【超低温空気冷凍工学 非共沸冷媒】
ご多分に洩れず、ネットとテレビ情報が情報源だが、どんなに疲れていても「勘 :
intuition)が働くことがままある。日曜朝の「がっちり!!マンデー」をみていて 超
低温冷凍庫の普及させ食品革命――デジタル革命渦論と比肩するとといささか誇張
が過ぎるがもしれないが、マグロの刺身やにぎり寿司を世界に知らしめたからには、
それは許させようは ^^;――を起こしたと言われる株式会社ダイレイの商品開発の
紹介のなかで "肝”の冷媒が複数の冷媒混合した「非共沸冷媒」を使用することで、
従来の冷凍ではできなかったマイナス60℃を実現したという件にフォーカシング
が掛かった。
ところで、食肉や魚介類などの鮮度を比較的長期にわたって劣化させずに保つこと
ができる冷凍庫として、-50℃以下の超低温を達成する冷凍庫が生産地漁港や物
流の拠点などで用いられている。従来は、これらの超低温度を実現する冷凍機シス
テムは、(1)沸点がこれらの領域にある低沸点冷媒を用いて冷凍機と室温環境下
で作動する高沸点冷媒を用いた冷凍機とを組み合わせ、2台のコンプレッサーとコ
ンデンサからなる2段式冷凍機方式を用いてきた。(2)これに対し、同社の超低
温度を実現する低沸点冷媒と室温環境下で凝縮可能な高沸点冷媒とを組合せた非共
沸冷媒による超低温度を単段式コンプレッサーで実現する冷凍機システムを採用(
下図参照クリック↓)
しかし、 このような非共沸冷媒を用いた冷凍機システムを 小容量のストッカーな
どに適用する場合は、熱容量も小さく、構造上も一般に扉を冷凍庫上面で水平に開
閉する形式を採用し、収納物の出し入れに際して庫内冷気の換気量も少ないため、
庫内温度の変動も小さく、比較的安定した運転状態を維持できるが、マグロなどを
解体しないままで収納・保管するなど、業務用として庫内容量が大きくなり、人が
庫内に入って作業を行う必要が生じるような庫内容積数千リットル以上の冷凍庫は、
作業や保管スペーシングから縦型の扉開閉方式となりプルダウン性能の向上が必要
だが、(1)能力向上をコンプレッサー、コンデンサなどの冷凍機の個別要素の容
量増大の対処法ではコスト逓増となり過剰スペック(定常運転時の条件の仕様)と
なり、(2)さらに、温度変化に対するが悪い――非共沸冷媒中の低沸点成分が凝
縮されず、気体状態で冷凍機システム中を循環し、コンプレッサーの圧縮負荷が大
きくなる。
(1)エバポレータの膨張弁の開度で冷媒ガスの圧力と流量を自動調整し、起動時
や庫内温度が高く、低沸点成分の凝縮進行しない状態時に、同膨張弁を開放し高沸
点成分の凝縮条件の圧力に維持し、低沸点成分の凝縮が進行するにつれ同膨張弁を
絞り、順次、低沸点成分の凝縮圧力にすることを、(2) 特に同膨張弁のキャピラ
リーチューブを複数並列に設け、開閉数により流量の制御をすることを特徴とする
ことで、起動時、庫内温度上昇時などの低沸点成分の凝縮進行しない状態の冷媒流
量を増大し冷却能力を向上し、庫内温度が低下し、定常運転状態までの間の負荷
変動を抑制・安定運転を可能にするシステム提案である。
【新弥生時代 植物工場論 14】
「植物工場」とは、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を
施設内で人工的に制御し、作物を連続生産するシステムのことで、季節や場所に
とらわれず、安全な野菜を効率的に生産できることから多方面で注目を集めてい
ます。その「植物工場」そのものにスポットをあてた本書では、設備投資・生産
コストから、養液栽培の技術、流通、販売、経営などを豊富な写真や図解を用い
て様々な角度からわかりやすく解説。また、クリアすべき課題や技術革新などに
よってもたらされるであろう将来像についても、アグリビジネス的な視点や現状
もふまえながら紹介、文字通り植物工場のすべてがわかる一書となっています。
古在豊樹 監修「図解でよくわかる 植物工場のきほん」
【目次】
巻 頭 町にとけ込む植物工場
第1章 植物工場とはどういうものか
第2章 人工光型植物工場とは
第3章 太陽光型植物工場とは
第4章 植物生理の基本を知る
第5章 植物工場の環境制御(光(照明)
第6章 CO2/空調管理
第7章 培養液の管理
第8章 植物工場の魅力と可能性
第9章 植物工場ビジネスの先進例
第10章 都市型農業への新展開
第11章 植物工場は定着するか
養液栽培の方式
水耕法か固形培地法か
植物工場は、人工光型でも太陽光型でも、土を使わない養液栽培(肥料を水に
溶かした「培養液」を根に吸わせる)で肥料養分と水の供給を行っている。また
