「成功は失敗のもと」と逆に言いたい。その方が、この人生の
面白さを正確に言いあてている。
岡本 太郎
● ZSW 高性能CIGS系薄膜太陽電池(変換効率25%)開発へ
太陽電池の変換効率は太陽エネルギーのコスト削減の最も強力な推進力。 変換効率は太陽の入
射光がどれだけ電気エネルギーに変換したかを示す。この程、バーデン・ヴュルテンベルク州太
陽エネルギー水素研究センタ(ZSW)は、プロジェクト"Sharc25"として、CIGS(銅インジウムガリウムセ
レン)系薄膜太陽電池の変換効率を、2020年度までにセルレベルで25%(モジュールレベルで20%超)
を目標に開発することを公表。これにより世界は、5年後には変換効率25%超時代に入る。
「古賀の乱ってなんだ "I am not ABE"」(『進撃のヘーリオス Ⅱ』2015.04.04)で 触発され
るように、積んでおいた本を取り出し読みはじめた。そして、この国の政体を考えみよう。その
結果、どのようになろうとも未来志向できる手がかりを明らかにしたという動機から掲載してい
きたい。まずは第5章から読み進める。
福島のメルトダウンは必然だった…政府閉鎖すら起こる2013年の悪夢とは!?家族の
生命を守るため、全日本人必読の書。「日本の裏支配者が誰か教えよう」。経産省の現役幹
部が実名で証言。発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推
進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚も
いた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発
送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるとこ
ろだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)。改革が遅れ、経済成長を促す
施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府
閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経
済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議
院議員選挙がある2013年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)
古賀 茂明 著『日本中枢の崩壊』
目 次
序 章 福島原発事故の裏で
第1章 暗転した官僚人生
第2章 公務員制度改革の大逆流
第3章 霞が関の過ちを知った出張
第4章 役人たちが暴走する仕組み
第5章 民主党政権が躓いた場所
第6章 政治主導を実現する三つの組織
第7章 役人―その困った生態
第8章 官僚の政策が壊す日本
終 章 起死回生の策
第3章 霞が関の過ちを知った出張
口封じが目的の出張
2010年10月初旬、秋のみちのく路――。岩手県の新花巻駅で新幹線から釜石線に乗
り換え、玉置駅に降りた私は、すでに山道を30分近く歩き回っていた。
目指す企業が見つからない。資料で改めて確認すると駅から徒歩約15分と書いてあり、
渡された地図の通り歩いている。だとすると、この辺りにあるはずだが……それにしては、
あまりにも人気か感じられなかった。目に入るのは、紅葉前のまだ縁濃い木々ばかり。道を
間違えたのではないか。不安になった私は、携帯電話を取り出しノ訪問予定の手つむぎ練り
の生地メーカーに連絡した。
と、ややあって側道から一人の男性が現れ、『古賀さんですか」と問う。案内された訪問
先は、未舗装の側道をかなり入った場所にあった。こんなところにエ場かあろうとは。いく
ら探しても坦つからなかったはずである・・・・・・。
先に述べた通り、2008年7月、福田康夫政権下で内閣に出向して以来、国家公務員制
