【オールソーラーシステム完結論 33】
ETP 2014は、2050年までのエネルギーの未来について以下の3つの可能性を分析している。
■6℃シナリオ(6DS):世界が現在進んでいる、破滅的な結果をもたらしかねないシナリオ。
■4℃シナリオ(4DS):排出量の削減とエネルギー効率の改善に向けた各国の公約を反映したシ
ナリオ。
■2℃シナリオ(2DS):温室効果ガスと二酸化炭素(CO2)の排出量を削減した持続可能なエネ
ルギーシステムの展望を提示するシナリオ。
再生可能エネルギー技術の目覚ましい進歩は、供給の未来像を一変させつつある。2011年時点で
まだ化石エネルギー担体が世界の電力構成において一次燃料の3分の2を占め、近年の需要増の
大半を満たしていたとしても、これは確かなことである。この数年間、風力発電と太陽光発電が
2桁の成長を記録したことなどにより、2011年には再生可能エネルギーの割合が世界全体で20%
まで押し上げられた。2DSでは、その割合が2050年までに65%に達する可能性がある。2DSの再生
可能エネルギー拡大シナリオ(2DS hi-Ren)では、太陽エネルギーは2040年までに主流の電源と
なり、2050年までに世界発電総量の26%を供給するようになる。
太陽光発電の収斂とE-モビリティによる需要増のスマートカップリングが実現すれば、この両方
の技術の普及が助長されるだろう。太陽光発電と電力貯蔵の組み合わせが、新たな可能性を拓く。
電気自動車と家電による電力需要の増加を効果的に管理すれば、既存のインフラおよび技術の有
効活用と新たなオプション利用の最適化によって、統合型システムの運用を下支えすることがで
きる。電気自動車の充電をうまく管理しなければ、需要のピークはさらに高まる恐れがあるが、
日中とオフピークの充電をうまく管理編成すれば、負荷曲線の平準化や、太陽光発電の統合が容
易になる。電化の分野では、負荷管理、相互接続、柔軟な発電、貯蔵容量などはどれも太陽光発
電の大部分を統合するために利用できるものであり、費用対効果を競うことができる。小規模な
電力貯蔵と組み合わせた太陽光発電パネルは送電線網を利用しない場合に適しており、遠隔地に
おける電力アクセスを提供することができる。
2012年7から導入された固定価格買取制度(以下、FITと略記する)は、2年を過ぎて3年目。太陽
光の大量設備認定順題とそれにともなって、電力需給ハバランスに支障が生ずるのではないかとの
懸念もされている。日本は、これまで、世界的にみて自然エネルギーに消極的であったが、上図
は世界各国で1990年の自然エネルギーの割合に比べて2012年にはその割合がどのように変化して
いるか表している。日本は1990年に比べて自然エネルギーの割合を-0.1ポイント減らした。
ドイツの19.5ポイン増とは比べるまでもなく、米国の0.5ポイントよりも低い。しかし、日
本はこうした20年間にわたる自然エネルギー停滞の時代から福島第一原発事故を経て、自然エネ
ルギーの大幅導入を目指して2011年にFIT導入を決定、導入後、わずか25ケ月(2014年7月末時点)
で、1,186万キロワットの新規の自然エネルギー電源が運転したことで発電量は急速に増大(下図
参照)。
他方で、自然エネルギーの急速な増大は、同時に買取費用の増大にもつながっており、この点が
懸念されている。 2013年度の FITのもとでの買取費用は5,792億円に達したが、同時に、多様な
便益が発生している点が見逃されるが、これは、二酸化炭素削減効果や価格変動リスク低減効果
など、自然エネルギーの便益には目に見えにくく、普及の初期段階では、自然エネルギー技術の
コスト高が影響するが、普及が進むにつれてコストの低減が進む。実際に、普及が先行している
太陽光発電においては――10キロワット未満の太陽光発電のシステムコストは、2010年度に比べ
て37%のコストダウンを実現。 1キロワット以上の太陽光では普及が進む 10~50キロワット
規模の中規模太陽光の場合、2010年度のコストが62.8万円/キロワットが、2013年10~12月は36.9
万円/キロワットと41%のコストダウンを実現する(下図参照)。
その影響による自然エネルギーの増大による主なメリットは、(1)化石燃料の消費量の削減で
あり、これにより、海外から輸入する燃料費の低減につながる。本財団の試算では、13年度は、
