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オール人工光型植物育種システム

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【新弥生時代 植物工場論 12】

 「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
  施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
 とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
 ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
 コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
 て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
 よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
 もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。

           古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」 

 

     【目次】

    巻 頭 町にとけ込む植物工場
  第1章 植物工場とはどういうものか
  第2章 人工光型植物工場とは
  第3章 太陽光型植物工場とは
  第4章 植物生理の基本を知る
  第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
  第6章 CO2/空調管理
  第7章 培養液の管理
  第8章 植物工場の魅力と可能性
  第9章 植物工場ビジネスの先進例
  第10章 都市型農業への新展開
  第11章 植物工場は定着するか

 

 

  光源は蛍光灯かLEDか


                    ほとんどの光源は蛍光灯

  1990年前後の人工光型植物工場(栽培棚が一段)では、ランプ効率のよい
 (消費電力当たりの光束量が多い)高圧ナトリウムランプが用いられたが、青と
 赤の光が少ないこと、
  また多くの赤外放射熱を発生するため(表面温度が150~200℃)、植物
 との距離をとる必要があり、多段棚栽培の光源としては使えない難点があった。
  最近は、蛍光灯のランプ効率がよくなり、多段棚式の人工光型植物工場では、
 蛍光灯を使うところがほとんどである。

  蛍光灯の波長城の例を次頁の図で紹介した。蛍光灯は光合成に有効な波長城を
 含み、植物の生理的有効放射領域をもほぼカバーしているので、植物栽培に適し
 た光源である。
  また直管型蛍光灯の表面温度は40~45℃で、植物との距離を近くできる。断熱
 性の高い人工光型植物工場では、照明からの発熱で、一年中暖房が不要(冷房は
 必要)となる。このような工場では、ヒートポンプ(エアコン)で温度と湿度を
 維持、調整するシステムが主流になっている。

                          LEDはどう使うのか

  ざましく、価格性能比向上が顕著で注目が集まっている。LEDは温度が比較
 的低く保たれるので、熱放射が少なく、近接照射が可能で多段化に有利。なおか
 つ低消費電力で、寿命が長い。
  現在、LEDによる人工照明は、白色(昼光色)が主流になっている。白色L
 EDは、青色LEDに黄色の蛍光体をかぶせて白色化したものが多い。次頁下の
 図のように、白色LEDは波長範囲が広い。曲線の左側の鋭いピークが青色LE
 Dからの発光で、右側のなだらかなピークが黄色蛍光体からの発光である。白色
 LEDは波長の短い青い光を多く出しているが、赤色光がたりない。他方、赤い
 LEDは、波長が長く電気使用量が少なくてすむ。光合成の面からいえば赤い光
 だけでもいいのだが、青い光がないと正常な成長ができないので、混合して使う
 実践例が多い。

                         LEDが主流になるのか

  ランプ効率は、現状では蛍光灯とLEDで大差はない。現在のLED照明コス
 トは蛍光灯の2倍以上で、まだ高い。一方の40W蛍光灯は1本が約1000円以
 下であり、大量購入時の値引きも大きい。しかし、植物栽培用LEDは蛍光灯に
 変わる競争力を数年以内にもつだろう。

 

    照明時間はどうするか

                    一斉点灯・消灯はしない

  人工光型植物工場で、多段式の棚が並ぶ栽培室の場合、各棚の照明時間は1日
 当たり15~16時間が普通である。それ以上の照明時間の延長は、一般に、コ
 スト・パフォーマンスが低ドするといわれている。
  栽培室の照明は、一斉点灯・一斉消灯の方式はとらない。
  栽培室全体を消灯することはない。常に3分の2の栽培棚の光源が点灯してい
 るのが普通である。一斉消灯はせず、全部の点灯もしない理由は大きくふたつあ
 る。

  ①一斉消灯すると光源による熟の排出が止まり、ヒートポンプ(エアコン)の
 冷房運転が停止するので、室内の相対湿度が100%に近づき、植物の成長に好
 ましくない。空気の流動・対流も低下してしまう。すると、カビなどが増えやす
 い。3分2の光源が点灯していれば、冷房に伴う除湿効果で、相対湿度は80%
 前後に維持される。
  ②.電力会社との契約最大消費電力を抑制して、基本料金を低く抑えるため。

                      明期時間と費用対効果

  照明時間(明期時間)は1日15~16時間が普通だというのには、どんな理
 由があるのだろうか。
  明期時間を16時間以上にすると、明期時間を長くした割には乾物重の増加(
 正味光合成量の増加)は少なくなる。植物の栄養成長段階では、24時間照明下
 で成長量が最大になるといわれているが、24時開明期では、植物にクロロシス
 (葉緑体異常)などの生理障害が発生することがある。
  明期時間を長くすれば、当然、電力消費量も増大する。ただし、電力料金には、
 「深夜または夜間料金割引」がある(割引時間帯は電力会社で異なり、午後11
 時から朝7時までの8時間か、午後10時から朝8時までの10時間)。夜から
 朝までの割引料金に切り替えれば、照明の電カコストを削減できる。
  これらを勘案して、明期時間を決めることになる。

                     みえる光は、むだな光

  栽培室に入って、人間の目にみえる光は、実はむだな光。現状では、照明器具
 から発せられた光子エネルギーのうち植物の葉に吸収されるのは50%以下で、
 残りの50%以上は栽培ベッド、床、壁などを照射し、熱エネルギーに変換され
 てむだになる。次頁下の図のように、光源の周りに反射笠をつけ、外への光の漏
 れを減らすだけでも効果は大きい(光源の排熱、通風管理に工夫が必要)。



  会津富士加工は、もともとは下請けとして富士通などに部品を納入していた
 半導体加工会社。しかし、半導体業界全体の海外移転により仕事が激減し、見通
 しが立たなくなったことから、業態転換を計画した。
  そこで農の分野に注目し、半導体工場内のクリーンルームに人工光型植物工場
 を導入。 2010年より生産をはじめた。
  2011年に透析患者向けに需要が見込める低カリウムレタスの生産を開始。
 秋田県立大学・小川准教授の特許をベースに、独自のノウハウで低カリウムレタ
 スの量産化に成功した。
  カリウムの含有量は一般のリーフレタスの20%以下といわれており、人工透
 析患者、腎臓病患者も安心して食べることができる。
  この低カリウムレタスを「Dr.vegetable(ドクターベジタブル)」として商標登
 録。2014年9月の時点で販売しているのはレタスのみだが、太陽光で栽培さ
 れた低カリウムのメロンも期間限定で年2回程度販売している。

 

  

   日本アドバンストアグリは、50年間にわたり照明器具の設計・生産・販売を行っ
  ているツジコー株式会社の子会社として設立された。太陽光に近い光を出す「3
 波長型ワイドバンドLED」を利用した植物工場用システムの開発・販売を行っ
 ている。



  さらに、「ストレス負荷型栽培システム」(好環境とストレス環境を制御する
 ことで、植物生育を促進しながら、その植物が本来もつ栄養を高める技術)を開
 発し、機能性野菜「ツブリナ(アイスプラント)」「ロザリナ(塩生プルピエ)」
 やその野菜を利用した健康食品(グラシトール、アレルバリア)を展開している。
 同社は、植物育成照明から栽培システム、健康食品事業まで、関連事業を一貫し
 た「垂直統合型」の事業を展開している。

                                               この項つづく 

 

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