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ソーシャルキャピタル論⑥

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9.子 罕 しかん
ことば------------------------------------------------------
「子、川上に在りて曰く、逝く者はかくのごときか。昼夜を舎かず」(16)
「われいまだ徳を好むこと色を好むがごとくなる者を見ず」(17)
「譬えば山をつくるがごとし。いまだ一簣を成さざるも、止むはわ
が止ひなり」(18)
「後生畏るべし。いずくんぞ来賓の今にしかざるを知らんや」(22)
「三軍も帥を奪うべきなり。匹夫も志を奪うべからず」(25)
------------------------------------------------------------  
11 孔子が大病にかかったときのこと、子路は万一に備えて、門
人たちを孔子の家臣に仕立てた。病気が小康を得たとき、孔子は言
った。「由(子路)のやつ、またでたらめをやったな。家臣をおく
身分でないわたしに、家臣があるような見せかけをやったりして。
人間ならいざ知らず、天をだますことはできないよ。だいいちわた
しは、にせの家臣に葬られるより、気心の知れた弟子たちの手に抱
かれて死にたい。たとい盛大な葬式はやらないにしたって、行き倒
れにはなりっこないのだから」

子疾病、子路使門人爲臣、病間曰、久矣哉、由之行詐也、無臣而爲
有臣、吾誰欺、欺天乎、且予與其死於臣之手也、無寧死於二三子之
手乎、且予縦不得大葬、予死於道路乎。

Confucius had got a critical illness. Zi Lu made other pupils
pretend to be Confucius's vassals. When illness was better,
Confucius said,"Have you been deceiving for a long time? I don't
have any vassals. Who do you want to deceive? Heaven? I would
rather be mourned by you as you are. Even if you cannot hold
a grand funeral for me, I will not die on the roadside alone."



  

【ポストエネルギー革命序論100】





温室効果ガス排出量 過去最悪
11月25日、世界気象機関(WMO)は、地球温暖化の原因とな
る二酸化炭素などの温室効果ガスの世界の平均濃度が去年、いずれ
も観測史上、最も高い数値を更新したと公表、このままでは次世代
がより深刻な気候変動の影響を受けることになると警鐘を鳴らした。
また、11月26日、国連環境計画(UNEP)は、去年1年間に世界
で排出された温室効果ガスの量が統計を取り始めてから過去最悪の
多さになったとする報告書を公表、各国に対して環境政策の大幅な
強化を求めている。それによりますと、去年1年間に世界で排出さ
れた温室効果ガスの量は553億トンと、これまでの排出量を更新
し過去最悪の多さとなった。報告書では、世界の平均気温の上昇を、
産業革命前に比べて、2℃未満に抑えるためには30年の時点で、
150億トン減らす必要があると指摘、現状では実現が難しく、各
国に対して環境政策の大幅な強化を求めている。特に日本に対して
は、石炭火力発電所の建設を中止するほか、再生可能エネルギーを
利用することで石油の利用を段階的にやめていくことなどを求めて
いる。この報告書はCOP25でも取り上げられる予定で、各国が
対策の強化につなげられるか問われている。



地球温暖化を最大1.5℃に制限の実現には、昨年の108GWの太陽
光発電導入量を上回る、6倍速く行う必要があると国連環境計画は
警告。報告書によると、昨年配備された記録的な167GWの再生可
能エネルギー発電容量(108GWの太陽光発電を含む)を参考に、
再エネ(再生可能エネルギー)の投資2,730億ドルは上る(石炭
とガスの3倍相当)。しかしながら、世界の総エネルギー需要量の
85%の石炭・石油・ガスへの依存を続けると3.2℃の温度上昇と
なる。最大摂氏1.5℃まで下げるには、温室効果ガス(GHG)排出
量(毎年1.5%増加)となる。


日本が取り組む二酸化炭素の回収技術

ところで、日本政府はことし6月、地球温暖化対策を進めるための
長期戦略を決定。50年までに温室効果ガスを80%削減し、今世紀
後半のできるだけ早い時期に、排出ゼロ=「脱炭素社会」の実現を
目指すことを掲げている。長期戦略では、温室効果ガスの排出を抑
えるだけでなく、いったん排出されたものを回収する技術を23年
までに実用化することも盛り込んでいる。このうち、火力発電所な
どで排出されるガスから二酸化炭素を分離して回収し地下深くに封
じ込める「CCS」と呼ばれる技術については実証試験が進められて
いる。北海道苫小牧市にある施設では、製油所から出たガスに溶液
を入れてガスの中の二酸化炭素を吸着させ、分離して回収する作業
が16年4月から今月まで行われた。回収した二酸化炭素は、パイ
プラインで沖合およそ3キロの深さ1000メートルから1200メートル
の層と、深さ2400メートルから3000メートルの層の2か所に送り込
まれる。




