彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦
国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)
の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひこにゃん」
【男子厨房に立ち環境リスクを考える:代替肉考 ②】
□ 8月5日 燃えるごみ排出量:9.5 kg
□ 8月9日 燃えるごみ排出量:7.5 kg
出所:Blue Horizon
植物由来肉は最良の気候投資
7月7日、ボストン投資顧問事務所(BCG)の調査報告によると、食肉/
乳製品の代替品生産拡大投資は、グリーン・セメント技術投資と比較し、
3倍の温室効果ガス削減効果を、グリーンビルディンと電気自動車と比
べ11倍の温室効果ガス削減効果をもたらすとのこと。例えば、牛肉に対
する大豆生産の温室効果ガス排出量は 6~30分の1。また、発酵製品や
細胞由来肉を含む蛋白質向け投資は、2019年の10億ドルから2021年は50
億円に跳ね上がっている。肉、卵、乳製品の販売に占める代替品の割合
は2%だが、現在の成長傾向を踏まえると、2035年には11%に増加する
見込む、これは、全世界の航空機の排出量とほぼ同等排出量に匹敵。同
社によると技術進歩による生産性拡大及び関連法規変更により市場獲得
や販売がより円滑になり代替肉の拡大普及を後押しすると予測する。
このように、電気自動車、風力タービン、ソーラーパネルへの多くの投
資があり、温室ガス排出削減に役立ったが、その効果は、代替肉の拡大
効果と比べ、その投資効果と比肩するに至らない。詳細には、肉と乳製
品の生産は、農地の83%を使用し、農業の温室効果ガス排出の60%を占
めるものの、カロリーの18%とタンパク質の37%しか供給しておらず、
人類の食事を肉から植物へのシフトは、牧草地や飼料の栽培により破壊
される森林を削減し、牛や羊が生成する強力な温室効果ガスであるメタ
ンの排出量が少なくなることを意味する。
2021年の別のBCGレポートでは、ヨーロッパと北アメリカは 2025 年ま
でに「肉のピーク」に達し、その時点で従来の肉の消費量が減少し始め
る。別の顧問会社ある AT カーニーは、2040年に人々が食る肉製品のほ
とんどが、屠殺動物由来ではなくなると予測。科学者たちは、肉や乳製
品を避けることが地球への環境への影響を減らす唯一最大の方法であり、
豊かな国で肉の消費を大幅に削減することが気候危機を終わらせるため
に不可欠であると結論付ける。気候変動の解決策を評価する Project Dra-
wdown グループは、ほぼ 100のオプションのうちの上位3つに植物ベ
ースの食事を配置。代替タンパク質は、他のセクターで展開された投資
のほんの一部しか受け取っていないとBCGのレポート 「建物の排出量は
食料生産に関連する排出量よりも 57%少ないにもかかわらず、建物は食
料生産の 4.4倍の緩和資金を受け取っている。従来の肉から代替肉への
切り替えは、飛行機の回数を減らしたり、家を改造したりするよりも、
消費者にとって混乱が少ないと報告書は指摘し、さまざまなセクターへ
の投資によるさまざまな排出削減量の見積もりは、グローバル金融市場
協会で開発された方法論を使用して BCGによって作成された。代替タン
パク質の投資家である Blue Horizon も、この新しいレポートに貢献。
Blue Horizon の Bjoern Witte 氏は、私たちはまだ始まったばかり。プ
ロジェクト ドローダウンのジョナサン フォーリー博士は、したがって、
これは注目すべき非常に大きな分野であり、十分に投資されていない分
野で、代替タンパク質は潜在的に大きな気候ソリューションとなると驚
く。しかし、それは単独の解決策と見なされるべきではなく、①食品廃
棄物の全体的な削減、②より植物性の高い食事への移行であり、よく食