養液栽培の方式には、「水耕法」と「固形培地法」がある(次頁)。
【水耕法】培養液のなかや表面で根を育てる栽培法。ほかに「噴霧耕」(根に培
養液をミスト状または霧状に、連続または間欠噴霧するやり方)もある。水耕法
には、培養液を浅い水深で栽培ベッドに流す「NFT(薄膜流水式)」、培養液
を栽培ベッドに溜める「DFT(湛液式)」のほか、毛管水耕(浮き根式水耕)
などの方式がある。多段式の植物工場ではNFT方式が多い。
【固形培地法】根を支える土の代わりとなる固形培地を使う栽培法。培地の主流
はロックウール(玄武岩・製鉄スラグなどを高温で溶かし繊維状にした人造鉱物
繊維、pH7前後に調整)で、ほかに使用後に土に戻せるヤシガラ繊維などもある。
太陽光型のトマト栽培などは固形培地法が多い。
培養液は環境保全型の循環式ヘ
培養液の与え方には、「循環式」と「非循環式」の2種類がある。DFT(湛
池式)やNFT(薄膜流水式)では、培養池は栽培ベッドと培養液タンクの問を
循環するが(次頁)、固形培地法では、作物に吸収されなかった余剰培養液を循
環利用せず、そのまま廃棄する「かけ流し式」が多い。循環式の短所は、培養池
中の養分組成の変化による生育への悪影響病害が侵入すると拡大しやすいことな
どがある。非循環式では、これらの心配は少ないが、かけ流しは養水分のむだに
なり、環境汚染にもつながるので、固形培地法においても、循環式への移行がす
すめられている。
土耕と水耕の違いは?
自然環境に依拠した土耕と水耕の根本の違いは、土のもつ緩衝機能(外部から
の環境変化をやわらげ、一定の状況に保つ働き)があるかないかである。
土耕における管理の目標は「土づくり」にある。堆肥を役人して、土壌を団粒
構造にし、通気性・保水性・生物性・保肥性を高め、環境制御性より環境安定性
を重視する。
一方、緩衝材としての土のない水耕では、養水分の施用量の大小が直接作物に
影響し、邱(土壌酸度)の変動もはげしい。人間による、より緻密な環境制御な
しには生産の安定性は得られない。
植物の必須要素
植物に必須の多量要素は?
植物の生育に不可欠な「多量要素」は9つある(次頁)。このうち、炭素(C
)、水素(H)、酸素( O)は、空気中の二酸化炭素や酸素、または養液中の
水から供給される。植物体(乾物)の元素組成は、炭素(C)と酸素(O)が、
それぞれ約45%、水素(H)が約6%、合計で96%を占めており、これらは光
合成過程で植物体内に取り込まれる。肥料養分を考えるまえに、まずは十分なニ
酸化炭素と水でしっかり光合成させることが基本になる。
残り6つの多量要素は、肥料として供給する必要がある。
【窒素(N)】作物の生育と収量に最も大きくかかわり、必要量も多い。茎葉を
伸長させ、葉色を濃くする「葉肥」。
【リン酸(P)】呼吸作用や体内のエネルギー伝達に重要な働き。茎の分けつ、
根の伸長、開花・結実を促進する「実肥」。
【カリウム(K)】おもに根の発育を促進し、根や茎を強くする「根肥」。光合
成や炭水化物の移動蓄積に関与する。
【カルシウム(Ca)】植物の分裂組織、成長点や根の先端の正常な発育に不可
欠。細胞膜を強くし、根の伸長を促す。
【マグネシウム(Mg)】葉緑素の構成成分。リン酸の吸収と体内移動に関与。
炭水化物・リン酸代謝で酵素を活性化。
【イオウ(S)】アミノ酸、ビタミンなど重要な化合物の成分。葉緑素の生成に
も関与。不足すると作物が軟弱になる。
微量要素も培養液に不可欠
槙物の生命活動に不可欠な要素のうち、植物体にあまり多く含まれない(必要
量の少ない)ものを、必須微量要素と呼ぶ。現在8つの要素が認められている(
次頁)。
植物体内での役割で分類すると、以下の3つに分けられる。
①葉緑素の生成と働きに不可欠=鉄・マンガン・亜鉛・銅・塩素、
②生体内酵素の構成成分として不可欠=モリブデン・ニッケル、
③細胞組織形成と維持に働く=ホウ素。
これら微量要素のほかに、必須要素ではないが、特定の作物に有益な働きをす
る「有用元素」がある(次頁)。
こうした微量要素は、土耕の場合、土壌中の天然ミネラル成分が供給源となっ
ているが、土なしの養液栽培では天然供給はない。
ただし、原水(培養液をつくるときの水=おもに井戸水)からのミネラル分の
供給はある。海が近い井戸水では、塩素やナトリウムを多く含むものもあって成
分検査が不可欠である。市販の養液用肥料に微量要素として含まれているのは、
鉄・マンガン・ホウ素・銅・亜鉛・モリブデンが一般的で、すべての必須微は要
素を含んでいるわけではない。
養液の調製
培養液の標準的な処方は?
