彦根藩二当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
)と兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。
【季語と短歌:3月4日】
啓蟄やモーニングコール雨寒し 宇
高山 宇 (赤鬼)
🪄同伴者逝き友を気づかいモーニングコール。些細な日常ごとを話し
返礼を伝える。郷里の神社の蕗の薹に想いを寄せ詠む。
著者:浦川 通/出版社:講談社 装丁:新書(218ページ) 発売日:
2024-06-20 ISBN-10:4065360129 ISBN-13:978-4065360125
✅『AIは短歌をどう詠むか』(講談社) ALLREVIEWS⓷
🏈 なぜ、われわれはAIと歌を詠むのか
國兼 さて、お話はいねばここからが本題です。なぜわれわれはAI
と歌を詠むのか。イベントの告知文に、『「AIとヒトの関係性」「
AI文学論」を新段階にアップデートする画期的鼎談』とあります。
これまでは「AIがヒトより上手に短歌を詠む時代が来るのではな
いか」という危機感とともに語られることが多かったのですが、その
議論を、次の段階に進められないかというのが今回の鼎談のテーマで
す。
大塚 僕だけではなく、今回集まった三人は若干、これまでのAIと
短歌の議論に飽きているところがあります。「思想対立」で終わらせ
るのではなく、エンジニアとしての視点を持つ睦月さんと浦川さんと
AIの技術的な話もできるのが今日のポイントかと思います。
具体的に浦川さんがどのような論文を書かれているのかなど、もう
少し具体的な話ができると面白いと思います。
睦月 AIが短歌をつくるなんて、というとそこで終わってしまいま
す。たしかに実際にはそこの部分でも語るべきことは残されているん
ですが、ここでまずは「AIは短歌を詠めるのだ」という地点に立ち、
AIやデータサイエンスの領域で、まだまだ短歌に出来ることがたく
さんある、役に立つことがあるということ、その可能性について話し
たいと思っています。
浦川 その辺の紹介から口火を切りましょう。東北大学自然言語処理
研究グループ坂口・乾研究室の羽椎田賢和さんという方が書いた「R
LHFを用いた『面白い』短歌の自動生成の試み」という論文があり、
私も共著として関わっています。RLHF( reinforcement learning
from human feedback)とはChatGPTなどでも使われている、モデル
に対して人によるフィードバ″クを与えてより良い出力を得る、という
手法です。それを短歌の生成に採り入れています。
羽椎田氏はネットの短歌投稿サイト「Utakata(https://utakatanka.jp/)
に投稿された歌の中で、「いいね」数が5以上ある短歌をAIに学習
させました。
そこからその短歌がどれくらい良いのかを判定するスコアリングを
つくりました。たとえば実際の歌人による短歌を人力すれば高いスコ
アになるし、短歌っぽくないものを入力したら低いスコアになる。こ
れをAIにフィードバックとして与え、さらに言語モデルを学習させ
ました。
単純にAIに「短歌を詠んでください」と指示すると「シーチキン
を油で揚げるスナックをたまには食べたいツナ缶」というような歌が
できるんですが、さらにフィードバックを与えると「ねこたちはキャ
ットタワーのてっぺんで風に揺れてる木枯らしの庭」というようなよ
り短歌らしいものが生成されました(スライド⑩・RLHFを用いた:
・参照2・O)。
睦月 短歌を出力するAIの他に、報酬モデルと呼ばれる、
大塚 こういうのがだんだん面白くなってくるんですよ(笑)。
睦月都・選のAI短歌
木犀は夜に匂へり寝室へ⇒誘い行く脚を⇒供に白馬
睦月「寝室へ誘い行く」のあと「脚」が出てきたのが謎。最後に「白
馬」が出てきたのも謎で、AIの思考がトレースできないんですよ。
面白い謎だなと。
國兼 やはり、ちょっと壊れかけてる感じがいいんですかね。
睦月 私もそっち(犬塚)寄りに入ってるのかもしれない
(笑)。
大塚凱・選のAI短歌
木犀は夜に匂へり寝室へ⇒生い立ちと⇒その⇒
あゆみ マイケル
睦月 壊れちゃいましたね、これいいですね(笑)。
浦川 でも実はこれテクいですよね。
大塚 そうなんですよ! まず韻律がテクいし。
睦月 しかも句切れが謎ですよね。「生い立ち」と「その」「あゆみ」
「マイケル」わざわざ二字空けでこれは短歌を知っている人(?)か
もしれない(笑)。
國兼「マイケル」はなかなか出ないよね。
大塚 でも「寝室」が出てくるとそこで死んだ「ジャクソン」を思う
じゃないですか。國兼 あぁ、そうなんだ!
