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鯰料理に乾杯

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8.泰 伯 たいはく
ことば------------------------------------------------------
「人のまさに死せんとするや、その言うこと善し」(5)
「士はもって弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し」(8)
「民はこれによらしむべし。これを知らしむべからず」(10)
「その位に在らざれば、その政を謀らず」(15) 「学は及ばざる
がごとくするも、なおこれを失わんことを恐る」(18)
------------------------------------------------------------   
9.詩を読んで人間的感情をよびさまし、礼にのっとって人格内容
を充実し、音楽を学ぶことによってハーモニーを完成させる、これ
が教養の過程である。(孔子)

子曰、興於詩、立於禮、成於樂。

Confucius said, "You must be inspired by poem, realize your
duty by the courtesy and complete yourself by music."

   
忘れられた巨人最終章へ④
第4部 ガウェインの追憶-そのⅡ  
第17章
火も安定して燃えだしたところで、おれは立ち上がる。
「さて、ご覧ください:と海を指差しながら言う。
「舟はあそこの浅瀬で揺れています。ですが、わたしは擢を近くの
洞窟に隠してあります。潮溜りができて、小さな魚が泳いでいると
ころです。これからそれをとりに行きますから、あなた方は、わた
しという邪魔者がいない間にゆっくり話し合ってください。島へ行
きたいのかどうか、はっきりと結論を出してください。では、しば
ら く欠礼します」  

だが、婆さんはそう簡単に放してくれはしない。

「行くまえにもう一言だけ、船頭さん」と言う。
「ここへ戻って、わたしたちの島行きを認めてくださるまえに、あ
なたはわたしたち一人一人に質問をなさるのですか。島で二人一緒
に暮らせる夫婦を見つけるため、船頭さんはそうするものだと聞き
ました」  

顔に夕方の光を受けて、夫婦しておれを見つめている。爺さんの顔
はじつに疑り深い。おれは爺さんを無撹して、婆さんと撹線を合わ
せる。  

「奥さん、思い出させてくれてありがとうございます」とおれは言
う。
「そうする習慣であるのに、急ぐあまり忘れるところでした。おっ
しゃるとおりです。ですが、お一人の場合は形式的なものにすぎな
いでしょう。申し上げたとおり、あなた方はとても強い愛情で結ば
れておいでです。さて、今度こそ失礼します。わたしも時間に追わ
れています。戻るまでには決めておいてください」

おれは二人を残して、夕方の海辺を歩いた。しだいに波の音が大きく
なり、足の下の小石が砂に変わっていく。何度かニ人を振り返った。
見るたびに少しずつ小さくはなっていくが、毎回同じ光景が見えた。
灰色の老人がしゃがみ、女とまじめに話し白っている。女のほうは
ほとんど見えない。寄りかかっている岩にほぼ全身が隠れていて、
見えるのは□をきくたびに上下する手だけだ。愛情で結ばれた夫婦
……だが、おれには義務がある。おれは洞窟とそこに隠してある擢
に向かって歩いた。擢を肩に二人のところに戻った。何も間かなく
ても、その目の申に結論が見えた。

「船頭さん、わたしたちを島に連れていってください」と爺さんが
ご言う。 
「では、海まで急ぎましょう。わたしもずいぶん遅れてしまいまし
たから」おれはそう言って、波に向かって急ぐかのように動きかけ
るが、振り返って言う。
「ああ、そうだった。あのばかばかしい儀式がありましたね。では、
おニ人さん、こうしましょう。ご二人、立って、ここから少し離れ
てください。あなたが十分遠くへ離れたと見たら、わたしが奥さん
とちょっと話をします。奥さんはそのままで結構です。そのあと、
今度はわたしがご二人のところまで行きます。浜辺のどこでもいい
ですから、そこでお待ちください。すぐ終わります。そのあとで奥
さんを迎えにきて、みなで舟まで行きましょう」  

爺さんがおれをじっと見ている。爺さんの一部は、おれを信用した
くてたまらないはずだ。

「では、船頭さん、浜辺をぶらついています」とおれに言い、婆さ
んには「離れるのは一瞬だからな、お姫様」と言う。  
「心配いりませんよ、アクセル」と婆さんが言う。
「ずいぶん元気になったし、この親切な方が守ってくださるから安
心」  

