彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」
1.バクチノキ 2.リンボク 3.ウワミズザクラ
4.シウリザクラ 5.ソメイヨシノ
【概説】新型コロナウイルスは、世界の仕組みをどう変えるのか。経
済発展に追いつかない中国の統治体制、バルカン化のリスク孕むアジ
ア、米国の社会的分裂、科学への過剰な自信、EUの決断等、顕わに
なった世界経済の危機を活写する。
1.The chain is only as strong as its weakest link――鎖の強さ
はその最も弱い輪によって決まる
2.パンデミックが起き、世界全体に拡大し、未曽有の経済災害とな
ったのは、グローバル経済のエコシステムにウィーク・リンクがあ
ったのではないか。世界的な供給体制、都市への集中、人やモノの
移動速度と複雑な混じり合い、政治や宗教による対立や断絶が、パ
ンデミックを起点とした世界的な経済危機にどのようにつながった
かをダイナミックに描く。
3.著者は日本経済の長期停滞やリーマン・ショック、ユーロ危機な
どについて、内外の情勢をすばやく集め、ノンフィクション的な筆
致やアカデミックな知見を織り交ぜながら数々の名著を執筆してき
た。経済学者。2019年からは経済財政諮問会議の民間議員も務めて
いる。
【目次】
序 章 世界システムの創造と崩壊
第1章 スペイン風邪と新型コロナ
第2章 ソーシャル・ディスタンシング
第3章 自信過剰(Hubris)
第4章 デジタル・デバイド
第5章 中国
終 章 「新冷戦時代」という神話
竹森俊平:1956年東京都生まれ。米ロチェスター大学経済学博士号取
得。慶應義塾大学教授。経済財政諮問会議民間議員。「経済論戦は甦
る」で第4回読売・吉野作造賞を受賞。
ホニグスバウム,マーク【著】
NHK出版(2021/05発売)
【概説】1918年の「スペイン風邪(インフルエンザ)」の流行以来、
人類を襲ったいくつもの感染症。科学史・医療社会学を専門とする著
者は、10年にわたる調査をもとに、未知の病原体の発見と感染の急速
な広がりが大規模な被害とパニックを引き起す過程、それらに対する
科学者たちの懸命の取り組みを克明に描き出す。人間の「認識の盲点」
を突くパンデミックに対抗するには特定の分野の専門知だけでは不十
分であり、生態学的・免疫学的・行動学的要因を総合的に分析する必
要があることを明らかにする一冊。「フィナンシャル・タイムズ」ベ
ストブック2019に選出された話題作に、新型コロナウイルスの章を加
えた決定版。
【目次】
サメと感染症―ポリオ
青い死病―スペイン風邪
天使の町の疫病―ペスト
オウムが運んだヒステリー―オウム病
フィリー・キラー―レジオネラ肺炎
在郷軍人病ふたたび―レジオネラ肺炎
アメリカのエイズ、アフリカのエイズ―後天性免疫不全症候群
SARS―スーパースプレッダー―重症急性呼吸器症候群
国境地帯のエボラウイルス―エボラ出血熱
ジカ熱のZ―ジカウイルス感染症
疾病X―新型コロナウイルス感染症
パンデミックの世紀
Mark Honigsbaum,
【著者概歴】ホニグスバウム,マーク(Honigsbaum, Mark):医学史
家、ジャーナリスト。ロンドン大学シティ校上級講師。「ガーディア
ン」紙での調査報道記者や特集記事の執筆者等、複数の新聞社でキャ
リアを積んだ後、博士号を取得。感染症の歴史を専門としており、医
学・環境人文学と科学社会学の知見を組み合わせて、ワクチンをめぐ
る科学的知識についての研究に取り組む。一般紙「オブザーバー」や
医学誌「ランセット」に定期的に寄稿。学術活動と並行して科学をテ
ーマにしたアニメーションを作成しており、「パンデミックはどのよ
うにして起こるのか?」はYouTubseのTED‐Edチャンネルで300万回
以上視聴されている。
【翻訳者概歴】鍛原多惠子:米国フロリダ州ニューカレッジ卒業(哲
学・人類学専攻)。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時
に掲載されていたもの。
河出書房新社(2021/09発売)
サイズ 46判/ページ数 320p/高さ 20cm
商品コード 9784309228303 NDC分類 345.1 Cコード C0022
--------------------------------------------------------------
第17章 デジタルは自由を得る
租税回避は、やればやっただけの見返りのある、
唯一の知的探究である。
ジョン・メイナード・ケインズ
3D印刷や「モノのインターネット」に対する課税方法
テクノロジー企業への課税は複雑になるばかりである。税法は価値連
鎖に追いついていないので、ある企業がその規定どおりに納税したい
と思っても(そういう企業が犬半である。法律に違反したくないのだ)、
困難である場合が少なくない。複数の国や地域に設置されたサーバー
から他のさまざまな国や地域にデータが配信される場合、利益の所在
地はどこになるだろう? 費用は? IPは? 創出される価値は?
