告子(こくし)篇 / 孟子
※ 人間の本性は柳?:告子が言った。「人間の本性は、しなや
かな柳のようなものだ。そして義という徳は、柳細工のよう
なものだ。人間の本性で仁義という徳を作るのであって、こ
れは、柳で細工物を作るようなものだ」孟子は反駁する。「
あなたは、柳の性質を生かして細工するのか。それとも、柳
の性質を殺してしまって、細工するのか。もし後者だとすれ
ば、人を殺してしまってから、仁義という徳を作ることでは
ないか。あなたのそういう意見が人々をまどわして、仁義を
ゆがんだ方向に引っぱってしまうのだ」
〈告子〉 孟子と同時代の人。事績はよくわからない。儒家、墨家
の学を修めたという。人問の本性は善でも不善でもない
と主張した。
〈柳細工〉原文は「桮棬」(はいけん)、柳の枝を絹んで作った器
である。
【解説】 これ以下の五章は、性善説をめぐる告子との諭争である。
人間の本性は善である。この人間性への信頼こそ、孟子
の人間認識であり、修養諭の根底である。これをくつが
えされれば、すべてが崩れる。孟子が、読むものに奇異
の感さえ与えるほど、躍起になって反駁するのも、実は
そのためである。汲子は巧みなレトリックで告子の矛盾
を衝いてゆく。しかし仕苦役の論拠が積極的に腰問され
ていないため、その巧みさも論駁のための論駁という感
じを免れない。だが、逆に言えば、それだけ必死だった
のである。
【ピエゾタイル篇:風圧分布高密度計測センサ薄膜】
今月6日、産総研の研究グループは、フィルムに形成した切り紙構造の動きを利用し、風圧の分布を高
密度に計測→格子状に並んだ羽根状のフィルムの動きを、印刷法で形成した高感度ひずみセンサで個別
に検出→低燃費ボディーの開発や姿勢制御技術の高度化など、モビリティー分野での幅広い応用に期待
鳥の翼をヒントに、切り紙構造と印刷技術で風圧分布を可視化の成功を公表。
今回開発したセンサは、単一の樹脂のフィルムを切り紙細工のように加工して小さな羽根状の可動構造
を形成し、その動きを利用して風圧の分布を計測するものである。風圧に応じて動く羽根状の可動構造
が格子状に並べることで、フィルムが受ける風圧の分布を個々の可動構造の動きとして捉える。フィル
ムの表面には高感度なひずみセンサを印刷形成、可動構造の動きを個別計測。また、印刷法とフィルム
加工製造センサは大面積化が容易であり、自動車や航空機の低燃費化/姿勢制御の高度化など、モビリ
ティー分野での幅広い応用できる。
また、飛行機が乱気流に突入した時の揺れには誰もが不安や不快感を覚える。こうした乱気流の中でも
安定した飛行体勢を維持するために、バイオミメティクスの分野からは鷹やハヤブサなどの鳥類が持つ
風圧検知機能の模倣が有効である。鳥類は翼の羽根1本1本を使い風を面状に受け、風圧の分布や流入
角度を捉えることで飛行に最適な姿勢を選択。この高度な風圧検知を風圧分布を高密度で計測するセン
サをが必要とする。また、自動車の低燃費ボディーの開発をはじめ各種産業への広い技術応用できるが、
従来の風圧や風速の検出センサは設置された1点のみの計測のため、多点計測には個別のセンサーを並
べ設置する必要があるため高密度分布計測が困難であり、また自動車や飛行機のボディー表面で計測に
は、面形状への設置や大面積化が必要であり、これらを可能にする新たなセンサーデバイスが求められ
ている。
開発したセンサフィルムの拡大写真を上図1(a)に示す。フィルムを切り抜いて空隙部を設けることで、
風を受ける面状の部位が細い柄を介してフィルム本体から突き出た羽根状の構造を形成。この構造は、
面状の部位が圧力を受けると細い柄がたわみ、センサーフィルム本体から独立して動く構造として働く。
この構造をフィルム面内に格子状に配列させることで、鳥の羽根の1本1本と同じように、風圧の分布を
個々の可動構造の動きから計測できる。今回開発したセンサシートでは、厚み50mmのポリエチレンナフ
