彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと伝えら
れる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時代の軍団編成
の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体さ
せて生まれたキャラクタ。
Anytime Anywhere ¥1/kWh era
【再エネ革命渦論 197 アフタ-コロナ時代 185】
● 技術的特異点でエンドレス・サーフィング
✺ ペロブスカイト太陽電池で「ビル屋根メガソーラー」
世界初!ペロブスカイト太陽電池メガソーラー発電実装高層ビル
11月15日、積水化学工業のペロブスカイト太陽電池が、東京都内に建設予定の高
層ビルに採用。世界初の「ペロブスカイト太陽電池によるメガソーラー発電機能
を実装した高層ビル」となる予定としている。サウスタワーは内幸町一丁目街区
開発の南地区に、2028年に完成を予定している地上46階、地下3階、高さ約230mの
高層ビル。
ここに定格発電容量1000kW以上のペロブスカイト太陽電池をスパンドレル部に設
置する計画で、世界初の「ペロブスカイト太陽電池によるメガソーラー発電機能
を実装した高層ビル」となる予定としている。従来、高層ビルの壁面における太
陽電池の設置については、荷重や風圧への対応や更新時のコストが多額になるな
どの課題が多く、採用が進んでいなかった。
一方、ペロブスカイト太陽電池は薄型かつ軽量で、曲面への設置が可能といった
特徴があり、これまで設置が難しかった場所にも導入が可能な太陽電池として今
後の普及が期待されている。なお、積水化学工業では、大阪本社が入居する堂島
関電ビルに自社開発のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を実装する計画。こち
らは2025年に完成予定で、日本国内における建物外壁へのフィルム型ペロブスカ
イト太陽電池の常設設置としては、国内初の導入事例になるとしている。
焦点距離を変えられるメタレンズ 光の偏光でレンズの焦点距離を制御
11月20日、理化学研究所(理研)は,光の偏光で焦点距離を制御できるメタレン
ズを開発。
焦点距離を変化させることが可能なレンズは,可変倍率のカメラのズームレンズ
や双眼鏡,光学顕微鏡,プロジェクターなどさまざまな光学機器に利用されてい
る。最近では,スマートフォンのカメラのような小型の光学ユニットにも可変倍
率の光学レンズが搭載されている。これまでは複数枚のレンズで光学系を構成し,
レンズ間の距離を機械的に変化させて実効的な焦点距離を定める手法が主流だっ
た。しかし,機械的にレンズを動かすため,すばやく焦点距離を変えることは困
難で,レンズの駆動機構が必要になるなど,光学システムそのものが複雑化,大
型化するといった課題があった。一方,メタレンズの中には,MEMS技術を利用す
るものも提案されていたが,同様に応答が遅く,機構が複雑化する課題を有して
いた。
【手法と成果】
特定の光の偏光にのみ応答するナノ構造を利用して、光の偏光を変えるだけで焦
点距離を変えられる、新しい焦点距離可変メタレンズを開発。
この焦点距離可変メタレンズでは、特定の方向の偏波を持つ光(偏光)にのみ応
答する異方的な特性を有するナノ構造が鍵となります。このナノ構造は直方体の
窒化ガリウム(GaN)で構成され、横幅(W)や奥行き(L)などのサイズを変化
させると、光波が照射された際にその光波に与える位相を変えることができる(図
1a)。さらにWとLが異なる非対称な構造を特定の方位に配列させることで、ある
方向の偏光のみに位相ずれを与えることができる。
図1 焦点距離可変メタレンズの構造
(a)メタレンズを構成する基本素子のナノ構造。サファイア(Al2O3)基板と基板
表面に形成された直方体の窒化ガリウム(GaN)とから構成されている。 (b)偏
光角θ=0°(x偏光)を入射した場合の集光スポットとその時の焦点距離fx。
(c)偏光角0°<θ<90°を入射した場合の集光スポット。 (d)偏光角θ=90°(y
偏光)を入射した場合の集光スポットとその時の焦点距離fy。
そこで、x方向の偏光に対してはレンズの形状と同じような位相ずれを与え、そ
れと直交するy方向の偏光にはランダムな位相ずれを与えてレンズとしては機能
しないようなメタレンズを設計します(図2a)。このような特殊な光学特性を付
与できるのはメタレンズの最大の特徴で、従来のガラスなどを研磨して作ったレ
ンズでは実現できない。このメタレンズにx偏光を照射するとレンズ内の位相ず
れによって光は焦点距離fxの位置に集光される。一方y偏光を照射しても光は集
