今月10日、南極大陸の上に毎年現れるオゾンホールの成長が停止し10年を経て縮小し始め
ると、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)の研究者が公表した。これは、1987年
に採択された「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の環境方針の取り組
みの成果だと評価されるものだ。もっとも、このまま縮小していくのかどうかについては、今
以上に注視していく必要があるという条件が付く。しかし、同世界気象機関(WMO)は9日に、
2013 年の大気中の温室効果ガス量が過去最高を記録した――原因は二酸化炭素(CO2)濃度の
急上昇で、地球温暖化の勢いが増す恐れがある――と公表 しているから、なんとも複雑な思いであ
る。
【デジタルモーター工学】
● デジタルモータはどこまで進化するか!?
『静謐は信なり。』で取り上げた、ダイソンのサイクロン掃除機に使用している「DDM V4」
などのブラシレス直流モータをCMでは、”デジタルモータ”として呼ばれていたので、その
背景をもう少し納得できる説明があるのではと考え、いつものようにネット検索してみた。と
ころで、このモータは昨年、ダイソン社がシンガポールに新モーター製造施設「Dyson West
Park(ダイソン ウエスト パーク)」を新設し稼働を開始。約5000万ポンド(約71億円)を投
資した新工場で、独自開発の「ダイソン デジタル モーター(DDM)」を年間400万台生産。
これにより、DDMの生産能力を約2倍に増強すると発表している(2013.01)。新工場では、
コードレスタイプのハンディークリーナー「Dyson Digital Slim DC45」に搭載している小型ブラ
シレスDC(直流)モーター「DDM V2」のほか、新型モーターの「DDM V4」を生産するとい
う。DDM V2はハンディークリーナーの搭載タイプで、DDM V4 は同社が海外で発売するハン
ドドライヤー「AirBlade(エアブレード)シリーズ」の新モデルに搭載しているとのこと。
さて、モータの歴史は、19世紀初頭の電磁現象の発見から。現在までに、直流(DC)モータ、誘
導(インダクション)モータ、同期モータと数々のモータが開発されてきた。ブラシレスモータ
は、永久磁石型同期(Permanent Magnet Synchronous motor : PMSM)モータとして長年の歴史があ
るが、始動が難しく速度可変も難しいため高価な制御機構を使った産業用途以外普及しなかっ
たが、近年、(1)強力な永久磁石が開発されたこと(2)半導体素子によるインバータ制御
が容易になったこと、(4)及び省エネ意識の高まりや商品性の向上により、幅広い分野で急
速に発展している。
ここで、ダイソンがCMでブラシレス(直流モーター)のことを"デジタル・モータ"と呼称した
ことで、この呼び名が広がり、将来にはこの呼び方が定着するかもしれない状況にある。従来
の掃除機用モーターなどは、ブラシで機械的に回転磁界を作って回転子を追従させていたけれ
ど、マイコンでシーケンシャル(デジタル的)に回転磁界を発生させ回転力を作る。要はプロ
グラムでその回転周期をつくっているので、いくらでも回転数を上げることができる動作原理
であるが、毎分1万回以上の高速になれば、ベアリングが摩擦(摺動)熱のためもたないだろ
うと考えられている。
ところで、ダイソン社のモーター製造責任者で研究開発担当者は「DDM V4 は背面に取り付け
た制御回路で直流電流を高速で切り替えることで、起動後 0.7 秒と短時間で毎分9万回転もの
高速回転を達成できる。高い精度が求められるので、ほとんどの工程を自動化しており、ロボ
ットで組み立てている」という。また、「DDM V4」は約7年の開発期間を経て製造にこぎつ
けたといい、最大で毎分9万回も高速回転するローターが壊れなくするためにかなりの時間を
かけ、「モーターがコンパクトでパワフルなだけでなく、クリーナー全体の空気の流れなどを
最適化することで効率のいいコンプレッサを実現できたのが強みだ」と説明している。また、
ハンディークリーナでは DC45 で初めてDCモーターを採用したが、キャニスタータイプでは、
2009年に発売した「DC12」で DCモータ「DDM X20」(コードネーム)を採用。その後発売
された「DC26」や「DC36」「DC46」ではAC(交流)モーターに戻ったが、小型化が大きな
課題だったからという。「DC26やDC36、DC46では次期モーターの開発期間の関係で、ACモ
ータを採用。当時の技術では、DC12で採用していた『X20』に比べてACモーターの方が小型化
できたからだ。 DDM X20に対し、DDM V4の方はかなり小型になっている。
この先、デジタルモーターが小型・高速・静粛・振動などの性能/品質/コストで進化するに
は、より磁力の強い材料の開発や制御センサ(温度・位置)・制御回路などのの開発向上に期
待するしかないが、その開発代がどの程度のものかわからない。参考までに2つの新規考案事
例を上図に掲載しておく。
● 林檎時計で何かが変わる!?
『デジタル革命渦論』は ウェアラブルデバイスがいよいよ普及期に入ろうとしている。"おし
ゃべりする林檎時計”の登場だ? そうかと思うと、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って
目の難病治療を目指す理化学研究所などのチームが、今夕、iPS細胞から作った網膜細胞を
患者に移植する手術を先端医療センター病院(神戸市)で実施したことが公表された。面白い
時代だ。