9.子 罕 しかん
ことば------------------------------------------------------
「子、川上に在りて曰く、逝く者はかくのごときか。昼夜を舎かず」(16)
「われいまだ徳を好むこと色を好むがごとくなる者を見ず」(17)
「譬えば山をつくるがごとし。いまだ一簣を成さざるも、止むはわ
が止ひなり」(18)
「後生畏るべし。いずくんぞ来賓の今にしかざるを知らんや」(22)
「三軍も帥を奪うべきなり。匹夫も志を奪うべからず」(25)
------------------------------------------------------------
8 鳳凰も河図も現われなかった。ついに聖王にめぐり会えぬまま、
わたしの一生は終わるのであろうか。(孔子)
子曰、鳳鳥不至、河不出圖、吾已矣夫
<鳳凰も河図も……> 鳳凰は聖王の治下に現われるとされる空想上
の鳥。河図(河図洛書)じく聖王の出現にともなって、黄河から浮か
び出るとされる図版。伏蔵の時代に現われ、易の基本となったとい
われる。
Confucius said,"A Phoenix has not appeared. A holy chart has
not appeared from the Yellow River. (these are Chinese ancient
holy omens.) I think it's all over."
人口減少時代のまちづくり㉖
出典:経済規模の縮小-人口オーナスと縮小スパイラルが経済成長
のブレーキに
出典:労働力調査(基本集計) 2019年(令和元年)9月分結果の概要
出典:地域経済の持続可能性について考える① - 大和総研
46 地方自治体の存続が困難と言われているが、本当か
【要点】
①景気低迷の影響で税収が減少しているのに社会保障費等の増加で
慢性的に財政が逼迫化している。
②自治体は約196兆円の借金を抱え、財政破綻がいつ起きてもお
かしくない状態。
③国も財政逼迫から、自治体を財政的に支え切れなくなり、地方交
付税や国庫支出金は近年減少している。
出展:人口動態から探る地方財政の将来像 - 日本総研
1 自治体とは
「自治体」とは、平たくいえば、私たちの「いのちと暮らしを守る
組織」。特に、住民に最も身近で基礎的な自治体 である市町村は、
住民福祉の最大化という目的を「地方自治」の力を駆使して、現行
の行財政制度、住組みのもとで最大限の自治能力を発揮して「資源
は少なく、生み出すものは多い」成果を効率よく実現させる組織で
す。市町村の白土財源は住民税と固定資産税などです。住民税は、
働く人や所得が増加することで増大し、固定資産税は新規の建物建
設や土地価格の上昇によって増大。全国平均の歳入に占める自主財
源比率は33・7%、不足資金は、国からの地方交付税・国庫支出
金・地方譲与税や都道府県支出金などの依存財源と借金(起債)で
賄われている。
2 何か起こっているのか
景気低迷の影響による税収の減少、人口や社会構造の変化による社
会保障費の増加、社会インフラ劣化への再投資の必要性などから、
自治体財政は慢性的に逼迫化しています。一方で、多様化・複雑化
する住民ニーズにも対応するという、矛盾した問題に直面している。
更に、自治体は約196兆円の借金(16年度末)、公社・第三セ
クター・公社の債務残高が約3兆2241億円(17年度末)を抱
え、財政破綻がいつ起きてもおかしくない状態。00年の地方分権
法施行により、国と自治体は対等協力の関係へと改められ、「自己
決定・自己責任」の原則のもと、生活者の視点に立つ自治体経営が
求められています。国も財政逼迫から、自治体を財政的に支え切れ
なくなり、地方交付税や国庫支出金は近年、減少しています。一方、
少子・高齢化に伴う社会活動の減少から、地域で人々がともに活動
する機会は減少し、住民自治の基本となる住民の「絆」や「つなが
り」そこから蓄積・形成されてきた「社会関係資本」の持続性も脅
かされます。社会経済状況の変化や制度疲労が、自治体を直撃する
状況から近未来、継続が困難と言われる所以です。
3 財政破綻を起こさないための自治体経営改革
未来に責任を持つ自治体経営に変革するためには、行政課題に直面
したとき、従来の仕組み・制度を改め、より良いものにするための
「改革」が行われてきた。未曾有の危機を乗り越えるためには、更
なる自治体経営改革が求められている。行政組織とは、「人口が減