度改革に取り組んでいた私は、民h党政権に交代した約3ヵ月後の2009年末、突如、国
家公務員制度改革推進本部事務局審議官の任を解かれ、経産省の大臣官房付となった。
官房付は待機ポストゆえ閑職、決まった仕事はない。事実、2009九年12月に更迭に
なって以来、仕事らしい仕事を命じられることなく、夏に次官と約束した職探しの猶予期限
の2010年10末が近づいていた。
『そろそろなんとかしないと、本当にハローワーク通いだね」などと友人に話していたのを
覚えている。ところが、9月下旬に突然、官房長に呼ばれる。その場で私は、2週間に及ぶ
異例の長同出張を命じられる。出張先は北海道、東北、四国、九州と遠隔地ばかりである。
出張の目的は「地方の中小企業の実態訓育」だったが、これは建て前に過ぎない」ことは
すぐに分かった。というのも、同様の調査が、数百社という規模で、各地の経済産業局によ
ってすでに実施され、なんと私か出張に旅立った翌日には、各地方経産局長から大臣に調査
結果が報告されていたからだ。いまさら私が一人でいくつかの企業を回ったところで何の意
味もないではないか。
『週刊東洋経済』(10月2日号、9月27日発売)に発表した私の論文が「上」の怒り
を買ったのだと私は思った。発売の翌日に出張命令が出されたのも分かりやすいな、と思っ
た。2010年6月の『エコノミスト』の論文発表後に、10月末退職か決まった後も、私
は雑誌やテレビなどで積極的に発一一を続けていた。現役官僚の私が、公然と現政権の批判
をしているのだから、「上」はおもしろくないだろう。
後日マスコミでは、この出張の目的について、私を東京からしばらく離れさせてメディア
と接触できないようにする、と同時に、国会に呼ばれるのを阻止しようとしたという解説が
流された。冒頭の予算委員会の小野次郎議員の質問でも、この出張が「大人の陰湿ないじめ」
と批判された。世論の受け止めは、要は私の「口封じ」ということである。
裏の思惑はどうであれ、経度省の役人である私は「上」からの命令は拒否できない。かく
して私は、6000キロを超える長期出張の旅に出た。
この件は、すぐさまマスコミの知るところとなり、メディアのなかには、「涙の6000
キロ」と題して報じたところもあった。驚いたことに、九州出張で昧著名なジャーナリスト
である須田慎一郎氏が旅先に現れて私を取材した。その模様はテレビ朝日の「サンデーフロ
ントライン」で報道されたので、私の出張かいかようなものであったか、ご存じの方もいら
っしやるかもしれない。
「涙の6000キロ」-――霞が関への非難と、私へのいささかの同情をこめて、メディ
アはそう報じたか、この長期出張は私にとって、たいへん有意義なものとなった。この旅を
通じて、皮肉にも、霞が関の経済産業政策の過ちを再認識させられると同時に、抜本的な公
務員制度改革の必要性を痛感したからだ。
円高で初めて自社の真価を知った企業
私の訪問先の企業は、各地の経済産業局がリストアップした。役所の選定基準はどこも概
ね同じで、ありていにいえば「権威打殺」と「モノ作り偏重」だ。私は農業関連の企業を入
れて欲しいなどと注文を出していたので、なかにはそういう企業も入っていたが、経済産業
局が私の訪問先として選んだ企業の多くは、「某大手自動車メーカーの○○部品のシェア○
○パーセントを占めている」あるいは「伝統の技術を究極まで高めている企業」といった触
れ込みである。
リーマン・ショック以来長引く不況に加えて、急激な円高。地方の中小企業はどこも青息
吐息で、まるで元気かない。優良企業といえども、意欲を失ったり、政府に助けを求めてい
るのではないかと想像していたが、実際に訪れてみると、実態はわれわれ中央の役人が考え
ているものとはまるで違っていた.どの企業ももつと強かに生き残りをはかろうとしていた
のだ。
たとえば、超精密機械メーカー。この企業は1ミリほどの精密ネジの製造機械では世界屈
指の技術を誇っており、国内外の先進的な工作機喊メーカーに製品を販売している。
