9.子 罕 しかん
ことば------------------------------------------------------
「子、川上に在りて曰く、逝く者はかくのごときか。昼夜を舎かず」
(16)
「われいまだ徳を好むこと色を好むがごとくなる者を見ず」(17)
「譬えば山をつくるがごとし。いまだ一簣を成さざるも、止むはわ
が止ひなり」(18) 「
後生畏るべし。いずくんぞ来賓の今にしかざるを知らんや」(22)
「三軍も帥を奪うべきなり。匹夫も志を奪うべからず」(25)
------------------------------------------------------------
10 顔淵(がんえん)がふっと感嘆の声をもらした。この高さか、
とわたしは思う、だが先生ははるかに高い。これでどうだ、とわた
しは切りこむ、だが先生ははるかに堅い。前方で姿をとらえた、と
思った瞬間にはもう背後に立っていられる。先生の指導は学問によ
る拡充と礼の実践による集約とから成っていて、きわめて合理的か
つ自然である。わたしは疲れてあきらめかける、だが不思議にあき
らめきれない。わたしはわたしの力を出し尽くす。さて先生は、と
見るといよいよ高くそびえている。それはもう、わたしには達し難
い高さなのだ」
【ポストエネルギー革命序論99】
血液1適から13種類のがんを99%の精度で検出
11月25日、東芝から1995~2000年刺しても痛くない針
でわずかミクロリットル以下血液採取で血糖値などの血液検査、あ
るいは癌検査が短時間(数分~2日)で被験者に結果情報伝えるこ
とができればと調査してたこと思い出させる技術報告が入ってきた。
それによると、血液中のマイクロRNA(注1)を使った簡便で高精度な
がん検出技術---電気化学的なマイクロRNA検出技術を活用すること
で、すい臓がん、乳がんなど13種類のがんの患者と健常者を2時間
以内に99%の精度で網羅的に識別できることを研究開発レベルで確
認したという。この開発は、東京医科大学と国立がん研究センタが
持つマイクロRNAに関する高度な医学的知見と、東芝が開発したマイ
クロRNA検出技術融合で実現。13種類のがんの患者と健常者を99
%の精度で網羅的に識別することに成功。この中にはステージ0の
検体も含まれ、この成果によると、13種類のいずれかのがん罹患
を簡便・高精度に検出するスクリーニング検査に適応可能であり、
マイクロRNAチップと専用の小型検査装置を用いることで、検査時
間を2時間以内に短縮し、即日検査への適応が可能となる。 東芝
では「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした精密医療を中核と
して医療事業への本格的な再参入を表明しており、マイクロRNA検
出技術で、高精度でのがんの早期発見の実現できると期待する。
会社は来年度から実証試験を進め、数年以内の実用化を目指す考え
で、東芝の研究開発本部の橋本幸二研究主幹は、がんは日本人の最
も多い死亡原因で非常に大きな医療の課題だ。がんの早期発見は生
存率を高めるために重要で、この技術を早く実用化することが使命
だと思っていると話している。
【関連特許】
①JPWO2005022155A1 測定対象物質の濃度測定方法、測定対象物質
の濃度測定用キット及びそれセンサチップ
【概説】
この技術は、酵素反応に利用する発色試薬、濃度測定用キット、測
定対象物質の濃度測定方法、及びそれに用いるセンサチップに関す
る。さらに詳しくは、本発明は、エバネッセント波を利用して、測
定対象物質の濃度を極微量の試料で、高感度かつ高精度で迅速に測
定するための酵素反応に利用する発色試薬、濃度測定用キット、測
定対象物質の濃度測定方法及びその方法に使用するセンサチップに
関するものである。
従来から、抗原と抗体の特異的な反応を利用した微量成分の測定方
法として、酵素免疫測定法(以下、ELISA法という)が臨床検
査分野等で実用化されている。
ELISA法には、通常マイクロプレートと呼ばれる96個のくぼ
み(ウエル)が設けられた樹脂製の板が用いられる。例えば、サン
ドイッチELISA法の場合、各ウエルには目的に応じた一次抗体
が固定されている。まず検体溶液をウエルに分注し、プレート上に
固定された抗体と検体溶液中の測定対象物質とを反応(以下、一次
反応という)させた後、洗浄して未反応の検体溶液を取り除く。
後、酵素標識された二次抗体の溶液を洗浄後のプレートに分注し、
一次抗体と反応した測定対象物質と特異的に反応(以下、二次反応
という)させる。洗浄して未反応の二次抗体溶液を除去した後、発
色試薬溶液を分注して酵素反応(以下、酵素反応という)させ酵素
反応産物を発色させ、マイクロプレートリーダーを用いてウエルの
透過光量から吸光度を求め、検量線により測定対象物質の濃度を求
めている。
例えばインスリンは、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血
糖降下作用をもつものとして知られている。そこで、糖尿病の診断
や病態の把握のために、インスリンの血中濃度を測定する必要があ
る。ELISA法でインスリンを測定する場合、マイクロプレート
のウエルには抗インスリン抗体が固定化されており、このウエルに
検体溶液を分注して、抗インスリン抗体と検体溶液中のインスリン
とを反応させ、以下、上記と同様にしてインスリン濃度を求めてい
る。マイクロプレートを用いるELISA法では、測定試料として
数10μL〜100μL程度の量の試料を必要とし、特別に少ない
場合でも5μL以上必要であり、これ以下の量では測定感度は数
100pg/mL程度に過ぎないという問題点があった。また、感
度を上げようとして測定に供する検体量を増やすと、検体溶液中に
含まれている抗原抗体反応の阻害物質も増えて反応系が影響を受け、
測定感度が低下する場合もあり、測定感度はやはり数100pg/
mL程度に過ぎないという問題点があった。
また、ELISA法では多くの量の検体が必要になるため抗原抗体
反応が終わるのを待つ必要があり、測定に時間がかかるという問題
がある。例えば、通常一次反応に数時間、長い場合は24時間を要
し、二次反応、酵素反応でもそれぞれ数10分間を要している。ま
た、新生児や小動物の血液等が検体である場合は、測定に供する検
体(血液、血漿)量はできるだけ少ないことが望ましい。ELIS
A法では、マイクロプレートのウエルに分注する検体量は正確でな
ければならないが、5μL未満の量を正確に計りとることは困難で
ある。従って、測定に供する検体量は少ないことが望ましいが、正
確な測定のために必要以上の検体を採取する必要があるという実情
があった。 一方、抗原抗体反応を利用するセンサチップが知られ
ている。図1は、光導波路型のセンサチップの構成を示す概念図で
ある。このセンサチップは、ガラス等の基板16上にシリコン窒化
膜等からなる光導波路層1が形成され、その両端に一対の入射側グ
レーティング(回折格子)13a及び出射側グレーティング13b、
又はプリズム(図示せず)が形成され、光導波路層1上に抗体固定
化層14が形成され、構成されている。
このような構成のセンサチップにおいて、抗体固定化層14に抗原
を含む検体溶液を接触させると抗原抗体反応が起こる。ここに蛍光
色素標識されている抗体溶液を添加すると、抗体/抗原/蛍光色素
標識抗体からなる免疫複合体が基板上に形成される。この状態でレ
ーザ光を入射側グレーティング13aを介して光導波路層1に入射
させ、エバネッセント波を発生させて、光導波層1上の抗体固定化
層14において蛍光色素をエバネッセント波で励起し、蛍光色素か
ら放射される蛍光量を受光素子により検出して、検体溶液中の抗原
量を分析する(例えば、特開平8−285851号公報参照)。
エバネッセント波とは光が光導波路層と外層との界面で全反射する
とき、その界面に発生する界面近傍だけに局在する電磁波のことで
ある。エバネッセント波を用いる測定方法としては、上記した蛍光
