことになったのか?」
   「ああ、療養所から電話がかかってきてな。どうもあまり容態がよくないらしい。だから様子を
   見に行く。ちょうど今日は何事もなかったから」
   「ほくなんかが一緒に行ってもかまわないのか? そういう大事なときに、家族でもないのに」
   「かまわないよ。気にすることはない。おれの他には訪れる親威もいないんだ。人が争いほどに
   ぎやかでいい」と雨田は言った。そしてそのまま電話を切った。

    私は受話器を置いてから、部屋の中をぐるりと見渡した。騎士団長がどこかにいるかもしれな
   いと思って。しかし騎士団長の姿は見えなかった。彼は予言だけを残してどこかに消えてしまっ
   たようだった。おそらくイデアとして、時間と空間と蓋然性のない領域をうろうろとしているの
   だろう。しかし確かに午前中に電話はかかってきたし、私は何かに誘われたわけだ。これまでの
   ところ、彼の予言はあたっている。秋川まりえの行方がわからないまま、家を留守にするのは気
   がかりだったが、仕方ない。「たとえどんな事情があろうと、その誘いを断ってはならない」と
   いうのが騎士団長の指示だった。秋川笙子のことはとりあえず免色に任せておけばいいだろう。
   彼にはそれだけの責任がある。



    私は居間の安楽椅子に座り、雨田政彦がやってくるのを持ちながら、無敵艦隊についての本の
   続きを読んだ。沖合で難破した船を捨てて、アイルランドの海岸に命からがらたどり着いたスペ
   イン人たちは、ほとんどが地元民の手にかかって殺された。沿岸に仕む貧しい人々は彼らの持ち
   物を奪うために、みんなで兵士や水夫たちを殺した。スペイン人たちは同じカソリック教徒とし
   て、アイルランド人が自分たちを援助してくれるだろうと期待したのだが、そううまくはいかな
   かった。宗数的連帯感よりは飢えの方がずっと切実だった。イングランド上陸後に、英国人の有
   力者たちを買収するために用意した豊かな軍資金を載せた船も、沖合にあえなく沈んでしまった。
   その財宝の行方は誰も知らない。
    雨田政彦の運転する旧型の黒いボルボがうちの前に停まったのは、十一時少し前たった。私は
   深い海の底に沈んだ大量のスペイン金貨のことを考えながら、革ジャンパーを着て外に出て行っ
      た。
 
    雨田が選んだのは、箱根ターンパイクから伊豆スカイラインに入り、天城高原から伊豆高原に
   下りるというルートだった。週末は下の道は混むから、これがいちばん運いんだ、と彼は言った
   が、それでも道路は行楽客の車で混み合っていた。まだ紅葉のシーズンは終わっていなかったし、
   道の運転仁不慣れな週末ドライバーも多く、予想したより時間をくった。



   「お父さんの具合はそんなによくないのか?」と払は尋ねた。
   「いずれにせよ、あまり長くはあるまいな」と淡々とした声で雨田は註った。「はっきり言って、
   時間の間題なんだ。いわゆる老衰に近い状態になっている。食べることもうまくできなくなって             
   いるし、やがていつかは誤嚥性の肺炎を起こすことになるかもしれない。しかし本人の意志で、
   流動食とか点滴とかはしてくれるなということになっている。要するに、自分で飯が食べられな
   くなったら、あとは静かに死なせてくれということだよ。まだ意識のはっきりしているうちに、
   弁護士を通して文書のかたちにされていて、本人の署名もある。だから延命措置みたいなものは
   一切とらない。いつ亡くなってもおかしくはない」
   「だからいつも、いざという時にそなえて待機している」
   「そういうことだ」
   「大変だな」
   「まあ、人がひとり死ぬってのはかなり大仕事だからな。文句は言えないよ」

 ABC - The Look Of Love (1982)

    旧式のボルボにはまだカセットデッキがついていた。一山のカセットテープがもの入れに入っ
   ていたが、雨田は内容も確かめず、手探りで適当な丁不を選んで、デッキに突っ込んだ。198
   0年代のヒットソングが入っているテープだった。デュラン・デュランとか、ヒューイ・ルイス
   とか。ABCの「ルック・オブ・ラブ」がかかったところで、私は雨田に言った。

