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エネルギーと環境 206

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彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩の当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救った
と伝えられる招き猫と井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時
代の井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと
兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ-。

安土城CG2

【季語と短歌:4月8日】

      疲れ果て髪かき上げる手に桜 

『短歌十首貫徹集⓷』  
行く春の温度差激し記憶とどめ熱き夏を記録するかも
自らの先も分からずその先を何故行くのかと問う未来かな
次世代に贈るソーラ構想す今夜も途上小さく吐息

 

✳️ 次世代ペロブスカイト系フィルム型太陽電池
2️⃣ 特開2024-177790 ホール輸送材料及びホール輸送材料を用いた
  太陽電池 株式会社アイシン 審査前
【要約】一般式(1)で表されるドナー-アクセプター-ドナー型構
造を有し、A部を、炭素原子と水素原子からなる電子受容性基を含ん
で構成し、フルオレン環上の9位に炭素間二重結合を介して基(VI)
で表されるRAが導入され、フルオレン環上の2位及び7位にD部が
導入されたホール輸送材料、及び、太陽電池。

000002

000003

000004
 非特許文献1には、透明導電膜付きガラス基板と、緻密な二酸化チ
タン(TiO2)膜からなるブロッキング層と、光によって励起して
電子を発生するペロブスカイト化合物として臭化鉛(PbBr2)、
ヨウ化鉛(PbI2)、メチルアミン臭化水素酸塩(CH5N・HBr
:以下、「MABr」と略する場合がある)、及び、ホルムアミジン
ヨウ化水素酸塩(CH4N2・HI:以下、「FAI」と略する場合
がある)を多孔質の二酸化チタン(TiO2)に積層させて形成され
る発電層と、ホール輸送層と、電極とを備えたペロブスカイト太陽電
池が示されている。 この発電層は、混合ハロゲン化物(FAPbI3)
0.85(MAPbBr3)0.15ペロブスカイト層として形成され
ている。【0005】
  従来において、ホール輸送層に用いられるホール輸送材料として、
下記の一般式(A)で表される2,2´,7,7´-テトラキス(N,N
´-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9´-スピロビフルオレ
ン(2,2',7,7'-tetrakis(N,N'-di-p-methoxyphenylamine)-9,9'-spiro-
bifluorene(一般呼称「spiro-OMeTAD」、以下、本呼称
を使用))が汎用されている。ペロブスカイト化合物の結晶が光を吸
収することによって電子とホールを生じる。ホールは、ホール輸送材
料により対向電極に輸送され、電子は光電極に移動するといったサイ
クルを繰り返すことで発電する。

000015
【0007】  spiro-OMeTADは市販されており入手が容
易であるが、非特許文献1でも報告される通り、spiro-OMe
TADには、合成及び精製工程数が多く要求されることから本質的に
低コスト化が困難であるとの問題点があった。更に、ホール移動度が
比較的低い、ホール輸送材料として効率的かつ安定的に機能するため
にはコバルト錯体等のドーパントを要する等の問題点もあった。また、
spiro-OMeTADをホール輸送材料として太陽電池に組み込
んだ際に高い初期性能を発揮し得るが、その持続性に問題があった。
そのため、低コストに提供でき、かつ、効率的かつ安定的なホール輸
送効果を奏するホール輸送材料の研究が進められている。【0008】
そこで、非特許文献1では、新規なホール輸送材料として、アクセプ
ター(以下、「A」という)部にカルバゾール環、ドナー(以下、「
D」という)部にトリフェニルジメトキアミノ基を有し、これらがド
ナー-アクセプター-ドナー型(以下、「D-A-D型」という)構
造に連結した下記の一般式(B)で表されるLD29と呼称される化
合物が報告されている。かかるLD29をホール輸送材料として利用
した太陽電池においてドーパントフリーでは変換効率が14.29%
であったが、ドーパントとしてリチウムビス(トリフルオロメタンス
ルホニル)イミド(以下、「LiTFSI」と称する場合がある)、
4-tert-ブチルピリジン(TBP)、コバルト錯体(FK20
9)を添加すると変換効率が18.0%に改善され、spiro-O
MeTADに匹敵する変換効率が得られている。

