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エネルギーと環境 56

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彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果

彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の井伊
軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(かぶ
と)を合体させて生まれたキャラクタ-

【季語と短歌:11月20日】
       
         神無月方時雨ては寒暖差 
                高山 宇 (赤鬼)




 2024年中国がグリーン水素製造機器を支配?!
10月3日、国際エネルーギー機関(IEA)は、過去1年間でのグリーン水素
製造機器の40%を財政支援で占有したと報じている。米国は再生可能な電
力を水電解装置の製造拡大し、世界のデバイス価格削減され、再生可能エ
ネルギーや原子力発電による水素製造には欠かせない。それによると、昨
年承認された6.5ギガワット(GW)の電解槽容量のうち、中国は40%超を占
有。同年のヨーロッパは2GW超(占有率32%)、インドは1.3GW。年間
25GWを達成。同報告書によると、中国の大手ソーラーパネルメーカー数
社が電解槽の製造を開始、これらを合わせると、この分野での中国生産能
力の約3分の1を占める。財政支援を受けた電解槽の総容量は全世界で20G
Wに達し、2030年までに低排出水素の年間世界生産量を5倍に増やせる。
IEAによると、低排出水素製造に世界中の政府が設定した目標は、2030年
までに4,300万トンに達する(予想)。需要の1,100万トンをわずかに下回
わる。

Source:https://www.scmp.com/business/article/3280748/china-leads-world-
green-hydrogen-projects-dominates-equipment-manufacturing-iea-says





【海水有価物回収水素製造並びに炭素化合物製造事業論 ⑥】

2. 特開2024-77350 炭素および水素の製造方法 三菱マテリアル株式
 会社他 ⓷

【0061】(電解還元過程S3-1)
【0062】陰極槽11は、例えば、ガラスなどの誘電体材料から形成さ
れた液槽であり、内部に3価の塩化鉄を含む陰極液、本実施形態では、前
工程である炭素分離工程S2で得られた塩化鉄(塩化鉄(III)と塩化鉄(II)の
混合物)の塩酸溶液(陰極液)を収容する。こうした塩化鉄の塩酸溶液(
陰極液)は、例えばpHが0.5以下になるように、塩酸濃度が調整される。
【0063】陽極槽12は、例えば、ガラスなどの誘電体材料から形成さ
れた液槽であり、内部に電解質を含む陽極液、本実施形態では希硫酸水溶
液(陽極液)を収容する。こうした希硫酸水溶液(陽極液)は、硫酸濃度
が例えば0.1モル/L以上、5.0モル/L以下の範囲にされればよい。
【0064】隔壁13は、陰極槽11および陽極槽12にそれぞれ形成さ
れた開口どうしの間に配される膜状の部材である。隔壁13は、一方の面
が陰極液に接し、他方の面が陽極液に接する。こうした隔壁13は、例え
ば水素イオンが透過可能な材料であればよく、例えば、陽イオン交換膜や
ガラスフィルターなどを用いることができる。本実施形態では、Nafi
on(登録商標)膜(陽イオン交換膜)を用いている。
【0065】陰極槽11に配される陰極電極(作用極)21は、電源装置
14の負極に接続される。こうした陰極電極21は、導電体、例えば、炭
素電極や白金電極などであればよい。本実施形態では、陰極電極21とし
て炭素棒を用いた。
陰極槽11に配される参照電極(基準電極)22は、酸化還元電位を測定
するものであり、本実施形態では、銀/塩化銀電極(電極電位+0.199 V
(vs. SHE、25℃))を用いた。
【0066】陽極槽12に配される陽極電極(対極)23は、電源装置14
の正極に接続される。こうした陽極電極23は、導電体、例えば、炭素電
極や白金電極などであればよい。本実施形態では、陽極電極23として白
金線を用いた。
【0067】電解還元過程S3-1では、上述したような電解装置10を
用いて、炭素分離工程S2で得られた塩化鉄(III)の電解還元を行い、下記
の式(10)の通り、塩化鉄(II)に還元する。
  FeCl3+e-+H+→FeCl2+HCl  ・・・(10)
  具体的には、例えば、電解装置10の陰極槽11に、炭素分離工程S2で
得られた塩化鉄(塩化鉄(III)と塩化鉄(II)の混合物)の塩酸溶液(陰極液)
を収容する。この陰極液は、pHが0.5以下、例えばpHが0.1にな
るように、塩酸濃度を調整しておく。
【0068】また、陽極槽12に、電解質として希硫酸水溶液(陽極液)
を収容する。この陽極液は、硫酸濃度が0.1モル/L以上、5.0モル
/L以下の範囲、例えば硫酸濃度が0.2モル/Lの希硫酸水溶液であれ
ばよい。0.1モル/L未満だとFeCl3からFeCl2への電解還元に
伴って陽極槽12から供給されるH+が不足する懸念がある。一方、5.0
モル/Lより大きいと陰極槽11と陽極槽12の間に生じる浸透圧が大き
くなりすぎて、隔壁13の破壊や液漏れが生じる可能性がある。
【0069】なお、電解装置10は、空気中に載置してもよいが、より好
ましくは内部を不活性ガス、例えばアルゴンガスもしくは窒素ガスで置換
したチャンバー内に設置すればよい。