   「この車の中は進化が止まっているみたいだ」
   「おれはCDみたいなものが好きじゃないんだ。ぴかぴかしすぎているし、軒につるしてカラス
   を追い払うのにはいいかもしれないが、音楽を聴くためのものじゃない。音がきんきんしている
   し、ミキシングも不自然だ。A面とB面に分かれていないのも面白くない。カセットの音楽が聴
   きたくて、それでまだこの車に乗っているんだ。新車にはカセットデッキはついてないものな。
   おかげでみんなにあきれられている。でも仕方ない。エアチェックのコレクションがうちにたっ
   ぶりあるし、それを無駄にしたくはない」
   「しかし、この人生でもう一度、ABCの『ルック・オブ・ラブ』を聴くことになるとは思わな
   かったな」
   
    雨田は怪訝そうな顔で私を見た。「良い曲じゃないか」と彼は言った。
    我々は1980年代にFMラジオから流れていたいろんな音楽の話をしながら、箱根の出の中
   を抜けた。角を曲がるごとに、富士山が青々と間近に見えた。
   「変わった親子だ」と私は言った。「父親はLPしか聴かないし、息子はカセットテープに固執
   している」
   「遅れ加減についちゃ、おまえだってどっこいどっこいだよ。というか、おまえの方がむしろ遅
   れている。おまえは携帯電話だって持ってないだろう? インターネットもほとんど使わないだ
   ろう? おれはちやんと携帯も持ち歩いているし、わからないことがあればすぐにグーグルで調
   べる。会社ではマックを使ってデザインまでしている。おれのほうが社会的にずっと進んでいる}
   そこで曲はバーティー・ヒギンズの「キー・ラーゴ」に変わった。社会的に進んだ人間にして
   はなかなか味わいのある選曲だ。 

   「最近、誰かとつきあっているのか?」と私は話題を変えて雨田に尋ねた。
   「女のことか?」と雨田は言った。
   「そうだよ」

    雨田は肩を小さくすくめた。「あまり順調とはいえない。例によってな。おまけに最近、ある
   奇妙なことに気がついて、そのおかげでいろんなことがますます円滑に進まなくなった」
   「ある奇妙なこと?」
   「あのさ、女の顔って左右で違うんだ。そのことは知っていたか?」                                     
   「人の顔というのはまったく左右対称にはできていない」と私は言った。「乳房だって、睾丸だ
   って左右で大きさやかたちが異なっている。絵を描く人間ならそれくらいは誰でも知っている。
   人間の姿かたちは左右非対称だし、だからこそ面白いんだ」
    雨田は前の道路から目を離さずに、何度か首を振った。「もちろんそれくらいのことはおれも
   知っているさ。しかし今おれが言っているのは、それとはちょっと違うことなんだ。姿かたちと
   いうよりは、むしろ人格的なことだ」
 
    私は話の続きを待った。

   「ニケ月ほど前のことだが、おれはつきあっていた女の写真を撮った。ディジタル・カメラで、
   顔の正面からのアップを撮った。で、それを仕事用のコンピュータの大きな画面に映し出した。
   そしてどうしてかはわからないけど、真ん中から分けて、顔を半分ずつ見たんだよ。右半分を消   
   して左半分だけを見て、それから左半分だけを消して右半分だけを見て……だいたいの感じはわ
   かるか?」

   「わかるよ」

   「それで気がついたんだが、よく見るとその女は、右半分と左半分とではなんだか別人みたいに
   見えるんだよ。映画の『バットマン』に出てきた、左右でまったく顔の違う悪党がいただろう。
   トウーフェイスっていったっけな?」

   「その映画は見ていない」と私は言った。

   「見るといい。なかなか面白い映画だ。で、とにかくそのことに気がついて、おれはちょっと怖
   くなった。それからよせばいいのに、右側と左側だけでそれぞれにひとつの顔を合成してみたん
   だ。顔を半分にわけて、片側を反転させてさ。そうやって右側だけでひとつの顔を作り、左側だ
   けでひとつの顔を作る。コンピュータだとそういうことは簡単にできる。そうしたら、そこには
   まったく人格の違うとしか思えない二人の女ができあがった。驚いたね。要するに一人の女の中
   には、実は二人の女が潜んでいるんだよ。そんな風に考えたことはあるか?」



