彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時
代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜
(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。
【再エネ革命渦論 179: アフターコロナ時代 180】
● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング-
特異点真っ直中 ㊿+⑩
シジジー プラズモニクス インコーポレーティッド
1.特表2023-5360663- 水素及び炭化水素燃料を製造するためのメタン改
質装置
【概要】
本開示は、メタンを水素及び炭化水素燃料に改質するためのシステム及び
方法を対象とする。例の実施形態では、メタン改質装置は、光触媒水蒸気
メタン改質(photocatalytic steam methane reforming)(P-SMR)システ
ムを、引き続く光触媒乾式メタン改質(photocatalytic dry methane reforming)
(P-DMR)システムと統合している。
図2 第1の例の実施形態による、合成ガスを製造するためのメタン改質
装置システムを示すプロセスフロー図
下図1中に示されるような従来の水蒸気メタン改質(Steam Methane Reforming)
(SMR)システムは、例えばメタン(天然ガス)から、以下の平衡により
合成ガス(水素及び一酸化炭素)を製造するために用いることができる:
CH4+H2O⇔CO+3H2 (式1)
従来のSMRは幾つかの短所を有する。例えば、SMRは、パイプライン
品質ガス中に存在しうる硫黄の影響を受けやすく、脱硫(すなわち、水素
化脱硫(hydrodesulfurization)(HDS)触媒及びZnO吸着床の組み合わ
せ)を必要とする。さらに、従来のSMRは、熱集約的な吸熱反応器であ
り、クラッキング温度付近に関連する変換の制限のため水素製造は限定さ
れる。この制限は、直列で設置された高温及び低温水性ガスシフト反応器
(water gas shift reactor)(WGS)によって克服される。さらに、SMR
の高温操作によって、かなりの量の温室効果一酸化炭素(CO)が生成し、
このためWGS反応器の設置が必要となる。
さらに、従来のSMRは、一般に2つの二酸化炭素(CO2)排気流を有し、
これらはCO2の除去が必要である。第1のCO2排気流は、天然ガスか
ら得られ、SMR反応器にエネルギーを供給するための燃料として空気が
用いられる。これによって、希薄CO2と、酸化窒素(NOX)及び酸化
硫黄(SOX)などの別のガスとを有する「煙道ガス」流が得られる。煙
道ガス流からCO2を捕捉して利用する方法は複雑であり、費用がかかる
。第2のCO2排気流は、プロセスガスの一部として生成され、捕捉又は
利用がより容易な濃縮されたCO2を含む。これら両方の流れから大気に
放出されるCO2の量のため、従来のSMRは温室効果ガスの大きな放出
源となる。これらの流れからCO2を捕捉するための装置を含むプラント
では、このような装置のための資本支出は、プラント全体のコストのかな
りの部分となる。
CO2を除去するために用いられる従来方法の1つは、高温カリ又はアミ
ン系液体吸収剤、例えばモノエタノールアミン(MEA)又は活性化メチ
ルジエタノールアミン(aMDEA)を用いた複合吸収装置-再生器設備
である。このシステムは、高圧(液体が吸収装置に入る場合、400psi
(g)付近、)及び高温(再生器リボイラーにおいて200℃付近)を必
要とするだけでなく、システムに用いられるアミン系液体は本質的に腐食
性となりうる。これらの制限のため、高級で費用のかかる材料が必要とな
り、すなわち、塔全体がステンレス鋼でできている必要がある、又は五酸
化バナジウム(V2O5)などの不動態化剤の注入と、連続的な鉄の監視
とが必要となる。発泡は、別の一般的な問題である。過度の発泡は、下流
システムまで持ち越され、悪影響が生じることがある。最後に、必要な吸
収速度を維持しシステム損失に対処するために、溶液化学を定期的な頻度
で分析する必要がある。
従来のSMR設計には、ガス/液体燃料で操作されるバーナーの安全な点
火及び着火を保証するための十分に機能的なバーナー管理システム(BM
S)も必要である。BMSシステムは、バーナーの点火のための許容が問
題となる前に重要なステップを有する。このシーケンスは、従来、ブロワ
ー又はIDファンを最高速度付近で作動させることによって、可燃物の燃
焼(存在する場合)を排除するために炉をパージすることを含む。このパ
ージシーケンスの完了後、気密試験によって燃料回路に漏れが生じないこ
とを確認し、その後試験的点火を行い、次にあらかじめ決定されるか又は
操作上必要なシーケンスに基づいて、主要バーナーに点火し、システムを
加圧する。明らかなように、これは、過大なブートストラッピングを有す
る複雑なシステムである。さらに、燃料システムのいずれかの漏れによっ
て、全体のシーケンスが無駄になる。さらに、炉の上昇又は低下は、多く
の時間及び労力を必要とする。ほぼ100のバーナーを有する市販の改質
装置は、圧力の増加又は低下のたびに手動操作が必要である。締め切り弁及
び調整弁(すなわち、制御弁)の組み合わせによって、精密な制御が保証
され、必要であれば、フェイルセーフ運転停止が保証されるが、制御盤及
び現場の作業者の絶え間ない警戒が必要となる。したがって、現在使用さ
れている従来のSMRシステムの欠点を有しないメタン改質のための有効
なシステムが依然として必要とされている。
図1 従来のSMRシステムを示すプロセスフロー図
【課題を解決するための手段】
本開示の一態様は、メタン供給材料から合成ガス(すなわち、水素及び一
酸化炭素)を回収するためのシステムを提供する。このようなシステムは
: 光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージであって、メタン供
給材料から少なくとも二酸化炭素流及び水素流を生成するように構成され
る第1ステージと; 第1ステージに隣接して下流にある第2ステージであ
って、第2のメタン供給材料と、第1ステージで生成した二酸化炭素流と
から合成ガスを製造するように構成される光触媒乾式メタン改質装置を含
む第2ステージと、 を含む。
本開示のシステムは、ゼロエミッションの水素を、メタノール又はジメチ
ルエーテル(DME)などの低エミッション又はゼロエミッションの生成
物に加えて調製する方法に用いることができる。したがって、本開示の別
の一態様は、メタン供給材料を合成ガスに変換する方法を提供する。この
ような方法は: メタン供給材料を、本明細書に記載の光触媒水蒸気メタン
改質装置を含む第1ステージに供給して、少なくとも二酸化炭素流及び水
素流を得ることと; 上記二酸化炭素流を、本明細書に記載の光触媒乾式メ
タン改質装置を含む第2ステージに供給して、合成ガスを製造することと
、を含む。
本開示の別の一態様は、メタン供給材料からメタノール又はジメチルエーテ
ルなどの炭化水素燃料を調製する方法を提供する。このような方法は: メ
タン供給材料を、本明細書に記載の光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第
1ステージに供給して、少なくとも二酸化炭素流及び水素流を得ることと;
上記二酸化炭素流を、本明細書に記載の光触媒乾式メタン改質装置を含む
第2ステージに供給して、合成ガスを製造することと; 合成ガスを、反応
器を含む第3ステージに供給して、メタノール又はジメチルエーテルを得
ることと、 を含む。
本開示の別の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとな
るであろう。しかし、本発明の意図及び範囲内の種々の変更及び修正は、
この詳細な説明から当業者には明らかとなるであろうから、詳細な説明及
び実施例は、本開示の特定の実施形態を示しながら、単に例として提供さ
れるものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のSMRシステムを示すプロセスフロー図
【図2】第1の例の実施形態による、合成ガスを製造するためのメタン改
質装置システムを示すプロセスフロー図
【図3】第2の例の実施形態による、合成ガスを製造するためのメタン改
質装置システムを示すプロセスフロー図
【図4】例の実施形態による合成ガスの製造方法を示す概略図
【図5】第3の例の実施形態による水素及びメタノールを製造するためのメ
タン改質装置システムを示すプロセスフロー図
【図6】第4の例の実施形態による水素及びメタノールを製造するための
有機ランキンサイクル(Organic Rankin Cycle)(ORC)ユニットを有
するメタン改質装置システムを示すプロセスフロー図
【発明を実施するための形態】
例の方法及びシステムが本明細書に記載される。本明細書に記載のあらゆ
る例の実施形態又は特徴は、必ずしも、別の実施形態又は特徴よりも好ま
しい又は有利であると解釈されるべきではない。本明細書に記載の例の実
施形態は、限定を意味するものではない。開示されるシステム及び方法の
ある態様は、多種多様な異なる構成で配列及び組み合わせが可能であり、
これらすべてが本明細書において考慮されることは容易に理解されるであ
ろう。
本開示を考慮すれば、本明細書に記載のシステム及び方法は、所望の要求
に適合させるために当業者によって構成することができる。一般開示され
るシステム、方法、及び装置によって、光触媒反応システム及びプロセス
が改善される。特に、本発明は、炭化水素燃料を燃焼させず、代わりに電
気を使用して水素及びCO2(プロセス副生成物として)を製造する、改
善された電力が供給されるSMR反応器の光触媒水蒸気メタン改質装置(
P-SMR)を提供する。このCO2は次に第2の電力が供給される反応
器の光触媒乾式メタン改質装置(P-DMR)に利用されて、合成のガス
又は合成ガス)が形成される。この合成ガスを、合成反応器に送って、メ
タノール又はジメチルエーテルなどの液体燃料を製造することができる。
結果として、ある実施形態では、このシステムは、従来方法よりも使用す
る天然ガス少なく、CO2を環境に放出せず、操作に再生可能電気を用い
ることができる。ある実施形態では、本開示のシステム及び方法は、メタ
ール又はジメチルエーテルなどの別の商業的に有利な材料の製造に有利に
用いることができる。本開示のシステム及び方法は、ある実施形態では、
従来のプラント中のBMS及びにCO2捕捉装置に関連する資本コスト及
び操作の複雑さがなくなる。ある実施形態では、システムの一部(例えば、
反応器冷却ジャケット中)で発生する廃熱は、システム全体の運転効率を
高めるために、システム中の別の場所で有利に利用することができる。
図2 第1の例の実施形態による、合成ガスを製造するためのメタン改
質装置システムを示すプロセスフロー図
前述のように、本開示は、メタン供給材料から合成ガス(すなわち、水素
及び一酸化炭素)を回収するためのシステムを提供する。特に、図2中に
示されるように、本開示のシステムは、メタン供給材料から少なくとも二
酸化炭素流及び水素流を生成するために構成される第1ステージ(30)
を含む。第1ステージは、光触媒水蒸気メタン改質装置(P-SMR)(
37)を含む。P-SMR(37)は、第1のプラズモン光触媒の存在下で
メタン供給材料を蒸気と接触させて、水素及び一酸化炭素を含む第1の反
応生成物流を形成するように構成される。
ある実施形態では、図3中に示されるように、第1ステージ(30)は、
光触媒水蒸気メタン改質装置(37)及び水性ガスシフト(WGS)反応
器(42)を含む。WSG反応器(42)は、第1の反応生成物流を水と
接触させて、水素及び二酸化炭素を含む水性ガスシフト流を形成するため
に構成される。ある実施形態では、第1ステージ(30)は、水性ガスシ
フト流から二酸化炭素を分離して二酸化炭素流及び水素流を得るために構
成される分離ユニットをさらに含むことができる。図2及び3中に示され
るように、ある実施形態では、分離ユニットは、圧力スイング吸着(pressure
swing adsorption)(PSA)水素精製ユニット(40)及び/又はCO2
吸収ユニット(41)を含むことができる。図2及び3は、CO2吸収ユ
ニット(41)からのフィードバックCO2流を示しているが、このよう
な流れは任意であり、幾つかの実施形態では利用される必要はないことに
留意されたい。同様に、特定の用途及び/又は実施されるシステムの規模
によっては、示される別の構成要素及び流れは、幾つかの実施形態では省
くことができる。
図3 図2の例の実施形態による、合成ガスを製造するためのメタン改質装
置システムを示すプロセスフロー図
図2及び図3中に示されるように、ある実施形態では、第1ステージ(3
0)は、水/スラッジノックアウト容器(31)、供給排出物H.X-1
及び/又はH.X.-2(32及び/又は33)、トリムヒーター・クー
ラー(例えば、電気的なもの)(34)、脱硫器(35)、蒸気発生器(
36)、給湯器(38)、及び冷却機(39)の1つ以上を場合により含
むことができる。
従来方法の欠点の1つは、SMRからの熱損失である。従来のSMRプロ
セスは、わずか約50%の効率であり、これは供給される電力の半分が、
SMRの壁を通って排出される熱として失われる。さらに、従来の設計で
は、ガスの凝縮中にかなりの量の熱が失われる。本発明者らは、有機ラン
キンサイクル(ORC)を用いて熱を回収できることを確認した。適切な
規模では、ORCサイクルは40%の高さまでのエクセルギー効率を得るこ
とができ、したがってこれは、プロセスのエネルギー効率を45%から約7
0%の高さまで高めるための魅力的な選択肢となる。したがって、ある実
施形態では、本開示の第1のシステム(30)は、プロセス廃熱を用いて
システム内で電気を発生させるように構成される有機ランキンサイクル(
ORC)をさらに含むことができる。より大きなシステムでは、利用可能
な熱はさらに高いグレードとなる。例えば、ある実施形態では、システム
は、電力をその場で発生させるように構成される蒸気タービンをさらに含
むことができる。
図6 第4の例の実施形態による水素及びメタノールを製造するための有
機ランキンサイクル(Organic Rankin Cycle)(ORC)ユニットを有
するメタン改質装置システムを示すプロセスフロー図
その場発電のためにORCユニットを利用する一実施形態のより詳細な説
明を図6のプロセスフロー図中に示す。図6のシステムによって、水素及
びメタノールが製造され、効率改善のためにORCユニットが利用される。
図示されるように、このシステムは、ORCユニット及びその蒸発器をP
-SMR反応器と並列して含む。特に、ORCユニットは、P-SMR反
応器に関連する流体冷却システム(例えば、冷却ジャケット又はリザーバ
ー)からの廃熱を利用して発電する。次にこのような電気は、制御エレク
トロニクス、ポンプ、センサー、又はその他の電気が供給される部品など
のシステムに関連する補助的な電気部品への電力供給に用いることができ
る。これによって、従来のグリッド発電又は局所的若しくは遠隔的に行わ
れる再生可能(例えば、太陽又は風)発電などの別の外部手段によって得
られるべき必要な電気入力を減少させることができる。
言及されるように、その場発電のための前述の流体冷却システムは、P-
SMR反応器に関連する冷却ジャケット又はリザーバーの形態であってよ
い。例えば、それぞれの個別の反応器セルは、冷却液(例えば、水)が中
を移動する流体ジャケットによって取り囲むことができる。例えば、冷却
液は、冷却ジャケット内に圧送又は別の方法で移動させることで、冷却ジ
ャケットによって取り囲まれた反応器セルが発生する熱を除去することがで
きる。環状形態の反応器セルの場合、流体冷却システムは、これに加えて
又はこれとは別に反応器セルの中央部分に内部冷却ジャケット又はリザー
バーを含むことができ、このため内部冷却ジャケット自体は環状形態の反
応器セルによって取り囲まれる。ORCにより使用するための流体冷却シ
ステムの別の構成も可能であり、本開示の範囲内となることが意図される。
例えば、これに加えて、又はこれとは別に、2つ以上の反応器セルから熱
を除去する冷却システム又はマルチセル反応器(又はマルチ反応器改質装
置)に関連する冷却システムが、ORCユニットによるその場発電のため
の廃熱を供給することができる。
ある別の実施形態では、本開示のシステムにおいてその場発電は行われな
い。例えば、水性ガスシフト反応器は、本質的に発熱性であり、プロセス
熱の統合によって、廃熱ボイラー中での蒸気発生のための水の加熱が促進
される。主要蒸気発生器/廃熱ボイラーは、高温SMR出口流を使用し、
プロセスガスを高温シフト変換器(high temperature shift converter)(HT
SC)の入口温度まで冷却する。シフト変換によって、CO2に変換され
ることで、COは微量(1%未満、例えば、約0.2%)まで効率的に減
少する。シフト反応器出口における流れは、乾燥され(過剰の水を除去す
るため)、10bar(145psi(g))まで圧縮される。ある例の
実施形態では、本開示のP-SMRは約100psi(g)の最大入口圧
力を有する。ある実施形態では、水素を分離するためのユニットに送られ
る前に、ガスが(約10bar(すなわち、145psi(g))までさ
らに加圧される。
図5.第3の例の実施形態による水素及びメタノールを製造するためのメ
タン改質装置システムを示すプロセスフロー図
図5のシステムがその場発電を行わないが、その代わりに、発生した熱を
除去した後のP-SMR反応器の冷却ジャケット中に単に冷却液(例えば
、水)を循環させることを除けば、図5のシステムは図6中に示されるも
のと類似している。図示されるように、冷却ジャケットに冷却液を循環さ
せるために、1つ以上の冷却ファン、リザーバー、及び/又はポンプを用
いることができる。 本開示のシステムは、第1ステージ(30)に隣接し
て下流にある第2ステージ(50)であって、第2のメタン供給材料と第
1ステージ(30)で製造した二酸化炭素流とから合成ガスを製造するよ
うに構成される光触媒乾式メタン改質装置(P-DMR)(51)を含む
第2ステージ(50)をも含む。
図4.例の実施形態による合成ガスの製造方法を示す概略図
ある実施形態では、図4中に示されるように、本開示のシステムは、第2
ステージ(50)に隣接して下流にある第3ステージであって、第2ステ
ージで製造した合成ガスからメタノール又はジメチルエーテルを製造する
ように構成される合成反応器を含む第3ステージをさらに含む。
例えばメタノールを得るために第2及び第3ステージで行われる例の反応
は以下の通りである:
ステップ1-乾式メタン改質(DMR): 3CO2+3CH4→6CO+
6H2 (式2)
ステップ2-水性ガスシフト(WGS): 2CO+2H2O→2CO2+
2H2 (式3)
ステップ1及び2の合計: CO2+3CH4+2H2O→4CO+8H2
(式4)
ステップ3-メタノール合成: 4CO+8H2→4CH3OH (式5)
ステップ1、2、及び3の合計: CO2+3CH4+2H2O→4CH3
OH (式6)
式2(ステップ1)において前述したように、P-DMR反応器から得ら
れるものは、CO及びH2の混合物である合成ガス又は合成のガスである。合
成ガスは、メタノール及びジメチルエーテルなどの多くの炭化水素燃料の
出発供給材料である。合成ガスを炭化水素燃料に変換する技術は成熟して
おり工業的なものであり、当業者には明らかであろう。
第2ステージ(50)からの合成ガスは、一般に、一酸化炭素及び水素を
約1:1の比率で含む。ある実施形態では、合成反応器中の一酸化炭素及
び水素の比率が約1:2となるように第3ステージ中の合成反応器に水素
流が供給される(例えば、式5中に示される)。水素流は、合成反応器に
直接供給することができるし、又は合成ガス流とあらかじめ混合した後、
合成反応器に導入することができる。ある実施形態では、合成反応器中に
導入される水素流は、PSA水素精製ユニット(40)などから第1ステ
ージ(30)で得られる。 ある別の実施形態では、第2ステージ(50)
中、P-DMR(51)に隣接して下流にシフト反応器を加えることがで
き、このシフト反応器は、合成反応器に供給される水素流を生成するよう
に構成される。このプロセスは式3及び式4によって示される。
ある別の実施形態では、第2ステージ(50)は、P-DMR(51)に
隣接して下流にある水素分離膜であって、合成反応器に供給される水素流
を生成するように構成される水素分離膜を含む。
水素分離技術の選択は、その最終用途によって直接決定される。出現しつ
つあるガス分離技術としては、膜分離が挙げられ、これは自由度が高く単
純な操作、小型の構造、少ないエネルギー消費、及び環境に優しいという
利点を有する。膜材料の性能は、膜のH2分離及び精製効果を決定するた
めの最も重要な要因である。一般に用いられる膜材料は、主として金属及
びポリマー膜を含み、新しい膜材料、例えばナノ材料膜、CMSM、及び
MOF膜は、好ましい分離性能を示すことができる。単一膜型のシステム
では99%+の純度を得ることはできない。さらに、膜システムは、水の
凝縮の影響を非常に受けやすいが、その理由は、これによって膜の表面上
にバリアが形成され、透過速度が低下するからである。膜に対するアミン
蒸気の影響は無視できるが、発泡及びキャリーオーバーの可能性のため、
ヒーター及び従来のSMRシステムにおける合体フィルターの利用などの
さらなるユニット操作が必要となる。液体MEA/MDEAのキャリーオ
ーバーの場合、唯一の選択は設備の閉鎖及び膜の交換となりうる。
従来のSMRシステムとは対照的に、本開示のシステムは、上記欠点が問
題とならずに水素分離膜を利用することができる。例えば、ある実施形態
では、本開示のシステム中に用いられる水素分離膜は、圧力スイング吸着
(pressure swing adsorption)(PSA)水素ユニットである。PSA分離効
果は、主として吸着剤の種類及び用いられる技術的プロセスによって決定さ
れる。静電容量に関してH2は、CO2、CO、及びCH4などのほとん
どの気体分子と大きく異なるので、PSA分離及び精製に非常に適してい
る。ある例では、99%の高さの純度を実現できる。
前述のように、本開示のシステムは光触媒水蒸気メタン改質装置(P-S
MR)を含む。例えば、このようなP-SMRは: ハウジングと; ハウ
ジング内部に配置される少なくとも1つの反応器セルであって、エンクロ
ージャと、少なくとも1つのエンクロージャ内に配置される第1の触媒担
体上の第1のプラズモン光触媒とを含み、エンクロージャは、光学的に透
明であり、メタン供給材料が少なくとも1つのセルに入るための少なくと
も1つの入力部と、第1の反応生成物流が少なくとも1つのセルを出るた
めの少なくとも1つの出力部とを含む、少なくとも1つの反応器セルと;
少なくとも1つの光源であって、少なくとも1つの光源を使用すると、反
応器セルがメタン供給材料から第1の反応生成物流を形成するように構成
される、少なくとも1つの光源と、 を含むことができる。
同様に、本開示のシステムは光触媒乾式メタン改質装置(P-DMR)を
含む。例えば、このようなP-DMRは: ハウジングと; ハウジングの
内部に配置される少なくとも1つの反応器セルであって、エンクロージャ
と、少なくとも1つのエンクロージャ内に配置される第2の触媒担体上の
第2のプラズモン光触媒とを含み、エンクロージャは、光学的に透明であ
り、第2のメタン供給材料及び二酸化炭素流が少なくとも1つのセルに入
るための1つ以上の入力部と、合成ガスが少なくとも1つのセルを出るた
めの少なくとも1つの出力部とを含む、少なくとも1つの反応器セルと;
少なくとも1つの光源であって、少なくとも1つの光源を使用すると、反
応器セルが第2のメタン供給材料及び二酸化炭素流から合成ガスを形成す
るように構成される、少なくとも1つの光源と、 を含むことができる。
別の適切なP-SMR及びP-DMRの例は、国際公開2019/005
777号、国際公開2019/005779号、国際公開2020/14
6799号、国際公開2020/146813号、及び国際公開2018
/231398号に記載されており、それぞれが参照により本明細書に援
用される。本開示のP-SMR及びP-DMRの反応器セルには、物理的、
電子的、熱的、又は光学的な結合になどによってプラズモン材料に結合す
る触媒を含む1つ以上のプラズモン光触媒が必要である。理論によって束
縛しようとするものではないが、プラズモン材料は、光とプラズモン材料
との独特の相互作用にために光を吸収することができる光学アンテナとし
て機能し、結果としてプラズモン材料上及びその付近に強い電界を発生さ
せる(すなわち、プラズモン材料内の電子の集団振動の結果として)と考
えられる。プラズモン材料上及びその付近のこの強い電界によって、触媒
及びプラズモン材料が最長約20nm以上の距離だけ離れている場合でさ
えも、触媒とプラズモン材料との間の結合が可能となる。
一般に、プラズモン材料は、あらゆる金属、金属合金、半金属元素、又は
その合金であってよい。幾つかの実施形態では、本開示のプラズモン材料
は、金、金合金、銀、銀合金、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニ
ウム合金から選択される。本開示では、「合金」という用語は、金属のあ
らゆる可能な組み合わせに及ぶことが意図される。例えば、合金は、Au
Ag、AuPd、AuCu、AgPd、AgCuなどの二元合金であって
よいし、又は三元合金、若しくはさらには四元合金であってもよい。ある
実施形態では、本開示のプラズモン材料は、アルミニウム、銅、銀、又は
金である。一般に、プラズモン材料に結合する触媒材料は、必要な反応を
触媒することができるあらゆる化合物であってよい(すなわち、プラズモ
ン材料に結合する第1の触媒は、(例えば、プラズモン材料に結合しないと
しても)SMR反応を触媒することができるあらゆる化合物であってよい)。
幾つかの実施形態では、本開示の触媒は、あらゆる金属又は半金属元素、
並びに上記元素のあらゆる合金、酸化物、リン化物、窒化物、又はそれら
の組み合わせであってよい。例えば、本開示の第1の触媒及び/又は第2
の触媒は、独立して、触媒的に活性な鉄、ニッケル、コバルト、白金、パ
ラジウム、ロジウム、ルテニウム、又はそれらのあらゆる組み合わせを含
むことができる。本開示の触媒は、触媒的に活性な鉄、ニッケル、コバルト、
白金、パラジウム、ロジウム、又はルテニウムのあらゆる合金、酸化物、
リン化物、又は窒化物を含むことができる。幾つかの実施形態では、本開
示の触媒は、触媒的に活性な鉄又はニッケルを含む。
適切なプラズモン光触媒の例は、D. F. Swearer et al., ”Heterometallic antenna-
reactor complexes for photocatalysis,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113, 8916-8920,
2016;Linan Zhou et al. ”Quantifying hot carrier and thermal contributions in plasmonic
photocatalysis,” Science, 69-72, 05 Oct 2018;Linan Zhou et al., ”Light-driven methane
dry reforming with single atomic site antenna-reactor plasmonic photocatalysts,
” Nature Energy, 5, 61-70, 2020に示されており、それぞれが参照により本明
細書に援用される。 前述のように、本開示のシステムは、ゼロエミッシ
ョンの水素をメタノール又はジメチルエーテル(DME)などの別の低エミ
ッション又はゼロエミッションの生成物とともに調製する方法に用いるこ
とができる。 例えば、本開示の別の一態様は、メタン供給材料を合成ガス
に変換する方法を提供する。このような方法は: メタン供給材料を、本明
細書に記載の光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージに供給して
、少なくとも二酸化炭素流及び水素流を得ることと; 上記二酸化炭素流を、
本明細書に記載の光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージに供給し
て、合成ガスを製造することと、 を含む。
このような方法では、例えば第1ステージにおいて、メタン供給材料を、
光触媒水蒸気メタン改質装置に供給することで、水素及び一酸化炭素を含
む第1の反応生成物流が形成され;続いて、第1の反応生成物流及び水を
水性ガスシフト反応器に供給することで、水素及び二酸化炭素を含む水性ガ
スシフト流が形成される。特に、光触媒水蒸気メタン改質装置中、メタン
供給材料は、光触媒水蒸気メタン改質装置のハウジング内に配置される複
数の反応器セル中に分配され、それぞれの反応器セルは、光学的に透明な
エンクロージャと、光学的に透明なエンクロージャ内に配置される第1の
触媒担体上の第1のプラズモン光触媒とを含む。これに続いて、少なくと
も1つの光源によって、光触媒水蒸気メタン改質装置のハウジングの内部
に光を当てることで、複数の反応器セルでメタン供給材料を、水素及び一
酸化炭素を含む第1の反応生成物流に変換し;複数の反応器セルからの第
1の反応生成物流を蓄積する。
本開示の方法のある実施形態では、水素及び二酸化炭素を含む水性ガスシ
フト流を分離ユニットに供給することで、二酸化炭素流及び水素流が得ら
れる。 最後に、第2ステージにおいて、本開示の方法は: 光触媒乾式メ
タン改質装置中で、二酸化炭素流及び第2のメタン供給材料を、光触媒乾
式メタン改質装置のハウジング内に配置された複数の反応器セルに分配す
ることであって、それぞれの反応器セルが、光学的に透明なエンクロージ
ャと、光学的に透明なエンクロージャ内に配置された第2の触媒担体上の
第2のプラズモン光触媒とを含むことと; 少なくとも1つの光源によって、
光触媒乾式メタン改質装置のハウジングの内部に光を当てることで、複数
の反応器セルで二酸化炭素及びメタンを合成ガスに変換することと; 複
数の反応器セルからの合成ガスを蓄積することと、 を含む。
本開示の別の一態様は、メタン供給材料からメタノール又はジメチルエー
テルを調製する方法を含む。このような方法では、第2ステージで得られ
る合成ガスを、合成反応器を含む第3ステージに供給することで、メタノ
ール又はジメチルエーテルが得られる。
ある実施形態では、合成反応器中の一酸化炭素及び水素の比率が約1:2
となるように第3ステージ中の合成反応器に水素流が供給される。
本明細書に記載の種々の例の実施形態は、排出物の少ない化学製造に関す
る利点などの1つ以上の利点が得られるように用いることができる。一例
の使用事例では、酪農場、埋め立て地、又は油井現場のフレアガスガスか
ら得られるメタンは、大気中への顕著な炭素放出なしに、そのメタンから
低/ゼロエミッションの水素を製造するために用いることができる。P-
DMR反応器にすぐ隣接して下流でP-SMRのCO2排出流を処理する
ことによって、排出CO2及びメタン(どちらも強い温室効果ガス)を、
例えばメタノール又はDMEなどの別の「グリーン」生成物に処理するこ
とができる。ある実施形態では、本開示の方法は、石油精製所の従来のS
MRプラント、アンモニアプラント、及びメタノールプラントよりも低コ
ストで、複雑でなく、環境に優しい代替となる。本開示のシステム及び方
法は、例えば、燃料電池車用途での水素の分散した使用場所での製造のた
めの水素燃料の供給源として用いることができる。
以上の詳細な説明は、添付の図を参照しながら開示されるシステム、装置、
及び方法の種々の特徴及び機能を記載している。種々の態様及び実施形態
を本明細書に開示してきたが、別の態様及び実施形態は明らかとなるであ
ろう。本明細書に開示される種々の態様及び実施形態は、単に説明を目的
としており、限定を意図したものではない。
本発明を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含む本発明の幾つ
かの実施形態が本明細書に記載される。当然ながら、これらの記載の実施
形態に対する変形形態は、以上の説明を読めば当業者には明らかとなるで
あろう。本発明者は、当業者がこのような変形形態を必要に応じて用いるこ
とを期待しており、本発明者らは、本明細書に明記されるもの以外の方法
で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用
法によって容認されるように本明細書に添付の請求項に記載の主題のすべ
ての修正形態及び均等物を含む。さらに、本明細書に特に示されたり、状
況によって明確に矛盾するのでなければ、すべての可能なそれらの修正形
態中の前述の要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、単に説明を目的としており、そ
れを考慮した種々の修正又は変形は、当業者によって提案されるであろう
し、本出願の意図及び範囲、並びに添付の請求項の範囲の中に含まれるべ
きことを理解されたい。本明細書に引用されるあらゆる刊行物、特許、及
び特許出願は、あらゆる目的で参照により本明細書に援用される。