図4. 塩化鉄(III)の電解還元における電位-pHグラフ

【0070】次に、電源装置14によって陰極電極21と陽極電極23と
の間に電圧を印加して、陰極槽11内で塩化鉄(III)の電解還元を行い、2
価の塩化鉄である塩化鉄(II)を生成する。こうした塩化鉄(III)の電解還元は、
図4に示す電位-pHグラフに基づいて、pH0.5以下の条件でFe(II)
/Fe(III)酸化還元反応が以下の式(11)に従い、標準水素電極(SHE)
に対して+0.70Vの酸化還元電位(E0)で生じる。
  FeCl2++e-→Fe2++2Cl-  E0=0.70Vvs.SHE  ・・・(11)
  なお、図4の電位-pHグラフは、熱力学データベース(NIST Critically
Selected Stability Constants of Metal Complexes; NIST Standard Reference
Database 46, version 8.0)から抽出したFe2+、Fe3+、Cl-および
H+に関する各種安定度定数に基づくものである(総Fe濃度:0.1M、
総Cl-濃度:3モル/L、イオン強度:3モル/L、温度:25℃)。
【0071】式(11)の酸化還元電位(E0)は、水の電位窓(図4の
グラフの上下2本の破線に挟まれた領域)に収まっていることから、標準
水素電極(SHE)に対して+0.7Vから0.0Vの領域における定電
位電解では水が電解されることなく式(11)を支配的に進行させること
が可能である。
【0072】また、定電流電解の場合でも陰極液中におけるFe(III)の陰
極電極(作用極)21への供給が十分であるうちは水が電解されることな
く式(11)を支配的に進行させることが可能である。一方、陰極液のpH
が0.5を超えるとFe(III)の加水分解反応の進行によって陰極液中にFe
(III)を保持することができなくなるため、陰極液のpHは0.5以下に保つ
必要がある。
【0073】上述した式(11)で示すFe(III)の電解還元反応が陰極電極
(作用極)21で進行すると、陽極槽12内の陽極電極(対極)23にお
いても、何らかの酸化反応を進ませる必要がある。反応系を清浄に保つた
めには、この酸化反応として式(12)に示す水の電解が最も適している。
【0074】
  H2O→2H++2e-+1/2O2(g)・・・(12)
  上述した式(11)および式(12)を組み合わせることにより、陰極
槽11内で生じる正味の反応は式(13)で表される。
【0075】2FeCl2++H2O→2Fe2++2H++4Cl-+
 1/2O2(g)・・・(13)
  そして、式(13)の進行に伴い、陽極槽12から陰極槽11に向けて、
隔壁13を介してH+が移動する。こうしたH+の移動をスムーズに進行さ
せるため、陽極液は酸性であることが好ましい。しかしながら、陰極液と
同様の塩酸水溶液を陽極液として用いると、Cl-の酸化によりCl2の生
成(式(14))、およびそれに付随して次亜塩素酸が生成(式(15))
するおそれがある。
  2Cl-→Cl2+2e-・・・(14)
  Cl2+H2O=HCl+HClO・・・(15)
【0076】このような式(14)、式(15)に示す副生成物の生成は、
反応系を清浄に保つ上で望ましくない。よって、陽極電極(対極)23で
の酸化反応に耐性のある酸性物質を含む陽極液を用いる必要がある。硫酸
はこの目的にかなう酸性物質であることから、本実施形態では陽極液とし
て希硫酸を用いている。但し、陰極液への硫酸もしくは硫酸イオンの混入
を防ぐことも反応系を清浄に保つ上で重要であるため、陰極槽11と陽極
槽12との間に陽イオン交換膜を隔壁13として用いている。