   「ないよ」と私は言った。

   「おれはそのあと何人かの女の顔で同じことを試してみた。正面から撮った写真を集めて、コン
   ピュータで同じように左右別々に合成してみた。その結果よくわかったんだ。女って多少の差こ
   そあれ、だいたいみんな左右の顔が違っているってことが。そしていったんそれに気がつくと、
   女というもの全般がわからなくなってきた。たとえばセックスをしていても、自分か今抱いてい
   る相手が、右側の彼女なのか左側の彼女なのかわからない。もし自分か今、右側の彼女とセック
   スしているのだとしたら、左側の彼女はとこにいて、何をしてどんなことを考えているんだろう、
   もしそれが左側であるなら、右側の彼女は今どこにいて、どんなことを考えているんだろう、そ
   んな風に考え始めると話がとてもややこしくなる。そういうのってわかるか?」

   「よくわからないけど、話がややこしくなりそうだということは理解できる]
   「ややこしくなるんだよ、実際に」
   「男の顔は試してみた?」と私は尋ねた。
   「試してみたよ。でも男の顔ではあまりそういうことは起こらない。それがドラスティックに起
   こるのはだいたいが女の顔に限られるんだ]

                                      この項つづく

  

 

 

            

 ● 読書録:高橋洋一 著「年金問題」は嘘ばかり    

    第6章 「歳入庁」をつくれば多くの問題が一挙に解決する 

           第5節 所得捕捉率よりさらに捕捉率が低い年金保険料

     クロヨン、トーゴーサンといわれるようにサラリーマン以外の所得の捕捉率は低く、
    所得税の徴収漏れかおりますが、それよりもさらに捕捉率が低く、徴収漏れが大きいと
    推測されるのは、年金保険料です。
     どのくらい徴収漏れがあるのかは、実際にはわかりません。データがないので誰にも
    わからない金額です。税金よりも捕捉率は低いと思われますので、何百億円というレベ        
    ルの単位ではなく、数兆円という単位だろうと私は推測しています。
     何しろ、社会保険庁は、過去の年金記録のデータをきちんと管理できていませんでし
    た。消えた年金問題では、基礎年金番号に統合されていない記録が約5000万件もあ
    ることが発覚しています。過去データの不備かおるため、過去の徴収漏れを調査するこ
    とは難しい状態なのです,

     税務署が税務調査をするときには、過去データとの比較をします。前年の税務データ
    がないと今年との違いがわからないため、脱税かどうかを判断するのが難しくなりま
    す。税務署員が調査に行って、「去年はどうですか」といっても、納税者は去年のデー
    タを隠すかもしれません。税務署が前年のデータを持っていないと調べようかおりませ
    ん。
     年金の場合は、過去のデータの管理が不十分ですから、比較対象がなく、十分な調査
    ができません。調査に入っても、ごまかされてしまうかもしれません。年金保険料は、
    かなりの額の徴収漏れがあると見るべきでしょう。
     日本年金機構は、保険料の徴収には力を入れますが、「所得を捕捉しよう」という意
    識はあまりありません。しかし、厚生年金保険料には報酬比例部分かおりますから、所
    得をきちんと捕捉しないと、正しい徴収はできません。

     所得捕捉という点では、税務署のほうがはるかに力を入れていますので、税務署と一
    体になった「歳入庁」にしたほうが、徴収漏れは減るはずです。
     税務署は、源泉徴収されているものに問しては、比較的調査が簡単です。たとえば、
    私たち本を書いている人間は、出版社から印税を受け取りますが、所得税を源泉された
    銀行口座ブ証券口座とマイナンバーのリンクに関して「プライバシーの侵害」といって
        いる人は、税金を払いたくない口実に使っているのでしょう。それでも、この先、所得
        捕捉は確実に高まっていきます。