べる可能性のある肉や乳製品の栽培など、他の多くの解決策と組み合わ
せることができ。植物由来の肉への移行は、食糧危機の緩和にも役立つ
可能性がある。それが牛であれ、豚であれ、鶏であれ、『仲介者』を排
除している。これらの作物をすべて動物に与えてから食べるのではなく、
人間が消費に作物を直接使用すれば、全体的に必要な作付け面積が減り、
システムの制約が緩和されもする。このレポートには、英国、米国、中
国、フランス、ドイツ、スペイン、アラブ首長国連邦の 3,700人以上を
対象とした調査も含まれている。消費者の30%は、気候にプラスの影響
があれば、代替タンパク質製品に切り替えることが班名。約90%の人が
試食した代替タンパク質製品の少なくとも一部が気に入ったと答えてい
るが、製品価格が従来より高くないと予想する。
【関連情報】
✔ Plant-based meat by far the best climate investment, report finds | Food | The
Guardian, Jul 7, 2022
✔ Plant-based meat by far the best climate investment, report finds, Jul 9.2022
✔ 最高の気候変動対策は「植物由来の肉」とのレポート、投資効率はな
んとゼロエミッション車の11倍 GIGAZINE, Jul 30, 2022
『ついに食べた!』 ~未来の肉「培養肉」の今~
国内初!培養された牛肉を試食 2022.4.20 NHK
厳重に管理された研究室。関係者が固唾を飲んで見守るなか、白衣を着
た研究者がシャーレの中から慎重に取り出したのは…。できたてほやほ
やの「培養肉」。ことし3月、東京大学で、最新の技術で作った国産牛肉
ならぬ、国産「培養肉」の試食が行われる。肉の細胞を培養して新たな
肉を作り出す「培養肉」は、食糧不足の解消や環境負荷の軽減などにつ
ながると、世界中で研究・開発競争が激化しているという。
出所: NHK WEB特集
東京大学大学院情報理工学系研究科の竹内昌治教授と「日清食品ホール
ディングス」の研究グループは、「培養肉」、それもステーキのように
おいしく食べ応えのある「培養肉」の実現を目指して研究を進めてきた
本格的な牛肉の「培養肉」を、人が食べることを想定して作製し、実際
に試食まで行うのは、日本ではこの日が初めて。そもそも「培養肉」と
は、牛などの動物や魚などの肉からとった細胞を、栄養成分が入った液
体の中で培養して増やしたもので、この「培養肉」も「代替肉」の一種。
□「ステーキの壁」を超える
2013年、英国で「培養肉」で作られたハンバーガーの世界初の試食会が
行われた。当時は1個あたり3000万円以上のコストがかかる。現在、主
流となっている技術ではハンバーガーのパテのようなミンチ状の「培養
肉」は作ることができるが、ステーキ肉のようなかたまりの肉にならな
い。件の竹内教授らは、いきなりステーキを作るのではなく、始めは「
しゃぶしゃぶ肉」にチャレンジ。元となるのは牛のほほ肉で、薄い「培
養肉」シートを何枚も重ねることで、ステーキの厚みや立体的な構造を
再現。そして、3年前にこの技術で1センチ弱角のサイコロ状の「培養肉」
の作製に成功している。実際に人の口に入るもの、「食の安全」という
観点でも万全を期す必要がある。はじめての培養肉は、「かみ応えがあ
って口からなかなかなくならない感じがあったことに少し驚きました。
味はしないと思っていましたが、しょっぱさ以外のうまみが出ていて、
決して人工的なものを食べているような感じはありませんでした」との
の感想。グループの目標は、3年後に、縦横7センチ、厚さ2センチ、重さ
100グラム程度の「培養肉」ステーキの実現とおいている。
□ 食べて評価する時代に入った日本の「培養肉」
大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授らのグループが目指すのは、
霜降り牛肉を再現した「培養肉」。実際の牛肉をよく見てみると繊維状
