彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと伝えら
れる"招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。(戦国時代の軍団編成
の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編のこと)の兜(かぶと)を合体さ
せて生まれたキャラクタ。
世界一のダイヤモンド産出国へ ④
[関連特許]
5.特開2023-179710 MIS型半導体装置の製造方法
【0030】なお、ゲート絶縁体層23は、終端処理されたダイヤモンド半導体層2
2の表面に直接接して、水、炭化水素やレジスト残渣などの層を挟まないことが
好ましい。このような層を挟むと、界面準位が発生しやすいためである。
【0031】 ゲート絶縁体層23としてAl2O3などの非晶質膜を用いた従来構造
では、ゲート絶縁体層23中およびゲート絶縁体層23とダイヤモンド半導体層
22との界面にトラップ(電荷トラップ)が多く含まれる傾向がある。このため
、キャリア伝導は散乱を受け、キャリア移動度は低いものとなる。 一方、ゲート
絶縁体層(ゲート絶縁膜)として窒化ホウ素、好ましくは単結晶の窒化ホウ素、
より好ましくはh-BN、さらに一層好ましくは単結晶のh-BNを用いた本発
明の構造では、ゲート絶縁体層23中の電荷トラップは少ない傾向がある。この
ため、キャリア伝導は散乱が少なく、高いキャリア移動度が得られる。
-----------------------------------------------------------------------
【参考】
MIS構造とは金属-絶縁体-半導体(metal-insulator-semiconductor)からな
る3層構造である。
➲ MIS構造 (MIS structure)
➲【半導体工学】金属-絶縁体-半導体構造とは (MIS構造,MOS構造)
------------------------------------------------------------------------
【0037】 <製造方法>
【0062】 1.基板の準備
【0063】 2.アライメントマークの作製
レーザーリソグラフィにより、アライメントマークをダイヤモンド基板31上に
形成した(図示なし)。 ここで、アライメントマークの形成工程を以下に示す。
最初に、ダイヤモンド基板31の表面に下層レジストPMGI-SF6S(Mi
crochem製)をスピンコートし、180℃で5分ベークした。その後、フ
ォトレジストAZ-5214E(メルクパフォーマンスマテリアルズ製)をスピ
ンコートし、110℃で2分ベークした。 次に、高速マスクレス露光装置(ナ
ノシステムソリューションズ製、DL-1000/NC2P)を用いて、アライ
メントマークパターンを描画した。TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム
)2.38%で合計150秒現像した後、純水で合計120秒洗浄し、その後
窒素ブローを行った。
【0064】 しかる後、電子銃型蒸着装置によって、厚さ10nmのTi、厚さ1
5nmのPt、厚さ60nmのAuおよび厚さ25nmのPtを順次蒸着した。
その後、80℃設定のウォーターバスで加熱したNMP中に試料を漬け、リフト
オフを行った。 最後に、アセトンとIPAでダイヤモンド基板31をリンスし
た後、窒素ブローを行ってダイヤモンド基板31の所定の場所にアライメント
マークを形成した。
【0065】
3.オーミック電極の作製
ダイヤモンド表面に電子線レジストgL-2000DR2.0(Gluon L
ab製)をダイヤモンド基板31上にスピンコートし、180℃で5分ベークし
た。 その後、エスペーサー300Z(昭和電工製)をスピンコートし、100
kV電子線描画装置(エリオニクス製、ELS-7000)を用いて、オーミッ
ク電極のパターンを描画した。描画後、エスペーサー除去のため純水で60秒洗
浄し、その後窒素ブローを行った。そしてキシレンで60秒現像し、IPAで