色素で標識する方法以外にも、検体中の色素標識化物質(例えば色
素標識された2次抗体)におけるエバネッセント波の吸収による反
射光の物理量の変化を検出する方法が知られている(例えば、特公
平3−7270号公報参照)。
しかしながら、これら従来の測定方法は、検体中の測定対象物質が
低濃度である場合、免疫複合体に取り込まれる色素または蛍光色素
数が少なくなり測定が難しくなるため、反射光の物理量の変化を検
出する受光素子は、高感度で高価なものとなり、反射光の物理量の
変化を検出する装置も複雑で、高価なものとなる問題点があった。
本発明は、上記現状を鑑みてなされたものであり、測定対象物質の
濃度測定用であって酵素反応に利用する発色試薬、濃度測定用キッ
ト、濃度測定方法、及びそれに用いるセンサチップであって、5μ
L以下の微量な検体溶液中の測定対象物質の濃度を短時間に測定で
き、かつ、測定に供する検体量が不正確であっても測定対象物質の
濃度を高精度で迅速に測定できる発色試薬、濃度測定用キット、濃
度測定方法、及びその方法に使用するセンサチップを提供すること
を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、酵素反応を利
用した濃度測定方法において、酵素反応により発色した際に沈殿す
る酵素反応産物を生成する発色試薬を用いて、沈殿したその酵素反
応産物に起因する光の物理量の変化を測定することにより、上記目
的を達成しうることを見出した。すなわち、本発明は、
(1)少なくとも発色基質と標識酵素の基質とを含み、酵素反応に
より発色し、沈殿する酵素反応産物を生成する発色試薬、
(2)測定対象物質を捕捉するための抗体が固定された抗体固定化
層を光導波路層表面に備えるセンサチップと、標識酵素によって酵
素標識された抗体と、少なくとも発色基質と標識酵素の基質とを含
み酵素反応により発色し沈殿する酵素反応産物を生成する発色試薬
とが、それぞれ個別に収容されて組み合わされた測定対象物質の濃
度測定用キット、
(3)光導波路層とこの光導波路層の表面に設置された抗体固定化
層とを具備するセンサチップを用いる測定対象物質の濃度測定方法
であって、抗体が固定された前記センサチップの抗体固定化層によ
って測定対象物質及び標識酵素により酵素標識された抗体を固定し、
前記標識酵素により発色試薬を反応させて発色し沈殿する酵素反応
産物を生成して前記抗体固定化層上に前記酵素反応産物を沈殿させ、
外部から前記センサチップに入射された光を前記光導波路層と抗体
固定化層との界面で全反射させて、この全反射させた光の物理量を
観測する測定対象物質の濃度測定方法、及び
(4)内部を光が全反射で伝播可能な光導波路層と、この光導波路
層の全反射させる表面の少なくとも一部に形成される抗体固定化層
と、を具備するセンサチップ、を提供するものである。
下図1は、センサチップの構成を示す概念図である。下 図2は、
本発明の実施の形態に係るセンサチップの一例を示す図。 図3は、
本発明のセンサチップの一例を示す、図2のⅢ−Ⅲ線に沿う断面図
である。図4は、本発明の実施の形態に係るセンサチップの製造工
程を示すフロー図である。図5Aは、本発明の実施の形態に係るセ
ンサチップの製造工程を示す工程図である。図5Bは、本発明の実
施の形態に係るセンサチップの製造工程を示す工程図。図5Cは、
本発明の実施の形態に係るセンサチップの製造工程を示す工程図で
ある。図5Dは、本発明の実施の形態に係るセンサチップの製造工
程を示す工程図。図5Eは、本発明の実施の形態に係るセンサチッ
プの製造工程を示す工程図である。
1:光導波路層、10:反応ホール、11:セル、12:セル壁、
13:薄膜、13a:入射側グレーティング、13b:出射側グレ
ーティング、14:抗体固定化層、14a:一次抗体、15:撥液
性樹脂膜、16:基板、20:検体溶液、20a:抗原、21:二
次抗体溶液、21a:二次抗体、22:発色試薬溶液、22a:発
色試薬。
②特開2019-017383 短鎖核酸伸長用プライマーセット、アッセイキ
ット、短鎖核酸伸長方法、増幅方法及び検出方法
❏実証実験が良好(知財蓄積)であれば----特にステージ0の応答
性が高ければ(※日本人/外国人)面白い。
11月22日、ビル・ゲイツが支援するステルス・エネルギー会社
のヘリオジェン社が集光型太陽電池の大きく前進したことを公表し
ている。同社の特許技術は、クリーンで再生可能な太陽光で従来の
ダーティプロセスを駆逐し、太陽光を水素や合成ガスなどの燃料に
変換が可能である。
HelioMax™
高い光学性能を一貫して提供し、キャリブレーションの時間を数か
月節約する画期的な閉ループ制御システムを備える。HelioMaxは、
他のどのヘリオスタットシステムよりも高い濃度と1ドルあたりの
フラックスを誇り、発電とプロセス熱の両方に供給できる。
HelioHeat™
弊社のカーボンフリーの超高温(最高1500ºC)の熱は、有害な化石
燃料の代わりに使用でき。HelioHeatを使用すると、セメント、精製、
鉱業などの産業用途として、焼成・改質・鉱石焙焼・焼結などの既
のダーティープロセスをグリーンへ転換できる。
HelioFuel™
カーボンフリーの超高温熱で作られたクリーンで再生可能な燃料は、
輸送、重機、家庭用暖房など、さまざまな用途に利用可能だ。まず、
基本的なクリーン燃料であるグリーン水素の生産に焦点を当る。
【関連特許】
①US20090205701A1 Luminescent solar collector having customi- zable viewing color;カスタマイズ可能な表示色を持つ集光型ソー
ラーコレクター
【概要】
シートおよび光電池などの光エネルギー変換器を含む発光性太陽集
熱器が提供される。シートは2つのポリマー層を含む。1つのポリ
マー層は、ポリマーと蛍光色素または量子ドットで構成。他のポリ
マー層は、ポリマーと非蛍光色素を含み、さらに有機拡散体を含ん
でもよい。発光ソーラーコレクターは、任意の表示色にカスタマ
イズでき、高レベルのエッジ放射を提供する。
1500℃もあれば、その火力で、セメントや製鉄も可能、さらに
水蒸気タービンで発電もかのう、或いは水蒸気と二酸化炭素及び酸
素を反応させ水素製造や炭化水素の合成も可能だろう。このニュー
スは残件扱い。
この項つづく
ソーシャルキャピタル論⑤
豊かで持続可能な地域社会をつくる。投資が「効く」地域と「効か
ない」地域は何が違うのか?親の「つながる力」は子どもに継承さ
れるのか?地域の信頼関係や互酬性、ネットワークがもたらす経済
効果を定量的に測定、次世代へ継承し、地域社会の担い手を育成す
るための方途を提案する。
キーワード:ソーシャル・キャピタル、信頼、規範、経済成長
2.2 我が国における先行研究
我が国において、ソーシャル・キャピタルを定量的に把握した上で
分析を試みているものはほとんどないが、内閣府が行った委託調査
「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関 係と市民活動の好循環
を求めて」(2003)は、我が国ではじめて本格的にソーシャル・キ
ャピタルを定量的に捉えようとしたものであり、我が国におけるソ
ーシャル・キャピタル を都道府県別に測定する試みがなされてい
る。具体的には、Putnam によって示された「ネットワーク」「信
頼」「規範」の3つの切り口に着目し、
①近隣でのつきあいや社会的な交流を捉えた「つきあい・交流」
②他人に対する一般的な信頼と特定の人を対象とした相互信頼・相
互補助を捉えた「信頼(社会的信頼)」
③「規範」のうち互酬性の規範のあらわれとして社会活動への参加
を捉えた「社会参加 (互酬性の規範)」
という3つの要素から、独自のアンケート調査結果や既存統計デー
タを用いてソーシャ ル・キャピタルを定量的に測定している----
アンケート調査は、郵送方式とweb 方式により行われており、「あ
なたは、一般的に人は信頼できると思いますか。それともできない
と思いますか。」等の設問が設けられている。調査実施期間は2003
年1月~3月であり、有効回答数は、郵送アンケートで1,878人、web
アンケートで2,000 人となっている。さらに、定量化されたソーシ
ャル・キャピタルが、完全失業率、合計特殊出生率、平均余命とい
った指標との間に相関関係があることを示している。以下では、こ
うした先行研究を参考に、我が国におけるソーシャル・キャピタル
と経済成長との関係について分析を行う。
3.実証分析
3.1 実証分析の方法
本稿では、ソーシャル・キャピタルが経済成長に与える影響を検証
するため、Barro Regression と呼ばれる手法を用いる。Barro Re-
gressionでは、以下のように、被説明変数を一人あたりGDP の成長
率とし、推定期間の初期時点における一人あたりGDPと、経済成
長に影響を与えると考えられる諸変数を説明変数として回帰するも
のである。
この回帰式を推定し、推定された係数の符号をみることで、その変
数が経済成長に影響を与えているかを知ることができる。これまで、
内生的経済成長論の議論の発展の中で、理論的なモデルの構築と平
行して、人的資本の役割や政府の経済政策が長期的な経済成長にど
のような影響を与えるのかを検証するため、Barro(1991)をはじめ
として、民間投資率、就学率、政治的安定性、民主主義の普及度等
様々な変数が、この手法により検証されてきており、本稿では、説
明変数に ソーシャル・キャピタルをあらわす変数を入れることに
より、ソーシャル・キャピタルが 経済成長に影響するか否かを検
証することとする。 なお、ソーシャル・キャピタルの影響を適切
に推定するには、ソーシャル・キャピタル 以外の要因による影響
をコントロールしておく必要があり、経済成長に影響を与える要因
があれば、それを説明変数に追加しておく必要がある。このため、
実際の推定においては、 我が国におけるBarro Regression を用い
た先行研究である中里(1999)を参考に、高等教育修了人口比率を人
的資本をあらわす変数として追加することとする。
3.2
世界銀行におけるソーシャル・キャピタルに関する取組を紹介して
いるサイトでは、ソ ーシャル・キャピタルをどのように計測する
かが記述されている (http://www1.worldbank.org/prem/poverty/
scapital/SChowmeas1.htm(平成17年11月閲覧時)。そこでも述べ
られているように、ソーシャル・キャピタルは、信頼や協調といっ
た複合的な要素を含んだものであり、ソーシャル・キャピタルを計
測することを目的としてこれらの要素を統計的に把握しているデー
タがほとんどないため、ソーシャル・キャピタルを定量的に計測す
ることは非常に困難である。しかし、計測する方法がないわけでは
なく、前節に紹介した先行研究のように、既存のデータを活用し、
それらを組み合わせることにより、ソーシャル・キャピタルを定量
化し、それをもとに検証を行っている研究がいくつかある。内閣府
(2003)では、先にも述べたように、アンケート調査結果等を合成
してソーシャル・キャピタルの定量化を行っており、我が国におけ
る定量的なソーシャル・キャピタル研究の先鞭であるが、ソーシャ
ル・キャピタルの定量化においては、当該調査において実施された
アンケートの結果を用いており、過去にさかのぼって定量化するこ
とはできない。 Barro Regression においては、経済成長が説明変
数に影響するという逆の因果関係に留意する必要があることから、
そのような影響を排除した推定を行うことが重要である。こうした
問題に対処するための方法は、塩路(2001)で述べられているように、
最小二乗法で推定する場合には、推定する期間の初期時点(もしく
は、それ以前)の数値を説明変数に用いること、もしくは、操作変
