10 郷 党 きょうとう
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他の篇と追ってことばの記録ではなく、公生活、私生活における孔
子の具体的行勣のひとつひとつを記録したものである。これらは、
とりもなおさず礼のエキスパートによる礼の実践の記録であって、
これによって当時の礼の規定の具体的内容をうかがい知ることがで
きる。事実、この篇のすべてが孔子についての記述であるわけでな
く、礼の一般的規定を述べた部分が多いとする説もある。
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22 友人が死んで、引きとり手がない場合、「わたしのところで
野辺送りをしましょう」と申し出て、棺を自分の家に安置した。
朋友死、無所帰、日、於我殯。
When Confucius's friend who had no relatives was died,
he said, "Let me perform his funeral at my house."
23 友人から贈り物があった場合、祭祀に用いた犠牲でな
いかぎり、たとい車や馬のような高価な品でも、特別鄭重な
謝意を表することはなかった。
朋友之俯、雖車馬、非祭肉不拝。
When his friend gave him a present, except meat offered
at rites, he never accepted it even if it was a carriage.
24 就寝するとき、死者のように仰向けに寝ることはなか
った。また、ふだんの生活では、もったいぷったふうは見せ
なかった。
寝不戸。居不容。
Confucius did not sleep ungracefully like a corpse and
was in a relaxed mood at home.
『論語』は古いし難しい、そう思っていないか。そんな先入
観を吹き飛ばすのがこの本。著者高橋源一郎が20年の歳月
をかけた、完全新訳の『論語』。事例
孔子がいま、突然、ぼくたちの前に現れ、世界でなにが起っ
ているかを知ったら、きっと、こういったと思うだろう。
「やれやれ、わたしが生きていた頃とほとんど変わってない
んだねえ」
これから始まる、この『論語』教室は、「超訳」でも、ぼく
の創作でもない。ある意味で、これ以上、厳密な翻訳はない
んじゃないかと思っている。なにしろ、あんなに時間がたっ
ても、孔子の『論語』はまったく古びていなかったから。
(「はじめに」より)
【新刊】『21Lessons』
『サピエンス全史』著者が解き明かす現代
的外れな情報であふれ返る世界にあっては、明確さは力だ。
理屈の上では、誰もが人類の将来についての議論に参加でき
るが、明確なビジョンを維持するのはとても難しい。議論が
行なわれていることや、カギを握る問題が何であるかに、私
たちは気づきさえしないことも多い。物事をじっくり吟味し
てみるだけの余裕がない人が何十億もいる。仕事や子育て、
老親の介護といった、もっと差し迫った課題を抱えているか
らだ。あいにく、歴史は目こぼししてくれない。もし、子供
たちに食事や衣服を与えるのに精一杯なあなたを抜きにして
人類の将来が決まったとしても、その決定がもたらす結果を
あなたも子供たちも免れることはできない。これはなんとも
不公平だが、そもそも歴史は公平なものではないのだ。…
(『トゥエンティワン・レッスンズ』、「まえがき」より)
【ポストエネルギー革命序論125】
第5世代移動通信システム
「凄い5G社会」を支える凄いアナログ魔法
暮らしが大きく変わるという噂の5G(第5世代移動通信シス
テム)。その実現に伴い、ビジネスパーソンに求められる資
質やヴィジョンも大きく変わろうとしている。これからは仮
想空間の0と1(デジタル信号)が現実空間の出来事に置き
換わる瞬間、すなわち「アナログ」のセンスが勝敗を分ける。
デジタルこそ最先端というイメージを覆すという(「凄い5G
