7.述 而 じゅつじ
ことば------------------------------------------------------
「道に志し、徳に拠り、仁に依り、芸に遊ぶ」(6)
「一隅を挙げて三隅をもって反らざれば、復せざるなり」(8)
「不義にして富みかつ貴きは、われにおいて浮雲のごとし」(15)
「子、怪、力、乱、神を語らず」(20)
「三人行えば、必ずわが師あり」(21)
------------------------------------------------------------
32.学問の点ではわたしでも人なみだという自信があるが実践と
なるとまだ君子にふさわしいとはいえない。(孔子)
子曰、文莫吾猶人也、躬行君子、則吾未之有得也。
Confucius said, "I am confident of studying hard. But I have
never been confident of practicing as a gentleman yet."
【ポストエネルギー革命序論69】
建物完結型バイオマスガスシステム
モール、商業ビルルでも高採算性を確保
【要点】
① ディスポーザー排水から生ごみを回収し、バイオガス設備でメタ
ン発酵処理
② 厨房排水中の汚濁分も、バイオガス設備でメタン発酵処理
③ 消化液(液肥)を厨房除害施設で排水処理
④ 生ごみと汚泥を外部搬出することなく、バイオガスとしてエネル
ギー生成
July 17, 2019
今年6月、竹中工務店は建物完結型バイオガスシステム『メタファー
ム』を改良。生ゴミ1トン/日の建物にも 適用範囲を拡大開発したと
公表。世界的にSDGs への取り組みが進み、サーキュラーエコノミー
ヘの関心が高まるなか、長くゴミに着目し再利用、循環に取り組んでき
た竹中工務店の技術・システムが注目されている。竹中工務店が10
年に開発した『メ タファーム』は、建物で発生した生ゴミ と厨房排
水からオンサイトでバイオガ スを発生し、エネルギー源として利用で
きる、建物完結型バイオガスシステム。『メタファーム』の開発当時
、食品リサ イクル法上のリサイクルに、外部委託で処理業者として、
①メタン発酵を行う会社はあったが、40、50トン以上の大規模な
プラントしか採算がとれずにいた。生ゴミの収集・運搬にもかなりの
労力とコストがかかるため、“発生場所で処理できないがというのが
同システム開発の発想の原点。②一方で、建物内で生ゴミを運搬する
と臭いの元になるという問題、③食品工場のリサイクル率に比べ、レ
ストラン・物販部門のリサイクル率が低いという課題があった。「デ
ィスポーザー」を用いて生ごみを露出させずに配管中を流して臭いを
防ぎ、さらに建物内でリサイクルすることを目指し、この技術の開発
が始まる。竹中工務店では、14年3月に開業した超高層ビル『あべ
のハルカス』(大阪市阿倍野区)に3トン/日規模の生ゴミ排出量を対
象とした『メタファーム』を初めて導入。現在まで安定的な運用が維
持されている。当時、近鉄様から“環境への取り組みとして何かPR
できないがと相談があり、普段あまり日の当たらないゴミに着目しよ
うと考えていた。建物内の生ゴミ運搬の課題解決に、ディスポーザー
に着目することを考えたが、①生ゴミを砕きながら流して浄化槽で処
理し下水に流すディスポーザーでは、生ゴミのリサイクルができない。
ディスポーザーの利用とリサイクルを両立するシステムの開発に当た
りこれが1つめの課題となる。②つめの大きな課題は経済性。十数年
前、堆肥化・飼料化の装置が流行ったが、都市部では堆肥を使う場所
がなく、結局ゴミになる。都市部で廃棄資源を循環させるならメタン
発酵が一番だが、メタン発酵は規模がなければ経済性が成り立たない。
この2つの課題を解決し、開発したのが『メタファーム』。前者は、
ディスポーザーから固形分を回収することで、2つめの課題は厨房排
水中の有機物分も加えたメタン発酵でエネルギー回収することにより
解決、①省C02を図り ②リサイクルもできて、再エネも作る。これ
を経済的に成立させ、かつ建物の衛生管理の改善も実現できるのが、