爺さんが遠ざかっていく。ゆっくりと入り江の東、絶壁の大きな影
に向かっている。爺さんに追い散らされるように鳥が飛びべつが、
すぐに戻って、また海草や岩をつつきはじめる。爺さんは少し足を
引きずり、背中を曲げている。何かの敗者といった感じだが、体の
内にはまだ小さな火が燃えている」  

婆さんはおれの前にすわり、柔らかな笑顔を向けてくる。さて、何
尋 ねよう  

「わたしの質問を怖がらなくていいですよ、奥さん]と伝える。こ
こに壁でもあれば、と思う。あれば、顔をそちらに向けながら話せ
るのに……。だが、いまあるのは夕方のそよ風と、顔に当たる低い
太陽だけだ。おれは爺さんがやっていたように、婆さんの前にしゃ
がみ、衣を膝まで引き下げる。.  

「怖がったりしませんよ、船頭さん」と婆さんが静かに言う。
「心の内であの人をどう思っているかわかっていますから。なんで
もどうぞ。正直に答えます。証明されるのは一つのことしかありま
せん」

おれは手始めにいつものやつを一つ二つ尋ねる。これだけ数をこな
していれば、もう手慣れたものだ。そしてときどき、相手にしゃべ
る気を出させ、こちらがちゃんと聞いていることをわからせるため
の質問を混ぜる、さらに一つ,だが、もう必要はなさそうだ。婆さ
んは屈託なくしゃべる。ときに目を閉じ、常に明瞭で安定した声で
しゃべりつづける。おれの視線は入り江のあたりをさまよい、小さ
な岩の間を心配げに歩いている疲れた老人を探しているが、耳は注
意深く聞いている。それが義務だ。そして、ほかでまだおれを待っ
ている仕事のことを思い、婆さんの思い出話を打ち切る。
「ありがとうございました、奥さん」と言う。
「では、つぎにご主人のところへ行ってきます」  

そろそろおれを信用しはじめているだろう。そうでなければ、女房
からこんなに離れたところまで来るだろうか。爺さんはおれの足音
を聞いて、夢から覚めたような顔で振り向く。夕方の光を浴びた顔
には、もう疑り深さはなく、代わりに深い悲しみがある。目には小
さな涙もある。  

「どうでしたか、船頭さん」と尋ねてくる。  
「奥さんのお話は楽しかったですよ」と爺さんの柔らかな声に合わ
せて答える。そろそろ風が荒れはじめている。
「では、手短にすませて、さっさと出発しましょう」  
「では、どうぞ、船頭さん」
「何かを探り出そうという質問ではないんです、ご主人,いまうか
がった奥さんの思い出話の一つに、二人で市場から卵を持ち帰った
ときのことがありました。体の前にこう而を抱いて、その中に入れ
て運んだそうですが、乱暴な歩き方に中の卵が傷つきはしないかと
心配したご主人が、ずっと家まで躾に張りついていたそうですね。
楽しそうに話していましたよ]  
「わたしも覚えていますよ、船頭さん」

爺さんはそう旨って笑顔にな た。

「あれはまえに転んで一つ二つ割ったことがあって、また割りはし
ないかと気をもんだだけです。ちょっとした散歩のようで、二人と
も満足でした」  
「奥さんもそう言っていました」とおれは言う。
「時間の無駄ですからこれで切り上げましょう。もともとただの形
式でしたから。では、奥さんを迎えにいって、晦にお連れしましょ
う」  

おれは先に立ち、婆さんのいる小屋に向かったが、なぜか爺さんの
足取りがひどく鈍い。当然、こちらも合わせせざるをえない。

「波が心配ですか、ご主人」とおれは言う。海が荒れるのを心配し
ているのかと思った。
「河口はしっかりと保護されていますから、ここと島の間は 安全で
す」  
「あなたの判断を信用しています、船頭さん」  
「ところで、ご主人、じつは……一とおれは言う。どうせのろのろ
行くなら、少し話をしてもよかろう。
「さっきお尋ねしようかと思った質問があるのですが、いまこうし
て一緒に歩いているので、ついでにうかがってもいいでしょうか」  
「もちろんです、船頭さん」  
「お尋ねしたかったのはこれです。長年一緒に暮らしていて、特別
にこれが苦痛だったということがありますか。それだけの質問です」
「これは例のことの判断材料としての質問ですか、船頭さん」
「いえ、違います」とおれは言う。
「あれはもう終わりました。同じことを奥さんにもお尋ねしました。
単にわたしの好奇心を満足させるための質問です,いやだったら答
えなくてもかまいません。ほら、ご覧なさい」と、ちょうど通り過
ぎた岩を指差した。