大塚 いや、わかんないですけとね。みんなジャクソンの歩みを見て
るわけですよ。
お題②「婚なさず子なさずをれば一日が」
(オリジナル下の句「シロッメクサのやうな涼しさ])
睦月 私自身はいつも、短歌は文語基調、旧仮名表記でつくっている
んです。最初の「冷凍のえびグラタン」はほぼ口語短歌と変わらなか
ったですけど、このお題はかなり文語寄りで、「をれば」は旧仮名。
このあたりの違いがどう出るかなと思って出しました。
浦川 これはお二人の選が一致したんですよね。
睦月都・大塚凱・選のAI短歌
婚なさず子なさずをれば一日が⇒天国に見えて⇒サクランボ摘み
睦月 ほかの生成例があまりうまくいってなかったというのもありま
したね。短歌的な飛躍の感じがよかったです。
大塚「婚なさず」ではあるけれど「天国に見えて」「サクランボ摘み」
からは神話的なイメージが出てくるし、中村草田男の「空は太初の青
さ妻より林檎うく」のような、アダムとイブ的な神話性を感じました。
睦月 私の元歌も「一日がシロツメクサのやうな涼しさ」で短歌AI
と櫨物かぷりみたいな親和性を感じました。
大塚 サクランボもニコイチ(二雄二みたいなイメージが短歌を評価
するAIを立てる感じですね。ATIが出力した短歌を報酬モデルに
読ませ、これは良い短歌、よくない短歌とフィードバ″クさせていくと、
出力モデルの性能が上がっていくと。
國兼 AIが、評価をフィードバックし合う?
大塚 結社の中での先輩とのやりとり、選歌とか添削を擬似的にやっ
ている感じです。
浦川 短歌SNSで「いいね」が集まった歌が、本当に良い歌かとう
かという課題にも繋がってくると思います。
國兼 お互いに、相手に報酬をやり合ったりすることは可能なんです
か? それこそ歌会みたいな。
浦川 俳句の生成ではかつてやられたりしていましたね。
睦月 そう考えると、評価軸や報酬体系があるということは現実にも
即していますよね。私たちは歌会に歌を出して様々な評価を得たり、
結社の先生から教授されることで体験として学んでいきますが、これ
はAIにとってその再現のようなもの、シミュレーション的なものだ
と思います。
國兼 心がないAIなのに報酬をもらって喜んでいるように見えますね。
睦月 スコアを上げることが命題だからですね。
大塚 良い歌を出力して誉められて気持ちいいとか。
睦月 歌会で票が少ないとムカつきますもんね(笑)。良い点取れると
嬉しいし。
浦川 人間も誉められると、またそれと似たような出力をしますよね。
睦月 人間と似たようなプロセスを踏むと、AIも上手になる、面白
い短歌を出力できるようになっていくのは、興味深いことだと思いま
す。
大塚 睦月さんの興味はそこにありますよね。それをトレースするこ
とによって生身の歌人が良い歌をつくることのモデルになるんじゃな
いかということですよね。
睦月 よい短歌とは何か、それは歌人にとって大きな命題だと思います。
しかし今のところ「これ」という指標はありません。
もっと先の話になりますが、私たちはなぜ短歌を詠ひのか、短歌を
読ひとき、私たちのなかで何か起こっているのかということがAIに
よって明らかにできるのではないかと。
ニューロンという脳神経細胞を模したものがAIのおおもとなのです
が、AIが短歌を読んだり詠んだりするときにニューロンがとこで反
応しているかを調べたり、遂に人間の脳を調べたりして、シミュレー
シ’ン的なこともできると思っています。
大塚 睦月さんの頭に電極を付けて、特定の歌を読んだときどう反応
するのかを調べたり、ですかね。
浦川 実際に短歌を読んでいるときの脳神経活動を計測し、脳内で何
か起こっているかを研究しているチームがあります。一緒に共同研究
をやっている統計数理研究所の持橋大地先生が、実際にMRIの中に
入って短歌を読むという実験をやられています。
持橋先生は、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーの加藤真大さんと
の研究で、朝日歌壇に掲載されている歌の特徴を解析しています。短
歌を一旦数値で表し、それがどういう特徴を持っているのかを解析し