タレート(PEN)フィルムをレーザーで加工し、図1(a)の羽根状の可動構造を10 mm間隔でX方向、Y方
向にそれぞれ13個ずつ配列させ、169個のセンサを1枚のフィルム内に格子状に形成させる。
風圧による羽根状の可動構造の動きを電気的計測には、可動部表面に生じるひずみ検出することが有効
なものの、従来のひずみセンサは、ひずみにより生じる電気抵抗変化率(ゲージ率)が低く、今回のよ
うに多点ひずみを一括検出の場合、個々の可動構造の変化を正確測定できない。高感度ひずみセンサ用
導電インクを独自開発。このインクを印刷形成したひずみセンサーは、ひずみに応じて電気抵抗値が極
めて大きく変化する。上図1(c)のグラフの傾きに示されるように、ひずみセンサーの感度の指標とな
るゲージ率は約200で、これは市販の金属箔ひずみゲージの100倍の感度に相当。このひずみセン
サを図1(b)に示すように可動構造たわみ方向に沿わせて形成すると、たわみの大きさに応じて明確な電
気抵抗値の変化が示される。図1(d)のように、風圧検出部単体の風圧による電気抵抗値の変化率は、
風圧を受けていない状態からおよそ200 Paまで連続的に変化し、一般道路を走る自動車の制限速度であ
る時速60 kmで受ける風圧を計測範囲に収める。この風圧検出部の動作を多点で検出するために、タッチ
パネルなどで一般的に用いられる単純マトリクス駆動回路を同一フィルム表面に形成し、これに各ひず
みセンサーを接続。多点計測した場合でも、各センサが示す明確な電気抵抗の変化により、可動構造の
動きを個別に判別可能となる。このように個々の可動構造が風圧に応じて示す動きをひずみセンサを用
いて計測する風圧分布計測用のセンサフィルムを開発する。
このセンサーフィルムは、簡便な手法で製造できる。上図2に示すように単純マトリクスを構成するX電
極線とY電極線、それらの間に挿入されるドット状の絶縁層、そして独自開発した高感度ひずみセンサ用
導電インクのひずみ検出部はいずれもスクリーン印刷形成され、機能層が印刷されたフィルムに、微細
加工用に最適化したレーザー加工を施すことで、ひずみ検出機構と羽根状の可動構造が一体となったセ
ンサフィルムが製造される。これらの工程は全て大気中で行えるため、大掛かりな真空装置を必要とせ
ず。またこの製造工程で用いられる加熱処理は最高130 ℃であり、製造に必要なエネルギーも低く
抑えられる。製造に必要な負荷を設備面、エネルギー面の両面で抑えられ、開発したセンサフィルムは
量産化や大面積化に対応できそうである。
※ 関連特許
・特開2016-174699 ゲームコントローラ 大日本印刷株式会社
・特開2017-208372 導電パターンの形成方法および電子デバイスの製造方法 DIC株式会社他
・特開2017-183637 配線基板、配線基板巻回体及び配線基板の製造方法 大日本印刷株式会社
・特開2017-188510 電子デバイス、電子デバイスの製造方法、及び電子デバイスを備える実装基板
大日本印刷株式会社
【太陽光を無償設置するPPA事業】
● フリーソーラープロジェクトの普及拡大を後押し
今月1日、NTTスマイルエナジーとデンカシンキは、PPA(Power Purchase Agreement)事業――電気を利
用者に売る電気事業者と発電事業者の間で結ぶ「電力販売契約」――に関してビジネスパートナー契約
を締結したことを公表。デンカシンキが提供する第三者所有モデル「フリーソーラープロジェクト」の
さらなる普及拡大を狙い、NTTスマイルは「エコめがね」の提供に加え、住宅に設置された太陽光発電
システムのオーナーとして参画する。昨今では主に一般住宅を対象として、発電事業者が住宅オーナー
に太陽光発電システムを無償設置し、一定期間内は発電事業者がシステムを所有し売電収入を得るとい
う「第三者所有モデル」の普及が進んでいる。第三者所有モデルでは、一定期間内は住宅オーナーが余