欧州の工作機械メーカーを主な得意先としている、この会社を直撃したのは、このところ
続くユーロ安である。ユーロ安によって利益が激減。コスト削減で乗り切ろうと血のにじむ
ような努力を重ねても、たちまちその努力はユーロ安にかき消されてしまう。
かといって値上げをすれば、多くの得意先が離れていく心配かあった。作るも地獄、値上
げするも地獄。経営者は、出口のないトンネルのなかで立ち往生していた。
だが、背に腹は替えられない。このまま赤字を垂れ流すのなら、たとえ得意先を失っても
思い切って値上げしてみよう――これか経営者のギリギリの決断だった。
恐る恐る値上げを申し出ると、得意先からは予想外の反応か返ってきた。欧州の得意先は
さほど抵抗することもなく値上げ交渉に入ってくれたのだ。
それどころか、なかには値上げ申告に訪れた現地の官業マンに逆に励ましの言葉を贈った
企業もあったほどだった。
「こちらが心配して『値上げしないでも大丈夫か』と社内で話していたんだ。『これだけの
ユーロ安じやあやっていけるはずがない」これで値上げなしだとすれば以前はよほどポロ儲
けしていたんだなあ』と勘ぐっていたよ。やっぱり苦しかったのか。むしろ、値上げをいっ
てもらって安心した。君の会社に潰れられたらうちが困るからね。われわれは同業他社とし
のぎを削っている。うちが最先端を走れている一つの要因は、君の会社の優秀な製品がある
からだ。不当なものでなければ、儲けてもらっていい。その利益で、もっと優れた製品を開
発してもらえば、わか社にもメリットがある。円安に傾いたら、そのときは値下げしてもら
えばいい。
この一件で『当社の機械はそれほど評価されているのか」と自信を深めた経営陣は、「価
格競争ではなく、オリジナリティで勝負できる製品の開発を続けよう、世界の製品なら世界
一高くてもいいんだ、と改めて悟りましたよ。いままでは、『良い製品をより安く`と考え
てやってきましたからね。いつも、安く、安くといわれてここまで来たので」と述懐してい
た。
低金利支援で中小企業の経営力は
示唆に富んだエピソードだった。自分の技術、製品の競争力を利益につなげる経営能力か
いかに重要かということだ。現在の中小企業政策の過ちは、経営能力を見ずして技術最優先
で企業を選別し、救いの予を差し伸べる点にある。
中売の役人は技術、技術というけれど、いくら卓抜な技術があっても、経営力か乏しけれ
ば宝の持ち腐れになる。経営能力に欠ける企業は、そのままでは、いくら資金面の支援をし
たところで、やがて立ち行かなくなる。
先ほどの例でいえば、顧客の減少ばかりを心配して経営者か値上げに踏み切らなければ、
財務内容が悪化して倒産に追い込まれる嘔態も考えられた、ところが、中小企業庁の行って
いる支援策は、人座業に納める技術力があれば資金面や財務面の支援を行うということにな
りがちで、経営力を見極めるというところが弱い。
しかも、金融支援は、安い金利での貸し付けと補助金の注入だ。このニつの政策はともに
問題が多い。本来なら救うべきでない企業まで生き長らえさせるだけでなく、企業の経営力
を減じかねないからだ。
もちろん、リーマン・ショックで金融市場か機能マヒに陥ったり、通常の景気変動ではな
い外的ショックが加わったような緊急時には、経営力かあっても急場のつなぎ資金に行き詰
まっているような優良企業を救済しなければならない。だが、日常的に政府の安い金利漬け
になって、普通の金利ではもはや運営できなくなっている企業を延々と存続ざせて、それか
国民、国家の利益になるとはとても思えない。ましてや補助金の注入は企業の育成にはほと
んど役立っていないのが現状だ。
経産省がモデル事業に指定した企業に補助金を出すという産業育成支援は、頻繁に行われ
ている。しかし、新しい発想で新たな事業を展開しようと望む企業は、補助金の恩志にあず
かりにくい仕組みになっている.なぜか――。
補助金をもらうためには、経産省の審査をクリアしなければならない。審査には細かな要
