彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる "招き猫”と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編成のこと)の
兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクター。愛称「ひこにゃん」
14 憲 問 けんもん
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「士にして居を懐(お)うは、もって士となすに足らず」(3)
「貧にして怨むことなきは難く、富みて馴ることなきは易し」(11)
「古の学者はおのれのためにし、今の学者は人のためにす」(25)
「君子は、その言のその行ないに過ぐるを恥ず」(29)
「人のおのれを知らざるを患えず。おのれの能無きを患う」(32)
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3 私生活の安楽ばかり追求する人間は、士と呼ぶことはできない。(孔子)
子曰、士而懐居、不足以爲士矣。
Confucius said, "If an officer want to live in comfort, he cannot
be called a good officer."
こうしてパンデミックははじまった④
今回は、多角的な視点(世界・国内経済的側面)から「ウイズ・コロナ」
考察する。
消費税減税が決め手
コロナ禍により、日本の経済はどうなるだろう?『コロナ大不況後、日本
は必ず復活する』(宝島社)は、経済学者の高橋洋一氏が「50兆円以上の
財政出動をすれば、絶対に日本経済は復活する」と国民を鼓舞する。
まず、高橋氏はコロナウイルスの感染症対策として、休業などによる経済
コスト100兆円を民間が負担した場合、失業者が200万~300万人発生し、
それによる自殺者が1万人程度と予測する。民間ではなく、国が負担すれ
ばよい----移動制限などに伴うGDP減少を、休業補償や現金給付、減税等
のマクロ経済政策による政府需要増加で補うことにほかならない。政府が
100兆円の基金をつくり日銀が買い取れば。無制限緩和をするのだからで
きるはずと説く。そんなことがかのうなのか----いまはマイナス金利の時
代なので、事前に(国債を)発行して基金を作っても利払い負担はない。
それどころか、マイナス金利なので、逆に収入がある。
さらに、一人当たり10万円の給付も、2回、3回にわたって行うこともで
きるし、中小企業の休業補償も手厚くできる。それによって、コロナショ
ックの先行き不安を感じている国民の懸念も払拭できると一刀両断。返す
刀で、政府が4月に出した108兆円の緊急経済対策に対しては、真水は10
兆円ほどしかないのに、GDPの20パーセントもお金を出すと思わせる虚構
を見せたが、こんなものはすぐばれる。先日成立した第二次補正予算は、
使い道がどうなのか、注視しなければならないと批判。
さらに、諸外国の経済対策として比較いし、アメリカは中小企業融資だけ
で3500億ドル。日本円にして38兆5000億円。融資といっても雇用を維持し
た場合には返済不要だから実質給付と変わらない。ほかに失業保険に20兆
円など。ドイツは91兆円。GDPは日本よりも小さいのに規模は大きく、イ
ギリスは二度の経済対策で規模は45兆円5600億円だ。イタリアを除いて、
自由主義各国は日本を超える規模の経済対策をしており、日本がショボい
のだと手厳しい。そのうえで、緊急経済対策の後は、安倍政権の前には、
消費税率は5%だった。安倍政権の責任として、2回で計5%の消費税率
を引き上げたのだから、今度は、それを政治責任として、時限的に5%ま
で引き下げるのは一つの選択肢で、消費税減税を8%ではなく、インパク
トのある5%まで引き下げるべきだと主張。消費税減税によって「消費の
復活を」と訴える。コロナ後の日本経済については、テレワークに注目。
地方への移住の動きもあるが、とりあえずは自宅のワークスペースの確保
が課題だと見ている。ノートパソコンや椅子などに新たな需要がありそう
だ。オリンピックの経済波及効果は32兆円になると見込んでいる。逆の場
合はどうなのか。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算を紹介している。延
期の場合は6408億円の損失、中止の場合は4兆5151億円となる。オリンピ
ックが開催されれば、新たなインバウンドの始まりになる、と期待するが、
「すべていまの新型コロナウイルスの収束が前提になる」と釘をさす。
✔ 経済分野から離れていたのが、そこで高橋だのみ。ぶれることはない。
Bertrand Badré
世界は第1次大戦以来の岐路にある
新たな連帯の仕組みを構想しなくてはならない
近代文明を支える結束は不信、誤解、恐怖によって崩壊する。1914年に起
こった出来事だ。その夏、欧州は戦時体制に染まっていった。2020年も似
たような状況にあるのかもしれない。1918~20年のスペイン風邪以来とな
るパンデミックは、世界的な構造危機へと急速に変異しつつある。冷戦後
で最も危険な地政学的衝突が勃発するリスクが高まっているのだ。新型コ
ロナの感染が広まると、世界の3分の1が封鎖され、大恐慌以来の不況と
なった。危機が今後どう展開するかは世界的な指導力に懸かっているが、
世界にはその指導力がない。国際協調に新たな道を開くには3つの誤解を
正さなくてはならない。第1に、コロナをブラックスワン(想定外の事態)
と位置づけるのは事実に反する。危機がここまで深刻になったのは、世界
が専門家らの警告を無視して行動を起こさなかったからだ。そして来る気
候変動では、おそらく世界はもっと巨大な危機にさらされることになる。
それに比べたら、コロナなどほんの予行演習にすぎない。(週間東洋経済)
✔ 「引き寄せられる混沌」できさいしていたことが具現化しているのだ
が、実体験は別物。この程度?とはいえ、ふりかかるストレスの大きさは
予想をこえるている。
TEXT BY KIM STANLEY ROBINSON
新型コロナウイルスはわたしたちの未来の想像力を書き換える
批評家のレイモンド・ウィリアムズがかつて書いていたように、歴史上の
それぞれの期間には、それぞれの「感情の構造」が存在する。例を挙げる
なら、1960年代に共通する価値観、ヴィクトリア朝時代の相互理解の仕方、
中世の騎士道、中国の唐王朝の世界観などがそうだ。ウィリアムズの考え
によれば、どの時代にも、人間の基本的な感情を包括的な文化システムに
統合するための独自の方法があった。生きていることを体感する方法を、
どの時代ももち合わせていた。もはや遠い過去の話に思えるが、2020年3
月半ば、わたしはグランド・キャニオンで1週間の川下りを楽しんだ。家
を出たとき、米国は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)
の現実に向き合い始めたばかりだった。イタリアでは被害が拡がりつつあ
った。NBAはシーズン中断を決定したところだった。トム・ハンクスの感
染が報じられていた。3月19日に旅行から戻ってくると、世界は一変して
いた。わたしがSF小説を書き続けてきたのは、未来の未知なる部分を伝え
たかったからでもある。しかし、現実の世界がこれほど急激に変化すると、
さすがに衝撃を受けずにはいられなかった。
学校は休校になり、国境は閉鎖された。カリフォルニア州でもそのほかの
州でも、住民には自宅待機が求められた。けれどわたしに衝撃を与えた変
化は、もっと抽象的で内面的な類いのものに見える。変わったのは、人々
の物事に対する見方だ。しかもそれはまだ変化し続けている。新型コロナ
ウイルスが、わたしたちの想像力を書き換えているのだ。ありえないと思
われていたことが現実味を帯びてきた。わたしたちは歴史における自分た
ちの役割を見直そうとしている。新しい世界、新しい時代の始まりを感じ
ていて、新しい感覚の構造に溶け込もうとしているように思える。 歴史
の重要な瞬間にいるという感覚 さまざまな点において、わたしたちは
こうした移り変わりに後れをとってきた。精神面で時代に追いついていな
かった。「人新世(アントロポセン)」、「大加速(グレート・アクセラ
レーション)」、気候変動の時代──なんと呼ぼうとも、こうした時代を
通じてわたしたちは生物圏の調和を乱してきた。次世代の人々の平穏な暮
らしを犠牲にしながら、まるで使い放題であるかのように自然の資源を消
費してきた。かけがえのない地球を破壊し、近いうちに後世の人たちの手
で修復不可能になるほどのダメージを与えてきた。にもかかわらず、わた
したちは1990年や2000年の世界からなかなか抜け出せずにいたのだ。当時
の新自由主義体制がいつまでも有効であるかのように振る舞い、感覚がま
