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沸騰大変動時代(二十三)

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彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦
国時代の軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編のこと)
と兜(かぶと)を合体させて生まれたキラクタ「ひこにゃん」。

【今日の季語と短歌】






序章 円安がチャンスである理由
成長ゲタ」を履いた日本は先進国のなかでも有利   
「近づく円安恐慌」「いよいよ始まる倒産連鎖」「間もなく訪れる株
式市場の死」 相変わらずマスコミは過激な見出しで国民の不安をあ
おり、フェイクニュースを垂れ流している。
外国為替市場では、2022年3月からドル高円安傾向が続き、同年
10月にはIドルー50円台に乗せた。これは1990年以来の水準だ。
これを受けて、日本経済新聞などは、円安では日本の成長力が高まら
ないという文脈で「悪い円安論」を展開した。
だが、それは大きな間違いだ。なぜなら、円安は国内総生産(GDP
)にとってプラス要因だからだ。古今東西、経済政策において自国通
貨安は「近隣窮乏化政策」(Beggar thy neighbour)として知られている。
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※近隣窮乏化政策:経済政策のうち、貿易相手国に失業などの負担を
押しつけることによって自国の経済回復と安定を図ろうとするものを
いう。府が為替相場に介入し、通貨安に誘導することによって国内産業の国
際競争力は増し、輸出が増大する。さらに国内経済においても国産品
が競争力を持ち、国内産業が育成される。やがて乗数効果により国民
所得は増加し、失業は減少する。その一方で貿易の相手国からすると、
通貨高による国際競争力の低下、輸入の増大と輸出の減少、雇用の減
少を引き起こすことになる。多くの場合、相手国は対抗措置として為
替介入を行い、自国通貨を安値に誘導しようとし、さらにそれに対し
て相手国が対抗措置をとる。こういった政策を「失業の輸出」といい
、さらに関税引き上げ、輸入制限強化などの保護貿易政策が伴うと、
国際貿易高は漸次減少していき、やがて世界的な経済地盤沈下を惹起
する。 世界大恐慌の後、1930年代に入ると主要国は通貨切り下げ競争、ブロ
ック経済化をすすめ、やがて国際経済の沈滞とそれに続く植民地獲得
競争が第二次世界大戦の遠因となったという反省から、戦後は国際通
貨基金(IMF)、関税および貿易に関する一般協定(GATT)(2013年現
在は世界貿易機関(WTO)に継承)等の設立により為替相場安定と制限
の撤廃が図られた(→ブレトン・ウッズ体制)。 問題点:経済学者の野口旭は「近隣窮乏化政策の問題点は、他国の報
復を誘発する可能性が高く、結局は自国の状況も悪化させるケースが
多い。世界恐慌時、近隣窮乏化政策を多くの国が先を争って実行した
ため、貿易の縮小を通じ恐慌がさらに悪化した」と指摘している。
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通貨安は輸出主導の国内エクセレントカンパニーに有利となり、輸入
主導の平均的な企業には不利となるが、日本経済全体としてはプラス
になる。
そのため、輸出依存度などにかかわらず、どんな国でも自国通貨安は
GDPを押し上げる。もしこうした国際経済の常識を覆せるのなら、
それは世紀の大発見だ。
通貨安に開しては、海外から批判されることはあっても、国内で批判
して円安を止めようとするのは国益に反する行為だ。
これは、国際機関の経済分析からも知られている。経済協力開発機構
(OECD)の経済モデルによれば、10%の円安で、1~3年以内に
GDPがO・4~1・2%増加する。円安メリットを最も享受してい
るのは、外国為替相場の安定のために設けられた「外国為替資金特別
会計」を持つ日本政府だ。国が海外に保有している資産から負債を除
いた「対外純資産」は、90年末に44兆円だったが、21年末には411
兆円に急増した。
外貨債を持っている日本にとっては、メリットしかない。円安によって、
日本経済はI~2%程度の「成長ゲタ」を履いており、ほかの先進国
より有利になっている。
しかし、マスコミはこうしたマクロ経済ではなく、交易条件の悪化な
ど、ごく一部の現象のみを取り上げて「円安が悪い」と印象操作をし
ているのだ。もちろん、輸入比率が高い中小企業にとっては逆風だが、
輸出比率が高い大企業にとっては追い風になる。 
そのため、中小企業のマイナスを補ってあまりあるから、GDPや税
収が増えるというわけだ。
企業収益増は法人税増につながるが、その増収分を円安で困っている
ところ、たとえば中小企業などには景気対策のなかで手当てを行えば
いい。円安で困った人に対して、税収が増えた分のお金を回せないこ
とが問題なのだ。いずれにしても円安はGDP増になるから、その果実を有効に活用す
ればいても、角を矯めて牛を殺すような「円安是正という愚策」で対
応してはいけない。
「悪い円安論」を否定する好調な企業の業績財務省が22年9月に発表した21年度の法人企業統計では、全産業の経
常利益が前年度比33・5%増となる83兆9247億円たった。3年ぶ
りの増益で、比較可能な1961年度以降で最大だ。
企業の内部留保に当たる利益剰余金は6・6%増の516兆4750
億円と初めて500兆円を超え、10年連続で過去最高を更新した。全産業の営業利益は30・2%増の54兆2156値円。また、有形固定
資産(土地を除く)増減額、ソフトウエア増減額、減価償却費、特別
減価償却費の合計である設備投資は、9・2%増の45兆6613値円
たった。
利益剰余金の前年度比増加額は32兆I102備円で、基本的には利益
以上にほかの金融資産を取り崩して設備投資をしており、まずまずの
数値だ。
しかし、政府の公共投資はさっぱりだ。政府が出てくれば、呼び水効
果でさらに民間投資を伸ばすチャンスなのに、残念でならない。公共
事業を評価する際には、同じ財の現在と将来の交換比率である「社会
的割引率」という数値が使われるが、これが現在4%という法外な水
準で定められている。
この社会的割引率の見直しなど、政府がやるべきことは少なくない。
せっかくの民間投資が好調な状況を生かしきれていない。
ちなみに、22年4~6月分の法人企業統計は、全産業の営業利益が前
年同期比13・1%増の17兆6716億円、経常利益が17・6%増の28兆
3181値円。経常利益については、製造業、非製造業それぞれ過去
最高だった。
営業利益が伸びたのは、コロナ禍から経済・社会活動が正常化して、
業績回復が進んだからだ。
また、非営業利益である投資収益が伸びたため、経常利益が営業利益
よりも伸びた。
受取利息等も7兆3573億円で過去最高だった。その主因は、円安
による海外投資収益の増加だ。円安効果は輸出拡大のほか、過去の海
外投資収益増というかたちでも表れる。
一般的に、日本企業が海外で現地生産に移行していると、輸出増には
ならない。だから円安効果は限定的とされるが、現地生産ならすでに
海外投資を実施しているだろう。
その場合、輸出増ではなく、海外投資収益増に変わっているはずだ。
今回の法人企業統計では、その効果が大きく表れている。
設備投資は4・6%増の10兆6108億円だった。5期連続で前年比
プラスとなり、民間設備投資の基調はいい。脱炭素やデジタル化への
投資意欲は相変わらず堅調だ。
このように、円安でも企業の業績はよくなった。「円安ならGDPは
伸びる」という筆者の主張と整合する。

半導体新会社設立に見る日本経済復活の未来
円安が続けば、さまざまな産業にとって追い風となるだろう。その一
つの事例を紹介しよう。
22年8月、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、日本
電気(NEC)、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行という
日本の主要企業8社が、最先端半導体の国産化に向けた新会社「回り
匹回(ラピダス)」を共同出資で設立した。こういうニュースは、そ
の背景や流れを追ったほうが理解しやすい。
もともと日米の政府間で次世代半導体の研究開発をする話が進んでい
た。22年度の袖正予算のなかにも1兆3000億円くらいのいろんな
予算がついている。それで基礎研究みたいにして日米で研究をするの
は決まっていた。
それを踏まえて、研究した製品を量産する必要があるから新会社設立
という流れが出てきた。だからある意味、新会社設立は予定されたコ
ースだった。
これがうまくいくかどうか。振り返ってみれば、こういう話は99年ご
ろから通商産業省(現経済産業省)が主導してきたことが何度かある。
たとえば、NECと日立製作所のDRAM事業部門を統合し、99年に
設立されたエルピーーダメモリという半導体メーカーーもそうだ。
これは結局はうまくいかず、10年に公的資金を注入することになった
が、その解釈の1つつとして、経産省が主導しているからダメだった
という見方もある。
ただ当時はものすごい円高だったから、エルピーダメモリの社長が、
「これだけ円高になるといち私企業では無理。2世代分の技術的ハン
ディを背負っているようなもので、その技術差を埋めるのは難しい」
という趣旨の発言をしていた。
だから円高はものすごく不利なのだ。いまは少し円安になり、経産省
にとってはひょうたんから駒で、ラピダスも自分たちが成し遂げた計
画だとアピーールするかもしれない。
だが、ほとんどの日本の産業政策は為替でだいたい決まっている。為
替がよければ、官僚が変なことをしてもうまくいくものだ。これは筆
者の自説だが、はっきりいって経産省の努力などは関係ない。
いまはいいタイミングで円安になっている。円高になってしまったら
話にならない。日本がどんなにいい技術を持っていても売れない。
00年代初めと10年ごろに経産省は2度チャレンジしたものの、いつも
円高などは関係なしにするからうまくいかなかった。
マスコミはこういった話をせずに、当事者だけに取材して「あの経営
者がよかった、この官僚が悪かった」という個別事例の報道しかしな
い。




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