このシステムの特長である。(環境ビジネス, 2019年秋季号)
従来技術の組み合わせで新システム
従来、数+トンの規模でないと成り立だないと言われていたバイオガ
スシステムを、3トン/日の規模で実現秘訣は、ディスポーザーと厨
房除害施設を組み合わせる発想。『メタファーム』では、ディスポー
ザー排水から再び分離・回収した生ゴミと、厨房排水中の汚濁分だけ
を取り出し、これらを合わせてバイオガス設備でメタン発酵処理して
いる。バイオガス発酵処理で発生した消化液は排水処理へ回す。排水
処理を行う厨房除害施設から見れば、ディスポーザー側からは固形分
のない水分だけが入り、厨房排水からあらかじめ汚濁分が取り除かれ
ているため、排水処理にかかる負荷は減る。メタン発酵後の消化液を
厨房除害施設へ入れても十分に処理でき、下水へ放流することができ
る仕組みだ。生ゴミのメタン発酵において最もコストのかかるのは、
消化液の処理。このコストをカバーするには規模がないと難しいと言
われていた。一方で、 規模なビルには厨房排水を処理する 設が入っ
ている。この施設は排水処理後に発生する汚泥を定期的に外部処理せ
ざるをえず、この処理費用もバカにならない。特に『あべのハルカス
』は汚泥搬出用の大きな車が寄りつくには難しい立地にある。 「下水
処理施設では、この汚泥を用いてメタン発酵している所も多くある。
生ゴミだけでなく、この汚泥も一緒に処理できないかと考える。厨房
除害施設はもともとある施設。ディスポーザーから固形分だけを回収
する技術や、厨房排水から汚濁分だけを取り出すスポット的な技術開
発があったが、基本的には従来あったものの組み合わせで、今まで数
10トン規模でしかできなかったものを3トン規模でありながら10
年で減価償却するモデルを創り出した。従来の技術の組み合わせで新
しいシステムを開発する、典型的なイノベーションのカタチと言える。
メタファームは再エネではなく資源循環に主眼
19年6月には、小型ショッピングモールなど向けに1トン/日程度
にまで小規模化した『メタファーム』を発表。現在の『メタファーム』
は十分なメタン発酵をさせるため、厨房排水中の過剰な油分をあらか
じめ除去する必要があるが、約1年後を目処に、これを不要とするシ
ステムの開発も目指している。14年の『あべのハルカス』以降、素
晴らしいシステムと評価されながら、建築設備の回収年数が5年と言
われる中、10年という回収年数がネックとなり、なかなか展開が進
まなかった 『メタファーム』。 ここ1~2年は、SDGs やパリ協
定の影響で環境や資源循環に対する意識が高まり、引き合いが急に増
えているという。3年前にぱ回収年数5年が当たり前と話していたが
15年で回収できるならいいという時代に変わってきたと開発担当者
が話す。オフサイトの30トン、40トンでゴミを集めるバイオガス
システムは、再生可能エネルギーがメイン。同じバイオガスシステム
でも、小規模化し建物の中に入れる『メタファーム』は、エネルギー
で儲ける話ではなく、資源循環がメインのシステムと言える。とはい
え経済的に成り立たせるためにエネルギーを得てプラスにしている。
『メタファーム』の主眼は資源循環。商業施設、食品小売業、外食産
業が頭を悩ませているリサイクル率の底上げをして、資源循環をしな
がらエネルギーも得る。SDGsに合致したシステムと再定義できると。
隠してしまいがちなゴミを 〈見せる化〉
竹中工務店がゴミに着目したのは、 SDGsもサーキュラーエコノミ
ーも言われていなかった07年頃から。省エネという言葉は昔からあ
り、エネルギー回収については、先行して取り組みが進んできたが、
資源循環となると、例えばペットボトルでも、メーカーが作って販売
した後の、集める部分の仕組みまでは出来上がっていないのが実情。
出発点がバラバラのゴミを、どこにどう戻すかは難しい問題となり、
公共のゴミ処理場に散らばる前に建物内で完結させるという、『メタ
ファーム』のシステムの考え方は新しい。竹中工務店はゼネコンの世
界における建設リサイクルには、かなり前から力を入れ、取り組んで
きた。次の一手を考えた時、建物運用時における資源循環に目をつけ
てきたが、07年頃から〈ゴミの見せる化〉に取り組む。ゴミは一度
混ざってしまうと、リサイクルするための分別が大変。まずは、分け
て集めるのが基本だが、それには、捨てる人の意識を高める必要があ
る。そこで、くゴミの見せる化〉で捨てる人の意識を高める取り組み
を開始。〈ゴミの見せる化〉は大きく3つ。①ゴミ置き場を綺麗にす
ることで、綺麗な分別をする。②ゴミの量を見せることで、どれくら
い捨てているかを意識させる。③ゴミの管理状況を見せることで、テ
ナントビルのオーナーやテナントが、ゴミがどれくらい増えているか
の管理をできるようにする。ゴミ問題が進展しない理由は、“見えな
い所に送っておしまい"というスタイルが問題だと言える。循環させる
には、隠すのではな〈〈見せる〉ことが大事。みんなが“隠してしま
え"というゴミを見せることで、資源循環の大元の、分けて集めるとこ
ろに注力。『メタファーム』は最後に処理する所だが、最初に分ける
街区単位でのゴミ処理の完結目指す
竹中工務店の19年のコーポレートレポートによると、『まちづくり
を通したサステナブル社会の実現』を基本に、成長戦略を立てている。
設備や建物を作って終わりではなく、運用段階での困りごとにまで視
野を広げ、事業を展開しき、法的な課題があるものの、今後はエリア
開発、街区単位での取り組みを進めていきたいと考える。現在、ゴミ
の処理は自治体の責務になっているが、街のどこか1ケ所に集めてと
いうのでは大きすぎる。かといって、ビル単位では少し小さい。1日、
5~30トンくらいまで『メタファーム』の適用範囲を広げれば、こ
れまで地域収集でやってきたものを、建物あるいは街区単位で完結で
きるかと考える。5トンを超えると法律の壁があるが、郊外でゴミ処
理するより、街中で処理する方が人の意識も高まると考える。エネル
ギー分野はは、分散型エネルギーの重要性が問われるが、資源循環も
街区を飛び出す大きなプラントではなく、街区の中でうまくまとめる
ことで、エネルギーと資源がうまく続合されていく一方で、BCPの
視点で生き延びることを考えれば、非常時にゴミ収集車が来ないのに
ゴミが増え続ける状態を考えた場合、『メタファーム』のシステムな
ら、そうした場合にもゴミを街区の中で処理し続けることができる。
日常は省C02、省資源、非常時には衛生面のキープ。『メタファーム』
を街区単位でフィットして入れていくという発想は、平常時の資源循
環だけでなく、BCPの機能を高めるといった面でも有効だと開発担
当者は話す。
関連特許:
特開2018-183735 バイオマスの処理方法 株式会社竹中工務店
【要約】
下図1のごとく、バイオマス10を水熱可溶化処理する水熱可溶化工
程102と、水熱可溶化工程202で得られた固液混合物を固液分離
する可溶化液分離工程104と、可溶化液分離工程104で分離され
た可溶化液を濃縮する濃縮工程106と、濃縮工程106で得られた
濃縮液をメタン発酵する発酵工程120と、を備えることで、バイオ
マスのメタン製造におけるメタン発酵期間を短縮する
【特許請求の範囲】
【請求項1】バイオマスを水熱可溶化処理する水熱可溶化工程と、前
記水熱可溶化工程で得られた固液混合物を固液分離する可溶化液分離
工程と、前記可溶化液分離工程で分離された可溶化液を濃縮する濃縮
工程と、前記濃縮工程で得られた濃縮液をメタン発酵する発酵工程と、
を備えたバイオマスの処理方法。
【請求項2】前記濃縮工程は、分子量が1000を超える成分を分画
分子量基準で90%以上分離除去可能な膜で分離する第一濾過工程と、
前記第一濾過工程で分離された透過液を一又は二以上の膜で酢酸を主
成分とする有機酸を分離して濃縮し、前記濃縮液にする第二濾過工程と、
を備えた請求項1に記載のバイオマスの処理方法。
【請求項3】前記水熱可溶化工程の前に、前記バイオマスを摩砕処理
する摩砕工程と、前記摩砕工程で得られた摩砕物を固液分離する摩砕
物分離工程と、前記摩砕物分離工程で分離された液体成分をタンパク
熱凝固処理する凝固工程と、前記凝固工程で得られたタンパク凝固液