     マイナンバーに、「基礎年金番号」「納税番号」「銀行口座」がリンクすれば、税金
    と社会保険料は一体化してきます。そうなると、二つの役所が別々に徴収するのは合理
    的ではなくなり、ますます「歳入庁」の必要性が高まっていくことでしょう。
     今、お話ししてきたように、「歳入庁」ができれば、様々なことがより合理的になり
    ます。しかし、壁になるのは「消費税はやりたい。歳入庁はやりたくない」と思ってい
    る財務省です,そこをいかに突破するか。
     この問題は、本来的にいえば、年金問題に不安を覚えている多くの人が、真っ先に怒
    りをぶつける対象にすべきものだと思うのですが……。  
 

     第7章 年全商品の選び方は、「税金」と「手数料」がポイント

        第1節 老後は、若いころよりも「格差」が大きくなる

     年金制度の真実については、これまで本書をお読みいただいて、かなり、おわかりい
    ただけたのではないかと思います。わかってしまえば、そう難しい話ではありません。
    もらえる公的年金の金額も、概賂見当がつくはずです。
     そうなると、問題は個人として、老後にどう備えるかという話になります。本章で
    は、そのことについて、私なりの考えを述べてみたいと思います。
     これは歳を取れば、皆さん実感されることだと思いますが、人間は、歳をとればとる
    ほど格差が開いていきます。  

      学生のうちは、まだ働いていませんから、差はありません。就職したばかりのころ
    も、どの職業でも初任給はあまり変わりませんので、ほとんど差はないでしょう。
     ところが、社会に出て30年、40年経つとものすごく大きな差が出てきます。私は
    60歳を超えていますが、周りを見ると、大企業で役員になっている人は、とても高額
    の給料をもらっています。秘書がついて、車とお抱え運転手がついた生活を送っている
    人もいます。おそらくそういう人たちは、老後になっても悠々自適でしょう。公的年金
    など、本当はまったく必要ではないはずです,

     有名大学を出て、大企業に入っても、役員になれずに50歳を過ぎて、外に出された
    人もいます。再就職先がなくて嘱託でアルバイトのようにして食いつないでいる人もい
    ます。ビジネスの世界では、揉み手をしながら「いやあ、お目が高い」といえるような
    人でないと務まらないことかあります。学歴が高くて大企業に入った人でも、妙なプラ
    イドの高さが邪魔をしてビジネス界ではうまくいかず、会社を退職したものの50歳を
    過ぎて、再就職がままならない人は珍しくありません。そういう人は、老後は年金をも
    らわないと生活していけないでしょう。

     大企業で定年を迎えた人の中でも、部長止まり、課長止まりという人が多いはずで
    す。そういう方も、年金がないとなかなか老後の生活は厳しいはずです。
     公務員になった人の場合は、官僚になって局長くらいまで務めて、何度か天下ってい
    る人は、かなりのお金をもらっています。おそらく、年金をもらわなくても悠々自適で
    生活していけるでしょう,
     私の場合は、役所を辞めて、天下りせずに自分でやっています。秘書も車もつきませ
    んが、定年はありませんので、何歳まででも働けます。収入は自分次第。けっこう自由
    で気楽です,
     前にも述べましたが、いつまでも働けるというのは、とても大事なことだと、晟近し
    みじみと実感しています。これほどありかたいことはありません。個人的なレベルで考
    えても、「老後に働ける」ということが、今後ますます重要になっていくでしょう。
     話を戻しますが、同じ大学を出ていても、60歳くらいになると、このようにものす
    ごく差がついています。年収の差も桁違いです,

     では、どうしてそれほどの差がついてしまったのか。私の見るかぎり、「運」としか
    いいようかおりません,同じ学校を出ているのですから、もともとは、それほど差はな
    いと思いますが、30年、40年経つとものすごく迫ってきてしまいます。
     60底くらいになって同窓会に出た人は、あまりにも格差が大きくなっていることに
    驚くはずです。年金などまったく必要としていない人もいれば、年金がなければ絶対に
    生活していけない人もいます。

     しかし、若いときには、自分が将来どちら側の人間になるかはまったくわかりませ
    ん。豊かな高齢者になるのか、貧しい高齢者になるのか。
    貧しいほうの高齢者になった場合に備えて、最低限の生活費を得られるように保険を
    掛けておくことが必要になります。簡単にいえば、それが「年金保険」です。
     さらにいえば、自分が河底まで長生きするかもわかりません。それなりにお金を持っ
    ている人でも、長生きするとお金が足りなくなってくるかもしれません。
     将来のことは誰にもわからないので、将来の生活に備えて、皆が国の年金保険に入る
    ことになっているのです,
     ただし、現役時代に支払う保険料が低く抑えられていますから、公的年金で受け取れ
    る年金額は多くはありません。「ミニマム」と考えておいたほうがいいでしょう。「ミ
    ニマム」よりも豊かな生活をしようと恩ったら、自分で老後に備えておくことが必要で
    す,


                    第2節 将来に備えて、個人でやるべきことは?

