彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん 」
【ポストエネルギー革命序論 423: アフターコロナ時代 233】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」
✺熱回収型ホットキャリア次世代太陽電池とは Ⅱ
❏WO2020/129539 太陽電池および熱電変換素子を有する複合発電装置
【概要】太陽電池は、そのエネルギー変換効率が、非集光でシリコン
単一の光吸収体を用いた場合、ショックレー・クワイサー理論による
29.5%程度と言われている。エネルギー変換効率を超える太陽電池と
して、多接合太陽電池やホットキャリア太陽電池が提案されている。
ホットキャリア太陽電池は、ホットキャリアを熱緩和が生じる前に電
極に取り出すという原理であり、その構造を実現するのが困難であり、
原理の実証も未だ行われていない。本発明者等は、熱回収型太陽電池
のコンセプトを提案している(例えば、非特許文献1参照。)。熱回収
型太陽電池は、ホットキャリアが熱緩和を生じる前に取り出しを行う
ことを必要としていない。その為、熱回収型太陽電池には、広汎な光
吸収体材料を用いることができるという利点がある。
他方、太陽電池と熱電変換モジュールを組み合わせることで太陽電
池のエネルギー変換効率を向上する技術が知られている(例えば、特
許文献1および2参照)。熱電変換モジュールでは高温側と低温側と
の温度差が大きいほど出力電圧が向上する。
⮚特許文献1:特公昭51-48037号公報
⮚特許文献2:特開平1-105582号公報
⮚非特許文献1:上出、他、第65回応用物理学会春季学術講演会、講
演番号17a-D101-6
【要約】本開示では、光電変換部(10A)と;熱伝導層(15)と、
複数の第1の接続電極(20)と、複数の第2の接続電極(21)と、
M対のP型熱電変換素子(22)およびN型熱電変換素子(23)
(ただしMは自然数)と、第1および第2の出力電極(24,25)
と、を含む熱電変換部(10B)と;を備え、上記第1および第2の
出力電極(24,25)を出力電極として上記光電変換部(10A)
と前記M対のP型熱電変換素子(22)およびN型熱電変換素子(2
3)とが電気的に直列に接続されてなり、上記第1の接続電極(20)
の第1の温度とその第1の温度よりも低い上記第2の接続電極(21)
の第2の温度との差により発生する上記熱電変換部(10B)の電力
分が、上記光電変換部(10A)の上記第2の温度に対して上記第1
の温度において減少する電力分よりも大きくなるように構成されてな
る、複合発電装置(10)が提供される。
図1 本発明一実施形態に係る複合発電装置の概略構成を示す断面図
【符号の説明】10、100 複合発電装置 10A 光電変換部
10B 熱電変換部 11 吸収層 12 第1電極 13 第2電極
14 赤外線吸収層 15 熱伝導層 20 高温側接続電極 21低温側
接続電極 22、221~225 P型熱電変換素子 23、231~235
N型熱電変換素子 24第1出力電極 25第2出力電極 26 低温体
上記態様によれば、太陽光による熱を吸収して、上記第2の温度から
第1の温度への温度上昇による光電変換部の電力の損失分を超えて上
記第1の温度と第2の温度との温度差によって熱電変換部において熱
電変換による電力を得ることで、従来型の太陽電池よりもエネルギー
変換効率を向上可能な複合発電装置が提供できる。
【発明を実施するための形態】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合発電装置の概略構成を示す断
面図。図1を参照するに、本実施形態に係る複合発電装置10は、光
電変換を行う光電変換部10Aと、熱電変換を行う熱電変換部10B
を備える。光電変換部10Aは、吸収層11と、その太陽光を受光す
る第1面11aに第1電極12と、第1面11aの裏側の第2面11b
に第2電極13とを有する。熱電変換部10Bは、熱電変換を行うM
対のP型熱電変換素子22(221~225)およびN型熱電変換素子23