000016
【0010】  LD29において、A部にカルバゾール環が導入され
ているが、当該カルバゾール環の9位のヘテロ原子(窒素原子)上の
不対電子対(ローンペア)が電子吸引性に対して阻害する方向に働く
ことが考えられる。これにより、LD29の分子内でのホール輸送能
力が低下し、LD29をホール輸送材料として使用する太陽電池にお
いて十分な太陽電池効率を得ることが難しいことが想定される。また、
当該太陽電池は、時間の経過と共に太陽電池効率が低下する等、その
耐久性の面での課題があった。これは、ホール輸送材料にドーパント
として添加されたLiTFSIに含まれるリチウムイオンがホール輸
送層の外に拡散してしまうことや、LiTFSI自体に強い吸湿性が
あること等に起因するものであると考えられる。【0011】
  また、非特許文献2において、下記の一般式(C)で表されるYN1
と称される化合物が、非特許文献3において、下記の一般式(D)で
表されるPTZ2と称される化合物が報告されている。何れの化合物
もD-A-D型構造を有するものであるが、上記したLD29と同様
の問題点がある。【0012】【化3】

000017

000018
【0014】
  このように、D-A-D型構造を有するホール輸送材料等の低分子
有機材料に関する多くの研究が進められている。本願の発明者らも、
特許文献1において、下記の一般式(E)で表されるDHCF-3と
称される低分子有機材料を報告した。かかるDHCF-3は、優れた
ホール輸送特性を安定的に示しホール輸送材料として良好に機能し、
かつ、太陽電池に導入したところ良好な太陽電池性能を発揮したこと
が確認されたものである。ここで、DHCF-3は、A部にフルオレ
ン環、D部に4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル
基を有し、かつA部のフルオレン環の9位の炭素にC-C二重結合を
介してD部と同一の置換基が導入された構造を有する。【0015】
000019
【0016】
  しかし、特許文献1に記載のホール輸送材料は、A部の置換基が嵩
高いことから、一方のD部とA部の置換基が立体的に接近した配置と
なり、この近接している側のD部がA部のフルオレン環に対しより大
きくねじれた配置を取る。そのためπ共役が弱くなりホール輸送効果
が阻害されることが想定される。
【先行技術文献】【特許文献】【0017】
【特許文献1】 特開2023-46046号 ホール輸送材料及びホ
ール輸送材料を用いた太陽電池

【非特許文献】【0018】
【非特許文献1】Xuepeng Liu他著、“A star-shaped carbazole-based
hole-transporting material with triphenylamine side arms for perovskite
solar cells
,”J.Mater.Chem.C., 2018, 6, 12912-12918(DOI:10.1039/
c8tc04191a)
【非特許文献2】Peng Xu他著、“D-A-D-Typed Hole Transport
Materials for Efficient Perovskite Solar Cells: Tuning Photovoltaic
Properties via the Acceptor Group
”、ACS Appl. Mater. Interfaces
2018, 10, 23(DOI:10.1021/acsami.8b04003)
【非特許文献3】Roberto Grisorio他著、“Molecular Tailoring of
Phenothiazine-Based Hole-Transporting Materials for High-Performing
Perovskite Solar Cells
”、ACS Energy Lett. 2017, 2, 5, 1029-1034(
DOI:10.21/acsenergylett.7b00054
【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0019】
  そこで、上記従来技術の問題点を鑑み、優れたホール輸送特性を安定
的に示すホール輸送材料の提供が依然として求められていた。また、
ホール輸送材料を安価に提供することが求められていた。更に、電池
性能の高い太陽電池を安価で提供することが求められていた。
【課題を解決するための手段】【0020】
  本発明に係るホール輸送材料の特徴構成は、  下記の一般式(1)で
表されるドナー-アクセプター-ドナー(D-A-D)型構造を有す
るホール輸送材料。【化6】
000020
〔一般式(1)中、  2つのD部は、同一の構造を有する領域であり、
  各D部は、下記の基(I)、基(II)、基(III)、基(IV)、
及び、基(V)から選択される1つの構造を有し、【化7】
000021
(基(II)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  R1は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S
-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  R3は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S-
CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、R1とR3は、同時に-Hであることはなく、
  R2a1とR2a2は、それぞれ独立して、-H、-F、及び、-C
F3から選択され、ここで、R2a1とR2a2は、少なくとも一方が
-Hであり、  R4は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、
及び、-S-CnH2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の
何れかの整数であり、  Yが1又は2であって、R5が存在する場合
には、R5は、基(II)中のチオフェン環の3位又は4位に導入さ
れ、-H及び-CnH2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の
何れかの整数である。)【化9】
000024
(基(I)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  R1は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S
-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  R3は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S
-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、R1とR3は、同時に-Hであることはなく、
  R2a1、R2a2、R2b1、及び、R2b2は、それぞれ独立して
、-H、-F、及び、-CF3から選択され、ここで、R2a1とR2a2
は、少なくとも一方が-Hであり、R2b1とR2b2は、少なくとも
一方が-Hである。)【化8】

