9.子 罕 しかん
ことば------------------------------------------------------
「子、川上に在りて曰く、逝く者はかくのごときか。昼夜を舎かず」
(16)
「われいまだ徳を好むこと色を好むがごとくなる者を見ず」(17)
「譬えば山をつくるがごとし。いまだ一簣を成さざるも、止むはわ
が止ひなり」(18)
「後生畏るべし。いずくんぞ来賓の今にしかざるを知らんや」(22)
「三軍も帥を奪うべきなり。匹夫も志を奪うべからず」(25)
-----------------------------------------------------------
12 あるとき子貢(しこう)が謎をかけた。
「かりに宝玉が手元にあるとしたら、先生はこれを箱におさめてお
きますか。それとも眼の利く商人をみつけてお売りになりますか」
孔子は即座に答えた。
「むろん宝の持ち腐れはいやだね。わたしは眼の利く買手を持って
いるところだ」
子貢曰、有美玉於斯、韜匱而藏諸、求善賈而沽諸、子曰、沽之哉、
沽之哉、我待賈者也。
Zi Gong asked,"If you have a precious stone, will you keep
it in a box or sell it to a good customer?" Confucius replied,
"I'll sell it. I'll sell it. I've been waiting for a customer."
ソーシャルキャピタル論⑦
豊かで持続可能な地域社会をつくる。投資が「効く」地域と「効か
ない」地域は何が違うのか? 親の「つながる力」は子どもに継承さ
れるのか? 地域の信頼関係や互酬性、ネットワークがもたらす経済
効果を定量的に測定、次世代へ継承し、地域社会の担い手を育成す
るための方途を提案する。
キーワード:ソーシャル・キャピタル、信頼、規範、経済成長
一旦この論考----『ソーシャル・キャピタルは地域の経済成長を高
めるか-都道府県 データによる実証分析-』,05年12月 国土
交通省国土交通政策 研究所 特特別研究員 要藤正任---- は、今夜
で終わる。ソーシャル・キャピタルとは、平たく言えば「社会関係
資本」と訳され、このソーシャル・キャピタルがいろいろなプラス
の効果を持ち注目されてきた。ところで、どの水準で見るのかをは
っきりさせないと混乱が生じるので、①個人レベル、②地域社会レ
ベル、③国(政府)レベルの3つので考えられている。特に、②の
地域社会レベルでは、ソーシャル・キャピタルは防犯や災害復旧に
役立ち、自治会や町内会の活発な地域や住民の間の関係が良好な地
域では、役員による防犯見回りや住民同士の防犯活動により、犯罪
を防ぐことができ、またソーシャル・キャピタルの豊かな地域は、
そうでない地域よりも大災害からの復旧が速いことが報告されてい
る。人間関係が良好な地域では、日ごろから住民間のコミュニケー
ションが活発なので、復旧に関するさまざまな問題について話し合
ってそれらを解決することができるものとして着実に、「社会関係
資本」が質量とも伸展している(ちょっと古いが下図参考)。
「社会関係資本」という体系----「地域社会学的戦略思考」が「デ
ジタル革命(渦論)」の産業革命初期の冷戦期の軍事戦略(電子工
学的危機分散技術)が生み出された「インターネット」、「ゲーム
理論」、「理数統計解析学」と融合----は、未体験領域(「引き寄
せられる混沌論」)の一社会現象形態である「超少子高齢社会」の
最先端を走る日本に翻訳され分析評価され、特に「地域社会」への
適用が求められている。考えてみると「無尽(頼母子)講」「氏神」
「産土」「えびす講」など相互扶助様態があり、地域の「世話役」
や婚姻の「仲人役」などの当時のNPO活動は盛んに行われたこと
であり、なにも改めて「地域社会」の経済力への寄与度を計量をす
ることないじゃん。と思わないことはないが、「グローバリズム的
金融資本」の"新自由主義的物差し"でネグレット(棄却)される対
象の再評価(実証解析)することの「価値」はあると考える。
ソーシャル・キャピタルが生み出す不平等
ソーシャル・キャピタルは人々の間で同じように存在しているわけ
でないが、ソーシャル・キャピタルを多く持っている人もいれば、
あまりない人もいる。このようにソーシャル・キャピタルが人々の
間で偏って存在していること自体は問題でなく、ソーシャル・キャ
ピタルが人々の健康や幸福感、出世に影響を与えるとしたら、人々
の間に不平等が生じる。ソーシャル・キャピタルの豊かな人は健康
で、幸福を感じていて、出世する傾向がある一方、ソーシャル・キ
ャピタルの乏しい人はそのような望ましい状態にないだろう。ソー
シャル・キャピタルが社会的不平等を生み出す。ソーシャル・キャ
ピタルの乏しい人がソーシャル・キャピタルを獲得できれば、問題
は解決するが、ソーシャル・キャピタルの基本は人間関係なので、
自分が他の人と関係を結びたいと思っても、相手にその気がなけれ
ば関係は成立しない。友人関係や恋人関係を思い浮かべれば理解し
やすい。このように、ソーシャル・キャピタルは人と人の間に存在
しているので、人が「作りたい」と思っても自由に作ることができ
ない。ここに、ソーシャル・キャピタルを作り出すことの難しさが
あることに留意しつつ、これは一寸、哲学的ではあるが、「社会関
係資本」が「人間の尊厳」(実践理性)を源泉として成立するのだ
と<仮構>し、以降、事例研究と論考を継続、時宜をえて掲載する。
この項了
人口減少時代のまちづくり㉙
第14章 マンション問題 何がおこっているのか
54節 タワーマンションの抱える問題とは
【要点】
A タワーマンションとは「高さ60M以上、20階以上の居住用
超高層建築」と定義されている。
B 大規模修繕に伴う追加費用を嫌がり、所有者が退去、住民減少
によって修繕費が捻出できなくなるかも。
C 修繕が実施できなければ資産価値が下がり、資産に余裕のない
人だけがしがみつき、一気にスラム化する。
1 タワーマンションが増え続けている
2000年代初めから都心や駅に近い便利な場所にタワーマンショ
ンと言われる超高層マンションが建ち始めた。タワーマンションは、
厳密な定義はないが、建設業や不動産業界では、「高さ60M以上、
20階以上の居住用超高層建築」とされている。一般に、高層に行
くほど分譲価格が高いのが通例。これは、タワーマンションの魅力
が駅から近いことと合わせて、眺望の良さが売り物になっているこ
とに対応する。そして、住民となることのステータスが高いという
イメージも挙げられている。タワーマンションの正確な戸数は、計
画や建設中が多いので確定できないが、全国で1000棟以上、3
0万戸程と推定され、建設が始まったのが最近で、中古マンション
の老朽化で問題となっている耐震設計基準が今の基準に適応してい
ないという問題はないが、一般のマンションで危惧されている老朽
化問題が、近い将来に確実にやってくることは間違いない。
2 タワーマンション独自の問題点が指摘されている
タワーマンション独自の問題点について、現在、専門家を中心に周
期の長い巨大地震との共振の可能性など構造上の問題、日常生活の
揚が高い場所にあることの住民の健康や心理に与える影響、エレベ
ーターが停止した時の混乱等の研究が始まっている。それらに加え
て、タワーマンションが抱える問題で注目を集めているのは、一般
のマンションと異なる2つの事情があり、一つは、所有者の問題。
多くの都心のタワーマンションには、所有者が自ら住むために購入
するマンションに比べて、購入者の目的が多様(相続税対策、外国
人や個人投資家、企業など)で、完成した時に入居者がいない住戸
がある。また、このような居住していない所有者を含んだ管理組合
の運営は複雑になる。特に、もう一つの問題である大規模修繕など
を実施する時には、障害になると推測されている。
3 大規模修繕が難しい、
資産に余裕のない人だけが残ってスラム化する、などが危惧されて
いるタワーマンションの最大の課題は大規模修繕です。10数年ご
とに実施する必要のある大規模修繕がスムーズにできるかというこ
とが、専門家や不動産関係企業の回で議論されている。一般的に中
高層マンションの大規模修繕工事費は、平均して、上戸当たり10
0万円程と言われているが、15年に大規模修繕を実施した55階
建て65万戸のタワーマンションでは、工期2年、1戸当たり18
5万円かかり、2回目、3回目の大規模修繕は費用が幾らになるか
は予測がつかないという報道が、テレビで話題となった。①大規模
修繕に伴う追加費用を嫌がり、所有者が退去、住民減少によって修
繕費が捻出できなくなる、②修繕が実施できなければ資産価値が下
がり、資産に余裕のある入居者や外国人投資家、法入居人分は売却
できるが、資産に余裕のない人だけがしがみつき、一気にスラム化
する、と言うような、最悪のシナリオも視野に入れた関係者、購入
者の真剣な対策が求められている。
キーワード 展望の良さ/高所での生活の問題/大規模修繕が難
しい
55 共同住宅(マンション)の老朽化で何か問題になるのか
【要点】
A 建設後40年以上のマンションは、10年後には 151万戸、
20年後には296万戸になる。
B 空室率が高くなリスラム化する傾向がある。
C 管理費や修繕積立金を滞納する傾向が高くなる。
1 老朽化したマンションでは居住者の高齢化や空室の増加が進ん
でいる
空き家問題が大きく取り上げられてきたが、その中に、近い将来深
刻になってくることが予想されるのがマンション(特に分譲)の老
朽化だ。建物が劣化してくるだけではなく、それに件って、居住者
の高齢化や空室の増加が進み始めている。住みたい人が次々に表れ
ることが期待される立地条件の良いマンションであれば、建て替え
たり、再開発する可能性があるが、それ以外のマンションはそのま
ま放置される可能性が高いと予想されている。日本では、1950
年代半ば頃から分譲マンションが登場し、現在、全国に約644万
戸(2018年末)あり、往んでいる人は約1510万人(201
4年国勢調査の1世帯当たり2・33人で計算)に達す。
2 建設後40年以上のマンションが問題になる
以前から、中古マンションの売買取引の中で、地震に対する耐震設
計との関係で、いつ建設されたかということが注目されてきた。全
国のマンションの内、1981年6月に耐震設計の新しい基準(そ
れまで基準とされていた旧耐震基準が震度5弱で倒壊しない基準で
あったものが震度6強から7弱程度でも倒壊しない構造基準になる
)に変わる前のマンションが約 106万戸(全休の17%)ある。
更に、このようなマンションを中心とした老朽化が激しくなるとさ
れている建設後40年以上のマンションは、このままでは、10年
後には151万戸、20年後には296万戸になるという予測もさ
れている。マンションの老朽化問題は、往んでいる人(区分所有者
)の高齢化が進んで行くことにより問題を深刻化させている。新し
い耐震基準以前に建設されたマンションでは、住んでいる人の50
%が60才以上と言う統計もあり、住民の高齢化の進行は、住民の
新陳代謝が進士ないことにも結びつき、老朽化したマンション程、
空室率が高くなる傾向になっている (1970年以前に建設された
マンションでは15%以上の空室がある マンションが増えている。
3 どのように対応したら良いかと言うことを具体的に議論する必
要がある
また、マンションを維持管理して行くために必要な管理費や、修繕
積立金を滞納する住戸が古いマンション程高くなっている。古いマ
ンションには管理組合が無い所もあり、あったとしても住民が高齢
化して理事の成り手が無いというような状況が進み、スラム化する
マンションも出て来た。望ましい対応としては、建て替えることが
あげられるが、敷地に対して建てられる床面積(容積率)に余裕が
あって、現在よりも多くの部屋を作り、それを売ることにより、少
しでも建設費の負担を少なくするということが必須条件になる。し
かし、増加した部屋が期待した価格で売れるかどうかは、人口縮少
社会では、よほど立地条件が良い場所でないと難しくなる。また、
そもそも、容積率の余裕がない所では、建設を引き受ける会社はな
い。更に、具体的に計画を進めるために、住民(区分所有者)の5
分の4の賛成を得るというのも、実際には大変難しいのが現状です。
そして現在、確実に進行する事態に対して、フランスで行われたス
ラム化したマンションを行政が買い取って取り壊すというような選
択肢も含めて、待ったなしの具体的な議論が、急速に進んでいる。
キーワード 老朽化と居住者の高齢化の同時進行/難しい建て替え
➲ このように不動産を扱う場合、販売の時点でその商品の「ライ
フサイクル評価」(vs. 事前評価・事後評価)は、「地球環境経済
学的」が欠かせない時代ではないだろうか。
iPSで軟骨を大量生産できる社会へ
iPSで軟骨、膝移植の臨床研究申請
11月26日、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)からできた
軟骨組織を膝関節の軟骨が損傷した患者に移植する臨床研究につい
て、京都大が厚生労働省に実施承認を求めて申請いたと公表された。
拒絶反応を引き起こしにくいドナーから作ったiPS細胞のストッ
ク(備蓄)を用い、腫瘍化の有無など安全性を評価する(iPSで
軟骨、膝移植の臨床研究申請 京大、患者4人に, 京都新聞, 2019.
11.27)。
それによると、対象となる「膝関節軟骨損傷」の患者は関節にある
軟骨が損なわれた状態で進行すると日常生活に支障が出る。患者自
身の軟骨組織を別の部位から移植するなどの治療法があるが、効果
が限定的といった課題があるという。iPS細胞を使うことで高品
質な軟骨組織を移植し、治療効果を上げる狙いがある。今回の臨床
研究では、移植は片膝のみに行い、軟骨の損傷面積が一定範囲内で
年齢が20~70歳などの基準に合致した患者4人を対象とする。
手術は関節鏡を用い、iPS細胞から作った軟骨組織を移植する。
術後は6週間のリハビリを行い、1年間の経過観察をし軟骨の再生
や修復を評価する。来年以降に患者の登録を開始する。
また、iPS細胞から作った軟骨組織の移植については、京大iP
S細胞研究所の妻木範行教授らが臨床応用を目指してきた。iPS
細胞を使った再生医療の臨床研究や治験は、理化学研究所が目の病
気「加齢黄斑変性」、京大が「パーキンソン病」や血液の難病「再
生不良性貧血」で実施。大阪大などでも行われている。
【ポストエネルギー革命序論101】
幻覚剤成分がうつ病の画期的治療薬に
11月22日、うつ病や不安障害を中心とした精神医療について研
究しているウソナ研究所が、シロシビンを使った大うつ病性障害
(MDD)の治療薬がアメリカ食品医薬品局(FDA) により画期的治療薬
の指定を受けたことを公表。シロシビンとは、マジックマッシュル
ームに含まれる幻覚剤の成分で、過去の研究によりうつ病を改善さ
せることが示唆されていることから、従来の医薬品では十分な効果
が認められない難治性うつ病(TRD)の治療薬として限定的に認めら
れていた。
シロシビン
今回新たに大うつ病性障害(MDD)に対する臨床試験にシロシビンを用
いることを承認された。MDDとは、抑うつ気分、興味の減退、認知機
能の障害、睡眠障害、食欲障害など、いわゆるうつ病として広く知
られている症状を特徴とする精神疾患で、6人に1人が生涯に1度
は経験するといわれている。患者数もTRDより多く、アメリカ国内
のTRD患者が推定500万人なのに対し、MDD患者は約1700万人
だと見積もられている。
世界最軽量級の太陽光パワコン
11月7日、富士電機は自家消費用途に適した世界最軽量という太
陽光発電用パワーコンディショナー「PIS-50/500-J(DC1100V/50k
VA)」の販売開始を発表。自家消費用途の太陽光発電では、工場な
どの建屋の屋上に発電設備が設置されることが多く、搬入や設置作
業を容易にするためパワーコンディショナー(PCS)などの付帯設備
の軽量化ニーズが高まっている。従来、同社製の集中式大容量PCSは、
筐体に鉄材を用いていたが、新製品ではアルミ材を使用し、50〜100
kVAの容量帯では世界最軽量(同社)という58kgを実現。さらに、ア
ルミ筐体に塗装を施すことにより重塩害地域での設置を可能とし、
設置個所の多様化に対応している。寸法は、930×260×540mm(幅、
奥行き、高さ)。
これまで搭載されるパワー半導体の損失に伴い生じる熱の冷却には、
ファンを用いた強制風冷式が一般的であった。今回、自社製SiCパワ
ー半導体の搭載により業界最高レベルの変換効率99%を実現。さ
らにパワー半導体を分散最適配置することで、自然空冷(ファンレ
ス)を可能とした。これにより、10年間の長期メンテナンスフリ
ーを実現した。同社では、国内ならびに、税制優遇制度を背景に自
家消費用途の太陽光発電の導入が進む東南アジアでの受注拡大を目
指す。
伐採から施工まで地域完結の3階建て木造庁舎
小林市は宮崎県の南西部に位置する。新しい市役所は、“地域完結
型”の木造・木質庁舎。市有林を利用し、地域内で製材・プレカッ
ト。施工も市内の建設会社が担当した。一連の生産プロセスを可能
にしたのは、シンプルさを追求した構造設計。
組子細工のように細かく木材を組んだパターンが、渡り廊下を挟ん
で長さ60mにわたり建物のファサードを飾っている。8000本を
超える地元の木材を使って建てられた宮崎県小林市の新しい市役所。
17年夏の完成後、旧庁舎の解体と外構の整備を経て、18年3月
にグランドオープンを迎えている。建物建物は、地上4階建ての本
館(行政棟)と、地上3階建ての東館(議会棟)から成る。本館は、
柱が鉄骨鉄筋コンクリート造、梁が鉄骨造の建物を木質空間に仕上
げたもの。東館は、延べ面積2100m2弱の建物を在来工法の木造
製。2棟の内外には、木を身近に感じられるような空間が広がる。
東側の道路に面した2棟の1階部分には、木質のピロティ空間が続く
〔写真1、2〕。そのピロティが一部にまわり込む本館南西側の外壁
は、採光・通気用のガラス面と、西日よけの木製ルーバーが交互に
雁行して並ぶ〔写真3〕。
建設に当たり、小林市は2つの目標を設定した。①できるだけ多く
の地元の木材を、地元で加工して使うこと。②地元の建設会社が施
工できる木造とすること。この目標を達成するには、木材は一般の
製材を使い、在来工法でつくれる木造庁舎を設計する必要がある。
東館は、小林市から発信できる独自性の高い木造を追求し、製材に
よる在来工法で成立させた。一方、より規模が大きい本館は耐火構
造が求められ、製材による在来木造は困難なので、非木造として木
質化する。東館の2階にある議場の大空間は、製材を用いた張弦梁
で12.74mのスパンを飛ばす。建物の外観に現れた組子のような木組
みの壁も、製材による構造壁〔写真7、8〕。従来、この規模の木造
には大断面集成材を使ってきが、製材で成立させた前例がないとさ
れる。東館は3階建ての事務所建築なので、「準耐火建築物」とす
るのが一般的。その場合、燃えしろ設計や、主要構造部の耐火被覆
が求められるが、地元の製材を使った在来工法というこの建物の特
徴を十分に出すことができない。2つの条件を満たすことで、耐火
要件の緩い「その他建築物」とした。条件は、①1000m2以内ごとに
防火壁で区画すること(建築基準法26条)。②最高高さ13m以下、
かつ軒高9m以下の建物とする。平面図を見ると、防火壁は東館の
プランを折れ曲がりながら横断。これは、防火壁で二分する双方の
容積対象面積が1000m2以下となるラインを探ったため。さらに、こ
の防火壁は、壁倍率10倍の耐力壁でもある。東館は1つの建物だ
が、構造上も防耐火上も、自立する2つの3階建て在来木造を一体
化する。
新庁舎で使った木材の量は、構造材が365m3、内装材が320m3。工事
発注前に小林市が分離発注で市有林から調達。プレカットは隣の宮
崎市で行ったが、建築工事も製材も市内の会社による地域完結型の
事業が際だつ事業である。