2 作 戦
※ 「兵は拙速を聞く。未だ巧の久しきを観ず」-この篇では短期戦論が強調される。それ
は万全の準備に裏付けられ、一切を集中することによって、最小の犠牲で最大の効果をあげ
るのである。
「目的は勝利であって戦いではない」
兵士を敵との戦いに駆りたてる原動力は、なんといっても戦意である。その戦意の哀づけと
なるものは戦利品である。敵の兵車を十台以上も奪う戦果が上がったときには、まず手柄を
立てた兵士を表彰することを忘れてはならない。捕獲した兵車は軍旗をつけかえて自軍の兵
士を乗りこませることまた俘誂にした敵兵は手厚くもてなして味方にすること。勝ってます
ます強くなるというのは、このことである。戦争は、勝つことが目的であって、長く戦うこ
とがねらいではない。この道理をわきまえた将であってこそ、人民の生死、国家の安危を左
右する資格があるのだ。
★この一節の前段(「兵士を……」から五行)は、前後のつながりが不明確である。古来、
さまざまな解釈がなされているが、むりに結びつけようとするより、むしろ錯簡と考えたほ
うが妥当ではなかろうか。この部分を独立した文章と考えれば、「成果の分配による勁機づ
け」として含蓄がある。
❦ なぜ、かまぼこ屋がエネルギーのことを考えたのか ❦ No.20
● 対談4 新しい現実をつくる
『新しい地域経済をつくるには、女性のネットワークの活用を』
いま問われるのはどんな国をつくりたいのか
野中 相当に複雑に絡んでいる問題だと思いますね。できるだけ具体例で、と悌介さんがお
っしゃったので、たとえば、「金融界の人々」の常識は、一般社会の「あたりまえ」と、い
かに乖離しているか。私が三洋電機の会長になったときにイヤというほど経験した例でよけ
ればお話ししましょうか。会長就任時には、大変な赤字会社でしたから、まず、将来どんな
会社として甦らせたいか。そのヴィジョンを創りました。
「Think Gaia」というヴィジョンです。地球も生きている一つの生命体であするいまでは、
科学的にも立証されている理論ですが、世界中10万人以上いる社員にひとことで共有できる
ものにしたかった。で、平たく言えば「三洋電機さん、こんな商品つくってくれてありがと
う」と世界中が喜んでくれるような会社になろう、未来の子どもたちからも、地球上の「い
のち」を太切にしてくれて、ありがとうと感謝されるようなメーカーになろう、という意味
です。
すべての研究開発部門で「水と空気と食糧とエネルギー」この4つの未来を拓くものを創っ
ていこうと決めたわけです。その第一号商品が「エネループ」という充電式電池です。太陽
光で充電もできますし、いまでは1800回くり返し充電可能、一本1円以ドの電池になる
のです。
開発途上国の人たちが近代化を始めるとき、必ずトランジスタラジオを鉛の電池から始める。
それをポイ捨てすると、土壌だけでなく農業が駄目になるんです。つまり、この電池は途上
国の農業の未来を拓くことにもつながる。開発完了してすぐに、インドを訪問し首相とお会
いして、援助プログラムを進めるところまでいきました。でも、その技術を開発してくれた
人たちを前にして、投資銀行からきた役員は「あんたら何でこんなものつくるんだ。こんな
ものつくったら当社が売っている(鉛の)乾電池が売れなくなる。しかも、これ、1本当た
り1円儲かったところで1億本売れて、1億円。こんなものつくるより、鉛の乾電池のコス
トを下げて、ガンガン世界のマーケットシェアを取っていってくれ」と。「『Think Gaia』
だかなんだかヴィジョンを掲げる女子は、クレジット破産したOLが、おしゃれなフレンチ
食べたいわといってるのと同じ」と演説したそうです。トホホですね。たまたま、その人個
人の資質の問題かもしれませんが、金融人には地球の未来とか、子どもたちが喜ぶこととか、
途上国の土壌汚染とか、まったく関係ないんですね。一番大事なのは3ヵ月ごとの四半期ペ
ースで株価がいくら上がって、自分のボーナスがいくら上がるかということ。成長というも
のを数字とお金によってしか考えることができない仕様になっている……。
鈴木 残念ですね。
野中 資本のロジックでいうと、もちろん、赤字を垂れ流しているような経営はいけません。