ひしたまま、それに気づかず生きてきた。ところが、事態は突然変わった。
いまやわたしたちは、文明人らしいスピード感で動いている。多くの困難
にもめげず、(感染者数の)曲線の平坦化──大量死を防ぐことに努めて
いる。その努力は、「歴史の重要な瞬間に自分がいる」という理解につな
がっている。わたしたちの現在の取り組みは、これから先の時代でよくも
悪くも顧みられるだろう。そう自から感じること、歴史を動かしていると
いう意識をもつことは大切だ。歴史への当事者意識は、ときに日常の混乱
を乗り切る手助けになるからだ。実のところ、わたしたちはもうずいぶん
前から歴史的な瞬間を生きている。直近の数十年間でも、必要に迫られた
ときは、後世の検証材料となるような行動をとってきた。当時そのことに
気づく人はほとんどいなかったが、最近になってようやく覚醒が起きた。
この覚醒は、新型コロナウイルスの感染が一気に爆発したことと無関係で
はないだろう。2001年9月11日の米国同時多発テロ事件はすべての人を動
揺させたが、これは1日限りの出来事だったため、空港以外でのわたした
ちの生活習慣は変わらなかった。当時はブッシュ大統領まで、外へ出て買
い物をするようにと国民に呼びかけていたほどだ。しかし今回の危機はわ
けが違う。これは生物学的な危機、世界規模での危機だ。この危機に立ち
向かうため、誰もが協力して変化を起こさなければならない。真に歴史的
な出来事なのだ。
わかっているのに行動しないという古い態度
新型コロナウイルスとの戦いにおいては、科学の力がこれまで以上に劇的
に動員されているという印象がある。だがそうした印象もまた、わたした
ちの前時代的な感覚から生まれるものだ。78億人の人口を抱える地球は、
それ自体が社会やテクノロジーの驚くべき到達点と言える。この不自然で
不安定な状態を可能にしているのは科学の力であり、科学はもう長い間、
人類を救い続けてきたからだ。(新型コロナウイルスはわたしたちの未来
の想像力を書き換える:SF作家キム・スタンリー・ロビンソン。 WIRED.jp)
✔ 「この不自然で不安定な状態を可能にしているのは科学の力であり、
科学はもう長い間、人類を救い続けてきたからだ」の件は感動だ。
新型コロナウイルスのパンデミックで「時間の認識」が変化
世界や自分の身の回りで何があろうと時計は常に一定の速度で進むが、個
人の主観的な体感速度は一定でないとPhilip Gableデラウェア大学で心理
学准教授はそう主張している。多くの人々が「ネガティブな気分だと体感
時間が遅くなり、ポジティブな気分だと体感時間が速くなる」と考えてお
り、そのことを裏付けるような研究結果も発表されてきた。同研究チーム
はアプローチ動機が強くなるほど人々の体感時間が速くなり、回避動機が
強くなるほど体感時間が遅くなることを示した。この現象は合理的なもの
だそうで、たとえば「パズルを完成させる趣味に熱中している」人はアプ
ローチ動機が強くなり、体感時間が短くなったことでより長い時間を趣味
のために使うことができます一方、「車にひかれそうになっている」人は
回避動機が強くなり、体感時間が長くなったことで迅速に行動して危険か
ら逃れることができるという。
つまり、新型コロナウイルスのパンデミックがアメリカで起きた時、日常
生活への不安と不確実性が高まることでアメリカ人の間で回避動機が強く
なり、「時間の認識」に変化が出るのではないかと考える。パンデミック
という危険から明確に逃げ切ることは困難であり、買い物や運動といった
日常的な行為の中に感染の危険性が潜む状況は、回避動機を絶え間なく
引き起こし得る環境なんだと。1000人のアメリカ人を対象にした調査では
、約半数が「2020年3月は通常よりも時間の経過が遅く感じた」と回答し。
4分の1は「時間の流れは変わらなかった」と回答し、残った4分の1は「3
月は時間が経過するのが速く感じた」と回答。また、「時間の経過が遅く
なった」と回答した人ほど他者との社会的距離を保つ行動を取る傾向があ
ったことも、今回の調査で判明。体感時間が遅くなるのは不安や回避行動
の不快な副作用かもしれないが、時間の遅れを経験した人々の行動は社会
的に利益をもたらしたと指摘し、パンデミック中に時間の流れが遅くなる
ことは不快だが、運動や趣味に打ち込んだり、これまで通りの日常生活を
送ったりすることは、時間の流れを速くするのに役立つとGable准教授は
と結んでいる。
コロナワクチン、安全性と有効性をどこまで追求?
