彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備
え。(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした
部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。
特集|直接海洋回収技術とは
脱酸素技術に新星が現れた。カリフォルニアエ科大学のスピンオ
フ企業キャプチュラ(2021年設立)は、地球表面の70%を占める海洋
を活用することで、大気中の二酸化炭素を低コストで除去する施設
の建設を目指している。
海水には大気から二酸化炭素を吸収する性質がある。同社の技術
DOC(ダイレクト・オーシャン・キャプチャー)はこれを利用する。
まず、ろ過した海水をプラント内に引き込み、再生可能エネルギー
を使って海水を電気処理し二酸化炭素を除去する。取り出した二酸
化炭素は永久的に隔離されるか炭素製品に活用される。二酸化炭素
を含まない海水は海へ戻され、再び二酸化炭素を吸収するという流
れだ。海水を海に戻すため、海洋生物への影響は最小限に抑えるこ
とができるという。
昨夏から実験的な運用が始まっている。また今年5月には、数カ
月内にロサンゼルス港の官民海洋研究所アルタシーのキャンパスで
2つ目のシステムの実証試験を開始すると発表。この2基目は、海
から年間100トンの二酸化炭素を回収できる。
キャプチュラのテクノロジーの強みは、再生可能エネルギーの供
給と海水があれば世界のどこでも導入できることだ。また、沖合に
設置すれば土地利用上の課題も解消される。同社は将来、ライセン
ス供与してグローバルに展開したいという。
図 1 (a) 海水から CO2 を除去するための塩化物媒介電気化学 pH
スイング システムの一般原理。 (b) 各ステップにおけるビスマス
(赤) 電極と銀 (青) 電極での電気化学反応、およびその後の酸性化
した海水中での CO2 放出
【関連論文】
Title:Asymmetric chloride-mediated electrochemical process for CO2
removal from oceanwater, ※
DOI: 10.1039/D2EE03804H
(Paper) Energy Environ. Sci., 2023, 16, 2030-2044
【概論】
大気中の二酸化炭素の継続的な蓄積が気温の上昇と地球規模の気候
パターンの混乱につながるため、産業による二酸化炭素の排出は環
境に大損害を与えている。この問題を緩和するために、点発生源か
らの CO2 排出量を削減することに加えて、周囲環境から二酸化炭素
を直接除去するネガティブエミッション技術が注目されているが、
非常に希薄なレベルの CO2 が除去を困難にしている。海洋に分配さ
れるCO2 排出総量は大気中に保持されるCO2排出量に匹敵し、効果的
な除去手段は、他のマイナス排出技術を強化し、この温室効果ガス
による環境負荷を軽減できる可能性がある。海水から CO2を除去する
アプローチは、水の pHを約 8.1 から 7未満に調整し、炭酸塩およ
び重炭酸塩からの溶存無機炭素 (DIC) の種分化が分子状 CO2 に確
実に変化し、その後真空下で除去することに依存させる。化学物質
の添加を必要とせず、望ましくない化合物の形成による寄生反応を
引き起こさないアプローチが特定されることが望ましい。このため
電気化学システムは、制御可能な方法で電子供給し反応促進でき、
化学的使用や寄生反応を回避でき、海水の pH 変動に適した選択肢
と考えられていた。海水からの CO2 除去に関する現在の研究では、
双極膜電気透析 (BPMED) が使用されているが、双極膜の高コストが
プロセスの商用化を妨げる可能性があり、これらの構造の一部では、
有毒な酸化還元対が海水に漏れるリスクさにさらされる。ここでは、
最初にCO2を放出し、次に海洋に戻す前に処理水をアルカリ化するた
めのpHの電気化学的調整のみに基づいた新しいアプローチを提案す
る。このアプローチは、(i)高価な膜や化学薬品の追加を必要とせず、
(ⅱ) 展開が簡単で、(ⅲ) 副生成物や二次的生成物を引き起こさず、
(iv) 必要なエネルギー入力が少なくて済み(122 kJ mol-1)。私た
ちの知る限り、他のアプローチより優れており、さらに、予備的な
技術経済分析では、この海洋捕獲システムが経済的に実現可能であ
ることを示唆する。
画像:CarbonCapture Inc
期待の脱炭素技術DAC(直接空気期回収)の研究実用化が各地で進
んでいる。米国では、史上最大になると言われている巨大なサイズ
のDAC施設の建設が進行。ワイオミング州のDACプ ラント「バイ
ソン」は、ロサンゼルスのカーボ ン・キャプチャー社とダラスのフロ
ンティア・カーボン・ソリューションズ社による一大プロジェクト。
2024年後半に最初の モジュールの稼働を予定し、2030年に全てが
完成した時点で、年間500方トンのCO2(1年間に約100万台の自動車
が排 出する量)を除去する見込み。 回収したCO2は地中深くに
埋め、カー ボン・クレジットとして販売される。マイク ロソフト
社は、このクレジットを購入する 契約をすでに交わした。
DAC建設には多額の費用が必要だが、民間セクターからの支援に
加え、米国では昨夏成立したインフレ抑制法によりクリーンエネル
ギーの分野でも各種設備の導入に大幅な税額控除が認められ、DAC
やCCS(CO2回収・貯留)に追い風が吹い ている。ワイオミング州
が選択された理由は、安価な再生可能エネルギーヘのアクス、手頃
な土地価格、最適な炭素貯蔵 場所が近隣にある点など、コスト低減
の要 素に恵まれている。カーボン・キャプチャー社の経営責任者は、
今後、さまざまな地域で多様なプロジェクトを展開したいと語る。
06/01/2023