『呉子』
春秋戦国時代に著されたとされる兵法書。武経七書の一つ。『孫子』と併称される兵法書。前四
世紀楚の宰相であった呉子の言を集録したものという。
5.応 変(おうへん)
臨機応変の「応変」。孫子の応寺谷号トの思想に几つくものでふろのにたいし、呉子のそれは法
宗感想を根底としている。
命令伝達の重要性
「戦車は堅牢で、馬は良馬、将は勇将で、兵は強兵――このような軍であっても、不意に敵と遭
遇したため、混乱して隊伍が乱れることがある。こうした場合は、どうしたものか?」と、武侯
がたずねると、呉起は、
「戦いに当たってば、合図――命令伝達の方法が不要です。すなわち、昼間は、旗やのぼりを使
って合図と決め、夜間は、鳴り物を使って合図と決めます。そして、旗やのぼりを左にふった場
合には、左へ進軍、右にふった場合には右へ進軍、また、この太鼓を打った場合には進軍、別の
大波を鳴らした場合には行軍中止、笛を一度吹いた場合には散開、二度を吹いた場合には集合、
というように合図を決めておくのです。
『下の句トレッキング:夕べの色とわれはなりゆく』
うつせみのひかり集めてたまかぎる夕べの色とわれはなりゆく 三枝浩樹/『時禱集』
※たまかぎる:玉が淡い光を放つところから、「ほのか」「夕」「日」「はろか」などにかかる枕詞。
うつせみのひかり集めてたまかぎる夕べの色とわれはなりゆく他者からの影響がどんなに濃いものであっ
ても、やはりわたしはわたしであって、わたしの歌はわたしの歌でしかないのであった。哀しいほどにそう
であった。16年ぶり待望の第6歌集。
第6章 中国産トマトも「イタリア産」に
第5節 イタリア、カンパニア州、サレルノ港
イタリアでは、食品業界で犯罪を繰りかえすマフィアが急増しており、これを示す「アグロマフ
ィア」という新語まで作られた。従来の活動では資金を稼げなくなってきたことと、2008年
のリーマンブラザーズの破綻による景気後退の影響で、アグロマフィアはここ10年で加速度的
に増えつづけている.イタリア検察庁内でマフィア取り締まりを担当する国家反マフィア局(D
NA)によると、2011年、マフィアの食品業界での活動の年間収入は125億ユーロに上っ
たという。これは全犯罪収入の5・6パーセントに相当する。2014年には、さらに154億
ユーロまで伸びている[13]。ある食品がスーパーで高く売られたからといって、その食品の原
材料を作っている生産者の収入が増えるわけではない。もうけているのは加工会社だ。それを知
っているマフィアは、原材料の農産物は生産せず、加工とパッケージングだけで多額の利益を得
ている。そうやって、犯罪でもうけた莫大な資金を食品業界で洗浄しているのだ。
Feb. 8, 2011
大手スーパーチェーンが求めているのは、とにかく安い商品だ、安ければ安いほどいい。アグロ
マフィアは、合法的に設立した企業を隠れみのにして、巧みに業界内部に入りこんでいく。そし
て、他社には決して真似できない破格の低価格で市場に商品を提供する。そのために、原価をぎ
りぎりまで低く抑える。資金洗浄のためならマフィアは手段を選ばないので、あらゆる手を使っ
て業界晨安値を実現させる。たとえば、不法労働者を安く雇ったり、製品を偽装したりする。や
がて市場はアグロマフィアの独壇場となり、マフィアの工場で次々と製品が生産される。
労働法を無視し、税金をごまかし、原材料表示や製品名を偽装しながら、加工食品を大量に生産
し、超低価格でどんどん商品を売りさばく。そうやって、マフィアは何百万ユーロという金を動
かしながら、資金洗浄を行なっている。大手スーパーは、そういう低価格の商品を店頭に並べて
販売しているのだ。
2014年、イタリア財務警察は、不正販売された食品を1万4000トン分押収した[14]。
そして翌年には、食品栗野で活動していた1000上の工場が閉鎖させられている。さて、ここ
で問題だ。南イタリアで生産されている製品で、財界でもっとも有名なものは何か? 19世紀
末にはすでにイタリアからアメリカに大量に輸出され、いまや世界中に流通しているものは何か
?イタリア系アメリカ人のマフィア映画の、ほとんどすべてに登場しているものは何か?
[14]Agromafie,business da 60 miliardi、 Orlando e Martina : accelerare i due de]contro reati nella filiera e caporalato,
Il Sole 24 Ore,17 fèvrier 2016.
Jun. 12, 2017
アグロマフィアの腐った果実
第6節
答えはすべて同じ。トマト缶だ。
現在、イタリアで生産された加工用トマトの60パーセントは国外に輸出されている。2016
年、国内の食品メーカーのために生産されたトマトは500万トン強で、うち44パーセントは
カットトマト缶、3Iパーセントはホールトマト缶に加工された[15]。いずれも主に南イタリ
アで生産されている。一方、濃縮トマトに加工されたのはわずか10パーセントだ。こちらは、
トマトビューレやトマトソースと同様、主に北イタリアで生産される。
[15]Associazione Nazionale lndustriali Conserve Alimentari vegetali, statistiques 2016.
南イタリアで行なわれている加エトマト事業は、主にふたつに分けられる。ひとつは、地元で収
穫されたトマトを使ってトマト缶(ホールトマト缶とカットトマト缶)を生産すること。そして
もうひとつは、中国産などの輸入濃縮トマトを一再加工」することだ。南イタリアでこれらふた
つの事業が生まれたことには、歴史的な背景がある。ホールトマト缶を作る過程では、加工され
た後のトマトの屑や、選別ではじかれた規格外トマトがどうしても出てくる。かつてモラルに欠
けたメーカーが、生産余剰トマトに屑や規格外品を混ぜてトマトペーストを作り、貧しい国に安
く輸出していたのだ[16]。その後、こうした屑を再利用することはなくなったという。だが、
南イタリアで輸出向けの粗悪なトマトペーストが作られていたのは事実だ。中国産濃縮トマトを
希釈したトマトペーストを輸出するようになったのは、そのときの名残と言える。
今でもナポリ近郊には、夏の収穫期はイタリア産トマトを使ってホールトマト缶を作り、農閑期
になると輸入濃縮トマトを一再加工」するメーカーがある。当然、農閑期に作られるトマトベー
スト缶にも「イタリア産一のラベルが貼られる。南イタリアのカンパニア州ナポリ近郊には、こ
うして輸入濃縮トマトを再加工するメーカーがたくさん集まっているのだ。
[16]Entretien avec le trader Silvestro Pieracci,25 juillet 2016.
The Dark Side Of The Italian Tomato
第7節
ナポリ生まれ、「トマト王」の異名をとったアントニーノールッソ(2014年に83歳で死去
)は、1962年にラ・ゴティカというトマト加エメーカーを設立し、華々しいキャリアのスタ
ートを飾った。
1970年代から1980年代にかけて、加エトマト業界において次々と企業を買収・設立し、
やがてトマト以外の野菜やフルーツの缶詰生産も手がけるようになった。2000年代に入ると
、それらを傘下に置いた企業グループ、ARインドゥストリエ・アリメンターりを設立。イタリ
ア産トマト缶の20パーセントのシェアと3億ユーロの売上高を誇る巨大グループに成長させた。
だが、そうした輝かしいルッソのキャリアにもいくつかの汚点があった。1995年、イタリア
議会の反マフィア委員会による報告書で、マフィアと関係があると言及されたのだ[17]。そし
て2013年には、中国産濃縮トマトをイタリア産と偽って販売したがどで有罪判決を受ている。
[17]Commissione Parlanlental’edi inchiesta sul fenomeno delle mane e sulle altre associazioni criminali 17
octobre 1995.
南イタリア、プッリャ州フオッジャにはトマト加工工場が集まり、さながら加工トマト産業の都
といった様相を呈している。あるとき、フオッジャの元知事の男性が、ある集会での出来事を反
マフィア委員会に報告したという。1993年8月のその集会には、トマト生産者や卸売業者が
出席していた。南イタリアで40ほどの企業を経営するアントニーノ・ルッソもその場にいた。
反マフィア委員会によると、当時の生産者たちはマフィアによる恐喝の被害に遭っていた。トマ
ト産者だけでなく、プッリャ州のほかの産業でも同様だった。マフィアから脅されたり、暴力を
受けたりして、みかじめ料を無理やり支払わされていたのだ。
この集会で、ルッソは生産者たちにある要求をしたという。収穫したトマトを輸送する際、トラ
ックに乗せる量を従来より20パーセント減らし、264キンタル(約13トン)から220キ
ンタル(約2トン)にしろというのだ。さらに、トマトを積んでいる容器の重量をかさ上げする
よう命じた。だがそれでは、トマト1個当たりの輸送コストが高くなってしまう。生産者たちは
真っ向から反対した。とりわけ生産者代表の男性は、絶対拒否の姿勢を最後まで貫いた。すると
翌日、その代表の男性は見知らぬ男から脅迫され、同じ名前のいとこまで人道いでけがを負わさ
れてしまった。
1980年代、マフィアによるトマト生産者への脅迫や暴行はかなり頻繁に行なわれていた。と
ころが、反マフィア委員会によると、1994年を境にその手の事件はぴたりと鳴りをひそめ、
奇妙な平和が訪れているのだという。ルッソによる奇妙な要求はその直前のことだった。それに
しても、どうしてルッソは、自分が仕入れたトマトにかかる輸送コストをわざと引き上げようと
したのか? マフィアの要求に応じざるを得なかったのだろうか?
畑から工場までトマトを輸送する作業は、この業界の要となる仕事だ。マフィアは以前から、ト
マトの輸送中を狙って事件を起こすことが多かった[18]。2016年6月、フィッジャで、ロ
ベルトーシネシ[19]とその仲間5人が、トマト輸送中のトラックドライバーに対する恐喝およ
び恐喝未遂の容疑で逮捕された。シネシは1990年代から活動していたマフィアのボスだ[20」。
そのトラックは、ヨーロッパ最大のトマト加工工場、プリンセスのフオッジャエ場へ向かう途中
だった。
Jun. 17 ,2016
[18]Entretien avec Roberto lovino, responsable Legalite syndicat FLAI-CGIL、
[19]Foggia,pizzo per non danneggiare i camion carichi di pomodori : sei arresti, Foggia La Repubblica ,17 juin 2016,
[20]Mafia del pomodoro,pizzo alla Princes. Decapitato clan Sinesi :rnanette per "Lo zio” Roberto ,17 juin 2016.
[21]Racket deI pomodoro : scarcerati tutti Sli inda8ati, anche il boss Sinesi, 8 juillet 2016.
その工場はアントニーノ・ルッソによって設立され、がってはARインドゥストリエーアリメン
ターりの傘下にあったが、2012年、三菱商事傘下のイギリス子会社プリンセスに買収されて
いた。ところが、逮捕から1カ月後の2016年7月、シネシは逮捕状不備のために釈放される
[21]。しかしそのニカ月後の9月、自分の子どもを乗せて車を運転していたところを殺し屋に
襲われた。20発近い銃弾を浴び、そのうちひとつは心臓から数ミリのところに撃ちこまれてい
た。瀕死の重傷を負ったシネシは緊急手術を受け、奇跡的に一命をとりとめたが、その数日後に
再び逮捕された。またしてもトマト輸送ドライバーに対する恐喝容疑だった。
第8節
2013年、アントニーノ・ルッソは、中国産濃縮トマトをイタリア産と偽って販売したかどで
起訴され、懲役4ヵ月の有罪判決を受けた[22]。その直前の2012年、自らが所有する株式
の51パーセントをプリンセスに譲渡し、残り49パーセントを親族に相続させていた。ルッソ
が死去したのはそのすぐ後の2014年だ。
逮捕当時のルッソは、カルフール、ウオルマート傘下のアズダなど数々のヨーロッパの大手スー
パーチェーンのために、トマトベースト缶のプライベートブランド商品を生産していた。検察官
のロベルトーレンツァの押収物資料には、「白地に青のカルフールのロゴ入り2倍濃縮トマト缶
を5万7696個押収。フランス語とオランダ語で、”AR社によりイタリアで生産”と表記さ
れている」と書かれている[23]。中国産濃縮トマトが詰められたトマトペースト缶に、”イタ
リア産”との表示があったのだ。
裁判でのアントニーノ・ルッソは、中国産濃縮トマトを使って缶詰を作ったことを否定しなかっ
た。それどころか、自分がしたことはヨーロッパにおいて完全に合法だと言い張り、こう主張し
た。「わたしは自分で何度も中国に足を運んでいます。中国のトマトはイタリア産と同じくらい
良質です。それに、中国産トマトを使って作った商品の90パーセントは輸出用です。イタリア
では販売していません[24」。
この裁判で、ヨーロッパの大手スーパーチェーンは、ルッソに商品の生産を委託していたにもか
かわらず何のとがめも受けなかった。法に触れることはしていないからだ。ロベルト・レンツァ
はこう言った。
「悪いのはEUの法律です。あまりにも甘すぎる。イタリアの商品はほかの国でとても人気があ
ります。ラベル表示に問題があるのです。EUの基準をもっと厳しくしないといけません」
[22]I Pomodori "made in ltaly” sono cinesi. Accusato di truffa il produttore italiano La Repubblica, 28 fèvrier 2013.
[23〕Mara Monti et Luca Punzi Cibo criminale, op, cit.、
[24]Pulp fiction : Asda's “made in ltaly” tomato puree hails from、China,The Gardian , 27 fevrier 2013.
Feb. 17, 2013
第9節「イタリアで缶詰にされています」
南イタリアの大手トマト加エメーカー、ジャグアーロのトマトペースト缶には、七カ国語でこう
表記されている。「缶詰にされている」場所は記されているが、原材料の原産地は示されていな
い。ジャグアーロは、ナポリから40キロメートルほど離れたサルノに工場を構え、そこからロ
ンドン、マドリッド、パリ、ベルリンなど、ヨーロッパのほとんどのスーパーに製品を供給して
いる。緑・白・赤の「トリコローレ」で彩られた缶詰は、いかにもイタリアらしいパッケージだ。
どの国でもわずか数十ユーロセントで購入できる。
アントニーノ・ルッソが有罪判決を受けた後、ヨーロッパの大手スーバーチェーンは取引先をジ
ャグアーロに変更した。プライベートブランドの缶詰を作らせるためだ。だがジャグアーロもか
ねてから司法警察にマークされており、今も悪い噂が後を絶たない。
1997年、イタリア国家憲兵カラビニエリによる加工トマト業界不正摘発作戦の際、ジャグア
ーロがトマトの屑を使ってトマトペースト缶を生産していたことが発覚し、生産基盤を解体させ
られた[25]。通常、トマトの皮や種は家畜の飼料にされる。それをトマト加工品の原材料とし
て再利用したのだ。これらの製品はアフリカと中近東の国々で流通された。この件で、工場責任
者、トマト生産者、運送会社や商社の担当者ら、総勢19人が逮捕された。
2008年には、ジャグアーロの幹部社員が法外な利子をつけて融資を行なっていたことが発覚
し、やはり訴訟事件になっている[26]・当時、この人物は、イタリア、ルーマニア、エジブト
にある10ヵ所の工場の責任者だった[回。ナポリ近郊カイヴァーノにある旧チリオエ場も、そ
のうちのひとつだ。チリオはイタリアの老舗食品ブランドで、2004年に農業協同組白コンセ
ルヴェ・イタリアに譲渡されている。
その三年前の2005年、税関と経済犯罪を取り締まるイタリア財務警察によって、ジャグアー
ロの秘密倉庫が発見されていた。ラツィオ州モンタルト・ディ・カストロからカン八二ア州サル
ノの本社へ向かう路上で、トラック二台に積まれた不審な三倍濃縮トマトコートンが押収された
のがきっかけだった[28]。
その後の調べで、モンタルト・ディ・カストロの旧火薬倉庫の存在が明らかになった。倉庫には、
500グラム入りのトマト缶が100万個保管されており、いずれもラベルや消費期限の記載が
なかった。倉庫の外にも、濃縮トマト220キロ入りのドラム缶が1500基も放置されていた。
全部でご20トン分だ。なかには大量の蛆がわいていた。ラツィオ州チヴィタヴェッキアの検察
官は、ドラム缶のなかの腐ったトマトについて「食用に適しておらず、食べると健康を害する」
という分析結果を発表した。すべて中国産たった[29]。ふつうなら、濃縮トマトに姐がわいた
ら、もう食べられないと思って捨ててしまうだろう。だがどうやらそうではないらしい。虫がい
る表面を取りのぞき、ちょっとした加工を施せば、まだ使用可能なのだ。しかしジャグアーロは、
倉庫の外に置かれていたドラム缶は古くなったために廃棄される予定だったと主張している。
[29]Pomodoro con insetti e vermi La Città di Salerno, 18 november 2005,
その1カ月後、今度はサルノで、ジャグアーロが所有するドラム缶2460基分の不審な濃縮ト
マトが押収された。2年後の2007年には、サレルノ港で、ジャグアーロあてに届いた不審な
コンテナが2台押収されている[30]。ルーマニアを出港したコンテナで、なかに45トンの中
国産濃縮トマトが入っていたという。だがこれだけではもちろん罪にならない。これらのコンテ
ナが押収され、ジャグアーロが法令違反に問われたのは、そこに未報告の食品廃棄物が混ざって
いたからだ。しかし、なぜジャグアーロが、中国からルーマニア経由で食品廃棄物を密輸しよう
としたのか、その理由は今も判明していない。
[30]Article sans tirre, La Cittaà di Salerno, 20 juin 2007.
2001年と2007年、ジャグアーロの社屋は二度の火災にみまわれている。2009年、責
任者のヴィンチェンツオ・フランチェーゼが、二度目の火災における職務怠慢で有罪判決を受け
た[31]。火元に段ボール箱が山積みにされており、それが出火原因と判明したからだ。フラン
チェーゼは、前年の2008年にも、架空請求書を使って脱税をしたとして有罪になっている
[32]。2008年、またしてもジャグアーロは司法捜査を受けた。当時、イタリア警察は、サ
レルノ県のサンテジーディオ・デルーモンテ・アルビーノにある認定分析研究所、エコスクリー
ニングの捜査を行なっていた[33]。捜査の結果、廃棄物の分析を専門にしていた同研究所が、
虚偽の分析結果を発表していたことが明らかになった。有毒な廃棄物に対して無毒を証明する書
類を大量に発行し、その廃棄物を地面に埋められるよう取り計らっていたのだ。下水処理で発生
した有毒の汚泥、汚染された液体産業廃棄物、浄化槽の中身といった有毒ゴミが、偽りの分析結
果が書かれた証明書のせいで堆肥として合法的に埋められていた[34]。研究所は偽造証明書の
印刷所と化していたのだ.
[34]Certificati falsi, ora tremano gli industriali , La Città di Salerno, 16 juillet 2008.
捜査中の通信傍受によって、エコスクリーニングのクライアントにジャグアーロがいることが判
明した。中国産濃縮トマトとイタリア産トマト缶について、偽の証明書を発行してもらっていた
のだ。トマト収穫期がピークを迎えた2007年8月21日の12時34分、ジャグアーロのル
イザという女性から、研究所に電話があった。要件はふたつ。ひとつは、「イタリア産」表記の
トマト缶の原材料に重金属が含まれていないことを示す証明書を発行してほしいというもの。そ
してもうひとつは、中国産濃縮トマトに関することで、ふたりの間で次のような会話が交わされ
たという[35]。
[35]Il controllo sui pomodori cinesi? Uno me lo fai vero, Il Mattino, 15 juillet 2008.
「サンブルについて、農薬の検出を含めてあらゆるデータを分析してちょうだい。でも本当のこ
とを書いていいのはどれかひとつのデータだけよ」
「了解しました[36]。
こうして、重金属に汚染された土壌で栽培されたトマトで作られたトマト缶と、食用に適してい
ない中国製濃縮トマトに対して、その品質を保証する偽造証明書が発行されたのだ。過去にこれ
ほどの事件を起こしながら、ジャグアーロは今も成長しつづけている。2015年、老舗トマト
ブランドのヴィターレを買収。現在は匹に界六〇カ国に進出し、食品関連の大規模な国際見本市
に参加して、世界中に名を知られるようになった。カルフール、オーシャン、ルクレール、メト
ロ、カジノ、モノプリ、コラ、システムU、インターマルシェ、ディアなどヽ多くのヨーロッパ
大手スーパーチェーンに缶詰を供給しつづけている[37]。
[37]Profil viadeo de Manlio Balzano, directeur des exports de Giaguaro,
この項つづく
● 流行曲の過去/現在
『見つめていたい Every Breath You Take 』
ポリス (The Police) は、1970年代後半から1980年代半ばにかけて活躍したイギリスのロックバン
ド。ロックの枠組みの中に、レゲエの要素を加えた音楽性は、ホワイト・レゲエとしばしば呼称
された。ジャズバンドのラスト・イグジットで活動していたベーシスト兼ボーカリストのスティン
グ、プログレッシブ・ロック・バンドのカーヴド・エアで活動していたドラマー、スチュワート・
コープランド、ギタリストのヘンリー(アンリ)・パドゥバーニの3人で結成。後に、元後期アニ
マルズのギタリスト、アンディ・サマーズが加入し4人編成となるが、ヘンリー(アンリ)が脱
退しトリオとなる。当初は、パンク・ブームメントに乗ってデビューしたが、その後メンバーの
音楽的素養を柔軟に取り入れたロックを生み出す。
この楽曲は、1983年のアルバム『シンクロニシティー』からの第1弾シングルとしてリリースさ
れ、イギリスにおいて4週連続、アメリカのビルボードにおいては8週連続1位になった。スティン
グは、1984年のグラミー賞において「見つめていたい」で最優秀楽曲賞と最優秀ポップ・デュオ
/グループ(ヴォーカル入り)を獲得している。