彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」
【ポストエネルギー革命序論 394: アフターコロナ時代 204】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」
世界のメタン濃度は1,900ppbに到達
▶>2022.1.6 日経クロステック
米国海洋大気庁(NOAA)は、大気中のメタンに関する最新のデータを
公開している。これは、世界的に、メタンが記録された歴史の中で最
高レベルにあり、1,900ppbのマイルストーンをちょうど過ぎたことを
示す。気候変動への二酸化炭素の寄与は全体的に大きいが、メタンは
分子ごとにはるかに強力だといわれる。メタンの地球温暖化係数は、
20年間で70?100と推定、20年間で、CO2の70~100倍の熱を質量単位あ
たりに閉じ込める。NOAAが新たに発表したデータは、世界中の数十の
サイトで採取された大気サンプルに基づいており、2021年9月(利用
可能な最新の月)の世界の大気メタンが1,900.5 ppbに達したことを
確認。これは、人類史上最高レベルであり、少なくとも過去80万年。
比較のために、産業革命以前のメタンは700ppb未満にとどまる傾向が
ある。2020年と2021年の間のジャンプは、ほぼ16 ppbの差であり、過
去最高の年間増加率でもある。メタンは、人間の活動によって生成さ
れる温室効果ガスの約20%を占める。その濃度は、2007年に上昇傾向
を再開する前に、1999年に横ばい傾向にあったが、炭素同位体分析に
よると、より最近の増加はに関する重要な手がかりを明らとなる。石
油やガスの掘削による化石燃料や一過性のメタンでは、主な原因は畜
産農業と湿地の自然崩壊(一部は人間の影響による)である。埋め立
て地やその他の廃棄物処理場からの大量のメタンも重要な役割を占め
る。
現在の傾向が続く場合、メタンの世界的な大気中濃度は10年以内に
2,000 ppbを超える可能性があり、世紀の半ばまでに3,000ppbを超え
る可能性があるが、幸いなことに、メタンの寿命は他のほとんどの温
室効果ガスに比べてかなり短く、気候変動に関する政府間パネル(
IPCC)の調査によると、わずか12.5年。 したがって、それは地球温
暖化を減らすための努力の観点から「ぶら下がっている果物」にたと
えられている。実際、最近のCOP26サミットでは、100か国以上が2030
年までにメタン排出量を30%削減することを約束した。国際エネルギ
ー機関はまた、メタンの大幅な削減が現実的で費用効果の高い方法で
達成できることを示す報告書を発表した。その勧告に従えば、世界の
石油およびガス部門のメタン排出量は、2030年までに72メガトンから
わずか21メガトンに減少する可能性がある。
図1 2030年ごろには昼は太陽光発電だけでまかなえるように
✺ 豪州2050年再エネ200%を目指す。既に昼間で百%超の州も
▶2021.12.23 日経クロステック
オーストラリアは再生可能エネルギーと蓄電システムの大量導入を積
極的に進めている。その動きを大きく加速させたのが、同国とドイツ
の研究者グループによる2019年9月の提言。同グループは2050年まで
のオーストラリアのエネルギー源について5段階のシナリオを想定。
その中で再生可能エネルギーを最大限導入するシナリオでは、2050年
に同国の電力需要量の200%を再生可能エネルギーでまかなえると提
言している。
■ 2019年の電力需要量の4.1倍を導入か
電力需要量の200%といっても、2019年時点の同国の電力需要量の2倍
ではない。経済成長や石油など化石燃料を動力源として使っているさ
まざまな産業部門の相当部分が電化することを織り込んだうえでの
200%で、2019年時点の電力需要量に対しては410%に相当する。電力
系統には電力の供給と需要が常に一致していなければならない「同時
同量則」があり、需要量の100%を大きく超える再生可能エネルギー
は一見それに反する。超過分は(1)蓄電池にためる、(2)再生可能
エネルギーの季節間などの長期的な出力変動に備えて備蓄する、(3)
シンガポールなど他国に海底送電線などで輸出する、 (4)電力を水
素やアンモニアに変えてそれらを燃料とする火力発電や鉄鋼の精製、
燃料電池車や列車などに利用する、 (5)水素やアンモニアを日本や
韓国などに輸出する、などの対策で同時同量則の制約を回避する戦略
だ。 実際、 オーストラリアでは再生可能エネルギーの導入が急速に
進み、特に正午前後は太陽光発電の出力が支配的になってきた(図1)。
この図を外挿すると2030年前後には少なくとも正午前後は太陽光発電
だけでほぼ100%になる。再生可能エネルギーの導入は加速する一方
で、最近、オーストラリアの電力系統を管理する事業者Australian
Energy Market Operator(AEMO)は、2025年にも正午前後は太陽光発
電だけで電力需要がまかなえるようになるという見通しを発表した。
【特集|サーキュラルエコノミー:信州タケエイ株式会社】
太陽光パネルの処理・リサイクル事業、信州タケエイが始動
▶2022.1.6 スマートジャパン
タケエイが子会社の信州タケエイ(長野県諏訪市)が、太陽光パネル
のリサイクル事業を開始すると発表。2022年1月から事業を開始する。
産業廃棄物処理事業を手掛けるタケエイは2021年12月23日、子会社の
信州タケエイ(長野県諏訪市)が、太陽光パネルのリサイクル事業を
開始すると発表。2022年1月から事業を開始する計画。
国内で太陽光発電の導入が加速するなか、将来、大量に排出される太
陽光パネルの廃棄・リサイクルの適正な処理が課題となっている。太
陽光パネルの適正処理・リサイクルには、高度な技術と専用の設備が
必要だが、将来の大量排出に対応できる体制はまだ整っていないのが
現状だという。課題の解決を目指し、タケエイでは太陽光パネルリサ
イクル事業の立ち上げに向け、処理方法の研究・開発などに取り組ん
できた。
そしてこのほど、子会社の信州タケエイが長野県から廃太陽光パネル
を処理する許可を取得した。廃太陽光パネルの処理は、まず端子やケ
ーブルなどを解体し、油圧式フレーム外し機にてアルミ枠を取り外す。
フレームを取り外したパネルは手動式カバーガラス剥離装置に投入し
てカバーガラスを剥離・回収する。また、リサイクルするだけでなく、
検品して状態の良いものはリユースも行う予定だ。なお、タケエイで
は太陽光パネルリサイクル事業について、タケエイ相馬事業所(福島
県相馬市)においても立ち上げの準備を進めている。
安全な蓄電池サーキュラーエコノミ-事業
【特集|圧縮空気エネルギー貯蔵技術 ①】
圧縮空気を利用したエネルギー貯蔵システムCAES(Compressed Air
Energy Storage)も、他の蓄エネルギーシステム同様、1978年の最初
の実用化から40年以上経った今になって、刷新に向けて動きだした。
CAESは、"充電"時にコンプレッサーを駆動させて電力を圧縮空気に変
換し、発電時には圧縮空気が膨張する力によってタービンを回転させ
て発電するシステム。効率は驚きの70~80%に向上してきているが、
今夜はオレゴン州立大学の研究成果を掲載する。
❏ 技術論文:圧縮空気エネルギー貯蔵のための熱化学的熱回収
Title:Thermochemical heat recuperation for compressed air
energy storage、Energy Conversion and Management,,Published
January 6, 2022、
【要点】
1.熱化学的回復は、高度な圧縮空気エネルギー貯蔵に統合
2.既知レドックス反応と仮想レドックス反応の双方配置
3.熱化学貯蔵で、より安定したタービン入口温度を実現
4.より長い保管期間とより高い往復効率を実現
【概要】
圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)は、圧縮、貯蔵中の熱損失、および
膨張前に一般的に使用される天然ガス燃焼再加熱に固有の低エネルギ
ーおよびエクセルギー変換効率(約50%以下)に悩まされている。以
前は、プロセス効率向上に、等温および断熱(または「高度な」断熱)