「あれはただの藤壷ではありません。時間があれば、岩からの剥が
し方をお見せするんですが。夕食として重宝しますよ。わたしはよ
く火であぶります」
「船頭さん」と爺さんが重々しく言う。その足取りがいっそう重く
なる。
「お望みなら、その質問に答えましょう。妻がどう答えたかはよく
わかりません。というのも、わたしたちのような夫婦間では多くが
沈黙のうちに保たれているものです。それに、いままでは雌竜の息
で空気が汚染され、楽しい記憶も悲しい記憶も全部奪われていまし
たからね。ですが、その雌竜が退治され、わたしの心の中ではすで
に多くのことが明瞭になってきています。船頭さんは、特別に苦痛
をもたらす記憶は何か、とお尋ねです。息子のこと以外にあります
まい。最後に見だのはほぼ成長した姿ですが、まだ顔に髭もないう
ちにいなくなりました。何かいさかいがあって、そのあと近くの村
へ行って………何日かすれば.戻ると思っていましたが」
「奥さんも同じことを言っていました」とおれは言う。
「息子さんがいなくなったのは自分の責任だ、と」  

「妻が、最初の部分を自身の責任だと言うなら、つぎの部分につい
ては、わたしが多くの責任を負わねばなりますまい。確かに、ほん
の一瞬、妻はわたしに不実でした。ですが、そもそもわたしのした
何かが、妻を別の男の腕の中に追いやったのかもしれません。それ
とも、言うべきなのに言わなかった何かとか、すべきなのにしなか
った何かとか。いまとなっては遠い昔、飛び去って空の染みになっ
た鳥のようなものです。ですが、息子は一人の間のとげとげしさを
見てしまいました。取り繕いの言葉に騙されるほど幼くなく、心の
複雑な綾を知るには若すぎ、もう戻らないと言って去りました。そ
の後、妻とわたしは心から和解しましたが、その場に息子はいませ
んでした」

「その部分は奥さんからも聞きました。すぐあとに国中に疫病が広
まって、息子さんもそれで倒れたという知らせが来たとか。じつは
わたしの両親も同じ疫病で死んでいますから、よく覚えていますよ。
で、なぜそのことで自分を責めるのですか,神が遣わしたか悪魔が
よこした疫病、その責任があなたにあるというのは?」  
「わたしは息子の墓に行くことを妻に禁じたんです、船頭さん。残
酷なことでした。息子の眠る場所に妻は一緒に行きたがった。わた
しははねつけた。それからずいぶん年月が過ぎて、その場所を見つ
けに行こうと思い立ったのがほんの数日前です。もちろん、何をど
こに探すのかという知識すら、雌竜の霧によって奪われていたわけ
ですが」  
「なるほど、そういうことですか」とおれは言う。「奥さんの墓参
をあなたがiめた。奥さんはその部分を言いたくなかったみたいで
すね」  
「残酷なことをしました。わたしを一、ニカ月寝取られ男にしたぐ
らいの小さな不実など、問題にもならないほど大きな裏切りです」  
「息子さんの墓参りを奥さんだけでなくご自身にも禁じるとは、そ
れで何をしたかったのですか」  

「したかった?したかったことなどありません、船頭さん。ただ愚
かだっただけです。それと自尊心。そして人間の心の奥底に潜む何
か。もしかしたら罰したいという欲望だったかもしれません。わた
しは許しを説き、実践していました。しかし、復讐を望む小さな部
屋を心の中につくっていて、そこに、長年、鍵をかけてきました。
つまらないことで妻にひどいこ とをしました、息子にもです」  
「打ち明けてくださって感謝します、ご主人」とおれは言う。

「それに、よかったかもしれませんよ。いまの会話はわたしの義務
とは無関係で、わたしたちはいま二人の友人として時間つぶしをし
ていただけです。ですが白状しますと、まだすべてをお聞きしてい
ないのではないかという、ちょっとした不安があったのも事実です。
これでなんの不安もなく舟を漕ぐことができます。教えてください、
ご主人。何年も抱きつづけてきた決心を反故にし、この旅に出よう
と思わせたのは何だったのですか。きっかけがありましたか。それ
とも眼前の潮や空と同じく、いわくいいがたい心の変化ですか」  