VATの納付場所は? 二垂課税のリスクはどうなる? これらを
始めとする数多くの問いは、いまだに答えが出ないままになっている。
3D印刷についても似たような問題が生じるだろう(この技術を用い
た商売が軌道に乗ればの話だが)。読者の自宅やその近くに3Dプリ
ンターを持っている人がいるかもしれない。こういう商品を購人する
と、別の国や地域、たいてい、土地や光熱費の安い、安全だが遠距離
の場所である)にあるサーバーから使用説明のデータが送信される。
その際に使用されるプログラムは別の国に、IPはこれまた別の国に
ある。この場合も、創出される価値の所在地はどこになるだろう?
利益は? 儲けを得るのは誰だろう? 課税はどうなる? どこに納
税する? 地理上の困難は数かぎりなく存在する。一方、製造業は、
工場、倉庫、輸送機関が----それに、通関手続きも----迂回されるの
で、やり方を一新せざるを得なく。なる。商品の移動やサービスの提
供に課税するという従来の決まりきったやり方はそのまま継続される
ことはできないだろう。政府の収入が脅かされている。モノのインタ
ーネット(IoT)」の発展により、これから自宅にも、職場にも、イン
ターネットに接続できるデバイスがどんどん増えるだろう。そこかし
こにさまざまな種類のセンサがついている。それらはお互い同士でデ
ータをやりとりする。簡単にいえば、暖房器具はもうすぐ住人が帰宅
することを感知する。スマートウオッチに組みこまれた位置情報トラ
ッカーにつながっているからである。そこで、自らスイッチを入れ、
住人が帰宅したときに快適な室温になるよう部屋を暖めはじめる。
照明器具は、住人が部屋に入ると点灯する。大都市レベルのエネルギ
ー管理もこれと同じ原理で行なわれる。通行人が一人もいないとき、
街灯をともしておく必要はないというわけである。IoT向けにつくられ
る---実際、IoTの入りこまない領域を見つけるほうが難しいくらいだ
ろう。こういうデータのやりとりは、課税しやすい取引、すなわち商
品やサービスの販売をともなう。たとえば、キッチンの冷蔵庫が、牛
乳やチーズなどの食品が切れているのを感知し、配送を依頼する。す
ると30分後、商品を搭載したドローンが到着する。とはいえ、たい
てい、こういうわかりやすい販売方法がとられるのではなく、たんに
情報あるいはデータの交換が行なわれるのみだろう。そして、この交
換によってなんらかの富が築かれるとしても、課税できる金融取引が
生まれるとはかぎらない。たいていの場合、何か商品で、何かサービ
スかの定義があいまいである。取引に法定通貨が使われないかもしれ
ない。前述の、国境をまたいだ地理上の難題はここにも存在する。政
府がこういうものにどう課税するのかについては、いまもって定かで
はない。たとえば、売上板や取引税、一種の通信税、電気通信税ある
いはインターネット税を適用するのかもしれない----しかし、後者の
徴収は、アメリカでは困難である。というのも、連邦議会が「インタ
ーネットアクセス税、また、電子商取引に課されるさまざまな差別税
の施行について、恒久的一時停止」を宣言しているからだ。
「世界の工業国の政府どもよ、肉と鋼鉄のからだを持った、退屈きわ
まりない巨人どもよ」と、グレイトフル・デッドの楽曲の作詞家であ
るジョン・ペリー・バーロウは「サイバースペース独立宣言」に書い
た。「私は精神の新たな本拠、サイバースペースから生まれでた。未
来のために要求しよう。過去に属するおまえたちは、われわれにかか
わるな。おまえたちはわれわれに歓迎されない。われわれの集う場所
に、おまえたちの支配はおよばない……。サイバースペースは、おま
えたちの国境の内側には存在しないのだ」 1996年に書かれ、広く出
回ったこの文書は、もちろん法の裏づけを持たないが、いま政府を悩
ませている問題をつくりだしたインターネットの基本的な側面をとら
えている。その問題というのが、複数の国にまたがって存在するデジ
タルという無形物に、どのように課税するかということである。
Source: WIRED.jp
課税モデルの混乱はこれからも続くだろう。2020年代には自律分散
型組織(DAO)が続々と出現する。DAOは本社を持たない。中央に公式
組織を持たない。どこかの国や地域に拠点を持つわけでもなければ、
中央に障害点を有するわけでもない。ビットコインと同じく分散型ネ
ットワークであり、主体を持たないため、閉鎖させることも、課税す
ることもできない。通過は、法定通貨をやりとりする既存の経済活動
とは別に、自ら発行するトークンを使う、 DAOのプラットフォームと
事業運営はプログラムによって自動化されている。このプログラムは
たいてい公開されたソースコードから作成されている。DAOの開発
者の多くはクリプトアクティビズムもしくはリバタリアニズムの世界
観を持ち、国家に取ってかわる意向をはっきりと□にしている。2000
年代から2010年代、巨人テクノロジー企業によって従来の税収モデル
