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エネルギーと環境 169

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彦根藩二当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
)と兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。

大人のための地学の教室―「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る_1

2011年の東日本大震災によって、日本列島は地震や火山噴火が頻発
する「大地変動の時代」に入った。これから日本列島は大変な局面を
迎える。
マグニチュード(M)9という、1000年に1度の巨大地震東日本大
震災によって日本列島は太平洋側に5・3メートルも引き延ばされ、地
盤が不安定化した。その結果、内陸型の直下型地震が増え、今後30年
ほどは地震がやむことはない。また、日本には111の活火山、東日本
大震災後に直下地震を起こし始めた火山が富士山を含めて20ほどある。

南海トラフ巨大地震が予想されるのが、2035年をピークにしてその前
後の5年だ。その地震が起きると、東日本大震災は死者の数が2万人、
被害総額はおよそ20兆円だった、南海トラフ巨大地震は死者の数が32
万人、被害総額220兆円とされている。

その中で、災害に遭わない、地震や津波、噴火で死なない、かつ財産
も守り賢く生き延びるためには「地学」の知識が必要になる。
「地学=地球科学」は、「地を学ぶ」、つまり地球と宇宙、大気、海
洋について知る、時間的にも空間的にもスケールの大きい学問だ。40億
年前の地球の誕生について考え、地下6000キロメートルの深さで何が
起きているかについて思いをめぐらせる。

私たち人類の生存の基盤である「地球」がどうしてできたのか、物理
学、化学、生物学などの知見も生かしながら探究するダイナミックさ
は、読むものを興奮させる、知ることの喜びや面白さに満ちている。
本書は、京都大学名誉教授・京都大学レジリエンス実践ユニット特任
教授の鎌田浩毅氏を著者にした、最先端で、もっとも分かりやすくて、
もっとも面白い地学入門。
これまでの著者の経験・知見を活かし、本書は授業スタイルの語り口
で、熱意を込めたライブ感を出しながら地学のエッセンスを明快に伝
える一冊となる。

目次
1章 地球は変化し続けている
2章 地球内部のマントル
3章 プレート・テクトニクスとはなにか
4章 マグマのしくみ
5章 巨大噴火のリスク
6章 今後必ず起きる超巨大地震
7章 これからを生きるために大切な「長尺の目」 鎌田浩毅[カマタヒロキ]
京都大学名誉教授、京都大学経営管理大学院客員教授、龍谷大学客員
教授。1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。通産省(
現・経済産業省)を経て、1997年より京都大学人間・環境学研究
科教授。理学博士(東京大学)。専門は火山学、地球科学、科学コミ
ュニケーション。京大の講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める
人気の「京大人気No.1教授」、科学をわかりやすく伝える「科学
の伝道師」。「情熱大陸」「世界一受けたい授業」などテレビ出演も
多数。ユーチューブ「京都大学最終講義」は110万回以上再生。日
本地質学会論文賞受賞



 JP7028393B2  酸素生成用光触媒用助触媒、及び該助触媒を担持した
酸素生成用光触媒、並びに複合体及び該複合体の製造方法

【公開番号】特開2021-154260 アノード電極用触媒及び光アノード
電極用助触媒 技術総合研究所 他
【要約】アノード電極に適用し得る、光触媒用の新たな酸素生成用助
触媒を提供することを課題とする。Fe、Ni、Co、M及び酸素、
を含む光アノード電極用助触媒により課題を解決する。但し前記Mは
K及びMnから選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】Fe、Ni、Co、M及び酸素、を含むアノード電極用
触媒。  但し前記MはK及びMnから選択される。
【請求項2】  前記Fe、Ni及びCoの合計重量に対する前記Mの
重量比が、0.001以上3以下である、請求項1に記載のアノード
電極用触媒。
【請求項3】 請求項1又は2に記載のアノード電極用触媒と光触媒と、
を含む光電極。
【請求項4】 Fe、Ni、Co、M及び酸素、を含む光アノード電極
用助触媒。 但し前記MはK及びMnから選択される。
【請求項5】前記Fe、Ni及びCoの合計重量に対する前記Mの重
量比が、0.001以上3以下である、請求項4に記載の光アノード
電極用助触媒。
【請求項6】Fe、Ni、Co、及びM、を含む非水溶性錯体を基体
上に塗布する塗布ステップ、及び基体上に塗布した非水溶性錯体を加
水分解する加水分解ステップ、を含む、アノード電極用触媒又は光ア
ノード電極用助触媒の製造方法。但し前記MはK及びMnから選択さ
れる。
【請求項7】前記加水分解ステップにおける平均温度は200℃以下
である、請求項6に記載のアノード電極用触媒又は光アノード電極用
助触媒の製造方法。
【詳細説明】(以下抜粋)
000003
表1から明らかなように、Fe、Ni及びCoと、第4の成分として
K又はMnとを選択した場合は、比較例に比べ顕著に大きな電流密度
の値を示した。
(実施例6~9、比較例2)
  Taメタル基板上に成膜したTa3N5光電極を、既報(Angew-
andte  Chemie  International  Edition、第56巻、
17号、4739~4743頁、2017年)に記載の方法に準じて
作製した。
  実施例1~5で用いた1.2重量%濃度の5つの原料溶液を混合し、
ヘキサンにて希釈して元素の組成を表2のように変えた助触媒前駆体
溶液を準備し、15μLを、1×1cm2角のTa3N5光電極へ滴下
した。自然乾燥後、140℃の乾燥機内に0.5時間保持し熱処理を
行った。これらを実施例6~9、及び比較例2の光アノード電極とし
た。
【0040】 インジウム(ニラコ)を用いて機器配線用ジュンフロン
電線(潤工社、AF04A050)と接続し、アラルダイト(ニチバ
ン、AR-R30)で接続部及び裏面を被覆した。画像解析により算
出した助触媒担持Ta3N5光電極の露出面積は0.4~0.6cm2
であった。
【0041】K2HPO4及びKOH(富士フイルム和光純薬)をイ
オン交換水に溶解し、pHメーター(東亜ディーケーケー、GST-
2729C)を用いてpH13に調整した0.5MのK2HPO4電
解質水溶液150mLを調製した。作製した助触媒担持Ta3N5光
電極を電解質水溶液中に入れ、Ag/AgCl参照極(ビー・エー・
エス、RE-1B)、及びPt線対極を用いた三電極方式にて光電気
化学測定を行った。電気化学アナライザー(ビー・エー・エス、AL
Sモデル627E)を用い、-0.9~+0.35V(vs.Ag/
AgCl)の範囲を速度10mV/sにて掃引し、アノード電流を評
価した。ポテンシャルの可逆水素電極(RHE)への補正は次式で行
った:ポテンシャル(vs.RHE)=ポテンシャル(vs.Ag/
AgCl)+0.195V+0.059pH  ラジオメーターを用いて
AM1.5に調整されたソーラーシミュレータ(三永電機製作所、X
ES-40S3)を光源とし、3s毎の光オンオフ切り替えにより光
応答電流を評価した。表2に1.29V-RHEでの電流密度の測定
結果を示した。【0042】
000004
【0043】  表2から明らかなように、Fe、Ni、Coと、第4
の成分としてK及びMnとを選択した場合、比較例に比べ顕著に大き
な電流密度の値を示し、本実施形態の光アノード用助触媒によって、
Ta3N5光電極の性能が向上したことがわかる。

✅特許第7410586号 リン酸カルシウムの結晶、粉末、ブロック材、
多孔体、骨補填材及び口腔用骨補填材並びにリン酸カルシウム結晶の
製造方法、ブロック材の製造方法及び多孔体の製造方法 国立研究開
発法人産業技術総合研究所
【特許請求の範囲】
【請求項1】  リン酸カルシウムの結晶であって、  前記リン酸カルシ
ムはリン酸八カルシウム又は炭酸アパタイトであり、  前記結晶の結晶
構造に含まれる複数のカルシウムイオンの一部が、銀イオン又は銅イ
オンに置換されており、  前記リン酸カルシウムがリン酸八カルシウ
ムである場合は、粉末X線回折法において得られるXRDパターンは
4.7°付近にピークを有し、  前記リン酸カルシウムが炭酸アパタイ
トである場合は、赤外分光法スペクトルは1400~1500cm-
1付近に炭酸基由来の吸収バンドを有していることを特徴とするリン
酸カルシウムの結晶。
【請求項2】  銀原子又は銅原子の含有率が0.01原子%以上13.
00原子%以下である請求項1に記載のリン酸カルシウムの結晶。
【請求項3】  銀原子又は銅原子の含有率が0.10原子%以上10.
00原子%以下である請求項1に記載のリン酸カルシウムの結晶。
【請求項4】  銀原子又は銅原子の含有率が1.00原子%以上7.
00原子%以下である請求項1に記載のリン酸カルシウムの結晶。
【請求項5】銀原子又は銅原子の含有率が2.00原子%以上5.0
0原子%以下である請求項1に記載のリン酸カルシウムの結晶。
【請求項6】請求項1から5のいずれか一項に記載のリン酸カルシウ
ムの結晶を含むことを特徴とする粉末。
【請求項7】請求項1から5のいずれか一項に記載のリン酸カルシウ
ムの結晶を含むことを特徴とするブロック材。
【請求項8】請求項1から5のいずれか一項に記載のリン酸カルシウ
ムの結晶を含むことを特徴とする多孔体。
【請求項9】請求項1から5のいずれか一項に記載のリン酸カルシウ
ムの結晶を含むことを特徴とする骨補填材。
【請求項10】請求項1から5のいずれか一項に記載のリン酸カルシ
ウムの結晶を含むことを特徴とする口腔用骨補填材。
【請求項11】リン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタ
イト、塩素アパタイト及び炭酸アパタイトからなる群より選ばれるい
ずれかひとつのリン酸カルシウムの結晶の製造方法であって、銀含有
組成物又は銅含有組成物を水を含む溶媒に溶解し、銀イオン又は銅イ
オンの錯イオンを含む溶液を調製する工程と、前記溶液にリン酸、水
素及びカルシウムを含有する化合物を添加し、リン酸八カルシウムの
結晶を形成させる工程と、を備え、前記リン酸カルシウムの結晶の構
造に含まれる複数のカルシウムイオンの一部が銀イオン又は銅イオン
に置換されていることを特徴とするリン酸カルシウムの結晶の製造方
法。
【請求項12】前記リン酸カルシウムは、リン酸八カルシウムである
請求項11に記載のリン酸カルシウムの結晶の製造方法。
【請求項13】前記リン酸カルシウムは、水酸アパタイトであり、相
変換溶液中での加水分解又は水熱反応により、前記リン酸八カルシウ
ムの結晶を、固相状態を維持したまま水酸アパタイトの結晶に相変換
する工程を更に備える請求項11に記載のリン酸カルシウムの結晶の
製造方法。
【請求項14】前記リン酸カルシウムは、炭酸アパタイトであり、相
変換溶液中での炭酸処理により、前記リン酸八カルシウムの結晶を、
固相状態を維持したまま炭酸アパタイトの結晶に相変換する工程を更
に備える請求項11に記載のリン酸カルシウムの結晶の製造方法。
【請求項15】前記溶液を調製する工程における前記溶液中の銀イオ
ン又は銅イオンの濃度が0.1mmol/Lから200mmol/L
の範囲内である請求項11から14のいずれか一項に記載のリン酸カ
ルシウムの結晶の製造方法。
【請求項16】前記溶液を調製する工程における前記溶液中の銀イオ
ン又は銅イオンの濃度が2.5mmol/Lから30mmol/Lの
範囲内である請求項11から14のいずれか一項に記載のリン酸カル
シウムの結晶の製造方法。
【請求項17】リン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタ
イト、塩素アパタイト及び炭酸アパタイトからなる群より選ばれるい
ずれかひとつのリン酸カルシウムの結晶を含むブロック材の製造方法
であって、
  カルシウム及びリン酸の少なくとも一方を含有するセラミックスか
らなる固体組成物を、前記カルシウム及びリン酸の他方並びに銀の錯
イオン又は銅の錯イオンを含有する溶液に浸漬し、前記固体組成物の
一部をリン酸八カルシウムの結晶に変換しブロック材を得る工程を備
え、前記リン酸八カルシウムの結晶の構造に含まれる複数のカルシウ
ムイオンの一部が銀イオン又は銅イオンに置換されていることを特徴
とするブロック材の製造方法。
【請求項18】前記リン酸カルシウムは、リン酸八カルシウムである
請求項17に記載のブロック材の製造方法。
【請求項19】前記リン酸カルシウムは、水酸アパタイトであり、 前
記ブロック材を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での加水分解又
は水熱反応により、前記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維
持したまま水酸アパタイトの結晶に相変換する工程を更に備える請求
項17に記載のブロック材の製造方法。
【請求項20】前記リン酸カルシウムは、炭酸アパタイトであり、前
記ブロック材を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での炭酸処理に
より、前記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維持したまま炭
酸アパタイトの結晶に相変換する工程を更に備える請求項17に記載
のブロック材の製造方法。
【請求項21】記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度が0.
1mmol/Lから200mmol/Lの範囲内である請求項17か
ら20のいずれか一項に記載のブロック材の製造方法。
【請求項22】前記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度が2.
5mmol/Lから30mmol/Lの範囲内である請求項17から
20のいずれか一項に記載のブロック材の製造方法。
【請求項23】リン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタ
イト、塩素アパタイト及び炭酸アパタイトからなる群より選ばれるい
ずれかひとつのリン酸カルシウムの結晶を含む多孔体の製造方法であ
って、カルシウム及びリン酸の少なくとも一方を含有するセラミック
スからなる固体組成物を、前記カルシウム及びリン酸の他方並びに銀
の錯イオン又は銅の錯イオンを含有する溶液に浸漬し、前記固体組成
物の一部をリン酸八カルシウムの結晶に変換し多孔体を得る工程を備
え、前記リン酸八カルシウムの結晶の構造に含まれる複数のカルシウ
ムイオンの一部が銀イオン又は銅イオンに置換されていることを特徴
とする多孔体の製造方法。
【請求項24】前記リン酸カルシウムは、リン酸八カルシウムである
請求項23に記載の多孔体の製造方法。
【請求項25】前記リン酸カルシウムは、水酸アパタイトであり、前
記多孔体を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での加水分解又は水
熱反応により、前記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維持し
たまま水酸アパタイトの結晶に相変換する工程を更に備える請求項
23に記載の多孔体の製造方法。
【請求項26】前記リン酸カルシウムは、炭酸アパタイトであり、前
記多孔体を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での炭酸処理により、
前記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維持したまま炭酸アパ
タイトの結晶に相変換する工程を更に備える請求項23に記載の多孔
体の製造方法。
【請求項27】前記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度が0.
1mmol/Lから200mmol/Lの範囲内である請求項23か
ら26のいずれか一項に記載の多孔体の製造方法。
【請求項28】前記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度が2.
5mmol/Lから30mmol/Lの範囲内である請求項23から
26のいずれか一項に記載の多孔体の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】
  本発明は、医療用材料及びその製造方法に関する。より詳しくは、
医療分野又は医療に関連する分野で、骨・歯などの組織再生に利用可
能な、抗菌性等を付与したリン酸カルシウムの結晶、粉末、ブロック
材、多孔体、骨補填材及び口腔用骨補填材並びにリン酸カルシウム結
晶の製造方法、ブロック材の製造方法及び多孔体の製造方法に関する
ものである。
  本願は、2020年2月4日に、日本に出願された特願2020-
017459号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】【0002】
  リン酸カルシウムからなる材料は、口腔外科、整形外科等で使用さ
れる人工骨補填材の材料として使用されている。リン酸カルシウムか
らなる材料の例としては、リン酸水素カルシウム無水和物(DCPA、
CaHPO4)、リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD、CaH
PO4・2H2O)、リン酸八カルシウム(OCP、Ca8(HPO4
)2(PO4)4・5H2O)、α-リン酸三カルシウム(α-TCP、
Ca3(PO4)2)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP、Ca3
(PO4)2)、ヒドロキシアパタイト(HAp、Ca10(PO4)
6(OH)2)、リン酸四カルシウム(TTCP、Ca4(PO4)2
O)等が挙げられる。これらリン酸カルシウムは、異なる性質(成形
のしやすさ、骨置換性等)を備えており、用途に応じて適宜選択され
て使用されている。
【0003】HApは、最も広く利用されているリン酸カルシウムで
ある。HApは中性付近のpHにおいて溶解度が最も低く、生体内で
最も溶けにくい性質を有する。
  HApに類似する材料としては、HApの化学組成式に含まれる二
つの水酸基が、フッ素原子に置換されたフッ素アパタイト(FAp、
Ca10(PO4)6F2)及びこれらが塩素原子に置換された塩化ア
パタイト(ClAp、Ca10(PO4)6Cl2)がある。
  また、HApのリン酸基等(リン酸基、水酸基、酸素、フッ素及び
塩素)の一部が、炭酸基に置換された炭酸アパタイト(CO3Ap、
Ca10-a(PO4)6-b(CO3)c(OH)2-d)がある。炭
酸アパタイトに含まれる炭酸の含有量が増加すると、その溶解度が増
大することが知られている。
【0004】HAp及びCO3Apは後述するOCPと比較して、そ
の結晶構造が安定している。そのため、含有するカルシウムイオンの
一部を、直接的に他の陽イオンに置換することは容易ではなかった。
そのため、例えば、他の陽イオンをその結晶構造中に置換挿入するこ
とによって、抗菌性等の新たな機能をHAp、CO3Ap等に付与す
ることは困難であった。
【0005】一方、OCPは、HAp、α-TCP、β-TCPより
も高い骨置換性(材料が骨に置換される性質)、生体親和性を持つ優れ
た骨置換型の骨補填材の候補材料である。しかし、OCPには、OC
P粉末の焼結による成型が困難であるという問題点があった。
  また、OCPにおいても、その結晶構造中のカルシウムイオンの一
部を効率良く、他の陽イオン、特に溶解性の低い塩を形成する陽イオ
ン、に置換する方法は確立していなかった。
【0006】OCPについてより詳しく述べると、非特許文献1は、
焼結によらずに、解離沈殿反応によって、硫酸カルシウム1/2水和
物(CSH)からなる前駆体ブロックから、OCPブロックを調製す
る方法を開示している。
  また、非特許文献2には、リン酸水素カルシウム二水和物(DPC
D)からOCPを形成する際に、ナトリウムイオンが適度に取り込ま
れるとOCP形成が促進され、過度に取り込まれるとOCPの安定性
が低下することを示唆する実験結果が開示されている。
【0007】骨補填材を主に用いる整形外科、口腔外科領域において
は、術野の感染、すなわち術後感染が深刻な合併症として知られてい
る。骨補填材自体は、感染に対して無力であるため、一度感染すると
当該部位を除去する以外の方法は無く、予後不良となる。当該疾患は、
全術式において凡そ数%の確率で発生する。
【0008】術後の感染症発生の抑制の観点からは、骨補填材が抗菌
性を長期間に亘り発揮することが望ましい。例えば、表面をHApで
コーティングしたチタン製の人工関節において、このHApコーティ
ングに抗菌物質を含ませることで、骨補填材に抗菌性を付与する技術
が知られている(非特許文献3)。
  しかし、骨補填材、特に骨置換型骨補填材に抗菌性を付与した例は
ない上、術後感染は術後数年後に発症する例もあることから、持続的
な抗菌性を付与することが求められる。
【0009】口腔外科分野においては、審美性の観点から、骨補填材
が術後に変色することは望ましくない。骨補填材への抗菌性の付与に
使用される抗菌物質の一例として銀が挙げられる。銀塩が沈殿し骨補
填材表面に付着した場合、その表面は徐々に黒系統の色彩を帯び、審
美性を損なわれる問題が生じる。
【先行技術文献】【0010】
【非特許文献1】Y. Sugiura et al. “Fabrication of octacalcium phosp-
hate block through a dissolution-preparation reaction using a calcium
sulphate hemihydrate block as a precursor” Journal of Materials
Science: Materials in Medicine 2018, 29: 151
【非特許文献2】Y. Sugiura and Y. Makita “Sodium induces octaca-
lcium phosphate formation and enhances its layer structure by
affecting the hydrous layer phosphate” Crystal Growth & Design
2018, 18: 6165
【非特許文献3】Akiyama T et al. “Silver oxide-containing hydrox-
yapatite coating has in vivo antibacterial activity in the rat tibia” J
ournal of Orthopaedic Research 2013, 31: 1195

【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0011】
  本発明は、上述した実情に鑑み、リン酸カルシウム結晶構造中に担
持される銀イオン及び/又は銅イオンを挿入し、抗菌性を発揮するリ
ン酸カルシウムの結晶、粉末、ブロック材、多孔体、骨補填材及び口
腔用骨補填材並びにリン酸カルシウム結晶の製造方法、ブロック材の
製造方法及び多孔体の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】【0012】
  本発明者は、上記課題を解決するための手段について鋭意研究を重
ね、以下に示す態様により、上記課題を解決することができること
を見出した。【0013】
  (1)第1態様に係るリン酸カルシウムの結晶は、リン酸八カルシ
ウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト及び炭酸
アパタイトからなる群より選ばれるいずれかひとつのリン酸カルシウ
ムの結晶であって、前記結晶の結晶構造に含まれる複数のカルシウム
イオンの一部が、銀イオン又は銅イオンに置換されていることを特徴
とする。【0014】
  (2)前記第1態様に係るリン酸カルシウムの結晶において、前記
リン酸カルシウムがリン酸八カルシウムであってもよい。【0015】
  (3)前記第1態様に係るリン酸カルシウムの結晶において、前記
リン酸カルシウムが水酸アパタイトであってもよい。
【0016】
  (4)前記第1態様に係るリン酸カルシウムの結晶において、前記
リン酸カルシウムが炭酸アパタイトであってもよい。
【0017】
  (5)前記(1)から(4)のいずれかに係るリン酸カルシウムの
結晶において、銀原子又は銅原子の含有率が0.01原子%以上13.
00原子%以下であってもよい。【0018】
  (6)前記(1)から(4)のいずれかに係るリン酸カルシウムの
結晶において、銀原子又は銅原子の含有率が0.10原子%以上10.
00原子%以下であってもよい。【0019】
  (7)前記(1)から(4)のいずれかに係るリン酸カルシウムの
結晶において、銀原子又は銅原子の含有率が1.00原子%以上
7.00原子%以下であってもよい。【0020】
  (8)前記(1)から(4)のいずれかに係るリン酸カルシウムの
結晶において、銀原子又は銅原子の含有率が2.00原子%以上
5.00原子%以下であってもよい。【0021】
  (9)第2態様に係る粉末は、前記(1)から(8)のいずれかに
係るリン酸カルシウムの結晶を含むことを特徴とする。【0022】
  (10)第3態様に係るブロック材は、前記(1)から(8)のい
ずれかに係るリン酸カルシウムの結晶を含むことを特徴とする。
  (11)第4態様に係る多孔体は、前記(1)から(8)のいずれ
かに係るリン酸カルシウムの結晶を含むことを特徴とする。
  (12)第5態様に係る骨補填材は、前記(1)から(8)のいず
れかに係るリン酸カルシウムの結晶を含むことを特徴とする。
  (13)第6態様に係る口腔用骨補填材は、前記(1)から(8)
のいずれかに係るリン酸カルシウムの結晶を含むことを特徴とする。
  (14)第7態様に係るリン酸カルシウムの結晶の製造方法は、リ
ン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタ
イト及び炭酸アパタイトからなる群より選ばれるいずれかひとつのリ
ン酸カルシウムの結晶の製造方法であって、銀含有組成物又は銅含有
組成物を水を含む溶媒に溶解し、銀イオン又は銅イオンの錯イオンを
含む溶液を調製する工程と、前記溶液にリン酸、水素及びカルシウム
を含有する化合物を添加し、リン酸八カルシウムの結晶を形成させる
工程と、を備え、前記リン酸カルシウムの結晶の構造に含まれる複数
のカルシウムイオンの一部が銀イオン又は銅イオンに置換されている
ことを特徴とする【0027】
  (15)前記(14)に係るリン酸カルシウムの結晶の製造方法にお
いて、前記リン酸カルシウムは、リン酸八カルシウムであってもよい。
  (16)前記(14)に係るリン酸カルシウムの結晶の製造方法に
おいて、前記リン酸カルシウムは、水酸アパタイトであってもよく、
前記製造方法は、相変換溶液中での加水分解又は水熱反応により、前
記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維持したまま水酸アパタ
イトの結晶に相変換する工程を更に備えてもよい。【0029】
  (17)前記(14)に係るリン酸カルシウムの結晶の製造方法に
おいて、前記リン酸カルシウムは、炭酸アパタイトであってもよく、
前記製造方法は、相変換溶液中での炭酸処理により、前記リン酸八カ
ルシウムの結晶を、固相状態を維持したまま炭酸アパタイトの結晶に
相変換する工程を更に備えてもよい。【0030】
  (18)前記(14)から(17)のいずれかに係るリン酸カルシ
ウムの結晶の製造方法において、前記溶液を調製する工程における前
記溶液中の銀イオン又は銅イオンの濃度が0.1mmol/Lから
200mmol/Lの範囲内であってもよい。【0031】
  (19)前記(14)から(17)のいずれかに係るリン酸カルシ
ウムの結晶の製造方法において、前記溶液を調製する工程における前
記溶液中の銀イオン又は銅イオンの濃度が2.5mmol/Lから
30mmol/Lの範囲内であってもよい。【0032】
  (20)第8態様に係るブロック材の製造方法は、リン酸八カルシ
ウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト及び炭酸
アパタイトからなる群より選ばれるいずれかひとつのリン酸カルシウ
ムの結晶を含むブロック材の製造方法であって、カルシウム及びリン
酸の少なくとも一方を含有するセラミックスからなる固体組成物を、
前記カルシウム及びリン酸の他方並びに銀イオン若しくは銀の錯イオ
ン又は銅イオン若しくは銅の錯イオンを含有する溶液に浸漬し、前記
固体組成物の一部をリン酸八カルシウムの結晶に変換しブロック材を
得る工程を備え、前記リン酸八カルシウムの結晶の構造に含まれる複
数のカルシウムイオンの一部が銀イオン又は銅イオンに置換されてい
ることを特徴とする。【0033】
  (21)前記(20)に係るブロック材の製造方法において、前記
リン酸カルシウムは、リン酸八カルシウムであってもよい。【0034】
  (22)前記(20)に係るブロック材の製造方法において、前記
リン酸カルシウムは、水酸アパタイトであってもよく、前記製造方法
は、前記ブロック材を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での加水
分解又は水熱反応により、前記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状
態を維持したまま水酸アパタイトの結晶に相変換する工程を更に備え
てもよい。【0035】
  (23)前記(20)に係るブロック材の製造方法において、前記
リン酸カルシウムは、炭酸アパタイトであってもよく、前記ブロック
材を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での炭酸処理により、前記
リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維持したまま炭酸アパタイ
トの結晶に相変換する工程を更に備えてもよい。【0036】
  (24)前記(20)から(23)のいずれかに係るブロック材の
製造方法において、前記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度
が0.1mmol/Lから200mmol/Lの範囲内であってもよい。【0037】
  (25)前記(20)から(23)のいずれかに係るブロック材の
製造方法において、前記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度
が0.1mmol/Lから200mmol/Lの範囲内であってもよい。
  (26)第9態様に係る多孔体の製造方法は、リン酸八カルシウム、
水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト及び炭酸アパタ
イトからなる群より選ばれるいずれかひとつのリン酸カルシウムの結
晶を含む多孔体の製造方法であって、カルシウム及びリン酸の少なく
とも一方を含有するセラミックスからなる固体組成物を、前記カルシ
ウム及びリン酸の他方並びに銀イオン若しくは銀の錯イオン又は銅イ
オン若しくは銅の錯イオンを含有する溶液に浸漬し、前記固体組成物
の一部をリン酸八カルシウムの結晶に変換し多孔体を得る工程を備え、
前記リン酸八カルシウムの結晶の構造に含まれる複数のカルシウムイ
オンの一部が銀イオン又は銅イオンに置換されていることを特徴とする。
  (27)前記(26)に係る多孔体の製造方法において、前記リン
酸カルシウムは、リン酸八カルシウムであってもよい。【0040】
  (28)前記(26)に係る多孔体の製造方法において、前記リン
酸カルシウムは、水酸アパタイトであってもよく、前記製造方法は、
前記多孔体を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での加水分解又は
水熱反応により、前記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維持
したまま水酸アパタイトの結晶に相変換する工程を更に備えてもよい。
  (29)前記(26)に係る多孔体の製造方法において、前記リン
酸カルシウムは、炭酸アパタイトであってもよく、前記製造法は、前
記ブロック材を、相変換溶液に浸漬し、相変換溶液中での炭酸処理に
より、前記リン酸八カルシウムの結晶を、固相状態を維持したまま炭
酸アパタイトの結晶に相変換する工程を更に備えてもよい。【0042】
  (30)前記(26)から(29)のいずれかに係る多孔体の製造
方法において、前記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度が
0.1mmol/Lから200mmol/Lの範囲内であってもよい。
  (31)前記(26)から(29)のいずれかに係る多孔体の製造
方法において、前記溶液に含まれる銀イオン又は銅イオンの濃度が
2.5mmol/Lから30mmol/Lの範囲内であってもよい。
【発明の効果】【0044】
  本発明の態様に係るリン酸カルシウムの結晶、粉末、ブロック材、
多孔体、骨補填材及び口腔用骨補填材によれば、骨補填材に対して抗
菌性を付与することができる。
  また、本発明の態様に係るリン酸カルシウムの結晶、粉末、ブロッ
ク材、多孔体、骨補填材及び口腔用骨補填材の製造方法によれば、
抗菌性を備える骨補填材を製造することができる。
  リン酸カルシウムがOCPであった場合は、骨補填材に付与される
抗菌性を長期に亘って保持することができる。
【図面の簡単な説明】【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係るOCPの結晶の構造の一例の模
式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るHApの結晶の構造の一例の模
式図である。
【図3】本発明の第7実施形態に係るリン酸カルシウムの結晶の製造
方法の工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第8実施形態に係るリン酸カルシウムのブロック材
の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第9実施形態に係るリン酸カルシウムの多孔体の製
造方法の工程を示すフローチャートである。
【図6】硝酸銀濃度とAgを担持するOCPの粉末の色を数値化して
示した表である。
【図7】Agを担持するOCPの粉末の低角部のXRDパターンを示
すグラフである。
【図8】Agを担持するOCPの粉末のFT-IRスペクトルを示す
グラフである。垂直方向に引かれた点線は比較のための補助線であり、
916cm-1及び864cm-1に引かれた二本の補助線は、アルカ
リ金属を含まない試料でバンドが検出された波数を示し、857cm-1
に引かれた一本の点線は、OCPの粉末を含有しない銀イオン含有溶
液を試料とした場合に検出されたバンドの波数を示す。
【図9】Ag担持OCPの粉末の処理時の硝酸銀溶液の濃度とOCP
の粉末中の銀濃度の関係を示すグラフである。
【図10】Agを担持するOCP、HAp及びCO3Apの粉末のX
RDパターンを示すグラフである。
【図11】Agを担持するOCP、HAp及びCO3Apの粉末のF
T-IRスペクトルを示すグラフである。
【図12】Ag担持HAp及びCO3Apの粉末の処理時の炭酸アン
モニウム溶液の濃度とHAp及びCO3Apの粉末中のAg度の関係
を示すグラフである。
【図13】Ag担持HAp及びCO3Apの粉末の処理時の硝酸銀溶
液の濃度とOCPの粉末中の銀濃度の関係を示すグラフである。
【図14】硝酸銀と硝酸ナトリウムの濃度の和とOCP層構造の発達
との関係を表したグラフである。
【図15】Na濃度とOCPの粉末中のAg濃度の関係を表したグラ
フである。
【図16】Ag担持OCP系ブロック材の写真である。
【図17】Ag担持のOCP系ブロック材のXRDパターンを示す
グラフである。
【図18】Ag担持OCP系多孔体の写真である。
【図19】Ag担持のOCP系多孔体のXRDパターンを示すグラフ。
【図20】Ag担持のOSP系粉末を調製する際に使用した硝酸銀の
濃度と、調製されたOSP系粉末の抗菌活性との関係を示すグラフ。
【図21】Ag担持のOSP系粉末を作用させたS.mutans培
養液を寒天培地上に塗抹後、コロニーを形成させた状態を示す写真。
【図22】Ag担持OCP粉末上に付着したS.mutansの所見
を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】【0046】
  以下、本発明を実施するための形態について、図を適宜参照しなが
ら詳細に説明する。【0047】(第1実施形態)     
                                                                                     この項つづく




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