圧縮空気エネルギー貯蔵が提案されていた。断熱スキームの中で、蓄
熱は圧縮プロセスからの熱貯蔵に使用できまる。膨張する前に、空気
は貯蔵熱エネルギーを回復でき、それは天然ガス焚きの再加熱の必要
性を減らすか、あるいはなくせる。顕熱貯蔵(SHS)と潜熱貯蔵(LHS)
はこの目的に以前調査したが、CAESアプリケーションでの熱化学エネ
ルギー貯蔵(TCES)の使用を検討している研究はほとんどなかった。
ここでは、熱化学的エネルギー貯蔵と顕熱エネルギー貯蔵を組み合わ
せた直接熱伝達スキームが提案されている。本研究は、提案されたア
イデアの概念設計の数学的モデルを開発する。詳細モデルと分析は、
TCESで満たされたPBTES(酸化バリウムと岩石の両方で満たされた充
填層)と岩で満たされたPBTESに対して実行される。この結果、現在
研究で使用されている酸化バリウム材料の熱容量と反応熱が比較的低
いため、岩石充填PBTESとTCES岩石充填PBTESの間で同様の往復効率(
RTE)が達成されたことを示す。充電後20時間の保管時間で、両方のシ
ステムで60%のRTEが達成された。ただし、TCES材料を充填層の上に
配置すると、すべての岩石充填層(300 K以上の温度差)と比較して、
より安定したタービン空気入口温度(200 K未満の温度変化)が得ら
れる。尚、充電は20時間未満。さらに、将来の先端材料を使用すると、
提案したアイデアは、プロセスの往復効率を改善し、保管期間を長く
し、適切な動作条件下でタービン空気入口温度の安定を実現する。概
念の実現性をよりよく説明するため、岩石と同じ熱容量を持つが、酸
化バリウムの3倍に等しい熱化学貯蔵容量を持つ仮想の材料を開発モ
ードを使用し調査。その結果、仮想の材料を使用し5%を超えるRTE
改善がの可能性が得られることを示した。保存期間が長くなると、
TCESの付加価値が高まる。さらに、仮想のTCESで満たされたPBTESが、
充電後40時間のアイドル時間の場合、岩で満たされたPBTESと同様の
エネルギー貯蔵容量を達成に必要な容量は、45%少なくなくなる。
この概念は、液体空気エネルギー貯蔵にも適用できる。
【ウイルス解体新書 102】
序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学
第1章 ウイルス現象学
第1節 免疫とはなにか
1-5-1 特許事例:免疫応答を高める方法
第2節
第3節 水際検査体制(未然感染防止)
第4節 自国のワクチン及び治療薬開発体制
4-1 国産ワクチン開発:新型コロナウイルス
4-1-1 予算も研究開発活動も限定的
コロナワクチンの開発で日本が出遅れた背景
4-1-2 国産ワクチン実用化の壁
4-1-2-2 規制の弾力的運用を
第5節 感染パンデミック監視体制
5-1 WEB特集 ワクチン接種 なぜ日本は遅い
▶2021.5.14 新型コロナ ワクチン(日本国内) NHKニュース
5-2 新型コロナウイルス国産ワクチン開発生産体制構築の遅れ
▶2021.6.3 新型コロナウイルス 国産ワクチン開発・生産体制の構築
を急げ」(時論公論)時論公論 NHK 解説委員室
5-3 新型コロナ感染者もワクチンを接種した方がいい
▶2018.8.7 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
目標は感染防止ではなく重症化の阻止
目標は重症化や死亡の防止
第6節 エマージェンシーウイルスの系譜
第7節 新型コロナウイルス
7-1 新型コロナウイルスのライフサイクル
7-2 変異ウイルス
7-2-1 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コ
ロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について(第9報)
第8節 感染リスク
1.感染力
2.致死率・重症化率
8-1 予後
8-1-1 死亡リスク
8-1-1-1 新型コロナ生存者の死亡リスク
8-1-1-2.生存者の死亡リスク
8-2-1 脳損傷
8-2-1-1 新型肺炎と脳の関係
8-2-2 後遺症
8-2-2-1.嗅覚障害
8-2-2-2 後遺症の未来
8-2-2-3 新型コロナウイルス感染症の後遺症による認知能力
への影響
8-2-2-4 回復後も疲労や認知機能の低下が続く「ロングCOVID」
▶2022.1.6 gigazine
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した患者の中には、疲労
感や息切れ、認知機能の低下といった症状が感染から数カ月以上も継
続する「ロングCOVID」という後遺症に苦しむ人が多数いる。新たに
南アフリカとイギリスの研究チームが、「ロングCOVIDは体内の微小
な血栓と血小板の異常が関与している可能性があり、血液に焦点を当
てた治療が有効かもしれない」とする査読前論文を公開。慢性的な疲
労や息切れ、関節痛、頭痛といった身体的症状に加え、頭に霧がかか
ったような感覚がして認知能力や集中力が低下する「brain fog(ブレ
イン・フォグ)」という症状もあることが報告されている。 56カ国に
住む合計3762人のロングCOVID患者を対象にした2020年の研究では、
半数近くのロングCOVID患者が感染から6カ月が経過しても疲労や倦怠
感、認知能力の低下などによってフルタイムの仕事に復帰できていな
いこともわかった。原因であるCOVID-19自体は軽症で済んだ患者でも、
10%が「仕事や生活に支障を来す後遺症」に悩まされているとの研究
結果も報告されおり、「何百万人もの人々がロングCOVIDを抱える未
来が到来する可能性」も警告されている。その一方で、ロングCOVID
の定義は依然として不明確であり、病理生態学的メカニズムも完全に
は解明されていない。
COVID-19の主な症状にはせきや呼吸困難があるが、COVID-19は呼吸器
系だけでなく血液に影響を及ぼすことが指摘されている。以前の研究
では、COVID-19患者から採取した血液サンプル中で、体内の血栓を分
解するフィブリン溶解(繊維素溶解/繊溶)というプロセスに抵抗性を
持つ微小な血栓が発見されている。そこで南アフリカ・ステレンボッ
シュ大学とイギリス・リヴァプール大学の研究チームは、ロングCOVID
と微小血栓や血液の関連および有望な治療法についての研究を行った。
研究チームはまず、南アフリカに住む845人のロングCOVID患者を対象
に、性別や年齢、併合疾患、ロングCOVIDの症状などを調査。その結
果、参加者の過半数で高血圧や高コレステロール値、2型糖尿病、自
己免疫疾患、血栓症などの血液に影響を及ぼす疾患の既往歴が確認さ
れた。これとは別に、70人のロングCOVID患者の血液サンプルを分析
したところ、全員で有意な量の繊維素溶解に抵抗性を持つ微小血栓と、
血小板の異常な機能亢進が見つかる。一般的に、血栓は用済みになる
と繊維素溶解によって分解されるが、繊維素溶解に抵抗性を持つ血栓
は体内を循環してさまざまな問題を引き起こす。研究チームによると、
正常に分解されない微小血栓は毛細血管を詰まらせ、体内の各組織へ
の酸素供給を妨げることから、ロングCOVIDにおける多様な症状の原
因となっていると説明できる。また、同じ患者群で見つかった異常な
血小板の機能亢進も、血栓の形成に影響を及ぼす。研究チームはこの
結果を踏まえて、血液サンプルを採取した70人中24人のロングCOVID
患者を対象に、微小血栓と血小板の機能亢進に焦点を当てた治療法を
試した。抗血小板作用を持つクロピドグレルやアセチルサリチル酸(
アスピリン)、血栓塞栓症の治療に用いられるアピキサバン、胃を保
護するパントプラゾールの投与を1カ月続けたところ、24人全員が「
主な症状や疲労感が和らいだ」と報告したほか、実際に微小血栓や血
小板のスコアも正常なレベルに戻ったという。
❏関連論文:Combined triple treatment of fibrin amyloid micr-
oclots and platelet pathology in individuals with Long COVID/
Post-Acute Sequelae of COVID-19 (PASC) can resolve their per-
sistent symptoms.
第9節 感染予防・検査・治療
9-1 検査方法・装置設備
9-1-1 新型コロナウイルス感染症に関する検査
1.新型コロナウイルス抗体の種類と量を30分で測定
9-3 新型コロナ治療薬
1.国内で使用されている主な薬剤
▶2022.1.7AnswersNews
9-3-1 細胞に侵入するのを防ぐ
9-3-2 増殖を防ぐ
1.レムデシビル:Remdesivir
2.モルヌビラピル:Molnupiravir
3.ニルマトレルビル:Nirmatrelvir
4.リトナビルリトナビル: Ritonavir
【関連特許】
1.特開2021-187761 抗SARS-CoV-2薬 国立大学法人鹿児島大学
2.特開2021-181438 3-ヒドロキシ-2-ピラジンカルボキサミドの製造
方法 国立大学法人 東京大学
3.再表2018/179172 免疫賦活活性を有する核酸誘導体 塩野義製薬株
式会社
9-3-3 炎症を防ぐ
この項つづく
第10節 ウイルスとともに生きる
10-1 バイオハザード対策の発展史
10-2 高度隔離施設の現場へ
10-3 病原体の管理基準
10-4 根絶の時代から共生時代
第2章 COVID-19パンデミックとは何だったのか
第1節 各国の動向と対策の特徴1.米国
1-1 COVID-19委員会の創設を提案
第2節 謎のCOVID-19起源
2-1 消えぬ武漢研究所人為的発生説
第3節 新型コロナウイルスで分かったこと
3-1 人体の免疫システムからの逃避機構
3-2-1
3-3 ファクターX”は日本人の免疫細胞か
第4節 いつまで続く「コロナ禍」は?!
4-1 適切な専門家に聞く「新型コロナ」の読み解き方
4-1-2 人工ウイルス説はなぜ登場し、そして否定できるのか
4-1-3 SARS-CoV-2とはどんなウイルスなのか
終 章 ウイルス感染症と戦略『後手の先』
『言語にとって美とはなにか』⑤
第1章 言語の本質
【概説】人間理性の万能を否定し、性の魔力を主張するフロイトの精
神分析学は、ダーウィンの進化論、マルクスの資本論とともに、近代
の人間観に大きな変革をもたらした。この『精神分析学入門』は、フ
ロイト自らが精神分析学の全体系とその真髄をわかりやすく詳述した
代表的著作。
-------------------------------------------------------------
第1節 発生の機構
ひとはよく、言語をもつのは人間だけだという。また、ちゃんと
した言語をもつのは人間だけだというものもいる。まえのばあい
言語活動は人間に特有のものだという考え方をあらわしているが、
あとのばあい人間以外の動物も不完全な言語はもっているのだと
いう考えかたをふくんでいる。一見するとこのふたつは、空腹を
うったえるときの猫や犬の啼き声や、いたずらされて歯をむきだ
して怒る猿のうなり声や、集団のなかのちがった鳴き声のような
ものを、言語のはんいに入れるかいれないかのちがいにすぎない
ようにみえる。でもまったくちがった意味がある。
トラウマがどういうものかは、いまならPTSD(心的外傷後ストレス障
害)のことを含めてだいたい見当がつくだろうが、当時はピエール・
ジャネがギリシア語の“trauma(傷)”を心的作用の比喩につかった
ことすら知られておらず、これが心理学用語になったのは1917年にフ
ロイトが『精神分析入門』に使った。それでもこの用語は個人におこ
る心的外傷に適用されただが、晩年のフロイトはそれを一挙にユダヤ
人という「類」にあてはめる。フロイトは『モーセと一神教』におい
て「潜伏期」という神経症発症の用語をつかい、ユダヤ教とユダヤの
民の歴史において「モーセの一撃」がもたらした衝撃を語り、反論を
準備した。この民族の早期の自我侵害が、モーセという特定個人の出
現による事件を中心に語られるようになる。長きにわたるユダヤ民族
の「普遍的な自我」の外傷なる。ユダヤ教が漠然と集団的に発生した
のではなく、ヤハウェの十戒の声を聞いたモーセ個人の計画が起源な
ら、その後のユダヤ民族の意識は、「モーセに回帰」していく。「モ
ーセを想う」とは、「類」と「個」の重合がおこし、民族的宿命(自
意識)をもった者たちとアップデートする。旧約聖書「出エジプト記」
にはモーセが殺されたと記録されていないが、そのような外的傷害が
あったからこそ、ユダヤ教が保持できたと松岡と綴りモーセは殺され
たのではなく、フロイトが殺したのだと言いたくなると吐露し、なぜ
こんな辻褄合わせ(合理化)が成立するのかはフロイト心理学の「闇」
にも入っていかざるをえない。このような「超自我」は神にも神の代
理人にもなりやすいといし、超自我=ユダヤ民族の集団心理学的なし
くみから発揮し、この「モーセの一撃」により、ユダヤ民族は超自我
としてのモーセと一神教とを“発見”したにちがいない。そして、宗
教史的には「モーセがユダヤ教を作った」ということはあきらかだ。
まさにパウロがキリスト教を作ったように、フロイトは「エス・自我」
に「超自我」が審級してくる可能性を、モーセがユダヤの民に与えた
歴史的ふるまいを通して解こうとしたと言う。
Wikipedia
フロイトの父親はヤーコプ・フロイトという。フロイトは『夢解釈』
でこの父親ヤーコプを影の主人公として登場させて、フロイトがどの
ように父親の存在を超えようとしてきたかを述べ、いわば「父殺し」
を試みる。フロイトは、自分自身の父親ヤーコプ(=ヤコブ)の精神
史的殺害を通し、モーセの出現とその殺害に時空をまたいで重ね、そ
のことを証すために『モーセと一神教』という遺書を書いた。ただし、
これでユダヤ人の始原が見えてきたわけではないと言う。
先を急ごう。
さて、「松岡正剛の千夜千冊」(1501夜)生代篇のディディエ・アン
ジュー『皮膚-自我』で「皮膚は体を包むズタ袋ではない。傷ついた
り、皺になったり、鳥肌がたったりするし、汗をかいたり、匂ったり、
吹き出物が出たり、愛したり、嫌ったり、萎縮したり、怒張したり、
あるいは言うことをきかなかったりもする。いったい皮膚や体表とは
何なのか。皮膚には、脳と分有しているものがある。それは「皮膚-
自我」なのである。皮膚はわれわれにひそむ「たくさんの私」のうち
の何人かぶんの自己そのもの、自己群なのだ」とこの本を要約。
そこでは、「フロイトは、三つの心的装置を用意➲エス、自我、超
自我だ。心はこの三つが仕切っている」とみて、「フロイトはこれら
のエス・自我・超自我に、さらに現実原則、快・不快原則、反復原則、
恒常原則、ニルヴァーナ原則などをあてはめようとした。フロイトの
精神分析は、この強引なマトリックスから成り立っている」と記す。
脳表面からのダイレクト光トポグラフィ図(2014.1.11)
そして、「自分の心身の発達や転換の、いったいどのあたりから芽生
えてきたのか、それとも途中で加速したのか移植されてきたものなの
か、あるいは何かのきっかけで心が歪んだので快感や不快というもの
に変じていったものなのか、そのあたりはいまひとつわからないまま
になっている。せいぜい、精神に異常をきたした者が告白することや
感情の起伏で判断するしかないものとみなされてきた。つまりは脳の
中の心的現象と結びつけるしかないと思われてきたのである」と記し、
しかし、それではエスであれ自我であれ超自我であれ、「自分」の発
生の起点や快不快の出どころがなかなか突きとめられないし、心の正
体のアドレスが脳にあるのだとしても、脳の中なんて容易に覗きこめ
られないためいつも適当に扱われ、心の変調を訴えでもしないかぎり、
われわれは自分のことを誰かに精神分析してもらえるわけじゃない。
そこでアンジューが「皮膚−自我」を持ち出し、この脳の化学的なネットワー
ク構造は、発生学的には受精じ、外胚葉から発生してきたのは脳だけでな
く、皮膚も外胚葉から派生した。脳と皮膚とは同一の原郷をもち、外胚葉は
中枢神経系と感覚器官と表皮となり、皮膚は脳に似た何かが機能し、感覚
も思考も、脳が感じるとともに皮膚でも感じてきたなら皮膚は、「心的外被」と
でもいうべきもの、心は全身の皮膚で覆われている----脳のコルテックス(皮
質)に生じた神経ネットワーク組織は皮膚の表面と表面との「かかわりあい」
が内化したもの----「自我の前駆性」が潜み、身的自我と心的自我が脳と皮
膚との両方で補完しあっているとみなした。誰にも経験があるが、床屋で髪
を切ってもらったあと、肩筋や背中の肌のどこかに髪の毛が一本でもひっか
かっていれば、どうにも落ち着かなくなる。蚊がチクリと一刺ししただけでも、
かゆくてたまらない。ましてバッタやサソリがもぞもぞ背中を動いていれば、
信じられないくらいに跳び上がる。皮膚はのべつまくなしに異物と闘ってくれ
ている戦場なのである。嫌いになった男に触れられただけで、ぞっと鳥肌が
たつ女性も少なくない。いやいや、そういうフィーリングのことだけではない。
皮膚にはもっといろいろな機能がひそんでいると松岡は煩瑣な現象を面白
く縷々整理・整頓してみせ、「皮膚感覚は、人間の子供を出生以前からかぎ
りなく豊かで複雑な世界へといざなう。そして知覚−意識の系をめざめさせ、
全体的でかつ付随的な存在の感覚の基礎を形成していっただけでなく、心
的空間形成の可能性をもたらすものなのだ」(アンジュー)と引用する。また、
本篇に挿入された、松岡の「言語表象の心理学的図式」では、言語中枢も
また、外側(周辺)では、言語機能にとって重要な皮質の一部に隣接し、内
部(中心部)では、場所が特定できない言語野の一つであるらしい領域
と境を接し連関図が参考となる。
言語の二重経路の解剖学的なモデル図(2011)
DOI: 10.7875/first.author.2011.163
皮膚には脳が、脳には皮膚が連合する。脳がもつ自分という自己の気配は、
皮膚もそれを分有する自己なのである。そうだとすればエスや自我や
超自我は、脳にも皮膚にもあるはずだ。まさに皮膚とは「皮膚−自我」
なのだと確認し、「床屋の帰りに首すじで感じる毛髪の異和感を感知
しているだけで、皮膚的自己の発生にまでさかのぼれるだろうか」自
問し、少なくともこれまでのフロイト主義者たちはそのあたりの証拠
をあげようとはしなかった。かくてアンジューが例示してみたのが、
ギリシア神話のなかのおぞましい物語だったのだ。マルシュアスの神
話だと記す。
この項つづく
風蕭々と碧い時代
曲名: I'll Follow The Sun (1964) 唄: MonaLisa Twins
作詞&作曲: Lennon–McCartney
One day you'll look
To see I've gone
For tomorrow may rain, so
I'll follow the sun
Some day you'll know
I was the one
But tomorrow may rain, so
I'll follow the sun
And now the time has come
And so, my love,
I must go And though I lose a
friend In the end you will know
Oh oh ohoh
One day you'll find
That I have gone
But tomorrow may rain, so
I'll follow the sun
Yeah, tomorrow may rain, so
I'll follow the sun
And now the time has come A
nd so, my love, I must go
And though I lose a friend
In the end you will know
Oh oh oh
One day you'll find
That I have gone
But tomorrow may rain, so
I'll follow the sun
モナリザ・ツインズ( MonaLisa Twins) は、リバプールを本拠地とす
る女性二人組ロック・バンド。ビートルズをはじめとする1960年代の
バンドの曲をカバーした動画を、ユーチューブで発表することで知ら
れる。それらの曲の多くはアルバムも発表、また2枚のオリジナル曲
を収録したアルバムも発表。バンドメンバーは一卵性双生児のモナと
リサ・ワグナーで、それぞれ、リズム・ギター、パーカッション、ハ
モニカとリード・ギター、ウクレレ、チェロを担当している。二人は
オーストリア生まれで、2015年にリバプールに移住するまでは家族と
ともにそこに住んでいた。彼女たちの父親のルディ・ワグナーはベー
スやピアノを演奏し、また家族の音楽スタジオで曲の共同制作、編曲、
およびプロデュースを行っている。
「アイル・フォロー・ザ・サン」(I'll Follow the Sun)は、ビートル
ズの楽曲。レノン=マッカートニーとなっているが、ポール・マッカ
ートニーによって書かれた。イギリスでは1964年に発売された4作目
の英国盤公式オリジナル・アルバム『ビートルズ・フォー・セール』
に収録、アメリカでは1964年に発売されたキャピトル編集盤『Beatles
'65』に収録。英国ではアルバムで発売されたのち、EP盤にも収録。
スウェーデンではシングル盤が発売されており、Kvallstoppen Chart
で最高位4位を獲得。歌詞は謎めいているが、モナリザ・ツインズは
「とても美しい曲です」と褒めている。
● 今夜の寸評:沸騰する欲望と対峙する知恵
ハイ、ぺこりとおじぎするひこにゃんです。
みなさんいつもありがとう。これからもよろしくね。
と、おりこうさんにおじぎをしています。
れいぎただしいのです。
もへろん