     では、個人としては、どんな対策をしておいたほうがいいでしょうか。
     年金には「公的年金」と「私的年金」がありますので、まず、両者の違いを簡単にお
    さらいしておきましょう,
     様々な私的年金の商品が販売されていますが、私的年金は、貯蓄性が高く、保険機能
    はきわめて小さいという特微かあります。
     もし、保険機能を大きくするのであれば、掛け捨てにしなければなりません。「60
    歳になったら年金をもらえますよ。でも、60歳前に亡くなったら掛け捨てですよ」と
    いう仕組みにすれば、保険機能が大きくなり、なおかつ、60歳を過ぎたときに比較的
    大きな金額の年金を受け取れます。

     しかし、私的年金の場合、掛け捨ての商品をつくると売れません。ですから、貯蓄性
    の高い商品として設計されます。60歳前に亡くなっても、遺族には支払った保険料の
    かなりの部分が戻ってきます。損をすることはあまりない保険です。そのかわりに、6
    0歳を過ぎて受け取るときに得をする部分も少なくなります。
     私的年金は、掛け捨ての部分が少ないですから、保険の機能は小さくなっていて、将
    来もらえる保障額はあまり大きな額にはなりません。
     一方、公的年金は、基本的には掛け捨ての発想です。60歳前に亡くなった場合は、
    生活費が必要なくなりますから、そういう人には支払わない考え方です(遺族年金は少
    し支払われます)。そのかわりに、百歳まで生きても、百歳まで生きても、決まった額
    の年金をもらえます。総額にするとかなり大きな額となり、支払った保険料の額をはる
    かに超えます。

     公的年金の場合は、基本的に「掛け捨て」であるために、保険機能はかなり高くなっ
    ています。一方、民間の私的年金は、掛け捨ての部分が少ないため保険機能は小さいけ
    れども、貯蓄性は高い商品です。
     そういう意味では、民間の個人年金の場合は、「資産運用」の性格が強いものです。
     公的年金のほうは、早く亡くなってしまったらもらえないわけですから、「資産運用」
    とはまったく性質が異なっています。

    《公的年金と私的年金の特徴1》

     ・公的年金――保険機能高い――貯蓄機能低い
     ・私的年金――保険機能低い――貯蓄機能高い

     公的年金はインフレヘッジという面でも、有利です,
     私的年金は、自分が積み立てた保険料を将来受け取る「積立方式」ですから、運用が
    重要になります。運用で積立金が増えていかないと、インフレになったときに、大幅に
    目減りしている可能性があります。
     公的年金は、現役世代の保険料が老齢世代の給付に充てられる「賦課方式」です。保
    険料も給付もインフレに連動する仕組みになっていますので、インフレになってもヘッ    
    ジされています。

    《公的年金と私的年金の特徴2》

     ・公的年金――インフレに強い
     ・私的年金――インフレに弱い(運用次第)

     両者の違いをきちんと認識しておきましょう。    

ここで書かれていることは、実にもっともなことで、これまでの自己のリアリティをもってすれば、寧ろ、
この不公正さ、不合理さの源泉の是正作業が、様々な社会階層、政治的階層の思惑によりバイアスとして
かかり、不作為的に放置され続けてきた理由を縷々語り補完することは容易いし、素人なりの是正ビジョ
ンも開示できるだろう。それはさておき、第7章の残こすとこ6節で読み切りとなる。 

                                         この項つづく  

        

  
           
息子が並び直ぐにソールドアウトした彦根梨を食べる。
美味い!
そういえば、彦根林檎はどうなったのかな。
施餓鬼供養で祭壇に献果されていましたよ。
それは気づかなかった。

  

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