【0077】なお、反応完了後の陰極液は、減圧乾固によって塩化鉄(II)を
回収することができる。例えば、ロータリーエバポレータを用いて反応完
了後の陰極液を減圧乾固することで、塩化鉄(II)を回収することができる。
【0078】以上のような電解還元過程S3-1によって、炭素分離工程
S2で得られた塩化鉄(III)を塩化鉄(II)にして、次の加水分解過程S3-2
行う。
【0079】(加水分解過程S3-2:水素、マグネタイト製造反応)
  加水分解過程S3-2では、上述した電解還元過程S3-1において、塩
化鉄(III)の電解還元反応で生じた塩化鉄(II)と水とを反応させる水素、マグ
ネタイト製造反応を行う。この水素、マグネタイト製造反応における反応
温度は、300℃以上、800℃以下、好ましくは400℃以上、600
℃以下の範囲であればよい。水素製造工程S3では、こうした反応温度範
囲に昇温させるために、例えば、二酸化炭素分解工程S1と同様の熱源を
有効利用することも好ましい。
【0080】水素製造工程S3での塩化鉄(II)と水との反応では、以下の式
(16)の反応が生じる。
  3FeCl2+4H2O→Fe3O4+6HCl+H2・・・(16)
 こうした反応によって得られる水素は、例えば、純度が99%以上といっ
た高純度水素であり、燃料電池自動車(FCV)用の水素ステーション、
水素発電、各種工業用水素源として用いることができる。
【0081】なお、水素製造工程S3で生じた水素は、次の還元剤再生工
程S4でもその一部が用いられるが、外部に取り出す水素量を増やすには、
炭素分離工程S2でマグネタイト(炭素付着の無いマグネタイト)を追加
投入したり、或いは水素製造工程S3で塩化鉄(FeCl2)を追加投入
したりして、還元剤再生工程S4で必要な水素よりも水素を多く生成する
ことができ、高純度で低コストな水素源として利用することができる。
【0082】ただし、追加投入された鉄化合物(マグネタイト、塩化鉄)
から水素製造工程S3で生じるマグネタイトを還元剤再生工程S4に供給
すると、マグネタイトが過剰となって還元剤再生工程S4の工程負荷が増
大する。そのため、水素製造工程S3で生成したマグネタイトから、追加
投入した鉄化合物に由来する量は抜き出して、炭素付着の無い状態で炭素
分離工程S2に投入することがよい。すなわち、二酸化炭素分解工程S1
に必要な量のマグネタイトのみを還元剤再生工程S4に供給し、残りは炭
素分離工程S2と水素製造工程S3を循環させることで、二酸化炭素分解
工程S1と還元剤再生工程S4に影響を与えることなく、水素製造工程S3
で生成する水素の量を増やすことができる。
 例えば、本実施形態では、水素製造工程S3で生じたマグネタイトのうち、
25質量%を還元剤再生工程S4に供給し、残りの75質量%を炭素分離
工程S2に供給している。
【0083】(還元剤再生工程S4)
  還元剤再生工程S4は、水素製造工程S3で生成させた水素とマグネタイ
トとを反応させることで、マグネタイトに含まれる酸素イオンを離脱(脱
酸素(還元)反応)させて、マグネタイトの結晶構造、即ちスピネル型結
晶格子構造を保った状態で、マグネタイトの酸素原子の任意の位置が空孔
となった酸素欠陥鉄酸化物(Fe3O4-δ(但し、δは1以上4未満))
、または酸素完全欠陥鉄を生成する。
【0084】なお、還元剤再生工程S4に導入されるマグネタイトは、水
素製造工程S3で得られたマグネタイトを用いるが、各工程の開始初期段
階、および各工程の実施中に減量したマグネタイトの補充は、純粋なマグ
ネタイトに限らず、他の物質を含むものでもよい。
【0085】外部からマグネタイトを導入する場合のマグネタイトの原料
(マグネタイト材)としては、例えば、天然鉱物である砂鉄、製鉄所など