それぞれの層の上には、泥岩などでできた「遮へい層」と呼ばれる
地層があり、二酸化炭素を通さないため、長期間、安定して貯留す
ることができるとされている。この施設では、およそ3年半で合わ
せて30万トン余りの二酸化炭素を封じ込めたということで、現在、
安全性を確認するためのモニタリングが続けられている。地球環境
産業技術研究機構の調査では、国内の地中には、およそ1400億
トンの二酸化炭素を貯留できると試算され、これは、日本の年間の
排出量のおよそ100年分にあたる。しかし、コストが高いという
課題のほか、地中に埋めた二酸化炭素が地震によって外に漏れ出さ
ないかや、深い地層に埋めることで、地震を誘発させるのではない
かという懸念も出ている。さらに、大気から直接、二酸化炭素を回
収する技術も研究開発が始まっている。兵庫県明石市にある川崎重
工業の工場では環境省の委託を受けて、ことし8月から基礎試験が
行われ、使用するのは、「アミン」という二酸化炭素を吸収する性
質がある化学物質です。アミンをコーティングした粒をパイプに詰
め二酸化炭素を通すと、わずか数分で二酸化炭素濃度は10万ppm
から0ppmまで下がる。

二酸化炭素回収実験で目標達成

11月25日、苫小牧市におけるCCS大規模実証試験において、二
酸化炭素(CO2)の累計圧入量が目標である30万トンを達成。こ
れにより、CO2の圧入は停止しするが、①圧入したCO2などのモニタ
リングは継続していく。②また、本実証試験において得られた結果
や今後の課題について専門家による検証を行い、その成果を公表す
る予定。
日本CCS調査株式会社「苫小牧におけるCCS大規模実証プロ
ジェクト 二酸化炭素(CO2)の30万トン圧入達成」
※NEDOニュースリリース「CCS大規模実証試験においてCO2の累計圧
入量30万トンを達成」

 

原理:ゲート電圧の代わりに制御光でオンオフ
光スイッチの体積を数百分の1、速度はSiの百倍で超省エネ
11月26日、NTTは東京工業大学と共同で光だけで動作する「
全光スイッチ」を開発したと公表。その特徴は、①光が通る導波路
の断面積を従来の1/100以下と極めてコンパクトにできたこと、②ス
イッチの動作速度は100フェムト(f)~数百f秒で、Siトランジスタ
の約100倍高速であること、③スイッチングに必要な消費エネルギー
も数十f~100fJで、10GHz動作のSiトランジスタに比べて大幅に少な
く、従来最も省エネルギー動作の光スイッチに対しても1/100と低い、
の大きく3点である。NTTらは、今回の技術を将来のスイッチング
機能付きチップ間またはコア間の光インターコネクトや、光ニュー
ラルネットワークの活性化関数部などに応用していく方針。



【要点】
①グラフェンの超高速な非線形光学効果を利用
超高速な動作を実現するための非線形光学材料としてグラフェンを
用いた。グラフェンは可視から赤外までの広い波長領域で単層あた
り2.3%の光を吸収。これを吸収係数として半導体に比べて極めて
大きな値。また、グラフェンは非線形光学効果の一つである可飽和
吸収※7を示し、その応答時間は最短で100fs以下。これはグラフェ
ンキャリアの緩和が半導体に比べて非常に高速。この全光スイッチ
はグラフェン光吸収の飽和状態と非飽和状態を光励起によって切り
替えることで透過率変化を引き起こし、スイッチのON/OFFの状態と
して使用。
②プラズモニクスによって光とグラフェンの相互作用を増強
グラフェンは優れた非線形光学材料だが、は薄すぎるという問題が
あり、光とグラフェンの相互作用を大きく増強するため、数十ナノ
メートルサイズのプラズモニック導波路を利用。プラズモニック導
波路は極限的な光閉じ込める----導波路コアの断面サイズが30nm×
20nmの場合、閉じ込めの効果はλ2/4000(λ:光の波長であり、1550
nmを想定)に達し、シリコン導波路をプラットフォームとしたとき
光とグラフェンの重なりが小さいため相互作用は弱く、光吸収は
0.089dB/µm(1µmあたりの2%程度)であると計算から予測(図4)。
③モード変換器でプラズモニクスの問題点を解決
プラズモニック導波路は極限的な光閉じ込めを可能にする一方で、
大きな伝搬損失を持ち、サイズが波長よりも非常に小さいが故に光
の入出力が困難であることが課題とされている。そこで、プラズモ
ニック導波路をグラフェンとの相互作用部にのみ用い、プラズモニ
ックモード変換器(図5)により、シリコン等の低損失な誘電体導波
路に結合させるという手法を採用。この構造の作製には高い加工技
術----NTTでは16年に世界に先駆けて深サブ波長領域のプラズモニ
ック導波路とシリコン導波路を結合させるプラズモニックモード変
換器の実績を報告----は、光集積回路内においてプラズモニック導
波路、そしてグラフェンの利点を最大限に活用できる。