利益は大切です。でも、リストラをして経費をけずってバランスシート上健全さをつくる。
これは、金勘定しかできない人々の考える事だと思います。どんな会社も、働いているのは
人間です。赤字ならば、なぜ、そうなったのか。原因究明と徹底した決断と対処。そして、
次に、新しい未来への志と、夢。これを共有する仲間意識を、誇りとともに醸成していくこ
と。東北大学の石田秀輝先生(210ページ参照)がよい例だと思いますけど、三洋電機で
研究開発をしている人たちのなかにも、そういうことにやりがいと働き甲斐を感じてくださ
る人たちがいて、ほんとうに素晴らしい会社でした。世界中の人びとが使っていた携帯電話
の電池の70パーセントが三洋製品だったんですよ。
鈴木 なるほど、知りませんでした。
野中 まだいっぱいあるんですよ、世界一の商品。スーパーのフードショーケースもそうだ
し……、寅さんの映画に出てくる「タコ社長」に代表される中小企某工場の思いと愛が、三
洋電機にはいっぱい生きていましたから。だから「エネループ」が生まれたわけです。資本
のロジックだけで考える人たちには、研究間発した人たち、タコ社長たちの思いと愛が読み
取れない。リーマンショック前でしたからね。拝金もいいところでしたよ。もっとよいかた
ちで経営に入ってきてくれたら、三洋電機はあのまま突っ走れたと思います。
鈴木 日本人のものづくりはすぐれているといいますが、それは日本人ならではの緻密さだ
とか、チームワークだとか……。
野中 感謝の気持ち……。
鈴木 それらはまさに日本人の自然観、死生観、もっと言えば宇宙観に根ざすものであり、
地域の風上や資源、食や行事などの伝統的な文化、そしてそこで暮らす人と人とのつながり
によって育まれてきたものだと思います。それらを失うことは日本人の強さを失うこと。そ
ういう視点を持つということはノスタルジーとか懐古趣味ではけっしてなく、世界戦略的に
犬切なことだと思うわけです。
そういう意味で地域のいわゆる場所文化というものがまだ残っている間に、地域にまだ人材
がいる間に、野中さんのいわれるタコ社長の思いと愛とテクノロジーをもう一回つなぎ合わ
せて、磨き直していく。そうすることが、この国を豊かにすることだと思いますし、そうい
う個性豊かな地域がたくさん連なっているというのが本来の姿だし。
野中 さいわいなことに目本にはまだ70パーセントの森林が残っているから、計画で植え
たスギであれ、ヒノキであれ、何であれ、その営みがそこにいてくれる間に……。
鈴木 だから、そこのところ、それが地域を元気にしていくためには、お金がきちんとまわ
っていくという状況が必要ですし、そのためには再生可能子不ルギーが一番のビネスチャン
スだと思うんです。
野中 一番たいせつなことだと思います。
鈴木 だから、再三、申し上げているように、子不ルギー問題というのは子不ルギーだけの
問題ではなくて、この国のありようをどうデザインして、どうつくり直していくか、野中さ
んが最初に言われたように、実に大きなテーマだと思いますし、われわれが腹をくくってチ
ャレンジしていくことが、これから子不ルギーを調達していくであろうアジアにしても、ア
フリカにしても、それに対して新しいモデルというか、やり方を示していくことになるのだ
と思います。そういう意味で、電気が足りるとか、足りないとか、そういう現実があるのは
確かなんですが、もっと、こう、明るい夢のある話としてとらえながらできないかと思うの
です。
野中 おっしやる通りだと思います。
自分を変えることは世の中を変えること
鈴木 そうなると、日本の巨大企業の社長さんの任期の間の株価の問題、つまり、任期中は
株価を維持できればいいという考え方も、変えていかないといけない大きな問題ではないか
という気がします。長い目で見たときに、大小の違いはあるけれども同じ経営者として、ど
うしてそうなってしまうのか、それが理解できない。
地域で生まれて、地域で商売させてもらって、私たち小さな企業の経営者は「今日の売上は
どうか、社員に給料払えるか」と、切った張ったの世界でもがいているわけですが、同時に