件が多く、しかも経産省は全国一律の基準に固執する。それに合わせようとすると、先進的
な発想を持つ企業は、自分たちがやりたいと思う方向性とは違ってくる。先進的な企業は他
が考えないようなことをやろうとしているので、役人が少々聞きかじってもっともらしいス
トーリーで基準を作っても合わないのだ。
調整につぐ調整で、スピ-ドが遅くなり、結局、補助金が下ると決まった頃には遅れを取
っていて、すでに市場では海外の企業が優位に立っているという状況になりかねない。ゆえ
に補助金の申請を途中で断念したり、二年目はもらわないという有望企業も少なくないのだ。
日本の中小企業政策は「中小企業を永遠に中小企業のまま生き長らえさせるだけの政策」
になってしまっている可能性が高い。しかも、それによって強くて伸びる企業の足を引っ張
っている、ということさえ懸念されるのである。
また、民主党政権は農家に対する戸別所得補償を政策の目玉の一つにしている。経営者た
ちが異謙ありとするのは、政府の農家偏痢の政策だ。「なぜ、農家だけを助け、われわれ中
小企業の利益は考えないのか」――これが経営者の憤りである。
身勝手で不服を洩らしているわけでないのは、彼らの主張を聞けば分かった。
「いま、農家の大半は兼業でしょ’ス農業をやっているのは、じいちゃん、ばあちゃん、お
かあちゃんで、一家の大黒柱のご主人は、みな外に働きに出ている。農家の家計を支えてい
るのは、工場やわれわれの会社に慟きに来ている大黒柱ですよ。
でも、日本がFTAに躊躇していると、われわれ中小企業は韓国など他のアジアの国々の
企業に国際競争力で大きく水をあけられ、倒産に追い込まれる。漬れなくとも、中国などに
海外移転して、安い労働力を活用して生き残りをはかるしかなくなる。そうなれば、家計を
支える大黒柱の収入も入ってこなくなり、政府から戸別所得補償をもらっても農家の実質的
な収入は減り、FTAに加わった場合より、むしろ、農家の疲弊につながりかねません。ど
うして、こんな簡単な道理を中央では分かっていただけないのか、不思議です」
東日本大震災の復興対策財源として、戸別所得補償は思い切って廃止したらどうだろう。
真に競争力のある農業を育てるための予算に組み換え、総額も大幅に削減すべきではない
だろうか。
円高で現地生産で乗り切ろうとする大手自動車・家電メーカはやがて海外にシフトし、解雇され
た農業と兼業従業員は、派遣社員として再就職するも、その派遣会社からも首を切られるという
のがリーマン・ショック前後のよくある地方都市で耳目する光景であったが、農業政策は安全保
障的側面から従来の農業政策を大きく変える必要があるとの、いわゆる"グリーン・リベラリズ
ム(環境自由主義)"的農業政策に切り替えるわたし(たち)と、筆者の考える政策とは大きく
異なるが、その特徴は、農本制と資本制を超えた、逆格差法人税制と初期投資免税制を導入した、
耐気候変動(ガラスハウスなど)・地産地消・安全食品・高度産業化した農営の法人化促進であ
り、ここで開発農法システムを世界展開(インプラント)するというの"環境リスク本位制"下の
基本的特徴である。
経産省と大企業の美学が作った高コスト体質
中央官庁の現実無視の政策と官僚の時代遅れの価値観は、日本の製造業に構造的かつ致命
的な欠陥をも植えつけてしまった。それは、大企業を頂点として一つのカルチャーに染まっ
てしまう体質だ。
一つの例を挙げよう。日本の製造業の特徴を表すキーワードの一つに「擦り合わせ」かあ
る。日本の大企業は自分たちの使い勝手の良いように、細部にまでこだわった仕様を要求す
る。たとえばて場のペルトコンペア一つとっても、他社と同じ画一的な仕様は好まず、業者
と綿密な「擦り合わせ」を行い、独自のシステムを構築しようとする。
工場ごとにオリジナルのものを作ってくれなければ取り引きできないとこだわる企業も少
なくない。さらに納入した後も業者が呼ばれ、「ここのつなぎがちょっと悪い。使いにくい
から改良してくれないか」といったやり取りが繰り返されている。