を固液分離するタンパク凝固液分離工程と、を有し、前記水熱可溶化
工程では、前記摩砕物分離工程で分離された固体成分と、前記タンパ
ク凝固液分離工程で分離された液体成分と、を水熱可溶化処理する、
請求項1又は請求項2に記載のバイオマスの処理方法。
【請求項4】前記タンパク凝固液分離工程で分離された固体成分を乾
燥させる乾燥工程と、前記可溶化液分離工程で分離された可溶化残渣
でマゴットを繁殖させるマゴット繁殖工程と、を備えた請求項3に記
載のバイオマスの処理方法。
【請求項5】前記水熱可溶化工程では、130℃以上200℃以下、
且つ当該温度の飽和蒸気圧以上3MPa以下の環境下で水熱可溶化処
理する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のバイオマスの処
理方法。
人口減少時代のまちづくり⑩
14 「認知症」は増えているのか
【要点】
①65歳の高齢者のうち5人に1人が認知症になる。
②64歳以下の認知症の発病率が増えてきている。
③国は団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる。2025年に向け
て「新オレンジブラン」を策定、
1 認知症と年齢の関係について
認知症は、何らかの原因で脳の神経が壊れることにより起こる。進行
すると、生まれてから正常に発達した知的能力(記憶・思考・計算・
言語・判断等)機能が脳の障害によって 低下し、日常生活や社会生活
を営めなくなる状態をさす。認知症と年齢の関係については、高齢に
なればなるほど、認知症の有病率は上がります。65~69歳の認知症有
病率を1・ 5%とすると、85歳以下の認知症有病率は、その約18
倍の27%になり、一方、64歳以下の認知症の発病率が増える。厚
生労働省では、64歳以下で発病した認知症を「若年認知症」と定め
ており、認知症発病率の平均年齢は約51歳となる。
2 認知症の増加と社会問題
認知症高齢者は、2012年では約462万人、25年には 700万
人を突破する推計値が、厚生労働省から発表。このことは、65歳の
高齢者のうち5人に1人が認知症になる。認知症患者の介護は、24
時間のは守りが必要であり、現在でも多くの家族が認知症患者を介護
している。その負担の大きさから、家庭崩壊や心中問題に発展するこ
ともある。介護問題は、地域ぐるみでないと対策は難しいと考えられ
ている。介護保険においては原則、65歳以上で、要介護認定を受け
た方が、支援や介護サービスが受けられる。65歳未満の初期の認知
症患者(若年性認知症)の対策が遅れているため、その患者の家族負
担は65歳以上の患者より重いといわれている。その他に、判断力が
低下した認知症患者による自動巾運転問題や認知症患ガが鉄道事故に
巻き込まれるケースが05~12年での8年間で149件発生するな
ど様々な社会問題が生じている。認知症問題は、老年期 認知症だけの
問題でなく「認知症介護」における社会制度の改善が必要になるとと
もに、家庭内での認知症に対する意識の向上が不可欠となる。
3 認知症の人が自分らしく暮らすことができる社会
高齢者の増加に伴い、認知症への対策が急務となってる。国は「認知
症の人の意思が尊重され、出来る限り住み慣れた地域の良い環境で自
分らしく邨らし続けることができる社会を実現する」ことを目的に、
団塊世代(約800万人)が75歳以上の後期高齢者なる2025年
に向けて「新オレンジブラン」を策定。認知症高齢茜にやさしい地域
づくりに向けて、医療・介護・ 介護訃防・住まい・生活支援を包括的
にケアするための戦略。その概要は、①認知症への理解を深めるため
の普及・啓発の推進。②認知症の容態に応じた適時・適ぶな医療・介
護等の提供。若年性認知症施策の強化。④認知症の介護者の支援。⑤
認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進、⑥認知症の予
防法・治療法などの研究開発と成果の普及。⑦認知症の人や家族の視
点の重撹など。このプランでは、医療従事者、地域、個人など様々な
対象者が各々の立場で役割を梁たすことが求められているす。
キーワード 若年年認知症の増加/自分らしく暮らせる社会
15 「高齢者の運転事故は増えているのか
【要点】
①後期高齢者の運転免許の保有者は同年比較で 1・9倍増加。
②75歳以上の運転者が全体に占める死亡事故が、増加傾向にある。
③高齢者の運転免許返納率は徐々に上昇している。
1 高齢ドライバーの運転免許保有者の推移と運転事故
国内の総人口は1億2649万人(2018年4川現配) で、その
うち75歳以Lの後期高齢者は1779万人で全体の 14・1%を占
める。2017年の運転免許の保有者は 8225万5千人で、その
うち5395千人が75歳以上の後期高齢者で、全体の6・6%を
占める。後期高齢者の07年と17年を比較すると、10年間で1・
9倍に増加。後明高齢者の運転免許の保有晋は同年比較で1・9倍増
加し、後期高齢者の増加率と運転免許の保有率は変わらない。警察
の75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数の推移(警察庁「交通
事故統計」17年度)によると、07年と17年を比較すると30%
(3247件)減少、75歳以上の運転者による死亡事故故は回年比
較で横這い(418件)状況です。しかし、75歳以上の運転者が全
体に占める死亡事故の割合は07年(8・2%)から16年(13・
5%)まで増加し、17年(12・9%)に若干減少している。
2 高齢者が引きおこす運転事故の問題
死亡嘔故全体は減少傾向を示しすが、75歳以上の運転者が全体に占
める死亡事故が、増加傾向を示す。このような状況を改善するため、
1998年から「運転免許証自主返納制度」が始まる。高齢者の自主
運転免許返納率は徐々に上昇しているが、17年の返納率は4・7%
と低い状況。免許を返納したくない高齢者の理由として、①地方では、
公共交通機関が余りなく、生活を維持する移動手段として車が欠かせ
ない。②仕事や地域の会合など、車は外出に欠かせない生活の一部。
③高齢者にとって「運転=趣味」となっている。④運転免許の返納に
より、高齢者のひきこもりの原因の1つとなる。⑤免許返納により身
分証明証の制度に加えて、70歳以上の免許証保有晋には、免許の更
新時に講習受講の義務化や75歳以上の認知症機能がなくなるなど。
なお、運転免許を返納した方は、「運転経歴証明証」を申請すれば取
得できる。この制度に加えて、70歳以上の免許証保有者には、免許
の更新 時に講習受講の義務化や75歳以上の認知症機能検査を受け
る ことが定められた。
3 免許返納者の移動環境の整備
高齢者の運転免許の返納は、年齢が同じでも運転能力や判断力に個人
差がある。高齢者の免許返納問題は、行政として頭が痛い問題。免許
返納の抵抗感は、公共交通が貧弱な地域で根強く、背景に、移動の代
替下段の乏しさが存在する。各自治体は返納者に対し、バスやタクシ
ーの利用券の配布や企業との連携により、買い物無料配送、メガネ・
補聴器の割引などの特典を用意しているが、一過性のサービスが多く、
返納後の生活の手助けになりにくい。返納を推進するなら、「移動権」
を前提に、交流を支える公共交通移動システムの再構築、地域での高
齢者移動支援など、社会全休での取り組みが欠かせない。高齢者も運
転技能の衰えに無自覚ではいけない。 免許を継続するための支援策と
して自動ブレーキなどの安全 装匿や運転能力を維持するための講習の
充実が求められている。
キーワード 移動権の保障/高齢社会と自動運転技術
第4部 ガウェインの追憶-そのⅡ
第15章
「ブリトン人とサクソン人の習慣の違いですね」と剣を指差しながら
言った。「ガウェイン殿は剣を抜いて、その剣に休眠を預けておられ
る。剣が椅子や足台のように使われています。サクソンの戦士には--
--わたしのようにブリトン人の教えを受けた者にさえ----奇妙な習慣
に思えます」「わしのように体がきしみはじめる年齢まで生きてみよ。
さすれば、そんなに奇妙な習慣かどうかわかろう。思うに、たとえ所
有者の体を休めるだけの仕事であっても、やる仕事があるだけ剣は嬉
しいのではないか。どこが奇妙なのかな」
「剣の刃が地面に剌さっている様をよく見てください、ガウェイン卿。
わたしたちサクソン人にとって、剣の刃は片時も心を離れない心配事
です。空気にさらすことさえ、切れ味が鈍りそうで躊躇します」
「ほう、そうか。鋭い刃が重要であることには、わしも異論がない,
だが、それだけを言い募るのもどうか。巧みな足さばき、堅実な作戦、
冷静な勇気。そして、戦士の行動を予想しにくくする多少の無謀。そ
れらが合わさって勝敗を決する。もう一つあげれば、神がわが勝利を
望んでいるという確信か。だから、年寄りには剣で肩を体ませること
くらい許せ。それにだ、剣を鞘の中に収めておいては、抜き遅れるこ
ともあるのではないか。わしは多くの戦場で、幾度となくこうやって
立ち、息を整えた。剣がすでに引き抜かれ、いつでも使えると思えば
安心できよう。いざという段になって慌てて引き抜いたとき、剣のや
つが目をこすりながら、いまは朝か午後かなどと尋ねきても困る」
「では、わたしたちサクソン人のほうが剣を冷酷に扱うということで
しょうか。たとえ鞘という暗闇の中にあるときでも、剣に眠ることを
許しません。たとえば、わたしのこの剣。これはわたしの癖をよく知
っています。空気に触れるときは、たちまち肉と骨を断つとき。そう
心得ています」
「ふむ、習慣の違いか。かつて知っていたサクソン人を思い出すな。
いい男だった。ある寒い夜、二人で焚き付けを集めていた。わしはせ
っせと剣を使い、枯れ枝を切っていた。だが、その男はわしの横で素
手で枝を折り、ときには石ころで叩き折っていた。わしは『剣がある
のを忘れたか、友よ』と言ってやった。『熊の鋭い爪がないのに、な
ぜ熊のまねをする』とな。だが、やっか聞き入れればこそ。そのとき
はおかしなやつだと思ったが、なるほど、そういうことか。この歳に
なっても、学ぶことは多いな」
二人はしばらく笑い合った。ウィスタンが言った。
「わたしの側には単なる習慣のほかにも理由があります、ガウェイン
卿。刃が一人の敵を切り裂いている瞬間にも、頭の中ではそれにつづ
く一撃を準備しておけと教わりました。もし刃に鋭さが欠けていて、
敵体内の通過が一瞬でも遅れれば骨に引っかかったり、もつれた内臓
で時間を食ったりすれば----つぎの一撃に移るのが遅れて、それが勝
敗を左右することにもなりかねません」
「なるほどな、戦士殿,平和の時期が長くつづき、それに老齢が加わ
って、わしは注意が散漫になってきているようだ。今後は貴殿を模範
としよう。ただ、いまは山登りで膝ががくがくしている。しばしの休
息を許してもらおう」
「もちろん、ご自由に、騎士殿。そうやって休まれるのを見て、ふと
思っただけです]
不意にエドウィンが歌をやめ、叫びはじめた。同じことを何度も何度
も繰り返している。アクセルは横のベアトリスを振り向き、「何を言
っているかわかるかい、お姫様」とそっと尋ねた。
「あそこにある山賊の根城がどうとか。そこに行くから、みんなつい
てこ いって」
ウィスタンとガウェインは、ともに困惑に似た表情で少年を昆ていた。
エドウィンはさらにしばらく叫びつづけ、ロープを引っ張りつづけた
が、急に黙り込むと、地面に転がった。いまにも泣きだしそうな顔を
していた。ずいぶん長い時、誰も何もしやべらず、風だけがうなりな
がら吹き抜けていた、とうとうアクセルが口を開き、
「ガウェイン卿」と呼んだ。
「ここは出番ではありませんか。もう振りはやめましょう。騎士殿は
雌竜の護衛役ではないのですか」
「そのとおりだ」ガウェインは開き直ったように、エドウィンを含む
全員を一人一人ながめた。
「雌竜の守り手であり、最近では唯一の友でもある。長年、修道僧ら
が餌を与えつづけてきた。その山羊のように、この場所に動物をつな
ぎ止めておくのだ。だが、院内で争いが起こり、クエリグは裏切りを
察知している。だが、わしの忠誠は疑っておらぬ」
「ならば、ガウェイン卿、教えてください」とウィスタンが言った。
「雌竜はこの近くにいるのですか」
「近いとも、ウィスタン殿,その少年という案内役に巡り合う幸運が
あったとはいえ、よくここまで来た」
エドウィンはまた立ち上がって歌いはじめた。低く詠唱するような歌
声に変わっていた。
「エドウィンに出会えたのは、案内人を見つけた以上の幸運かもしれ
ません」と戦士が言った。「これは哀れな師匠たちまち追い越し、い
ずれサクソン同胞のために偉大なことをするでしょう----アーサーが
ブリトン人のためにしたように」
「なんと、ウィスタン殿。半分痴呆のように歌っているこの少年がか」
「ガウェイン様、この老女にも教えてください」とベアトリスが口を
はさんだ。
「あなたのように立派な騎士様が、それも偉大なアーサー王の甥御様
が、雌竜の護衛役とはどういうわけですの」
「ここにいるウィスタン殿から聞かれたほうがよいかもしれぬぞ、ご
婦人」
「いやいや、わたしはご婦人同様、ぜひあなたの口から事情をお聞き
したい。だが、そのまえに、まずはこの問題を片づけましょう。エド
ウィンのロープを切って、どこへ行くか見ましょうか。それともガウ
ェイン卿がク エリグの県まで案内してくださいますか」
ガウェインはもがく少年をしばらくぼんやりと見つめていたが、やが
て溜息をつき、「その子はそのままにしておくがよい。わしが案内し
よう」と重い口調で言った。そして立ち上がり、地面から剣を引き抜
いて、慎重に鞘に戻した。
「感謝しますよ、ガウェイン卿」とウィスタンが言った。
「少年を危険にさらさずにすみます。まあ、ここまで来れば、もう案
内人は不要かもしれませんね。つぎの斜面のてっぺんの、あの岩へ行
く。違いますか?」ガウェインはまた溜息をつき、助けを求めるよう
にアクセルを見て、悲しそうに首を振った。
「そのとおりだ、ウィスタン殿,あの岩は穴を取り巻くように並んで
いる。小さな穴ではないぞ。石切り場のように深い。その穴の底にク
エリグが眠っている。あれとほんとうに戦うつもりなら、穴を下りて
いかねばならぬ。いま一度尋ねよう、ウィスタン殿。そんな狂気の沙
汰にも等しいことをなさるおつもりか」
「そのために長い道のりを来ましたから、ガウェイン卿」
「ウィスタン様、老女のでしやばりをお許しください」とベアトリス
が言った。
「さっき、わたしたちの山羊をお笑いになりましたけど、大変な戦い
をなさるわけでしょう? この騎士様が助けてくださらないのなら、
わたしたちがこの山羊を連れて最後の坂を上り、あの穴に突き落とし
ましょうか。一人で雌竜と戦うなら、多少なりとも毒で動きの鈍った
竜のほうがいいでしょう」
「お気遣いに感謝します、ご婦人、ですが、眠っているところに付け
込むのは平気なわたしでも、毒を使うのは気が進みません。毒が効い
たのかどうか、半日待って確かめるだけの辛抱強さもありません。結
局、晩飯をただでくれてやっただけという結果になるかもしれません
しね」
「では、やってしまおう」とガウェインが言った。
「来なされ、ウィスタン殿。案内しよう」
そしてアクセルとベアトリスに向かい、
「そなたらはここで待つがよい。ケルンの横でで風を避けられよ。長
くはかからぬ」と言った。
「ですが、ガウェイン様」とベアトリスが言った。「夫と二人、体を
だましだましここまで来ました。最後の坂あとつくらいなんとかなり
ます。危険がないのなら、ご一緒させてください」
ガウェインはもう一度力なく首を振った。
「では全員で行くとするか。途中、危険な目にあうことはないし、わ
しにとっても、そなたらがいてくれたほうが道中楽かもしれぬ。では、
行こう。クエリグの巣へ出発だ。大きな声を立てるなよ,雌竜の眠り
を妨げてはならぬ」
『忘れられた巨人』
いよいよ雌竜との決着に入るのか まぁ~のんびりした読書テンポで
苛つかずに、”継続は力なりや”と読み続けていくことに。
この項つづく
【滋賀のパワースポット:豊穣なる城郭田園都市ひこね】
●今夜の寸評:特区とアリババの絡繰り
アリババの創業者ジャック・マー会長の突然の退任劇から1カ月。そ
の背景には政治権力抗争が見え隠れすることをニューヨークタイムズ
がスパ抜いたことで知られているが、特区構想にしろ資本注入にしろ
中国共産党独裁が操る「政官民」癒着構造があるものの、程度の差こ
そあるもの自由主義経済圏にもある「開発独裁国家主義遺制」の特徴
である。