告子(こくし)篇 / 孟子
※ 君子の考えと凡人の考え: 淳于髠(じゅんうこん)が言った。「名声と功績
とを第一と見る人は、世のため人のためにつくす人間です。それらを
軽視する人は、自分だけが正しければよいと考えている人間です。先
生は斉の大臣職にありながら、名声や功績をどこにも残さないで国を
立ち去ろうとなさるが、仁徳のあるお方とはそんなものですか」
孟子は答えた。
「伯夷は、低い地位に甘んじ、賢人の遜を守り不徳の君には仕えなか
った。伊尹は、暴君梁と聖玉湯とに転々と仕えた。柳下恵は、愚かな
君王をもいとわずに仕え、小役人になることすら辞さなかった。この
三人の身の振り方はそれぞれちがうが、目指し仁ものはただ一つです」
「一つとは?」
「仁です。君子は仁でありさえすればよい。身の振り方まで同じにす
る必衰はないのです」「魯の繆謳公のころ、賢人公儀子が宰相で、賢大
子柳子息も臣下として仕えていたのに、魯は領土を削られ、それもま
すますひどくなるばかりでし祀。そんなものですかね、賢人が国の役
に立だないのは」
「虞の国は賢人の百里奚(ひゃくりけい)を用いなかったために滅び
、秦の謬公(ぼくこう)はかれを用いたおかげで覇者になった。賢人を
用いなければ滅びるのです。頂上を削られるだけですむものではない」
「むかし、斉の名歌手、王豹が淇水(きすい)のほとりに住むと、そ
の感化で河西の人まで歌が上手になり、同じく歌の名手緜駒(めんく)
が高唐の町に住むと、近くの斉右(さいゆう)の人まで歌が上手にな
った。斉の大夫で莒(きょ)で戦死した皐月と杞梁の妻は、夫の戦死
を泣き悲しみ、そのため国の風俗が改まった。内にひそむ力は外に影
響しないではいないものです。職務につきながら、その効果が現われ
ないなど、わたしはみたこともない。とすれば、いま賢人はいないこ
とになる。いればわたしが知っているはずですからね」
「孔子が魯の司法大臣であったころ、意見が容れられず、祭祀のとき
供物の肉が配られなかったので、礼服を着かえず国を立ち去った。孔
子の人柄を知らぬ人は、供物の肉のためだと思い、知っている人でも
主君が無礼であったからとしか思わなかった。だが本当は、微罪を得
だのを機会に立ち去ったのであって、いいかげんなことで去ったので
はない。君子のすることは、凡愚の衆にはむろんわかるまい」
〈淳于髠(じゅんうこん)〉 斉の弁士。(離婁篇参照)
〈微罪を得だのを機会に……〉孔子が祭祀の責任者でありながら、こ
のような非礼が行なわれたのは自分の責任でもあると考えたのである。
No.155
【地熱発電篇:水素コジェネレーションシステム】
● 究極のコージェネ工学とは何か
2月14日、株式会社大林組は、ニュージーランドのTuaropaki Trust社は、地熱電力を利用
した二酸化炭素フリー水素製造・流通の共同研究に関する覚書を締結したことを公表。将来
的に国内外で二酸化炭素フリー水素関連事業に参画するためのノウハウを収集する。 これ
まで大林組は、16年4月にニュージーランドの地熱調査会社MB Century社と地熱発電に関
する相互協力協定を締結。同社の親会社であるTuaropaki Trust社――傘下に地熱発電子会社(
発電能力113MW)を持ち、17年間にわたって安定的に運転してきた実績がある――と、同
国における地熱電力を利用した二酸化炭素フリー水素製造および流通の事業可能性について
検討してきている。今回、Tuaropaki Trustグループから電力の安定供給が見込める地熱発電
を利用して、年間100t程度の二酸化炭素フリー水素を製造・貯蔵・運搬し、市場への流通経
路や需要先の開拓までの各段階について共同研究・実証する。燃料電池自動車(FCV)1台
が1年間に1万キロメートル走行すると想定した場合、年間で千台分の燃料が賄える製造量
となる。
Dec. 11, 2017
大林組は国内でも水素関連事業に関する実証実験に参画しており、17年12月には新エネ
ルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業として川崎重工業と共同で、市街地で水素に
よるコージェネレーション(熱電併給)システムの実証プラントを神戸ポートアイランド地
域に完成させている(上写真)。この実証試験では、水素を燃料とする1MW級ガスタービン
(水素コージェネレーションシステム)から発生させた熱や電気を、病院などの近隣4施設
に供給。地域コミュニティ内でエネルギー利用を最適化する統合型エネルギー管理システム
(統合型EMS)を検証する。18年1月下旬から実証運転に取り組み、2月上旬から近隣施
設に熱と電気を試験的に供給し始めている。
Mokai Geothermal Power Station
【透明p型アモルファス半導体、高移動度を達成】
2月16日、東京工業大学細野秀雄教授らの研究グループは、溶液塗布による製造プロセス
で高い電子移動度を持つ透明p型アモルファス半導体を開発したことを公表。n型アモルファ
ス酸化物半導体の「IGZO」に迫る移動度を達成しており、プラスチック基板上で透明pn接合
を容易に形成することが可能となる。それによると、大きな電子移動度を持つ透明n型アモル
ファス半導体(TAOS)の設計指針などを1996年に発表。この成果はIGZOの名称でディスプレ
イの駆動回路などに用いられている。ところが、p型アモルファス半導体では、正孔が動く価
電子帯の上部が、主に陰イオンの占有軌道で構成されていることなどから、これまでの銅(
Cu)イオンやスズ(Sn)イオン系では、高い移動度を実現することが難しかったが、イオン
半径が最大200pmの「ヨウ素(I)イオン」に注目した。結晶のCuIは透明なp型半導体であり、
多結晶薄膜の移動度が最大8cm2/Vsとなることはこれまで報告されている。そこで今回、CuI
とSnI4を有機溶剤に溶かし、室温でスピンコートをして、透明かつ均質のアモルファス薄膜を
形成した。正孔の移動度は6〜9cm2/Vsで、結晶薄膜と同等の数値を示す。
今回の成果により、透明アモルファス半導体を使ってpn接合をプラスチック上に形成できる
ことから、曲がる電子回路の作製が可能となります。さらに物質設計指針が提示されたので、
これに沿って移動度の大きい透明p型アモルファス半導体が様々な元素で構成できることから
透明n型アモルファス半導体(TAOS)に匹敵する新しい物質群が得られるものと期待される。
※ Titol:Material Design of p-Type Transparent Amorphous Semiconductor, Cu-Sn-I, Advanced Materia
ls · January 2018
【気体を“選んで”吸着・分離 多孔性配位高分子】
● 化石燃料から発生する二酸化炭素の回収なども可能に
❦ 高性能消臭剤 京大の多孔性素材実用化
2月20日、京都大の北川進教授らが開発した「多孔性金属錯体(PCP)」を基に、京都
の中小企業が高性能の消臭剤の開発が公表。たばこなど従来は残りがちだった臭いを効率的
に除ける。商品化されれば、国内では初めてのPCPの実用化になるとみられる。先端の知
見を持つ京大と、長年の販売実績のある中小企業がタッグを組む。化学薬品メーカーの大原
パラヂウム化学」が、PCPの開発によりノーベル賞候補と言われる北川教授の下で研究す
る樋口雅一助教の協力を得て開発。PCPは、一辺が数ナノメートル以下の立方体がジャン
グルジムのように連なった構造を持つ。金属イオンが各頂点にあり、臭いのもととなる物質
を引き寄せて立方体内に取り込む。同社によると、従来の活性炭などに比べて臭いを吸着で