で用いられる鉄鉱石に含まれる砂鉄を用いることができる。これらの砂鉄
をマグネタイトとして用いることによって、マグネタイトを安価で容易に
入手することができる。
  また、マグネタイト材としては、ヘマタイト(赤鉄鉱:Fe2O3)、鉄
酸化方式の使用済みカイロ(主成分は水酸化鉄)などを用いることもできる。
【0086】本実施形態のマグネタイトは、BET法による比表面積が0.1
m2/g以上、10m2/g以下の範囲、好ましくは0.3m2/g以上、
8m2/g以下の範囲、より好ましくは1m2/g以上、6m2/g以下の
範囲である。
【0087】マグネタイトの比表面積が0.1m2/g以上であれば、固
気反応に必要な固体と気体の接触面積を確保でき、実用プロセスとして必
要な反応速度が得られる。また、マグネタイトの比表面積が10m2/g
以下であれば、速い反応速度を確保できると共に、二酸化炭素を分解する
時の一酸化炭素の生成割合が低くなり、炭素の回収率を向上させることが
できる。
【0088】なお、本実施形態の還元剤再生工程S4によってマグネタイ
トを還元して得られる還元剤は、還元前のマグネタイトよりも比表面積が
大きい。還元剤の比表面積は、0.1m2/g以上、30m2/g以下、
好ましくは0.3m2/g以上、25m2/g以下、より好ましくは1m2
/g以上、18m2/g以下である。また、還元剤の比表面積は、マグネ
タイトの比表面積の1倍以上、3倍以下、好ましくは1倍以上、2.5倍
以下、より好ましくは1倍以上、2.0倍以下である。
【0089】また、本実施形態のマグネタイトは、平均粒子径が1μm以上、
1000μm以下の範囲、好ましくは1μm以上、20μm未満の範囲、また
は50μm超え、200μm以下の範囲である。
【0090】マグネタイトの平均粒子径が1μm以上であれば、二酸化炭素
を分解する時の一酸化炭素の生成割合が低くなり、炭素の回収率を向上さ
せることができる。更に、平均粒子径が1μmよりも大きいものにすること
で、粒子の凝集性、飛散性が低くなり、流動性、ハンドリング性が良くな
るため、反応器壁面への固着現象やクリンカーの形成などのトラブルが回
避でき、ロータリーキルンや流動層などの工業用反応装置への適用が可能
となる。また、マグネタイトの平均粒子径が1000μm以下であれば、固
気反応に必要な固体と気体の接触面積を確保でき、実用プロセスとして必
要な反応速度を得ることができる。
【0091】また、本実施形態のマグネタイトは、かさ密度が0.3g/
cm3以上、3g/cm3以下の範囲、好ましくは0.4g/cm3以上、
2g/cm3以下の範囲、より好ましくは0.5g/cm3以上、1g/
cm3以下の範囲である。
【0092】マグネタイトのかさ密度が0.3g/cm3以上であれば、
粒子の凝集性、飛散性が低くなり、流動性が良くなるため、ロータリーキ
ルンや流動層などの工業用反応装置への適用が可能となる。また、マグネ
タイトのかさ密度が3g/cm3以下であれば、粒子間、粒子内の空隙率
が確保でき、反応気体が粒子内へ拡散し易くなり、実用プロセスとして必
要な反応速度が得られる。
【0093】還元剤再生工程S4では、例えば、ロータリーキルンや流動
層などの固気反応装置を用いて、粉末状のマグネタイトを攪拌しつつ、水
素製造工程S3で生成させた水素に接触させることによって、マグネタイ
トを構成する酸素原子が離脱して水素と反応して水(水蒸気)が生じる。
また、酸素原子が離脱したマグネタイトは、マグネタイトの結晶構造、即
ちスピネル型結晶格子構造を保った状態で、離脱した酸素原子の位置が空
孔となった酸素欠陥鉄酸化物、または酸素完全欠陥鉄となる。
【0094】還元剤再生工程S4において、マグネタイト材がヘマタイト