の筋肉と脂肪、それに血管などが複雑に束ねられてできていて、それを
正確に再現することができれば、同じような味や食感が出せるのではな
いかと考える。可能であればですが、目指すのは、本物の牛肉よりもお
いしい『培養肉』だと意気込みを話す。
□ 肉を3Dプリント
松崎教授たちが使うのは特殊な3Dプリンタ。生きた細胞で自由に形を作
ることができる装置。この3Dプリンタは日本の技術が初めて考案してい
る(その経緯資料は、現在休館中の環境工学研究所の『ウェブ図書館』
に保管しているが)。まず、まず、実際の牛肉を筋肉、脂肪に分けて別
々に培養➲できた細胞をそれぞれ3Dプリンターにセットし、細い針先
からゼラチンの中に注入 ➲一定の温度まで上げて培養するとゼラチ
ンが溶け、中から細胞どうしが結合した糸のような繊維が精製➲大手
分析機器メーカーの島津製作所など民間企業2社と共同で、すべてを自
動化する。(以下割愛)
✔ 人工細胞を摂取し人工細胞に囲まれた環境が、どのような影響を与
えるリスクは未知数。時間的なデータ集積が必要だ。それがクリアでき
れば、健全でグリーンで安全な食の安全保障担保に貢献する。
【再エネ革命渦論 023: アフターコロナ時代 292】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」
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コンパクトでスマートでタフな①光電変換素子と②蓄電池及び③水電解
に④水素系燃料電池、あるいは⑤光触媒由来有機化合物合成と完璧なシ
ステムが実現し社会に配置されようとしている。誰がこれを具体的に想
定しただろうか。その旗手に常に日本や世界の若者達の活躍があった。
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● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング
再生可能エネルギー革命 ➢ 2030 ㉔
✺ 「うめきた駅」にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置
8月3日、積水化学工業株式会社は西日本旅客鉄道株式会社が開業を目指
す「うめきた(大阪)駅」にフィルム型ペロブスカイト太陽電池の提供
設置することが決まったことを公表。 フィルム型ペロブスカイト太陽
電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を用いた次世代太陽電池。
軽量で柔軟という特徴を持ち、ビルの壁面や耐荷重の小さい屋根、ある
いは車体などの曲面といった、さまざまな場所に設置が可能。また、塗
布などによる連続生産が可能であること、レアメタルを必要としないこ
となど、既存のシリコン太陽電池の生産面での課題も解決が見込まれて
いる。再生可能エネルギーの普及拡大を加速させ、カーボンニュートラ
ルの実現に大きく貢献に期待する。
同社は、独自技術である「封止、成膜、材料、プロセス技術」により、
業界に先駆けて屋外耐久性10年相当を確認し、30cm幅のロール・ツー・
ロール製造プロセスを構築。さらに、同製造プロセスによる発電効率
15.0%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に成功。現在は、実
用化に向けて、1m幅での製造プロセスの確立、耐久性や発電効率のさら
なる向上を目指し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグ
リーンイノベーション基金も活用して開発を加速させていくと意気込で
いる。
✔ 積水化学工業とは色素増感型太陽電池の開発で技術開発部長や岐阜
大学との共同研究グループの一員であったこと。「梅北(大阪)」は
いまは亡き実弟(今年4月12日に他界)らとのホームグランドあったこ
とを思い出し、積水学園出身で大日本スクリーンの社員であった近藤