剰電力の売電ができないなどの制限はあるが、住宅オーナーは次のようなメリットがある
・初期費用の負担なしで自宅に太陽光発電システムが設置できる
・一定期間利用後に、設置された太陽光システムが無償譲渡される
・災害時に非常用電源として利用できる
デンカシンキが提供する第三者所有モデルの住宅向け太陽光発電サービス「フリーソーラープロジェク
ト」は、一般的な従来の第三者所有モデルと比較して、設備譲渡までの期間が短くなるメリットがある。
無償で太陽光発電を設置、“発電払い”で需要家の負担ゼロ)。同社の試算では、設置から8~9年程
度で住宅オーナーに譲渡できる見込み。このフリーソーラープロジェクトでは、NTTスマイルエナジー
は既にPPA専用の「エコめがね」を提供していた。中国のOEMメーカーや個人投資家などからの出資を
集めデンカシンキは提案開始から約1年で600件程度の住宅オーナーと契約したとするが、本プロジェク
トのさらなる普及拡大のため、NTTスマイルエナジーは発電事業者としてシステムのオーナー兼投資家に
参画することを決定。オーナーとして参画するにあたり、NTTスマイルエナジーの資金調達は「NTTグル
ープとして数十億円程度を調達する」(NTTスマイルエナジー社長 小鶴慎吾氏)として、エコめがねの
拡販と売電収入の両面から投資回収を狙う。さらに、本プロジェクトの全国展開に向けて取り組むとし
ており、目標件数については「2018年度半ばをめどに早期1,000件を目指している。
❦ なぜ、かまぼこ屋がエネルギーのことを考えたのか ❦ No.1
● 東日本大震災から学んだこと
2011年3月11日、大震災が東北を襲ったそのとき、私は小田原箱根商工会議所で次の会議
が始まるのを待っていました。激しい揺れが収まり、テレビのスイッチを入れると、津波が街をの
み込んでいく映像が映し出されました。被災地には私が日本商工会議所青年部の会長のときに知り
合った友人が多数います。そうした仲問たちの顔が一つひとつ浮かんできました。携帯電話で安否
を確認しようとしても、まったくつながりません。急いで会社へ戻り、情報のネットワークをつく
ろうと被災地以外の商工会議所青年部時代の友人に連絡をとりました。そうこうしているうちに、
青年部時代の仲間のなかから鉄砲玉みたいな人間が現れて、翌朝、トラックに救援物資を積めるだ
け積み込んで被災地に向かって出発しました。彼らが直接安否を確認して連絡してきてくれたおか
げで青年部時代の仲間の生存が次々に判明していきました。
そんな仲間の一人、気仙沼の坂井政行さんとのことをお話しします。坂井さんは私か全国の会長
を務めた2003年度に東北地区大会の責任者を務めていただいた関係で2年ほど行動を共にした
かけがえのない友人の一人です。彼の商売はクリーニング屋さんでした。海際の工業地帯にあるお
店と工場と自宅が一つになった建物は津波ですべて流され、間一髪、奥さんと身一つで逃れて、高
台にあったため避難所になっていた気仙沼高校に避難し、その避難所のリーダーをやっていること
がわかりました。ようやく坂井さんと携帯電話がつながりました。
「何か欲しい?」
「何もないから何でもよい,とりあえず食い物が欲しい」
「じゃあ、かまぼこだったらすぐに送れるから、どこへ送ったらいい?」
「災害対策本部にだけは送らないでくれないか」
災害対策本部に送られてしまうと荷物が出てこなくなってしまうからだというのです。私も現地
の対策本部に何度か足を運びましたが、1カ月後でもまだ救援物資が臨時の倉庫に山積みのままと
いうところが多かったことを覚えています。通常の災害と違って東日本大震災の被害の規模がいか
に大きかったかを物語る話だと思います。そこで彼の言葉に従って、かまぼこをトラックに祓せて、
気仙沼高校、坂井政行宛に送り続けました。その後も彼と連絡を取りながら、物資を送り続けてい
ると、必要なものがどんどん変わっていくのがわかりました。食べ物の次は靴が欲しいというわけ