社会」を支える「凄いアナログ」という魔法、WIRED.jp、20
19.12.18)、驚愕の5G関連アナログ集積技術を俯瞰する。
❐ Optimal Multiuser Transmit Beamforming: A Difficult
Problem with a Simple Solution Structure
20年に一度の通信革命、百花繚乱の大容量データ社会が到
来──甘い宣伝文句ばかり先行する5Gだが、実は莫大な設
備投資が必要となる。5Gで活用が期待される電波(28G
Hz帯)は通信容量こそ大きくできるものの、原理的に届く
距離が短い。極論すれば、これまで高層ビルの屋上に設置し
ていた携帯電話の基地局を、各階の窓に置かなければならな
いというほどの違いが起こる。かなりの数が必要となる。数
万基〜数十万基という単位の基地局増設をどういう順序で行
うべきか──大手の通信キャリアは日夜、知恵を絞る。一台
一台のコストダウンは至上命題。と同時に、勝負の分かれ目
は「とてつもなく狭いエリアでスマートフォン何台分を(混
乱なく)さばくことができるか。その際、「ビームフォーミ
ング」という技術が鍵になる。そもそも電波は有限、かつ公
共の資源である。それゆえ、携帯電話の歴史は複数の端末が
同じ周波数を使っても混信しない「多元接続技術」の歴史で
もあったが、5Gではついに「空間分割多元接続」(SDMA:
Space Division Multiple Access)の時代へと突入する。簡
単に言うと、ひとつの基地局が複数本のアンテナ(アレイア
ンテナ)を使うことで、たくさんの端末を「位置の違い」で
区別できるようになる、というもの。
SDMAは、これまでの手法に比べ、電波の利用効率が格段に向
上する。また基地局がアレイアンテナを搭載することで、送
信時にも特定の座標(端末)を使った狙い撃ちが可能となる。
それが「ビームフォーミング」。これで端末同士の干渉を大
幅に減らし、通信のクオリティを劇的に引き上げられる。因
みにアレイアンテナは多ければ多いほどいい ?
汝、アナログを集積せよ
素直に考えれば、アレイアンテナとは基地局の合体版だ。う
かつに増やせばひとつの基地局が「トラック1台分の大きさ
」ほどになってしまう。それではまったくの問題外であり、
5Gの要件である「狭い範囲にたくさん設置する」という目
的にそぐわない。つまり、あっと驚くほどコンパクトな、そ
して無数の電波をさばききる「心臓部」が求められる。キー
ワードは、アンテナから送り込まれる「アナログ信号」。例
えば、なだらかな電圧の変化といったアナログ信号を0と1
のデジタル信号に変換、あるいはその逆を担う「AD/DAコン
バータ」なる代物。アレイアンテナを備えた基地局の内部に
は、このコンバータがアンテナの本数だけずらりと並ぶ。
中央にみえる小さな黒いチップが、スマートフォンなどの端
末を「狙い撃ち」にするアナログ・デバイセズ
こういったアナログ信号処理装置の省スペース化、つまり半
導体製造技術を用いた「アナログ処理の1チップ化」は、5
G社会の実現において必達の課題と言っていい。しかも、か
なりの難事業だ。あなたが電子工作のマニアなら、その難し
さを察してくれるかもしれない。一般論として、アナログの
回路づくりは職人芸の極みである。部品のばらつきなど厄介
な問題が常につきまとうから、「考えた通りに動くはず」の
デジタル回路設計、あるいはソフトウェアのプログラミング
に比べ、大袈裟にいえば「魔法」。そもそもスマートフォン
の心臓部として有名なSoC(システム・オン・チップ)は毛
色の違うさまざまなデジタル信号処理を小指の先ほどに集積
する怪物だが、ことアナログに限っては不得手。SoCの主流
であるCMOSという製法自体、アナログの実装に不向きといえ
る。
しかし、CMOSの手法でアナログ系が思いのままに集積できる
なら、圧倒的なコストダウンが期待できる。だからこそ、IC
製造の大手アナログ・デバイセズ(ADI)は「CMOS」x「ア
ナログ」という荒技に取り組んできた。同社は5Gを実現す
