【オールソーラーシステム完結論 17】
今夜も、昨夜にひきつづき蛍光体の話。
日立化成が、発電変換効率向上できる波長変換粒子を開発。 WCP(Wavelength Conversion Particles)は、
長波長光(可視光)を短波長光(紫外光)に変換することで向上させる。この粒子を挿入した太陽電池
カプセル材シート(波長変換膜)を使用した場合、アクリル系樹脂に分散させたことで優れた耐久性を
もつこの太陽電池モジュールは、JIS C8919準拠の屋外試験で、従来の太陽電池封止材を用いた太陽電池
モジュールと比較し、2.2%変換効率を高めることが期待できるという。これらの粒子は製造プロセスを
変更や生産性に支障なく、変換効率の増大に寄与する。さらに、この技術の波長変換を使用することで
光学材料および他のアプリケーションの識別、偽造防止、信頼性などの新しい機能を追加できるという。
※ Wavelength conversion particles from Hitachi Chemical boost cell efficiencies by over 2%, 2014.09.09 PVTEC
従来の結晶シリコン太陽電池モジュールは以下のような構成特徴をもつ。
(1)表面の保護ガラス(カバーガラスともいう)は、耐衝撃性を重んじて強化ガラスが用いる。(2)
封止材(通常、エチレンビニルアセテートコポリマーを主成分とする樹脂、充填材ともいう)との密着
性をよくするために、片面はエンボス加工による凹凸パターンが施されている。また、その凹凸パター
ンは内側に形成、太陽電池モジュールの表面は平滑である。(3)保護ガラスの下側には太陽電池素子
及びタブ線の保護封止に封止材及びバックフィルムが設けている。
一般に太陽光スペクトルのうち、360nm以下の短波長域及び1200nm以上の長波長域の光は、
結晶シリコン太陽電池における発電には寄与しない。このようなことは、スペクトル不整合、あるいは、
スペクトルミスマッチと呼ばれる。
(1)このため、蛍光物質(発光材料ともいう)を用い、太陽光スペクトルのうち、発電に寄与しない
紫外域または赤外域の光を波長変換することにより、発電に寄与しうる波長域の光を発光する層を太陽
電池受光面側に設ける手法が提案されている。(2)また、蛍光物質である希土類錯体を、封止材中に
含有させる方法も提案がされている。(3)さらに、従来から太陽電池用透明封止材として熱硬化性を
付与したエチレン−酢酸ビニル共重合体が広く用いられている。
ところが、発電に寄与しない光を発電に寄与しうる波長域の光に波長変換する技術課題は、(1)波長
変換層に蛍光物質が含有されているの蛍光物質が、一般的に形状が大きく、入射した太陽光が波長変換
フィルムを通過する際に、太陽電池素子に十分届かず、発電に寄与しない割合が増加する場合がり、波
長変換層で紫外域の光を可視域の光に変換しても、入射した太陽光に対する発電される電力の割合(発
電効率)があまり高くならない問題や、(2)蛍光物質による吸収や散乱損失のため、蛍光物質を導入
しない場合よりも、発電効率が下がってしまう問題があった。
また、蛍光物質として用いられる希土類錯体が、封止材として広く用いられているエチレンビニルアセ
テート(EVA)と共に加水分解しやすく、経時的に劣化してしまい、波長変換された光を太陽電池素
子へ導入が困難であったり、(3)蛍光物質である希土類錯体をEVAに分散させた場合、EVAの加
水分解により酸が発生し、希土類金属錯体の加水分解が誘発され、蛍光を呈さなくなり、目的の波長変
換効果が得られなくなる問題、(4)希土類金属錯体分子同士は凝集しやすく、凝集体が、励起波長を
散乱させ蛍光体としての希土類金属の利用効率が更に低下するという問題や、さらに、(5)目的の波
長変換効果を得るには、紫外線を吸収し、赤色の蛍光を発するユーロピウム錯体がもっとも有効な蛍光
物質のひとつであるが、例えばその代表的な錯体、Eu(TTA)3Phenは、その励起波長が、上
図2に示すように錯体単独では420nmに励起端がみられるが、その錯体の状態、特に封止方法の違
いにより励起波長が異なる場合があり、樹脂封止体では400nmよりも短波長域に励起帯がある。こ
のような波長帯に励起帯がある場合、太陽光スペクトルのうち、強度が弱い部分の波長により励起させ
ることになり、蛍光強度はその分小さくなるという問題。また、(6)代表的な封止材であるEVAは、
紫外線照射により、上図3に示すように劣化が起こり、特に400nmから短波長域へ向けて散乱損失
が大きくなる。これによる結晶シリコン太陽電池素子の感度が犠牲になる部分は少ないものの、波長変
換効果には影響が大きく、このようなEVAの光劣化を軽減するために、一般には、紫外線吸収剤がE
VA中に配合されるが、図3に示すように紫外線吸収剤の吸収は、Eu(TTA)3Phenのような
通常のユーロピウム錯体の励起波長と重なっているためユーロピウム錯体の励起が妨げられる問題や、
(7)また十分な波長変換効果を得るには、紫外線吸収剤の配合量を少なくしなければならない。EV
Aの光劣化と、その対策である紫外線吸収剤の配合は、Eu(TTA)3Phenのような通常のユー
ロピウム錯体を用いる以上のトレードオフ関係となる問題がある。
以上のことを踏まえ、今回の球状蛍光体は、最大励起波長が400nm以上の蛍光物質及びこれを含む透明材
料を含有し、その励起スペクトルは、340nm以上380nm以下の波長域における励起スペクトル強度が、球状
蛍光体の最大励起波長の励起スペクトル強度の50%以上で、また波長変換型太陽電池封止材は、球状蛍光
体と、封止樹脂を含む光透過性の樹脂組成物層を備えた波長変換粒子/波長変換膜の新規考案されたもので
ある。
以上、波長変換蛍光体粒子とその製造方法の開発によるシリコン結晶系太陽電池の変換効率向上事例を
考察した。地味な改良作業とは言えさすがの”クール。ジャパン”といえる事例でもある。「恐るべし
日の丸ソーラー」である。
● ブラッドオレンジの苗とアランチェッロ
レモンリキュールもほぼ飲める状態になってきた(もう少しデカンテーションさせるつもりでいる)。
急遽、ブラッドオレンジの苗木と9号ウッドプランターをたまったポイントを使い、通販注文し、1日
でウッドプランターが届く。これはポイントで只である。なるほど、ポイントの魅力とはとはグイグイ
と通販会社に引き寄せられる魅力を実感。しかし、ポント制度は現金主義には不要だが、カード主義に
は魅力だろう。ただし、それは購入価格の正当性をゆがめかねない仕掛けが仕組まれているので注意が
必要だとも実感した。さて、自家製のブラッドオレンジのリキュールは2年後の話になるが、明日は柑
橘類の培養土の事例を研究することにし、早急に培養土を発注しないと苗木が届いてしまう。