です、まったく私の発想にはないことでしたが、考えてみれば、びしょ溢れになって逃げて、食べ
物が間に合ったとなれば次に必要になるのは動きまわるための靴だというのが当然のなりゆきでし
た。
テレビで見ている限り、報道ではどこの週難所にも食べ物は行き渡っているように受け取れまし
たが、実際には、坂井さんのところは間に合っていても、まだまだ行き渡っていない週難所がいく
らでもあるというのが現実でした。それどころか彼のまわりには、行政が把握していないような避
難所が何十ヵ所もあるというではありませんか。彼は自分白身もたいへんな状況なのに、できる限
りそのような週報所にも物資を配るように努力すると言ってくれました。
「じゃあ、食べ物はまだまだ要るよね」
私はマスコミの報道に惑わされることなく食べ物を送り続けました、
東日本大震災の救援活動を通じて強く思ったことは、私と彼の間に顔の見える関係がな甘、ひま
ぽこ屋がヱネルキーのことを可えたのひなければ、こうはいかなかっただろうということです。テ
レビを見ながら義援金を送ったり、救援物資を市役所に持ち込んだり、災害対策本部宛に送ったり
などしていたのでは、自分が送った救援物資が役立ったかどうかもわからなかったと思います。中
央集権的な仕組みは平時は効率よく勤くのでしょうが、ひとたび事が起きてしまうとシステムその
ものがマヒしてしまうということもよくわかりました。
そこでものをいうのは、「分散型・独立型・直接型」の仕組みです。中央集権型と分散型の両方
の仕組みがないと、いろいろな状況には対応できないということを身をもって知りました。そして、
いくらよい仕組みをつくっても、そこに人と人との顔の見える関係がないと、その仕組みはきちん
と機能しないということがわかったのでした。
顔の見える関係という意味で、実に得がたい教訓を得た出来事がありました。テレビなどで見か
けるのは、被災者の皆さんがプライバシーのない避難所で冷たいおにぎりを食べ、風呂にも入れず、
板の床に横になっている姿でした。他方、温泉のある箱根のホテルはキャンセル続きで、がら空き
です。経営者はこのままだとパートさんのクビを切らないとやっていけなくなるという状態でした。
私が素人考えで思ったのは、「一方に寒さで震えている人がいて、他方で部屋が空いて困っている
なら、こっちへ来てもらえばいいじゃないか」ということでした。寒い避難所から暖かい箱倶に来
てもらって温かいご飯を食べて、熟い温泉につかりながら1週間もすごしたら、元気を取り戻して
くれるのではないかと単純に考えたわけです。
すぐに小田原の市長さんと箱根の吋長さんと箱根の旅館組合の組合長さんのところへお願いに行
き「受け入れ態勢をつくりませんか」と相談を持ちかけました。調べてみると、災害対策基本法に
いい方法があることがわかりました。避難民に対して国から1泊5000円の補助金が出るという
のです。いろいろと議論して計画を練り上げた結果、当座、箱根町が補助を肩代わりし、旅館組合
も5000円でも入ればパートさんをクビにしないですむというので、まず700人の受け入れ態
勢を整えてくれました。小田原市は被災地まで送迎のバスを手配してくれることになりました。私
はその計画の情報を現地の避難所に流したのです。私のイメージでは町内会の旅行みたいにバスを
2、3台連ね、まとめて送迎するはずでした。ところが、実績はゼロで終わってしまったのです。
この失敗から私が個人的に学んだことは、気仙沼にしても石巻にしてもほかの被災地にしても、
箱根は遠い場所です。そのうえ、行ったこともない、知った人もいない、そんなところには来ない
ということでした。実際には群馬県の片品村へは行っているわけですから、そこよりも遠い箱根で
あっても、だれかさんを普段から知っているという関係があれば、安心して来てもらえたのではな
いかと思いました。どんなにいい仕組みをつくっても、顔の見える関係が伴わなければ、人は動か
ず仕組みは役に立たないということを思い知らされました。
顔の見える人と人のつながりがいかに大切か。そういうことまでわれわれは、あまりにも他人任
せにしすぎたのではないか、これからは顔の見える仕組みを自分たちでつくっていかなければなら
ない私はそれを痛感しました。
『エネルギーから経済を考える』
尚、本書は2013年11月1日発行「エネルギーから経済を考える」を新書判にしたもので、内容は
発行当時のものです。
この項つづく
● 事件背景と告発の意味 Ⅷ
第2章 信教の自由・プライバシーと監視社会-テロ対策を改めて考える
第4節 流出資料で見る警備公安警察の監視の実態
続いて下資料3は、都内にあるモスクの場所や代表者などを一覧表にまとめたものです。を見ると、
モスクの設立年月日といった基礎的データのほか、モスクに出入りしている人の特徴、国籍、礼拝
への参加者数、さらにはモスクの銀行口座までが記載されていて、違法に近い手段も駆使してモス
クを日常的に徹底監視していることが浮かびあがります。
次の資料が「要警戒対象視察結果報告」、いわゆる尾行に関する記録です(資料4)。が「要警戒」
と一方的に見定めたムスリムをどのように追いかけまわしていたかがわかります。たとえば、ここ
にあるように、朝八時から「マルタイ=要警戒対象」の一視察」を開始し、居室のカーテンがどう
なっているか、電灯はどうか、そして外出すると終日、すべての行動を尾行した結果が記録されま
す。セブンーイレブンに入って何を買い物したがとか、飲食店で誰と接触したかといったことまで
事緬かに報告され、「マルタイ」と接触した人物が何者かもやはり徹底的に調べ上げる。必要があ
れば、接触者にも二四時間体制の尾行がついていることがうかがわれます。
これらはいずれも日本の公安警察組織が左翼勢力を監視する際に使っていた手段であり、それら
を駆使してムスリムたちを徹底的に監視しているわけです。
第5節 ヨーロッパにおける監視捜査の状況
個人情報の収集に関してヨーロッパとアメリカでは基礎となる考え方が異なります。それはプラ
イバシー権が発展してきた歴史が異なるためです.アメリカのプライバシーはアメリカ合衆国憲法
修正4条とともに発展してきました。修正4条は日本国憲法35条と類似した条文で、主に住居の
不可侵をうたったものです。無限定な捜索や差押を禁止し、特定の容疑と結び付いた令状に基づく
捜査を原則としています。
そして判例法の発展とともに、住居などの閉鎖的な空間でなくとも、プライバシーの合理的な期
待が及ぶ状況であれば、修正4条の理念が適用されるとして、通信の秘密などに厳格な保護が及ぶ
ようになっていきます。
他方、ヨーロッパでは主にナチスードイツのポロコーストに対する反省が基礎とされています。
ナチスはひとりひとりの個人情報を収集し、分析することでユダヤ人かどうかの選別を行いまし
た。国家権力が市民の個人情報を収集し、それが濫用された場合に最悪の結末が訪れるという強烈
な体験が土台にあります。そのため、EUでは国家が個人情報を収集すること自体を厳格に制限し
ています。
このように国家による監視、個人情報の収集という現象に関して、ヨーロッパとアメリカでは状
況が異なることを前提に宮下氏の説明を伺います。
ナチスのユダヤ人大量虐殺を可能にしたものは
井桁:これまでのお話を踏まえて世界全体の監視の実情についてお話しいただけますか。
宮下:2013年6月7日、スノーデン事件の直後ですけれども、オバマ大統領有時)が次のよう
な演説をしました。「100パーセントの安全と100パーセントのプライバシーを何の苦労もな
く持つことはできないと認識することが重要である」(14)
みなさんがこの国を守らなければならない、そのような立場に立てばやはりテロ対策なり情報収
集は必要となります。同時にテロと何の関係もない一般市民のプライバシー情報を無断で収集する
こともやはり許されないことです。