意識するかしないかは別として、どこか自分たちのふるさとをどうやって次へつないでいく
のか、絶えずどこかで思っているわけです。ところが、すごく大きな会社になってしまって
上場会社になってしまうと、なぜかそのへんの思いがなくなってしまって、「株主のために
いくら配当を出すか」という考えがすべてに優先していく。
野中 地球を覆っている「お金がすべて」という考え方の典型的な現象の1つといえるでし
ょうね。その根っこはものすごく奥深いところにあって、しかも、その根っこから栄養を吸
ってきた経団連とか、電事連とか……。そこここに、それぞれの人々、わたしもあなたも彼
も彼女も……というふうにつながっている訳ですからね。
自民党が良いとか悪いとかじゃなくて、つくって支えてきたのは、私たち自身だったわけで
す。だから、いまは、「あいつらが悪いから、こんな国になっちゃった」のではなくて、例
えば、自分たちが60年間自民党に票を入れて一党政治をやってきてくれたから、これだけの
高度成長の経済ができて、おかげさまでこういう国になったんだけど、もう、どいてもらい
ましょ。それで、新しい国をつくっていくから、と、替えましたよね。民主党さんにお願い
したら、「なあんだ、変わんないじゃん。というか、もっとひどいじゃん」ということがわ
かった。でも、それは、「そうか。政党に任せておくだけでは駄目なんだ」ということがわ
かった、ということなんですよね。「私たちが自分を変える、自分で自分たちを変えていく
ことで、世の中を変えられるんだ」という気付きにつなげていく時代になったのだと思うの
です。つまり、悌介さんが「私たち、ちっぽけな中小企業が」とおっしゃった、そこが主人
公になる時代が始まったということです。
鈴木 学生時代からずうっといろんなことを試してこられた野中さんだからこそ、おっしゃ
るような基本中の基本にたどりつけたんだと思います。普通なら「言うは易く」で片づけら
れそうな、深いけれども当たり前で単純な結論なんですが、すごく説得力を感じます。そう
いう意味で、いま、おっしゃったように、自分で考えるための条件はたくさんあると思いま
す。
野中 条件がそろいましたね(笑)。
鈴木 結局、于不ルギーを考えるにしても、いままでずっと他人事だったんですよね。他人
事にして任せ切ってきたことが、野中さんが徘々ご説明されたシステムを支えてきたわけで
すね。そろそろ、それに気づかないといけないし、気がついたら「自分にできることって。
なに?」となる。まず、「じゃあ、いろんなことがあるんだからほんとうのことを知ろうよ
」と、私自身を含めて、そういうことだと思うんですよ。
野中 だから、悌介さんがエネ経会議として立ち上がってくれたことが、戦後初めての民主
主義を、もう一度原点からつくり直すことにつながると信じています。民主主義って、本当
にはなかった。他人に任せておいて自分は後で文句をいうだけ、これを民主主義だと思って
いただけ。民主主義というのはみんなでっくり上げていくしかないのに。
この項つづく
❦ サイズの規格・耐久性15年で“乾電池”のような使いやすさ
3月1日(「スマートエネルギーWeek 2018」(2018年2月28~3月2日、東京ビッグサイト
)、トヨタ自動車はクルマや建設機械、家庭用の蓄電システムなどで電池パックを使い回せ
る仕組みをつくる。サイズを規格化して“乾電池”のように取り替えやすくする。電気自動
車(EV)で5~7年、他用途で8~10年、通算15年ほどの活用を想定している。すでに
電池シェアの議論が始まっており、狙いは、電池技術進化に合わせて交換し、生産後でも車
両性能を向上可能にすることにある。例えば、1充電あたりの航続可能距離が2百キロメー
トルの車両を中古で購入した場合に、最新の電池と交換して4百キロメートル走行できるよ
うにする。電池の劣化に対する懸念を払拭できれば中古電気自動車の価値を高める。自動車
メーカー各社や建設機械メーカーなどを巻込み、同電池を社会全体で使っていけるように事
業化するという、いわば、蓄電池の高性能化とゼロ廃棄物化の双方をにらんだ「技術の共通
化」とでも言えそうなもの。勿論、車両開発の効率も高められ、従来までの電気自動車は、