勝巳氏など思い出すが、彼らのためにも夢の実現に、日本のエネルギ
ー安全保障担保はなむけにならんことを祈る。
♞ 100%再生可能エネルギーは 6年以内に元が取れる
スタンフォード大学の研究者であるマーク・ジェイコブソンによる新し
い調査では、145カ国が風力、水力、太陽光、エネルギー貯蔵を利用し
て、通常のエネルギーニーズを 100%満たす方法を概説。この調査では、
対象となったすべての国で、低コストのエネルギーやその他のメリット
により、移行に必要な投資が6年以内に回収されることがわかった。こ
の研究はまた、世界全体で、このような移行により、失われたよりも
2,800万多く多くの雇用が創出されると推定。「世界的に、WWS は最終
消費エネルギーを56.4%削減し、民間の年間エネルギーコストを62.7%
(年間17.8兆ドルから 6.6 兆ドルに) 削減し、社会 (民間、健康、気
候) の年間エネルギーコストを 92.0% (83.2兆ドルから 6.6兆ドルに)
削減。年間) 61.5兆ドルの現在価値コストで」とジェイコブソンは最新
の論文で述べている。「したがって、WWS は通常のビジネスよりも少な
いエネルギーで済み、費用もかからず、より多くの雇用を生み出す。」
というのがその理由だ。
【関連論文】
▶Low-Cost Solutions to Global Warming, Air Pollution, and Energy Insecurity
for 145 Countries, Mark Z. Jacobson, et ai. ,Electronic Supplementary Material
(ESI) for Energy & Environmental Science. This journal is © The Royal Society
of Chemistry 2022 ,
図1. (左) 配位高分子のナノ細孔内に導入されたマグネシウムイオンは
ゲスト分子の蒸気存在下で効率的に伝播し、高いイオン伝導性を示す。
(右) イオン伝導度はゲスト分子の種類に依存し、最適なゲスト分子の
存在下では室温で世界最高値となる1.9 × 10–3 S cm–1の実用的な伝導度
を示す。
※MeCN = アセトニトリル、MeOH = メタノール、EtOH = エタノール、
THF = テトラヒドロフラン、DEC = 炭酸ジエチル、PC = 炭酸プロピレ
ン
✺ 固体マグネシウム電池用の実用的イオン伝導体
7月27日、東京理科大学らの研究グループは、これまでで最も高いイオ
ン伝導性を示す新たな固体マグネシウムイオン伝導体の開発に成功し、二
次電池の電解質として必要とされる実用的なイオン伝導度である約10–3S
cm–1のイオン伝導度を室温で達成した。ナノメートルサイズの小さな空
隙(ナノ細孔)を有する多孔性の固体である配位高分子をイオン伝導経路
として活用することで、固体中では流れにくいイオンであることが知ら
れていたマグネシウムイオンを効率的に伝播することが可能であること
を明らかにした。
【要点】
1.リチウムなどの希少金属を用いない理想的な蓄電デバイスの一つと
して、将来的な固体マグネシウムイオン二次電池の開発が期待されて
いる。
2.二次電池電解質として実用的な伝導度である約10–3 S cm–1のイオン
伝導度を室温で示す新たな固体マグネシウムイオン伝導体の創出に成
功した。
3.マグネシウムイオンなどの二価の陽イオンは密な充填構造を持つ固
体中では強い静電相互作用により伝播しにくい、という課題を解決す
るため、配位高分子(または金属有機構造体)と呼ばれる空隙を持つ物
質の細孔をイオン伝導経路として用いることで、マグネシウムイオン
を含有する結晶性固体において世界最高値のイオン伝導度を達成。
【成果と展望】
これまで、固体中で二価以上の陽イオンを効率的に伝播させることは困
難だと考えられてきた。本研究により、固体中の構造やイオンの周りの