光されずそのまま透過します(図2c)。このメタレンズを構成するナノ構造一式
をGroupAとします。一方、x偏光にはランダムな位相ずれ、y偏光には焦点距離fy
を持つレンズとして機能するナノ構造を設計することもできる(図2b、d)。こ
のメタレンズを構成するナノ構造一式をGroupBとする。
図2 焦点距離可変メタレンズの位相特性と生成される光スポットの強度分布
(a)x偏光(青)には凸レンズと同様の位相ずれがメタレンズによって加えられ集
光されるが、y偏光(赤)にはランダムな位相ずれが加わり光は集光されない。
(b)(a)とは反対にx偏光(青)にはランダムな位相のずれを与え、y偏光(赤)に
は凸レンズと同様の位相のずれを与えて光が集光される。
(c)(a)のメタレンズによって生成される集光スポット。x偏光は焦点距離fxで集
光される。
(d)(b)のメタレンズによって生成される集光スポット。y偏光は焦点距離fyで集
光される。
これらGroupAとGroupBの2種類のナノ構造を互いに影響し合わないように一つの
基板表面に集積化したメタレンズを設計。すると、このメタレンズにx偏光を入
射させると、焦点距離fxの位置に光が集光され、y偏光を入射させると焦点距離
fyの位置に光が集光。そして、斜め方向の偏光を入射させると、その偏光成分が
x方向とy方向に分解され、x方向の偏光成分はfxの位置に、y方向の偏光成分はfy
の位置へと二つの光スポットが形成される。トータルの光強度分布は二つの光ス
ポットの強度を足し算したものになる。このとき、足し算後の光強度分布の中に
元の二つのスポットのピークが現れないような、すなわち二つのピークの間にく
ぼみが発生しないような距離になるように、あらかじめfx、fyの値を設計してい
くと、足し合わされた光スポットは、fxとfyの間に一つだけピークを持つ光スポ
ットになります。そして、偏光方向をx方向からy方向に回転させていくと、スポ
ット位置もfxからfyへと連続的に変化する(図3)。
図3.焦点距離可変の原理
二つのスポットが足し合わされて一つの光スポットが形成される。(a)偏光角
度30°の場合の集光スポットの強度分布。(b)偏光角45°の場合の集光スポッ
トの強度分布。いずれの場合もx偏光とy偏光の二つの集光スポットの間にくぼみ
ができないように設計すると一つの集光スポットになる(黒実線)。
実験では、膜厚750nmの窒化ガリウム(GaN)層がサファイア(Al2O3)基板の表
面に形成された基板を使って、GaN層を電子ビームリソグラフィ法[3]ならびに反
応性イオンエッチング法[4]などを用いて成形し、開口数[5]0.1と0.01の2種類の
メタレンズを試作(図4)。
図4 試作した焦点距離可変メタレンズの構造
(a)メタレンズの電子顕微鏡写真。左下は光学顕微鏡写真。 (b)メタレンズの電
子顕微鏡写真を拡大したもの。GroupAの構造がピンク、GroupBの構造がブルーに
塗り分けられている。
試作した焦点距離可変メタレンズの光学特性の測定結果が図5です。図5aは光の
偏光方向を変化させた際に、光スポットの形状と位置がどのように変化するかを
示したもの。また図5cは偏光方向がx方向(θ=0°)、y方向(θ=90°)ならび
にその中間の斜め方向(θ=45°)の三つの場合について、光スポットの強度分
布を測定した結果です。図5aのグラフからは、偏光方向をx方向(θ=0°)から
y方向(θ=90°)へ変化させるにつれて、光スポット位置が24.5mmから28.6mmへ
と4.1mm変化していること、ならびに光スポットのサイズは大きくは変化してい
ないことが分かります。図5bは図5aの結果を基に偏光方向と光スポットの強度ピ
ーク位置(焦点距離に相当)の関係をプロットしたものです。赤線の実験結果は
偏光方向の変換に対してほぼ線形に焦点位置(焦点距離)が変化している。図5b
の青線は、理論計算で求めたスポット位置です。二つのグラフを比較すると試作
したメタレンズのスポット位置が理論計算結果とほぼ一致していることが分かっ
た。 また、焦点距離を変化させてもスポットの形状は常に円形でスポット形状
の崩れがないことも確認した。試作した焦点距離可変メタレンズの構造は、波長
532nmの緑色光を基準に設計したものだが、赤色から紫色の異なる波長の光に対
し焦点距離可変メタレンズとして機能することも確かめた。
図5 試作した焦点距離可変メタレンズの光学特性
(a)光の偏光方向を変化させた場合に生成される光スポットの強度分布。 (b)偏
光方向と光スポットの位置(焦点距離に相当)関係。赤線は実験結果の値、青線
は理論計算値。 (c)偏光角0°、45°、90°の場合に生成される光スポットの強