000022
(基(II)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  R1は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S
-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  R3は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S
-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、R1とR3は、同時に-Hであることはなく、  R2a1と
R2a2は、それぞれ独立して、-H、-F、及び、-CF3から選
択され、ここで、R2a1とR2a2は、少なくとも一方が-Hであり、
  R4は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S
-CnH2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の何れかの整数
であり、  Yが1又は2であって、R5が存在する場合には、R5は、
基(II)中のチオフェン環の3位又は4位に導入され、-H及び-
CnH2n+1から選択され、ここで、nは、1~8の何れかの整数で
ある。)【化9】
000023
000024
000025
基(III)、基(IV)、及び、基(V)中、
  XとYは、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数であり、
  2つのRDは、それぞれ独立して、下記の基(I´)で表される構造
を有し、【化12】

000026
(基(I´)中、
  X´とY´は、それぞれ独立して、0、1、2の何れかの整数である
  R1´は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-S
-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  R3´は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-
S-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数であり、
  ただし、R1´とR3´は、同時に-Hであることはなく、  R2a1´、
R2a2´、R2b1´、及び、R2b2´は、それぞれ独立して、-H、
-F、及び、-CF3から選択され、ここで、R2a1´とR2a2´は、
少なくとも一方が-Hであり、R2b1´とR2b2´は、少なくとも一方
が-Hである。))  一般式(1)中、
  RAは、下記の基(VI)で表される構造を有し、【化13】