環境をうまく設計すれば、二価の陽イオンであっても固体の高イオン伝
導体を作り出せることがわかった。将来的に、二価以上のイオンを用い
た固体畜電池の電解質としての応用などを通じて、社会に貢献できるこ
とを期待する。
【関連論文】
原題:Super Mg2+ Conductivity around 10–3 S cm–1 Observed in a Porous Metal
–Organic Framework, Yuto Yoshida et a1., Journal of the American Chemical
Society DOI 21/jacs.2c01612
【ウイルス解体新書 139】
序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学
第1節 免疫とはなにか
第2節 ウイルスの病原性の評価
第3節 水際検査体制(未然感染防止)
第4節 自国のワクチン及び治療薬開発体制
第5節 感染パンデミック監視体制
第6節 エマージェンシーウイルス
第7節 新型コロナウイルス
第7節 新型コロナウイルス
第8節 感染リスク
1.感染力
2.致死率・重症化
8-1 予後
8-1-1 死亡リスク
8-1-1-1 新型コロナ生存者の死亡リスク
8-1-1-2.生存者の死亡リスク
8-2-1 脳損傷
8-2-1-1 新型肺炎と脳の関係
8-2-1-2 新型コロナが脳の血管を詰まらせ脳にダメージ
8-2-1-3 新型コロナウイルス感染症は脳への影響は
8-2-1-4 軽症でも脳に深刻な障害をもたらす
8-2-1-5 軽度の新型コロナウイルス感染症で脳にダメージを
与え縮小させる
8-2-2 後遺症
8-2-2-2 後遺症の未来
8-2-2-3 新型コロナウイルス感染症の後遺症による認知能力
8-2-2-4 コロナ後遺症のメカニズム一部解明 倦怠感
8-2-2-5 回復後も疲労や認知機能の低下が続く「ロングCOVID」
8-2-2-6 オミクロン株の後遺症「長期化も」"ウイルス排除"
8-3 重症化メカニズム
8-3-1 世界初コロナ重症化メカニズムの解明
第9節 感染予防・検査・治療
9-1 検査方法・装置設備
9-2 ワクチン
9-3 新型コロナ治療薬
第10節 ウイルスとともに生きる
第2章 COVID-19パンデミックとは何だったのか
第1節 各国の動向と対策の特徴
第3章 パンデミック戦略「後手の先」
第1節 新型コロナパンデミックから生まれたもの
1-1 進化する感染判定技術装置
1-1-1 汗から感染症を検出するウェアブルセンサ
1-1-2 「測定時間1分」と「超高感度」、2種のウイルス検出
1-1-3 新型コロナ感染を9分で判定、精度はPCR以上
1-1-4 新型コロナウイルス変異株の抗体量を8分で自動定量
1-2 予防技術
1-2-1 不活化技術
1-2-1-1 エアーカーテン
岸田政権のウソを一発で見抜く!日本の大正解
高橋洋一著 本体¥1,400 2022/05発売 NDC分類 304
ビジネス社
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政策はもれなく不発なのに、なぜ支持率は高いのか?物価高、円安、
利上げから、与野党の実態、安全保障、そして私たちの未来まで。バ
カを黙らせ真実を見破る47の特別講義!
目次
1時限目 岸田政権から学ぶグダグダ経済学入門
2時限目 ウクライナ情勢から学ぶアブナイ安全保障入門
3時限目 ヤクザな隣国から学ぶワルの地政学入門
4時限目 現代日本から学ぶトンデモ政治学入門
5時限目 仮想空間から学ぶヤバイ未来学入門
補講 ポストコロナ時代を本気で生き抜く哲学入門
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2時限目 ウクライナ情勢から学ぶアブナイ安全保障入門
2-2 北方領土問題の解決策
Q:あんなロシアから、本当に北方領土を取り戻せるのでしょうか
A:現状、1つだけある。しかも実は、それはすでに始まっている!