少しても安心して幸せに暮らせる社会を築く」ことを実現する組織
体であり、自治体に求められていることは、誰のための「自治体経
営かの視点。行政組織の活動を通じて、出来るだけ生産性高く成果
を実現する。そのために、①縦割り主義から地域からの発想に変え
る。②「硬直した行政システムを変える。③地域社会を分権型の仕
組みに変えていく必要があります。
キーワード 縦割り主義/住民自治の危機/自治体格差
47 社会保険方式による「医療保険財政の破綻」がいわれていま
すが、実態は
【要点】
①国民医療費は10年の17兆4002億円から、25年には50
兆円を超えると厚生労働省は予測。
②75歳以上の後期高齢者1人当たり年間医療費は約92万円で、
国民平均約30万円の3倍。
③国民医療費の30%以上が公費で賄われることが、財政負担が増
加する要因。
1 社会保険制度による医療保険制度とは
社会保険制度は、社会保障制度審議会から50年「社会保障制度に
閲する勧告」を受けて制度化された。枠組は公的扶助、保健医療、
公衆衛生で構成され、国民の「安心」や「生活」の安定を支えるセ
ーフティネット」になっている。「国民皆保険制度」の特徴は、①
国民全員を公的医療保険で保障。②医療機関を自由に選べる。③安
い医療費で高度な医療。④社会保険方式を基本に、制度を維持する
ため、公費を投入している。国民健康保険は、社会保険方式による
医療保障制度の一つで、職域単位に健康保険組合、協会けんぽ、共
済組合がある。国保財政の負担軽減を図る目的で、07年度まで存
続 していた老人健康医療制度の高齢者医療費分を国保から切り離
し、07年度より後期高齢者医療制度を導入している。
2 国民医療費の増加問題
国民医療費は毎年1兆円増え続け、10年の37兆4002億円か
ら、25年には50兆円を超えると厚生労働省は予測している。医
療費増加の要因として、①高齢者の増加による医療費負担の総体的
な増加。②糖尿病・高血圧症等の生活習慣病の増加。③医学の進歩
に伴う高度先端医療費の増加などが主な理由。その負担割合(14
年度)は、保険料48・7%(被保険者28・3%、事業主20・
4%)、公費38・8%(地方13%、国25・8%)、患者負担
が11・7%。国民健康保険は、高齢化の進展と労働力の流動化や
非正規雇用の増加により、他の被保険者保険と比べ、年々、増加傾
向を示す。一方、国保は被保険者保険のように雇用者負担分がない
ことから、国や自治体の財源役人が不可欠となり、財政逼迫の要因
となっている。25年に日本の国民皆保険制度は大きな転換点を迎
えている。人口動態の最大集団である回塊の世代全員が75歳以上の
後期高齢者となりるす。後期高齢者の一人当たり年間医療費は約9
2万円で、国民平均約30万円の3倍。25年問題により、国民皆
保険の持続性が問われています。国民保険制度の欠点は、①医療機
関の過度な投薬や診療行為の無駄を生みやすい。②健康・不健康に
係わらず保険料を支払う。③出来高払いで申請すると過度な診療行
為や薬の投与につながる。④保険料の収入が増えず、高齢者の医療
費増による赤字が拡大など構造的な要因となっている。
3 医療保険財政の破綻は防げるのか
医療費を抑制するためには、中長期的な視点が必要となります。医
療費抑制の基本は、長期入院を減らし、病気を抑制することが実践
的な対策になります。例えば、生活習慣病は死亡原因の6剤を占め、
生活習慣病の医療費は10兆4千億円(04年)を占める。その医
療費を抑制に、メタボリックシンドローム対策。薬剤費の拡大を防
ぐには、薬剤価格や過度な投薬の抑制とジェネリック薬品の更なる
普及など必要となる。
キーワード 高齢化と医療費/医療制度が破綻の瀬戸際
48 公的年金制度の破綻」がいわれているが実態は
【要点】
①70年代頃には、生産年齢人口8・5人で1人の高齢者を支える。
②17年には生産年齢人口2・2人で1人の高齢者を支える。
③60年には生産年齢人口1・3人で1人の高齢者を支える。
1 公的年金制度の仕組み
公的年金制度は、社会保障制度(社会保険・社会福祉・公的扶助・
保健医療・公衆衛生)の一つで、「国民皆年金」という特徴をもっ
ている。20歳以上、全ての人が加入する国民年金と会社員が加入
する厚生年金、公務員や私学教員が加入する共済年金により、いわ
ゆる「2階建て」構造になっている。
公的年金制度は、現役世代が支払った保険料を仕送りのように高齢
者などの年金給付に充てるという「世代間での支え合い(賦課方式)
」を基本とした方式で運営されている。
2 公的年金制度の抱える問題
現在の年金制度の体系は、61年に始まり、当初から税金役人を前
提としている。少子高齢化により、生産年齢人口が減少、高齢者が
急激に増加する社会になった。70年代頃には、生産年齢人目8・
5人でI人の高齢者を支える構造が、17年には2・2人で1人6
0年には1・3人で1人と推察される。制度の抱える問題として、
①少子高齢化により、世代間扶養を前提とした「賦課方式」の運営
が、現役世代が減る一万、年金受給世代が増加し、現在の年金制度
の仕組みが揺らぐ。②保険料の未払い問題、会社員・公務員などは、
事業者が年金を保険料収入以外にも積立金や税金が年金給付に充
てられている。支払うため不払いは少ないが、国民年金の被保険者
の年金保険料の未払い問題。③「マクロ経済スライド」制がとられ、
物価変動や社会経済状況の変化により、想定より造いスピードで年
金積立の切り崩しが造行など、様々な問題が生じている。厚生労働
省の「国民年金被保険者実態調査(10年度)」によると、保険料
の滞納理由で多いのは「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」、
次いで「年金制度の将来が不安・信用できない」、「納める年金料
金に比べて十分な年金額が受け取れない」の順です。若い世代で公
的年金制度に不満を感じる人が9割と多く、その理由として「保険
料が払い損になるています。若い世代が「損している」という主張
が「世代間格差論」です。世代間格差拡大に一定の歯止めをかける
検討が行われ、04年に公的年金改革が行われた。改革の概要とし
て、①将来の保険料負担の上限を固定。②基礎年金の国庫負担を3
分の1から2分の1へ引き上げる。③現在年金をもらっている高齢
者から将来世代まで、全ての世代の年金額を抑えるマクロ経済スラ
イドが導入されてきた。
3 公的年金制度の維持は可能なのか
04年の制度改革により、マクロ経済スライドが導入され、給付額
は抑制されています。そのことから推測すると、高齢者の増加、平
均寿命の拡大、生産年齢人口が減少しても年金額の増え方に限界が
あるため、保険料や給付水準の改訂が常に実施されることが前提に
なっている。一方、国の国庫負担は14年度11兆8千億円に上昇。
今後、国庫負担額の増加による財政問題や格差社会を前提にセーフ
ティーネットを維持するための「所得の再配分」のあり方も含め、
抜本的 な制度改革が求められます。
キーワード 年金の未払い/世代間扶養/国民皆年金の危機
49 人口減による自治体税収減少の状況は
【要点】
①住民税の増減率と人口の増減率とは相関関係にある。
②固定資産税は、人口の減少と税収額との相関関係がほとんどない。
③自治体の惜金合計額は、16年席末には約196兆円と増加傾向
にある。
1 人□減少と住民税、固定資産税の関係
我が国の総人口は、05年から人□減少に転じた。自治体の税収は
08年からら微誠に転じ、その後は横ばいの状況となっている。人
口の減少とは働く人の減少であり、納税者の減少を意味する。住民
税の増減率と人口の増減率とは相関関係にある。人口の減少が大き
い自治体ほど、税収の減収率も大きい傾向となる。また、大都市と
地方では賃金格差があります。地方税収入の人口1人当たりの税収
額の指標を見てみると、全国平均を100とした場合、住民税の最
大は東京が162、最少の沖縄は61・3、最も大きい東京都と最
も小さい沖縄とでは約2・6倍の格差となっている。固定資産税は、
住民税などと異なり、人口の減少と税収額との相関関係がほとんど
ない。なお、税収の変動には、多くの要因が影響を与える。特に大
きな要素としては①税収制度の見直しと景気の変動。②加速する人
口減少。とりわけ「生産年齢人口」の減少が自治体の税収減をもた
らす。
2 地方税の減収がもたらす問題
自治体の収入は、自ら徴取する収入(自主財源)と、国など他の公
共団体から受入れる収入(依存財源)とて構成される。自主財源に
は住民税と固定資産税等(地方税)の他、使用料、分担金など。依
存財源には地方交付税、地方譲与税、国庫支出金、地方債など。自
主財源の内、固定資産税と住民税の割合は、約45対43で、市町
村にとって固定資産税は最も重要な財源である。自治体の予算は歳
入・歳出で構成されます(自治体の一切の収入を歳入、一切の支出
を歳出)。市町村の平均歳入の構成は、地方税33・7%、地方譲
与税など1・3%、その他財源3%、地方債(借金)8・7%、国