を含む場合、ヘマタイトは還元されてマグネタイトとなり、さらに還元さ
れて酸素欠陥鉄酸化物または酸素完全欠陥鉄となる。
【0095】還元剤再生工程S4の反応温度は、300℃以上、450℃
以下、好ましくは350℃以上、400℃以下の範囲であればよい。
反応温度が300℃以上であれば、実用プロセスとして必要な反応速度が
得られる。また、反応温度が450℃以下であれば、反応する時に還元剤
の結晶構造が壊れることなく、高い反応性が維持でき、還元剤が繰り返し
使用することができる。かつ反応する時の消費エネルギーを抑えることが
できる。還元剤再生工程S4では、こうした反応温度範囲に昇温させるた
めに、例えば、二酸化炭素分解工程S1と同様の熱源を有効利用すること
も好ましい。
【0096】還元剤再生工程S4の反応圧力は、0.1MPa以上、5M
Pa以下、好ましくは0.1MPa以上、1MPa以下の範囲であればよ
い。反応圧力が0.1MPa以上であれば、実用プロセスとして必要な反
応速度を得ることができ、反応装置のサイズをコンパクトにすることがで
きる。また、反応圧力が5MPa以下であれば、装置の製作コストを抑え
ることができる。
【0097】還元剤再生工程S4で用いる水素ガスの濃度は、5体積%以
上100体積%以下の範囲、好ましくは10体積%以上、90体積%以下
の範囲であればよい。水素ガスの濃度が例えば90体積%程度であっても、
実質的に濃度100体積%の水素ガスと還元能力に大きな差は無い。よっ
て、濃度が100体積%の水素ガスよりもコストが低い濃度が90体積%
程度の水素ガスを用いれば、マグネタイトから低コストに還元剤を生成す
ることができる。
【0098】還元剤再生工程S4でのマグネタイトの水素による還元では、
以下の式(17)、(18)のように還元剤が生成される。
  Fe3O4+δH2→Fe3O4-δ+δH2O(但し、δ=1以上4未満)・・・(17)
  Fe3O4+4H2→3Fe+4H2O・・・(18)
【0099】ここで、得られた還元剤の活性を維持するため、還元剤再生
工程S4から二酸化炭素分解工程S1までのあいだは、還元剤への空気混
入等による酸化を防止することが好ましい。例えば、還元剤再生工程S4
から二酸化炭素分解工程S1に向けて還元剤を移送する際に、密閉状態と
して空気混入を防ぎつつ、還元剤を移送可能な構成とすれば、還元剤再生
工程S4で得られた還元剤を酸化させることなく二酸化炭素分解工程S1
に供給することができる。
【0100】なお、炭素分離工程S2で生成される炭素の生成効率を高め
るために、二酸化炭素分解工程S1と還元剤再生工程S4とを2回以上繰
り返し行い、二酸化炭素分解工程S1で生成される炭素付着マグネタイト
の炭素濃度を高めてから、炭素分離工程S2および水素製造工程S3を行
うこともできる。これにより、より低コストにナノサイズの炭素を製造す
ることができる。
【0101】 以上のような本実施形態の炭素材料および水素の製造方法に
よれば、マグネタイトの結晶構造が維持され、かつ酸素原子の離脱による
原子空孔の多い酸素欠陥鉄酸化物(Fe3O4-δ(但し、δ=1以上4未満
))、またはマグネタイトを完全に還元することで得られる、酸素完全欠
陥鉄(δ=4)を還元剤として用いて、二酸化炭素を還元することにより、
低コストで効率的に二酸化炭素から炭素材料を製造することができる。
【0102】また、水素製造工程S3を構成する電解還元過程S3-1で
塩化鉄(III)を電解還元によって塩化鉄(II)にすることにより、炭素分離工程
S2で得られた塩化鉄(III)と塩化鉄(II)の混合物を、高温に加熱して還元す
るなどコストの掛かる方法によらず、常温で反応させることができる簡易
で低コストな方法で、水との反応によって容易に水素を生成させることが
できる塩化鉄(II)の割合を高めることができる。
【0103】そして、電解還元過程S3-1で得られた塩化鉄(II)と水とを
反応させることによって、低コストで効率的に水を分解して、高純度な水
素を製造することができる。こうした水素製造では、マグネタイトの循環
量を増やすだけで、容易に水素の生成量を増加させることができ、例えば、
次世代製鉄所の水素還元製鉄プロセス、製油所の水素化精製プロセス、二
酸化炭素回収・再利用(CCU)技術、水素燃料電池用の水素源、水素発
電用の水素源などに幅広く用いることができる。
【0104】そして、水素製造工程S3で生成したマグネタイトを還元剤
再生工程に供給して、水素製造工程で生成させた水素を用いて還元剤を再
生することによって、外部からの供給は二酸化炭素と水だけで、二酸化炭
素を分解して炭素材料を製造し、また、水を分解して水素を製造するクロ
ーズドシステムを構築することができる。
【0105】こうした各工程の途上で発生する水素と酸素は、それぞれ生
成する工程が異なっており、互いに1つの工程内で接触することが無い。
例えば、水素は水素製造工程S3で生成され、酸素は炭素分離工程S2で
生成され、これらが互いに同一の反応槽などで混在することが無い。これ
により、酸素と水素とが接触して爆発的に反応するといった懸念もなく、
安定的に各工程の反応を行うことができる。
【0106】こうした炭素材料および水素の製造方法に用いるマグネタイ
トは、処理の過程で還元されて還元剤となるなど、その物質形態を変えな
がら循環利用されるので、ロス分以外外部からマグネタイトを供給しなく
ても、低コストに炭素および水素の製造を行うことができる。
【0107】また、炭素分離工程S2において、表面に炭素が付着したマ
グネタイトを塩酸(塩化水素の水溶液)で溶解して塩酸に不溶性の炭素を
分離させることで、粒子径が1μm以下のナノサイズの炭素材料を得ること
ができる。
【0108】また、二酸化炭素分解工程S1、炭素分離工程S2、水素製
造工程S3、還元剤再生工程S4において、例えば、製鉄所、火力発電所、
セメント工場、ゴミ焼却施設などの稼働に伴って発生した熱(排熱)を、
反応時の熱源として有効利用することで、排熱の大気中への放出量を抑制
でき、温暖化防止に寄与する。また、再生可能エネルギー由来の電気・蓄
熱、及び高温の熱を取り出せる原子炉である高温ガス炉の熱エネルギーを
有効利用することで、CO2の発生を抑制でき、カーボンニュートラルや
脱炭素社会の実現に寄与する。
【0109】以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした実施形態は、
例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していな
い。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能で
あり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行
うことができる。この実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含ま
れると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含ま
れるものである。
【0110】例えば、上述した実施形態では、マグネタイトの一般的な組
成をFe3O4としているが、こうしたマグネタイトは、他の物質、例えば、
チタン(Ti)などが含まれている砂鉄であってもよい。こうした他の物
質、例えば、チタンは、触媒として二酸化炭素の還元に寄与している可能
性がある。