作物の生育に欠かせない多量と微量の必須要素を、井戸水などの原水に溶かし
たものが、養液栽培用の培養液である。
好適な培養液の成分組成は、作物の種類によって異なる。
さらに品種、生育段階、温度、光条件などによっても変化する。実際の栽培で
は、細かく組成を調整することができないので、同じ組成の培養液を追加しなが
ら使い、生育段階に合わせて濃度を調整することが多い。
野菜の標準的な培養液の処方を、次頁に紹介した。この表では培養液の標準的
な組成として、汎用的な「園試処方」や作物別の「山崎処方」を例示している。
園試処方は、果菜類の養分吸収比から決められたものだが、多くの作物に適用
でき、組成や濃度を調整して広く応用されている。園試処方も作物別の山崎処方
も、各養分間のバランスが類似している。表をみると、NO3-N=K+Ca、P
=Mgの関係があり、陽イオンと陰イオンのバランスに配慮されている(NO3、
PO3は陰イオン、K・Ca・Mgは陽イオン)。
山崎処方は、作物別に養分処方が細かく変えられており、この処方は、培養液
の組成濃度と、作物の吸収成分濃度がほぽ同等なので、常に同じ培養液を補給し
ておけば、EC(塩類濃度)、pH(溶液酸度)は比較的安定するといわれてい
る。
培養液の自家配合と注意点
培養液の原料には、市販の複合肥料もあるが、自分で単肥を配合して肥料コス
トを下げることも重要な課題である。ここでは汎用性のある標準培養液として「
園試処方」を自家調製する場合の方法と注意点を紹介する(次頁・微量要素は省
略)。
配合する肥料分(溶解度と純度の高い工業用製品を使う)は表にあげた4種類。
次頁の注に載せたように、グループ分けして別々に熱湯で溶いてから水に加える。
4種類を同一容器に入れて溶かすと、化学反応を起こし(リン酸と石灰・苦土が
化合してリン酸石灰・リン酸苦土となる)、不溶性の沈殿物となり肥効が著減す
ることに注意が必要である。
原水の水質にも注意を
養液栽培の原水用地下水の水質でとくに重要なのは、塩分である。塩分はナト
リウム濃度と塩素濃度の合量で示される。養液栽培での許容限界量は、ナトリウ
ム濃度が80mg/Lと考えられている。カルシウム・マグネシウム・鉄などの濃
度が高い地下水は、単肥を用いて培養液組成を改善する方法がよい。
養液の水質管理
pHの定期的調整が必要
培養液の管理は、pH(養液酸度)とEC(電気伝導度=養分イオン濃度)を
定期的にチェックすることが基本である。培養液の最適同は、多くの作物で5・
5から6・5であり、これは作物の生育に適しているだけでなく、肥料成分の溶
解やイオン化に適した条件である。
次頁上の図は、pHと植物が吸収・利用できる可給態養分との関係を見たもの。
この図で、各養分の帯の幅の広いところほど、可給態養分が多いことを示して
いる。培養液の面が低いと、カルシウム・マグネシウム・カリウムの溶解度が低く
なる(沈殿する)ため欠乏症が生じ、逆に邱が高いと、鉄・マンガンなどの欠乏
症が生じる。窒素はおもに硝酸イオンとアンモニウムイオンの形で供給されるが、
培養液のpHは、作物によって硝酸イオンが優先的に吸収されると高くなり、ア
ンモニウムイオンが優先的に吸収されると低くなる。とくに循環式の養液給与法
では、作物の養分吸収によって同が変化するので、定期的な調整が必要になる。
【pHの調整法】pHが5・5以下になれば、水酸化カリウム(苛性カリ)で、
pH6前後に。面が6・5以上になれば、硝酸(HNO3)で、pH6前後に調整す