たんです。
朝日歌壇では、家族に関する歌などが詠まれていることが多いことが
わかりました。これは朝日歌壇という歌壇の、選者の評価の傾向も含
めた特徴でもあるかもしれません
國兼 では、会場やオンラインで視聴している皆さんからの質問に答
える形で話を進めていきましょう。
質問①=短歌SNSで『いいね』がつきやすい短歌、たとえば恋愛系
などですが、『いいね』が評価軸とするならA‐が恋愛系の歌ばかり詠
むようになる可能性もあるのでしょうか。か。危険性があるのでしょ
うか。
大塚 可能性はあるけれど危険性があるかどうかは別の問題ですかね。
人間も星董派のまわりでは星董派っぽい歌ができるし評価されますよ
ね。それを危険と捉えるかどうか。
睦月 実際、人間にも「短歌といえば恋愛」というイメージが結構待
たれているところがあります。AIが人間界のデータをベースにして
いる以上、この問題はあると思います。
質問②=短歌全体でデータをためるより作家単位でデータをためるほ
うが、より尖った出力が出てきやすいでしょうか。逆に、短歌全体で
ためてしまうと凡庸になってしまうのでは。
浦川 作家単位でデータをためれば、そうでない場合に比べて、より
その作家らしい出力になります。全体を学習すると凡庸になるかはわ
かりませんが、より平均的な生成になってしまいかねないということ
は考えられそうです。
質問③=報酬モデルについて、「いいね」以外の他の指標を作るやり
方もあるのでしょうか。
睦月 私もその発想でモデル作りにトライしたことがあるんです。
ある年の某新入賞を点数化して。
國兼 点数化とは、どういうことですか?
睦月 新入賞自体が「レース」なので点数が付くじゃないですか。大
賞と次席、候補作というように。
國兼 SNSでは不特定多数の人が「いいね」をつけるけど、新入賞
は選考委員が「いいね」をつけるわけだから、プロの指標ということ
になりますよね。
大塚 プロの、という「偏った」指標、ということですよね。
浦川 そう考えると短歌の良さとは何だろうか、という疑問に返って
きますね。AIに生成させてみると、AIに与えた問いが、そのまま
われわれに返ってくる。 この項つづく
✳️ 社交性の高い高齢者は認知症になるのが遅い(Gigazine)
先進国を中心に少子高齢化が進む昨今では、加齢に伴う認知症患者の
増加が大きな課題となっています。新たな研究では、定期的に家族や
親戚と会ったり旅行に行ったりしている高齢者は、活動の少ない高齢
者と比較して認知症になるのが最大5年遅いことがわかった。
⛑️
Late‐life social activity and subsequent risk of dementia and mild
cognitive impairment - Chen - 2025 - Alzheimer's & Dementia -
Wiley Online Library
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.14316
(Chen et al., Alzheimer's & Dementia: The Journal of the Alzheimer's Association., 2025)
アメリカ・ラッシュ大学の研究チームは、社会的活動と認知症との関
連性を調べるため、高齢者を平均7年間にわたり追跡した縦断研究の
「Rush Memory and Aging Project」のデータを分析した。研究に参
加した高齢者は1923人、研究のスタート時点ではいずれも認知症を
発症しておらず、平均年齢は80歳。
✳️ 老朽下水道管、全国で一斉調査へ 国交省案
国土交通省は3日、埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けて設置した有識
者委員会の会合で、全国の自治体による下水道管一斉調査の実施案を
明らかにした。総延長約49万キロのうち対象となるのは、老朽化など
で陥没が発生しやすく、事故が起きた場合の社会的な影響も大きい管
路とした。国交省は2024年度予算の予備費で調査費を財政支援する方
向で調整している。案によると、陥没が発生しやすいのは、①設置か
ら40年程度が経過②直近の点検で腐食やひび割れが見つかった③周辺
の地盤が弱い―などの条件に該当する管路。社会的な影響の大きさは、
当該の下水道を利用する人口などから判断する。調査方法は、各自治
体が計画を作った上で、マンホールから対象管路の内部を目視やカメ
ラ、ドローンなどで確認。有識者委は陥没事故の再発防止策を検討し
ており、4月ごろに中間報告をまとめる予定。国交省は、これと並行し
て全国一斉調査を進め、事故の続発を防ぎたい考え。
🌠 日本と世界事業想定規模
再エネは、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発表したように、
最も安価な石炭火力よりもコストが低下している。脱炭素文脈におけ
る水素は、CO2フリーの水素であり、メインは再エネ由来のグリーン
水素。脱炭素が進展し、再エネのコスト低減と十分なボリュームが見
えし先に、「水と水素」の事業が展開する。
✅ 世界をリードする日本の水と水素技術
欧州のガスパイプラインを利用し、既存のパイプラインに水素を流し
込む流通網を確立できる。そうした特性もある欧州は2020年7月に
水素戦略を発表。2050年までにグリーン水素への投資額の累計は
1,800億ユーロ~4,700億ユーロ、日本円にして約20兆円から50兆円
の投資額が見込む。(2021年9月2日:https://energy-shift.com/)
出所:NEDO
◾水素の大量消費見据え、国際サプライチェーン構築
マイナス253℃に冷却し、体積が気体の800分の1となった液化水素を
安全かつ大量に長距離海上輸送、サプライチェーン構築を実現。
具体的には、16万m3クラスの液化水素タンクを搭載する液化水素運搬
船や5万m3クラスの陸用液化水素タンクなどの商用化の実現に向け、
大型設備を供給し、2030年30 円/Nm3の水素供給コストの実現を目
指している。
✳️ 広帯域テラヘルツ光でダイオード効果観測
東北大学,静岡大学,大阪大学,神戸大学は,光の一方向透過性を,
将来の高速無線通信への利用が進められているテラヘルツ光において
観測
【発表のポイント】
⚫ テラヘルツ光の一方向透過性(光ダイオード効果)を広い吸収帯を
持つ特殊なマグノン励起において観測。
⚫ 50 テスラ、3 テラヘルツという極限的な磁場と周波数領域での電
子スピン共鳴測定と、「自発的マグノン崩壊」に基づく理論により、
電気磁気効果(交差相関効果)による光の電場と磁場の干渉機構を明
らかにした。
⚫ 本研究はテラヘルツ領域の光通信に利用できる光アイソレータや
光スイッチ実現への扉を開く重要な成果となる。
図1 光スイッチングデバイスの動作概略図およびその原理
✳️ 不透明物質⇔透明をレーザーで超高速に切替
今回の研究では、多谷間物質を最先端のパルスレーザー技術と融合さ
せ、広帯域の波長に対応した光スイッチング材料の創出を目指して研
究を進めた。この成果により、単一波長での光を伝搬する従来の通信
方式よりも、広帯域・多波長での受送信が可能となり、光ファイバの
伝送容量が大幅に拡大し、大容量・高速データ通信への貢献が期待で
きる。しかしながら実用化に向けては、既存の光通信波長帯にマッチ
ングする材料の創出などの課題が残されています。今後は、これまで
の研究成果を基盤とし、新しい材料設計技術を活用して広帯域対応の
多谷間物質を創出し、超高速光スイッチングデバイスの実用を検討し
ていく。これにより、将来的には光通信や量子コンピュータのへの応
用につながることが期待される。
【掲載誌】
雑誌名:Physical Review Applied
論文名:Multivalley optical switching in germanium
掲載URL:https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/Phys
RevApplied.23.024060