NTTらが今回開発した全光スイッチは、光の導波路と1~数層の
グラフェンを組み合わせることで光の透過と吸収を切り替える素子
である。グラフェンは、一般には光や電磁波を2、3%の割合で吸
収する性質を持つが、高強度の光を照射すると、短時間の間、エネ
ルギー準位が飽和して光を吸収する機能を失う。全光スイッチでは
この性質を利用し、導波路のコアに沿うようにグラフェンを転写し
て被せる。そのコアに信号光と制御光を通すと、2つの光のタイミ
ングが離れている場合は、信号光は吸収(オフ)。タイミングがほ
ぼ一致している場合は信号光が透過(オン)になる。3端子のトラ
ンジスタと異なり、信号光と制御光を1つの導波路に入力する2端
子のスイッチになる。

信号光と制御光のタイミングでオンオフが決まる
全光スイッチのオンオフ制御の方法と結果を示した。制御光が信号
光とずれていると、グラフェンが信号光を吸収するためオフ。制御
光が信号光とほぼ重なっていると、グラフェンが信号光を吸収しな
くなり、透過させるためオンになる。(出典:NTT)

体積を数百分の1以下に小型化
この仕組み自体は従来のSi導波路型光スイッチでも同じだったが、
導波路コアの面積は最もコンパクトな例でも400nm×200nm、長さは
30μm以上とSiトランジスタよりはるかに大きなサイズだった。
これが電子のトランジスタが自動車なら、光素子は飛行機、トラン
シーバーは空港と呼ばれるゆえんで、高速大容量化と集積密度がト
レードオフの関係にある。


従来の最小級のSi導波路型光スイッチ(a)と今回のプラズモニック
導波路型光スイッチ(b)の寸法を比較。

一方、今回の全光スイッチは、コアの断面積は30nm×20nmと従来の
1/100以下になり、長さも数μmと数分の1に小型化した。長さこそ
Siトランジスタに比べてまだ長いが、コアの断面積は、最先端のSi
トランジスタと肩を並べる水準になった。

光を波長2/4000の空間に閉じ込め
ここまで小型化できたのは、誘電体と金属の界面で光と電子が結合
した「表面プラズモニックポラリトン」という状態を利用したこと
にある。これで電磁波に付きまとっていた回折限界の壁を超えられ
る。近接場光顕微鏡などもこの効果を利用している。ただし、これ
までの表面プラズモンポラリトンの利用例の多くは、波長の数分の
1程度までのコンパクト化がせいぜいで、それ以上の大幅なコンパ
クト化に成功した例はほとんどない。

 
Si導波路型光スイッチ(左)と今回のプラズモニック導波路型光ス
イッチ(右)の特性などの比較



ブロックチェーンで再エネ電力をP2P取引実証
11月7日、elDesign(エルデザイン)は、20年2月から長野県
富士見町で、ブロックチェーン技術を活用した電力取引システムの
実証実験がスタート。太陽光発電オーナーと需要家の間で、模擬的
に電力取引を実施することを公表。この実証では、太陽光の発電家
と需要家間における電力取引を模擬的に行い、ユーザーの反応やビ
ジネスモデル、技術的な課題について検証する。期間は、20年2
月〜5月、参加者は富士見町エリアの住民(40人程度)である。
参加各社の役割として、elDesignは実証実験の全体推進、国内電力
会社・関係省庁との連携、発電源および需要家の新規開拓、森のエ
ネルギーは電力小売事業者としての機能提供、富士見町は実証実験
の場提供、エバーシステムはブロックチェーンを用いたアプリケー
ションを提供、IOSTはブロックチェーン技術の提供、となっている。

 ソーシャルキャピタル論⑥

豊かで持続可能な地域社会をつくる。投資が「効く」地域と「効か
ない」地域は何が違うのか? 親の「つながる力」は子どもに継承さ
れるのか? 地域の信頼関係や互酬性、ネットワークがもたらす経済
効果を定量的に測定、次世代へ継承し、地域社会の担い手を育成す
るための方途を提案する。
キーワード:ソーシャル・キャピタル、信頼、規範、経済成長

3.実証分析
3.2 データと符号条件
Knack and Keefer(1997)は、信頼と規範をソーシャル・キャピタル
として取り上げ、両者が経済成長に有意な影響を与えていることを
示していることから、本稿においても、信頼と規範に相当する部分
をソーシャル・キャピタルの変数として用いることとする。信頼の
指標化にあたっては、上述の「信頼(社会的信頼)」のデータをそ
のまま用いることとする。一方、規範の指標化については、同じく
「社会参加(互酬性の規範)」で用いられているデータを用いるが、
ここで用いられている指標だけでは、囚人のジレンマのような状況
から逃れやすくなる人々の協調性を促すといった要素が十分に反映
されていないと考えられる。例えば、ある地域において地域への経
済効果の大きな事業を行おうとする場合において、地域住民全体へ
の効果を考慮して関係者が事業に協力する場合と、個人や特定の集
団の利益を優先して関係者が事業実施に反対する場合とでは、地域
の経済成長にも違いがでてくると考えられる。そこで、こうした住
民同士の協調性をより考慮するため、全国県民意識調査における社
会意識や政治意識に関する質問項目のうちから、「今の世の中では、
自分のことばかり考えて、他の人のことには無関心の人が多い」と
思うかどうかに関する質問と、「公共の利益のためには、個人の権
利が多少制限されてもやむを得ない」と思うかどうかに関する質問
の回答結果を合わせて用いることとする。具体的には、前者につい
ては「そうは思わない」と回答した人の割合、後者については「そ
う思う」と回答した人の割合を用いる。両指標とも、他人の利得も
考えた行動をするか否かを反映した指標であり、地域の人々の協調
性を補うと考えられる。このほか、一人あたり共同募金額を用いる
こととする。指標化に際しては、内閣府(2003)と同様に、それぞれ
要素とする個々の指標を 標準化し単純平均したものを用いる。

こうして作成したデータを1978年についてプロットしたのが下図1
である。両者には弱いながらも正の相関関係が見られる。地域別に
みると、東京、神奈川、大阪、京都といった大都市地域が、信頼や
規範の双方において全国平均より低い傾向にあることが分かる。

また、内閣府(2003)では、作成したソーシャル・キャピタルの指標
が、完全失業率や犯罪認知件数等の国民生活関連指標との関係があ
るかどうかの簡単な分析を行っており、完全失業率、犯罪認知件数
については負の関係が、合計特殊出生率、平均余命については正の
関係があることが指摘されている。表2は、今回新たに作成した指
標について、同様にこれらの諸指標との関係を示したものである。
信頼については、あまり明確な関係は見いだせないものの、犯罪認
知件数とは負の関係、民間投資比率とは正の関係がみられる。また、
規範については、完全失業率、犯罪認知件数については負の関係が、
合計特殊出生率や民間投資比率とは正の関係があることがわかる。
内閣府(2003)では有意な結果が得られている平均余命や事業所開設
率については、今回作成した指標では有意な関係が見いだせないも
のの、これらの結果は内閣府(2003)ともある程度整合的であること
から、作成した指標がソーシャル・キャピタルの指標として妥当な
ものと考えられる。

以上の結果を踏まえ、信頼と規範の二つの要素について経済成長(
1980年~1999年)との関係について推定を行う。ソーシャル・キャ
ピタルが経済成長に正の影響を与えるという仮説が成立するのであ
れば、信頼や規範の係数はプラスとなる。

3.3 推定結果
表3は、(1)列では信頼を、(2)列では規範を、(3)列では両方を説明
変数に加え、最小二乗法により推定した結果である。一人あたりGDP
の係数についてはどれもマイナスで統計的にも有意なものとなって
おり、先行研究の結果と整合的である。ソーシャル・キャピタルに
ついてみると、信頼については統計的に有意な結果が得られていな
いが、規範については、規範のみを説明変数に追加した場合や信頼
と規範の両方を追加した場合には5%の有意水準で有意な結果が得
られており、係数もプラスと符号条件にあっている。 (4)列では、
規範について1996年の値を用い、経済成長と規範との内生性を考慮
して操作変数法を用いて推定を行っている。この場合、規範は1%
の有意水準で有意となる。 (5)列では、1980~1990年の一人あたり
GDP の成長率を被説明変数としている。この結果をみると、初期時
点における一人あたりGDP について係数が有意なものとはなってお
らず、収束性が確認できないが、規範については5%の有意水準で
有意な結果が得られている。



クロス・カントリー・データによる国家間の経済成長の違いを分析
した研究については、Barro regressionにおいて追加した変数が有
意となったとしても、別の変数を組み合わせた場合に、有意ではな
くなる可能性が指摘されており、追加する変数の頑健性に留意する
ことが必要とされる。そこで、本稿においても、規範の有意性が
ロバスト(頑健)なものかどうかを確認するため、いくつかの変数
を追加して推定を行った。表4では、その結果を示している。

(6) 列では、産業部門ごとに生産ショック等による受ける影響の大
きさが異なることを考慮するために、Shioji(2001)で用いられてい
る部門変数を追加している。追加した変数のうち、農林水産業に関
する部門変数は有意なものとなっているが、製造業については有意
なものとなっていない。また、これらの変数を追加したことにより
規範の有意性は損なわ れていない。(7)列では、クロス・カントリ
ー・データを用いた研究で多く用いられている推定期間における平
均の民間投資比率を、 (8)列では公共投資比率を追加している。民
間投資比率については、経済成長が民間投資に影響するという逆の
因果関係が、公共投資比率についても、経済成長率の低い地域に手
厚く公共投資を行うという逆の因果関係が考えられることから、と
もに操作変数法を用いている。また、公共投資比率については、大
都市よりも地方部が高いという傾向があるため、大都市において低
く地方部において高いという規範の傾向 と類似している。しかし、
これらの変数を追加した場合においても規範の有意性に変化はない。
 (9)列では、地域ごとの地理条件の違いを考慮するために、初期時
点における一人あたり可住地面積を説明変数に追加し、(10)列にお
いては、隣接地域からのスピルオーバー効果を考慮するために、隣
接都府県の一人あたりGDP を追加している。また、(11)列では、大
都市ほど規範が低い傾向にあることから、各地域の都市化の程度を
反映したものとなっており、このことが、経済成長率の違いに影響
している可能性も考えられるため、県内人口に占める人口集中地区
(DID) 人口比率を追加することにより検証を行っている。これら
の変数を追加した場合にも、規範については、5%の有意水準で有
意であり、係数はプラスのままである。



このように、規範については、他の説明変数を追加した場合にも良
好な結果が得られており、規範の高さが経済成長率を高めるという
結果は、ある程度ロバストなものと考えられる。ただし、規範が経
済成長に与える影響は、ほとんどの推定結果において0.0035前後で
あり、高等教育修了者比率の推定値に比べれば10分の1以下となっ
ている。こうした結果からは、ソーシャル・キャピタル自体が我が
国の地域の経済成長に与える影響自体は決して大きくはない。最後
に、信頼が有意な結果となっていないことについて考察してみる。
今回用いた信頼の指標は、隣近所の人、親戚、職場や仕事でつきあ
いのある人への信頼を合成したものである。内閣府(2003)で定量
化された信頼に関する指標では、他人に対する一般的な信頼と特定
の人を対象とした相互信頼・相互補助を捉えるため①一般的な信頼
度、②隣近所の人への信頼度、③友人・知人への信頼度及び④親戚
の人への信頼度の4つを平均して信頼の指数としているが、今回、
作成した指標では、他人に対する一般的な信頼という要素が含まれ
ていない。内閣府(2003)で掲載されているそれぞれのデータから、
一般的な信頼度と他の3つの信頼度の平均を見てみると、下図2に
示すように両者の相関関係はほとんどない。Putnam(1993)も指摘し
ているように、南イタリアにおいて身近な友人や親戚との強い信頼
関係は、情実に基づいた意思決定に反映されることを指摘している。
ソーシャル・キャピタルにおける信頼という要素については、負の
側面があることも指摘されており、身内に対する信頼は、他者の排
除や他の集団に対する負の影響につながる可能性がある。こうした
ことを踏まえると、今回使った信頼の指標はKnack and Keeferが用
いた信頼の指標とは異質なものであり、経済成長を高めるという意
味での信頼という要素を、適切に反映していない可能性もある。



4.結論
本稿では、ソーシャル・キャピタルという要因に着目し、ソーシャ
ル・キャピタルが我が国における地域の経済成長に影響を与えたか
否かついて分析を行った。その結果、ソー シャル・キャピタルの構
成要素の一つである規範については、その影響力は非常に小さいも
のの地域の経済成長に有意にプラスの影響を与えた可能性が示され
た。この結果は、 Putnam やKnack and Keefer らの結論とも整合的
なものであり、我が国においても地域 のあり方を考えていく際に
ソーシャル・キャピタルという要素を適切に考慮する必要性を示唆
するものである。ただし、ソーシャル・キャピタルについては、我
が国において広く定着した概念とは言えず、また、ソーシャル・キ
ャピタルを定量的に計測することは非常に困難である。今回用いた
指標がソーシャル・キャピタルを適切に反映しているか否かについ
ては、より精密な検証を重ねる必要があろう。さらに、今回用いた
信頼の指標は有意な結果が得られなかったが、信頼という要素が個
人の行動に大きな影響を与えるということを踏まえれば、一般的な
信頼を指標化することによって、それが経済成長に有意に影響する
かどうかを検証することも必要と思われる。推定方法についても、
データの制約があるためクロスセクション・データによる分析を行
ったが、クロスセクション・データでは、指標化できない地域ごと
の特性の違いについては考慮されないため、推定に偏りが生じるこ
とが知られている。このため、パネルデータを用いて地域別の固定
効果を考慮した分析についても試みる必要がある。また、Barro
Regressionでは、その変数が、どのような経路を通じて経済成長に
影響しているかは特定されない。今後、ソーシャル・キャピタルが
どのような経路を通じて経済成長に影響しているのかについての理
論的な考察を進めていくことが不可欠であり、あわ せて、ソーシャ
ル・キャピタルが個人や企業の行動といったミクロレベルでどのよ
うな影響を与えるのかについて実証的な検証を行うことも必要であ
ろう。以上は研究上の課題であるが、ソーシャル・キャピタルが地
域に与える影響を踏まえて、それをどのように政策立案に反映して
いくのかという政策上の課題についても今後議論を進めていく必要
がある。政策上の課題として捉えていくには、まず、ソーシャル・
キャピタルを地域の貴重な資源として認識し、それを正しく把握す
ることが必要である。現在、 経済産業省が推進している「産業クラ
スター計画」では、広域的な人的ネットワークの重要性が指摘され
ているが、産業の集積や人と人とのネットワークの形成にソーシャ
ル・キャピタルが影響する可能性を踏まえると、やはり、ソーシャ
ル・キャピタルという地域の資源を適切に把握しておくことは必要
不可欠である。また、地域によるソーシャル・キャピタルの違いが
どのような要因に影響されるのかを把握することも重要なテーマで
あろう。今回用いた指標からは、我が国においてもソーシャル・キ
ャピタルの蓄積度合いについては相当程度の地域間格差があると思
われる。Putnamは、ソーシャル・キャピタルは歴史的な経緯によっ
て大きく影響されると考察しているが、我が国においても歴史的な
経緯が ソーシャル・キャピタルの高さに影響しているのであれば、
短期的にソーシャル・キャピタルの蓄積を高め、地域の経済成長を
高めるということはできなくなる。しかし、地域のソーシャル・キ
ャピタルを高めていく方策があるのであれば、それを支援していく
ことも政策上必要と考えられる。それに加え、政策実施段階におい
て、その政策が、地域のソーシャル・キャピタルを損なうようなこ
とにならないかということをきちんと考慮していくことも必要では
ないかと考えられる。こうした点についても、今後検討が進められ
ることが望まれよう。

                        この項つづく

Expanded Barro Regression in Studying Convergence Problem,
American Journal of Operations Research Vol.4 No.5(2014),
Article ID:49676,10 pages, 12 September 2014,

【健康トレッキング食事編①:ごま豆乳仕立てのDHA】



ちょっと、不整脈・鬱症・物忘れが気になるので、急遽健康食品で
ニッスイの豆乳を選択試飲することに。DHA・EPAは鰯などの青魚に
多く含まれる成分で、認知機能の一部である記憶力維持に影響を及
ぼすと報告されてる。また、DHA・EPAを4週間、1日あたり400
mg以上摂取することにより認知機能(記憶力を維持されていること
がわかっている。さらに、「いわしと豆腐のハンバーグ」(下図)
をランチ(即席麺等)のお供にする。





 


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