新型コロナウイルスのワクチンに関しては、現在世界で140種類以上の研究
が進められている。だが問題は、ワクチンの安全性と有効性をどこまで高
めれば十分だろうか。通常ワクチンの開発には何年もかかるが、パンデミ
ック(世界的大流行)になった新型コロナウイルスのワクチン開発は異例
の速さで進められている。米国のバイオテクノロジー企業のモデルナ社は
7月に臨床試験の第3段階に入る。米国政府は5月、「オペレーション・ワ
ープ・スピード」と名付けたワクチン開発加速計画に数十億ドルを投資す
ると発表。とはいえ、ワクチンが速くできればいいというわけではない。
科学者たちの中には、最初にできたワクチンで満足してしまうことに危機
感を抱いている者もいる。また、ワクチンがどの程度安全で有効であれば、一
般への大量接種の準備が整ったと言えるのかを判断するのは、極めて難し
い。もし、効果が限定的なのに生産を大幅に拡大して接種を広く呼びかけ
れば、もっと良いワクチンを開発しようとする研究者の意欲がそがれてし
まう恐れがある。2019年12月まで世界保健機関(WHO)でポリオ対策の調整
官を務めていたロナルド・サッター氏は、「効果の低いワクチンで良しと
してしまえば、より効果の高いワクチンの開発が妨げられてしまうかもし
れません」と懸念する。ワクチンの真価は承認後に判明するワクチンの臨
床試験は、3段階に分けられる。第1相試験では、50人ほどの小人数を対
象に、ワクチンの安全性を評価する第2相試験では、もう少し被験者を増や
してワクチンの有効率(ワクチンによって発症を防げる割合)を確かめる。
接種後、採血した血液を分析して、標的とする病原体を中和させる抗体な
どが作られているかどうかを調べる第3相試験はさらに規模を拡大して、数
千人を対象にその有効性と安全性を測る。多くの場合、本物のワクチンを
接種する人とプラセボ(偽のワクチン)を受ける人に分けて、両者の間で
発症を防ぐ効果を比較するだが、ワクチンの真価が本当に明らかになるの
は、正式に承認されて広く一般に接種されてからだと指摘。「臨床試験は、
あくまでも管理された環境下で行われるもの」と話すのは、英国ロンドン
を拠点とし、生物医学研究に資金提供する団体「ウェルカム」でワクチン
プログラムを率いるチャーリー・ウェラー氏。ワクチンの臨床試験に参加
する人々は、医師に管理されていると思うと行動に気を付けるようになり、
ウイルスへの感染リスクをできるだけ回避しようとする傾向にある。「治
験に参加している人は、治験に参加していることを認識していて、普段の
行動を変えてしまうことがある。ワクチンの実力が本当に試されるのは、
広く一般に接種されるようになってから。たとえ臨床試験をすべてパスし
たワクチンでも、効き目に違いが出てくることがある。その理由ははっき
りしていないが、標的となるウイルスに本来備わっている要素、例えば変
異する傾向や、体内でどう増殖するかなどに加え、人間の自然な免疫系が
どう作用するかといったことも関係するのかもしれない効果が高いことで
知られているワクチンのひとつに、ポリオの不活化ワクチンがある。米疾
病対策センター(CDC)によれば、3回の接種でその予防効果はほぼ100%
とされている。麻疹(ましん)ワクチンも、1回の接種でおよそ96%の予
防効果が得られる。その他のワクチンは、予防効果がそこまで高くないま
ま実用化されている。インフルエンザウイルスは毎年のように変異し、毎
年ワクチンを接種しなければならないが、罹患リスクを40~60%抑えるだ
けの効果しかないマラリアワクチン「RTS,S」にいたっては、わずか3分の
1しか発症を予防する効果がない。それでも、マラリアが蔓延している地域
では選択肢のひとつとして有望視されている。マラリアで死にいたるのは
ほとんどが幼い子どもで、3分の1でも救えれば目覚ましい成果だと話す
のは、米メリーランド大学ボルチモア校医学部ワクチン開発センターの小
児感染症専門家マシュー・ローレンス氏。新型コロナウイルスに関しては、
WHOが今年4月に示したように、高齢者を含め少なくとも人口の70%に対し
て効果を見込めるワクチン候補が理想的と言えるだろう。6月28日には、
米国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏も、70~75
%でも甘んじて受け入れるだろうと発言した。一方、6月30日に、ワクチン
を承認する米食品医薬品局(FDA)は、臨床試験における有効率の最低ライ
ンを50%とするという指針を発表した。一部の研究者たちは、この指針に
納得していない。「50%なんてひどすぎる」と、カナダのゲルフ大学オン
タリオ校獣医学部のウイルス免疫学者バイラム・ブライドル氏は不満をあ
らわす。「このパンデミックを終わらせるには、集団免疫を獲得する必要
がある」。そのためには50%しか効かないワクチンではまるで足りないと、
ブライドル氏は指摘する。別の専門家は、どんなワクチンであっても、そ
れは社会的距離の確保やマスク着用などと合わせたウイルス拡大抑止への
多面的な取り組みの一環にすぎないと考えている。免疫学者たちは、過去
の経験から、新しいワクチンにはかなり神経質になっている。