「自分でもよく考えます、船頭さん。いま思うのは、何か一つのき
っかけで変わったのではなくて、ニ人で分かち合ってきた年月の債
み重ねが徐々に変えていった、ということです。結局、それがすべ
てかもしれません。ゆっくりしか治らないが、それでも結局は治る
傷のようなものでしょうか。ごく最近のある朝のことです。夜明け
が春の最初の兆候を運んできました。部屋には朝日が射していまし
たが、妻はまだ眼っていて、わたしはその寝顔を見ていました。そ
のときです。わたしの中の最後の闇がついに去ったと感じたのは。
それでこの旅に出る決心がつきました。そしていま、わたしたちよ
り先に息子がこの島に渡ったことを、妻が思い出しました。ならば、
息子の墓はきっとこの森か、穏やかな海岸にあるに違いありません。
船頭さん、わたしは正直にお話ししました。わたしたちについての
あなたの判断が、そのために変わったりしないことを願っています,
わたしの話を聞いて、わたしたちの愛情には傷があるとか、壊れて
いるとか考える方もいるでしょう。しかし、老夫婦の相互への愛が
緩やかに進むこと、黒い影も愛情全体の一部であることを、神はお
わかりくださるでしょう」  

「心配いりません、ご主人。いまおっしやったことは、あなたと奥
さんがくたびれた馬に乗って雨の中を来たとき、わたしがお二人に
最初に見たもののこだまにすぎません。さ、おしやべりはここまで
です。嵐がまたいつくるかわかりません。奥さんのところに急ぎ、
舟にお連れしましょう」

婆さんは岩に寄りかかり、煙を上げながら燃える火の躾で満足そう
に眠っている、  
「今度はわたしが妻を運びます、船頭さん」と爺さんが言う。
「なんだか力が戻った感じがします」  

そんなことをさせてよいだろうか。おれの仕事が楽になるわけでも
ないのに。

「小石の上を歩くのは大変です」とおれは言う。
「運ぶ途中、つまずいて転んだらどうなるか考えてください。わた
しなら慣れています。舟まで人を運ぶのはこれが初めてではありま
せんから,ご主人は横を歩いて、奥さんに話しかけながら来てくだ
さい。奥さんが卵を運び、ご主人が心配そうに横に張りつくという、
あの感じでいきましょう」

爺さんの顔に恐れの色が戻るが、静かに「わかりました」と言う。
「では、そうしましょう、船頭さん」  

爺さんはおれの横を歩きながら、婆さんを元気づけようとしている。
おれの足が速すぎるのか、爺さんが遅れはじめる,婆さんを抱いた
まま海に入ろうとするおれを、爺さんが後ろから手を仲ばし、必死
に引き止めようとする。だが、いまはぐずぐずできる場合ではない。
この冷たい海面下に隠れた埠頭を、おれはこの足先だけで探らねば
ならんのだから。おれは石に乗る。打ち寄せる波がまた浅くなる。
おれは舟に乗り込む。婆さんを腕に抱いていても、舟はほとんど傾
きもしない。舟尾近くにあって雨で濡れている敷物のうち、ぐしょ
ぬれの最初の数枚を蹴り飛ばし、婆さんをゆっくり下ろす。上半身
を起こしてやって、頭が舷側のすぐ下に来るようにすわらせる。海
風から婆さんの体を守れるよう、箱に乾いた毛布を探す。婆さんに
毛布を巻きつけていると、爺さんが舟に乗り込んできた。その反動
で舟底が揺れる。

「ご主人」とおれは言う。
「海面の動きが不穏になっているのがわかるでしょう。これは小さ
な舟です。一度に一人も客を乗せるようなことはしたくありません」

爺さんの中で火が大きくなる。目で炎が燃えている。

「船頭さん、妻と私が一緒に島に渡ることは了解ずみのことと思っ
ていました」と言う。
「あなた自身が何度もそう言ったし、そもそもあの質問はそれを確
定させるためのものではなかったのですか」  
「誤解しないでください、ご主人」とおれは言う。
「わたしは、いま、舟で水を渡るという現実問題のことだけを言っ
ています。あなた方おニ人が島で一緒に暮らすことには、なんの問
題もありません。いままでどおり、腕を組んで歩けるでしょう。息
子さんのお墓がどこかの木陰に見つかったら、野の花を摘んで供え
てやることもいいでしょう。島にはいろいろな花が咲いています。
ベルヘザーがあります。森にはマリーゴールドだってあります。で
すが、今日渡るためには、ご二人にいましばらく岸で待ってくださ
るようお願いしなければなりません。島に渡った奥さんには気持ち
よくお待ちいただけるよう、手を尽くします。じつは舟着き場の近
くにいい場所を知っています。三つの古い大岩が昔からの仲間のよ
うに集まっていて、雨風をよけるには完璧です。波を見ながら、の
んびりお待ちいただきましょう。そして、わたしはご主人を迎えに
急ぎ戻りましょう。ですから、いまだけは岸に戻って少しお待ちく
ださい」  

日没の赤い輝きが爺さんを照らしている。それとも、あれは目にま
だ残る炎だろうか。

「妻が舟にいるかぎり、わたしもこの舟からは下りません、船頭さ
ん。約束どおり、二人を渡してください,自分で漕げというなら、
やりますとも」
「櫂はわたしが持っていますよ、ご主人。そして、この舟に何人乗
せるかは、船頭であるわたしが決めます。せっかく、いま仲良くな
れましたのに、わたしが何か企んでいるとお考えですか。わたしが
戻ってこないとでも?」
「船頭たちの行動についていろいろな噂があるのは知っていますが、
わたしはそんなことを思っていません。これは非難ではなくて、さ
っさと二人一緒に乗せていってほしいというお願いです」

「船頭さん」おっと、これは婆さんの声だ。振り返ると、婆さんが
目を閉じたまま、おれを探り当てようとするように手を空中に伸ば
していた。

「船頭さん、二人に少し時間をください。夫としばらく話させてく
ださい」  

舟に一人だけ残すとは、また大胆な。だが、いまの婆さんはきっと
おれの代弁をしてくれるだろう。それに、擢はしっかりこの手にあ
る。おれは爺さんの横を通って水に入る。海が膝まで上がって、衣
の裾を濡らす。舟はしっかり固定され、おまけに擢はこの手の中。
そんな舟にどんないたずらができるだろう。それでも、あえて遠く
へは離れまい。体を岸に向け、岩のように立ちながら、おれはまた
夫婦二人の話を盗み聞きする。静かに打ち寄せてくる波の音越しに
二人の声を聞く。  

「船頭さんは行った、アクセル?」
「水の中に立っているよ、お姫様。いやいや出ていったし、あまり
長い時間はくれないだろう」  
「アクセル、いまは船頭さんと喧嘩している場合じやありませんよ。
あの船頭さんでとっても運がいい。わたしたちにずいぶん好意的な
船頭さんだもの」  
「だが、船頭が食わせものというのは有名な話だ。違うかい、お姫
様」  
      
                     『忘れられた巨人』

さて、老夫婦の息子の死因は、紀元5百年代にまん延したペストだ
ったのか、雌竜の記憶喪失は何を意味するのか・・・・・・そんなことを
考え、いよいよ、老夫婦の離別(他界)の刻が来たというのかと想
像してみる。

    
                       この項つづく  

 
【ポストエネルギー革命序論79】



ソーラーシェアリング事業が拓く未来
①地球環境保全とエネルギーの自給自足
一昨日のブログで紹介した「水と食物とエネルギーの関係でトレー
ドオフ可能」の日本初の「ソーラーシュアリング事業」の普及の兆
しへの言及としたが、今夜はそれを深めてみる。再生可能エネルギ
ー(プラス蓄電池)の普及は「仮想発電所」を出現させつつ、「エ
ネルギーの自給自足」を普及させる。だからと言って、再生可能エ
ネルギーの過剰消費(=浪費)という"緩み"は慎まなければなけれ
ばならないことを踏まえ、オーガニックな食用普及とその循環社会
ここでは、そのコンパクトで、スマートな「高度生産/消費=循環
システム」(これを国内では農業の第6次産業革命と呼称)のプラ
ットフォームの世界展開事業のミッションを携えていることを強調
しておこう、そして、第5次産業革命のデジタル革命渦とネオコン
バーテック創成論を基調に、農耕作用物に留まらず、林業も同様に
普及は勿論、畜産・漁業までに波及することをブログ掲載済してお
り、水(water)+エネルギー(energy)+食料(food)→環境(
environment)保全+経済(economy)の安定→"自由+平等+共生”
社会の実現・堅持することにある。



②地球環境保全と食料の自給自足
10月28日、なまず養殖経営事業として、新宮港埠頭株式会社事
例モデルが、NHK総合の「うまいッ!『ヘルシーで美味!』ナマ
ズ~和歌山・新宮市~」で放送されている(昨日のことだ)。さて、
同社は、熊野灘に面する和歌山県南部(紀南地域)唯一の外 国貿
易港「新宮港」の一画に在り、昭和53年より港湾運送、船舶代 理
店、貨物運送などの事業を行ってきたが、「食」の多様性にも注目
し「とる漁業から育てる漁業」への転換が叫ばれる中、「なまず」
養殖事業に取り組むなど、食ビジネス事業への展開をスタートさせ
同社の食品部は「シングウポートフーズ」と改名。近くて遠い食材
だった「なまず」。きれいな水(地下18メートルの 揚水)、水質・
衛生管理を徹底した、独自開発技術の養殖で丁寧に 育てられ、低
カロリー、低脂質、高タンパクなヘルシー食材として注目されれて
いる。養殖池では、薬品は一切使用せず無添加状態で、世界遺産の
豊かな自然と温暖な気候の中で、ストレス無く育て、 出荷際には、
きれいな水の掛け流しと餌抜きを行った後、素早く血抜き、ぬめり
取りを行うことで、臭みのない「熊野なまず」の鮮度保持を第一に考
えている。養殖場から素早く加工場に移送し、これら工程を経て、
商品として「セミドレス」や「フィレ」に素早く加工し冷凍保存し、養
殖から加工・販売まで一貫生産。



①水が汚いとナマズの臭みに繋がる。ここでは、地下18mからく
み上げた細菌がほとんどいない澄んだ水を飼育に使っている。出荷
の5日前から、エサを与えず、地下水をかけ流して臭みを取る。
②和歌山のナマズのうま味のヒミツは、2種類のエサを与える。魚
粉の多いエサは、タンパク質を多く含むが、これだけではうま味が
少なくあっさり過ぎる味だった。そこで、魚の油を多く含むエサも
与えることで、適度に脂ののったうま味があるナマズに育つように
なる。



わたしたちが、30年前になまずの畜養・養殖を考えた時から共食
い、臭み、などの諸問題は解決されており、①コスト、②調理法・
レシピ、③品種改良(食餌・環境による肉質改良)などが残件する
だけであるが、ブログでも、食感や味において、河豚、鰻、鮪など
比較しても遜色なく、上グラフのように、①高タンパク、②低カロ
リー、③コラーゲン量、⑤ミネラル・ビタミンなど豊富で、赤身/
白身の双方を兼ね、⑥廃棄部位がないという特長もっている。また、
再生可能エネルギー(プラス蓄電池)をつかい揚水・廃水や温調の
電力費は限りなくゼロなるメリット生かせる。レシピ至っては、刺
身・鉄鎖・天ぷら・どんぶり・寿司・ハンバーグ・魚肉ハム・ソー
セイジ・和・洋・中・無国籍とレパートリーが広い。




わたし(たち)が注目しているのは、分散型ソーラー&バッテリー
シュアリングシステムのコンパクトでスマートな高次元食用生産工
場システムの世界展開であり、将来への食料問題ソリューションで
あり、その地域・地方でしか味合うことができないグローカル展開
(例えば、和歌山のミカン・梅・柿などのフレーバーで栄養価の高
くヘルシーなナマズ料理と循環環境の提供にある。今夜、わたし(
たち)は確信できた。



電気自動車×太陽光」で若者の地元離れを防ぐ
ソーラーシュアリング(プラス蓄電池)事業は農産物だけではない
事例がが岐阜県で新事業が解されようとしている。それは、岐阜県
多治見市で始まった“バッテリーシェアリング”という取り組み、
いま全国から注目を集める。バッテリーシェアリングとは①「電気
自動車(EV)のレンタルサービス」、②「太陽光発電設備付きカー
ポート」、③「新電力事業」の3つをパッケージにした、これまで
にないビジネスモデル。それは、地方都市に共通する地域課題を、
ビジネスを通して解決する取り組み。

