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続・引き寄せられる混沌Ⅱ

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5.公冶長  こうやちょう
ことば-------------------------------------------------------------------------------
全28章のほとんどすべてが人物批評である。  
人に禦る(あたる)に口給をもってすれば、しばしば人に憎まる」(5)
「道行なわれず、俘 (いかだ)に乗りて海に浮かばん」(7)
「回や一を聞きてもって十を知る。賜や一を聞きてもって二を知る」(9)
「われいまだその過ちを見て、内にみずから訟むる者を見ず」(27)
-----------------------------------------------------------------------------------
 24 徹生高が正直音だなどとは、とんでもない話だ。酢を借りに来た人に、正直に
ないと断わらずに、 隣から借りて来て体面をつくろったというではないか。(孔子)         〈徹

<微生高〉 いわゆる「尾生の信」の主人公である尾生高と同一人物であるとする説
もある。尾生高は、逢引の約束を守って橋の下で女を待ちつづけ、川が増水してきて
溺死したという(『荘子』その他)。

子曰、孰謂微生高直、或乞醯焉、乞諸其鄰而與之。

Confucius said,
"Some people call Wei Sheng Gao an excessively honest person.
But I don't think so. When some person asked him for vinegar,
he got it from a neighbor and gave it."




森林再生面積は想像以上に広大

地球はどのくらいの樹木をどこで維持できるのか、そしてそれらの樹木はどの程度の
炭素を貯蔵できるのかを初めて数値化した研究で、大気中の炭素を約25%削減する(
ほぼ1世紀の間にはなかったレベル)に足る樹木を地球は追加で維持できることが報
告された。「森林再生が気候変動対策の一翼を担うのは周知のことであるが、これに
どれほどの効果があるかについては科学的な把握がなされていなかった。この研究は
森林再生が今日有効な最善の気候変動対策であることを明確に示している」と共著者
である」(Thomas Crowther)と話す。樹木は大気中の二酸化炭素)を捕えたり放っ
たりしていることから、広範囲にわたる森林再生は気候変動に対する最も効果的な対
抗手段の1つと考えられてきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告
によると、2050年までの地球温暖化を1.5℃内にとどめるにはあと10億ヘクタールの森
林が必要だという。しかし、これらの再生目標が達成可能かどうかは明確になってい
ない。現在もしくは今後の気候条件下でどの程度の樹木被覆が可能か分からないのが
その理由である。



今回これを調査すべく、約80,000におよぶ森林を観察した世界規模の独自のデータセ
ットを地図ソフトGoogle Earth Engineと組み合わせて活用、現状での世界の樹木被覆
可能地を地図化する予測モデルを作った。既存の樹木、農地、都市部を除き、地球の
生態系はさらに9億ヘクタールの樹木被覆を維持できると推測している。それらの樹
木被覆地は一旦成熟すると200ギガトン以上の炭素、言い換えると、人が放出する
炭素の3分の2を隔離することができる。この研究で提示された世界森林再生地図は、
より効果的な世界規模の森林再生目標の設定や、地域規模の森林再生プロジェクトの
指針として不可欠だ話す。関連する見通しでは、現在森林面積が減り続けるとともに
温暖化する地球で森林再生の取り組みもさらに困難になり時間的猶予が短くなる中、
迅速かつ包括的に行動する必要があると強調する。

人類が滅ぶとも、森林はかならず復活するということですか ?









世界初!非侵襲型マインドコントロールロボットアーム

カーネギーメロン大学の研究者らは、スムーズで継続的な制御を備えた最初の非侵襲
的なマインド制御ロボットアームを実証に成功した。非侵襲的ロボット装置制御の分
野で画期的な進歩を遂げました。非侵襲的なブレイン - コンピュータインタフェー
ス(BCI)を使用し、同グループはコンピュータカーソルを継続的に追跡して追従す
る能力を発揮して、史上初の成功を収めたマインドコントロールロボットアームを開
発。

思考のみを使用してロボット装置を非侵襲的に制御できることは、特に麻痺患者およ
び運動障害の患者の生活に利益をもたらす幅広い用途を有する。BCIは、脳インプ
ラントから感知された信号のみを使用し、ロボット装置を制御できることが示された。
ロボット装置の高精度制御で、日常のさまざまな作業が代替できるが、今までのとこ
ろ、ロボットアームの制御に成功したBCIは侵襲性脳インプラント方式であった。こ
れらのインプラントは、費用および対象への潜在的なリスクは言うまでもなく、正し
く設置および操作させるには、膨大御な医学的および外科的専門知識を必要であり、
かつ、その事例はほんの数例止まりに限られてた。



BCI研究の大きな課題は、麻痺患者が自分の「考え」を使って自分の環境や四肢を制
でき、低侵襲的または非侵襲的技術展開できる。この非侵襲的なBCI技術の成功は、
多数の患者に、そして潜在的には一般の人々にさえ拡張されうるものであるが、非侵
襲的な外部センシングを使用するBCIは、ノイズを受信しやすく、低解像度と正確性
が低い制御となる。従って、ロボットアーム制御するには、脳だけを適用するには、
リスクが大きいものとなる。それにもかかわらず、同グループは、新しいセンシング
技術と機械学習技術を使用し、日常的にあらゆる場所で患者を支援できる、より低侵
襲または非侵襲性に注目していた。チームは脳の奥深くにある信号にアクセスできる
ロボットアームに対する高解像度制御を実現。非侵襲的なニューロイメージングと新
規の連続追跡パラダイムにより、ノイズの多いEEG信号を克服し、EEGベースのニュー
ラルデコードを大幅に改善し、リアルタイム連続2Dロボットデバイス制御を容易にし
た。


非侵襲的なBCIを使用して、コンピュータ画面上のカーソルを追跡しているロボット
アームを制御。ロボットアームがカーソルを継続的に追跡できることを人間の被験者
に示した。ロボットアームが非侵襲的に非侵襲的に動いていたのに対し、ロボットア
ームは脳の命令にぎくしゃくとした不連続な動きでカーソルをなめらかに長くに追従
する。Science Roboticsに掲載された論文で、同チームは操作トレーニング、さらに
は、脳波ソースイメージングで非侵襲的ニューラルデータの空間分解能向上させ、BCI
の「ブレイン」と「コンピューター」コンポーネントを扱い改善する新しい制御法を
確立する。

この問題解決の独自のアプローチは、従来のセンターアウトタスクでBCIの学習が60
%近く向上しただけではなく、コンピューターカーソル連続追跡が500%以上向上。
また、安全で非侵襲的なデバイスの「マインドコントロール」の提供で、さまざまな
人々を支援可能なアプリケーションも存在。現在までに、68人の健常者(各被験者
につき最大10セッション)でテスト。これには、仮想デバイス制御および継続的な追
跡するロボットアーム制御が含まれる。さらに、患者に直接適用可能でき、近い将来
臨床試験を実施する。非侵襲的な信号を使用する技術的な課題にもかかわらず、この
安全で経済的な技術の普及に全力で取り組くみ、スマートフォンのように、誰もが利
用できる技術になるかもしれないと話す。



【ポストエネルギー革命序論14】  

 July 4, 2019

東大 ペロブスカイト太陽電池ミニモジュールで20.7%の変換効率

東京大学の瀬川浩司教授らのグループは、高性能低コスト太陽電池として、世界的な
研究開発競争が進められているペロブスカイト太陽電池で、20%を超える高い変換
効率のペロブスカイト太陽電池ミニモジュールの作製に成功したことを公表。従来は
ペロブスカイト太陽電池の直列モジュールでは高い変換効率のものでも18%台に止
まっており、その高効率化が大きな課題であった。その原因は、大面積化によってペ
ロブスカイト太陽電池の部分ごとの性能のバラつきが無視できなくなり、低い性能の
部分に引きずられて全体の性能が落ちるため。この研究では、I-Vヒステリシスが極
めて小さく均一な性能を示すカリウムドープペロブスカイト太陽電池(発表者らのオ
リジナル研究)の性能向上と大面積化で、標記の成果を得た。今後は、この技術を瀬
川教授がリーダーを務めるNEDOプロジェクトの参画企業に移転し、実用化を進める予
定。この研究をベースにしてペロブスカイト太陽電池の実用化が行われれば、太陽光
発電の低コスト化に直結し、FIT終了後を見据えた再生可能エネルギーの導入拡大に
大きく貢献する。

❶高性能低コスト太陽電池として、世界的な研究開発競争が進められているペロブス
カイト太陽電池(注1)で、カリウムドープペロブスカイトを用いることで小面積の
単セル(0.187cm2)で22.3%、三直列のミニモジュール(2.76cm2)で20.7%の変換効
率を達成した。
❷これまで、さまざまな組成のペロブスカイトを用いた小面積のペロブスカイト太陽
電池の単セル(0.1cm2以下の面積)で20%を超える変換効率を示すペロブスカイト太
陽電池は多数報告されていたが、大きな面積の直列モジュールで20%を超える変換効
率を示すものは世界的にも全く報告されておらず、本研究で達成した変換効率は、現
時点で世界最高効率である。
❸高性能低コスト太陽電池として、世界的な研究開発競争が進められているペロブス
カイト太陽電池の実用化に道を開く成果である。

お疲れ様でした。感謝

 ”Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era”

  

デジタル学習・材料合成でペロブスカイト風の加速開発

【要点】

❶薄膜状の75のペロブスカイト風組成物の調査(鉛フリー)。
❷ディープニューラルネットワークは、ペロブスカイトを0次、2次、および3次構
 造に分類。
❸Cs 3(Bi 1-x Sb x)2(I 1-x Br x)9デュアルサイト合金で発見された非線形バンドギャップ挙動(



【概要】

世界的なエネルギー需要の増大に対応するためには、新規エネルギー材料の開発を加
速することが非常に重要でありながら挑戦的です。ハイスループット実験(HTE)お
よび機械学習技術は、科学研究者にとってますます利用しやすくなっています。ここ
では、75合成の高速合成と機械学習支援データ診断の組み合わせが、我々の研究室
のベースラインを超える実験学習サイクルあたり1桁を超える加速を達成する、ペロ
ブスカイトにヒントを得た材料に関するケーススタディを示します。増加した処理量
と合理化されたワークフローは、このマルチパラメータ化学空間における無鉛ペロブ
スカイトの探索に光を当てる新しい候補光起電力材料の実現を可能にする。我々の研
究は、学習の加速された実験サイクルと機械学習に基づく診断を組み合わせることが、
材料の発見と開発のための完全に自動化された実験室を実現するための重要なステッ
プであることを示している。新材料開発のための実験サイクルを加速することは、21
世紀の大きなエネルギー課題に取り組むために不可欠です。2ヶ月以内に75の特異
なペロブスカイト風の組成物を製造し、特性化した。87%が1.2~2.4eVのバンドギ
ャップを示しており、これは環境発電用途に興味がある。実験用X線回折データに基
づいて化合物を0次、2次、3次元構造の分類のため、完全に接続されたディープニ
ューラルネットワークを利用し、人間の分析より10倍以上速く、90%の精度で分
析。ハロゲン化鉛ペロブスカイトを用いて本研究方法を検証し、その応用を無鉛組成
物に拡張。より広い合成ウィンドウとより速い学習サイクルで、マルチサイト鉛フリ
ー合金の Cs3(Bi1-xSbx)2(I1-xBrx)9の実現が可能になります。 SbとBrとCs3Bi2I9の
BサイトとXサイトの同時合金化における非線形バンドギャップ挙動と次元性の遷移
を明らかにする。

デジタル錬金術時代なんですね。



ポストリチウム大容量電池:亜鉛空気電池の二次電池化に資する電解質

【要点】

揮発性と二酸化炭素吸収性を抑えた電解質を開発

❶電池寿命を縮める要因であるデンドライトの発生を抑制
❷長寿命の亜鉛空気二次電池への貢献に期待
❸長寿命の亜鉛空気二次電池への貢献に期待

産業技術総合研究所らの研究グループは、、充放電による劣化を抑制した亜鉛空気二
次電池用電解質を開発。軽量で大容量の次世代蓄電池として亜鉛空気電池が注目を集
めている。特に亜鉛の経済性と安全性、空気電池の軽さを生かしたモバイル機器やド
ローンなどへの利用が期待されている。しかし、これまでの亜鉛空気電池の電解質は
水溶液のため、水が揮発して電解質が劣化すること、またアルカリ性であるため、空
気中の二酸化炭素との反応で酸化亜鉛が生じて、電極の性能を低下させること、さら
に負極では充電時に問題となる樹枝状突起物であるデンドライトが発生すること、
などの問題があった。

今回、電解質に高濃度の塩化亜鉛水溶液である塩化亜鉛水和物溶融塩を用いた。これ
は酸性なので、二酸化炭素と反応しない。また、塩化亜鉛の濃度を室温で液体である
限界まで濃くしたので揮発性が抑制され、同時にデンドライト形成も抑制された。こ
の電解質を用いることで高寿命の亜鉛空気二次電池を実現できた。図1に塩化亜鉛水
溶液の分子配位の濃度依存性を示す。水和物溶融塩(図中ピンク)では全ての水分子
が亜鉛イオンに配位するため揮発性と加水分解性が抑制される。通常、水と接した亜
鉛金属は水と反応して酸化亜鉛や水酸化亜鉛の被膜を形成して電池過電圧を増大させ
る要因となるが、この電解質中では水分子は全て亜鉛イオンに配位するため亜鉛金属
との反応性が抑えられ、被膜が形成されにくく作動電圧を向上させることができる。

図2

アルカリ水溶液を電解質として使用した亜鉛空気二次電池は初回から数回の放電効率
は100 %であるが、その後急激に効率が低下する(図2青)。充放電5回目では初回の
20%%以下の容量しか発揮できない。一方、図2赤に示す塩化亜鉛水和物溶融塩を用い
た電池は初回から10回目までほとんど充放電効率が変化せず、また電圧も低下しない
。二酸化炭素との反応抑制や、揮発性とデンドライト形成の抑制により電極の劣化を
防止できため、亜鉛空気二次電池が長寿命化したと考える。今後は、新規空気極触媒
の開発により、高エネルギー密度、さらに長寿命な亜鉛空気二次電池の開発を目指す。


 

 



【続・引き寄せられる混沌Ⅱ:7040問題を考える】

社会保障保障費増大は「脅威」なのか? わたし(たち)の答えはノーである。今回
手にしている盛山和夫著『社会保障が経済を強くする─少子高齢社会の経済戦略-』
(光文社新書)はまさに正鵠を射ており、すべての価値の原泉は”国民の勤労”にあ
り、それを産助するのが政府役割だからである。効率や瑕疵などのリスクを覗いて、
それを”成長”と呼べばよいことになる。それでは、第一章『なぜ社会保障は悪者に
されるのか』から見てみよう。

成長戦略に関わる議論の中には、しばしば「社会保障改革」という言葉 も現れます。
しかし、その言葉が意味するところは、だいたいにおいて 「社会保障費の《削減》」
です。規制緩和を唱える人だちからは、社会保障費の問題に対しては、基本的には高
齢者を対象とする社会保障を抑制したり、削減したりすることで乗り切っていこうと
いう姿勢がうかがえます。一部では、年金の支給年齢を引き上げるといった、実質的
な給付水準の引き下げも検討されています。もし、ふくらむ社会保障費に見合う形で
経済が拡大していかないのなら、社会保障費を抑制するしかないと考えるのは当然で
しょう。しかも、経済学者をはじめとする多くの人たちは、社会保障費が増大するこ
とは、経済成長そのものに対する「阻害要因」だと見なしています。そうだとすると、
社会保障費は国民に大きな不満が出ない程度には、なるべく縮小した方がいい。それ
が「社会保障改革」という言葉で意味されていることの 内実です。



このように国の借金がどんどん膨らんでいく中で、財政における社会保障費が増大し
ていくという状況は、多くの人に「脅威」と感じられています。「恐怖」といってい
いかもしれません,そのため、「何とかして社会保障費の増大を抑えなければならな
い」という考えが強くなるのも、ある意味、当然のことだといえるでしょう。しかし、
はたして社会保障費の増大は「脅威」だと見なされるべきなのか、本当は、そうでは
ないのです。本書では、それとはまったく逆の考え方を示したいと思っています。そ
れは、子育て支援を中心としつつ、それ以外にも、年金、介護、医療などの社会保障
をより充実させることこそが、むしろ日本の長期的な経済発展につながるというシナ
リオです。したがって、「共同子育て社会」という理念を往としながら、高齢者のた
めのさまざまな社会保障をも充実させること、それが少予尚齢化に直面する日本社会
にとって、最も有効的かつ最大の「成長戦略一になるはずなのです。  

