6.雍 也 ようや
ことば------------------------------------------------------------------
力足らざる者は、中道にして廃す。いまなんじは画(かぎ)れり」(12)
「質、文に勝てば野。文、質に勝てば史。文質彬彬(びんびん)として、
然る後 に君子」(18)
「人の生くるや直し。これなくして生くるは、幸いにして免るるなり」(19)
「これを知る者はこれを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ者
にしかず」(20)
「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ」(23)
-------------------------------------------------------------------------
3 哀公が「お弟子たちのうちで、しんから勉強好きなのはだれですか」
とたずねたのに対して、孔子は言下に答えた。
「顔回です。かれはひたすら学ぶことを心がけていました。腹立ちまぎれ
に人にやつ当たりすること はけっしてなかったし、同じ過ちを二度繰り
返すこともありませんでした。かわいそうに短命な男で、今はもう故人で
す。かれ以外にほんとうに勉強好きな人間がいるとは思えません」
★顔回の死は、三十二歳(とすれば孔子六十二歳)とも、四十一歳(孔子
七十一歳)ともいうが.
哀公問曰、弟子孰爲好學、孔子對曰、有顔囘、好學、不遷怒、不貳過、不
幸短命死矣、今也則亡、未聞好學者也。
Marquis Ai asked, "In your pupils, who likes learning?"
Confucius replied, "There was Yan Hui who learned eagerly. He never
vented his anger on the other people. He never made the same mistake
again. But unfortunately, he passed away in his youth. No one likes
learning truly except him.
【ポストエネルギー革命序論20】
前版(Rev.04-16-2019)からの 更新点は、6接合集光 47.1%(NREL)、Si(HIT):
26.6→26.7% (Kaneka)、CIGS: 22.9→23.4% (Solar Frontier) 、有機薄
膜、16.5%(SCUT-CSU)
図1
二次元ハロゲン化物ペロブスカイトにおける異なる導電層エッジ状態
7月17日、ペンシルベニア州立大学の研究グループは、金属のような導電性
のエッジと絶縁性のコアを持つ新しい二次元ペロブスカイト材料の発見えを公
表。それによると、電流が材料の中心ではなく端の周囲を流れることは非常に
珍し(※局所逆転現象)太陽電池構造設計に大きな影響をもたらす。2Dペロ
ブスカイト材料は、薄く交互に積層された有機層/無機層から構成。有機層は、
ハロゲン化鉛結晶の無機層を防湿(三次元材料の劣化保護)。この層状構造は、
垂直方向および平行方向に沿って導電率が大変動をもたらす。走査およびマッ
ピング技術を駆使し2D単結晶先端部で異常に大きい自由電荷キャリア密度を
形成することを見いだす。
このことで、デバイス内に充電経路が提供されることで、太陽電池およびLED
の性能向上できる。ナノ電子工学の新しい一次元電気伝導の技術開発の道とな
る。二次元ペロブスカイト結晶は端部に強い電流を形成しており、新しい摩擦
電気ナノ発電デバイスに適応できる。このようなナノジェネレーターは、電話
などの機器充電できるウェアラブル技術に応用できる。
【概要】
天然の「多重量子井戸」(MQW)構造を有する二次元(2D)ハロゲン化鉛
ペロブスカイトは、オプトエレクトロニクス用途に大きな可能性を示している。
継続的な進歩は、特に層の端部におけるこれらの2Dヘテロ層における電荷お
よびエネルギーの流れについての基本的な理解を必要とする。ここでは、(C4
H9NH3)2PbI 2Dペロブスカイト単結晶の絶縁バルクテラス領域間の層エッジ
での明確な導電性の特徴を報告。
2Dの縁は、〜10^21cm^-3という非常に大きいキャリア密度を示す。様々なマ
ッピング技術を使用することで、層端部の電子が表面帯電効果と無関係である
ことを見出した。むしろ、それらは端部における電子構造の局所的な不確定で
ないエネルギー状態と関連する。2Dペロブスカイトの層端における金属様導
電性特徴のこの観察は、次世代オプトエレクトロニクスの性能を向上させ、革
新的なナノエレクトロニクス開発の異なる次元を提供する。
二次元ハロゲン化物ペロブスカイトヘテロ構造は、それらのより強い光安定性
および化学的安定性、光物理学的調整可能性、光吸収、および発光特性のため
に、非常に大きな興奮を生み出してきた。2Dハロゲン化物ペロブスカイトは、
室温で優れた電子特性を示し、光検出器からレーザー、エレクトロルミネッセ
ンス、スピントロニクスへと応用を広げる機会を提供(1-4)。2Dハロゲン
化物ペロブスカイトを組み込んだ太陽電池に関する結果は、15%を超えるま
ともな電力変換効率(5)および1年間の長期安定性を示した。(6)安定性を
維持しながらさらなる効率の向上には、大きな励起子結合エネルギーの低減と
2Dハロゲン化物ペロブスカイトにおける光物理学的プロセスの包括的な理解
が必要となる。
有機障壁面の間に挟まれたコーナー共有[MX6]金属ハロゲン化物ネットワー
クからなる。変数nは、2つの有機バリア層の間の[MX6]ネットワーク層の積
層数を示す。n=1の極端な場合、金属ハロゲン化物ネットワークの厚さはキャ
リアのドブロイ波長のスケールまで減少し、電荷挙動に強い量子閉じ込め効果
を与え、典型的な多重量子井戸(MQW)構造を表す。ハロゲン化物ペロブスカイ
ト型MQW(pero-MQW)では、空間閉じ込めによってボーア半径が半分になり、励
起子の結合エネルギーが薄いQWと深いQWの4倍になること、および無機と有機
の間の誘電率が大きく異なることが広く知られている。層が励起子結合エネル
ギーをはるかに大きくする。(8)光起電力プロセスの間、大きな結合エネルギ
ーは、自由キャリアへの電荷の解離を減少させ、それによって太陽電池のジェ
ミネート再結合損失を増加させる。理想的な2D電子ガスと同様に、電子は面
内方向に自由に移動可能であるが面外方向には厳密に閉じ込められているので、
pero-MQWにおける電荷輸送は、QW平面内に高度に閉じ込められると予想。しか
し、太陽電池のpero-MQWの端部で、または巨視的にはpero-MQW薄膜の界面また
は表面で、2次元電子ガスから3次元電子への遷移中の電荷担体の振る舞い、
および生来の理解境界におけるキャリア再結合、界面散乱、および輸送機構は、
依然として挑戦的である。
pero-MQWフィルムのバルク特性を調べるために、さまざまな巨視的手法が使用
されてきました。原則的に、2Dpero-MQWは、ダングリングボンドのない自然な
面外自己終端を有するので、百%のルミネセンス量子収率が提供されると予想
される。しかし、pero-MQWバルク結晶は実験的に低い量子収率(9–11)を
示す、これは量子損失につながる不明確な欠落部分を示す。より大きなQW(C4
H9NH3)2(NH3)n-1PbI3n+1、n=3およびn=4]を有するほぼ完全に垂直に配向
したバルクペロMQWは、面内電荷キャリア移動度を示すことを報告。(12)CH3N
H3PbI3と同等(n =∞)。非接触時間分解マイクロ波伝導率測定は、矛盾して
同じ材料のはるかに低いキャリア寿命を示唆する(13)。準二次元ペロブスカ
イトの最近の研究は励起子のスケーリング則を示唆し(14、15)、二次元/三
次元混合ハロゲン化物ペロブスカイトに基づく太陽電池は同時に改善された電
力変換効率と安定性の成功を示した(12、16–18)。しかし 3Dペロブスカイ
トはエネルギー的に低い伝導帯を持つため、GaAs/AlxGa1-xAs超格子(19)の
問題と同様に、2D/3Dヘテロ界面での空乏および蓄積電荷キャリアに関す
る基本的な疑問が生じる。そして、2D/3D混合相において電子受容体のよ
うに作用し得る。全体として、矛盾するさまざまな報告の結果および重要な境
界関連特性に関する疑問は、エッジ効果を考慮せずにバルク物理学のみを考慮
することにより完全に説明できない。この研究の背後にある動機は、層のエッ
ジ状態(ES)の性質と機能性を調査にある。
従来の無機-MQW中のESは並外れた性質を有する。例えば、HgTe QWでは、非
自明なESによって、非磁性不純物からの散乱の影響を受けない無散逸の1D
電気伝導が可能となる(2D)。さらに、特にMQW系では、Majoranaフェル
ミオンの存在により、量子スピンホールエッジでの超伝導が可能となる(21)。
pero-MQWについては、Blancon et al。光起電変換のための励起子解離を十分
に加速できる準2DペロMQW[(C4H9NH3)2(CH3NH3)n-1PbI3n+1、n≧3]の
層端における自由キャリアを報告した(22)。しかし、2D pero-MQWの場合、
ES層、特に電気的特性に関する基礎的な調査が不足。ここでは 導電性原子間
力顕微鏡(c-AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、2D pero-MQW単結
晶、すなわち(C4H9NH3)2PbI4(n = 1)中の異なる導電層ESの直接観察を報
告する)。二次電子および後方散乱電子検出器、ならびに共焦点ラマンおよ
びフォトルミネッセンス(PL)マッピング技術を搭載。c-AFMは、ナノ領域
とそれに対応する電子特性を視覚化に広く使用される手法。表面化学領域は
絶縁されたままで、2D pero-MQWの地形ES輪郭に沿い、超導電特性をともな
う。ESはバルク2D pero-MQWのものと
比較してより低いエネルギーレベルで自由キャリアによって占められており、
ES領域における計算された自由キャリア密度は10^21cm^-3のオーダで大き
な値を示し、れに近い。エッジ高さ、スキャン条件(スキャン方向、スキャ
ン速度、スキャン時間)、照度、またはサンプルバイアスは不変です。 2D
ハロゲン化物pero-MQWのESの発見は、オプトエレクトロニクス用途の電荷輸
送向上するための新しい操作方法論およびナノ電子の1D電気伝導の革新的機
会を提供する。
図2
【結果】 隣接する断熱テラス間の層端電流の直接観察
(C4H9NH3)2PbI4 pero-MQWにおける新しいESを調べるために、我々は以前に
報告された方法に従って水 - 空気界面から単結晶薄膜を合成し(23)、c-AF
M測定の前にいくつかの最上層を剥離。上図1Aは(C4H9NH3)2PPbI42Dpero-
MQW構造を概略的に説明し、ここで.6.3ÅのQW厚さ、7.6Åの障壁厚さ、
および結晶方位は、X線回折(XRD)データから計算される(図S1A)。
図1Bは、面外電流を検出するためのc-AFM設定とpero-MQWのトポグラフィ情
報を示す。サンプルを銀の基材上に置き、上部のプラチナ被覆チップと接触
させる。暗所、室温で2Hzで走査した後、我々は、バルクテラス領域にお
いて絶縁特徴を見いだしたが、層の縁の輪郭に沿って予想外の電流を見いだ
す。地形図(図1C)に示すように、2Dpero-MQWは、基板に平行な原子的に
平坦な大きなQW面と、面外(z軸)方向に沿った鋭い層エッジとを有する
テラスフィーチャを示す。エッジ高さの差(Δz)は、QW層の数に応じて
ナノメートルからマイクロメートルの範囲である。電流マップ(図1D)から、
バルクテラス領域の電流は高度に関係なく無視できますが、鋭い層の端には
連続的な電流が存在します。エッジの高さの差が大きいほど、検出される電
流は高くなります。図1Eは、図1に示すように、x軸方向の縦線に沿った
zプロファイルを示す。 S1(CおよびD)。 Zプロファイルの一次導関
数を取り、それを対応する現在のプロファイルと比較することによって、ピ
ーク位置に関して顕著な一貫性(図1F)があることが分った。その観察は、
検出された電流が鋭い層の縁部にのみ存在し、それがピークの下の領域に結
び付くときの縁部の高さの差に特に関係することを証明。一方、バルクテラ
ス領域の電流はゼロのまにあり、絶縁特性を示唆。これは、MQW内に周期
的に挿入される有機絶縁層に起因すると考える、面外コンダクタンスは無視
できる。pero-MQWの導電性の鋭い層のエッジは、ES層に存在する自由電荷キ
ャリアに関連する。
この知見は、第四次産業(図画像処理産業:一般的には"見える化"と呼称さ
れている)技術で実証されたもので、"ペロブスカイト風"と表現されてもい
る領域である。これが、「発電するタイル事業」に繋がれば、大変面白い。
今年は高価なサンマの塩焼きとなりそうだ
【続・引き寄せられる混沌Ⅸ:7040問題を考える】
第七章 「共同子育て社会」という成長路線
7-2 子育て支援を中心とする社会保障で経済成長を
7-2-1 内需主導の成長戦略と少子化対策
すでに述べたように、これからの日本経済の発展にとって重要なことは、「
内需主導」であり、人口減少への対策です。この両方が、「子育て支援を中
心とする社会保障の充実」に間わっています。これまで、内需といえばどうし
ても公共事業に焦点があたっていました。これはこれで間違いではありません。
主流派経済学からは、公共事業はムダの温床として真っ先に削減の対象にされ
てきましたが、藤井聡氏が 「公共事業が日本を牧う」(文巻新書、2010
年)で明らかにしているよ うに、これも間違いです。2012年の笹子トン
ネルの事故で誰もが気づ かされましたが、日本の道路、橋梁、トンネルなど
の老朽化は著しく、早急な改修が求められています。それは決してムダな事業
ではありません。ただし現在は、東日本大震災の復興事業に加えて2020年
の東京オリンピックに向けた建設工事が着手されつつあり、建設業界の人手不
足や資材不足が取りざたされるようになっていますから、今ここでさらに公共
事業の拡大を強調して唱える必要はないでしょう。それに対して、社会保障に
関しては依然として「効率化」の名のもとに、縮小へのさまざまな圧力がかか
っています。幸いにして子育て支援に関しては、それまでの政策が改められて、
待機児童対策や育児休業制度の充実など、少しずつ改善の方向へと進んでいる
ように思われます。しかし、年金、医療、介護などに関しては、経費削減に焦
点をあてた政策ばかりが検討されています。これは、日本経済にとっては完全
にマイナス要因で、せっかくの子育て支援の拡大による成長の芽を摘んでしま
いかねないでしょう。内需拡大を基軸とする日本経済の成長にとって、人口の
減少をできるだけ食い止めることは最大の戦略目標になります。人口の増加ま
で展望するのは現時点では無理ですが、減少スピードを大幅に遅らせることは
できます。たとえば、現在の人口推計では、2064年には8245万人へと、
今日から見て約4000万人、割合にして3分の1の人口減が見込まれていま
すが、もしもこの趨勢を押しとどめて、何とか1他人程度を保つことができれ
ば、減少幅は半分になります。すなわち、人口減少による経済縮小圧力が50
バーセント取り除かれることになるのです。しかも、この人口減少の縮小は、
新しく生まれてくる乳幼児や子どもたち、そして若年層のレベルではむしろ「
人口増」を意味します。したがって、こうした世代を対象にした商品やサービ
スを手がける事業にとっては、明らかな成長の基盤となるわけです。
7-2-2 子育て支援を妨げてきたもの
ここには、第3章で述べた「生活革新型の経済成長」の可能性が開けて いま
す。これまで長い間、日本では政府の積極的な子育て支援はありませんでした,
たとえば保育政策では、公的な保育支援は「保育に欠ける」と認定されるきわ
めて限定された児童だけにしか提供されてきませんでした。この背景にあった
のは、「育児は家庭で行うべきもの」という根強い家族主義です。この家族主
義は、日本の伝統的な「美風」として讃えられ、高齢護などを含む福祉政策全
般に対して「日本型福祉社会」をめざすべきだといった考え方の「道徳的な基
盤」を形成してきました。つまり、家族の成員はそれぞれが親密に助け合って
生きていくことが道徳的に望ましいことであり、日本社会は伝統的にそれを重
んじてきたのだから、福祉政策においてもこの伝統的な道徳的価値が重視され
るべきだ、という考えです。しかし、「家族はお互いに助け合うべきだ」とい
うことが重要な道徳的価値であることは間違いありませんが、そのことは決し
て「福祉政策の基盤に家族主義を置くべきだ」ということを意味することには
なりません。なぜなら、家族主義が政策に取り入れられる場合には、必ずや「
家族がどんな苦境に陥っていても、問題は家族で解決すべきであって、公的な
支援を期待してはならない」という「家族自助」論に帰結し、その結果として、
むしろ「家族成員がお互いに助け合う」ことができるための基盤を取り崩すこ
とになってしまうからです。日本型福祉社会諭は、家族の「自立性」を前提に
しています。家族に十分な資源があって、内部に生活の困難を抱える成員が生
じた場合にも、家族の人的および金銭的資源を用いて数うことができる、とい
う前提です。明らかにこの前提は一幻相-」です。圧倒的多数の一般の家族に
は、そうした「自助」を実践するだけの資源はありません。じつは、日本型福
祉社会諭の背景には、家族主義とは別のもう一つの「隠れた」前提がありまし
た。それは、1960年代から80年代まで盛んに注目されてしばしば讃えら
れた「日本的経営」です。終身雇用、年功序列、企業別組合などで待微づけら
れる日本的経営は、1970年代後半にはあたかも「日本の経済的躍進の原動
力」であるかのように見なされました。アメリカの社会学者エズラ・ヴオーゲ
ルの「ジャパンアズナンバーワン」が出だのが1979年です。この日本的経
営は、他方で「家族主義的経営」とも特微づけられてきたことから分かるよう
に、会社全体を一つの家族のように見なす性格を持っていました。それは言い
換えれば、従業員の家族を会社という大きな家の一部と見なし、会社は単に従
業員に対して、労働の対価としての給与を支払うだけではなく、従業員の家族
を含めて「面倒を見る」ということであったわけです。従業員の家族が利用で
きる「保養施設」、家族を含めた「会社運動会」などがそれを表しています。
むろん、扶養手当、住宅手当、住宅ローンの貸し出しなどもあります。つまり、
日本的経営というのは「会社単位での充実した社会福祉」を意味していたので
す。したがって、日本的経営の中にいる従業員は、政府からの公的支援に頼ら
なくても、会社内の福祉でサポートされていたのです。退職後の生活に関して
も、当時の大企業や役所を退職した人の年金給付額は非常に恵まれていて、い
わば本当に「終身雇用」として死ぬまで面倒を見てくれるかのようなしくみに
なっていたわけです。
─── 中 略 ───
7-2-3 「強い家族」思想からの脱却
このイデオロギーがようやく解体し始めるのは、2000年の介護保険制度の
導入からです。それは、もはや高齢者介護を「家族」だけで担うことがきわめ
て困難であることが、やっと政治家や官僚たちのレベルでも認識されたことを
表しています。一方、そのしばらく前から、日本的経営と専業主婦モデルも解
体し始めていました。デフレ不況の中で、大企業といえどもかつてのような手
厚い従業員福祉を維持することが困難になってきました。また、給与水準が低
迷し、男性でも非正規雇用の職しか見つからないようになると、かつてのよう
な「専業主婦」を謳歌できる人たちも限られてきます。政府のタテマエ的な「
男女雇用機会均等法」や「男女共同参画社会」の理念も多少は影響したかもし
れませんが、それよりも、人びとの生活の実態のレベルから、専業主婦モデル
は崩壊せざるをえなくなっていったのです。こうした社会変化こそが、今日、
「新しい生活文化」の創成を必要としている最大の理由です。もはや「家族主
義」という幻想に頼って日本人の生活を良くしていくことはできません。多く
の地域社会も疲弊しています。(中略) 今や、高度経済成長期に前提にされ
ていたような「強い家族」、核家族化していって夫婦と未婚の子どもだちか
らなる家族でもさまざまな問題を自分たちだけで解決していくことができると
いう想定から脱して、「家族は弱い存在なのだ」という認識から出発しなけれ
ばならないでしょう。弱い家族ではあるけれども、子育てや介護の第一義的な
責任は家族にかかってきます。家族に本当に「お互いの助け台い」を果たして
もらうためには、その責任の一部を軽減してあげなければなりません。そのた
めには、家族を社会全体が支えるという考えと仕組みとがどうしても必要なの
です。そうした仕組みは、それまでの日本的経営や専業主婦モデルを前提にし
た生活文化に置き換わる新しい生活文化を生み出すことになります。それによ
って新たな「成長」への道が聞かれてくることになると考えられるのです。
7-2-4 「共同子育て社会」という未来への投資
第4章の終わりの方で、積極的な子育て支援政策がめざすものとして、「共同
子育て社会」という未来構想を提示しました。それは、子育ての責任やコスト
を家庭だけに押しつけるのではなく、社会全体として、各家庭における子育て
を支援する仕組みが整っている社会です。現在しばしば報じられるような児童
虐待や育児放棄のような悲惨なできごとを完全になくすのは無理かもしれませ
んが、そうした社会では、徹底的に減少することが期待されます。そうした事
件は、各家庭が社会から孤立していることから起こることが多いので、
❶まず第一に、孤立をなくすの が重要なことです。
❷第二に、母子家庭を中心とする「子どもの貧困」という問題も大幅に改善さ
れるでしょう。子育てにかかる金銭的コストに対して、各家庭の所得状況など
に見合う積極的な公的支援が施されるからです。貧しいために進学できないと
か、病気の子どもに十分な医療を受けさせられないといったことも、ほとんど
なくなるでしょう。
❸第三に、共同子育て社会は当然のこととして、女性が「子育てのために働く
ことをあきらめなければならない」ようなことは起こらなくなります,むろん、
働くか働かないかは女性自身の選択です。働くことが強制されるわけではあり
ません。しかし、働きたいと思う人はそうすることができる社会です。以上の
3点け、必ずしも狭い意味での「少子化対策」ではありません。根本的には、
「それぞれの個人や家庭が抱えている問題を軽減し、それぞれの人がより良い
生活を営むことができる」ことを第一義的に考えるものです。(中略)
❹第四に、おそらく「少子化」という問題に対しても少なくない効果をもたら
すことでしょう。子育てのためのさまざまな障害が軽減されますから、子ども
を持つことや、それを視野に入れた結婚へのハードルが低くなります,その結
果として、出生率が上昇することが期待できます。
むろん、必ずそうなるとは確言できませんが、少なくとも人口減少という問題
に対して最も有効な対策であることは間違いありません。こうした見方に対し
ては、何をやっても効果がないとか、そもそもどんなに人口が減少しても一人
当たりの豊かさが向上していけば良いと、子育て支援に消極的な意見を主張す
る人がいますが、こうした考えは社会学的にも、また経済学的にも間違ってい
ます。まず社会学的には、「今日の社会では、かつてのような家族や地域社会
からなる小さな共同体の自立性は大幅に失われており、子育ての責任をそれら
だけに委ねることは、すでに実態としてもできていないし、まして理念的にも
正しくない」といえます。子どもの貧困や育児放棄、虐待などの悲惨な事件の
ことを考えても、子育ては、国民社会レベルでの共同の責任だと考えることが、
現代社会の公共的な価値に適っているのです。経済学的には、「成長は《投資》
によって生まれる」という事実が決定的に重要です。理屈の上では、「一人当
たりの豊かさ」が確保できれば問題はないといえますが、その豊かさを確保す
るためには「投資」が必要で、とくに民間の投資は「将来の需要期待」に依存
しているのです。将来の需要が期待できないところには投資は生まれません。
したがって、成長もありません。いくら「一人当たりの豊かさ」さえ確保でき
ればいいと考えても、人口規模が大幅に減少していくことが見込まれるところ
には、成長を牽引する投資意欲が乏しいので、結局「一人当たりの豊かさ」そ
のものの向上はもとより、維持することすら不可能になるのです,このことは、
今日の地方経済の困難な状況を見れば明白なことだといえるでしょう。成長戦
略として見た場合、こうした共同子育て社会の実現は、価値観、ライフスタイ
ル、キャリアパターンなど、人びとの生活文化の大規模な革新を伴うというこ
とが重要です。そこには、出産と育児の面だけではなく、新しい生活文化のた
めのさまざまな新しい財とサービスにおける、生産と消費が生まれてくるはず
です。たとえば、デパートや美術館などの公共施設が、今以上に乳幼児を連れ
て出かけることのできるものへと変わらなければなりません。交通機関もそう
です。また、子育てしやすい住宅への需要も増えます。職住接近や労働時間の
短縮も進むでしょう。それによって、通勤にとられていた生活時間の一部が自
由になります。そして、きめ細かな子育て支援のために、情報システム、各支
援制度、支援の人材などを統合的に組み入れた社会的なシステムが構築される
必要があるでしょう。こうした変化は、今の段階では明確には予測できないよ
うな、まったく 新しい財やサービスを生み出す可能性が高いのです。
盛山和夫著『社会保障が経済を強くする─少子高齢社会の経済戦略-』
第七章 「共同子育て社会」という成長路線
わたし(たち)の「百年国債」で言うところの「子育て国債」に該当する。そ
して「デフレ不況克服の困難さ」の分析(世界的な労働斡旋ビジネスと貧困と
格差拡大のリスク計量・評価・評定)と「科学技術革新による労働力再教育」
のための「教育国債」の発行と国際協調戦略が問われているのだと再認識した。
次回は、週刊東洋経済eビジネス新書『連鎖する貧困』などに移る。
この項つづく