下痢を引き起こすロタウイルスの予防に初めて承認されたワクチンは、
1999年に使用が中止された。腸の一部が別の部分に入り込んでしまい、死
にいたる可能性があるという腸重積症がワクチンと関連付けられたため。
重篤だが極めてまれなこの副反応は、治験段階では報告されていなかった
。</もっと最近では、2009年に豚インフルエンザワクチン「パンデムリッ
クス」が、突然睡眠状態に陥るナルコレプシー(過眠症)を引き起こす恐
れがあると、ヨーロッパで報告された。官民共同でワクチン開発の加速化
を支援するヒューマン・ワクチン・プロジェクトの社長兼最高経営責任者
を務めるウェイン・コフ氏は、「小規模の治験では、重篤な副反応が見ら
れることはめったにない」と話す。大人も子どもも、世界中で認可された
ワクチンを毎年何百万本と接種しているが、重篤な副反応が出ることは極
めてまれ。モデルナ社の第1相試験では、45人の被験者のうち4人が著し
い副反応を示した。そのうちのひとりの男性は、高熱を出して意識を失っ
た。研究者の間では、このようなmRNAワクチンは免疫系を過剰に刺激する
場合があることが知られている。また、重い副反応を示した4人のうち3
人は、治験で最も多い量を投与されていた。コロナワクチンがWHOの基準を
満たし、「ワクチンの恩恵がリスクを上回った」としても、どれだけの人
が納得してワクチンを接種するかはわからない 5月に、AP通信・公共問
題調査センター(NORC)が米国で1000人以上を対象に行った調査では、約
50%の回答者が、コロナワクチンが接種できるようになったら自分も受け
るつもりだと答えた。同センターが過去にインフルエンザワクチンについ
て調査した際にもほぼ同じ回答が得られ、ピュー研究センターが同じく5
月に行った調査でも同様だった。だが、インフルエンザよりもコロナワク
チンの方が、躊躇する人は多い。インフルエンザワクチンを接種するかど
うか決めていないと答えた人は18%だったのに対して、コロナワクチンに
ついて態度を決めかねている人は31%に上った。そのなかでも、コロナワ
クチンの副反応を心配する人の数は、インフルエンザワクチンの副反応を
心配する人の数の2倍に及んでいた。さらに、女性の方がコロナワクチンに
懐疑的であるという興味深い結果も出た。コロナワクチンを接種すると答
えた男性は56%だったのに対し、女性は43%にとどまった。「多くの家庭
で、医療に関する決定権を持つのは女性。家族全員のワクチン接種や医療
の決定権を持ち、医者へ予約を入れる女性は、潜在的影響力を持つグルー
プ」と、AP通信・NORC副所長のジェニファー・ベンズ氏は言う。
今後主に問題となってくるのは、有効なワクチンが受けられるようになっ
たときに、自分が接種することでパンデミックの終焉を助けるのだという
ことを人々にどう説明するかだと、ローレンス氏は言う。「ワクチンがど
のように試験されたか、その安全性や役割、そしてそれがいかに感染症の
拡大を防ぐのかといったことを広く知ってもらうために、私たちはあらゆ
る手を尽くさなければならない」ワクチンへの不信感以外にも、懸念材料
はある。ウェラー氏は、少なくとも最初のうちは需要が供給を大きく上回
ることを想定している。米国メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・
ホプキンス健康安全保障センターのアメシュ・アダルジャ氏も、一般への
接種開始は慎重に計画しなければ、接種希望者が殺到して混乱が起こるの
ではないかという。「デパートで年に一度の大セールが開催さた場合を想
像してください」。過去に別の病気の集団予防接種運動に関わった人々は、
コロナワクチンの開発過程を注意深く見守っている。ワクチンの信頼性と
ともに、受けたい人が受けられるようにすることが重要だ。サッター氏は
警告する。「一般への接種開始は慎重にやらなければならない。少しでも
問題が起きれば、ワクチンへの信頼はあっという間に失なわれてしまう」;
(コロナワクチン、安全性と有効性をどこまで追求すべきなのか,ナショナ
ルジオグラフィック日本版サイト)
この項つづく
【ポストエネルギー革命序論 189:アフターコロナ時代⑦】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散の時代」
集光径6nmのX線レーザービームの精密計測
極小X線集光ビームの形状を計測する新手法
大阪大学らの研究グループは、多層膜集光鏡を用いたX線自由電子レーザー
のナノ集光実験において、6nmのX線ビームの形成を新手法で実証すること
に成功。これまでX線自由電子レーザーを10nm以下まで集光することは、
X線鏡作製の問題だけでなく、集光ビームの計測問題のために難しく、誰
も実際の集光サイズを確認できていなかった。今回、コヒーレントX線散
乱により生じる干渉模様(スペックル)の形状を精密に解析することで、
10nm以下まで集光されたX線ビームの形状計測に成功した。これにより、
X線自由電子レーザーの集光技術のさらなる向上が可能となるす。また、
集光径という基礎パラメータを正確に決定できたことで、データ解析の精
度の向上が期待されいる。