(231~235)とを有する。ここで、Mは自然数であり、一例として
M=5とした。
吸収層11は、本実施形態では、単結晶系pn接合型半導体である
として説明する。なお、後述するように、それに限定されるわけでは
ない。吸収層11は、第1面11a側にp層11p、第2面11b側
にn層11nを有し、第1電極12は正極になり、第2電極13は負
極になる。
赤外線吸収層14および熱伝導層15は、第2面11bにこの順で
設けられる。
熱伝導層15には、複数の高温側接続電極20が接触して設けられ
る。複数の高温側接続電極20は、各々、互いに電気的に絶縁されて
いる。図1では、高温側接続電極20は、互いに接触しないように離
隔して配置されている。なお、第2電極13は高温側接続電極20を
兼ねている。
M対のP型熱電変換素子22およびN型熱電変換素子23は、各々
の一端(図1では図面の上側の端部)が高温側接続電極20に接触し、
各々の他端が複数の低温側接続電極21の一つと接触している。低温
側接続電極21のうち第1および第2出力電極24、25が、複合発
電装置10の電力を取り出す電極として配置される。なお、電力は電
流Ioutと出力電圧Vとの積で表される。第1出力電極24が、電流を
負荷30へ流す正極となり、第2出力電極25が負荷30から電流を
受ける負極となる。低温側接続電極21並びに第1および第2出力電
極24、25は、低温体26に接触するように配置される。低温体26
は、複合発電装置10の動作時に高温側接続電極20の温度よりも低
い温度に保持される。
複合発電装置10は、吸収層11の第1面11aに配置された第1
電極12が、配線28を介して図1の右側の高温側接続電極20に電
気的に接続され、吸収層11の第2面11bに配置された第2電極13
が左側の高温側接続電極20に電気的に接続される。なお、この例で
は、第2電極13が高温側接続電極20を兼ねているが、別個に設け
てもよい。5対のP型熱電変換素子22およびN型熱電変換素子23
は、電気的に直列に接続されており、具体的には、右側の高温側接続
電極20から、P型熱電変換素子221、低温側接続電極21、N型
熱電変換素子231、・・・、P型熱電変換素子223、第1出力電極
24に電気的に直列に接続され、さらに、負荷30を介して、第2出
力電極25、N型熱電変換素子233、高温側接続電極20、P型熱電
変換素子224、・・・、N型熱電変換素子235および左側の高温側
接続電極20(第2電極13)に電気的に直列に接続される。
複合発電装置10は、太陽光の受光により吸収層11および赤外線
吸収層14の温度が上昇し、吸収層11から直接伝導した熱と吸収層
11および赤外線吸収層14から熱伝導層15を介して伝導した熱と
により高温側接続電極20の温度が上昇する(温度をTHとする。)。
低温側接続電極21は、低温体26(冷却手段として機能する。)によ
って環境温度Tc(低温側温度としてTLとも称する。)に維持される。
高温側接続電極20と低温側接続電極21とに接するP型熱電変換素
子221~225およびN型熱電変換素子231~235は、その両端に
温度差が生じることでゼーベック効果により電位差が発生し、それぞ
れ正孔、電子の拡散が高温側から低温側に生じて、巨視的に電流が流
れる。このようにして熱電変換部10Bにおいて電力が発生する。
他方、光電変換部10Aでは、吸収層11において、太陽光の受光
により光励起によって生じた電子正孔対が内部電界によって移動して、
第1電極12と第2電極13との間に内部電圧が生じる。第1電極
12から電流が配線28を介して熱電変換部10B側に流れ、第2電
極13に戻ってくることで電力が発生する。吸収層11は、受光前の
温度(例えば、環境温度(温度TL))から、動作時の温度が上昇して高温
(温度TH)になると、内部電圧が低下する。このようにして光電変換部
10Aで発生する電力が動作時に低下する。複合発電装置10は、熱
電変換部10Bで発生する電力分は、光電変換部10Aが低温側の温
度TLにおいて発生する電力に対して高温側の温度THになった場合に
減少する電力分よりも大きくなるように熱電変換部10Bが構成され
る。
図2は、本発明の一実施形態に係る複合発電装置の電気的な等価回
路を示す図である。図2において、高温側接続電極20と低温側接続
電極21の一部を省略している。図2を図1と合わせて参照すると、
複合発電装置10は、図2の右側の熱電変換素子221~223、231
~232と吸収層11と、図2の左側の熱電変換素子224~225、
233~235が直列に電気的に接続されている。先の図1に示したよ
うに、右側の熱電変換素子221~223、231~232も、左側の熱
電変換素子224~225、233~235もP型熱電変換素子22とN
型熱電変換素子23とが高温側接続電極20または低温側接続電極21
を介して交互に直列に電気的に接続されている。
光電変換部10Aの吸収層11では、電流として、受光により発生
した正孔電子対による光生成成分Isunと正孔電子対の輻射再結合に
よる放射損失成分Iradがあり、この差分の電流Iが熱電変換素子22、
23に流れる。吸収層11で生じる内部電圧はVcellで表される。放
射損失成分Iradは内部電圧Vcellと吸収層11の温度TH(吸収層11
は高温側温度になっているため)に依存する。
【図2】複合発電装置の電気的な等価回路を示す図
10A 光電変換部 10B 熱電変換部
熱電変換部10Bにおいて、第1電極12と第1出力電極24との間
に接続された図2の右側の熱電変換素子22、23においては、熱電
変換素子の数をM1とすると、ゼーベック効果によって発生する電圧は、
温度差(TH-TL)とゼーベック係数αと熱電変換素子の数M1(図1で
はM1=5)によってαM1(TH-TL)で表される。一方、それらの熱電
変換素子22、23における電圧降下は1つの熱電変換素子の電気抵
抗Rを用いてM1Rと表される。したがって、右側の熱電変換素子22、
23での正味の電圧はΔVA=M1(α(TH-TL)-RIout)で表される。
熱電変換部10Bにおいて、第2電極13と第2出力電極25との間
に接続された図2の左側のM2個の熱電変換素子22、23における
正味の電圧は、同様にして、ΔVB=M2(α(TH-TL)-RIout)で表さ
れる(図1ではM2=5)。ただし、M1+M2=2Mである。したがって、
第1出力電極24および第2出力電極25との間の出力電圧Vは、Vcell
+2M(α(TH-TL)-RIout)となる。出力電圧Vと電流Ioutの積が
複合発電装置10の出力(電力)となる。 なお、M1およびM2は、1
以上であることが好ましい。すなわち、第1電極12と接続 された
高温側接続電極20と第1出力電極24との間に少なくとも1個の熱
電変換素子が接続されることが好ましい。高温側接続電極20と第1
出力電極24とが直接あるいは導電体の配線で接続されると、熱電変
換素子よりも電極および配線の方が熱伝導率が良好なため、高温側か
らの熱エネルギーが第1出力電極24を介して低温体に放熱されてし
まい、熱損失が生じてしまう。同様の理由により、第2電極13(高
温側接続電極20を兼ねる。)と第2出力電極25との間に少なくと
も1個の熱電変換素子が接続されることが好ましい。
図1に戻り、吸収層11は、半導体材料を含み、例えば、シリコン、
アモルファスシリコン、SiC、シリサイド半導体であるBaSi2、
OsSi2、Ca2Si等、Se、化合物半導体としては、InP、Ga
As、AlSb、CdTe、CdSe等、多元系化合物混晶である
AlxGa1‐xAs、GaxIn1‐xAs、InxGa1‐xP、InxGa1‐x
N等、ペロブスカイト結晶構造を有する材料であるMAPI(CH3N
H3PbI3)、この鉛(Pb)をSnやGeで置き換えた類似体、ホルム
アミジニウムヨウ化鉛(FAPI)、複合ハライド(FA,MA)PbI3
(FAMAPI)、およびその類似体、CIGS系材料(Cu,In,
Ge,Se,Sを原料とする化合物)、CZTS系材料(Cu.Zn,
Sn,Sを原料とする化合物)、有機系半導体(ポリチオフェン(P3
HT)等)等を用いることができる。
吸収層11は、太陽光が入射する第1面11aまたは反対側の第2
面11bあるいはその両方にテクスチャリングを施すことが光吸収が