バッテリーシェアリング事業を手掛けるのは、多治見市で新電力事
業「たじみ電力」を運営するエネファント。同社はもともと、設立
以来、太陽光発電設備の販売・施工を行ってきた地域エネルギーベ
ンチャ。19年4月から、「働こCAR」という愛称で、バッテリーシ
ェアリング事業をスタートさせている、バッテリーシェアリング「
働こCAR」のシステムは、エネファント(たじみ電力)が、若者を雇
う地元企業と、1台当たり月額3万9800円で電気自動車契約を
結び。同時にエネファントは、その企業の駐車場に、太陽光発電設
備と充電器を備えたソーラーカーポートを無料設置する。契約を結
んだ企業は、新入社員を対象に、レンタル電気自動車を貸与。貸与
された新入社員は、そのクルマを通勤や休日に使い、保険料を含む
使用料として月額1万9800円を負担する。

ソーラーカーポートで発電した電気は、電気自動車の充電に使われ
るとともに、たじみ電力の小売電力事業の電源としても用いられる。
また、電気自動車のバッテリーに蓄えられた電気は、状況に応じて、
カーポートが設置された企業の電力としても活用される。「働こC
AR」は、再生可能エネルギーの地産地消を可能にし、地元企業、新
入社員、地域社会それぞれにメリットをもたらす取り組みとなって
いる。



新入社員にとって、月額1万9800円だけでクルマに乗り続けられる
という金銭的メリットが大きい。電気自動車だからガソリン代はか
からない、会社のソーラーカーポートに駐車しておけば、勤務中に
充電しておいてもらえる。会社の通勤に使うことが必須条件だが、
休日にプライベートで乗ってもOK。クルマでの移動が不可欠な地
方都市の若者を公私ともにサポートする。地域社会として、若者の
流出を抑え、地元就職を促すきっかけにしたい。若者が地元に根付
けば、地域は活性化し、衰退をまぬがれる道も開けてくる。「若い
人が楽しく生活し、働き、家庭を営むまちをつくるためには、住ん
でもらうことが大前提。現在の多治見市は、若い人が進学で一度出
ていくと二度と帰ってこないまちになりつつある。多治見に住み続
ける者として、何か行動を起こさなくてはと考え、このプロジェク
トを立ち上げたと関係者は話す。

バッテリーシェアリングの要となる太陽光関連機器は、パナソニッ
クがサポート。ソーラーカーポートの屋根上には、同社の太陽電池
モジュール「HIT」を供給。クルマ4台が駐車できる標準タイプのカ
ーポートで、設置されるHITは40枚、最大出力13kWを発生する。これ
を2台のパワーコンディショナ(合計定格出力9.9kW)で制御し、同
じくパナソニック製のEV充電器とともに、エネファント(たじみ電
力)が遠隔でコントロールする。


数百万人の子どもの目と命を救ったはずが
遺伝子組み換え作物「ゴールデンライス」が普及しない理由

「ゴールデンライス」は遺伝子組み換え技術によって生まれ、ビタ
ミンAを多量に含むイネ。ゴールデンライスは発展途上国の子ども
たちの命と目を救う食品として期待されているが、遺伝子組み換え
作物に対する規制が原因で、困窮している子どもたちがゴールデン
ライスを食べられない状態にある。ところで、 大豆やとうもろこし
を始めとする 種子植物の遺伝子組換え食品。そ の有用な形質の代
表的なものが、 除草剤に抵抗性(耐性)を示す遺伝 子を組み入れ
た「除草剤耐性」や、特定の害虫に対してだけ有害に作用する物質
を作り出す遺伝子を組み入れた「害虫抵抗性」。ど ちらも農薬使用
の効率化や労力の軽減、収穫量の増大などの利点を持っているが。
ほかにも成長促進や、冷害・干ばつ等への耐性、新しい栄養素の付
加など、多くの可能性が研究開発されている。今日の科学データか
らは予測不能な影響を不安視する声もあり、こうした不安も考慮し
ながら、リスク評価は慎重に進められている。