2441億円から3420億円の燃料費削減)。(2)二酸化炭素の削減――削減量は738~1,234万トン
に相当推計、これは家庭140~234万世帯の年間排出量に匹敵。(3)、化石燃料の価格変動リスク
も軽減させるとともに、輸入化石燃料価格は、世界の需要動向や中東の政治情勢、為替など様々
な要因変動を抑制する。
● 全量固定価格買取制(FIT)の運用上の課題
2年間のFITの運用を通じて、自然エネルギーの急速な普及拡大を実現し、コストダウンも進んで
いることがわかったが普及にともなってコストダウンが進んでも、それが国民負担の軽減につな
がらない制度上の欠陥――設備認定のプロセスで、量と買取価格が非連動している。特に太陽光
発電は、量が増えるとコスト逓減することが経験則としてわかっている。下図は太陽光モジュー
ルの累積導大量を横輔に縦軸にモジュールの価格を示す。太陽光発電の累積導入量が2倍になる
と、太陽光モジュールの価格がおよそ20%低下する傾向(太陽光発電システム全体についても
その相関)がみられる。したがって、FIT を適切に運用しようとすれば、価格を太陽光の導入に
応じて下げなければならない。日本のFITの場合においても2012年度から 14年度 にかけて、毎
年度買取価格を大幅に下げる。しかし、現在の認定運用においては、設備認定を通じて事業計画
段階で買取価格が確定できる。
今考えられているFIT改善の方向性は、導入の速度が速い太陽光発電に対し、量と価格が自動的に
連動するような仕組みを導入する必要――基準として年1回大幅に買取価格を見直すのではなく
量に応じて価格が自動調整されるような仕組みの導入が検討されている。
また、これ以外に、 政府の自然エネルギー普及の明確な政策目標が示されていないのが問題で
2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、自然エネルギーは、「これまでのエネ
ルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を」目指すと記載されているのみ
であり、極めて曖昧なものになっている。 国の目標が重要なのは、それが企業の投資行動に影
響を与えるからである。国が明確で、信輸陛の高い定量的な目標値を設定することで、企業は将
来的に自然エネルギー技術が市場に導入していくことが見通せるため、技術開発を積極的に進め
関連部材の工場建設など大型の投資を行えるが、2014年においても政府はあいまいななままであ
る。
さらに、エネルギー基本計画での数値を上回る水準とは 「2030年に20%」である。これは他
の先進国で掲げている水準に比べて極めて控えめなものである。英国やフランスといった欧州主
要国、米国の主要州のカリフォルニア州など、「2020年」までに電力の20~30%程度を自然エネ
ルギーでまかなうことを掲げ、ドイツやスペインは、さらに進んでおり、自然エネルギー電力の
割合を2020年に30%後半にする目標を掲げている。これらの国の多くは、かならずしも大規模
水力発電が豊富にあるわけではなく、水力発電が豊富な日本よりも目標達成に対するハードルが
高い。
次に、九州電力をはじめとする電力会社による系統接続保留などに象徴される、系統を運用する
電力会社側では自然エネルギーの受け入れの態勢が十分出ない。(1)上流系統(特別高圧線)で
の接続制約が発生しているケースが増えているものの、それに対する整備費用の負担の仕方が自
然エネルギー電源に適した形になっていない。現行ルールでは、最初に系統接続する事業者が、
必要な上流系統の増強費を全額支払い、その後3年以内に他の事業者が増強された系統を共用す
る場合に当初要した費用を案分して負担するが、この仕組みでは最初にコストを負担する事業者が
巨額の費用を負担するリスクを負う(後続者が得する)。(2)第2に系統全体で太陽光や風力
といった自然変動電源の出力変動に対応する運用体制が整っていない。変動電源を系統に大量に
受け入れるには、変動電源の出力の変化を適切に予測し、必要な予備用の電源のコストの最小化
が求められるが、需給調整のエリアを拡大することで、変動電源の変動性は平滑化でき予備電源
が逓減でき、自然エネルギーの受け入れだけでなく、国全体の需給調整の効率化にも寄与ための
自然エネルギー受け入れのための態勢づくりが求められている。
● デジタル通信と光の融合 翳すだけで解決?