昨年(2015年)靖國神社のとある公衆トイレで爆破事件が起きました。公衆トイレは危ない
場所であるとして、全国の公衆トイレに監視カメラをつけるとしたら賛成するでしょうか。
このように、いくら監視をしてもテロを防げるかどうかはわからない。他方で監視をすればプラ
イバシーの侵害が起こってしまう。このことを議論の出発点としなければなりません。
先月(2016年.5月)までベルギーのブリュッセル自由大学で研究をしておりました。テロ
の後、EU諸国でどのような対策が練られているのでしょうか。EUの各国首脳が集まるEU本部
では、「イスラム教徒はテロリストではない」というメッセージを発信しております。ごくごく当
たり前のメッセージです。しかし、このごくごく当たり前のことが共有できていないというのが、
監視の現状なわけです。
私はボーランドのワルシャワに国際会議で行ったことがあります。その際、ポーランドのアウシ
ュビッツ収容所に行きました。広島よりも長崎よりも小さいこの場所で、100万人殺害されまし
た。75年前の話です。携帯電話もパソコンもなかった時代、なぜ100万人をここに集めること
ができたのでしょうか。それはナチスの監視によるものです。どのような監視をナチスは行ってき
たのでしょうか。
そうです、個人情報の収集です。ナチスがやったのは、ヨーロッパ全土を逃げ回るユダヤ人の個
人情報を収集して、目の色、肌の色、髪の色、話す言語などの個人情報を、80項目に分類してパ
ンチカードを使ってひとつひとつの項目に穴を開けて管理することでした。IBMのパンチカード
カードです(15)。このような形でユダヤ火100万人が集められて、そして殺された。こうした
監視という事態が、今現在スマートフォンによって同じように起きています。この手口はナチスの
手口と非常によく似ていると思います。
注(14)オバマ大統領はテロ対策とプライバシーに関する議論は望ましいし、民主々義にとって必要
だと述べたうえて、社会として選択をしなければならないと述べています。「ニューヨークタイムズ
紙」の解説記雅はこちらです。http://www.nytimes.com/2013/06/08/us/nationa1‐securicy‐agency‐surveihn-
ce.html 発許の全文はこちらで読むことができます。http://blogs.wsj.com/washwire/2013/06/07/transcript-wha
t-obama-said-on-nsa-contriversy/
注(15) IBMが国勢調査データを処理する目的で開発したホレリス機器を用いることにより、手作業
の数十倍の速度でユダヤ人に関する個人情報の仕分け、管理が吋能となったとされています.ナチス
は国勢調査の以回報をもとに、ドイツに居住するすべてのユダヤ大作記溥を作成し、その陵その登記
簿はヨーロッパ全土を対象とするものへと拡大しました。ヨーロッパではナチスによるポロコースト
の反皆から、国家曜力が個人防報を管理すること自体を基本権に対する侵害としてとらえる傾向にあ
ります。
この項つづく
Feb. 06, 2017
● 電動バイク MotoGPプロモーター2019年スタート
モトグランプリにも再エネの流れが加速している(決定との情報は未確認)。
● 今夜の寸評:小さな巨人
NHKのあさイチで「早朝高血圧」のことが放映されていたが、ウエアラブルな血圧計が市場にでまわっ
ていないかネット検索をするが、カウスレス(スルーブレス:袖無し)型の血圧計は海外メーカのみの
ようだが、測定値の精度には問題がありそうだが、いずれこのタイプに集約されていくだろ(利便性的
側面で:下図参照)。なにせ、釈迦の唯我独尊、アドホックなキルケゴールのごときシームレスでいて
ボーダレス、デフレーション、ダウンサイジング、イレージングでエクスパンション な”小さな巨人”
のデジタル革命の基本特性を踏まえれば、それは自明だろう。