車両に合わせ、電池を専用で開発することが一般的だったが、電池の形状や性能が車種によ
って違うため、各車両ごとに多くの開発工数を必要とし、電池のサイズを規格化しておけば
平行開発が可能となり各自動車メーカーは車両開発に専念しやすく、開発の分業体制がさら
に促進される。
電池サイズは構想段階で、2人乗りの超小型車両コンセプト「TOYOTA Concept-愛i RIDE」
に1個搭載できる大きさで検討を進めている(上下図)。同車両の寸法は全長2500×全幅1300×
全高1500mmで、ホイールベースは1800mm。電池の大きさは全長700×全幅800mmほど。1個
あたりの消費電力は)10~15キロワットほどを想定。乗用車やトラックなどに適用を広げる計
画で、車格が大きくなれば搭載する電池の個数が増える。
【蓄電池篇:地型充電無人機の登場】
今やアマゾンは、グーグル、アップル、フェイスブックと並び称される世界展開する通販の巨大企業に
著しい経済成長を遂る。そのアマゾン社はいち早く、電気自動車用の無人機による充電システム関
連の特許を公開(下図)しているが、その基本形は移動体に飛来着地型(航空母艦のように着艦)の
充電システムであるが、Behance社の電気自動車用充電無人機「Volt 」は、航続距離16~32キロ
メートルでモバイルアプリでレスキュー依頼し、費用も電子マネーで決済する至って簡単にレスキュ
ー依頼できる(上図)、通常の充電ステーションと同様の着地型充電方式をとる。とはいえ、アマゾン
タイプもビヘァーン社のタイプも暴風雨などの異常気象状態でもレスキューできるかは疑問であるが。
面白いニュースに関わりはない。
【下の句トレッキング:人に知られでくるよしもがな】
今夜は、藤原定方の誰にも知られないで逢いたいという思慕の表意の歌を取り上げる。話は
飛ぶ。今朝、腰痛用のコルセットのマジックテープが長く使っていると縮み解けるのでその
ことを彼女に伝えるも時便の自分ものを使えというので、丁寧にお断り申し上げ小学校5年
の家庭課の雑巾づくり以来の針子作業を行い繕い直す。勿論、針の穴に黒糸を通すのはさす
がメガネだけではできず、時計修理士用の作業帽子型拡大鏡を使用する。面倒くさいがこれ
も再訓練のためと割り切るが、彼女の理解の外にあるような顔をしていた(いいんだよ、こ
れで)。
名にし負はば 逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな 三条右大臣
逢坂山のさねかずらが、あなたに逢って寝るという意味を暗示しているなら、そのさねかず
らの蔓をくるくる手繰るように他人に知られず、あなたのもとへ来る方法がないものか。
If this kadsura vine from Mt. Osaka carries the secret message that we are to meet and
spend the night together, I will turn it over in my hands in full view of others without them
knowing, wondering how I can get to you. If only it were as easy as tugging on this vine
『ひまわりの夢』 斉藤和義 歌/作詞/作曲
● 備忘録
本年正月第2弾で特集した人工知能(AI)を使った新しい地震予測の方法(MT法)で解析した
危険度マップを掲載。日本全国を30地区に分割して2月10日までのデータで適用した際の危
険度を示したもの。 危険度は0~5の6段階で表し数字が大きいほど危険度が高いことを意味
する。しばらくは月に1回程度特集にて掲載予定。
JESEA Mar. 14, 2018, Vol. No.11 週刊MEGA予測
※MT法とは、田口玄一博士がマハラノビス距離(MD)を用い、 対象が正常か異常かを判定
する人工知能(AI)の一手法として開発。 田口玄一博士はものづくりの分野で著名な方で、
品質工学の提唱者。日本人として三人目の米国自動車殿堂入りを果たすが、他二人は本田宗
一郎氏と豊田英二氏。