パナソニック株式会社は、LED光源を高速点滅させることでさまざまな情報を送ることができる
可視光通信技術を発展させ、その光源から発信されるさまざまな情報を搭載したID信号を、スマ
ートフォン搭載のイメージセンサーと専用アプリを用いて高速受信する技術を独自に開発。従来
の可視光通信方式を利用した光IDをスマートフォンを用いて読み取るためには、(1)専用の受
光器をスマートフォンに装着して用いなければならない、(2)低速(約10数bpsレベル)でしか
データ送受信を行えない、などの制約条件があった。この技術を利用すると、スマートフォンに
専用のアプリケーションソフトをインストールするだけで、スマートフォンと光IDの発信機器
(デジタルサイネージ、LED照明など)の間での光ID送受信が可能になる。また、従来技術の数
百倍の通信速度(数キロbps)で光IDを高速送受信することが可能となる。
従来、発光ダイオード(LED)を光源として備える照明器具において、照明光の強度を変調す
ることによって信号を送信するものが提案されており、このような照明光通信装置では照明光そ
のものを変調することで信号を送信するため、赤外線通信装置のような特別の機器を必要としな
い。また、照明用光源として発光ダイオードを用いることで省電力が実現できるから、地下街な
どでのユビキタス情報システムへの利用が検討されている。照明光通信装置は、定電流源と、平
滑コンデンサと、負荷回路と、負荷変動要素と、信号発生回路と、スイッチ要素とを備える。平
滑コンデンサは、定電流源の出力を平滑するものである。負荷回路は、複数の発光ダイオードを
含み、定電流源の出力が供給される。負荷変動要素は、一部の発光ダイオードに並列接続された
抵抗器から成り、負荷回路に負荷されることで負荷回路の負荷特性を部分的に変化させる。信号
発生回路は、2値の光通信信号を発生する。スイッチ要素は、負荷変動要素である抵抗器と直列
に接続されたスイッチング素子から成り、光通信信号によりオン/オフが切り替えられることで、
負荷変動要素を負荷回路に付加するか否かを切り替える。これにより、負荷回路の負荷特性が光
通信信号に応じて変化するため、発光ダイオードを流れる負荷電流が光通信信号の波形に変調さ
れる。
このような照明光通信装置では、通常、受信端末において通信信号を正常に受信できているか否
かを判定するために、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)符号を通信信号に付加
して送信するが、照明光通信装置が送信するデータは、屋内における照明器具の位置情報や、照
明器具の固有ID(Identifier:識別子)、または設置場所を特定するIDのようなIDデータ
であり、固定されたデータで、通信信号を送信する度にCRC符号を演算する必要がなく、予め
メモリに記憶されているCRC符号を通信信号に付加すればよい。しかしながら、例えば想定を
超えた雷サージや静電気の発生などにより予期せぬメモリの劣化が生じ、IDデータが書き換わ
る場合がある。この場合、上記従来例のような照明光通信装置では、IDデータが書き換わるこ
とを想定していないため、通常時と同様にCRC符号を通信信号に付加して送信し、このCRC
符号は、書き換わったIDデータと対応するものではないため、受信端末では、通信信号を正常
に受信できず判定してしまうため、このような照明光通信装置では、何らかの異常が発生して送
信するデータが書き換わった場合でも、通信信号は通常通り送信可能であるために誤った通信信
号を送信し続けるという問題があった。
そこで、上図の光源部3の出力する照明光の光強度を変調して2値の通信信号を重畳させる制御
回路11を備え、制御回路11は、通信信号で送信するデータに基づくCRC符号を予め記憶す
るメモリ110と、データに基づいてCRC符号を演算するCRC演算器112とを備え、少な
くとも起動時に、各CRC符号を比較し、一致すれば正常、一致しなければ異常と判定する第1
処理と、第1処理で異常と判定すると異常を外部に報知する第2処理とを実行する回路構造で、
何らかの異常が発生して送信するデータが書き換わった場合に、誤った通信信号を送信し続けるのを防
止するするという新規考案である。