良好になる点で好ましい。吸収層11は、単結晶系pn接合型半導体
としたが、p型およびn型不純物をドープしてもよい。吸収層11が
Siの場合は、ドーパントとしては、p型ドープ領域11pは、例え
ばB、Al、Ga、Inを用いることができる。n型ドープ領域11n
は、例えばP、As、Sbを用いることができる。これにより、吸収
層11で生成された電子は電子の伝導度の高いn型ドープ領域11n
を流れて第2電極13に到達し、吸収層11で生成された正孔は正孔
の伝導度の高いp型ドープ領域11pを流れて第1電極12付近に到
達する。なお、吸収層11は、その表面が露出する部分に、パッシベ
ーション層(不図示)を形成してもよい。パッシベーション層は、例え
ば、アモルファスシリコン(a-Si:H)、熱酸化膜(SiO2)、シリ
コンナイトライド膜(a-Si1‐xNx:H)を用いることができる。
第1電極12および第2電極13は、導電性材料からなり、例えば、
アルミニウム、ニッケル、銅、パラジウム、銀、白金、金等の金属お
よびこれらの合金、不純物イオンをドープしたケイ素等の半導体材料、
酸化チタン(TiO2)、スズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(
ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、AZO(ZnO:Al)、GZ
O(ZnO:Ga)、ATO(SnO2:Sb)、FTO(SnO2:F)、
ZnMgO等の導電性金属酸化物およびそれらの混合物、導電性ペー
スト等から選択される。また、第1電極12および第2電極13は、
それぞれ上記の互いに異なる導電性材料を積層してもよい。赤外線吸
収層14は、赤外線の波長領域で吸収率の高い材料からなり、例えば、
硝酸処理NiPメッキが施された部材、VANTAブラック、Metal Velvet
(登録商標)等が挙げられる。吸収層11を透過した光、特に赤外線を
吸収して熱に変換することで、赤外線吸収層14の温度が上昇し、そ
れに接する熱伝導層15を介して高温側接続電極20を加熱すること
ができる。なお、赤外線吸収層14は設けた方が高温側接続電極20
を加熱するための熱量を得られる点で好ましいが設けなくともよい.。
熱伝導層15は、熱伝導が良好な材料からなる。熱伝導層15は、
接する赤外線吸収層14あるいは吸収層11からの熱を高温側接続電
極20に伝導する。熱伝導層15は、少なくとも高温側接続電極20
に接する面が電気絶縁材料が形成されていることが好ましい。その代
わりに熱伝導層15自体が電気絶縁材料でもよい。熱伝導層15は、
例えば、熱良導体材料で電気絶縁材料である窒化アルミ(AlN)層ま
たはその板を用いることができる。高温側および低温側接続電極20、
21並びに第1および第2出力電極24、25は、導電性材料からな
り、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、パラジウム、銀、白金、
金等の金属およびこれらの合金を用いることができる。
P型熱電変換素子221~225およびN型熱電変換素子231~2
35は、公知の熱電変換材料を用いることができ、例えば、テルルビ
スマス(Bi2Te3)系材料またはPbTe材料を用いることができる。
P型熱電変換素子221~225には、Bi2Te3系材料の場合には
Sb2-xBixTe3、PbTe材料の場合にはアクセプタとして例え
ばナトリウム(Na)およびゲルマニウム(Ge)を添加した材料を用い
ることができる。また、N型熱電変換素子231~235には、Bi2T
e3系材料の場合にはBi2Te3-XSe2-X、PbTe材料の場合にはド
ナーとして例えばヨウ化鉛(PbI2)を添加した材料を用いることがで
きる。
実施形態によれば、複合発電装置10は、光電変換部10Aと熱電
変換部10Bとを電気的に直列に接続することで、光電変換部10A
および熱電変換部10Bで発生した電圧を足し合わせた出力電圧が得
られ、熱電変換部10Bで発生する電力分は、光電変換部10Aが低
温側の温度TLにおいて発生する電力に対して高温側の温度THになっ
た場合に減少する電力分よりも大きくなるように熱電変換部10Bが
構成される。これにより、太陽光による熱を吸収して、温度TLから温
度THへの温度上昇による光電変換部10Aの電力の損失分を超えて温
度TLと温度THとの温度差によって熱電変換部10Bにおいて熱電変
換による電力を得ることで、従来型の太陽電池よりもエネルギー変換
効率を向上可能な複合発電装置10を提供できる。
なお、本実施形態の複合発電装置10において、p型およびn型の
極性を反転した構成を適用してもよい。この構成は、具体的には、光
電変換部10Aの吸収層11のp層11pおよびn層11nを入れ替え
て、熱電変換部10BのP型熱電変換素子22とN型熱電変換素子23
とを入れ替えたものである。この構成においても上述した複合発電装
置10と同様の作用効果を奏する。
【図3】実施形態に係る複合発電装置の一実施例の概略構成を示す図
100 複合発電装置 10A 光電変換部 10B 熱電変換部 11
吸収層 12 第1電極 13 第2電極 14 赤外線吸収層 15 熱
伝導層 20 高温側接続電極 21低温側接続電極 22、221~225
P型熱電変換素子 23、231~235N型熱電変換素子 24第1出
力電極 25第2出力電極 26 低温体
図3は、本発明の一実施形態に係る複合発電装置の一実施例の概略
構成を示す図であり、(a)はx軸方向に分解した斜視図、(b)は吸収
層を第2面から視た図である。図3(a)および(b)を参照するに、実
施例の複合発電装置100は、吸収層11が第1面11aおよび第2
面11bに、それぞれ、グリッド状の第1電極12、第2電極13が
設けられている。第1電極12および第2電極13は、y方向に主線
12a、13aが延在し、主線12a、13aからそれぞれz軸方向
に支線12b、13bが延在するように配置されている。
赤外線吸収層14は、吸収層11の第2面11bの全体と接して設
けられている。熱伝導層15は、一方の主面が赤外線吸収層14に接
し、他方の主面が高温側接続電極20に接して設けられている。
高温側接続電極20は、互いに分離して配置されている。図示の便
宜のためy軸方向およびz軸方向に互いに離間して配置されているが
互いに接触しないように近接して設けることが好ましい。また、互い
に離間する空間に熱伝導性が良好で電気的に絶縁する材料を充填して
もよい。これにより、熱伝導層15から高温側接続電極20への熱伝
導性が良好となる。
P型およびN型熱電変換素子22、23は、図3において上端面が
高温側接続電極20に接し、下端面が低温側接続電極21と第1およ
び第2出力電極24、25とに接するように設けられている。P型お
よびN型熱電変換素子22、23は、円柱状でもよく、角柱状でもよ
い。
低温側接続電極21と第1および第2出力電極24、25とは、互
いに分離して配置されており、高温側接続電極20と同様に配置して
もよく、互いに離間する空間に熱伝導性が良好で電気的に絶縁する材
料を充填してもよい。
低温体26は、一方の主面が低温側接続電極21と第1および第2
出力電極24、25に接して設けられる。低温体26は、図示のよう
に平板状でもよく、図において下の面が放熱構造、例えば、突起を多
数設けてもよく、公知のヒートシンクを設けてもよい。
複合発電装置100は、吸収層11の第1面11aの第1電極12
から配線28を介して、高温側接続電極20に電気的に接続され、P
型熱電変換素子22、低温側接続電極21、N型熱電変換素子23、
高温側接続電極20、…、N型熱電変換素子23の順にM1個のP型
およびN型熱電変換素子22、23が交互に直列に電気的に接続され
第1出力電極24から一方の出力が取り出される。他方、複合発電装
置100は、吸収層11の第2面11bの第2電極13から配線28
を介して、高温側接続電極20に電気的に接続され、N型熱電変換素
子23、低温側接続電極21、P型熱電変換素子22、高温側接続電
極20、…、P型熱電変換素子23の順にM2個のP型およびN型熱
電変換素子22、23が交互に直列に電気的に接続され第2出力電極
25から他方の出力が取り出される。
[複合発電装置のエネルギー効率のシミュレーション]
実施の形態に係る複合発電装置のエネルギー効率のシミュレーショ
ンを先の図1および図2を適宜参照しつつ説明する。
本シミュレーションでは、吸収層11は、その半導体材料のエネル
ギーバンドのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を全て吸収す
ることを仮定して、光励起による電流を光生成成分Isunとする。吸
収層11内の輻射再結合による電流損失を放射損失成分Iradとする。
この場合、吸収層11の電流(電流密度で表す。)I(A/m2)では、
式1で表される。
【数1】
ここで、光生成成分Isunは式2で表され、放射損失成分Iradは式3
で表される。
【数2】
【数3】
ここで、CRは集光倍率、qは電気素量、cは光速、Rsunは太陽の半
径、LESは太陽と地球との距離、EgAは吸収層11の半導体材料のバ
ンドギャップエネルギー、
【数4】
はプランク定数であり、kBはボルツマン定数、Tsunは太陽表面温度で
あり6000Kとし、Vcellは吸収層11で生じる内部電圧である。
出力電圧Vと吸収層11の内部電圧Vcellの差は式4で表される。
【数5】
ここで、断面積SCのP型およびN型熱電変換素子22、23を流れる
電流密度je(A/m2)は、je=ISA/SCで与えられるとし、熱電変
換材料のゼーベック係数をα (V/K)、電気伝導率をσ(1/(Ωm))、
P型およびN型熱電変換素子22、23の高温側温度(TH)と低温側
温度(TC)の温度差をΔT(=TH-TC)、P型およびN型熱電変換素子
22、23の長さをLc(高温側接続電極20と接する端部と低温側接
続電極21の端部とを結ぶ方向に沿った長さ)である。なお、Iは上
述した吸収層11の電流密度、SAは吸収層11の断面積(電流が流れ
る方向に対して垂直な面の面積)(m2)、SAはP型およびN型熱電変換
素子22、23の断面積(m2)である。
複合発電装置10の動作時の温度差ΔTは、式5の微分方程式を立式
する。
【数6】
T(Lc)=Tc ・・・(6)
dT/dx(x=0)=-jQ/κ ・・・(7)
ここで、x軸はP型およびN型熱電変換素子22、23の高温側の端
部と低温側の端部とを結ぶ方向と平行に設定し、κはP型およびN型
熱電変換素子22、23の熱伝導率(W/(m・K))である。
式5を、式6および式7を境界条件として、解くことにより、式8
が得られる。
【数7】
ここで、ξは無次元量であり、式9により定義した。
ξ≡αje LC/κ ・・・(9)
式8において、P型およびN型熱電変換素子の高温側接続電極に接
する端面から流入する1本当たりの熱流密度jQ(W/m2)は式10で
表されるとした。
jQ=Q/(2MSC)
=SA(Psun-PT-Prad(TH,Vcell)-IVcell)/(2MSC)
・・・(10)ここで、熱流量Q(
W)は、吸収層11における入射光分(Psun)、透過光分(PT)および輻
射再結合損失分(Prad)のエネルギー流密度(W/m2)を、それぞれ、
下記式11~13とした。
【数8】
複合発電装置10では、赤外線吸収層14を設けているので、透過
光分(PT)は全て熱に変換されたとして、式10の代わりに式14を用
いる。
jQ=Q/(2MSC)
=SA(Psun-Prad(TH,Vcell)-IVcell)/(2MSC) ・・・(14)
以上の立式により、複合発電装置10の電流電圧特性(I-V特性)
および式15で表されるエネルギー変換効率ηをシミュレーションに
より求めることができる。
η(%)=100×IV/Psun ・・・(15)
上記式9で定義したξについてξ<1の場合は上記式8のξ≪1に
対する漸近式として式16の近似式を用いることができる。
【数9】
式16を上記式5に代入すると式17が得られる。直列接続したM
対のP型およびN型熱電変換素子22、23によって、電圧上昇分は
式17、電力の増加分Gは式18で表される。
ここで、λは、
λ≡(MjQ/je)×(ασ/κ) ・・・(19)
により定義した。λは、1対の熱電変換素子22、23当たりの電気
抵抗による電圧損失に対する、M対により得られる熱起電力の比(割
合)を表す因子である。
式18によれば、M/λ<1の場合は、電力の増加分Gが正値にな
り、M対のP型およびN型熱電変換素子22、23を設けた効果が奏
される。
他方、吸収層11の温度(TH)が上昇すると、吸収層11の太陽電池
としての内部電圧Vcellが低下し、それによる電力の減少も生じるおそ
れがある。内部電圧Vcellの低下は開放電圧の低下に主に起因すると
すれば、その電力の減少分L(W)は、式20で表される。
【数12】
ここで、C1は、光電変換部10A単体の太陽電池としての曲線因子
をフィルファクタFF、室温での開放電圧の温度係数を式21で表さ
れるとすると、式22で表される。フィルファクタFFは、光電変換
部10A単体の最大出力時の電圧Vmax、電流I(Vmax)、開放電圧を
VOC、短絡電流をIshとしたときにI(Vmax)Vmax/VOCIshで定義さ
れる。C1は、1対の熱電変換素子22、23当たりの熱起電力に対
する、最大電力点における吸収層11の内部電圧の温度変化の割合を
表す因子である。
【数13】
【数14】
上記式18および20により、光電変換部10Aを単体で動作させた
場合に対して、複合発電装置10による正味の電力増加Gnetは式23
で表される。
式23において、右辺の括弧内が正値になれば、光電変換部10A単
体で動作させた場合よりも複合発電装置10の電力が増加することに
なる。すなわち、
1-(M/λ+C1/M)>0 ・・・(24)
である。 式24の左辺のカッコ内の第1項は、1対のP型およびN型
熱電変換素子22,23において、得られる熱起電力に対する電気抵
抗による電圧損失の比であり、第2項は、1対のP型およびN熱電変
換素子22,23において得られる熱起電力に対する、1対のP型お
よびN熱電変換素子当たりの(つまりP型およびN型熱電変換素子の
対数Mで除した)最大電力点における光電変換部10Aの内部電圧の
温度変化の割合である。この第1項と第2項との和が1よりも小さい
場合に複合発電装置10の出力電力が光電変換部10A単体で発電を
行った場合の出力電力よりも多くなる。さらに、上記式24を満たす
範囲では、より低い温度でエネルギー変換効率を増加できる点でMは
大きい程好ましい。 シミュレーションでは、P型およびN型熱電変換
素子22,23にBi2Te3系材料を用いたとして、電気伝導率σ=
105(1/(Ωm))、熱伝導率κ=1(W/(mK))、ゼーベック係数
α=0.0002(V/K)を用いた。吸収層11に結晶シリコン(エネ
ルギーギャップEg A/q=1.12V)を想定し、環境温度Tc=
300Kでの光電変換部10A単体での太陽電池特性パラメータをフ
ィルファクタFF=0.869,開放電圧VOC=0.868Vとした。
複合発電装置10が赤外線吸収層14を備えていることにより、入射
光エネルギーの約70%(=0.7×Psun)が熱流となったとした。最
大電力動作で吸収層11における電流損失がほぼないことを想定した。
なお、低温側接続電極の温度TLはTcと同じ300Kとした。計算の
結果、上記式19で定義したλが17.9、上記式22で定義したC1
が1.8が得られた。これを用いて、上記式23で表される複合発電装
置10による正味の電力増加Gnetの左辺に含まれる上記式24の左辺
(1-(M/λ+C1/M))をP型およびN型熱電変換素子の対数Mの関
数として計算した。
図4は、本発明の一実施形態に係る複合発電装置のパラメータの計
算例を示す図である。図4において、横軸はP型およびN型熱電変換
素子の対数M、縦軸は式24の左辺(1-(M/λ+C1/M))である。
図4を参照するに、Mが3以上15以下では(1-(M/λ+C1/M)
)が0よりも大きくなっていることが分かる。このことから、3≦M≦
15の範囲でMを選択することで、複合発電装置10は、光電変換部
10A単体の構成の太陽電池よりも大きなエネルギー変換効率が得ら
れることが分かった。
【図4】実施形態に係る複合発電装置のパラメータの計算例を示す図
図4は、本発明の一実施形態に係る複合発電装置のパラメータの計算
例を示す図である。図4において、横軸はP型およびN型熱電変換素
子の対数M、縦軸は式24の左辺(1-(M/λ+C1/M))である。図
4を参照するに、Mが3以上15以下では(1-(M/λ+C1/M))が
0よりも大きくなっていることが分かる。このことから、3≦M≦1
5の範囲でMを選択することで、複合発電装置10は、光電変換部
10A単体の構成の太陽電池よりも大きなエネルギー変換効率が得ら
れることが分かった。図4において、(1-(M/λ+C1/M))が0に
なる点が2カ所ある。それは、Mが小さい側がλ/2-((λ/2)2-
λC1)1/2であり、大きい側がλ/2+((λ/2)2-λC1)1/2である。
このことおよび最適なMの詳細な検討によれば、Mはλ/2に最も近
い自然数が選択されることが、高温側の温度THの上昇に対してエネル
ギー変換効率がより向上する点で、好ましい。次に、M=6および10
で、上記式2における集光倍率CRを1(非集光)の場合、複合発電装
置10のエネルギー変換効率を計算した。
【図5】複合発電装置のエネルギー変換効率の計算例を示す図
図5は、本発明の一実施形態に係る複合発電装置のエネルギー変換効
率の計算例を示す図であり、図6は、図5に示した計算例の数値を示
す図である。図5において、横軸は複合発電装置の出力電圧(V)であ
り、縦軸は複合発電装置のエネルギー変換効率η(%)である。図5お
よび図6において、上記式(9)で定義されるξに含まれる複合発電装
置10の設計パラメータであるP型およびN型熱電変換素子の実効長
leff=(SA/SC)LCを変えてξ<1の範囲でξ1~ξ4について計算し
た。なお、SA、SCおよびLCの定義は上記式4における定義と同様で
ある。また、出力電圧が高い側(図5の右側)においてエネルギー変換
効率ηが0になる出力電圧は、出力電流が0になる電圧であるから開
放電圧VOCを表していることになる。
【図6】図5に示した計算例の数値を示す図
図5および図6を参照するに、複合発電装置のエネルギー変換効率η
は、M=6でも10でも、その最大値(最大エネルギー効率)が、従来
の単接合型太陽電池のエネルギー変換効率ηの理論的限界である29.5
%よりも高くなっていることが分かる。特に、ξの増加に伴って、最
大エネルギー効率ηmaxが上昇し、M=6のξ4では34%に達してい
ることが分かる。開放電圧VOCも、ξの増加に伴って増加しているこ
とが分かる。以上のことから、複合発電装置10は、従来の理論的限
界を超えるエネルギー変換効率を達成できることが分かる。さらに、
図6において、M=10およびleff=3.0において高温側温度(吸収
層の温度)THが466.9Kの場合、最大エネルギー変換効率ηmaxが
33.5%となり、他方、M=6およびleff=2.0で同様のTHが
488.5Kでηmaxが32.4%となっている。これらのことから、上
記式24を満たす範囲ではMが大きい程好ましいことが分かった。
【図7】比較例の複合発電装置のパラメータの計算例を示す図
図7は、比較例の複合発電装置のパラメータの計算例を示す図である。
図7において、複合発電装置10の電力が光電変換部10A単体で動
作させた場合よりも増加しない場合、すなわち、上記式24を満たし
ていない範囲でのM=2および20を用いた場合を比較例とした。
図7を参照するに、比較例のM=2および20のいずれの場合も、
実効長leff=0.1の場合が最大エネルギー変換効率ηmaxが29%で
あり他の実効長leffではそれよりも低くなっている。このことから、
上記式24を満たしていない範囲では熱電変換部によるエネルギー変
換効率を上昇させる効果がないことが分かる。
以上、本発明の実施形態および実施例について詳述したが、本発明
は係る特定の実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求
の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可
能である。本発明の実施形態に係る複合発電装置10は、太陽光を受
光する前提で説明したが、太陽光に限定されず、吸収層11が光励起
を生じる光であれば特に限定されない。