から交付される地方交付金16・5%、国庫支出金15%、その他
21・8%。歳入の内、自主財源は33・7%しかなく、不足する
財源を借金で賄います。「生産年齢人口」が減少することにより地
方税が縮小化する問題が生じる。税収が減少する中で、高齢者人口
の増加による社会保障費の拡大や社会インフラヘの再投資など、歳
出圧力が強まり、財政逼迫を招く。
3 税収を増加させる方法はありますか
自治体の借金合計額は、98年度末では163兆円から16年度末
には約196兆円と増加傾向にある。同年比の国と地方の借金総額
は553兆円から1062兆円と、借金は増えつづけ、国と自治体
の借金はこれ以上、次世代に付けを回すことは困難な状況。税収対
策として、①若い世代の移住を促進(は?)し住民税(何をしたいの
か?)や企業誘致(インセンティブは?)を促進し、法人住民税や固
定資産税の税収を上げる。②税を納めていない者(微税率93・1
%)から税を徴取し、未納率を改善。③法定外税で、地方税法とは
別に自治体が独自に条例を定めて課す税。例えば、遊漁税や別荘等
所有税など、現在55の自治体が実施している(増税策?)。④自
治体の創意工夫による「ふるさと納税」。「納税」と言いうが、実
際は寄付進学や就職で大都市に流出した人に、出身地の自治体に貢
献する 機会を与えようと」いう趣旨で国が始めた制度。この結果、
ふるさと納税で税外収入を稼ぐ自治体が多く生まれている(日本版
寄付文化の定着策?/自治体内部に物産販売促進部新設?)。⑤「命
名権」という仕組みがある。公共施設などの所有者である自治体が、
施設などの命名権を企業に提供し、その売却益を受け取る仕組み。
その他にクラウドファウンディング(インターネットを通じて不特
定多数から寄付を募る)などの税外収入もある。
キーワード 三割自治/自治体の自立性/増える業務量
50 「ふるさと納税」の現状と問題は
【要点】
①受け入れ額の最も多かったのが大阪府泉佐野市で135億330
0万円。
②流出超過の最大は、横浜市の55億円。
③都市部自治体は税収を失うことになり不満噴出。
1 ふるさと「納税」はどのような制度なのですか
「ふるさと納税」は、現に居住する自治体への納税に代えて、任意
の自治体に寄付を通じて「納税」するというものす。この制度は地
方問格差により、税収の減少に悩む自治体に対して、格差是正を推
進する新構想として、福井県知事が06年10月に「故郷寄付金控
除」の導入を国に提言。その後、国が「進学や就職で都会にできた
人に、出身地の自治体に貢献する機会を与えよう」という趣旨で、
地方税法の改正が行われ、08年4月に制度化。自分が応援したい
自治体へ「寄附をする」ことで、寄肘金に応じた税の控除を受けら
れる仕組みです。複雑な手続きは不要で、寄附金の使い道も指定で
きる。また、「お礼の品」として特産品を贈る自治体もあり、欲し
い品を選択することができます。
2 地方自治体の財政問題とふるさと納税問題
人口減少、景気低迷により、住民税などが減少している一方で、社
会保障費の増加、社会インフラ劣化への再投資の必要性から、自治
体財政は慢性的に逼迫しています。公債費と人件費で自前の税収は
消え、教育、福祉など、自治体経営の基本である公共サービスの費
用は国からの地方交付税、委託料、使途限定の国庫補助金や借入金
で賄われているのが現状です。税収の減少に悩む地方の市町村にと
って、ふるさと納税は創意工夫を凝らし、寄付金を集められる第二
の自主財源といえます。総務省によると17年のふるさと納税の納
税額は、3653債円で、前年比28%増、納税申し込み作173
0万件、前年比36%増加している。一方、ふるさと納税に作う、
経費の全自治体の合計額は2027債円で、寄付額の55・5%を
占めている。自治体別のふるさと納税の受け入れ額の最も多かった
のが大阪府泉佐野市で135億3300万円、宮崎県都農町の79
億150万円、都城市の76億7400万円の順。例えば、都城市
の17年度歳入計画によると、歳入総額804億6千万の内、地方
税は185億円で、地方税相当額の釣45%に当たる寄付を受けい
れている。一方、16年度ふるさと納税受け入れ額より控除額が多
い、流出超過の最大は、横浜市の55億円、名古屋市31億円、
3 よりよい「ふるさと納税」制度のあリ方
ふるさと納税の課題は、①自治体問の歯止めのない特産品競争によ
る経費額の上昇。②現住所と出生地が同じ人の割合は約8割で、創
設時の主旨との矛盾。③高額所得者に有利な制度(富裕層への節税
税インセンティブ? )。④(税収外収入に偏り)都市部自治体の住
民に対する税収を減税する分だけ税収が減少するというデメリット
など、改善が必要。国は加熱する返礼品問題を是正するため19年
から、返礼品の比率は寄付額の3割までとする税制改正を行う。地
方の活性化に寄与する自然や文化、地域づくりに貢献する「体験型」
や都市部と地方の交流を促進する返礼品の検討など「モノ(返礼品
)」の競争から「コト(政策・施策)」の競争ヘシフトしていくこ
とが求められている。
「財政破綻」という言葉が国家官僚制の威圧的言説に抗して、この
ブログで、穏やかな開明国家的財政論を展開した者として第12章
は懐疑的な感想に終始。「付加価値を産む生産・消費行動」的視点
から現在の問題解決できるものと考え読み進めてきている。さて、
次回は、「第13章 空や家問題 何がおこっているのか」に入る。
この項つづく
ソーシャルキャピタル論③
豊かで持続可能な地域社会をつくる。投資が「効く」地域と「効か
ない」地域は何が違うのか?親の「つながる力」は子どもに継承され
るのか?地域の信頼関係や互酬性、ネットワークがもたらす経済効果
を定量的に測定、次世代へ継承し、地域社会の担い手を育成するた
めの方途を提案する。
キーワード:ソーシャル・キャピタル、信頼、規範、経済成長
本研究の目的は、最近注目されているソーシャル・キャピタルとい
われる要因が、我が国における地域の経済成長に影響を与えるか否
かについて実証分析を行うことである。我が国におけるソーシャル・
キャピタルの定量的測定については研究が始まったばかりであり、
確立された手法があるわけではないが、ソーシャル・キャピタルの
主要な構成要素と考えられる、周囲の人々への信頼、お互いを助け
合うという協調を促す規範という2つの要素についてそれぞれ指標
を作成し、クロス・カントリー・データを用いた経済成長に関する
実証研究において多く用いられているBarro Regressionと呼ばれる
手法をもちいて検証を行った結果、信頼という要素については有意
な結果は得られなかったものの、規範については、地域の経済成長
に対してプラスの影響を与えていたという結果が得られた。この結
果は、我が国においてもソーシャル・キャピタルが経済に対して影
響を与える可能性を示唆しており、今後の地域経済や地域振興のあ
り方を考える上では、ソーシャル・キャピタルという要素に留意し
ていく必要があると考えられる。
1.はじめに
Putnam(1993)をきっかけとして、近年「ソーシャル・キャピタル」
という概念が大 きな注目を集めている。ここでいう「ソーシャル・
キャピタル」とは、道路、港湾などの、 いわゆる「社会資本」のこ
とではない。Putnam によれば、「ソーシャル・キャピタル」とは「
人々の協調行動を促すことにより社会の効率性を高める働きをする
信頼、規範、ネッ トワークといった社会組織の特徴」である。よく
知られている「囚人のジレンマ」では、お互いが協調すれば協調し
ない場合に比べて望ましい結果が得られるが、相手の対応が分から
ず、それぞれが利己的に行動すると、望ましくない結果となってし
まう。しかし、お互いが協調して行動すればこうした状況から逃れ
やすくなり、全体として望ましい結果をもたらす可能性が高まる。
この項つづく
『ソーシャル・キャピタルは地域の経済成長を高めるか-都道府
県データによる実証分析-』,05年12月 国土交通省 国土交通
政策研究所 特特別研究員 要藤 正任
● 今夜のビデオ
消えた票の謎
We're Gonna Need a Bigger Vote--- Scorpion
大統領選挙がハッキングされる。移民局が審査中のため関与を禁じ
られたウォルターは、中国領事館の陰謀を暴いて解決し、特別に合
衆国市民権を認められる。ハッピーの想像妊娠が判明するが、トビ
ーと婚約する。
『SCORPION/スコーピオン』(Scorpion)は、14年9月22日から18年
4月16日までCBSで放送されたアメリカ合衆国のテレビドラマシリー
ズ。ウォルター・オブライエンと仲間の、諸事に不器用ながら合計
IQが700を超える天才集団4人組が、様々な問題を解決してゆくスト
ーリー『消えた評の等』にランチ時間流しでみていたものの嵌って
しまった。展開がテンポが早く、ドラマ事象の複雑さとリアルなト
ランプのロシア疑惑の顛末と絡み、流石アメリカと感心する。