60秒洗浄した後、窒素ブローを行ってダイヤモンド基板31上にレジストパタ
ーン51を形成した(図8(a)、図11(a))。
図11.MIS型半導体装置の製造工程を断面図にて示した製造工程図
【0066】 次に、電子銃型蒸着装置によって、厚さ5nmのTiからなる導電膜
35aおよび厚さ5nmのPtからなる導電膜36aを順次蒸着した(図8(
b)、図11(b))。 その後、80℃設定のウォーターバスで加熱したNM
P中に試料を漬け、リフトオフを行った。アセトンとIPAでリンスした後、窒
素ブローを行った。 しかる後、MPCVD装置(セキテクノトロン製、AX5
200-S)内においてH2雰囲気(H2流量500sccm、圧力80Torr)
で35分間アニールを行い、ダイヤモンドとTiの界面にTiCからなる低抵抗
化層42を形成した(図8(c)、図11(c))。アニールの際の設定温度は、
650℃までおよそ31分で上昇させ、650℃で35分間保持した。
【0067】
4.ダイヤモンド表面の水素終端化とレジスト残渣の除去
上記のオーミック電極形成に引き続きMPCVD装置(セキテクノトロン製、A
X5200-S)内でダイヤモンドを10分間水素プラズマにさらし、表面の水
素終端化とレジスト残渣の除去を行って、ダイヤモンド基板31の露出面に水素
終端層32を形成した(図8(d)、図11(d))。
図8.MIS型半導体装置の製造工程を断面図にて示した製造工程図
水素プラズマの条件は、H2流量500sccm、圧力30Torr、ヒーター
設定温度600℃、マイクロ波出力300Wである。 さらに、真空搬送用チャン
バーと接続可能な別のMPCVD装置(セキテクノトロン製、AX5000)内
においてH2雰囲気(H2流量500sccm、圧力80Torr)で35分間ア
ニールを行った。
アニールの際の設定温度は、710℃までおよそ34分で上昇させ、710℃で
35分間保持した。 MPCVD装置(セキテクノトロン製、AX5000)内
でダイヤモンドを10分間水素プラズマにさらし、表面吸着物の除去を行った。
水素プラズマの条件はH2流量500sccm、圧力30Torr、ヒーター設
定温度670℃、マイクロ波出力300Wである。
【0068】 引き続き、水素プラズマ処理を行ったダイヤモンド基板31は、真空
に保たれた試料搬送路を介して大気暴露することなく、アルゴンガス雰囲気のグ
ローブボックスへ搬送した。その詳細を、断面で示した装置構成図である図14
および図15を用いながら以下に説明する。
図15.実施例1で使用した処理装置構成の概要図
【0069】 図14は、水素プラズマ処理を行うときの処理装置1001の概要を断
面図で示したものである。 処理装置1001は、水素終端処理チャンバー1011
と試料搬送・一時保管室1025を主要な構成要素としている。そして、水素終
端処理チャンバー1011を主体とした水素終端処理部E1と、試料搬送・一時
保管室1025を主体とした試料搬送部E2に大別され、ゲートバルブ1024
の先(ゲートバルブ1024と搬送中間室1027の接続部)で、E1部とE2
部は切り離せるようになっている。
図14.実施例1で使用した処理装置構成の概要図
【0070】 水素終端処理チャンバー1011は、2つのゲートバルブ1024と1
026および搬送中間室1027を介して試料搬送・一時保管室1025に接続
されていて、試料ロッド1029により、試料を水素終端処理チャンバー1011
から試料搬送・一時保管室1025に搬送できるようになっている。ここで、搬
送中間室1027には真空排気系を接続するためのフランジ1028が備えられ
ており、真空排気系が接続されていないときはフランジ(ブランクフランジ)
1028で閉じられている。 また、試料搬送・一時保管室1025には配管1
071、バルブ1072、フランジ1073およびベローズ配管1074を介して
ターボ排気セット1075が接続されている。ここで、ターボ排気セット107
5は、ターボ分子ポンプとダイヤフラムポンプからなるT-Station75
D(エドワーズ製)である。
【0071】 水素終端処理チャンバー1011は、ダイヤモンド基板31の第1主表
面(ダイヤモンド半導体層)の露出面を水素プラズマにより水素終端する処理室
であり、具体的には上述のMPCVD装置(セキテクノトロン製、AX5000
)の処理室である。 水素終端処理チャンバー1011は、ゲートバルブ1012
を介してターボポンプ(STP-iX455、エドワーズ製)1013に繋がれ、
ターボポンプ1013はバルブ1014および配管1015を介してスクロール
ポンプ(nXDS15i、エドワーズ製)1016に接続されている。このため、
いわゆるオイルフリーの真空ポンプ構成になっている。1011の真空度は、真
空計1063(電離真空計TG200、アンペール製)によって読み取ることが
できる。
【0072】 また、水素終端処理チャンバー1011は、真空粗引き目的で、バルブ
1017と配管1018を介してスクロールポンプ1016に接続された排気パ
スを備えている。また、水素終端処理制御用に、バルブ1019、1061およ
び配管1062が設けられ、それを介して水素終端処理チャンバー1011とス
クロールポンプ1016が接続されたパスも有する。 また、水素終端処理チャ
ンバー1011は、プロセスガス(H2ガス)1023がバルブ1022を介して
導入できるようになっている。なお、水素終端処理チャンバー1011には、水
素終端処理を行うときに1011内の圧力をモニターするためのバラトロン真空
計1020も取り付けられている。
【0073】 図15は、h-BNからなる絶縁膜33aを試料に貼り付ける作業に
用いる処理装置1002の概要を断面図で示したものである。 処理装置1002
は、貼り合わせ処理室(グローブボックス)1031と試料搬送・一時保管室
1025を主要な構成要素としている。試料搬送・一時保管室1025を主体と
した前記の試料搬送部E2は、ゲートバルブ1043を介して貼り合わせ処理部
E3が接続されて、試料が大気に晒されることなく、貼り合わせ処理室(グロー
ブボックス)1031に試料を搬送できるようになっている。
【0074】 ここで、試料を試料搬送・一時保管室1025から貼り合わせ処理室(
グローブボックス)1031に搬送する際に試料が搬送中間室1027で大気に
晒されないように、フランジ1028を介して、真空排気系E4が接続される。
真空排気系E4は、ベローズ配管1109、1111、バルブ1110、真空計
(クリスタル/コールドカソード コンビネーションゲージ CC-10、東京電
子製)1112が備えられたチャンバー1101、アングルバルブ1102、タ
ーボポンプ(nEXT300D、エドワーズ製)1103、バルブ1104、配
管1107およびスクロールポンプ(nXDS15i、エドワーズ製)1105
を有し、さらにチャンバー1101をスクロールポンプ1105で粗引きする配
管1107とバルブ1106も備えている。
【0075】 貼り合わせ処理室1031は、試料に絶縁膜33aとなるh-BN絶縁
膜を貼り合わせる処理室で、仕切り扉1032を介してパスボックス1034に
接続され、パスボックス1034はバルブ1035および配管1036を介して
スクロールポンプ(nXDS15i、エドワーズ製)1037に繋がれている。
なお、貼り合わせ処理室1031にはスクロールポンプ1037で直接排気でき
るようにするための配管とバルブ1038が備えられており、パスボックス10
34には圧力計1039が備えられている。
【0076】 貼り合わせ処理室1031は、大気圧の不活性ガス(Arガス)で満た
されている。 Arガスは、Arガスシリンダー1052から配管1053を介し
て貼り合わせ処理室1031およびパスボックス1034に供給されるようにな
っている。ここで、貼り合わせ処理室1031およびパスボックス1034に向
かう配管1053にはそれぞれバルブ1054および1055が設けられている。
また、このArガスは、配管1042,1045およびバルブ1041,1044
を介して貼り合わせ処理室1031に接続された不活性ガス循環精製機1040
によって常時精製され、酸素濃度0.5ppm以下、露点-79℃以下に保たれ
ている。さらに、この精製されたArガスは、バルブ1108を介して接続され
た真空排気系E4を介して、試料搬送部E2に導入できるようになっている。
貼り合わせ処理室1031は、いわゆるグローブボックスとなっており、雰囲気
を外部と隔離して貼り付け作業をするためのブチルゴム手袋が付随している。ま
た、貼り合わせ処理室1031は、バルブ1054を介してArガスシリンダー
1052に、またバルブ1038を介してスクロールポンプ1037につながっ
ており、手袋に手を入れたときなどに貼り合わせ処理室1031の内部の圧力を
調整できるようになっている。さらに顕微鏡が備えられていて(図示なし)、外
部と雰囲気(ガス)的に遮断された環境の下で、ミクロンオーダーの貼り付け作
業が可能になっている。顕微鏡の画像は、不活性ガス環境を害することなく、貼
り合わせ処理室1031の外部でモニターにより観察できるようになっている。
なお、貼り合わせ処理室1031の外壁は、ステンレスとガラスからなり、貼り
合わせ処理室1031の内容量は約310Lである。
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【符号の説明】 11:炭素 12:水素 13:ホウ素 14:窒素 21:ダイ
ヤモンド基板 22:ダイヤモンド半導体層 23:ゲート絶縁体層(ゲート絶
縁膜) 23a:絶縁膜 24:導電体層(ゲート電極) 25:絶縁膜 25a:
絶縁膜 26:低抵抗化層 27:ゲート電極配線 28:ソース電極およびその
電極配線 29:ドレイン電極及びその電極配線 31:ダイヤモンド基板 32:
水素終端層 33:ゲート絶縁膜(ゲート絶縁体h-BN) 33a:絶縁膜
34G:ゲート電極(グラファイト) 35:導電膜 35a:導電膜 36:導電
膜 36a:導電膜 37S:ソース電極 37D:ドレイン電極 42:低抵抗化層
43:酸素終端層 43a:酸素終端層 51,52,53:レジストパターン
61:絶縁膜(素子分離用h-BN) 62:導電膜(電極配線) 62a:導電
膜 62G:ゲート電極配線(ボンディングパッド配線) 62S:ソース電極配線
(ボンディングパッド配線) 62D:ドレイン電極配線(ボンディングパッド配
線) 71:酸素終端と水素終端の領域の境界 101:MIS型半導体装置
201:MIS型半導体装置 1001:処理装置 1002:処理装置 1011:
水素終端処理チャンバー 1012:ゲートバルブ 1013:ターボポンプ
1014:バルブ 1015:配管 1016:スクロールポンプ 1017:バ
ルブ 1018:配管 1019:バルブ 1020:バラトロン真空計 1022:
バルブ 1023:プロセスガス 1024:ゲートバルブ 1025:試料搬送・
一時保管室 1026:ゲートバルブ 1027:搬送中間室 1028:フラン
ジ 1029:試料搬送ロッド 1031:貼り合わせ処理室(グローブボックス)
1032:仕切り扉 1034:パスボックス 1035:バルブ 1036:配
管 1037:スクロールポンプ 1038:バルブ 1039:圧力計 1040:
不活性ガス循環精製機(Arガス循環精製機) 1041:バルブ 1042:配
管 1043:ゲートバルブ 1044:バルブ 1045:配管 1052:Ar
ガスシリンダー 1053:配管 1054:バルブ 1055:バルブ 1061
:排気量調整バルブ 1062:配管 1063:真空計 1071:配管 107
2:バルブ 1073:フランジ 1074:ベローズ配管 1075:ターボ排気
セット 1101:チャンバー 1102:アングルバルブ 1103:ターボポ
ンプ 1104:バルブ 1105:スクロールポンプ 1106:バルブ 110
7:配管 1108:バルブ 1109:ベローズ配管 1110:バルブ 1111:
ベローズ配管 1112:真空計 E1:水素終端処理部 E2:試料搬送部 E3:
貼り合わせ処理部 E4:真空排気系
この項つづく
● グラフェン層間に2層アルカリ金属の最密配列を発見
電池容量を増大させる可能性を示唆
1月24日、産業技術総合研究所、東京工芸大学、九州大学、台湾国立清華大学らの
研究グループは、炭素原子が1個の厚さで六角形の格子状に並んだグラフェンの層
間に高密度でアルカリ金属を挿入する技術を開発し、原子の配置構造を直接観察
することに成功。
【要点】
1.グラフェン層間におけるアルカリ金属の2層構造を発見
2.グラフェン層間のアルカリ金属は、グラファイト表面の層間に特有の拡張性
により最密充填される
3.電気自動車や通信機器に向けた2層〜少数層グラフェン電極による大容量二
次電池の開発に期待
【概要】
電池の電極材料である黒鉛(グラファイト)は、グラフェンが層状に重なり、層
間に配置されたアルカリ金属が電子を受け渡すことで、充電・放電を行う。もし、
グラフェン層間に高密度でアルカリ金属を充填できれば、電気容量が向上する。
過去百年にわたり、X線や電子回折の測定を通じて、グラフェン層間には単層の
アルカリ金属しか充填できないと広く認識されており、各層が完全に充填された
状態が理論的な充電極限と考えられてきましたが、層間アルカリ金属の原子配置
を直接観察し、グラフェン層がアルカリ金属原子を単層でしか収容できないのか、
それとも他の技術によって、より高密度または複数層のアルカリ金属を収容でき
るのかを検証する研究報告はばかった。
図.アルカリ金属は2層グラフェンに挿入される際に六方最密充填の2重層を形成
同研究グループは、グラフェンの間にアルカリ金属を高密度に挿入する技術を開
発した。高性能電子顕微鏡により、層間のアルカリ金属原子の配置構造を直接観
察することにも成功する。電極として広く用いられてきたグラファイトには、1
層構造のみが形成される、グラフェン層間のアルカリ金属は、グラファイト表面
のグラフェン層間に特有な層間隔の柔軟な拡張性により、およそ2倍のアルカリ
金属を挿入できる2層構造で最密充填されることを発見。アルカリ金属を2層に
挿入したグラフェンを積層できれば、それを電極材料にしてアルカリイオン二次
電池の大容量化が期待されている。
【成果】
一般にグラファイト電極の作成では、電気化学法を用いて金属原子をグラフェン
層間に挿入。挿入される原子の種類や密度に応じて、グラファイトの電子・光学
特性は変化します。アルカリ金属が各層間を完全に埋め尽くすと、グラファイト
の色が黒から黄金に変わり、低温で超伝導特性が現れる。
多層グラフェンの上からグラフェン層を観察したとしても、原子同士が重なり合
うため、原子の正確な位置関係を解析することは困難です。最小単位となる2層
のグラフェンに挿入した金属であれば、重なり合う原子がないため、金属と炭素
原子の正確な位置関係を知ることが可能(図1a)。
グラフェン層と金属との位置関係を精密に解析するため、まず九州大学の吾郷研
究室で合成した2層グラフェンをTEM観察用グリッドに固定し、次に東京工芸大学
の松本研究室にてアルカリ金属を挿入(図1b)。最後に、低加速電圧STEMを用い
て、産総研の林主任研究員が構造解析を行う。
【展望】
リチウムやナトリウムは軽元素のため、低加速電圧STEMでの観察は困難。計測手
法を検討し、2層グラフェンおよび多層グラフェン中に挿入した軽いアルカリ金
属の原子配列の観察に挑戦。また、この実験ではバッテリーの電気化学法挿入メ
カニズムとは異なる気相挿入を使用しているので、実際のバッテリーの機能を模
倣し、STEMを用いて電気化学的なイオンの動きを明らかにすることでバッテリー
劣化の原因解明を行う。
【掲載論文】
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掲載誌:Nature Communications
論文タイトル:Alkali Metal Bilayer Intercalation in Graphene
DOI:doi.org/10.1038/s41467-023-44602-31038/s41467-023-44602-3
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※低加速電圧走査透過型電子顕微鏡(低加速電圧STEM)
加速電圧 15 kV~60 kVで動作する透過型電子顕微鏡の一つ。集束レンズによっ
て細く絞った電子線プローブを試料上で走査し、おのおのの点での透過電子を検
出することで像を得る装置。低加速電圧にすることで、炭素材料などの試料に与
える電子線損傷を抑えることができ、物質の内部構造や組成だけでなく、表面の
詳細な情報も得ることができる。 了
グラフェンメソスポンジとは
グラフェンは、熱伝導度、電気伝導度、機械的(引っ張り)強度に優れており、
エレクトロニクス、エネルギー材料など様々な分野で期待されている炭素材料で
ある。そのようなグラフェンの構造体として、グラフェンメソスポンジが知られ
ており、電池の電極活物質等としての利用が期待されている。グラフェンを含む
多孔質炭素材料、とりわけ、グラフェンメソスポンジの製造方法としては、鋳型
粒子の表面に炭素を被覆させた後、鋳型粒子を除去し、炭素材料を高温で焼成し
てグラフェンメソスポンジを製造する方法が知られている。鋳型粒子の表面に炭
素を被覆させる方法としては、化学気相蒸着(CVD)法が知られている。CV
D法において、原料ガスとしてメタン、鋳型としてアルミナナノ粒子を用いて、
鋳型粒子の表面に炭素を被覆させる方法が具体的に開示されているが、鋳型除去
の際にフッ酸による処理又はアルカリでのオートクレーブ処理が必要であり、コ
スト面で不利である。特に、フッ酸は、極めて強い腐食性を有することから取り
扱いが困難であり、工業的用途には適していない。 これに対し、塩酸などに可
溶なアルカリ土類金属であるMgOナノ粒子等を鋳型として用いてグラフェンメソ
スポンジを製造する方法が開発されている。
リチウム空気電池は、現在のリチウムイオン電池の数倍以上のエネルギー密度の
達成が見込まれる次世代蓄電池、カーボン正極や電解液などの劣化が激しく充放
電を繰り返し行えない点が大きな課題であった。今回の研究では、図1のスキー
ムでGMS自立膜を製造。この自立膜をリチウムイオン電池の正極材料に使用する
ことで、以下3点を踏まえた電極設計を可能にした。
•高容量を得るための豊富な細孔容積を確保
•電池を軽くするためにグラフェンの積層を排除
•サイクル寿命を得るためにエッジサイトを削除
本研究グループは、上記の電極設計により従来に無い超高容量とサイクル寿命の
両立に成功。この結果から、「GMSはカーボン正極の1つの理想形だと言える」
としている。via 株式会社3DC 2024.1.17
【掲載誌】
1.AdvancedEnergyMaterials
2.Hierarchically Porous and Minimally Stacked Graphene Cathodes
for High-Performance Lithium–Oxygen Batteries
3.Wei Yu,haohan Shen, Takeharu Yoshii, Shinichiroh Iwamura, Manai Ono, Shoichi
Matsuda, Makoto Aoki, Toshihiro Kondo, Shin R. Mukai, Shuji Nakanishi, Hirotomo
Nishihara
4.First published: 10 November 2023
5.https://doi.org/10.1002/aenm.202303055
特開2023-134066 多孔質炭素材料の製造方法/発明者:砂廣 昇吾 西原 洋知
【概要】
図4のごとく、多孔質炭素材料の製造方法であって、CVD法により、酸化カル
シウムのナノ粒子からなる鋳型の表面に、グラフェンを含む前駆体を形成する被
覆工程と、前記鋳型を酸で溶解して、前記鋳型と前記前駆体とを分離する除去分
離工程と、前記前駆体表面に存在する非グラフェン炭素含有物質を除去する除去
工程とを含む、多孔質炭素材料の製造方法で、ラフェンを含む多孔質炭素材料の
製造方法における不純物に起因すると考えられる、グラフェンを含む多孔質炭素
材料、とりわけ、グラフェンメソスポンジの品質低下を防止し、より高品質なグ
ラフェンメソスポンジの製造を可能とする方法を提供する。
図4.多孔質炭素材料の製造フローチャート(a)、鋳型の出発原料であり鋳型
ナノ粒子となる炭酸カルシウムのSEM画像(b)、炭酸カルシウムに対し85
0℃の熱処理を行い形成された鋳型ナノ粒子である酸化カルシウムのSEM画像
(c)、CVD処理後(C/CaO)のSEM画像(d)、鋳型除去後(CMS
(I))のSEM画像(e)、CMS(I)の熱処理により形成したグラフェン
メソスポンジ(GMS(I))のSEM画像(f)、CMS(I)を空気雰囲気
下350℃で処理した後(CMS(II))のSEM画像(g)、及びCMS(
II)の熱処理により形成したグラフェンメソスポンジ(GMS(II))のS
EM画像(h)である。
表4
【特許請求範囲】
【請求項1】 多孔質炭素材料の製造方法であって、 CVD法により、酸化カル
シウムのナノ粒子からなる鋳型の表面に、グラフェンを含む前駆体を形成する被
覆工程と、 前記鋳型を酸で溶解して、前記鋳型と前記前駆体とを分離する除去
分離工程と、 前記前駆体表面に存在する非グラフェン炭素含有物質を除去する
除去工程と を含む、多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項2】 前記除去工程が、前記前駆体を酸化処理することを含む、請求項1
に記載の製造方法。
【請求項3】 前記除去工程が、前記前駆体を280~450℃の温度において
酸化処理することを含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】 前記除去工程が、前記前駆体を280~400℃の温度において
酸化処理することを含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】 前記除去工程の後に、前記前駆体に熱処理を施す熱処理工程を更
に含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】 前記CVD法において、前記前駆体の原料である原料ガスとして
メタンガスを用いる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】 前記多孔質炭素材料の細孔が、前記グラフェンにより形成されて
いる細孔壁を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】 前記多孔質炭素材料が、メソ多孔質炭素材料である、請求項1乃
至7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】 前記グラフェンが単層グラフェンである、請求項1乃至8のいず
れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】前記酸化カルシウムのナノ粒子からなる鋳型が、 炭酸カルシウ
ムから生成されたものである、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の製造方法。
● 太陽集熱による炭酸ガス熱分解
図.1 熱分解プロセスの概要(左)と反応性フォームデバイス(右)
1月30日、現状では、太陽光を使った炭酸ガス利用は太陽光発電に基づく水電解
で水素を製造し、この水素を炭酸ガスと反応させてメタン合成をするメタネーシ
ョンが注目されているが、電気を使わず、太陽の熱によって安価に炭酸ガスを分
解して燃料を製造する方法を新潟大学らの日米の研究グループが、太陽集熱によ
る炭酸ガス分解に新反応性物質を使用する技術を開発。
今回,新潟大学とコロラド大学は,キセノンランプによる集光を用いた室内実験
と,米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が保有する太陽炉を用いた実験に
より,反応性物質として酸素を吸蔵・放出する特性を持つセリア(CeO2)および
新たにヘルシナイト(FeAl2O4)のフォームデバイス(多数の「空隙」を有する発
泡体)を利用し,炭酸ガスを酸素と一酸化炭素に分離に成功。
このシミュレーション技術を用いてプラントの解析を実施し,太陽光から合成
燃料までの総合変換効率をセリアについて10%以上に向上できる見通しと,ヘル
シナイトはセリアの2倍以上の反応活性を示すことを実験的に明らかにし,新し
い反応物質として将来性が高いことを確認。この技術により,高温域でセリアが
非常に良好な反応性が示され,セリアによる高効率プラントの概念設計を完成す
ることができた一方で,ヘルシナイトはより低温で高い反応性をもつ。ヘルシナ
イトは安価な鉄とアルミニウムから製造できるため製造コストを劇的に下げるこ
とができると考えられる。研究グループは,高効率な炭酸ガス分解のめどが立っ
たことから,ソーラー燃料製造の低コスト化への応用が期待されている。
※ 詳細な報告書が例示されていないので実用性の判断ができない(例えば、ア
ルゴンの物質収支は?)。
造色インクで世界最軽量クラスの塗装を実現
ナノ粒子わずか1層分でカラフルな構造色
1月31日、神戸大学の研究グループは,独自に開発した構造色インクを用いるこ
とにより,世界最軽量クラスの構造色塗装が可能であることを実証。
【要点】
1.ナノ粒子をわずか一層塗るだけで、カラフルな構造色を実現。
2.環境・生体への負荷が小さいケイ素からなるナノ粒子を利用。
3.理論上、1平方メートルあたり0.5グラムで塗装できる (世界最軽量クラス)。
4.軽量且つ高耐久性が求められる航空機、船舶、レースカーなどの塗装への応
用が期待される。
研究グループでは,屈折率が非常に高いケイ素ナノ構造が示すMie共鳴を利用し,
特定の波長の光を強く散乱させることで発色させる手法を開発してきた。特に,
ほぼ真球の結晶シリコンナノ粒子の作製,粒径制御と安定な溶液分散を実現し,
粒径によって発色が変化する構造色ナノ粒子インクを世界で初めて実現した。
今回の研究では,構造色ナノ粒子インクを用いてシリコンナノ粒子が一層だけ
配列した非常に薄い膜を形成し,その発色特性について詳細な調査を行なった。
はじめに,シリコンナノ粒子が六方格子状に配列した構造について,電磁場シ
ミュレーションにより反射率スペクトルを評価した。その結果,わずか1層のシ
リコンナノ粒子単層膜でも反射率が約50%に達し,明るい構造色が得られること
がわかった。また,粒子間の距離をあけて 粒子をまばらに配列すると反射率が
さらに増加した。例えば,粒子間距離を50nmにすると,最大で90%以上の反射率
が得られた。また,さらに間隔をあけて,粒子の体積充填率を10%まで減少させ
ても,反射率は70%を超えることを見出した。これは,個々のシリコンナノ粒子
が非常に高 い散乱効率を有していることに起因し,非常に少ない材料で明るい
構造色が得られることを示している。 この特性を実証するために,ラングミュ
ア-ブロジェット(LB)法により,ガラス基板上にシリコンナノ粒子の単層膜を
形成した。粒子膜は,粒径に依存して紫~橙色の構造色を示した。 この発色は,
斜め45度から観察してもほとんど変化せず,従来の構造色と異な り角度依存性
が非常に小さいことがわかった。全光線反射率測定により反射特 性を評価した
ところ,ピーク反射率は30~50%であり シリコンナノ粒子の単層 膜によって十
分に明るい構造色が実現できることが明らかになった。さらに, シリコンナノ
粒子単層膜を部分的に酸化して疑似的に粒子間の距離を大きくした 試料につい
ても研究を行なった。それにより,基材上にシリコンナノ粒子がまばらに散在
した状態においても,構造色によって着色できることを示した。研究グループ
は,この成果は,従来の塗料よりはるかに少ない量で着色塗装が可能であるこ
とを示しており,例えば,大型航空機の塗装を1/10以下に軽量化でき る可能性
があるとしている。
【掲載論文】
原 題:“Structural CoMonolayer of Mie-Resonant Silicon Nanospheres for loration”
D O I : 10.1021/acsanm.3c04689
掲載誌: ACS Applied Nano Materials&
燃えろいい女 1979.4.5
ツイスト 作詞/積極:世田公則
● 今夜の寸評 :体調をリゲインしたなら、それなりに全力疾走!
昨日は学区町内会老人会で小学生一年生(3クラス)とお遊交流会に参加。それ
なりに学ぶものあり。世話役の永井さんとは長いつきあいだが彼の地域を盛り上
げようとする情熱を感得しそれなりに有意義であった。剣玉担当だったが。視力
の衰えがこんなところに顕れ、少し考えることに。
SCREEN,基板向けAI検査計測ソリューションを設立