【実施例】【0111】
  以下、本発明の炭素および水素の製造方法のうち、電解還元過程S3-1
の効果を検証した。検証にあたって、図4に示す構成の電解装置を用意し
た。 条件は以下の通りである。
(1)温度:25℃。
(2)圧力:大気圧(1気圧)。
(3)陰極液:アルゴン雰囲気下において濃度2モル/Lの塩酸水溶液60
  mL中に、Fe3+の濃度20.7モル/Lとなるようにマグネタイト
  を溶解したものを用いた。pHは0.4以下になるように保った。
(4)陽極液:濃度1モル/Lの希硫酸水溶液を用いた。
(5)陰極電極(作用極):炭素棒(φ6mm:有効電極面積9.7cm2)
  を用いた。
(6)陽極電極(対極):白金線を用いた。
(7)参照電極:銀/塩化銀電極(Ag/AgCl, SHEに対して+0.199 V)を用いた。
(8)隔壁:ナフィオン(登録商標)膜を用いた。
(9)陰極槽の雰囲気:アルゴンガス雰囲気とした。
(10)陰極電極への印加電位:標準水素電極(SHE)に対して+0.7
  V~0.0Vの範囲(参照電極に対して+0.5V~-0.2Vの範
  囲)とした。

 
図5 検証例の結果を示すグラフ

【0112】上述した条件で、0秒~54000秒経過までの電流値およ
び電気量の変化を測定した。この結果を図5に示す。本検証例で用いたFe
(III)の物質量は1.242mmolであることから、上記の式(1)の反応
完了に必要となる理論電気量は119.85Cである。これに対し、図5
に示す電解終了時までに消費された電気量は119.66Cであることか
ら、式(1)の電解還元反応が99.8%完了したと考えられる。反応完
了後の陰極液を、ロータリーエバポレータを用いて減圧乾固したところ、
0.1833gの淡緑色粉末が得られた。


図6. 検証例の結果を示すXRDのピークパターン図

【0113】次に、この淡緑色粉末をX線回折装置(XRD)を用いて解
析した。この結果を図6に示す。なお、図6の上側の線が今回の測定結果、
下側の線がFeCl2・2H2Oの文献値である。図6に示す結果によれば、
得られた淡緑色粉末のピークパターンは、FeCl2・2H2Oの既知のピ
ークパターンと近似したピークを有している。よって、式(1)に示した
電解還元反応が支配的かつ定量的に進行することを確認できた。

【産業上の利用可能性】
【0114】 本発明は、二酸化炭素および水を用いて、炭素材料と水素と
を低コストで効率的に生成することができる。例えば、製鉄プラント、火
力発電所、セメント製造プラント、ゴミ焼却施設など、二酸化炭素、およ
び排熱を多く排出するプラント等に適用することで、二酸化炭素の排出削
減、水素の有効利用と、これに付随してナノサイズの炭素などの高付加価
値の炭素材料の製造を行うことができる。したがって、産業上の利用可能
性を有する。
※ ”フォトファブ”専門の半導体製造事業を牽引してきたわたし(たち)
  にとって、興味深い企業化課題であり、死別した方を除いても両手で
  は足りない知人の名前を挙げることができるほど。短歌の仲間で三名
  を数える(偶然ですが)。大変興味深い事業である。

人間の未来 AIの未来

人間の未来 AIの未来 講談社(2018/02発売)
まえがきにかえて 羽生善治から山中伸弥さんへ
第1章 iPS細胞の最前線で何が起こっていますか?
第2章 なぜ棋士は人工知能に負けたのでしょうか?
第3章 人間は将来、AIに支配されるでしょうか?
第4章 先端医療がすべての病気に勝つ日は来ますか?
第5章 人間にできるけどAIにできないことは何ですか?
第6章 新しいアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
第7章 どうすれば日本は人材大国になれるでしょうか?
第8章 十年後、百年後、この世界はどうなっていると思いますか?
あとがきにかえて 山中伸弥から羽生善治さんへ
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          『水平線 back number』 

          出来るだけ嘘は無いように
          どんな時も優しくあれるように
          人が痛みを感じた時には
          自分の事のように思えるように

          ※この楽曲はインターハイの出場を目指していた
           高校生に向けて書き下ろされたという。コロナ禍 
           の人の心に大きな「空虚さ」を残しました。



 今日の言葉:絶望から立ち上がる知恵を!

 


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