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ロシアと緊張関係にあるのはウクライナだけではない。日本も一緒だ。
もちろん、その本丸は北方領土問題である。
軍事力を持だない日本が北方領土を取り戻すためには、ロシア経済
の行方がカギを握る。現状の制裁が続き国家破綻ともなれば、経済援
助と引き換えにロシアが北方領土を手放す可能性が出てくるだろう。
ロシア経済の状況を把握するいちばん簡単な方法は、CDS(クレジ
ット・デフォルト・スワップ)のレートを見ることだ。CDSという
のは、その国の国債がデフォルト(債務不履行)したときに補償して
くれる保険の役割を果たす金融派生商品。要するにロシアが国家破綻
して国情がパーになったとしても、おカネが返ってくるということだ。
保険の原理は、当然のことながらリスクが高ければ高いほど保険料
が上がる。つまり、保険料を見ることによって、ロシア破綻の確率が
どのくらいかを計算することができるわけだ。たとえば、目本のCD
Sなら0.1~0.2程度なので、その確率は低いとマーケットは見なして
いる。
ロシアのCDSは平時では1%もなかったが、ウクライナ侵攻とと
もにこれが4%に上がった。4%というのは5年以内に破綻する確率
が2割程度あるという水準で、かなり危ない数字だ。ところが、レー
トはさらに危険水域へ突入し、3月3目には16%へと跳ね上がった。
16%ということは、破綻確率が約8割もあるということだ。5年以内
に8割だから今後1年で見ても1~2割程度あるということ。やや先
の可能性とはなるがマーケットもそれを織り込んだということだろう。
ロシアが国家破綻となればルーブルが大暴落し、国内銀行も取りつ
け騒ぎで干上がる。物価上昇率も20%以上にアップする。そのような
物価上昇を、国際基準では「ハイパーインフレ」と呼ぶ。こうなると
当然、国内経済が犬混乱に陥るだろう。
しかも、その傾向はすでに出ている。ロシアの中央銀行は政策金利
を8%から20%に上げた。つまりロシア国内では、おカネを借りるの
に金利を20%以上も支払わなくてはならない状況なのだ。ちなみに日
本の政策金利はほぼゼロ。しかも、一般的には市場の金利は政策金利
よりも高いので、おそらく25%程度になっているはずだ。これでは企
業も融資を受けて新規事業に乗り出すことなどできないだろう。
金利と物価は同じようなペースで上昇するから、ロシア国内の物価
も上がっていることがわかる。銀行が危ないということで、預金を引
き出す人がATMに殺到した。へばるのは銀行が先か、企業が先かの
瀬戸際であり、いずれにせよ国民経済はダメになる。戦争が長期戦に
なればなるほど、ロシアには厳しい状況となるだろう。
そんなさなかの2022年3月21日、ロシア外務省は、一方的に北
方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を中断すると発表した。
北方4島へのビザなし訪問、ロシア人住民との交流事業も停止し、共
同経済活動からも撤退するというのである。つまり、交渉での北方領
土問題の解決は、ご破算になったということなのだ。
こうなると冒頭に述べたように、ロシアが日本に歩み寄るような状
況をつくらなければならない。だからこそ日本は、ロシア経済がます
ます厳しい状態に陥るよう、欧米諸国と足並みをそろえて経済制裁を
強化すべきなのだ。
むろん、日本に普通の国のような軍事力があれば、この機に乗じて
軍事的に圧力をかけて交渉を有利にするという手もあった。いずれに
せよ、仲良く話して領土が戻ってくるというような「お花畑外交」が
通用しないことだけは、よくわかったのではないだろうか。
軍事力がなければ経済制裁で取り戻すしかない。
だからいまのまま、欧米と協調して事を進めるべきだ。
2-3 核シュアリングという選択肢
Q:日本でも核武装論が盛り上がってきたが、ホントに実現可能なん
ですか
A:核武装ではない。何年も前から言っているが、核シェアリングこ
そ進めるべきだ!