る魔術の担い手、いわば魔法使い。集積されたAD/DAコンバ
ータやビームフォーマーといったインパクトのある製品で
「Ready to Drive 5G」を標榜している。なんといっても、
社名にアナログがついているのだから恐れ入る。同社が手が
ける「凄いアナログ」のなかでも、SDR(Software Defined
Radio=ソフトウェア無線)を実現する製品ブランド「Radi-
oVerse™」は要注目だ。プログラムを書くだけでカスタマイ
ズ可能な通信ボードであり、大きさは手のひらサイズ。ロボ
ットやドローンに格納できるほど小さいうえに、Raspberry
PiやJetsonのごとくLinuxで動作する。アナログの経験に乏
しい学生やアマチュアにも扱えそうだ。イージーかつ超高性
能な通信機は、5G時代のハッカー必須アイテムとなり得る
に違いない。
ADIの広帯域トランシーバーチップ「ADRV9009」と汎用の他
社製FPGA1基を組み合わせた、アライアンスパートナーの
マリモ電子工業社製のボード(中央)。ADIとパートナー企
業が一丸となって推し進める「RadioVerse™」のエコシステ
ムは通信にまつわるさまざまな設計を簡素化する。
扱いの難しいアナログ技術をブラックボックス化し、プログ
ラマーだけで弁当箱サイズの通信基地局をつくり出せる時代。
だからこそ5Gは勢いづく。公園のベンチに埋め込めるだろう
か。洒落たオフィスに違和感なく溶け込ませるには。基地局
の進化と端末の進化、そのふたつが両輪となって、新たな通
信コミュニケーションをかたちづくる。
「アナログ」こそがイノヴェイションの源泉
とはいえ、NTTドコモやauといった大手の通信キャリアが5
Gの対応エリアを速やかに拡大できるかどうかは不透明。
一方、警察や消防局、あるいは病院といったセキュアかつ高
性能な通信を必要とする現場は、独自に「ローカル5G」の基
地局を構えることができる。いわば「会員制スマホ」であり、
法整備も完了済み。気になるのは、市民権を得た無線LAN(Wi
-Fi)の行く末だが、シビアな現場では力不足。現行のWi-Fi
は、つながりにくかったり途中で切れたりしても諦めざるを
えない技術。一方で5Gは、1/1,000秒程度の遅れを目標に置
いている。秒刻みで動く職種での本格的な利活用が期待でき
る。例えば病院の遠隔手術。あるいは災害時のドローンの遠
隔操縦。そういった絶対に切れてはいけない・遅れてはいけ
ない通信を5Gが実現すれば、電波を扱う業界はいま以上の
盛り上がりをみせるだろう。
5Gに限らず、この10年でテクノロジーの最先端は大きく
矛先を変えた。インターネットとパソコン、つまりは「ソフ
トウェア」が主戦場だった時代は終わりを告げ、スマホやド
ローンや自律走行車といった「モバイル端末」が現実世界と
どうつながるか、すなわち「ヴァーチャル空間がリアル空間
の気配をどう感じとるか」がイノヴェイションの源泉となり
つつある。不可欠なのはセンサ。目に相当するカメラ、三半
規管に相当する加速度計、そして口や耳となる通信機。
新たな世界を切り拓く超爆速のローカル無線通信。アライア
ンスパートナーiDAQS社製の評価システム導入し、組み合わ
せられた5つのボードのうち4つが、ADIのチップを核とし
て動作する。
そこには無数のアナログ信号が飛び交う(安全性は?)。言い
換えれば、真にビジネスチャンスが潜んでいる場所は画面の
中ではなく、外。AI(機械学習)やデータ処理といった机上
のテクノロジーが注目を浴びるなか、アナログ量への嗅覚こ
そが命運を分けるだろう。どこかで宝箱を見出したとき、そ
の宝箱をこじ開けたいなら、きっと「凄い魔術」を身につけ
ておいて損はないだろう。合言葉はアナログ。新たな冒険を
始めよう。と、このようにこの記事は結んでいる。今夜は、
もう少し深掘りしてみたかったが、適時・適宜、再掲載して
みる。
上天気となり。朝から、自治会館の国旗掲揚、白山
神社で新年拝賀式に列席。年賀状に目を遠し、拝復礼状の準
備(明日、プリントアウトし投函➲北野神社初詣)。次男
年賀挨拶(照れいる)。