彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」
図1.各国別の温室効果ガス排出量シェア 2016 IEA
図2.各国別の温室効果ガス排出量シェア 2020:
Structure of CO2 emissions from fuel combustion by country, 2021,
billions of metric tons of CO2 IEA
※排出量最大国は中国。
日本が誇る触媒技術を活用した「人工光合成」
人工光合成の概念
さまざまな産業分野のうち、CO2を多く排出しているのはどの産業分野の第
1位は、熱を多く使用する「鉄鋼業」。第2位は、プラスチックなど身近な製品
の原料を製造する「化学産業」。日本で1年間に排出されるCO2の約6%が
、化学産業に由来。
人工光合成のプロセス
人工光合成の鍵となるのは、日本が国際的に強みを持つ「触媒技術」。ここ
では特に、プラスチックなどの原料になる「オレフィン」を合成を記載する。人
工光合成では、まず、「光触媒」と呼ばれる、光に反応して特定の化学反応
をうながす物質を使い、この光触媒は、太陽光に反応して水を分解し、水素
と酸素を作り出す。次に、「分離膜」を通して水素だけを分離し、取り出しす。
最後に、取り出した水素と、工場などから排出されたCO2とを合わせ、化学
合成をうながす「合成触媒」を使ってオレフィンを作る。
出所:資源エネルギー庁:CO2を“化学品”に変える脱炭素化技術
「人工光合成;artificial photosynthesis」
日本では、この人工光合成技術の実現に向けて、「光触媒」「分離膜」
「合成触媒」に関する研究開発がおこなわれ、経済産業省が支援する
研究プロジェクトが2012年度から始まっており、2014年度以降は国立
研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)へと引き
継がれ、日本を代表する企業、大学、国立研究機関等、産学官の連携
により現在も研究が進められている。
CO2とH2から製造される「合成燃料」
また、合成燃料は、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造さ
れる燃料。複数の炭化水素化合物の集合体で、“人工的な原油”とも
言われ、原料となるCO2は、発電所や工場などから排出されたCO2を利
用。将来的には、大気中のCO2を直接分離・回収する「DAC技術」を使
って、直接回収されたCO2を再利用することが想定されている。CO2を
資源として利用する「カーボンリサイクル」に貢献することになるた
め、「脱炭素燃料」とみなすことができると考えられている。もうひ
とつの原料である水素は、製造過程でCO2が排出されることがない再生
可能エネルギー(再エネ)などでつくった電力エネルギーを使って、
水から水素をつくる「水電解」をおこなうことで調達する方法が基本
となります。現在主要な水素製造方法は、石油や石炭などの化石燃料
から水蒸気を使って水素を製造する方法だが、この方法と組み合わせ
ると、①化石燃料から水素をつくる ②その製造過程で発生したCO2
を分離・貯留する ③その後別の回収したCO2と合成する…ということ
となり、非効率な製造プロセスになるためである。
尚、再エネ由来の水素を用いた合成燃料は「e-fuel」とも呼ばれている。
出所:資源エネルギー庁
via エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは
スペシャルコンテンツ
図.エネルギー密度の比較
出所:トヨタ自動車
このようなケースで、化石燃料由来の液体燃料を液体合成燃料に置き
換えれば、エネルギー密度をキープしつつCO2の排出量をおさえること
ができる。また合成燃料の大きな特徴として、従来の「内燃機関」(
たとえばガソリンを使うためのエンジンなど)や、すでに存在してい
る燃料インフラを活用できる点がある。水素エネルギーなどのほかの
燃料では新たな機器やインフラを整備しなければならないのにくらべ
て、導入コストをおさえることができ、市場への導入がよりスムーズ
になると考えられる。これまでの化石燃料と変わらない使い勝手の合
成燃料は、エネルギーのレジリエンス(強靭性)やセキュリティの面
でもメリットがある。積雪により停電が発生した地域への燃料配送、
高速道路で立ち往生した自動車への給油もでき、災害対応機能を持っ
た全国のサービスステーションなどでは既存のタンクを活用した備蓄
も可能。また、国内で工業的に大量生産できること、常温常圧で液体
であるため長期備蓄が可能であることなど、さまざまな優位性がある。
図:2017年に発表された国際エネルギー機関(IEA)の見通し
出典:IEA 「ETP(Energy Technology Perspectives) 2017」に基づき経済産
業省作成
さまざまな分野での合成燃料の活用方法
既存の燃料インフラや内燃機関の活用が可能な合成燃料は、導入コスト
をおさえられるなど産業界にとっても大きなメリットがある。特に石
油精製業では、国内の石油需要の減少で設備能力の削減が求められる
一方、余剰となったタンク、土地、人材などの資源をどうするかとい
う課題がある。合成燃料を導入すれば、既存インフラを活用しながら
新規事業に取り組むことができる。また、灯油・LPガス・都市ガスを
利用した暖房器具は、エアコンとくらべてすぐに暖まる、外気温に影
響されにくいなどの特徴があり、とりわけ寒冷地域では引き続き需要
が残る可能性がある。こうした場合にも、灯油などの代替燃料として
合成燃料を利用できる。また、産業用ボイラーの燃料としての活用も
考えられる。
図.今後10年間で集中的に技術開発・実証をおこない、2030年までに
高効率かつ大規模な製造技術を確立、2030年代に導入拡大・コスト低
減をおこなって、2040年までに自立的な商用化を目指す。
人工光合成 低い変換効率が最大の課題
図1 光触媒の太陽エネルギー変換効率 ※出典:NEDO
上図のごとく、人工光合成の最大の課題は、低い太陽エネルギー変換
効率。既に植物と比較すると技術レベルは、変換効率は植物を超えた
といえる。しかし、生命活動だけに利用する植物とは違い、産業とし
て活用していくためには、さらに高い変換効率が必要になる。
人工光合成としては、2011年に豊田中央研究所が、二酸化炭素と水か
らギ酸(HCOOH)を合成することに成功した他、2012~2013年にはパ
ナソニックがギ酸やメタンを生成するシステムを公開している。さら
に東芝は2014年12月に人工光合成において、太陽エネルギー変換効率
1.5%を実現したとしている。また2015年3月には、NEDO(新エネルギ
ー・産業技術総合開発機構)と人工光合成化学プロセス技術研究組合
(ARPChem)が、人工光合成技術で世界最高レベルとなる太陽エネル
ギー変換効率である2%を達成したことを発表。
太陽エネルギーを活用し、水を分解し、二酸化炭素と合成するという
技術だけを考えれば、太陽光発電を利用し、その電力で水を電気分解
するという方法も取れる。また現状だけを見れば、こちらの手法の方
がエネルギー変換効率も高い。太陽光発電と電気分解設備を利用する
仕組みでは、電気分解設備の初期コストが高くなり、導入への負担が
大きくなる。理論上では人工光合成の方が低価格で実現でき、そのた
め将来的に産業で活用しやすい。そしてもう1つの理由は、人工光合成
は日本が世界に技術面で勝てる領域。太陽光発電や電気分解はある程
度確立された技術で、日本の技術的な優位性はそれほどない。しかし、
光触媒や人工光合成は日本が技術的にも強い領域。NEDOでは、2021年
度までに人工光合成技術で、太陽エネルギー変換効率10%を目指すと
ともに、最終的には基幹化学品製造基盤技術の確立を目指す。パナソ
ニックなども2020年以降に光触媒水素生成デバイスの実用化に向けた
研究開発が進み、実用化に向けた取り組みが本格化している。
最新水電解装置事情 東芝の場合
天候の影響を受けて変動する再エネの電力を水素などに変換し、貯蔵・
輸送を可能にするPower to Gas(P2G)技術において、レアメタルの一
種であるイリジウムの使用量を従来の10分の1に抑えた電極の大型製
造技術を確立した(*1)。P2Gでは、再エネの電力を利用して水を水素
と酸素に電気分解(水電解)し、水素に変換します。 水電解には、再
エネ電力の変動への適応性が良く耐久性の高いPEM(固体高分子膜:
Polymer Electrolyte Membrane)を用いた「PEM水電解」方式が注目され
ているが、電極に用いる触媒に貴金属の中で最も希少なイリジウムを
使用しており、実用化にはイリジウム使用量の削減が課題の一つ。独
自の酸化イリジウムナノシート積層触媒を開発し2017年に従来のイリ
ジウム使用量を1/10に抑えることに成功。本触媒を一度に最大5㎡成膜
化できる技術を開発し、電極の大型製造技術を確立。 本技術により、
カーボンニュートラル社会の実現に不可欠なP2Gにおいて、再エネ電力
の変動に対応したP2G技術の早期実用化を見込むことができる。当社は
2023年度以降の製品化を目指す。
【関連特許技術】
※ 特開2022-143974 電気化学装置 東芝 2021年3月18日
【要約】
随1のごとく、電気化学装置20は、第1流路12を有する第1電極
2と、第2流路13を有する第2電極3と、第1電極2と第2電極3
とで挟持された隔膜4とを備える電気化学セル1と、第1電極2の第
1流路12に接続され、稼働時に第1電極2で生成された生成物及び
第2電極3から第1電極2に浸透する水が送られる気液分離タンク2
7と、気液分離タンク27の液体部分に接続され、停止時に気液分離
タンク27の水を第1電極2の第1流路12に送る水封入配管29と
を具備することで、起動停止操作を実施した際の性能の低下を抑制す
ることを可能にした電気化学装置を提供する。
【符号の説明】
1…電気化学セル、2…第1電極、3…第2電極、4…隔膜、5…第
1触媒層、7…第2触媒層、12…第1流路、13…第2流路、20
…電気化学装置、24…第1水タンク、27…第2水タンク、28…
第2配管(動作用配管)、29…第3配管(水封入配管)、30,
31…逆止弁。
※ 特開2021-169084 電解水生成装置および電解水生成方法
東芝 2021年7月5日
【要約】
図14のごとく、電解水生成装置は、電解液を収納する電解液室と、そ
れぞれ隔膜を介して電解液室に対向する陽極14および陰極20が設
けられた電極室と、電解液室に設けられ隔膜を介して陽極に対向する
第2陰極20Bと、陽極、陰極および第2陰極に給電する給電部23
と、電解液を電解することで得られる陽極生成水と陰極生成水を混合
して混合生成水とする生成水混合部と、を備えている。給電部は、陰
極および第2陰極への通電比率を調整し、混合生成水のpHを調整す
るpH調整機構を有していることで、生成する次亜塩素酸水のpHを
中性付近に制御可能な電解水生成装置を提供する。
【符号の説明】
10…電解水生成装置、11…電解槽(電解セル)、14、134a
…陽極、 16、44a、132a…第1隔膜 18、44b 132b
…第2隔膜、 20、134b…陰極、15a、120…中間室、15
b、126…陽極室、15c、 122…陰極室、30…スペーサ、
32、140…マスク、40…電解液室、 42…電極室、20B…第
2陰極、SW…切換えスイッチ
※ 特許第6612714号 電解水生成装置 東芝 2016年10月31日
【要約】
図3のごとく、電解水生成装置は、筐体52と、筐体内に設けられた
電解槽20と、電解液を収容する密閉構造を有し、筐体内に設けられ
たバッファタンク70と、筐体内に設けられ、電解液を貯溜する外部
タンクからバッファタンクに電解液を供給する第1ポンプ42と、筐
体内に設けられ、第2ポンプ58によりバッファタンクの電解液を電
解槽の電解液室に供給し、電解液室を流れた電解液をバッファタンク
に送る電解液供給部と、を備えることで、ガス臭の発生を抑制すると
ともに小型化が可能な電解水生成装置を提供する。
【符号の説明】
10…電解水生成装置、20…電解槽、15a…中間室、15b…陽
極室、 15c…陰極室、16a…第1隔膜、16b…第2隔膜、18a
…陽極、 18b…陰極、30…給水部、40…電解液供給部、42…
供給ポンプ、 46…循環配管系、48…ドレイン配管、50…装置本
体、52…筐体、 56…循環配管、58…循環ポンプ、60…外部タ
ンク、70…バッファタンク、 72…タンク本体、74…蓋体、90
…フロートセンサ
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人造炭化水素化合物
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