きる力が数倍になり、消えにくいたばこ臭や排せつ臭をほぼ完全に取り除けるという。特殊
な樹脂と混ぜて、厚さ約1ミリのシートとなっている。
同社で技術部門を統括する齋藤公一さんが2014年7月ごろ、PCPを使って水をはじく
機能性材料を北川教授らが開発したという新聞記事を読み、樋口助教に連絡を取ったのがき
っかけ。PCPの構造を知り、消臭剤にも使えるとひらめく。樋口助教から技術指導を受け
15年4月から1年半かけ消臭剤を完成させた。現在、消臭剤を使った空調フィルターな
どを手がける業者と協力して、商品開発を進める。
酸素、二酸化炭素、メタン、水素など、気体は、固体や液体に比べて扱いづらい。気体を選
択的に分離・貯蔵する技術の開発は、さまざまな分野のブレークスルーにつながると期待さ
れる。工場などで排出される二酸化炭素を回収、貯留できれば、環境問題解決の切り札とな
るだろう。水から水素ガスを容易に分離できれば、燃料電池の普及が飛躍的に進むに違いな
い。そんなイノベーションの扉を大きく開く可能性を秘めているのが、北川 進教授が開発
した多孔性配位高分子(PCP)。
二酸化炭素吸着彫剤(あるいは除去剤)。面白い、実に楽しい発明だ。
【北極と南極の海氷の異常】
2月6日、アメリカ雪氷データセンター(NSIDC)氷雪圏の観測およびデータの管理・配信
などを行う米国の研究機関。環境科学共同研究所の一部門で、コロラド大学ボールダー校内
にある―――は、18年の1月は、北極海の氷域で衛星時代の記録的な低気圧で始まり、終
わりを迎え、世界の海氷面積が記録的に小さいなっていることを公表。
それによると、新年1月の17年の海氷面積最低記録を更新。平均気温上昇は海氷の成長率
を上回り、月中旬には17年に比べて日平均気温が高くなったが、1月末までに、再び17
年を下回った。月平均の130万6000平方キロメートルは、1981年から2010年の平均値よりも、
136万平方キロメートル、前年度の月間平均を下回った。前月パターンは、バレンツ、カラシ
ーズ、ベーリング海も同様に継続傾向にあり、バレンツ海では、氷の縁は毎月ほぼ一定で、
東グリーンランド海ではわずかに後退。対照的に、東ベーリング海とオホーツク海では、ニ
ューファンドランド沿岸のセントローレンス湾で拡大。前年と比較して、月末にはベーリン
グ海西部、、スバールバル北部では氷の広がりが少なく、オホーツク海、東ベーリング海、
ニューファンドランド沿岸、セントローレンス湾でより広範囲に広がっている。全体として、
北極は今年1月に140万平方キロメートルの海氷を得る。
海抜925hPa(海抜約762メートル)での気温は、北極海では高だおまるという異常状態
で、ほぼ全域では3℃以上平均値を上回る。スバールバル付近を中心に、9℃以上の最も高く
なったのはカラ海、バレンツ海。太平洋側では、気温は平均気温より約5℃高い。対照的に、
シベリアの926hPaの気温は、平均気温より4℃高い。北極海の暖かさは、大部分が大気循
環パターンに由来しているように見えるが、南向き大気が流れ込み、一部は開放水域から大
気に放出されている。海面気圧は、シベリアに向かって伸びる中央の北極海の平均よりも高
かくこのパターンは、チュクチ海とベーリング海の平均海面下の気圧と相まって、ユーラシ
アから中央の北極海に暖かい大気を移動させている。
1月の氷の成長は1日当たり平均37,000平方キロメートルで、1日平均42,700平方キロメート
ルに近かくバレンツ海では、氷の広がりは衛星データ記録の中で2番目に低く観測された。
北極のこの地域の氷の状態は、大気循環に下流の影響を与えていることが今後益々重要視さ
れるであろう。これらの提案されたリンクには、シベリア高原の北方拡張とユーラシア北部
の冷却冷却が含まれると、報告されている。