経産省の見解では、このきめ梱やかな「擦り合わせ」の力こそが、日本の製造業の最大の強
みだということになっている。だが、闇雲に「擦り合わせ」を美化することにより、その「
擦り合わせ」によって日本の製造業は、国際間競争では知らず知らずのうちにハンデを負っ
てしまっているという実態がある。
欧米のメーカーは日本の企業と違って非常に合理的で、ベルトコンベアや空調といったシ
ステムにはこだわらず、すべて汎用品で間に合わせている。
彼我の企業文化の違いを端的に物語る話を、ある空調機器メーカーの方から聞いた。この
企業は工場向けをはじめとする特殊な空調設備を主力商品としており、たとえば、排出ガス
をすべて除去し、かつ湿度も温度も.定に保つといった空調システムを開発、高度空調機器
の市場では世界有数のシェアを誇っている、数年前、ヨーロッパの企業を買収し、そこを拠
点としてヨーロツパヘの輸出にも力を入れているのだが、日本の得意先とヨーロッパの取引
先では、要求される度合いに雲泥の差があるらしい。
ヨーロッパのメーカーが相手なら標準のシステムを納入するだけでピジネスは完結する。
ところが日本の製造業相手ではそうはいかない。同程度の機能のシステムでも、注文がう
るさい日本の製造業相手の場合、設計に必要な人員もヨーロッパの2倍になるという。
要望に添うよう作り込まなければならないので、当然、納入までにかかる時間も長い。そ
れでいて利益は、ヨーロッバ企業相手の半分しかないというのだ。しかも、日本の設計担当
は毎日深夜残業。ヨーロッパでは2ヵ月の休暇を取っても利益率ははるかに上だ。
「それでも苦労して取引先の要望に合わせて作り上げ、あちらのメリットにつながればいい
んですけどねえ。そうじやないから、なんのためにやっているのか、われわれも分からなく
なる・・・・・・。」と経営者は嘆いていた。
ここでは、空調機器(詳細不明)の「最適品位とは何か」が不明で、その不明さゆえに「過剰品
質・過剰仕様」「コスト高(腰高)」で、共倒れ防止のための「調整役」の不在ということが指
摘されているのだろうが、それ以上のことはわからないので先にすすむ。
この項つづく
● 今夜のアラカルト
これからの季節はバーベキューを企画し、子鮎を釣り上げ楽しんできたものだが、ここ2年は一度もアウ
トドアー・クッキングを行っていない。将来的には?と考えると、再会するとしても2016年以降となるだろ
う。そこでイメージだけでアウトドアー・クッキングのレシピを考えてみた「ステーキサラダ」が頭を過ぎった。
庭先にルーコラが盛りを終えた2つのプランターで次の出番をまっている。
●材 料 冷めたステーキ、いろいろな野菜、基本のドレッシンク、バルサミコ酢、ルーコラ
●作り方 基本のドレッシングにバルサミコ酢を足して、全部をさっとあえるだけ。
ところで話は、一見、黒酢のようなこのバルサミコ酢。その歴史は約千年前から中部イタリアで
はじまり、その珍しさから婚姻のときの持参金の一部にもなったといわれる。原料は白ブドウの
搾り汁を煮立てた原液を、クルミ、カシ、クリ、サクラ、スギの木樽に順次移し替えて、最低で
も10年の年月をへて、1/10の量まで自然に濃縮された、とても香りの高い酢。百年以上の古
いものもあり、商売の対象としてではなく、一種、宗教的な所有物として保存している家もある
と参考書に紹介されている。1986年、イタリア政府はこのバルサミコ酢を守るための、生産保護
法を制定して販売が許可された。これは酢ではなく、明らかにブドウ汁である。自然が時間をか
けて濃縮したものを火にかけてさらに煮つめる料理人もいるが、とんでもないという。イチゴに
数滴ふりかけたり、レバー・ステーキの焼き上がりに数滴かけたり。毎朝、デミ・スプーンに一
杯飲む人もいる・・・・・・とか。
ことしのルージュピエールドゥロンサール(写真上/右)は、バラの病気で散々だ。それでも、遅咲きの蕾
は天を突き破るかのように開花を待つ。複雑な梅雨空とは対照的だ。