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ウイルス解体新書 ⑰

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彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫”と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
成のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。

 
                               

17 陽 貨  よ う か
--------------------------------------------------------------
「性、相近し、習、相達し」(2)
「鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いん」(4)
「道に聴きて塗に説くは、徳をこれ棄つるなり」(14)
「ただ、女子と小人とは養い難しとなす」(25)
「年四十にして悪まるるは、それ終わらんのみ」(26)
--------------------------------------------------------------
19 「わたしはもう、ことばで敦えることはやめようと思う」と孔
子は言った。子貢が驚いて、
「それではわたくしたちは、教えを伝えることができなくなりますが」
「ごらん、天は何も語らぬではないか。それでも四季はめぐり、万物
は生長している。天が口をきくかね」

子曰、予欲無言、子貢曰、子如不言、則小子何述焉、子曰、天何言哉、
四時行焉、百物生焉、天何言哉。

Confucius said, "I won't say a word anymore." Zi Gong asked,
"If you say nothing, about what can we discuss?" Confucius
replied, "Heaven says nothing. But the four seasons rotate and l
ives are born. Heaven says nothing."



風呂敷:クラシカル・ユニバース・エコバッグ


草津市三大神社:砂ずり藤




⛨ 国内死者、5カ月間で5倍に 全国1万人超 変異株猛威
新型コロナウイルスによる死者が、全国で1万人を超えた。感染拡大
の「第3波」に入った昨年11月下旬以降に急増し、2千人から5カ
月間で5倍に膨らんだ。若年層の感染者が家庭内や高齢者施設などに
持ち込み、高齢者に広がる傾向がみられる。感染力の強い変異株が蔓
延する中、重症化率や死亡率の悪化も指摘され、医療逼迫に拍車がか
かるとの懸念が渦巻く。29日時点の死者は1万204人。都道府県
別では東京1889人▽大阪1448人▽北海道856人▽神奈川8
16人▽埼玉745人-と、感染者の多い大都市圏が上位を占める。
国内で初めて死者が確認されたのは昨年2月13日。厚生労働省の集
計では7月28日に千人になるのに166日間、11月24日に2千
人に達するのにさらに119日間かかったが、その後、増加ペースが
加速。今年1月23日には5千人を超え、そこから3カ月余りで倍増
した。最近は1日50~60人台のペースで推移する。4月28日時
点の判明分では、男性5425人、女性3796人と男性が1・4倍
多い。年代別では80代以上が6083人(65%)、70代が22
13人(23・7%)、60代が689人(7・4%)と高齢になる
ほど多い。30代は19人、20代は3人、10代以下は0人。死亡
率も80代以上13・8%、70代5・1%、60代1・4%と高齢
ほど高くなる。(国内死者、5カ月間で5倍に 全国1万人超 変異
株猛威、産経新聞、2021.4.30)

【ウイルス解体新書 ⑰】



序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学
第6節 エマージェンシーウイルスの系譜
6-4 エボラ出血熱
6-5 ハンタウイルス病
6-6 ヘンドラウイルス病
6-7 ニパウイルス脳炎
6-8 ウエストナイル熱



6-9-1 エマージングウイルス出現の背景
6-9-1-2 人口動態と行動の変化
6-9-1-3 国際交流と貿易
6-9-1-4 技術と工業

第2節 最初のコロナウイルスの発見
第3節 重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス
第4節 中東呼吸器症候群(MERS)ウイルス
第5節 「次の新型コロナウイルス」に備える
第6節 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の出現
2019年12月に中国で発症した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
は、パンデミック感染症となり、5月23日現在世界中の感染者は521
万人、死者は33.8万人に達した。現時点での致死率は6.5%である。一
般の風邪を引き起こすコロナウイルスには、2種類のアルファコロナ
ウイルスと2種類のベーターコロナウイルスが存在する。2003年に流
行したSARSウイルス (SARS-CoV-1)や、2015年のMERSウイルス(MERS-C
oV)は、これまでの研究でベーターコロナウイルスの仲間であることが
明らかになっている。これらのウイルスの遺伝子情報に基づき、2019
年の年末に発生した原因不明の重症肺炎を引き起こすウイルスが、SAR
S-CoV-1やMERS-CoVと似たRNAウイルスであるベーターコロナウイルス
の仲間であることが、短期間に明らかになった。WHOはこのウイルスを
SARS-CoV-2と命名した。またSARS-CoV-2で引き起こされるウイルス感
染症を、「2019年新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)」と命名する。
SARS-CoV-2の遺伝子はSARS-CoV-1と約80%、MERS-CoVとは約50%似てい
る。また、コウモリのコロナウイルスと約90%似ており、コウモリ由来
と考えられている。さらに、SARS-CoV-1の受容体はアンジオテンシン
変換酵素2 (ACE2:angiotension converting enzyme 2)であるが、SAR
S-CoV-2も同じくACE2を受容体とすることが明らかになった。



第8章 新型コロナウイルス
第1節 新型コロナウイルスの特徴
8-1-1 飛沫・接触感染する風邪の原因ウイルスの一種
新型コロナウイルスの感染経路は、咳やくしゃみで飛び散ったしぶき
(飛沫)などから感染する「飛沫感染」と、感染者やウイルスがつい
た物との接触を媒介して感染する「接触感染」であると言われている。
ウイルスに曝露してから症状が出るまでの潜伏期間は1~14日といわ
れていますが、5日前後で発症する人が多い傾向をもつ。

8-1-2 初期は風邪の症状 高齢者は重症化の傾向も
新型コロナウイルス感染症の初期の症状は、発熱や鼻水、のどの痛み、
咳といった呼吸器症状など、風邪やインフルエンザの症状とほとんど
変わらない。ただ、息苦しさや強いだるさが特徴ともいわれている。
感染者の多く(約8割)は軽症だが、約2割は重症化する。特に高齢
者や基礎疾患(循環器疾患や糖尿病など)がある人が重症化しやすい
傾向にあある。死亡率は3~4%と報告されているが、患者の年齢に
よって大きく違いがある。

8-1-3 自然治癒が基本 体を休めることが大切
風邪や新型コロナウイルス感染症などのウイルス感染の場合、原則と
して特効薬はない。このため、ウイルス感染の治療は、病気に伴う症
状をやわらげるという対症療法を行いながら、自然治癒を目指す。症
状が軽いときは早期の受診を避け、身体を休めることが大切。治療薬
に関しては、いくつかの薬が試験的に使用されているが、現段階では
っきりとした効果を示しているものはないといわれている。

8-2 どのように致死性の新型コロナウイルスを誘導するか
【要点】
1.新型コロナウイルス感染症であるCOVID-19に伴う致死的な急性呼
 吸器不全症候群は,免疫系の過剰な生体防御反応であるサイトカイ
 ンストームが原因。
2.サイトカインストームは,遺伝子の転写因子であるNF-kBとSTAT3
 の協調作用により,インターロイキン6(IL-6)の増幅回路(IL-6
 アンプ)が活性化されて起こる。
3.COVID-19にみられる急性呼吸器不全症候群の治療薬の標的として
 IL-6アンプが有望であり,IL-6-STAT3経路の阻害が有効であること
 を示唆。
【概要】
北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授と量子技術研究開発機
構の平野俊夫理事長らの研究グループは,新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)で生じる急性呼吸器不全症候群(ARDS:Acute Respiratory
Distress Syndrome)がサイトカインストームにより発症するサイトカ
インリリース症候群(CRS:Cytokine Release Syndrome)である可能性
と,それを防ぐ治療標的としてIL-6-STAT3経路を提唱。COVID-19はパ
ンデミック感染症となり,4月21日現在世界中の感染者は250万人,死
者は17万人に達しています。一刻も早くワクチンや治療薬を開発する
ための取組が世界中で行われており,特に重症化したCOVID-19におい
て発症する急性呼吸器不全は致死率が高く,治療方法の開発は緊急の
課題です。最新の2編の論文(Zhouら,Nature3月12日号,Hoffmannら
,Cell4月16日号)によると,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が感
染するためには細胞表面にあるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と
いうタンパク質が受容体として作用すること,さらにHoffmannらの論
文でウイルスが細胞に侵入するためには細胞表面に存在するタンパク
分解酵素であるTMPRSS2が必要であることが明らかにしている。

出典:新着情報: 新型コロナウイルスがどのように致死性のCOVID-19
を誘導するかの考察論文を発表(遺伝子病制御研究所 村上正晃,2020.
4.24)

8-3 サイトカインとは
細胞から分泌されるタンパク質であり、細胞間相互作用に関与する生
理活性物質の総称です。標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、
分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知ら
れている。免疫や炎症に関係した分子が多く、各種の増殖因子や増殖
抑制因子があります。また、白血球(好中球、単球、マクロファージ
など)が傷害箇所に集まるための走化性サイトカインをケモカインと
いう。サイトカインにはケモカインを含む炎症性サイトカインと、逆
に炎症性サイトカインの産生を抑制する作用をもつ抗炎症性サイトカ
インがある。そのため、炎症性サイトカインの産生抑制、受容体の阻
害活性を示す化合物を見出す方向と、抗炎症性サイトカインの産生促
進の方向とで、炎症をコントロールする研究が行われている。

8-3-1 サイトカインとして知られるもの
1.インターフェロン
ウイルス感染の阻止作用をもつ糖タンパク質です。ウイルスの感染や
レクチンの作用などにより動物細胞が産生します(略記はIFN) 。そ
の中でも、インターフェロンγ(IFN-γ)はマクロファージの活性化
を示すことで知られている。
2.インターロイキン
主として免疫応答の調節のためにリンパ球やマクロファージが分泌す
るペプチド・タンパク質の総称です(略記IL) 。インターロイキンに
は、血管内皮で産生され、他のサイトカインの産生を促進する作用を
もつIL-1、白血球細胞の分化促進および全身性の発熱に作用するIL-6、
マクロファージのTNF、IL-1、-6、-8の産生抑制作用をもつIL-4などが
ある。

3.サイトカインストームとは
サイトカインストームは,「何らかの原因で,血中サイトカインが過
剰に産生され,致死性の病態が誘導された状態」を指し,一種の免疫
の暴走と捉えることができる.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
の重症化にも関連すると考えられるが,すべての感染者がサイトカイ
ンストームになるわけではない.実際にCOVID-19患者のほとんどは無
症状,軽症で回復する.重症化する,つまりサイトカインストームが
誘導されるのは,高齢者や,基礎疾患,ストレスがある患者が多い。.
じつは,このCOVID-19のサイトカインストームに似た症状が,血管炎
やがん免疫治療の副作用においてもみられることが知られている。

さて、新型コロナウイルは、感染しても約80%は無症状か軽症で経過す
るが、高齢者を中心に約15%は重症肺炎となり、約5%は致死的な急
性呼吸促迫症候群(ARDS:Acute Respiratory Distress Syndrome)に
なる。また血管炎や血栓症、脳梗塞、心筋障害などを合併するととも
に、急性腎機能不全などの多臓器不全を合併することが多い。また、
心臓血管疾患、高血圧、糖尿病、慢性肺疾患、慢性腎疾患などの基礎
疾患や、加齢、肥満や喫煙などが重症化リスク要因として報告されて
いる。現時点では、確実に効果のある治療薬は存在せず、一刻も早く
ワクチンや治療薬を開発するための取り組みが世界中で行われている。
特にARDSは致死率が高く、治療方法の開発は緊急の課題である。
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注.急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome;
ARDS):急性呼吸窮迫症候群は、呼吸不全(肺機能不全)の一種で、
肺に液体が貯留し、血液中の酸素レベルが異常に低下する様々な病気
が原因で発生する(via MSDマニュアル家庭版)。
--------------------------------------------------------------
SARS-CoV-1やMERS-CoVで引き起こされるARDSではサイトカインストー
ムが生じているが、COVID-19でもInterleukin 1(IL-1), Tumor Necrosis
Factor alpha (TNFα) やIL-6などの炎症性サイトカインの産生が増加
している。また、重症のARDSにおいては血中IL-6濃度が上昇している 。
COVID-19におけるARDSはサイトカインストームによって生じていると
考えられており、ARDSの治療には単に抗ウイルス薬のみでは不十分で、
サイトカインストームを抑制することが必要であると考えられる。白
血病の治療に使用されるCAR-T治療における致死的な副作用であるサイ
トカインストームでは、IL-1 や IL-6が中心的な役割を担っており、
IL-6の阻害薬である抗IL-6受容体抗体トシリズマブ(商品名、アクテ
ムラ)が有効であることが示されている。COVID-19における重症肺炎
においても抗IL-6受容体抗体トシリズマブの有効性が示唆されている。

1986年のIL-6発見により、IL-6は免疫反応のみならず、血液系、神経
系、内分泌系や初期発生など生体の恒常性維持や慢性炎症性疾患やが
んに重要な役割を果たしているサイトカインであることが明らかにな
った。またIL-6受容体を介してJAKSTAT3活性化経路とSHP2/GAB/ERK/MA
PK活性化経路の主たるシグナル伝達系が活性化され、細胞の増殖、生
存、分化に関与していることが明らかにされるとともに、IL-6受容体
を介するシグナル伝達異常が関節リウマチなどの慢性炎症性疾患を引
き起こす。さらに、慢性炎症誘導の基盤として炎症性サイトカイン産
生増幅回路であるIL-6アンプ(IL-6 AMP:IL-6 amplifier)の存在が明ら
かにされた。IL-6 アンプは、気管支・肺胞上皮細胞、線維芽細胞や
血管内皮細胞などの非免疫細胞に存在し、非免疫細胞と免疫細胞の相
互作用を仲介するとともに、NF-kB経路とSTAT3経路の同時活性化によ
ってNF-kB活性化の亢進を誘導し、種々の炎症性サイトカインやケモカ
イン、増殖因子などを病態局所にて持続的に産生する。IL-6アンプは、
関節リウマチなどの慢性炎症性疾患や自己免疫疾患やがんなどに関与
している。



図表1 IL-6アンプは関節リウマチなどの慢性炎症性疾患や自己免疫
疾患やがんなどに関与

実際に、抗IL-6受容体抗体トシリズマブが関節リウマチなどの慢性炎
症性疾患の治療に有効である。これらの知見に基づき、COVID-19に発
症する致死的な急性呼吸器不全ARDSの発症の仕組みを考察し、その治
療としてIL-6-STAT3経路遮断の有効性を考察する。

8-3-2 新型コロナウイルス感染は受容体ACE2とTMPRSS2依存的
SARS-CoV-2が受容体であるACE2に結合するためにはウイルス膜にある
スパイク蛋白が必要である。SARS-CoV-2のスパイク蛋白の遺伝子配列
に基づく構造解析では、SARS-CoV-1 のそれと類似していることから、
ACE2を受容体としていることが示唆された。細胞を使用したウイルス
感染実験やスパイク蛋白の細胞への取り込み実験によりACE2がSARS-C
oV-2の受容体であることが明らかになった。ACE2 はI型膜タンパクで
あり、2型肺胞上皮細胞、心筋細胞、近位尿細管細胞、腸や食道上皮
細胞、血管平滑筋細胞、鼻粘膜や口腔粘膜などの扁平上皮細胞などに
も発現している。