を壊されてしまったときの政府は、予期せぬことに面食らっているよ
うに見えたかもしれない。だがこのDAOは、政府にとってはそれより
も思いがけないものになる。
政府は新たなテクノロジーによっていまの窮状に追いこまれた。現
行の税法は、非デジタル時代に、国境がはっきりした世界のために定
められたものだ。形のないデジタル世界に、公正に課税する方法をど
うにか編み出さないかぎり、大きな政府の社会民主モデルはうまく行
かないだろう。このモデルが生き残れるほどの税収はなくなる。ある
集団が重税を課され、別の集団が節税策によって課税を免れるという
経済的不平等は、長くは続かないだろう。人びとの猛反発を招くこと
になるからだ。
「征服工」ウィリアムはイングランド各地に査定言の一団を派遣し、
国土の価値を評価させた。彼らの訓告結果は、地租課税のための土地
台帳、ドゥームズデイ・ブックにまとめられた。いまも昔も、評価額
の算出とは、有形のものを計測し、勘定し、評価することである。イ
ギリスの発明家のマイケル・ファラデーにはこんな逸話がある。電気
とそれに関連する自分の発見について、当時の大蔵人臣のウィリアム・
グラッドストンに説明していたところ、グラッドストンはだんだん苛
立ちはしめた。そして、「結局、それはなんの役に立つのだ?」と不
機嫌に試ねた。ファラデーは即座にこう答えた。「いや閣下、おそら
く、閣下はすぐにこの電気というものから税金を取れるようになる」。
国境のないデジタル経済から税金を徴収する方法を、政府はどうに
か見つけなければならなくなる。
株式市場でさえ、形のないテクノロジー企業の価値を従来のやり方で
評価しようとし、四苦八苦している。結果、古いやり方に固執する人
びとからは、実体のないバブル企業だという批判の声がしばしば上が
っている。経済は変化している。税制も変化しなければならないので
ある。
「政府がもっとも効率よく徴収できる税は、動かないものに課する
税である」と述べたミルトン・フリードマンには先見の明かあった。
「サイバースペースは政府の徴税をもっとずっと難しくするだろう。
そしてそのことは、政府の担いうる役割の削減に、非常に垂要な影響
をもたらす」
あとの章で明らかにするが、そんな政府の助けになるのが大量のデ
ータの処理である。科学技術は問題を引き起こすかもしれないが、解
決策にもなるのだ。
Melissa Geiger
第18章 データ----税務当局の新たな味方
「デジタル技術は原因であり、救済策なの」と話すのは、大手会計事
務所のKPMGで国際税務を担当するメリッサ・ガイガーだ。私は、
メリッサと、彼女の同僚で、税務部門のパートナーで、ITの専門家
でもあるクリス・ダウニングに会っている。クリスも彼女に同意した。
「税務当局はデジタルを愛し、デジタルを憎んでいるよ」
ここはロンドンのカナリー・ワーフ地区の素敵なオフィスである。
私かここに来だのは、税の未来に関する答えを求めてのことだ。とく
に、政府にとって悩みの種になりつつある、無形経済への課税方法に
ついて尋ねたい。現時点では、魔法のような解決策は存在しないよう
だ。だがそういうものが見つかるとすれば、それはテクノロジーとい
う乾草の山のなかだろう----とりわけ、データ分析の領域である。何
よりも、デジタル技術は現行の徴収業務の効率を上げる。「デジタル
技術は、いわゆるタックス・ギャップの問題に対する、これまでなか
った解決策だ。タックス・ギャップというのは、本来納付されるべき
税額と実際の納税額との差のことだよ」とクリス。「だんなる非公式
経済でも闇経済でもない。現金のやりとりでもない。たとえていえば、
会計士のもとに大量の領収証を持っていくと、いくつもの間違いが明
らかになるといったことだ。いまの時代、われわれはデジタルで情報
を人手する。電子インボイス、ブロックチェーン、即時報告----こう
いうもののおかげで政府は、これまでならば不可能だった方法で税収
を最大化できるようになっている。適正な金額を徴収することが可能
になれば、税務基準額をいじったり、新鋭導入についてわざわざ政策
を立てたりする必要もなくなる。そうして税収を2%、3%あるいは
4%も増やせれば、その他のいくつかの点はたいして重要ではなくな
ってしまう」
そして、デジタル技術は徴収業務そのものの効率をよくする。単純
なものでは、自動運転車に搭載されたコンピューターが、走行距離一
マイル当たりの税金を自動的に徴収するというやり方も考えられる。
デジタルのデータベースすなわちブロックチェーンは、周知のとおり、
情報の記録や、通貨、データ、資産といった価値の移転に利用される
が、これを税金の徴収に応用することもできそうだ。たとえば、貨物
を搭載した大型コンテナ船の入港時である。貨物の種類に応じ、保険
料、手数料、関税、その他の税の金額が自動的に調べられ、人手を介
さずに支払われる。このシステムのほうがより安価だし、より正確で
ある。
この港つづく
風蕭々と碧い時代
●今夜の寸評: