彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救
ったと伝えられる招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え
(戦国時代の軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編の
こと)と兜(かぶと)を合体させて生まれたキラクタ「ひこにゃん
」。
異次元ヘテロ構造における界面励起子の模式図
❏ 異次元ナノ半導体界面に潜む量子光源を発見
半導体素子の微細化は物理的制約に直面しつつあり,室温でも量子
効果による新たな物性の発現が期待できる。1次元半導体である単
層カーボンナノチューブ(CNT)や2次元半導体である遷移金属ダ
イカルコゲナイドなどの低次元半導体の研究が重要な分野となって
いる。ここで、「金属ダイカルコゲナイド」とは、遷移金属ダイカ
ルコゲナイド(TX2)は、グラファイトに代表される層状物質の一つ
で、弱いvan der Waals力で層間が結合している。TとXの組み合わ
せにより、絶縁体・半導体から金属まで様々な性質を示す物質が存
在することが知られているものである。
4月12日、理化学研究所らの研究グループは1次元と2次元とい
う異なる次元性を持つナノ半導体の界面において室温で動作する量
子光源が存在することを発見したことを公表。
代表的な1次元半導体であるCNTは,炭素原子1層の膜(グラフェン)
を筒状に丸めた構造を持つ。その巻き方はチューブの円周方向のベ
クトルを定義する二つの整数(n,m)により決まる。(n,m)の値に
よりCNTのバンドエネルギーは大きく変わるため,発光測定を利用
することで原子配列を厳密に同定できるという。
一方,遷移金属ダイカルコゲナイドの一種であるセレン化タングス
テンは,タングステンとセレンの原子から成る層状の次元半導体で,
層間はファンデルワールス力(弱い力)により結合しており、異な
る次元性を持つこれら二つの低次元半導体を接合させたヘテロ構造
を作ると,CNTの大きなバンドエネルギー変調利用でき,原子数層
程度の極薄半導体構造でのバンドエンジニアリングによる新たな物
性や革新的な機能の発現が見込めると。
図5 界面励起子の特性(a)E11励起子と界面励起子のフォトルミネッセンス減衰曲線と(
b)励起パワー依存性。
幾何構造(原子配列)を同定したCNTと特定の層数を持つセレン化
タングステンを正確な位置に配置して接合させ,次元性が異なる構
造を持つナノ物質を組み合わせ、清浄で欠陥の少ないヘテロ構造を
構築し,バンドエネルギー共鳴により励起子移動が増強する現象を
発見。このとき励起子移動が起きるのはタイプⅠヘテロ構造だった
が,電子と正孔が分かれやすいタイプⅡヘテロ構造では新しい種類
の励起子状態が発現する可能性があるため,今回,その発光特性を
調べると,室温で明るい量子発光を示す界面励起子の存在を見つけ
たことで、室温で動作する通信波長帯の単一光子源として量子技術
への応用に新たな道を開く可能性があるという。
【掲載論文】
・Room-temperature quantum emission from interface excitons in mixed-
dimensional heterostructures・ Nature Communications・10.1038/s41467-024-47099-6❏ 光 触媒 メタンの変換:現状 アート、課題、そして将来の展望③
【要約】
3. メタン光変換性能を向上させる戦略
3.1. 半導体の設計 3.1.2. ヘテロ原子ドーピング
❏ 光 触媒 メタンの変換:現状 アート、課題、そして将来の展望④
【要約】
3. メタン光変換性能を向上させる戦略
3.1. 半導体の設計 3.1.2. ヘテロ原子ドーピング
3.1.2. ヘテロ原子ドーピング
低い光誘起キャリア分離効率は、光触媒によるメタン変換を制限す
る最も重要な要因の 1 つ74。 不純物ドーピングにより、CB と VB
の間に追加のバンドが導入され、励起子をトラップして半導体バル
ク内でのキャリアの再結合を抑制することができる一方、不純物ド
ーピングは半導体電解質界面の障壁高さを調整することもでき、こ
れは光生成キャリアの選択的な電荷移動に有益。75-77 たとえば、G
aN への微量の Si の導入は、光生成キャリアを促進することが証
明されている。 フォトルミネッセンス (PL) スペクトルに基づく
キャリア分離効率 78 さらに、ドーパントは化学種に対する表面親
和性に影響を与える可能性があるため、メタンの変換効率に影響を
与える可能性がある。ヴィラら。 La ドーパントのメタン変換にお
ける役割について詳細な説明を提供。79 La ドーピングにより比表
面積と細孔容積が改善され、メタンの高い吸着能力を発揮する一方、
La の導入後に酸素空孔が生成される可能性があり、純粋な WO3 と
比較して吸着水の量が増加。 その結果、より多くの・OH ラジカル
が La ドープ WO3 の表面上の CH4 と反応できるため、La ドープ
WO3 の CH3OH 選択性は純粋な WO3 と比較して 50%増加した。
ドーピングは、使用されるドーパントの種類に応じて、p 型ドーピ
ングと n 型ドーピングに分類できます。 n型ドープ半導体および
p型ドープ半導体は、それぞれホスト原子を電子豊富な置換物およ
び電子不足の置換物で置換することによって得ることができる。
TiO2 中のこれら 2 つの異なるタイプのドーパントが光触媒によ
るメタン変換に及ぼす影響は、Zhang のグループによって研究され
ています 71。彼らは、一連の n 型 (Nb、Mo、W、Ta) と p 型 (Ga、
Cu、Fe) を合成しました。 ) ドープされた TiO2、メタンの非酸化
カップリングに使用され。 n型ドーパントを含むTiO2は、p型ドー
ピングTiO2と比較して、より高いメタン変換率を示した(図44a)。
DFT 計算によって明らかになったことで、n 型ドーパントは過剰な
電子を TiO2 の隣接する Ti6c および Ti5c 原子に提供することが
でき、電子をメタンに移動させることでメタン分子の分極と活性化
を促進 (図 44b)。 さらに重要なことは、C-C 結合の切断は、p 型
ドープ TiO2 の脱着よりも熱力学的に有利であり、活性サイトでの
新しいメタンの吸着が妨げられ、結果としてメタン変換率が低下す
る。 逆に、C2H6 は C-C 開裂反応を起こすのではなく、n 型ドー
プ TiO2 の表面から脱離する傾向があり、高い C2H6 生成率につな
がりした (図 44c)。
図4
この候つづく
❏ 2035年パワー半導体世界市場予測(23年比)
2月28日株式会社富士経済は2024年版 次世代パワーデバイス&
パワエレ関連機器市場の現状と展望調査結果を公表。
パワー半導体 7 兆7,757 億円(2.4 倍)次世代パワー半導体が電動車
の普及、民生機器などへの採用増加で大きく伸長
・SiC パワー半導体 3 兆1,510 億円(8.1 倍):電動車の増加に伴
い採用が増加。将来的には価格下落で自動車以外の採用も広がる市場は前工程装置、後工程装置、検査・試験装置に大別され、前工
程装置が80%近くを占める。2023年は中国を中心に電動車の普及拡
大に向けて、SiC向けの設備投資が積極的に行われたため、前工程
装置を筆頭に市場が拡大した。2024年は近年の旺盛な需要の反動で
伸びは落ち着くものの、設備投資の継続によって拡大を維持すると
みられ、2026年ごろまで毎年10%以上の成長が予想される。今後も
パワー半導体の需要増に伴って製造装置の需要も旺盛であるとみら
れる。最大の需要エリアである中国では内製化が進み、中国メーカ
による安価な装置が増加する可能性が懸念材料となっている。
・酸化ガリウムパワー半導体 385 億円:2024 年より量産開始予定。
2025 年以降のFET 実用化に向け技術開発が進む
・GaNパワー半導体:スマートフォンなどの高速充電用ACアダプタ
やサーバー電源向けがメインの市場であり、2023年は巣ごもり特
需の落ち着きなどから前年より伸びは鈍化したが、前年比30%以
上の成長となった。2024年もスマートフォンなどの民生機器やデ
ータセンターのサーバー電源向けなどを中心に需要は増加すると
みられる。今後は自動車・電装向けでオンボードチャージャやDC-
DCコンバータといった補機系での本格的な採用によって市場は急
拡大し、2035年は2,674億円が予測されている。
❏ 次世代パワー半導体「窒化ガリウム」の魅力
物性面で炭化ケイ素(SiC)よりもパワー半導体への適性が高いと
される窒化ガリウム(GaN)の社会実装を加速するためには、縦型G
aNデバイスの実用化が欠かせない。そのためにはGaN on GaNの構造
を実現するための、結晶品質が高いGaN自立基板(GaNの単結晶基板
のこと。表面に活性層となるGaN膜を形成して利用する)が必須に
なる。
物性面で炭化ケイ素(SiC)よりもパワー半導体への適性が高いと
される窒化ガリウム(GaN)の社会実装を加速するためには、縦型
GaNデバイスの実用化が欠かせない。そのためにはGaN on GaNの構
造を実現するための、結晶品質が高いGaN自立基板(GaNの単結晶基
板のこと。表面に活性層となるGaN膜を形成して利用する)が必須
になるみられている。
【日本の技術動向】
・ロームをはじめ三菱電機、富士電機、日立製作所、東芝などでデ
バイス・モジュールの量産及びそれを使ったシステム開発が行わ
れている。
・企業を中心にSiC–MOSFET/SBDモジュールの応用が進展している。
・GaN基板について、HVPE技術の洗練、Naフラックス技術、アモノ
サーマル技術などの開発が進んでいる。
・GaN横型パワーデバイスについては、日本のメーカーの撤退があ
ったが、東芝がGaN–on–Si 事業を再開した。
・世界で唯一、ベンチャー企業(ノベルクリスタルテクノロジー)
が、Ga2O3バルク・およびエピ基板の製造販売をしている。
➲ via:研究開発の俯瞰報告書:ナノテクノロジ・材料分野(2023) ※ All GaN Vehicle