     盛山和夫『『社会保障が経済を強くする─少子高齢社会の経済戦略-』』


1-1-2 規制緩和を叫ぶ人たち

別の人だちからは、次のような方向でのアベノミクス批判が出されています。それは、
「本当に持続可能な経済成長を達成しようとするのであれば、抜本的な規制緩和によ
って潜在成長率を上げなければならない。それこそが真の成長戦略だ」というような
批判です。たとえば、八代尚宏氏の「規制改革で何か変わるのか」(ちくま新書 2
013年)などがそうです。この人たちは、必ずしもアベノミクスに全面的に反対で
はありません。しかしこの手のコメントは、いねば受験における「模範解答」のよう
なもので、実質かおりません。その証拠には、そもそも「抜本的規制緩和が必要だ」
と答える人で、同時にどんな規制緩和によって、どのように日本経済が長期的に持続
可能になるのかを具体的に示してくれる人はほとんどいません。つまり、「抜本的規
制緩和」というのは「単に言葉の上だけで収まりのいいコメントを発しているだけ」
というものです,結局のところ、アベノミクスを正面から批判する人と、一応は歓迎
だけれども「成長戦略が打ち出せていない」といって批判する人とは、次の点ではま
ったく共通しています。それは、「具体的にどうすれば、経済が一定 の成長を達成し
て、少子高齢化する日本社会の社会保障を充実したものにすることができるか」とい
う問題に対して、何ら答えを用意していないという点です。というよりも、そもそも
「社会保障を充実させるためにも、経済の持続的な成長が必要なのだ」という発想そ
のものがありません。人口減少や少子化で経済が衰退していくのを「避けられない」
と感じている人たちには、「何とかして人口減少や少子化を食い止めよう」という発
想がまったく見られません。また、経済の成長は規制緩和によって可能だと考えてい
る人たちは、社会保障費の増大は、経済成長への大きな障碍にほかならないと考えて
います。

まとめると、社会保障費を抑制ないし削減すべしとする考え方の根本にあるのは、次
の二つです。

A 国の債務残高の大きさは危機的な状況にあり、早急に解決しなければならない。
B 社会保障費支出のために国民の租税負担を増大させることは、経済にとってマイ
  ナスである。

しかしこの二つとも、じつは大きな聞違いなのです。  

      盛山和夫『『社会保障が経済を強くする─少子高齢社会の経済戦略-』』   

1-1-6 社会保障は経済にとってプラスになる  

以上まとめると、「国が国民一人当たり846万円もの借金を抱えている」というの
はまったくの間違いで、正しくは、「政府には国民一人当たり846万円の借金があ
るが、国民は一人当たり805万円を政府に貸している」といわなければなりません。
言い換えれば、「政府の借金」=「国民の資産」ということです。こうした事態が消
費者金融の場合と違うのはもちろん、政府債務の貸し手の大部分が「外国の金融機関
や政府」であるようなギリシャや他の多くの国のケースとまったく異なることは、き
わめて明白です,「債務危機」というものがどうやって生まれるか、そして日本では
その可能性はまずないことについては第6章で説明しますが、ここで一つだけ指摘し
ておくと、かりに「政府の借金」の取り立てが生じた場合でも、何の問題もありませ
ん。第一に、その支払いは「政府が発行する国債を日銀が買う」ことで可 能であり、
第二に、「政府が借金を返却した分だけ、そのまま国民の側の手 持ち資金が増える」
だけだからです。

1-2 社会保障への支出は「負担」ではない

本書は、基本的に次の三つの命題を証明していきます。

(1)社会保障の大部分は、じつは経済活動そのものである。
(2)少子化対策への財政支出は、長期的な「投資」である。
(3)政府債務残高の増大は当面、何ら問題はない。ただし、長期的にはプライマリ
   ー・バランスの赤字は解消が望ましい。

以下、これらの命題が正しいことを説明しながら、子育て支援を中心に 社会保障の充
実を基盤とする少子高齢社会日本の成長戦略を述べていくこ とにしますが、本章の後
半では、まず(I)の命題について説明しましょう。

1-2-1「福祉にお金をかけるのはムダ」という思い込み  

なぜ、社会保障費はマクロ経済にとって負担だと考えられてきたのでしょうか。一つ
の理由は明らかです。それは、単に「脱や保険料のように政府によって強制的に徴収
されることは、個人のレベルでは《負担》に感じられる」ということです。ここでは、
「税や保険料が取られる」ということにしか関心が向いていません。しかし通常は(
少なくともまともな政府であれば)、徴収された税や保険料はさまざまな形で国民の
ために使われます。そのことは、ほとんど意識されません。私たちが病気で医者にか
かるとき、医療費の7割は「税と保険料」から支払われます。つまり、政府(と保険
組合)が私たちの代わりにお金を支払っているのです。それは、政府から私たちへの
「給付」です。しかし、私たちは病院の窓口でそうした給付を直に受け取るわけでは
ありませんから、そうした給付があることは通常は忘れてしまっています。そのため、
単に「税と保険料とを取られている」というネガティブな感覚だけが生まれているの
です。

1-2-6 生活保護と年金は、経済インセンティプにプラスになりうる  

同じ社会保障でも、生活保護制度は、それ自体として何か財やサービスの生産・消費
という経済活動を生むものではありません。保護対象者に生活資金が直接給付される
対象者はそれを使って生活するというしくみです。(医療など、一部に間接的な給付
もあります)。この点では、年金も同じです。経済的には、これは「移転所得」にな
ります。親からの贈与や相続も移転所得です。受け取る側から見ると、働いて得た所
得も給付や贈与で受け取る所得も、所得という点では同じですが、一方は経済活動へ
の対価であるのに対して、他方は経済活動を体っていないという大きな違いが存在し
ます,したがって、生活保護や年金については「経済活動に従事して椋いでいる人び
との所得から、従事していない人たちへの強制的な配分がなされている」という言い
方は間違いではありません。このため、生活保護や年金が「経済にとって負担だ」と
いう見方は、医療や保育・介護の場合よりも、もっともらしく感じられることになり
ます。  

              ─── 中略 ───

たとえば、雇用の現場では失業保険や労災保険という社会保険制度が存在しています
。これらは社会保障制度の一部です。失業保険制度は何のためにあるかといえば、そ
れはさまざまな要因による失職のリスクヘのセーフティネット」としてです,労災保
険は労働災害や労働に基づく疾病ヘのセーフティネットになります。世の中には、さ
まざまな理由で「働こうとしても働くことのできない人」が多数います。障害を持っ
た人、病気の人、そして高齢の人たちがそうです。こうした境遇に陥ることは、「人
生上のリスク」という側面があります。そうしたリスクに対して、失業保険や労災保
険とは別に、雇用経験の有無に関係なくセーフティネットが用意されているという社
会は、明らかに社会として望ましいことです。では、こうしたセーフティネットを張
ることは、経済にとって「マイナス」でしょうか。おそらく普通に働くことのできる
人にとっても、セーフティネットが用意されていることで、「安心して経済活動に励
むことができる」という側面が大きいのではないでしょうか。そうしたセーフティネ
ットがまったくなくて、万が一、交通事故などで障害者や長斯療養者になってしまっ
た場合、あるいは生まれてきた子どもが障害を持っていた場合、本人はもちろん、身
近な家族や親戚・近隣の人にとっても、生活上の苦難は計り知れないものがあります。
そうした境遇の人と家族に対して支援が用意されていることは、健康に働くことので
きる人たちにとっても、そうした支援制度の整った社会に生きているという安心感に
つながり、経済活動にとってプラスに働くのではないでしょうか。

1-2-7 年金は現役時代への報奨という意味  

年金には、もっと明白に「経済にとってブラス」の面が存在します。そもそも,Pension
(年金)という言葉は、中世ヨーロッパの君主が功績のあった家臣に与えた年金に始
まります。これは「家臣の奉仕インセンティブを高める」ことに狙いがあったことは
いうまでもありません。今日の年金も、その構図を引き継いでいます。つまり、現役
時代における経済活動の功績に対して、退職後に給付されるものが年金です。日本の
近代的年金制度も、もともとの始まりは軍人恩給です。ただし、今日の制度では、何
かの「功績」が評価されて給付が決まるのではなく、単に「現役時代にいくら保険料
を支払ったか」で年金額が決まるしくみになっています。給付のための原資をどこか
ら持ってくるかという問題を別にすれば、年金という制度が「経済活動にとってイン
センティブとして働く」ことは否定できないでしょう。ただし、今日の日本の年金制
度では、このことがきわめて分かりにくくなっています。まず、年金制度の根犯法で
ある「国民年金法」では、「過去の功績に報いるものとしての年金」ということは謳
っていません。その第一条には、「国民年金制度は、日本国憲法弟二十五条第二項に
規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれるこ
とを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与す
ることを目的とする」と書かれていますが、一見して分かるように、一種の「生活保
護」的な位置づけになってしまっています。

これは、制度の現実からすれば、不適切で不十分な規定だといわざるをえません。な
ぜなら、これだと、実際には「保険料の拠出に応じて年金受給額が決まっている」と
いう現行制度を根拠づけることにはならないからです。また、保険料を拠出すること
には「現役時代の経済的功績」という意昧がありますが、実際の年金の支給において
はどうしても「現在の経済活動から生まれる現役世代の保険料拠出や税拠出を原資と
する」という構造にならざるをえません。過去の保険料からの積立金はありますが、
現実の給付のほとんどはその時点での保険料収入、もしくは税収入に依存しています。
そのため、この面でも「過去の功績に報いるものとしての年金」という性格が見えに
くくなっています。こうした構造のため、年金給付水準の高さ低さは、現役で働く人
にとっては、相矛盾する二つのインセンティブを意味することになっています。その
一つは、「将来の年金給付水準が高い方が、労働インセンティブは高くなる」という
面です。

ここでは「現役時代の功績」が重要な意味を持つことになります。しかし他方では「
現時点で自分が拠出しなければならない保険料や税金が高くなると、労働インセンテ
ィブにマイナスとなる」という面があります。「高齢者になったときの年金受給が、
現役時代の拠出と無関係」になればなるほど、「自分には何の見返りもない、単なる
《現在の高 齢者への(強制的な)贈与》」という意味だけが強くなってきてしまう
のです。しかしここで重要なことは、後者の点だけに目を奪われて、「だから、年金
は経済への負担だ」と結論することはできないということです,たとえば、かりに公
的年金制度がまったくなかったとしましょう。その場合でも、おそらく大企業の多く
は会社内の年金制度を発達させるでしょう。その方が従業員のやる気や忠誠心を高め
る効果があることが確実だからです。しかし、そうした企業年金の実際上の年金給付
は、給付時点での会社の業績に依存します。もちろん、途中でつぶれてしまった会社
からは年金を受け取ることはできません。  

公的年金制度というのは、そうした個々の会社や産業、職業などによる不安定なバラ
ツキをできるだけなくして、社会全体として安定した給付のしくみを構築するという
意味を持っていました。制度が普遍化され、全体化されたため、結果として、「現役
時代における功績への対価」という意味が見えなくなってきたことは事実です。しか
し、その意味は依然として生き続けています。ここから、次のことが明らかでしょう。
「経済にとっては、過剰な年金給付もマイナスだけれども、過少な年金給付もマイナ
スである。拠出負担と年金受給との何らかのバランスの良いしくみこそが、経済にと
ってはプラスになる」  

そして、そのような年金制度は、決して「経済にとっての負担」ではありません。
以上のように見てくると、医療や保育・介護だけでなく年金や生活保護にしても、そ
れらにかかる費用を「国民負担」という言葉で表現するのは、おかしいといわなけれ
ばなりません。医療や保育・介護に関しては、それらにかかる費用の大部分はそれぞ
れのサービスヘの購入費であって、そこにはそれら「サービスの生産」が生まれてい
るのです。そして、生活保護と年金に関しては、直接の経済活動を生んではいません
が、基本的には経済的に中立であって「マイナス」を生むものではないと同時に、労
働インセンティブの観点から見ても、適切に運営されれば「マイナス」ではなくてフ
フラス」だと判断することができます。じつは、もともと「国民負担率」という言葉
は、1980年代の初め頃に日本の官僚たちが思いついたものにすぎません。最初か
ら、何かマクロ経済的に見て理論的な根拠があったわけではないものです。

     盛山和夫『『社会保障が経済を強くする─少子高齢社会の経済戦略-』』

あんちょこ過ぎるが、これだけでも論調が了解できそうである(例えや表現の違和感
は残るものの)。次回は、第三章の 「ちいさな政府」イデオロギーの誤り───に
移る。 

                                この項つづく

 ● 今夜の一曲

竹内まりや) - クリスマスは一绪

HAPPY Xmas SHOW! 2006のテーマソングとして書き下ろされた楽曲。みんなひとりの
セルフカヴァーバージョンと同じくソフト化される前に前述の番組の宣伝も兼ねて
サンデーソングブックのみで先行OAされていた。竹内まりや作品では珍しくタイトル
そのものに「クリスマス」と入ったクリスマスソングである。イントロの印象的なギ
ターカッティングは山下達郎演奏のもの。まりや曰く「達郎のカッティングをバック
に歌いたくて」書いたという。それにしても、夏にクリスマスの歌とは。おかしいと
思うが、残された時間がないからか?そういえば、久しぶり会った彼女もそんなこと
いったってけ。
 


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