● エボラ出血熱 死者2400人超
エボラ出血熱には実用化された治療薬はなく、予防のためのワクチンもない。一度エボラウイルスを
撃退した人の体内に存在する抗体を輸血することでエボラ出血熱が治った人の血液を治療に使うこと
を思いく。この療法は、狂犬病治療のために数十年前に開発さ、ヒトや動物の血液あるいは血液製剤
を使用。血液や血清を患者体内に挿入。リベリアでエボラウイルスに感染して治療を受けている米国
人医師のリック・サクラ(Rick Sacra)氏に、エボラ出血熱が治った別の米国人医師ケント・ブラント
リー(Kent Brantly)氏の血漿を輸血している。そのサクラ氏の容体は快方に向かっているが、その理
由が(1)ブラントリー氏の血漿なのか、(2)サクラ氏に投与された別の実験薬なのか、(3)単
に近代的な病院で治療を受けているからなのかは不明確であるという。
さらに、仏パスツール研究所のウイルス学者、ノエル・トルド(Noel Tordo )氏は、エボラ出血熱が
治った人の血清には、エボラウイルスを無力化するほどの抗体が多く含まれていないと指摘。狂犬病
の場合は、ヒトあるいは動物の体内の抗体の大半はウイルスを無力化するが、エボラの場合はよく分
かっていないが、この輸血方法が有効であれば、簡単で低コストの対応できる。今月行われた世界保
険機構(WHO)の会議で、血液療法と回復期の血清療法がすぐに利用できるものであるということで
一致。衛生栄養学の後進国では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や 肝炎ウイルス、あるいは梅毒など
の汚染拡大のリスクを熟慮し対応しなければならないと報じられている(AFP NEWS 2014.09.13)。
※インドネシアのメダンの患者は9日夜、北スマトラ州の病院で高熱で死亡した。最近ナイジェリア
から帰国したばかりなので、エボラ出血熱感染の可能性がある(2014.09.11 新華ニュース)。
● 柑橘類農法の高度化
ブラッドオレンジの苗木届き、早速9号ウッドプランター(H9D-GC)に移し替える(「みかんの土」
は届いていないから市販の腐葉土を使用)。ところで、化学肥料が多用される背景には、品質の維持
や安定性から有機人工土壌の製造は非常に難しいとされ、有機土壌では、植物に供給される無機成分
が、微生物による有機物の分解によって生成されるため定量化が難しいとの考えられている。下図の
新規考案事例によれば、人工培養土:ポリビニルホルマール(PVF)樹脂多孔質体―ビニロン発泡体−
を人工培養土が提案されている。それによると、
(1)土壌微生物による物質循環を考慮した土壌の診断方法:対象土壌におけるアンモニア減少率、
フィチン酸からのリン酸生成活性、及び堆肥からのカリウム生成活性を用いて算出される循環活
性指標、と土壌における土壌バクテリア数を用いて土壌診断を行うこと、得られた診断結果に基
づき、指標を改善するための処理を行うこと(後述する)。
(2)土壌中の全炭素・全窒素・全リン酸の重量比を一定の範囲に調整:微生物数を高レベルで維持
でき、この微生物活性によって物質循環が促進され、有機物が効率良く植物が利用できる形態に
変換され、有機肥料を効率良く利用する。
(3)従来の堆肥は、窒素成分の含有量が顕著に低く、窒素−リン−カリウムのバランスが悪くなっ
ていたことから、高濃度の窒素成分を有する有機物(大豆カス、油カスなど)を窒素源として使用
し糞尿を含む有機物(馬糞など)と有機物を混合するだけでなく、発酵させることで植物の生育を
促進させる高品質新規堆肥とする。
を踏まえ、従来作製されている各種培養土壌や人工土壌は、化学肥料を使用しているものがほとんど
であるが、有機農法または自然農法による農作物の栽培に適した土壌の診断や作製方法に関するもの
は植物の生育という点(生産性)ではさらに改善が必要があると指摘し、ポリビニルホルマール(PVF
)樹脂多孔質体が保水性に優れ且つ微生物保持能が高いため、このPVF 樹脂多孔質体と各種土壌を混
合して人工土壌を作製することで、化学肥料を使用せず、植物の生育に優れる新規人工土壌を提供す
る。(1)水耕栽培用 ポリビニルアセタール樹脂多孔質体の配合割合が10〜70容量%含有し、(2)
有機資材や化学肥料を含有させた、黒土、赤土、赤玉土ヴェルデナイト、ゼオライト、パーライト、
バーミキュライト、腐葉土、鹿沼土、砂、水苔、ピートモス、培養土、真砂土、ココナッツファイバ
ー、くん炭からなる群の中の少なくとも1種である土を含有する。(3)ここで有機資材とは、バー
ク堆肥、馬糞堆肥、鶏糞堆肥、牛糞堆肥、豚糞堆肥、海藻堆肥、稻ワラ、籾殻、大豆粕、魚粉、油粕、
米ぬか、水草、おから、及びペプチドから選択される少なくとも1種をさし、以上の条件の人工土壌
という特徴をもつ。
上図は、黒土とPVFスポンジの混合土壌の栽培試験の結果を示すグラフ。黒土とPVFスポンジを9:1〜
1:9(v/v)の割合で混合し、さらに10容量%となるように牛フン堆肥を添加して培養土を調製した。エ
ラーバーは標準偏差を示す。
● 微生物で土壌の肥沃度を測定
「WO2010/107121 新規土壌診断方法」開示されているのは、下記(I)〜(III)を用いて算出される
循環活性指標:(I)対象土壌におけるアンモニア減少率、(II)対象土壌におけるフィチン酸からの
リン酸生成活性、及び(III)対象土壌における堆肥からのカリウム生成活性、並びに(IV)土壌におけ
る土壌バクテリア数を用いて土壌診断を行うことを特徴とする土壌の診断方法、土壌の品質管理方法、
並びに土壌の改善方法だとある(上/下図参照)。
これまでの一般的な土壌診断手法は、土壌中の窒素・リン酸・カリなど、化学的性質を調べるものが
ほとんどで、土壌中での有機物など生物的性質を調べる評価手法は難しかった。 しかし、久保教授
の研究チームが開発したSOFIXは、土壌中の微生物量や微生物による窒素やリン酸などの分解・
循環活性などを定量的に調べることで、世界で初めて生物的性質を使った分析を可能にした。従来の
土壌診断では、対象となる農作物が違えば同じ土壌でも異なる処方箋が必要だったが、SOFIXで
示される指標は、「その土壌で育つ植物の活性を示すものであり、どんな農作物でも、さらには樹木
などでも、栽培する品種ごとに異なる処方箋は必要ない」というメリットがある。
※ 指標測定方法:廃水処理に用いたP60μmで4×4×4 mmのPVFスポンジ)の総細菌数をeDNA(enviro-
nmental DNA)法(Aoshima et al., 2006, Appl. Microbiol. Biotechnol. 71: 875-880)に従って測定
したところ、1×108 cells/gと高い微生物保持能を示した。さらに同じPVF担体を用いて、金魚を飼
育し、自然環境を再現した水槽の水質維持試験を行った。PVF担体中の細菌数は2.5×109 cells/g-sample
まで達した。この細菌数は、土壌中の細菌数に匹敵することから、PVFスポンジは微生物保持能の高
い担体である。
※ 溶性の PVA(ポリビニルアルコール 一般呼称:ポバール)に酸を触媒としてホルムアルデヒドを
結合させるホルマール化反応により不溶性物質の PVF(ポリビニルホルマール)を製造する。その工
程で気孔生成剤を加え、気孔の形成を行い不溶性のPVFが完成後この気孔生成剤を抽出。完成した PVF
は多孔質体となり立体的樹枝網目状連続気孔を形成している。
このような人工培土を利用し、各営農対象作物の地下茎根の特徴パラメーターを割り出し、SOFIXなどの肥
沃度を自動モニタリング管理し制御できれば、生産性を高めことができるだろうと考えている。その一歩として
庭木を兼用した、ブラッドオレンジのちいさな栽培試験が昨日からはじめたと言うわけである。
【オールソーラーシステム完結論 18】
● 太陽光発電が日本の農業を救える?
