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スマート水素ステーション工学

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【オールソーラーシステム完結論 34】 



● 世界展開!スマート水素ステーション

 

 

北九州市、岩谷産業、ホンダと共同で、ホンダの独自技術である高圧水電解システムを採用した、
パッケージ型「スマート水素ステーション」を、北九州市エコタウンセンター内に設置し、15
日に開所式を行った。この装置の特徴は、ホンダ独自の、コンプレッサーが不要な高圧水電解シ
ステムを採用し、高圧水素タンクから充填ノズルまでの主要構成部位をパッケージ型に収納した
ものです。これにより、設置工事期間と設置面積の大幅な削減が可能となっている。また、北九
州市エコタウンセンターでは、敷地内の太陽光パネルで発電された電力を使い水素を製造してい
る。将来的には風力発電などの多様な再生可能エネルギーを積極的に取り入れた二酸化炭素排出
ゼロの水素製造も視野に入れている。  

現在、ホンダは燃料電池自動車「FCXクラリティ」を用い、「北九州スマートコミュニティ創
造事業」の共同実証実験で、燃料電池自動車から家庭への電力供給(V2H)※1や、蓄電池への継
ぎ足し充電(非常用V2L※2)を行っている。今後は、今回設置したスマート水素ステーションに
より製造過程の二酸化炭素排出ゼロの水素を供給し、エネルギーの地産地消を実現するV2H・非
常用V2Lの実証試験を進める。

※1 Vehicle to Home(ビークルトゥホーム)の略
※2 Vehicle to Load(ビークルトゥロード)の略

 
● 北九州スマートコミュニティ創造事業パンフレット

 

● 高圧水電解システムとは

               初代ソーラー水素ステーションの実証試験結果

ホンダは、当初、ソーラー水素ステーション(SHS1)を試作する。下図はその構成とエネルギー収
支を示している。この水素ステーションを用いて、太陽光由来の水素製造の研究を進めてきたが、
コンプレッサの起動時の消消費電力割合が大きいことに気づく。SHSI搭載のコンプレッサは、将
来の家庭用水素供給装置をにらんで小型小流量タイプを採用。大流量コンプレッサに比較しフリ
クションロスが大きくなり効率の低下が生じる。また水素精製(除湿)用の吸着塔再生用ヒータの
消費電力も大きく、効率低下を引き起こす。家庭サイズ再生可能水素ステーションに向けては、
さらなる小型高効率の水素ステーションが必要であり、攻めどころを(1)水素の除湿と(2)
水素コンプレッサーのエネルギーを削減が重要であることを明確にした。

                         差圧式高圧水電解スタックの開発

先に示したSHS1の実証試験結果から、家庭設置可能な小型で型で、高効率の水素供給装置の実現
には『差圧式高圧水電解システム』の開発が有効だと考え開発を進める(下図の「差圧式高圧水
電解セル模式図」参照)。固体高分子膜(PEM)を用いた水電解セルは、純水を供給し、PE
Mに電圧を加え続ければ酸素と水素を発生し続ける。したがって、水素出口側に高圧タンクを設
置するとタンク内の圧力は徐々に上昇し続け、最終的には高圧水素を得ることができる一方、酸
素は大気圧にし制御することで、差圧式高圧水電解セルで、PEMを介して圧力差が生じる。P
EM間に電圧を加えると酸素極側で純水が酸素とプロトンH+になり、プロトンは対極へ移動し
水素となる。この現象は一般的な常圧水素電解と同じだが、プロトンが対極へと移動する際には、
水素の分圧差による起電力を加える必要がある。



常圧水電解の理論電解電圧(E1)とセル抵抗ωに加え、ガス濃淡電池に必要な水素濃度差電位を
印加することにより達成される。上式の第二項がネルンスト式の水素濃度差による起電力になる。


                        差圧式高圧水電解スタックの性能評価結果

差圧式高圧水電解スタックをもちいて水の電気分解をおこない、発生した水素の圧力を常圧から
35MPaまで昇圧したときに実測した消費エネルギー推移と上式から求めた計算値を下図に示しす。
水素圧力が常圧のときの全消費エネルギーは約4千Wh/Nm3であったが、そのうちのお44Wh/Nm3
が理論電解エネルギーであり、残りがセル抵抗である。なお、セル抵抗には、膜と電極聞や電極
と給電体間の接完封蹴ヰ模抵抗酸素極キ水素極の過電圧、オーム損がある。水素圧力が3MMPaの
ときの昇圧エネルギーは約200Wh/Nm3で、あり、ほぼ計算値と一致したが、圧力が低い領域
では、計算値よりも実測値の消費エネルギーの方が低い値を示した。これは圧力の上昇にともな
ってセル抵抗成分のうち、主に膜と電極間の接触抵抗の減少と膜厚変化による膜抵抗の減少によ
ると考える。

差圧式高圧水電解スタックにおける水素圧力35MPaで、の全消費エネルギーは4200Wh/Nm3で
あり全消費エネルギーに対して約84%の効率と、高圧水素発生装置としては省エネルギーなも
のであるといえる。

 
このようにホンダの差圧式高圧水電解スタックを用いた場合の有利な特徴は、(1)水と電気だ
けを用い、その場で水素を製造でき、装置に55~60kWhの電力を与えると、水素を1キログラ
ム製造でき、使用する水の量は9キログラム。水素を外部からステーションに運び込んだり、都
市ガスを改質して水素を作り出す場合に比べて、設置場所を選びやすく、離島でも導入可能だと
いうことと、(2)世界初のステーション全体を1つ小規模パッケージ型(高圧水素タンクや充
填ノズルなど主要構成部位を全てパッケージ型に収納)にある。



● 水素を「水」から作り出す、四畳半のステーション



● 特開2014-105347 水電解システム及びその排水方法 本田技研工業株式会社

  ● 自律型浮体空港システムの再考

以上、ホンダのオールソーラーシステムの水素製造パッケージは、再エネ社会の扉をいち早く開
け放つものだ。その1つの形としてブログ掲載(『縄すてまじ!』2012.12.15)した「自律型浮
体空港システム」(上図)であり、沖縄の美しい海辺を埋め立てずにすむ、海洋都市システムへ
にもつながる、新しい防衛システムのの提案であった。さあ、古い上着を脱ぎ捨て、地球温暖化
問題を解決し、新しい世界を切り拓こう。



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