ブーチン大統領がウクライナに対して核兵器使用も辞さないと表明し
たことで、お花畑の日本入たちにも、いざとなれば核保有国が非核保有
国を核攻撃するという現実が明らかになった。そこで、にわかに日本で
も議論されているのが、核武装の是非についてである。
この点、私はかなり前から核シェアリングを提案してきた。これは防
衛力と同盟関係の強化という一石二鳥の効果がある安全保障政策だ。た
だし、これを実現するには、「非核三原則」を見直さなければならない。
非核三原則とは、ご存じのとおり核を「持たず、つくらず、持ち込ま
せず」のこと。このうち最後の「持ち込ませず寸だけを見直せばいいの
だ。
この核シェアリングは、実際に北大典洋条約機構(NATO)で行わ
れてきた。核保有はしていないが、アメリカが核を提供し、それを管理
する核基地を受け入れ国で持つという仕組みで、文字どおり核兵器の共
同運用である。
現在の共同運用国は、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トル
コだ。クライネ・ブローゲル空軍基地(ベルギー)、ビューヒェル空軍
基地(ドィツ)、アヴィアーノ空軍基地(イタリア)、ゲーディ空軍基
地(イタリア)、フオルケル空軍基地(オランダ)、インジルリク空軍
基地(トルコ)に、戦術核兵器が持ちこまれている。
かつては「核拡散防止条約(NPT)上の抜け穴」と批判されたこと
もあったが、いまや国際社会の潮目は完全に変わった。ウクライナ戦
争により、国連、NPTといった国際秩序が一気に破壊されたのだ。
しかも、アメリカが核保有国には手出しできないことも明らかになっ
てしまったのである。
相も変わらぬ核アレルギーがある一方、「考えず、言わせず」を加
えた「非核五原則」だと批判し、核シェアリングを提起したのは安倍
元首相だ。私も回感である。岸田政権は非核三原則を堅持するとして、
議論すら封じようとしている。だが核保有反対の左派政権のドイツで
さえ、軍事費をGDP比2%以上への増加を決めたのだ。
かたや日本は、いまだにGDP比1%程度である。これでは相手に
侵攻を躊躇させるだけの迫力不足だ。しかも核の威圧に対しては、核
抑止力でしか対抗できない。隣国の暴挙を目の当たりにしてなお「お
花畑」のリーダーでは、あまりに危険すぎやしないだろうか。
核シェアリングはすでにNATOでやっている。
核抑制力と同盟強化に役立つ一石二鳥の得策だ!
⛨
8月5日、欧州最大の出力を誇るウクライナ中南部ザポリージャ原発が攻
撃を受ける。これにはじまる2月27日、ザポリージャ郊外の南部で戦闘
が起こり、2月28日には、近隣に原子力発電所があるエネルホダルの占
領。3月3日、ロシア軍は発電所を制圧しようとしたが、原子力発電 所に
ある建物のいくつかがロシア軍による砲撃をうける。原子炉は改修中で
稼働していないが、核燃料を含んでいる。当初の報告によると、この間
放射線レベルは正常であり、火災は重要な機器に損傷を与えず、職員は
さらなる損傷を防ぐための措置を講じ重大事故にならずにすむ。ウクラ
イナのドミトロ・クレーバ外相は、発電所が爆発した場合、チェルノブ
イリ事故の10倍の規模になる可能性があると警告している。
そして、8月5日につづき、6日、7日にかけ複数のミサイル攻撃を受けた。
使用済み核燃料の保管施設近くにも着弾したといい、ウクライナの原子
力企業エネルゴアトムは7日、「原発災害が起きなかったのは奇跡的だ
が、奇跡は続かない」と警告した。仮に原発施設内に着弾、命中してい
たら、原子炉に直撃していなくとも、制御系統が損傷しても制御不能に
繋がりロシア、欧州、黒海周辺諸国を巻き込んだ大事故となる。それに
しても、国連軍を出動し即時、停戦状態に持ち込む必要があるにもかか
わらず放置しているというのは納得がいかない。如何に放射性汚染被爆
の甚大な危険ある。このように、核に限らず、中性子爆弾、生物兵器な
どの甚大な殺傷能力をもつ兵器を含めて、「非核三原則」や「非戦原則」
「非核三原則」の重要性を実証したのではと考えている。"お花畑外交"
を揶揄する程現実は甘くない----例えば、日本の原発1カ所(原子炉は
数基)に超音速ミサイルを複数~二桁発同時発射するだけで、日本列島
はプロトニウム汚染で数千年に渡り汚染される可能性---も考えられる
恐ろしいことでもあと認めておく。
この項つづく
風蕭々と碧い時代
『そよ風の誘惑』 - Have You Never Been Mellow (1975年)
● 今夜の寸評:クレムリン、天安門そしてワシントン広場 ⑩
オリビア・ニュートン・ジョンが8日に米カリフォルニア州で亡くなっ
た。わたしより、1ヶ月はやく生まれている。享年七十三。
合掌