ビタミンAは目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりす
る働きのある必須栄養素。先進国では多数の食品にビタミンAが含ま
れているためあまり問題にならないが、ビタミンA欠乏症が続くとし
だいに目が見えなくなり、失明し、最終的には命を落とします。世
界規模でみると、5歳未満の子どもの約3分の1がビタミンA欠乏によ
る失明の危険性があると考えられており、1日あたり約2000人の子ど
もがビタミンAの欠乏により亡くなっている。

そんな途上国におけるビタミンA不足を解決に生み出されたのが「ゴ
ールデンライス」。ゴールデンライスは、ドイツのフライブルク大
学らの研究グループが開発、ビタミンAの前駆体であるβ-カロテン
を細胞内で合成するように遺伝子を組み換えたイネ。「ゴールデン」
の名は、精米後の色が明るい黄色をしていることに由来。普通の米
に比べて、ゴールデンライスはオレンジ色に近い黄色。

普及を阻む原因にカルタヘナ議定書で承認されないことによる。こ
の議定書は03年より発効された、生物多様性に悪影響を及ぼすお
それのある遺伝子組み換え生物の管理・輸出入・使用に関する国際
条約。バイオテクノロジーによる製品が人間の健康や環境に危険を
もたらす『可能性がある』場合、規制を講じるべきとあり、ゴール
デンライスが「無罪だと証明されるまでは有罪」と扱われるように
なっており、ゴールデンライスは実験室での生成から農場での耕作
試験、スクリーニングテストの各段階において規制によってがんじ
がらめにされる。アメリカとカナダがゴールデンライスを認可した
のは18年。そして、ゴールデンライスが本当に必要であるはずの
貧しい発展途上国ではまだ認可が下りていない。フィリピンやバン
グラデシュでは、ゴールデンライスの認可は早くとも199年末頃
までかかる見込み。



尚、日本では、従来品種に、どのような目的で、どのような遺伝子
組換えを行ったのか、挿入された遺伝子やそれにより作られるたん
白質に有害性はないか等について評価します。その際には、これま
で得られている安全性の知見や毒性試験の結果を用いる。特にアレ
ルギーについては、遺伝子組換えにより新たに生じたたん白質がア
レルギーを誘発しないか、既知のアレルゲンと構造が似通っていな
いか等を評価。これらは食品安全委員会で決定された安全性評価基
準基づく(表記図参照)。遺伝子改変リスクについては残件扱い(
ずいぶん前から引きずっているテーマですが)。



インクジェットプリンターでオフィスが変わる
持続可能性の観点からみると、ビジネスシーンで使用するプリンタ
を『環境に優しいもの』に切り替えていくことが必要となるが、こ
こで力を発揮するのがインクジェットプリンタ。トナーを紙に接触
させて転写し熱と圧力で定着させるレーザープリンタに比べ、微細
なインクを紙に噴射するだけの熱を使わないシンプルなインクジェ
ットプリンターは、電力使用量や消耗品が少なく、その構造自体、
環境負荷が低いものとなっている。エプソン社では、ビジネスユー
スプリンターのリリース当初から自らのオフィスにも製品を導入し、
その効果を検証している。この事例も社内で検証済みだが、レーザ
ー方式のプリンターをインクジェット方式のプリンターに置き換え
ることで、印刷コスト、電力使用量、廃棄物量の大幅削減が実現。

  
紙の再利用で循環型オフィスを実現
「導入のメリットは2つ。ひとつめは利便性を犠牲にしたり『紙を
消費している』といった心理的な負担なく、循環型オフィスを実現
できる。ペーパーレス化はもはや当たり前の流れではあるが、どう
しても紙の利用が必要なシーンはある。もうひとつは、クローズな
環境のなかで機密文書を完全に粉砕し再生紙にできること。情報漏
洩リスクを低減できた。このシステム最大の特徴は、一般的な紙の
再生に比べ、水の使用量を圧倒的に低減できること。使用済の紙を
繊維状まで粉砕するため、紙のリサイクル過程で欠かせないといわ
れる多量の水が不要であり、環境負荷低減につながる。同社では、
19年1月からPaperLabを活用し、グループ内で『紙資源循環プロ
ジェクト』を展開している。19年度中には、国内主要8拠点に19
台のPaperLabを設置し、社内で使用した紙を集めてサーキュレーシ
ョンする計画である。




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