度分布。
【展望】
本研究により、小型かつ極薄で高速に焦点位置やズーム率を変化させられるレン
ズが実現された。このようなレンズは、スマートフォンのカメラや拡張現実ディ
スプレイ、顕微鏡、双眼鏡や内視鏡などの医療用光学機器など幅広い分野に適用
できる。人工構造の形状を設計すれば光機能を制御できるというメタレンズの設
計の柔軟性と併せて、特定のアプリケーションの要求に合わせて精密にカスタマ
イズされた高性能な光学機器が実現できると期待される。
【脚注】
1.Micro-electromechanical systems(MEMS):マイクロメートルスケールの微小な電
気機械素子から構成される部品で、アクチュエーターやセンサー、電子回路など
をシリコンやガラスなどの基板表面に集積化したシステムの総称。
2.メタマテリアル、メタサーフェス:メタマテリアルは、光の波長よりも細かな
構造を人工的に導入して、その構造と光との相互作用を利用して実効的な物質の
光学特性を人工的に操作した疑似物質。"メタ"は超越したという意味。メタサー
フェスは、物体表面のみにナノ構造を形成した2次元版のメタマテリアルで、人
の髪の毛の直径の数百分の一という極薄のナノ構造だけで光波を巧みに制御する
技術。
3.電子ビームリソグラフィ法:電子ビームが照射されると分解する樹脂を塗布し
た基板上に、電子ビームを集光して照射し、この電子ビームを任意のパターン形
状に走査することでパターンを感光性樹脂上に転写する。感光性材料を現像処理
すると、電子ビームで描いた通りの樹脂パターンが基板表面にできあがる。この
樹脂パターンをそのまま利用することもできるが、この樹脂をマスクとして基板
表面をエッチングして基板にパターンを転写することも行われる。
4.反応性イオンエッチング法:エッチングガスにマイクロ波などを照射してプラ
ズマ化し、このプラズマを被加工物質と化学反応させながらエッチングする手法。
単にプラズマで物質をエッチングするのではなく、化学反応を介在させることに
より、特定の物質のみを選択的にエッチングすることができる。
5.開口数:レンズの場合、そのレンズが円すい状に集光する光のうち最も外側の
光の入射角をθ、光が伝播している空間の屈折率(空気なら1.0)をnとしたとき
n×sinθで定義される量。レンズの明るさや分解能に直接関係し、開口数が大き
いほどそのレンズは明るく、分解能が高い。
【掲載論文】
Po-Sheng Huang, Cheng Hung Chu, Shih-Hsiu Huang, Hsiu-Ping Su, Takuo Tanaka, and
Pin Chieh Wu, "Varifocal Metalenses: Harnessing Polarization-Dependent Superposition f
or Continuous Focal Length Control", Nano Letters, 10.1021/acs.nanolett.3c03056
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世界最高!GaN HEMTの出力密度実現
11月17日、住友電気工業は、新たに開発した結晶技術を用いることで、出力密度
を従来の2倍に高めた窒化ガリウムトランジスタ(GaN HEMT)を開発。ポスト5G
基地局向け増幅器の小型化と高性能化が可能となる。
NEDOの委託する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環で
住友電気工業株式会社は、新規結晶技術を用い従来比で2倍となる高出力密度を
実現した窒化ガリウムトランジスタ(GaN HEMT)を開発しました。開発した
GaN HEMTは、新規結晶技術により、窒素(N)極性でGaN結晶の高品質化を実現
し、さらにn+ GaNの採用やハフニウム(Hf)系のゲート絶縁膜の形成技術を組み
合わせた。この結果、2A/mm超の最大電流と60V超の高耐圧を両立させ、N極性
GaN HEMTとして世界最高値である、周波数28GHzでの最大出力密度12.8W/mmを達
成した。本技術の開発成果は、ポスト5G情報通信システムの中核をなす、基地局
向け増幅器へ実装されることで、小型化・高性能化に貢献する。
【手法と成果】
新たに開発したN極性GaN HEMTについて、その電流電圧特性や高周波特性、出
力密度などを調べた。この結果、2A/mmを超える最大電流で60V以上の耐圧を達
成するなど、大電流と高耐圧を両立させた。また、高周波特性は測定周波数28G
Hzにおいて最大出力29.8dBmが得られた。トランジスタのゲート幅換算だと12.8
W/mmの最大出力密度になる。
● 今夜の寸評: