彦根藩二当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
)と兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。
【季語と短歌:3月8日】
雪消えて三方よしや鍬入れる 宇
高山 宇(赤鬼)
🪄愁い多き昨今、発奮し前進。経験なき情況に喝を入れ、若いころ
の「気合」を思いだす。
著者:浦川 通/出版社:講談社 装丁:新書(218ページ) 発売日:
2024-06-20 ISBN-10:4065360129 ISBN-13:978-4065360125
✅『AIは短歌をどう詠むか』(講談社) ALLREVIEWS④
🏈 なぜ、われわれはAIと歌を詠むのか
國兼 さて、お話はいねばここからが本題です。なぜわれわれはAI
と歌を詠むのか。イベントの告知文に、「AIとヒトの関係性」[A
I文学論」を新段階にアップデートする画期的鼎談』とあります。
これまでは「AIがヒトより上手に短歌を詠む時代が来るのではな
いか」という危機感とともに話られることが多かったのですが、その
議論を、次の段階に進められないかというのが今回の鼎談のテーマで
す。
大塚 僕だけではなく、今回集まった三人は若干、これまでのAIと
短歌の議論に飽きているところがあります。「思想対立」で終わらせ
るのではなく、エンジニアとしての視点を持つ睦月さんと浦川さんと
AIの技術的な話もできるのが今日のポイントかと思います。
具体的に浦川さんがどのような論文を書かれているのかなど、もう
少し具体的な話ができると面白いと思います。
睦月 AIが短歌をつくるなんて、というとそこで終わってしまいま
す。たしかに実際にはそこの部分でも語るべきことは残されているん
ですが、ここでまずは「AIは短歌を詠めるのだ」という地点に立ち、
AIやデータサイエンスの領域で、まだまだ短歌に出来ることがたく
さんある、役に立つこがあるということ、その可能性について話した
いと思っています。
浦川 その辺の紹介から口火を切りましょう。東北大学自然言語処理
研究グループ坂口・乾研究室の羽椎田賢和さんという方が書いた「RL
HFを用いた『面白い』短歌の自動生成の試み」という論文があり、
私も共著として関わっています。RLZ4(Reinfbrcement
Learninこ7rom Human Feed‐back)とはChatGPTなどでも使
われている、モデルに対して人によるフィードバ″クを与えてより良
い出力を得る、という手法です。それを短歌の生成に採り入れていま
す。羽根田氏はネットの短歌投稿サイト「Utakata(httPs://utakat-
ankajp)」に投稿された歌の中で、「いいね」数が5以上ある短歌をA
Iに学習させました。
そこからその短歌がどれくらい良いのかを判定するスコアリングを
つくりました。たとえば実際の歌人による短歌を人力すれば高いスコ
アになるし、短歌っぽくないものを入力したら低いスコアになる。こ
れをAIにフィードバックとして与え、さらに言語モデルを学習さ
せました。
単純にAIに「短歌を詠んでください」と指示すると「シーチキン
の油で揚げるスナックをたまには食べたいツナ缶」というような歌が
できるんですが、さらにフィードバックを与えると[ねこたちはキャ
ットタワーのてっぺんで風に揺れてる木枯らしの庭」というようなよ
り短歌らしいものが生成されました(スライド⑩・RLHFを用いた
:参照)。
睦月 短歌を出力するAIの他に、報酬モデルと呼ばれる、短歌を評
価するAIを立てる感じですね。AIが出力した短歌を報酬モデルに
読ませ、これは良い短歌、よくない短歌とフィードバ″クさせていく
と、出力モデルの性能が上がっていくと。
國兼 AIが、評価をフィードバックし合う?
大塚 結社の中での先輩とのやりとり、選歌とか添削を擬似的にやっ
ている感じです。
浦川 短歌SNSで「いいね」が集まった歌が、本当に良い歌かどう
かという課題にも繋がってくると思います。
國兼 お互いに、相手に報酬をやり合ったりすることは可能なんです
か? それこそ歌会みたいな。
浦川 俳句の生成ではかつてやられたりしていましたね。
睦月 そう考えると、評飯蛸や報酬体系があるということは現実にも
即していますよね。私たちは歌会に歌を出して様々な評価を得たり、
結社の先生から教授されることで体験として学んでいきますが、これ
はAIにとってその再現のようなもの、シミュレーション的なものだ
と思います。
大塚 睦月さんの頭に電極を付けて、特定の歌を読んだときとう反応
するのかを調べたり、ですかね。
浦川 実際に短歌を読んでいるときの脳神経活動を計測し、脳内で何
か起こっているかを研究しているチームがあります。一緒に共同研究
をやっている統計数理研究所の詩稿大地先生が、実際にMRIの中に
入って短歌を読むという実験をやられています。
詩稿先生は、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーの加藤真人さ
んとの研究で、朝日歌壇に掲載されている歌の特徴を解析しています。
短歌か工員数値で表し、それがどういう特徴を詩っているのかを解析
したんです。
朝日歌壇では、家族に関する歌なとが詠まれていることが多いことが
わかりました。これは朝日歌壇という歌壇の、選者の評価の傾向も含
めた特徴でもあるかもしれません。
國兼 では、会場やオンラインで視聴している皆さんからの質問に答
える形で話を進めていきましょう。
質問①=短歌SNSで『いいね』がつきやすい短歌、たとえば恋愛系
などですが、『いいね』が評価軸とするならAIが恋愛系の歌ばかり詠
むようになる可能性もあるのでしょうか。危険性があるのでしょうか。
大塚 可能性はあるけれど危険性があるかどうかは別の問題ですかね。
人間も星菓派のまわりでは星董派っぽい歌ができるし評価されますよ
ね。それを危険と捉えるかどうか。
睦月 実際、人間にも「短歌といえば恋愛」というイメージが結構持
たれているところがあります。AIが人間界のデータをペースにして
いる以上、この問題はあると思います。
質問②=短歌全体でデータをためるより作家単位でデータをためるほ
うが、より尖った出力が出てきやすいでしょうか。逆に、短歌全体で
ためてしまうと凡庸になってしまうのでは。
浦川 作家単位でデータをためれば、そうでない場合に比べて、より
その作家らしい出力になります。全体を学習すると凡庸になるかはわ
かりませんが、より平均的な生成になってしまいかねないということ
は考えられそうです。ある年の某新入賞を点数化して。
國兼 点数化とは、どういうことですか?
睦月 新入賞自体が「レース」なので点数が付くじゃないですか。大
賞と次席、候補作というように。
國兼 SNSでは不特定多数の人が「いいね」をつけるけど、新人質
は選考委員が[いいね」をつけるわけだから、プロの指標ということ
になりますよね。
大塚 プロの、という「偏った」指標、ということですよね。
浦川 そう考えると短歌の良さとは何だろうか、という疑問に返って
きますね。AIに生成させてみると、AIに与えた問いが、そのまま
われわれに返ってくる。
質問③H報酬モデルについて、「いいね」以外の他の指標を作るやり
方もあるのでしょうか。
睦月 私もその発想でモデル作りにトライしたことがあるん-
質問④=短歌一首ごとの面白さは数値化などを通じて向上していきそ
うですが、一つのまとまりである連作として構成していくことは、将
来的に可能でしょうか。
睦月 連作の話はひずかしいですよね。AIが連作を作ることは可能
だと思います。一番の問題は、私たち歌人自身が連作の良さとは何か、
ということを言語化できていない点です。現時点で、これは良い連作
だとAIに教えるデータかおりません。
大塚 俳句だと水原秋桜子的連作とか、山口誓子的連作とか、吉岡禅
寺洞的連作とか百年前の俳人たちがやりはじめて、なんとなく俳句の
表現史的に、どの傾向か判断できうるんですけと、短歌はそういう感
じではないんですかね。いろいろな人が同時発生的にやっているのか。
國兼 連作はストーリーになっていればいいというものではないです
からね。
睦月 大塚さんがおっしやったように、短歌は何派とかがなくて、語
られ方の一例として物語性とか時事性とか、そういう分類が曖昧にあ
るって感じですね。
大塚 別途、連作論に特化した勉強会をしたいです(笑)。
國兼 AIと一緒に連作の良さを分析することはできるのでしょうか。
浦川 連作についての勉強会を重ねていくと、学習データの蓄積にな
るかもしれません。
睦月 やりたいですね。連作については昔から関心があって、連作論
とかも書いているんです。私か考える連作の良さの一例としては、こ
の一首の隣にこの一首がある、その連続で、一首単位で読ひだけでは
シナジーが起きるということが良い連作だと思います。ただこれらは
私の主観なので、データ的にもっと読み込ませたら連う視座が得られ
ると思います。
質問⑤=私(質問者)はメタバース空間内で短歌を軸にした仮想世界
をつくっています。短歌は自分で作りますが、仮想世界で使用する画
像はAIで作成しています。短歌にとどまらない表現にAIは極めて強
力です。
質問⑥=浦川さんが新書に書かれていた「AIとの付き合い方」という
項目を読んで、z一コtendo Switchのゲーム、『大乱闘
スマッシュブラザーズSPEC-AL』の機能を思い出しました。チ
ップの入ったフィギュア(sヨーーo)をセットし、コンピューター
と試合を行うと、その過程を記録した自分と似た動きをするCPUが
できるようになっています。このamiiboと自分とでタッグを組んで出
場できる大会もあるそうです。歌人、俳人もこのamiiboのように自分
と自分の分身となるA-とタッグを組んで活動していくことが普通に
なっていくのでしょうか。
睦月 自分に似たAIとタッグで歌をつくることが可能かという質問
ですが、私は可能性があると思います。現時点のAIに詠ませるかと
いうと別の詣ですが。今回、私の上の句を提供しましたけど、私の歌
のほうが良いじゃないですか(笑)。でも将来的にAIは私の作風、
私の短歌観をよく勉強して、さらに自分の想定をも超えるようになっ
てくると思うんです。そうなったとき、私の態度は変わるかもしれま
せ
國兼 心がないAIなのに報酬をもらって喜んでいるように見えます
ね。
睦月 スコアを上げることが命題だからですね。
大塚 良い歌を出力して誉められて気持ちいいとか。
睦月 歌会で票が少ないとムカつきますもんね(笑)。良い点取れる
と嬉しいし。
浦川 人間も誉められると、またそれと似たような出力をしますよね。
睦月 人問と但たようなプロセスを踏むと、AIも上手になる、面白
い短歌を出力できるようになっていくのは、興味深いことだと思いま
す。
大塚 睦月さんの興味はそこにありますよね。それをトレースするこ
とによって生身の歌人が良い歌をつくることのモデルになるんじゃな
いかということですよね。
睦月 よい短歌とは何か、それは歌人にとって大きな命題だと思いま
す。しかし今のところ「これ」という指標はありません。
もっと先の話になりますが、私たちはなぜ短歌を詠ひのか、短歌を
読むとき、私たちのなかで何か起こっているのかということがAIに
よって明らかにできるのではないかと。
ニューロンという脳神経細胞を模したものがAIのおおもとなのです
が、AIが短歌を読んだり詠んだりするときにニューロンがどこで反
応しているかを調べたり、逆に人間の脳を調べたりして、シミュレー
ション的なこともできると思っています。
質問④=短歌一首ごとの面白さは数値化などを
通じて向上していきそうですが、一つのまとまりである連作として構
成していくことは、将来的に可能でしょうか。
睦月 連作の話はむずかしいですよね。AIが連作を作ることは可能
だと思います。一番の問題は、私たち歌人自身が連作の良さとは何か、
ということを言語化できていない点です。現時点で、これは良い連作
だとAIに教えるデータかおりません。
大塚 俳句だと水原秋桜子的連作とか、山口誓子的連作とか、吉岡禅
寺洞的連作とか百年前の俳人たちがやりはじめて、なんとなく俳句の
表現史的に、どの傾向か判断できうるんですけど、短歌はそういう感
じではないんですかね。いろいろな人が同時発生的にやっているのか。
國兼 連作はストーリーになっていればいいというものではないです
からね。
睦月 大塚さんがおっしゃったように、短歌は何派とかがなくて、語
られ方の一例として物語性とか時事性とか、そういう分類が曖昧にめ
ろって感じですね。
大塚 別途、連作論に特化した勉強会をしたいです(笑)。
國兼 AIと一緒に連作の良さを分析することはできるのでしょうか。
浦川 連作についての勉強会を重ねていくと、学習デーメの蓄積にな
るかもしれません。
睦月 やりたいですね。連作については昔から関心があって、連作論
とかも書いているんです。私が考える連作の良さの一例としては、こ
の一首の隣にこの一首がある、その連続で、一首単位で読むだけでは
ないシナジーが起きるということが良い連作だと思います。ただこれ
らは私の主観なので、データ的にもっと読み込ませたら連う視座が得
られると思います。
質問⑤=私(質問者)はメタバース空間内で短歌を軸にした仮想世界
をつくっています。短歌は自分で作りますが、仮想世界で使用する画
像はAIで作成しています。短歌にとどまらない表現にA‐は極めて強
力です。
國兼 これは質問というより質重な情報ですね。
浦川 この方は自分で短歌をつくり、その短歌を基に仮想世界をつく
っているのだと思うんですが、こういう使い方という創作ができるっ
て面白いですね。
大塚 メタバースを推進する人は結構、物心二元論的な立場で発言す
ることが多い気がします。物理的な制約たる身体と心とを分けて、新
しい空間に身体を持って行くとか、また新しい身体を得るというか。
ある意味、メタバース技術の思想の根底には、物心二元論というかな
り古典的な考え方がベースにあると思います。これは面白い因果です。
質問⑥=浦川さんが新書に書かれていた「AIとの付き合い方」という
項目を読んで、Nintend Switchのゲーム、『大乱闘スマッシュブラ
ザーズSPEC-AL』の機能を思い出しました。チップの入ったフ
ィギュア(amiibo)をセットし、コンピューターと試合を行うと、そ
の過程を記録した自分と似た動きをするCPUができるようになって
います。このamiiboと自分とでタッグを組んで出場できる大会もある
そうです。歌人、俳人もこのamiiboのように自分と自分の分身となる
AIとタッグを組んで活動していくことが普通になっていくのでしょう
か。
睦月 自分に似たAIとタッグで歌をつくることが可能かという質問
ですが、私は可能性があると思います。現時点のAIに詠ませるかとい
うと別の話ですが。今回、私の上の句を提供しましたけど、私の歌の
ほうが良いじゃないですか(笑)。でも将来的にAIは私の作風、私
の短歌観をよく勉強して、さらに自分の想定をも超えるようになって
くると思うんです。そうなったとき、私の態度は変わるかもしれませ
ん。人間は自分の能力を超えた時に初めて技術をツールにすると思い
ます。ちなみに私はよ~’ChatGPT2ピジネスメールを書かせているん
ですけど、それは私より上手いからです(笑)。
浦川 それとちょっと似たような遊びの話ですけど・・・・。
火曜日とおんなじはなし反射するメ″セージアプリの朝の油分(東京都
練馬区 浦川 通)
これは、自分がつくった短歌で、東京歌壇に載ったものです。そう
すると住所と氏名も一緒に記載されるわけですが、ふと思いついて「
東京都練馬区 浦川 通」の部分を「イタリアローマ市 ルチア・コ
ンティ」とか「韓国ソウル特別区 イ・ソユン」とかに変えると、短
歌がどう変わるのかをChatGPTに与えて生成させてみました。すると、
短歌(イタリアローマ市 ルチア・コンティ)
火曜日の話は続き 朝焼けに
スマホが映す静かな石畳
短歌(韓国ソウル特別区 イ・ソユン)
火曜日にまた重ねゆく言葉だけ
メッセージ画面の隅に白む息
こういった歌が。改行しているのが素人臭いですけど(笑)、自分
の歌を、別の国、別の文化圏で生きている人がつくったとしたらどう
なるんだろう、と思ってやってみたんです。これをもとに、自分の歌
が上手くなるかはまた別の話ですが、こういう遊びというか、生成的
な作品のつくり方はあっていいんじやないかと思います。
睦月 私も自分を完全に模倣できるAIがあったら、まず最初になに
をさせるかというと、自分が行き得ない場所に身を置いて詠ませる、
ということを考えました。
浦川 いろんな人がいろんな使い方をしていくなかで、だれも想像し
ていなかった短歌のつくり方が出てくれば面白いと思います。
質問⑦=AIが瀋透している将棋の世界では、AIの登場によりそれま
で悪いとされていた指し手が良いとされるようになったり、その逆も
ありました。短歌A-の影響により短歌の評価も変わる可能性があり
ますか。
浦川 今回の新書にも書きましたが、将棋は勝ち負けがありますが、
短歌にはないですから、同じように語れません。将棋の場合では、想
像もしなかった指し手だからこそ勝てるというのもあると思うんです。
先ほど実演でお見せした歌に「マイケル」が出てきましたが、人間が
つくる歌では、あの流れで「マイケル」はなかなか出てこないですよ
ね。想像もしなかった短歌の指し手というか。あれを見て、誰かが自
分もああいったことをやってみようと思うかもしれません。
大塚 AIもある程度のレベルだったら書けるという前提になると、
それぞれの作品がある程度レディメイド(既製品)である、という価
値観の上で詩歌をやっていかなければいけない、という時代が近づい
ていると思います。最近、あらゆる俳句(十七音)を集めたサイト「
全俳句データベースver.2(https://horicun.moo.jP/contents/haiku2/
index.html)」45っそりと公開されました。約一澗句が収録されてい
るそうです。この中に僕が作った俳句も入っています。これはAIと
は関係なく以前からあった世界観ですが、AIによって、それがもっ
と生々しく現前している。あらゆるものはすでにレディメイドで、文
脈や誰が詠んだか、あるいはこれが良いと評価することのほうに価値
がある。そちらの比重が高まっていく。こういう価値観の揺らぎはあ
ると思います。
最近、あらゆる俳句(十七音)を集めたサイト「全俳句データベース
ver.2(https://horicun.moo.jp/contents/haiku2/index.html)」45
っそりと公開されました。約一澗句が収録されているそうです。この
中に僕が作った俳句も入っています。これはAIとは関係なく以前か
らあった世界観ですが、AIによって、それがもっと生々しく現前し
ている。あらゆるものはすでにレディメイドで、文脈や誰が詠んだか、
あるいはこれが良いと評価することのほうに価値がある。そちらの比
重が高まっていく。こういう価値観の揺らぎはあると思います。最近、
あらゆる俳句(十七音)を集めたサイト「全俳句データベースver.2
(https://horicun.moo.jP/contents/haiku2/index.html)」45っそ
りと公開されました。約一澗句が収録されているそうです。この中に
僕が作った俳句も入っています。これはAIとは関係なく以前からあ
った世界観ですが、AIによって、それがもっと生々しく現前してい
る。あらゆるものはすでにレディメイドで、文脈や誰が詠んだか、あ
るいはこれが良いと評価することのほうに価値がある。そちらの比重
が高まっていく。こういう価値観の揺らぎはあると思います。
質問⑧=AIに、ヒトの脳活動で学習させた場合と、疑似短歌で学習さ
せた場合では、どちらが良い短歌を詠むと思いますか。
浦川 脳の情報をどうAIにフィードバックするかは難しい問題かも
しれませんが、本物の短歌から得られるフィードバックを与えている
という意味では、先はどの「いいね」による報酬とも近い構造だと思
いますし、より短歌らしいものが出てくるんじゃないかという想像が
あります。
國兼 持橋先生からオンラインのチャットでコメントをいただきまし
た。
「先ほど研究を紹介していただきました統計数理研究所の持橋と申
します。評価というのは必ずしも一つの軸である必要はなく、複数の
軸がありますので別の研究でそうした潜在的な複数の評価軸を抽出す
ることも行っています」。
浦川 特橋さん見てくださっているんですね。「多次元項目反応理論
による短歌の評価の分析」ですね。短歌の実作者に作品として「良い」
「悪い」、「好きに「嫌い」をテストさせて、そこに潜在的にとうい
う性質があるかを統計的に見たものです。
睦月 先ほとのRLHFの「いいね」数は「好きこ「嫌い」を軸にし
ていたのに加えて、この研究では、作品としての完成度が「良い」
「悪とという軸も加えています。
浦川 実際にこの「良い」「悪い」軸の「悪い」ほうには、短歌歴の
浅い人たちの作品があり、いわゆる名歌と呼ばれるものは、それとは
逆(良い)のほうにあったり。
睦月 特権先生の研究の結果で、「良い歌」のトップは栗本京子さん
のコ観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生」だったんです
ね。
國兼 特橋先生から送られたコメントの続きです。「これからは個人
によって異なる評価の話が重要になるかと思われます。こぶ大短歌会
と早稲田短歌会の方に評価していただいています」とのことです。
総括-AI、ヒト、歌について
國兼 最後にお一人ずつ「なぜAIとヒトは歌を詠むのか」というテ
ーマに対するお考えを述べてください。大塚 そもそも、詩歌に意識
的に触れている人口に対して、詩歌の作品数が多すぎると思うんです。
それはなぜなのかとよく考えるんです。
AIを使って人間がいろいろやっていく中で、一部の領域では、も
うどんな人間も代替可能なんじやないか、という世界観になっている
面があります。たとえば入閣とAIとの代替のみならず、知的労働は
特に、AIにエンパワメントされることで人間と他の人間との代替可
能性がより大きくなっている、ということが可視化されつつあります。
では人間が出来ることはというと、責任を取ること。自分の名前で
発言し、場合によっては責任を取って辞任でもなんでもするというこ
と、それによってみんなが溜飲を下げる、
そのコストを社会的にみんなで負担しあっている……というのが人間
社会だと思います。
その社会の中で自分の名前で作品を書くということは、敢えて矢面
に立つ、そのことによる快楽というか高揚、傑になることの自傷的な
気持ちよさが、われわれに詩歌をさせている面があるんじやないでし
ょうか。 ’
睦月 なぜ歌を詠むかということは、歌人にとってずっと謎だと思う
んです。私たちが短歌を詠ひときに、私たちの中で何か起きているの
かを考えるようになってから、私は短歌AIに興味を持ちました。
「短歌AI」という単語の表面からイメージされるものより、もっ
と広がりがあると思いたいです。AIと短歌についての研究は、私も
浦川さんに教えていただいていろいろ学んだところがあるのですが、
想像以上にいろんなことが研究されているんですね。それに対して歌
人の側は、それほど熱心にAIについて議論しているとは思わないん
です。実際、こういう研究がなされていることを知らない歌人も多か
ったと思います。今回のお話がきっかけでAIに興味を持ってもらえ
たらいいな、と思います。
浦川 実体験から話しますと、『万葉集』の「春過ぎて夏来るらし白
たへの衣干したり天の香具山」という和歌に触れたのがきっかけで、
私は短歌が好きになりました。短歌に限らず音楽でもなんでも「こん
なに面白い作品があるんだ」とか「こういうことをしている人がいる
んだ」という出会いから、自分でもつくってみようってなることがあ
ると思うんです。今回書いた本や今日のイベントではAIが短歌を生
成する、短歌を「つくる」ことがメインになっていますが、それをど
う受け取るのか、つまり「読む」ということも、「なぜ詠むのか」に
とって重要な要素だと思います。
これはそのまま「良い短歌とは何か」という話にも繋がると思いま
すが、「面白い」と受け取ることのできる幅が拡がると、「なぜ詠む
のか」という概念も豊かになると思います。もし次の本を書く機会が
あれば「どう詠ひか」ではなく「どう読むか」 について書きたいで
す。(二〇二四年十一月六日・ジュンク堂書店池袋本店イベント「な
ぜAIとヒトは歌を詠ひのか」の文字起こしテキストに加筆・修正し
ました)
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✅ 特開2024-14910 研削プレート、研削装置、表面加工方法、単結
晶SiC基板の製造方法及び単結晶SiC基板 国立研究開発法人産
業技術総合研究所他
【要約】下図1研削プレートであって,前記研削プレートは、平坦面を
有する台金上に砥石セグメントを備え、前記砥石セグメントは、表面
に砥粒が固定された軟質パッドまたは砥粒及び樹脂を含むレジンボン
ド砥石を有し、前記砥石セグメントは、前記研削プレート及び被加工
物テーブルの配置によって定まる被加工物面内の砥粒軌跡密度と、前
記砥粒及び被加工物の相対速度と、に基づいて均一に加工できるよう
に設計されたセグメント形状を有し、前記砥粒は、単結晶SiCより
も軟らかくかつバンドギャップを有する少なくとも1種以上の金属酸
化物、もしくはSiCからなることを特徴とする、研削プレート。既
存の装置に適用可能であり、大口径の基板に対して、微小なキズの発
生を抑制することが可能な研削プレートを提供する。
図1. 下図1のごとく、研削プレートであって,前記研削プレートは、
平坦面を有する台金上に砥石セグメントを備え、前記砥石セグメント
は、表面に砥粒が固定された軟質パッドまたは砥粒及び樹脂を含むレ
ジンボンド砥石を有し、前記砥石セグメントは、前記研削プレート及
び被加工物テーブルの配置によって定まる被加工物面内の砥粒軌跡密
度と、前記砥粒及び被加工物の相対速度と、に基づいて均一に加工で
きるように設計されたセグメント形状を有し、前記砥粒は、単結晶Si
Cよりも軟らかくかつバンドギャップを有する少なくとも1種以上の
金属酸化物、もしくはSiCからなることを特徴とする、研削プレート。
【符号の説明】【0097】
1 台金 2A、2B,2C,2X 砥石セグメント 10A,10B,
10C,10X 研削プレート 11 駆動部 12 砥石フランジ
14 被加工物テーブル 15 基板保持部 W 単結晶SiC基板
図2 本発明の研削プレートの構造を示す平面図
【発明の効果】【0034】
本発明によれば、既存の研削装置、すなわち被加工物テーブルの回
転中心が研削プレートの外周部に当たるように配置されている研削装
置を使用することで量産工程に適用可能であり、直径145mm以上
など大口径の単結晶SiC基板を対象とした場合であっても、微小な
キズの発生を抑制して均一に加工できる、実用性の高い研削プレート
研削装置、表面加工方法及び製造方法、並びに、大口径であるととも
に微小なキズの発生が抑制された単結晶SiC基板を提供することが
できる。
【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】
本発明は、研削プレート、研削装置、表面加工方法、単結晶SiC
基板の製造方法及び単結晶SiC基板に関する。
図7 非特許文献5の研削装置の構造を示す斜視図
【背景技術】【0002】
半導体材料であるSiC(炭化珪素)は、現在広くデバイス用基板
として使用されているSi(珪素)に比べてバンドギャップが広いこ
とから、単結晶SiC基板を使用してパワーデバイス、高周波デバイ
ス、高温動作デバイス等を作製する研究が行われている。
切断された基板には反り、うねり、厚みばらつきや加工歪が存在し、
例えばダイヤモンド砥粒での研削加工でこれらを軽減した上でCMP
(ケミカルメカニカルポリシング)で鏡面化することが行われている
が、CMPの加工速度は小さいため、CMP前の加工歪層深さをでき
るだけ小さくすることが望まれている(例えば、非特許文献1参照)。
また、厚みばらつきは少ないことが望まれる。厚みばらつきはTT
V(Total Thickness Variations,全厚さ
変動)という指標で示されるが、特許文献2には、直径3インチでT
TVが0.623、0.673、0.739μmのSiC基板が開示
され、また特許文献3には直径76mmでTTVが1.7μmであるS
iC基板と直径100mmでTTVが1.05μmであるSiC基板
が開示されている。【0006】
SiC等の非酸化物セラミックスの鏡面加工には、メカノケミカル
効果を利用したメカノケミカルポリシング技術があり、例えば非特許
文献2には、平均粒径0.5μm酸化クロム砥粒をアクリロニトリル
やフェノールなどの樹脂で成形したポリシングディスク上で乾式研磨
する手法と単結晶SiCの加工結果が開示されている。【0007】
また、特許文献4にはトライボ触媒作用と名付けられた仮説に基づ
き、直径3インチのSiC基板の鏡面加工を行い、TTVに相当する
基板高さの最大値と最小値の差は1.4μmであることが開示され、
非特許文献3には直径100mmのSiC基板について同様の鏡面加
工を行い、TTVが1.8μmであることが開示されている。具体的
な手段として、特許文献4では、バンドギャップをもつ材料で構成さ
れる砥粒が被加工物との機械的摺動によりエネルギーが与えられ、砥
粒表面の電子が励起されて電子正孔対が生じ、光触媒材料で説明され
る内容と同様の機構で、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラ
ジカル、あるいは原子状酸素といった非常に酸化力の強い活性種が生
じて試料表面を酸化させるというメカニズムが提案され、直径3イン
チでTTVが小さいSiC基板を製造する方法が開示されている。ま
た、非特許文献3では特許文献4と同様の原理で加工を行い、直径
100mmでTTVが小さいSiC基板が得られたと開示されている。
【0008】 また、特許文献5に開示されるように、単結晶SiC
基板のおもて面は、次工程でエピタキシャル成長させるため、鏡面で
ある必要があるが、裏面は、種々、ハンドリング等の観点から、面粗
度の大きい面であることが好ましい。【0009】
さらに、単結晶SiC基板を前記昇華法の種結晶として使用する場
合には、前記結晶成長面に異物や研磨傷などのダメージがある場合に、
結晶成長が阻害され、高品質の炭化珪素単結晶を成長させることが
できない。そのため、例えば特許文献6に開示されるように、結晶成
長前に水素ガス等でエッチング処理を行って、ゴミや研磨傷ダメージ
などの結晶成長阻害要因を除去して、沿面成長を促進して、結晶欠陥
の少ない高品質の炭化珪素単結晶を結晶成長させるということが行わ
れている。 この項了
✅ 特開 特開2024-7665 一重項酸素発生剤の使用方法、樹脂組成
物および樹脂成形体 国立研究開発法人産業技術総合研究所 他
【要約】一重項酸素発生剤の使用方法であって、前記一重項酸素発生
剤を、生分解性樹脂と共存させることによって、明所で前記生分解性
樹脂の分解を抑制し、暗所で前記生分解性樹脂の分解を促進し、前記
生分解性樹脂100重量部に対して、前記一重項酸素発生剤を0.01
重量部以上5.0重量部以下含む、一重項酸素発生剤の使用方法。
【発明の効果】【0016】
本開示によれば、一重項酸素発生剤を生分解性樹脂と共存させること
によって、使用時には生分解性樹脂の強度を維持し、廃棄されると速
やかに生分解性樹脂の分解が進行する、一重項酸素発生剤の使用方法
を提供することができる。また、一重項酸素発生剤と生分解性樹脂と
を含む樹脂組成物および成形体を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一重項酸素発生剤の使用方法であって、前記一重項酸素
発生剤を、生分解性樹脂と共存させることによって、明所で前記生分
解性樹脂の分解を抑制し、 前記生分解性樹脂100重量部に対して、
前記一重項酸素発生剤を0.01重量部以上5.0重量部以下含む、一
重項酸素発生剤の使用方法。
【請求項2】 前記生分解性樹脂に前記一重項酸素発生剤を含有させ
て成形体とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】 前記一重項酸素発生剤は、有機色素である、請求項1ま
たは請求項2に記載の使用方法。
【請求項4】前記生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステルである、請求
項1または請求項2に記載の使用方法。
【請求項5】生分解性樹脂100重量部と、一重項酸素発生剤0.01
重量部以上5.0重量部以下とを含む、前記生分解性樹脂の分解を制
御する機能を有する樹脂組成物。
【請求項6】前記一重項酸素発生剤は、有機色素である、請求項5に
記載の樹脂組成物。
【請求項7】 前記生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステルである、請求
項5または請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】 請求項5に記載の樹脂組成物からなる樹脂成形体。
✳️ 特開2024-1072光触媒およびその製造方法、ならびに光触媒を用
いた酸素製造方法および水素製造方法 国立研究開発法人産業技術総合
研究所
【要約】下図1のごとく、光触媒は、BiVO4を含有する担体と、担
体に担持され、ヘキサゴナル相を備えるWO3を有する。光触媒の製
造方法は、ビスマス塩とバナジウム塩を液体中で撹拌して溶液または
懸濁液を得る混合工程と、溶液または懸濁液にタングステン塩を添加
し、さらに撹拌して、BiVO4を含有する担体と、担体に担持され
たWO3とを有する光触媒の分散液を得る分散工程を有する。酸性下
でも光触媒活性が発揮できる光触媒を提供する。
図1 光触媒-電解ハイブリッドシステムでの水の電気分解の概念図
図2 実施例4の光触媒の粉末X線回折パターン
【0031】
表1に示すように、タングステン塩の添加量が0.5mol%以上
30mol%以下の条件で製造した実施例1~実施例7のヘキサゴナ
ル相WO3担持BiVO4光触媒は、WO3が担持されていない比較
例1のBiVO4光触媒と比べて、酸素生成活性が高かった。特に、
pH0以上pH1以下の反応溶液では、タングステン塩の添加量が
5mol%の実施例3~実施例5のWO3担持BiVO4光触媒の酸
素生成活性は、比較例1のBiVO4光触媒の酸素生成活性の10倍
以上であった。また、比較例2のモノクリニック相WO3担持BiV
O4光触媒は、pH1.5の反応溶液において、実施例4のヘキサゴ
ナル相WO3担持BiVO4光触媒よりも酸素生成活性が低かった。