SARS-CoV-2はACE2を受容体として感染するが、細胞内に入るためには
SARS-CoV-1と同様に、ウイルスのスパイク蛋白が細胞表面に存在する
セリンプロテアーゼである TMPRSS2により切断される必要がある。そ
の後、切断されたスパイク蛋白のサブユニットがウイルス膜と細胞膜
の融合を引き起こす結果、ウイルスはACE2とともに細胞内に取り込ま
れる。実際に、TMPRSS2 の阻害剤はウイルス感染モデル実験系におい
てウイルスの細胞内取り込みを阻止した。またACE2に対する抗体もウ
イルスの細胞内取り込みを阻止した。したがって、ウイルスとACE2と
の結合を抑制する分子や、TMPRSS2の阻害剤はウイルス感染を抑制する
効果が期待され、ウイルス感染の初期には大変有効な治療薬になる可
能性がある。このような治療薬の候補としては、ウイルス膜タンパク
やスパイクタンパクに対する抗体や、治癒した患者に存在する抗体が
期待される。また TMPRSS2の阻害剤としては、すでに日本で膵臓炎の
治療薬として承認されているカモスタットやナファモスタットがある。


図表2 新型コロナウイルス感染は受容体ACE2とTMPRSS2依存的

8-3-3 自然免疫と獲得免疫によりウイルスは排除される
SARS-CoV-1やMERS-CoVが感染すると 自然免疫の受容体であるPattern
Recognition Receptors (PRRs)と呼ばれている分子が活性化され、自
然免疫が活性化されることが明らかになっている。SARS-CoV-1では、
PRRsである、RIG-1やMDA5が活性化されてMyD88を介して転写因子であ
るNF-kBが活性化され、TNFα、IL-1、IL-6やケモカインなどが誘導さ
れる。また、Interferon regulatory factor 3 (IRF3) とIRF7が活性
化され、抗ウイルス活性を有するタイプ1インターフェロンが産生さ
れる。TNFαやIL-6はマクロファージや好中球などの自然免疫細胞を活
性化し、ウイルスを排除する。
実際IL-6欠損マウスではウイルス感染や細菌感染への抵抗性が低下す
る。マウスのSARS-CoV-1感染実験において、Myd88欠損マウスではサイ
トカインやケモカインの産生低下とマクロファージの肺への集積低下
が見られるとともに、重篤な肺炎症状を示した。さらに、ケモカイン
によりTリンパ球、Bリンパ球や樹状細胞が感染局所に引き寄せられて、
獲得免疫が活性化される。自然免疫と獲得免疫の免疫反応によりウイ
ルスが排除される。IL-6 はウイルスや細菌感染に対するこれらの免疫
反応に重要な役割を果たしている。
図表3 自然免疫と獲得免疫によりウイルスは排除される
日本を含むBCG接種国や地域では、単位人口あたりのCOVID-19発症数や
死亡数が少なく、BCG接種が原因の1つである可能性が指摘されている 。
BCGは自然免疫の強力な刺激効果を有しており、したがってBCG接種は
結核以外の感染症にも有効であることが示されている。例えばBCGによ
り幼児の死亡率が下がるなどである。自然免疫にもTrained Immunity
(訓練免疫)と呼称され、獲得免疫における免疫記憶と似た能力があ
る(あくまでも抗原非特異的である)。BCGにより自然免疫が訓練され、
結核菌以外の感染症に対する自然免疫反応も増強されると考えられて
いる 。このような現象がCOVID-19にも当てはまれば、上述した獲得免
疫における風邪コロナウイルスとの免疫学的交差反応と合わせて、CO
VID-19による重症化抑制や集団免疫閾値低減化に関与している可能性
がある。このように、SARS-CoV-2感染により自然免疫と獲得免疫が活
性化されてウイルスが排除されるとともに、損傷を受けた肺組織など
が修復されて治癒にいたる。しかしSARS-CoV-1やMERS-CoV は、PRRs
を介するシグナル伝達やタイプ1インターフェロン作用を阻害する様
々な分子を作り出して自然免疫を抑制する。また、IL-6-STAT3シグナ
ルはMHCII発現を抑制するが[38]、COVID-19に伴うARDS においても、
IL-6 増加と単球におけるHLA-DR発現減少、さらにTリンパ球やBリンパ
球減少が認められる。抗IL-6受容体抗体トシリズマブでこれらの減少
は部分的に快復する。リンパ球減少は獲得免疫の機能低下を招きます
ますウイルスが増殖することになる。そして、免疫反応がウイルスを
排除することができずに、肺組織の損傷が拡大していくと、サイトカ
インストームがおこり重篤なARDSに至る。

8-3-4 サイトカインストーム機序
1.AngII-AT1R, PRRsとIL-6アンプの共演
上述したように、SARS-CoV-2が細胞に感染すると細胞膜上のACE2発現
が減少する。SARS-CoV-1もACE2を受容体として感染するが、それに伴
いACE2発現が低下することがすでに明らかにされている。ACE2はアン
ジオテンシII(AngII)をAng(1-7)に変換するので、ACE2 の減少により
AngIIが増加する。一方、Ang(1-7)は MasR (Mitochondrial assembly
receptor)を介してAT1Rシグナルに拮抗する。このように 細胞膜にあ
るACE2が減少すると アンジオテンシン受容体タイプ1(AT1R)を介す
るAngIIの作用が増強される。(➲図表2)
AngIIはAT1Rを介して血管収縮のみならず、血管透過性亢進や細胞増殖
や炎症誘導作用があり、心臓血管障害やがんに関与する。AT1RはG蛋白
質共役受容体で、血管平滑筋、繊維芽細胞、心筋細胞、肺、腎臓、脳
など多くの細胞や臓器で発現している。AT1Rはイノシトールトリスリ
ン酸(IP3)や ジアシルグリセロールを介してカルシウム濃度上昇やプ
ロテインカイネースC の活性化を誘導し血管収縮やアルドステロン分
泌を誘導するのみならず、活性酸素の産生誘導やADAM17(a disintegrin-
and metalloprotease 17) という細胞膜上に存在するプロテアーゼを
活性化する。その結果、細胞膜に存在するEGF受容体リガンドやTNFα
の前駆体が切断されて成熟したEGFリガンドやTNFαが放出される。同
様にIL-6受容体sIL-6α(IL-6Rα)もADAM17により切断されて、IL-6
Rαも細胞膜から遊離して可溶性 IL-6Rα(sIL-6α)が放出される。
TNFαはその受容体を介してNF-kBを活性化し、IL-6をはじめとする様
々な炎症性サイトカイン産生を誘導するとともに、血管内皮細胞マク
ロファージに組織因子の発現を誘導し、血栓形成誘導や脳梗塞の原因
となる。一方、IL-6はその受容体を介してマクロファージやリンパ球
などの免疫細胞に転写因子STAT3を活性化する。血中に放出されたsIL
-6RαはIL-6と複合体を形成して、IL-6受容体のシグナル伝達分子であ
るgp130を発現している様々な細胞(血管上皮細胞、線維芽細胞、肺胞
上皮細胞など)に作用して STAT3を活性化する。活性化されたSTAT3は
NF-kBに作用して、その活性化をさらに強め、IL-6アンプが活性化され
る【図表2】【図表4】。
一方、免疫反応がウイルスを排除できない間に、ウイルス感染により
肺胞上皮細胞などの細胞死が生じる。大量の死細胞から放出されたダ
メージ関連分子パターン(DAMP:Damage associated molecular pattern)
がPRRsに認識されNF-kBが活性化される。その結果IL-1b、TNFαやIL-6
などのサイトカインやケモカイン産生が誘導される。さらに、 SARS-
CoV-1の N蛋白(Nucleocapsid protein)は、IL-6遺伝子プロモーターに
直接またはNF-kBを介して作用することによりIL-6遺伝子発現を誘導す
る。


図表4 サイトカインストーム:AngII-AT1R, PRRsとIL-6アンプの共演

このように、自然免疫を介するシグナル伝達系とAngII-AT1Rを介する
シグナル伝達系が協調して、STAT3によるNF-kB活性化が持続的に亢進
する。すなわちIL-6アンプが活性化されて、大量の炎症性サイトカイ
ンやケモカインなどが産生されて、サイトカインストームに至ると考
えられる。実際に、SARS-CoV-1によるARDSが、ACE2リコンビナントタ
ンパク投与やAT1R阻害剤で阻止できる。さらに、トリインフルエンザ
ウイルスA(H7N9)感染で生じるARDSにおいてもACE2-AngII-AT1Rが重要
な役割を果たしており、AT1R阻害剤がARDSを抑制した。SARS-CoV-2に
よるARDSにおいても抗IL-6受容体抗体トシリズマブの有効性が示唆さ
れるという。

2.コロナ重症化招く「免疫の暴走」端緒解明


図表5 アクテムラ®が炎症を抑える仕組み   
2020年8月24日、大阪大学の研究グループは、これらの患者91人と、
健康な人36人の血液を調べ、サイトカインストームが起きた患者では、
「PAI1」が増えていることがわかった。これは、血管中に血栓(血の
塊)をできやすくする働きがあるたんぱく質。重症の新型コロナ患者
7人でもPAI1が増え、全身の炎症を示す数値があがっていた。血栓が
できると、血管が傷ついて血液成分がもれだし、免疫が過剰に働いて
全身の炎症などを起こすと考えられる。この事実は実験室系(In vitr
o)で血管内皮細胞をIL-6で刺激するとPAI-1が 誘導されることで確か
められました。この現象はIL-6の働きをブロックする抗体医薬品アク
テムラ®(一般名:トシリズマブ)により抑えられました。以上より、コ
ロナ感染においてはIL-6が上昇する早期にアクテムラによって PAI-1
の産生を抑えることが有効な治療になると予測される。

8-3-5 サイトカインストームはウイルス感染に限定されず
重症化リスク要因としては、心臓血管疾患、高血圧、糖尿病、慢性肺
疾患、慢性腎疾患などの基礎疾患や、加齢、肥満や喫煙などが報告さ
れている。加齢に伴い免疫機能は低下するので、一般的に感染症に対
するリスクは上昇する。加齢を含め、これらのリスク要因は少なから
ず慢性炎症と関連があり、IL-6アンプ活性化ベースラインを引き上げ
ている可能性がある。実際、加齢に伴いIL-6は上昇しており、IL-6ア
ンプの活性化は起こりやすくなっていることが考えられる。加齢、肥
満や喫煙は慢性炎症を誘導し、糖尿病、心臓血管疾患などのIL-6が関
与している慢性炎症疾患や悪性腫瘍と密接な関連がある。また、これ
らのリスク要因はACE2-AngII-AT1Rとの関連もある。サイトカインス
トームとどのような関連があるかはさらなる解明が必要。サイトカイ
ンストームを伴うARDSは、ACE2受容体とするSARS-CoV-1やSARS-CoV-2
のみならず、MERS-CoVやインフルエンザウイルスなどのウイルス感染
や敗血症などでも生じる。さらには誤嚥性肺炎のように胃酸や人工呼
吸器などによる肺の損傷でも生じる。また  白血病の治療で行われる
CAR-T 治療においても生じる。これらに共通しているのは、大量の細
胞死である。死細胞から放出されるDAMPsがPRRsを活性化しIL-6アン
プが活性化されると考えられる。実際にCAR-T 治療における致死的な
サイトカインストームはIL-1やIL-6が関与しており、その治療には抗
IL-6受容体抗体トシリズマブが有効である。また、肺炎のみならず、
敗血症や胃酸、あるいは肺の外傷によって引き起こされるARDSモデル
マウス実験においても、ACE2-AngII-AT1Rシグナル伝達系が重要な役
割を果たしている。興味深いことに、ARDS発症とその重症化にACE遺
伝子多型が関与していることが報告されている。さらに、胃酸による
ARDSやSARS-CoVやインフルエンザウイルスH5N1で誘導されるARDSマウ
スモデル実験においてもPRRsの一種であるTLR4を介するマクロファー
ジの活性化が関与している。さらに、敗血症ラットモデル実験で誘導
されるARDSや腎機能不全が、抗IL-6受容体抗体がNF-kB 活性化を抑制
することにより抑制することが示されている。
【まとめ】
このように、ウイルスや細菌感染のみならず外傷により引き起こされ
る肺の損傷は ACE2-AngII-AT1Rシグナルを活性化するとともに、自然
免疫系を活性化し、その結果として TNFα/IL-1β-NF-kBとIL-6-STAT
3が相乗的に働きIL-6 アンプ活性化を介して制御されないサイトカイ
ン産生を誘導してサイトカインストームに至ると考えられる。したが
って、COVID-19に見られるARDSの治療にはIL-6-STAT3阻害剤やAngII-
AT1R阻害剤が有効であると考えられる。ただし、IL-6などのサイトカ
インは抗ウイルス活性があるので、感染初期に投与すると逆効果にな
ると考えられるので、投与時期は血中IL-6濃度やD-ダイマーなどの組
織損傷マーカーなどを指標に慎重に選ぶ必要がある。これらの阻害剤
はウイルスや細菌のみならず外傷などで引き起こされるサイトカイン
ストームが原因のARDSはもちろんのこと腎機能不全など他の臓器不全
にも効果が期待できる。

第9章 人類はどのような手段を持っているのか
第1節 ワクチン
第2節 治療薬
9-2-1 重症新型コロナウイルス感染症治療薬
転写因子である NFkBとSTAT3の協調作用により,インターロイキン6
(IL-6)の増幅回路(IL-6アンプ)が活性化され,炎症性サイトカイン
の産生が異常に増加するサイトカインストームが発生し急性呼吸器不
全症候群(ARDS)➲サイトカインストームにより発症するサイトカイ
ンリリース症候群(CRS:Cytokine Release Syndrome)の 発症を抑制
する治療薬開発が重要であることがわかってきた。ここでは、関連の
最新の治療薬・阻止剤の製造技術事例(特許技術)を俯瞰する。

❏ 特開2021-050215 皮下投与される抗IL-6受容体抗体 ジェネ
ンテック,インコーポレイテッド
【概要】
インターロイキン6(IL-6)は、様々な細胞型により産生される
炎症誘発性の多機能サイトカインである。IL-6は、T細胞活性化、
B細胞の分化、急性期タンパク質の誘導、造血前駆細胞の成長及び分
化の刺激、前駆細胞からの破骨細胞の分化促進、幹細胞・皮膚細胞・
神経細胞の増殖、骨代謝及び脂質代謝など多様なプロセスに関与して
いる(Hirano T. Chem Immunol. 51:153-180 (1992); Kellerら Fro-
ntiers Biosci. 1: 340-357 (1996); Metzgerら Am J Physiol Endoc-
rinol Metab. 281: E597-E965 (2001); Tamuraら Proc Natl Acad Sci
USA. 90:11924-11928 (1993); Taub R. J Clin Invest 112: 978-980
(2003))。IL-6は、自己免疫疾患、骨粗鬆症、新生物及び老化を
含む様々な疾患の発病と関係がある(Hirano, T (1992), 前掲;及び
Kellerら, 前掲)。IL-6は、可溶型及び膜発現型の両方で存在する
リガンド特異性受容体(IL-6R)を介し影響を及ぼす。
RA患者の血清及び滑液中高濃度の IL-6が報告されており、この
ことはIL-6が滑膜により産生されることを示している( Iranoら
Eur J Immunol. 18:1797-1801 (1988);及びHoussiauら Arthritis R-
heum.1988; 31:784-788 (1988))。IL-6濃度はRAの疾患活性と相
関し(Hiranoら (1988), 前掲)、臨床効果は血清中のIL-6濃度の低
下を伴う(Madhokら Arthritis Rheum. 33:S154. Abstract (1990))。
トシリズマブ(TCZ)は、ヒトIL-6Rに結合する免疫グロブリン
IgG1のサブクラスの組換えヒト化モノクローナル抗体である。ロ
シュ及び中外製薬により、成人発症RA、全身型若年性突発性関節炎
及び多関節型若年性突発性関節炎を含む様々な疾患域において静脈内
(IV)TCZの臨床効果及び安全性試験が終了し、又は実施されて
いる。 TCZ8mg/kg  IVは、日本や欧州を含む70以上の国
でRAへの使用が承認されている。米国では、TCZ  IV(4mg
/kg及び8mg/kg)は、抗TNF剤への応答が不十分なRA患
者への使用が承認されている。加えて、インドと日本ではキャッスル
マン病へのTCZの使用が承認された(中略)。図1のごとく、トシ
リズマブを含む、患者における関節リウマチを治療するための医薬で
あって、トシリズマブは毎週又は2週ごとに1用量あたり162mg
の固定用量として皮下投与される、医薬。関節リウマチを治療する追
加の薬物をさらに含み、該追加の薬物は非生物学的DMARD、NS
AID及びコルチコステロイドからなる群より選ばれるインターロイ
キン6受容体(抗IL-6R抗体)を結合する抗体で、関節リウマチ等
のIL-6媒介疾患を治療する方法を提供する。

❏ 特開2021-065242 血中半減期の向上のための抗体Fc変異体
                     国民大学校産学協力団
【概要】
全世界的に遺伝子組換え、細胞培養などの生命工学技術の発達に伴っ
てタンパク質の構造と機能に対する研究が活発に行われてきている。
これは生命現象に対する理解を高めるだけでなく、各種疾病の発病機
作を糾明する上で決定的な役割を果たすことにより、効果的な疾病診
断と治療の道を拓き、生活の質を向上させるのに大きく寄与している。
特に、1975年にB細胞と骨髄癌細胞を融合して単一クローン抗体
を生産するハイブリドーマ技術が開発されながら、癌、自己免疫疾患、
炎症、心血管疾患、感染などの臨床分野において治療用抗体を用いた
免疫治療に対する研究開発が活発に行われている。治療用抗体は、既
存の低分子薬物に比べてターゲットに非常に高い特異性を示し、生体
毒性が低く、副作用が少ないだけでなく、約3週の優れた血中半減期
を有することから 最も効果的な癌治療方法>の一つとされている。実
際に全世界の大手製薬会社と研究所で癌発病因子をはじめとする、癌
細胞に特異的に結合して効果的に除去する治療用抗体の研究開発に拍
車をかかっている。治療用抗体医薬品の開発企業は、ロシュ、アムジ
ェン、ジョンソンエンドジョンソン、アボット、ビーエムエスなどの
製薬企業が主流であり、特に、ロシュは、坑癌治療目的のハーセプチ
ン、アバスチン、リツキサンなどが代表商品であり、この3種の治療
用抗体をもって2012年には世界市場で約195億ドルの売上げを
達成するなど、大きな利回りを上げている他、世界の抗体医薬品市場
をリードしている。レミケードを開発したジョンソンエンドジョンソ
ンも、売上げの増加で世界抗体市場において急成長しており、アボッ
トとビーエムエスなどの製薬企業も最終開発段階の治療用抗体を多数
保有していることが知られている。その結果、低分子医薬品が主流だ
った世界製薬市場において、疾病ターゲットに特異的であるとともに
副作用の低い治療用抗体を含むバイオ医薬品が急速にそのシェアを広
げていっている。抗体のFc部位は、免疫白血球又は血清補体分子を
募集し、癌細胞又は感染した細胞のような損傷された細胞が除去され
得るように働く。Cγ2及びCγ3ドメインの間のFc上の部位は新
生受容体FcRnとの相互作用を媒介し、その結合は、エンドソーム
から血流へ細胞内移入された抗体を再循環させる。この過程は、全長
IgG抗体分子の巨大なサイズに起因して腎臓濾過による体内除去減
少と関連付けられ、1週~3週範囲の有利な抗体血清半減期を有する。
また、FcRnに対するFcの結合は、抗体運搬においても重要な役
目を担当する。したがって、Fc部位は、細胞内輸送及びリサイクル
機作によって抗体が循環して延長された血清持続性を維持するのに必
須の役割を果たす。治療剤として抗体又はFc融合タンパク質の投与
は、半減期の特性を考慮して、定められた頻度の注射を必要とする。
生体内でより長い半減期は、より低い頻度の注射又はより少ない投与
量を可能にするという明白な長所がある。このため、現在進行されて
いる多くの臨床研究において、抗体の半減期を増加させるためにFc
部位に突然変異を導入したり、ADCC効果を極大化させるために変
異を導入したFcドメインを用いた次世代坑癌抗体治療剤や坑癌タン
パク質治療剤の開発に多くの努力を注いでいる。
しかしながら、上記研究陣はFcドメインに一部の突然変異を導入し、
増加したFcRn結合親和性及び生体内半減期を有する一部のタンパ
ク質及び抗体を見出すために努力しているものの、まだ生体内半減期
を大きく向上できずにいるのが現実であり、より最適化した突然変異
を導入した抗体の開発が切実に望まれている。上記の背景技術として
説明された事項は、本発明の背景に関する理解増進のためのものに過
ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者に既に知られた従
来技術に該当することを認めるものとして解釈されてはならない。

図5Bのごとく、本発明のFc変異体は、広範囲な抗体及びFc融合
体産物における用途を有することができる。一面において、本発明の
抗体又はFc融合体は、治療用、診断用、又は研究用試薬、好ましく
は治療用試薬である。本発明のFc変異体は、一部のアミノ酸配列の
最適化によって体内半減期を極大化でき、癌の治療に有用に用いるこ
とができる。本発明の抗体及びFc融合体は、標的抗原、例えば、癌
細胞を含有する標的細胞を殺すことに用いられる。代案的に、本発明
の抗体及びFc融合体は、例えば、サイトカイン又はサイトカイン受
容体に対して拮抗作用するために、標的抗原をブロッキングするか、
拮抗作用するか、又は妨害するのに用いられることで、ヒト抗体Fc
ドメインのアミノ酸配列の一部が他のアミノ酸配列に置換されたFc
変異体を含むポリペプチド又はこれを含む抗体を提供する。


図5B

❏ 特開2021-063142 二重特異性抗体  小野薬品工業株式会社
【概要】PD-1は免疫グロブリンファミリーに属する免疫抑制受容
体であり、抗原レセプターからの刺激により活性化したT細胞の免疫
活性化シグナルを抑制する機能を持つ分子である。PD-1ノックア
ウトマウスの解析等から、PD-1シグナルは、自己免疫性拡張型心
筋症、ループス様症候群、自己免疫性脳脊髄炎、全身性ループスエリ
テマトーデス、移植片対宿主病、I型糖尿病およびリウマチ性関節炎
などの自己免疫疾患の抑制に重要な役割を果たすことが知られている。
したがって、PD-1シグナルを増強する物質は自己免疫疾患等の予
防または治療剤となり得ることが指摘されている。
これまでにPD-1シグナルを増強する物質として、PD-1を認識
する二重特異性抗体が知られている(特許文献1ないし3)。この二
重特異性抗体は、T細胞受容体複合体のメンバーであるCD3を認識
する抗体の抗原認識部位とPD-1を認識する抗体の抗原認識部位と
を遺伝子工学的に連結されたものであり、PD-1をT細胞受容体複
合体近傍に位置させる頻度を上げることによって、T細胞受容体複合
体に対するPD-1の抑制シグナルを増強する作用をもつ。さらに、
同特許文献には、PD-1二重特異性抗体が自己免疫疾患等の予防ま
たは治療に使用できることも記載されている。
ところで、タンパク製剤においては、投与直後のインフュージョン・
リアクションあるいはサイトカイン放出症候群と呼ばれる副作用の発
現が懸念されており、そのような作用が軽減ないし抑制された製剤が
求められている。本発明のPD-1/CD3二重特異性抗体は、その
ような副作用の原因と目される投与後のサイトカイン産生刺激が十分
に低減されており、そのため、懸念される副作用の発現が抑制された
医薬となることが期待される。このような特徴を有する二重特異性抗
体は、現在までに全く報告されていない。
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、かかる課題を解決し得る物質
としてPD-1/CD3二重特異性抗体に着目し、それらがインフュ
ージョン・リアクションあるいはサイトカイン放出症候群と呼ばれる
副作用の発現を軽減する製剤となり得ることを確認した。また、当該
二重特異性抗体が、PD-1およびそのリガンドであるPD-L1と
の相互作用を許容する特徴を有することを確認し、そのような特徴が
作用の増強ないし持続に寄与していることを見出した。本発明の課題
は、自己免疫疾患に対する予防、症状進展抑制、再発抑制または治療
のための新たな薬剤を提供することにある。

❏ 特開2021-038268 再治療用組成物及び再生治療用組成物の製造
 方法 株式会社ジェネシス
【概要】
従来の医療では治療困難な疾病に対する汎用的な代替技術として、歯
髄由来幹細胞を利用した再生治療用組成物を用いた再生医療を実施す
るにあたり、歯髄由来幹細胞培養上清が含むサイトカインのうち、血
管内皮細胞増殖因子(VEGF)の濃度を特定範囲とすることにより、
再生治療に有益と考えられるサイトカインが細胞へ有効に作用し、細
胞増殖能が良好となり、再生治療に優れた再生治療用組成物を効率よ
く提供することができる。歯髄由来幹細胞を培養することによって得
られた幹細胞培養上清が含むサイトカインのうち、特定の種類のサイ
トカイン及びその濃度に着目した再生治療用組成物及び再生治療用組
成物の製造方法を提供すること。

❏ 特開2021-031453 炎症性サイトカイン産生抑制材、ヒアルロン酸
 誘導体、及び、ヒアルロン酸誘導体の製造方法  国立研究開発法人
物質・材料研究機構
【概要】
式(1)で表される繰り返し単位を有するヒアルロン酸誘導体、又は、
その薬学的に許容される塩、エステル、若しくは、グルコシド。(式
(1)中、R1は式(A2)で表される基である)。ステロイド化合
物を含有しなくとも十分な抗炎症作用を奏する炎症性サイトカイン産
生抑制材を提供することを課題とする。

式(1)

第3節 公衆衛生対策
第4節 「ワンヘルス」にもとづく発生監視
第10章 ウイルスとともに生きる
第1節 バイオハザード対策の発展史
第2節 高度隔離施設の現場へ
第3節 病原体の管理基準
第4節 根絶の時代から共生の時代へ
                                                 この項つづく

いつものように県内ドライブ。天候上々、体調はゆっくりと回復。







風蕭々と碧い時代:

● 今夜の寸評:





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