前項の人工培土を穀物や根菜類へ応用展開が進めば、広大な農地はダウンサイジングし、面積当たりの収
穫量が上がり生産性が向上し、ドローンを使った、種まきや、収穫や監視作業の自動化も進む。また、耕耘機
やコンバイン作業の自動化も進展しているだろう。そのときエネルギーはどうするのか?その答えがソーラー
シェアリングなのだ。
昨日、「環境ビジネス」(2014.AU)が届いた。地球温暖化対策や雇用創出、非常時のエネルギー確保
など、多様なメリット持つ太陽光発電が、日本の経済成長の推進力という面でも導入の加速化が求め
られている。太陽光発電のメリットと必要性について、環境省の地球温暖化対策中長期ロードマップ
検討会の提言をもとに、”ソーラーシェアリング 太陽光発電が日本の農業を救う”を特集していた。
日本の農業は大きな岐路に立だされ、農家の平均年齢は66歳を超え、農地を継承する担い手も、減少
の一途を辿っている。耕作放棄地も農地全体の1割近くにも及び、2012年には再生可能エネルギーの
全量固定価格買取制度が導入され、メガソーラーブームが起きて土地需要が増大。地代が高騰するに
応じて、農地転用への期待が高まった。 2000kW級の太陽光発電(PV)の年間賃貸料は一反(10a)約15万
円といわれるのに比べ、農地の賃貸料は田が約1万2千円、畑が約9800円と大きな開きがあるという。
CHO技術研究所・実証試験場(千葉県市原市)
しかし、太陽光発電(PV)の事業主体が地域外の事業者であれば、充電収入が地元を潤すこともな
く農耕地が減少して食料自給率をさらに下げる。そうした中で、注目されているのが農業を継続しな
がら売電で安定収入を確保することができるソーラーシェアリングという政策だというから、「オー
ルソーラーシステム完結論 ?」(『地上の星☆HERO』、2014.07.14)で紹介したことのより具
体的な実証試験などの事例研究が掲載・紹介されている。また、2013年3月末、農林水産省の通知によ
り、優良農地も一時転用の許可を受け、農地に支柱に立て、営農を継続しながら上部空間に太陽光発
電設備を設置することが認めらる。ただし、?太陽光発電設備の下部の農地の単収が、同じ年の地域の平
均的な単収と比較して2割以上減少しない ?太陽光発電設備の下部の農地で生産された農産物の品
質に著しい劣化が認められない ?太陽光発電設備の下部の空間が十分に確保され、農作業に必要な
機械等を効率的に利用することができることなど、太陽光発電設備の下部の農地における営農の適切
な継続が確保が条件となり営農と発電の両立を図っている。
さらに、高齢化、過疎化が進む農村を活性化する地域交流拠点をつくろうと仲間たちとソーラーシェ
アリングに工夫を凝らし、いずれ引き継ぐ農地の有効活用事例――バイオマス等の技術を利活用し6
次産業化も視野に、農業の未来像を描き、昨年4月、千葉県市原市で、ソーラーシェアリング、 750
ヘクタールの畑の地上3.5mの架台に100wのソーラーパネル348枚を設置した「ソーラーシェアリング−
上総鶴舞発電所」の事例も紹介されている。
さらに、先進的ブドウ農家がブドウ棚に住宅用太陽光発電の汎用パネルを設置し、高級ブドウの栽培
と発電の両立に成功し、エネルギーの地産地消を目指す、パネルは時間や天候により、コンピュータ
制御で角度を調整し、ブドウを傷めない雨除け、日除けの役割も果たすした、長野県須坂市のブドウ
農家の岡木由行農園(2012年夏から、ブドウ棚の一角に太陽光パネルを設置「須坂市スマートアグリソ
ーラー」)の事例報告等々掲載されている。以上、今号の特集は、ひょっとすると、世界の営農者の
バイブルに価するのではないかと思える内容だ。実に面白い。