数法により推定することである。操作変数法を用いる場合には、適
切な操作変数を探すことが課題となるが、先行研究では、説明変数
自身の過去の 値が用いられることが多い9。こうしたことを踏まえ
ると、説明変数に用いるソーシャル・ キャピタルの指標について
は、ある程度長期の推定期間となるよう留意しつつ、過去のデータ
が得られるようなものとする必要がある。
内閣府(2003)では、ソーシャル・キャピタルの時系列分析を行う
ために、アンケート 調査の項目に関連した既存調査を用いている。
具体的には、NHK 放送文化研究所が1978年と1996年に実施した「全
国県民意識調査」と、総務省(旧総務庁)が5年ごとに実施してい
る「社会生活基本調査」から、ソーシャル・キャピタルの構成要素
である「交流・つきあい」「信頼」「社会参加」について、それぞ
れ表1のようなデータを用いている。
『ソーシャル・キャピタルは地域の経済成長を高めるか-都道府県
データによる実証分析-』,05年12月 国土交通省国土交通政策
研究所 特特別研究員 要藤 正任
この項つづく
人口減少時代のまちづくり㉘
52 放置されたリゾートマンションの現状は
【要点】
①バブル崩壊後、資産価値が急速に低下したマンション群が大量に
出現。
②減退した経済状況を反映して、新たに購入しようという人が現れ
ない。。
③スラム化という悲惨な状況になっている所がある。
1 バブル崩壊後、資産価値が低下したリゾートマンション
が大量に出現
リゾートマンションは、不動産としては、別荘として地方都市に建
てられた分譲(区分所有)型のマンションを指す。1960年代に
熱海・伊東・箱根等の高台に眺望重視で、温泉やプール・フロント
サービス等ホテル並みの設備を備えたマンションとして建てられ始
めた。1970年代後半になると定住型マンションを提供していた
ディベロッパーも参入し、各地の避暑地や観光地、温泉街・ビーチ
沿いに建設されバブル期に爆発的に増え、スキー揚が集積する新潟
県湯沢町周辺で建設ラッシュが起きた。しかし、バブル崩壊後、ス
リー場やゴルフ揚の利用、観光客の減少による街の衰退に伴って、
資産価値が急速に低下したマンション群が大量に出現しました。会
員制のリゾートホテルやマンションは、会員権を譲渡したり買い戻
してもらえるが、リゾートマンションの区分所有者は、第3者に売
らない限り、管理費や大規模修繕費を毎月払い、固定資産税を納め
なくてはならない。又、年間、何度利用するかわからない建物の維
持費も毎年50万円程かかると言われている。
2 リゾート地のブランドが下がると放置される
現在、リゾートマンションのストックは7万8千551戸(15年
度;(株)東京カンティ)ある。すべてのリゾートマンションの資
産価値が下がっているわけではあないが、バブル期に集中的に建設
された地域では、マスメディアにも取り上げられ、このままではス
ラム化するという悲惨な状況(放置されている)になっている所が
ある。全国のマンション全体の老朽化かたどる危機的な状況が根底
にありまるが、リゾートマンションは、その成り立ちから問題を大
きくしている。まず、地域が偏っており、建設された地域とは無関
係(地元市町村に住んでいる人数とは関係なく、そこにやってくる
スキーやゴルフ、温泉客への対応)量に供給された。例えば新潟県
湯沢町は町の世帯数の約4倍の1万4400戸程のマンション(殆
どリゾートマンション)のストックがある。そして、これらのマン
ションの多くは日常生活のためのエネルギーや設備が十分ではない
ので、定住できる居住環境を持っていません。更に、減退した経済
状況を反映して、新たに購入しようという人が現れない。
3 更地売却など所有者が自ら対応することが望まれます
リゾートマンションのストックが突出している新潟県湯沢町では、
スキー場の利用者が800万人と言うピーク時に相次いで、次いで
計画されて建設されてきたが、現在スキー場利用は300万人を割
り、1年にI回以下の利用しかないマンションから割あります。又、
購入時とは比較にならない価格で売り出されているマンションも、
管理費が月24000円、維持費が年50万円かかるので、買い手
が見つからない。更に、放置されて管理費を滞納するような状況に
対して、マンション管理組合の中には、自ら宅建築免許を取って、
所有者に代わって競売、買い手がいなかった場合は、管理組合が所
有して、売却完了までのゲストルーム利用などをしている所が出て
きた。最終的には、立て替えの需要など無い建物の取り壊し、更地
売却、管理組合の解散への準備など、当事者である所有者が問題解
訣して行かなくてはなりません。
キーワード リゾート地のブランド価値の低下/定住できる環境
がない
53 空き家への侵入と占拠の現状は
【要点】
①「空き家対策特別措置法」では、空き家の適正管理を所有者の努
力義務と定めている。
②不法占拠が原因で何か事故が起きれば、その貴任を所有者が負う
可能性もある。
③不法占拠は住居侵入罪になる。
日本全休の住宅の8軒に1軒が空き家(13年)と言う調査結果が
大きな話題となった。23年には5軒に1軒に増えて行くのではな
いかと言う危機感なども相まって、空き家問題がマスメディアを賑
わしています。特に、放置された空き家で、手入れをされない庭の
樹木が隣家や道にのびたり、朽ち果てそうな住宅、蚊の発生や鳥が
集まる、ゴミの不法投棄かおるというようなことが、街のなかで人
口に触れるようになり、多くの人達が現実問題として意識するよう
になってきました。そして、今は、まだ、眼に見える状況になって
いませんが、人が出入りしない空き家は、第三者が不法に侵入した
り、占拠(住んだり、不定期的に使用する等)される危険性を持っ
ています。そのような危惧は、自治体の空き家対策で空き家の育す
問題について、「衛生環境悪化」「景観の悪化」についで「不法侵
人などによる治安の悪化」が高い比率を占めているという調査にも
見えます。
2 空家への不法侵入や占拠などの例が出てきた
チラシがポストの外にあふれている、窓ガラスが割れている、庭に
草が茂っていると言うように、人が住んでおらず、管理者も居ない
ように見える空き家は、不審者のターゲットになります。空き巣に
よる窃盗事件が起こりやすくなる、不法侵入者による往みつき、勝
下に家財道具や水道・電気を使用していたり、破壊していたり、ゴ
ミを放置して部屋を不衛生なままにする等がおこる可能性があす。
更に、タバコの火の不始末や放火による火災発生も懸念され、何か
起こっても発見されるまでに時間がかかり、周囲を巻き込んで大変
なことになる。不害者が侵入・占拠した住宅は、薬物売買に利用さ
れたという例もあり、街の治安に多大な影響を及ぼす大きな問題に
なる可能性がある。
3 空き家を定期的に管理していくことが所有者の義務
空き家は、所有者が管理することが原則です。15年に施行された
「空き家対策特別措置法」では、空き家の適正管理を所有者の努力
義務と定め、生活環境の保全を図るとしています。空き家を不法占
拠されないためには定期的に管理するしかおりません。不法占拠す
る人は長い間使われている気配が無く、人の往来がない空き家を狙
っています。不法占拠されている場合は、住居侵入罪(住宅不法侵
入、建物不法侵入)ですので刑事事件になりますが、不法占拠が原
因で何か事故が起きれば、その責任を所有者が負う可能性もある。
建物は人が住まなければ、害虫やカビが発生したり、配水管が詰ま
ったりと、急速に劣化していきますので、結果的に、不動産として
の価値が維持できず、転売することも難しくなっている。そこで、
最近は、空き家の管理を所有者から委託を受けて請け負う事業者が
増えてきた。定期的に空き家のメンテナンスを実施して侵入や占拠
を予防するとともに、建物の劣化を防ぎ、不動産の価値を保つこと
を売り物にしています。空き家が発生したら、 所有者は放置するの
ではなく、このような力も借りながら、定期的に管理して行くこと
が求められています。
キーワード 不法侵入者/街の治安の悪化/定期的な管理