る。この調整剤は、どちらも養分要求量の高いカリウムや窒素を含み、安価なの
で、コストの面で得策である。
ECの調整と問題点
EC(電気伝導度)は、培養池の養分濃度(総イオン濃度)の指標としてpH
と並んで欠かせない測定項目である。単位はds/m(デシシーメンスパーメート
ル)が用いられる。ECは硝酸態窒素との相関が高く、その残存量を示す指標と
なるが、ほかにカリウムやカルシウムの残存量のめやすにもなる。
好適な屁の値は作物によって異なる。植物工場の主要な生産物であるレタス類
は低いECを好む(作物ごとの、標準EC値は次頁)。
ただし、Eによる濃度の診断は、総イオン濃度を測定するもので、培養池中の
個別のイオン濃度は測定できない。ECによる調整法では、全養分の目標値に沿
った比例補給なので、各イオンに過不足が生じて、生育障害を引き起こすことが
ある(次頁)。
【イオン濃度制御へ】養液調製の理想は、個別のイオン濃度をセンサーで測定し
て、過不足なく補給すること。すでに「自動イオン濃度制御装置」は開発されて
いる。まだ価格が高いが、収量・品質の安定や培養液の長期間連続使用のために、
新しい制御法への期待は大きい。
養液の温度管理
培養液の適温は15~20℃)
作物の根を健全に保ち、養分の吸収をよくするには、培養液の温度管理を忘れ
てはならない。培養液の温度は、養分吸収や、養旅中の溶存酸素の濃度に影響する。
培養液の適温は15~20℃である。液温か低いと、窒素・リン酸・カリウムの吸収
は抑制される。逆に池温が高いと、根の呼吸が盛んになる一方で養池中の溶存酸
素が減少し、根は酸素不足となって根腐れを起こしやすい。
根の呼吸速度は、温度の上昇とともに、指数関数的に上昇する(酸素の消費量
が増える)。同時に、養池温度が高くなると、飽和溶存酸素量(養池に溶けるこ
とのできる酸素量)が低下していく。そのために根は酸素不足になりやすい。酸
素不足だと、根は先端から壊死していく(次頁)。
酸素不足では根が壊死する
植物の根による養分吸収は、若い先端部で盛んに行われる。
選択的な養分吸収は、呼吸作用によって得られたエネルギーを用いて行われるの
で、根の呼吸作用に影響する要因によって支配される。養液温度が適温のとき、
養分吸収は盛んになる。また酸素も、直接的に根の呼吸作用を通じて養分吸収に
影響する。
根の呼吸作用は、光合成によって得られた炭水化物を用いて行われるので、日
照不足などで光合成が低下するようなときは、根の呼吸作用も弱く、養分吸収も
低下する。根を健全に保つためには、茎葉での光合成が活発に行われて、呼吸材
料となる炭水化物が絶えず供給(転流)されることが必要になる。
チップバーン(Ca欠乏)対策として
養液温度が高く、酸素も不足すると、カルシウムの吸収が低下する。もともと
カルシウムは2価のイオンで、1価のイオン(窒素やカリウム)よりも大きいた
め、吸収されにくく植物体内の移動が鈍い傾向にある。そのため、植物の末端部
分でカルシウム欠乏が生じやすい(レタスなどの菜もの野菜では菜の先や成長点
に発生する)。
菜もの野菜のチップバーン(縁腐れ)は、急激な成長時のカルシウム不足が原
因となる生理障害である。植物工場では、土耕に比べて成長速度が格段に高まる
ため、常にチップバーンのリスクがあり、これをいかに低く抑えるかが重要な課
題となる。そのためにも、根圏の環境(養液温度や酸素量)の管理を怠ることは
できない。
この項つづく
● ミニトマト試験栽培はじめました。