000027

(基(VI)中、
  R6は、-CmH2m+1であり、ここで、m=6~16の整数であ
る。)〕、点にある。【0021】
  上記構成によれば、安定的かつ効率的にホールを捕捉し移動させる
ことができる優れたホール輸送特性を有しているホール輸送材料を提
供することができる。詳細には、本構成のホール輸送材料は、D-A
-D型構造を有し、A部を炭素原子と水素原子からなるフルオレン環
等の電子受容性基を含んで構成すると共に、フルオレン環上の2位及
び7位それぞれに4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェ
ニル基等の電子供与性基を含むD部を導入し、更に、フルオレン環上
の9位に炭素間二重結合を介して5-アルキル-2-チエニル基を導
入して構成されている。このように構成することにより、A部の電子
吸引性が向上すると共に、従来における技術的問題であったA部の置
換基とD部との立体的な干渉が解消されることで、ホール輸送材料の
分子内でのプッシュ-プル効果が大きくなり、分子内の電荷移動特性
が向上する。結果として、分子内での電子の移動がスムーズになりH
OMO-LUMOの電荷分離がより明確になる。つまり、上記構成の
ホール輸送材料は、HOMO及びHOMO-1準位でD部に電子が集
中し、LUMO準位でA部に電子が集中する。このように、本構成の
ホール輸送材料は、分子内での電荷移動特性が向上したことから優れ
たホール輸送特性を発揮することができる。更に、ヘテロ原子を含ま
ないフルオレン環をA部に用いることにより、〔先行技術の〕項で説
明したLD29等で生じていたヘテロ原子の不対電子対(ローンペア)
による電子吸引性の阻害が解消され、より効果的にホール輸送材料と
して機能し得る。【0022】  また、本構成のホール輸送材料は、
深いHOMOエネルギー準位を有することから、ペロブスカイトのH
OMO準位との配置を適切に調節でき、ホール輸送特性を向上させる
ことができ、更に太陽電池効率を向上させ易いとの利点もある。
【0023】  本構成のホール輸送材料は、500nm以上の可視光
域でほとんど光吸収を示さず、かつ、400~500nm領域の光吸
収強度が従来において汎用されるspiro-OMeTADと同等程
度に弱い。このため、本構成のホール輸送材料を用いた太陽電池は、
ホール輸送材料による光吸収ロスを最低限に抑えることができ、高い
光電変換効率を期待することができる。
【0024】  本構成のホール輸送材料は、溶媒への溶解性の面でも
優れた特性を有する。特に、A部のフルオレン環に対して長鎖アルキ
ル基を有する5-アルキル-2-チエニル基を導入することにより溶
媒への溶解性が向上している。そのため、太陽電池を作製する際の作
業性が向上し、また、スピンコートによる塗布法等のウェットプロセ
ス等をも利用することができ、太陽電池のホール輸送層の形成が容易
となる。また、本構成のホール輸送材料は、非極性溶媒にも可溶であ
るため、安価かつ環境負荷の低い溶媒を用いて、太陽電池のホール輸
送層を作製することが可能である。一方、従来において汎用される
spiro-OMeTADは、ホール輸送層を作製する際に、溶媒と
してクロロベンゼンを用いるのが一般的である。しかし、クロロベン
ゼンは、分子内に塩素原子を含み、かつ、高価であることから、溶媒
廃棄等の後処理を含めた設備として費用が嵩み、また、排気漏れ等に
よる安全及び環境への負荷も大きいとの問題点がある。【0025】
  また、本構成のホール輸送材料は、安価な原料により、短時間に少
ない合成工程により合成することができ、かつ、簡単な精製工程によ
り高純度品を提供できる。そのため、高価な試薬や煩雑な工程を要せ
ず、合成や精製に要するコストを低減することができ、安価かつ高性
能なホール輸送材料を提供することができる。【0026】
  更に、A部に導入した5-アルキル-2-チエニル基の長鎖アルキ
ル基による疎水性効果により、本構成のホール輸送材料を導入した太
陽電池の耐水性を向上させることができる。また、本実施形態に係る
ホール輸送材料は、その分子内及び分子間のホールの移動がスムーズ
に行われることから、分子の酸化が抑制され耐久性が向上できる。こ
れにより、太陽電池の耐久性の向上が期待できる。【0027】
  このように、本構成のホール輸送材料は、優れた特性を有すること
から、太陽電池のホール輸送材料として好適に利用することができ、
本構成のホール輸送材料をペロブスカイト太陽電池等のホール輸送層
に用いた場合、初期実験において優れた電池性能を示した。
【図面の簡単な説明】【0028】
【図1】ペロブスカイト太陽電池の模式断面図である。
【図2】ペロブスカイト太陽電池の上方からの斜視図である。
【図3】ペロブスカイト太陽電池の発電説明図である。
【図4】ペロブスカイト太陽電池の作製手順を示す説明図である。
【図5】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成スキームを示す図である。
【図6】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成を確認した1H NMR分析の結果を示す図である。
【図7】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成を確認した質量分析の結果を示す図である。
【図8】実施例1において調製を行ったホール輸送材料(DHCF-
17)の合成を確認した紫外可視近赤外分光分析の結果を示す図であ
る。【図9】実施例3で検討を行った太陽電池の電池性能評価の結果
を示すグラフであり、検討を行った各太陽電池のIV特性を示すもの
である。【図10】実施例4で検討を行った太陽電池の電池性能評価
の結果の一例を示すグラフであり、検討を行った各太陽電池のIV特
性を示すものである。
【発明を実施するための形態】【0029】
  以下に、本発明に係るホール輸送材料を用いたペロブスカイト太陽電
池10(太陽電池10の一例。以下、「太陽電池10」と記載する。)
の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、太
陽電池10の一例として、有機及び無機のハイブリッド化合物で生成
されるペロブスカイト層44を備えて構成された太陽電池10として
説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨
を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。【0030】
(本実施形態に係る太陽電池10の基本構成)
  図1及び図2に示すように、本実施形態に係る太陽電池10は、透
明基板21及び透明導電膜22を有する基板2と、基板2上に設けら
れ、電子を透明導電膜22に受け渡し、且つホール輸送層5と透明導
電膜22とを分離して電子とホールとの再結合(逆電子移動)を防止
するブロッキング層3と、ブロッキング層3上に設けられ、光によっ
て励起して電子を発生するペロブスカイト層44を多孔質半導体41
に積層させて形成される発電層4と、発電層4上に設けられペロブス
カイト層44で発生したホールが通過するホール輸送層5とで構成さ
れる積層体11を備えている。また、ブロッキング層3の表面に設け
られ、透明導電膜22を介して電子を放出する光電極61と、ホール
輸送層5の表面に設けられ、電子を受け取る対向電極62とで構成さ
れる電極6を備えている。なお、電極6の配置は、例えば透明導電膜
22に導線接続して光電極61を形成するなど、電子の受け渡しが可
能なものであれば特に限定されない。また、太陽電池10の耐久性を
高めるため、対向電極62を透明基板21などで保護しても良い。
【0031】  透明基板21は、光透過性を有するもので構成される。
例えば、透明ガラス基板、すりガラス状の半透明ガラス基板、透明樹
脂基板等を適用することができる。また、透明導電膜22は、例えば、
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(TO)、スズドープ酸
化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)やアルミニウムドープ
酸化亜鉛(AZO)などを用いることができる。【0032】
  ブロッキング層3及び多孔質半導体41は、金属酸化物が適してお
り、例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化
ニオブ(Nb2O5)、二酸化スズ(SnO2)や酸化アルミニウム
(Al2O3)などが用いられる。特に、ペロブスカイト層44を積
層するための表面積を多く確保できる二酸化チタン(TiO2)の焼
結体として構成することが好ましい。また、ブロッキング層3は、一
部が透明導電膜22に延出して形成され、透明導電膜22が区画され
る。更に、ブロッキング層3は、電子が積層方向に通過することがで
きるが、横方向への移動がし難いように緻密な絶縁層31を形成して
いる。つまり、ブロッキング層3から侵入した電子は、透明導電膜22
の積層方向に円滑に移動して光電極61に供給されると共に、絶縁層
31によって対向電極62への移動が防止されるので短絡しない。
【0033】  ペロブスカイト層44は、鉛及びハロゲン元素Xで構
成される化合物(PbX2、X=ハロゲン元素)と、メチルアンモニ
ウムアイオダイド(CH3NH3I:以下、「MAI」と略する場合
がある)とを反応させて生成される。具体的には、多孔質半導体41
の孔内部に鉛及びハロゲン元素Xを含む溶液42を浸透・乾燥させた
後、MAIの混合溶液43に浸漬して、ペロブスカイト層44を形成
するペロブスカイト化合物(X=Iの場合、CH3NH3PbI3)
の結晶が速やかに生成される。なお、ハロゲン元素Xは、ヨウ素、臭
素や塩素などを用いることができるが、形態安定性の高いヨウ素を用
いることが好ましい。また、MABrと0.2Mの臭化鉛(PbBr
2)、FAIとヨウ化鉛(PbI2)を利用した混合カチオン-混合
ハライド((FAPbI3)1-x(MAPbBr3)x)としてもよ
い。例えば、(FAPbI3)0.85(MAPbBr3)0.15等
を好適に用いることができる。【0034】
  ホール輸送層5には、後述するホール輸送材料を用いる。電極6は、
例えば、金、白金、銀、銅等の金属の単体や合金、あるいはフッ素ド
ープ酸化スズ(FTO)やスズドープ酸化インジウム(ITO)とい
った酸化物導電体などを用いることができる。【0035】
  ここで、図3に基づいて太陽電池10が発電する原理について説明
する。透明基板21に太陽光や室内光等の光が入射すると、この入射
光はほとんど吸収されることなく基板2やブロッキング層3を透過し
て、大部分が発電層4に到達する。そして、発電層4に到達した入射
光がペロブスカイト層44に照射されると、このペロブスカイト層44
は光エネルギーを吸収して励起する。この励起により、ペロブスカイ
ト層44のエネルギー準位が多孔質半導体41である金属酸化物の伝
導帯電位よりも所定レベル以上高くなると、ペロブスカイト層44か
ら多孔質半導体41へと電子が注入される。注入された電子は、ブロ
ッキング層3を経て光電極61で集電される。【0036】
  一方、ペロブスカイト層44で発生したホールは、ホール輸送層5
を経由して対向電極62へ到達し、ここで外部負荷7を経由してき
た電子と再結合する。つまり、光電極61と対向電極62との間に電
位勾配が生じるので、両極間に外部負荷7を接続することによって、
電力を供給することができる。【0037】
(本実施形態に係る太陽電池10の作製手順)
  本実施形態に係る太陽電池10の作製手順を、図4に基づいて説明
する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸
脱しない範囲内で種々の変形が可能である。また、Michael Saliba他著、
Correction to “How to Make over 20% Efficient Perovskite Solar
Cells in Regular (n-i-p) and Inverted (p-i-n) Architectures””
、Chem.
Mater., 2018, 30, 4193-4218等の公知技術を参照して作製することが
できる。【0038】
  まず、透明基板21の上に透明導電膜22を形成して基板2を作製
する。透明導電膜22は、例えば、CVD(化学的気相成長法)やス
パッタリングなどにより透明基板21上に積層される。次いで、レー
ザースクライブを施して透明導電膜22を部分的に除去し絶縁層31
が入る凹部221を形成した後、洗浄する。次いで、基板2上の全面
に、ALD法(原子層堆積法)やSPD法(スプレー熱分解法)など
によりブロッキング層3を形成する。ブロッキング層3は、好ましく
は、TiO2緻密層として形成される。次いで、マスキングを施した
基板2及びブロッキング層3上の中央付近に、ナノ粒子焼結層である
多孔質半導体41を形成する。好ましくはTiO2の多孔質層(p-
TiO2)として形成される。この多孔質半導体41は、ナノ粒子ペ
ーストを溶媒によって希釈し、例えば、4000rpm~6000
rpmの回転速度のスピンコート法で塗布・乾燥した後、マスキング
を取り除いて450℃~550℃で加熱し、焼結形成される。
【0039】  例えばPbI2のN,N-ジメチルホルムアミド溶液4
2を調製し、多孔質半導体41上に滴下後、例えば、5000rpm
~8000rpmの回転速度のスピンコートにより孔(p-TiO2)
内部への浸透と余分な溶液の除去を行う。60℃~120℃(好まし
くは70℃~90℃)で乾燥させてPbI2層を形成する。【0040】
  MAI(CH3NH3I)のイソプロピルアルコール溶液43(2~
20mg/ml)に、基板2・ブロッキング層3・ヨウ化鉛が浸透し
た多孔質半導体41を0℃~80℃(好ましくは常温)で浸漬する
(MAI浸漬法)。PbI2とMAIが反応によりペロブスカイト化
合物[(CH3NH3)PbI3(MAPbI3)]をペロブスカイ
ト層44として多孔質半導体41の孔内部及び上部に形成した後、純
イソプロピルアルコール溶液で灌ぎ、60℃~120℃(好ましくは
70℃~100℃)で乾燥させる。混合カチオン-混合ハライド(
(FAPbI3)1-x(MAPbBr3)x)系のペロブスカイト化
合物についても同様にして調製することができる。【0041】
  本実施形態に係るホール輸送材料を、例えば、クロロベンゼン溶液
60~90mg/mlとして調製する。溶液をペロブスカイト層44
上に滴下し、スピンコート法により余分な溶液の除去を行い、乾燥さ
せることでホール輸送層5を形成する。ホール輸送材料には、4-イ
ソプロピル-4´-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタ
フルオロフェニル)ボラート(以下、「TPFB」と称する場合があ
る)等の添加物を添加してもよい。TPFBを添加する場合には、
TPFBは、ホール輸送材料の0.01重量%~100重量%である
ことが好ましく、0.1重量%~50重量%であることが特に好まし
い。例えば、本実施形態に係るホール輸送材料を30mMとなるよう
に秤量し、その10重量%に相当するTPFBを加え、これらをクロ
ロベンゼンに溶解させたものを用いてホール輸送層5を形成すること
ができる。【0042】
  PbI2層形成からホール輸送層5形成までの工程は、グローブボッ
クスなど乾燥窒素雰囲気下で行うことが好ましい。最後に、真空蒸着
法などによって、金などの薄膜をブロッキング層3及びホール輸送層
5の表面に付着させ、電極6を形成する。【0043】
  上記の作製手順では、ペロブスカイト層44を形成するペロブスカ
イト化合物を2ステップによって結晶成長制御したものであるが、こ
れを1ステップで行ってよい。例えば、ペロブスカイト((CH3N
H3)PbI3)溶液をスピンコート法により、多孔質半導体41の
孔内部に浸透させる。スピン中にトルエンを滴下し、微小結晶を析出
させて表面を鏡面化する(貧溶媒析出法)。続いて、本実施形態に係
るホール輸送材料によりホール輸送層5を形成してもよい。【0044】
(本実施形態に係るホール輸送材料)
  本実施形態に係るホール輸送材料は、D-A-D型構造を有する。
下記の一般式(1)で表される化合物が好適に例示される。【004
5】【化14】
000028
【0046】  A部には、電子受容性基(電子吸引性基)が導入され
ここでは、A部がフルオレン環として構成され、当該フルオレン環上
の9位に炭素間二重結合を介して置換基RAが導入ている。フルオレ
ン環は、炭素原子と水素原子から構成され、窒素原子等のヘテロ原子
を含まない。更に、このフルオレン環上の2位及び7位で、D部とそ
れぞれ連結している。フルオレン環上の2位及び7位に連結している
各D部は、好ましくは同一の基として構成される。【0047】
  D部は、電子供与性基として構成され、ここでは、好ましくは、以
下の基(I)、基(II)、基(III)、基(IV)、又は、基
(V)から選択される1の構造を有する。なお、基中の波線は、A部
との結合位置を示す。
000029
【0050】【化17】

000031

 000032
【0053】  基(I)、基(II)、基(III)、基(IV)、
及び、基(V)において、XとYは、独立して、0、1、2の何れか
の整数である。したがって、基(I)及び基(II)は、下記で説明
する置換基を有するジフェニルアミノ基(X=0、Y=0)、4-(
ジフェニルアミノ)フェニル基(X=1、Y=0)、4´-(ジフェニ
ルアミノ)〔1,1´-ビフェニル〕-4-イル基(X=2、Y=0)、
5-(ジフェニルアミノ)チオフェン-2-イル(X=0、Y=1)、
5´-(ジフェニルアミノ)〔2,2´-ビチオフェン〕-5-イル基
(X=0、Y=2)、5-〔4-(ジフェニルアミノ)フェニル〕チ
オフェン-2-イル基(X=1、Y=1)、5-〔4´-(ジフェニル
アミノ)〔1,1´-ビフェニル〕-4-イル〕チオフェン-2-イル
基(X=2、Y=1)、5´-〔4-(ジフェニルアミノ)フェニル〕
〔2,2´-ビチオフェン〕-5-イル基(X=1、Y=2)、及び、
5´-〔4´-(ジフェニルアミノ)〔1,1´-ビフェニル〕-4-イ
ル〕〔2,2´-ビチオフェン〕-5-イル基(X=2、Y=2)か
ら選択される。【0054】
  基(I)及び基(II)において、各置換基はそれぞれ独立して選
択されるものであり、R1は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH
2n+1、及び、-S-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~
8の整数であり、R3は、-H、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、
及び、-S-CnH2n+1から選択され、ここで、n=1~8の整数
であり、なお、R1とR3は、同一であっても、異なっていていても
よいが、同時に-Hであることはない。したがって、R1及びR3は、
少なくとも一方が、-CnH2n+1、-O-CnH2n+1、及び、-
S-CnH2n+1から選択される。【0055】
  
                        この項つづく

      

 


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