人類なんてこんなものだノアたちが箱舟に乗り
遅れなかったことを、残念に思うことがよくある。
マーク・トウェイン
科学技術振興機構(JST)は今月2日、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)
の陳明偉教授らの研究グループが、一般的なリチウムイオン電池の6倍以上の電気容量を
持ち、百回以上繰り返し使用が可能なリチウム空気電池の開発に成功したと発表。電気自
動車にこのリチウム空気電池を利用すれば、走行距離を500~600キロメートルに伸
ばせる。なお、現在、電気自動車に利用されるリチウムイオン電池の走行郷里は200キ
キロメートル程度。そこで長時間走行可能な二次電池の1つにリチウム空気電池がある。
この電池はリチウムイオン電池とは異なり、正極にコバルト系やマンガン系の化合物を用
いることなく、リチウム金属、電解液と空気だけで作動し(上図クリック)、リチウムイ
オン電池の5~8倍の電気容量をもつ。このブログでもことあるごとに取り上げてきた(
『タフな女神:進化するリチウム空気電池』「最新量子ドットソーラー工学」2015.08.03)。
これで、「東京-大阪間」が充電なしで走行できそうだが、最終的にはコスト気になると
ころだ。蓄電池の技術革新が早く進めばこれにこしたことはない。
リチウム空気電池は充放電両方の化学反応に対応した電極材料や触媒が開発途上にあり、同グ
ループは、これまで発火などの危険性のある水溶液系ではなく、安定な非水溶液系リチウム空気
電池のナノ多孔質正極材料の高性能化に着目し研究を進めてきた。この電気伝導性が高く、空隙
率が99%に達するナノ多孔質グラフェンの正極で、リチウムイオン電池の電気容量の30倍以上
(8300ミリアンペア/グラム)を持つ電極材料の開発に成功したものの、充電時の過電圧が高く、
エネルギー利用効率注が60%程度と低いことがた障壁となっていた。
このため、新たな正極材として、酸化ルテニウムをナノ粒子をグラフェンで挟んだ窒素ドープナノ多
孔質グラフェン電極を開発し、リチウム空気電池に利用(上図/右上)したことでナノ多孔質グラフ
ェンが持つ大きな比表面積、空隙率や電気伝導性を損なうことなく、大きな電気容量(2千ミリアン
ペア/グラム)と充電電圧(4.0ボルト以下)を同時実現させた。
次に、このリチウム空気電池の充放電のターンオーバー試験を行ったところ窒素ドープナ
ノ多孔質グラフェンでフル放電したときの電極単位重量当たり最大8千ミリアンペア時の電気容量
を持ち、電極単位重量当たり電気容量2千ミリアンペア時の固定で、百サイクル以上充放電に、
耐えうることが分かった。さらに、充放電時の電流密度変による実験では、従来のリチウム空気
電池よりも充電速度が速く、従来の50%を大きく上回る72%超のエネルギー利用効率をえてい
る。なお、(1)貴金属であるルテニウムを少量ながら触媒に使用するためコスト高になることや、
(2)充電時の過電圧が大きいとう課題が残っている。
【参考特許】
詳細な製造方法のために関連特許を下記に掲載する。
● 特開2015-063742 多孔質金属およびその製造方法並びにリチウム空気電池
【符号の説明】
10、10a、10b 合金
10c 多孔質金属
12a、12b、12c 空孔
22 負極
24 電解質
26 正極
32 酸素ガスを含む材料
【特許請求範囲】
(1)金属と空孔をもった、空孔率が75%以上の多孔質金属。
(2)空孔サイズはランダム。
(3)孔質金属には金が含まれる(a)。
(4)(1)(2)(3)の多孔質金属と酸素を含む空気からなる正極と、多孔質金属と
リチウムを含む負極で構成。
(5)複数金属の合金から一部の金属を除去し多孔質金属を作る工程(b)と、また熱処
理し空孔を集積する工程(c)と、さらに一部の金属を除去し(b)<(c)より小
さい空港(d)をつくる工程を含む多孔質金属製造法。
(6)金と銀との合金で(1)~(5)の工程の製造方法
、
【実施例】
● 製造工程
上図1は、多孔質金属の製造方法を示すフローチャート。図に示すように、複数の金属を
含む合金を形成する(ステップS10)。合金の形成は、例えば複数の金属が溶融する温
度に加熱後、冷却する。複数の金属としては、金、銀、パラジウム、白金、アルミニウム、
ニッケル、銅、マンガンおよび亜鉛の少なくとも1つを用いることができる。合金に含ま
れる金属の数は2つでもよいし、3以上でもよい。例えば、金を主に含む多孔質金属を製
造する場合、金と銀とを主に含む合金を用いる。
次に、合金を脱合金(dealloying)化する(ステップS12)。脱合金化は、複数の金属の
うち一部の金属を選択的に除去する。例えば複数の金属のうち一部の金属を選択的にエッ
チングするエッチング液を用いる。すなわち、複数の金属のうち一部の金属はエッチング
されるが、残りの金属はほとんどエッチングされないエッチング液を用い合金をエッチン
グする。
エッチング液は、合金を構成する金属により選択できる。エッチング液としては、硝酸、
塩酸、過塩素酸および硫酸等の酸溶液を用いることができる。金と銀との合金、または金
とニッケルとの合金を用いる場合、エッチング液として硝酸水溶液を用いることができる。
エッチング液を用い一部の金属をエッチングに、合金に電圧を印加し、電気化学的に脱合
金化を行なってもよい。これにより、より速く空孔率の高い多孔質金属を形成できる。
次に、脱合金化を行なった合金を熱処理する(ステップS14)。熱処理温度は、金属原
子が移動する程度の温度が好ましい。また、熱処理温度は合金の融点以下であることが好
く、金と銀との合金の場合、熱処理温度は200℃以上が好く、250℃~350℃がよ
り好い。
上図2(a)から図2(d)は、多孔質金属の製造方法の金属の模式図。図2(a)に示
すように、ステップS10で合金10を形成。合金10は、金属M1と金属M2との合金
である。合金10には空孔は形成されていない。図2(b)は、ステップS12で、脱合
金化することで、合金10から金属M2が選択的に除去する。これで、空孔12aを含む
合金10aが形成。合金10aは、合金10より金属M2の組成が低くなるが、合金10
a内には金属M2が残存する。特に、合金10において、金属M2の組成比を高くした場
合、金属M2が残存しやすい。
上図2(c)は、ステップS14において合金10aを熱処理する。空孔12aが集積し、
熱処理前の空孔12aより孔径の大きな空孔12bが形成される。熱処理前後の合金10a
と10bの組成比はほとんど同じである。図2(d)に示すように、ステップS16で、
再度脱合金化する。これで合金10bから金属M2が選択的にエッチングされ、空孔12c
が形成。空孔12cは、空孔12bに比べ孔径が小さくなる。多孔質金属10cは、合金
10bより金属M2の組成比が低くなる。
上図2(b)のように、複数の金属M1とM2を含む合金10(第1合金)から複数の金
属のうち一部の金属M2を選択的に除去することで、空孔12a(第1空孔)を含む合金
10a(第2合金)を形成。図2(c)のように、合金10aを熱処理することで、空孔
12aを集積した空孔12b(第2空孔)を含む合金10b(第3合金)を形成。図2
(d)のように、合金10bから一部の金属M2を選択的に除去することで、空孔12b
と空孔12bより小さい空孔12c(第3空孔)と、を含む多孔質金属10cを形成。こ
れにより、多孔質金属10cの空孔率を高くすることができる。
脱合金化を1回行なう方法では、75%以上の空孔率の多孔質金属の製造が難しい。75
%以上の空孔率を実現できる。空孔率は、80%以上も可能。また、85%以上も可能。
多孔質金属の強度の観点から空孔率は95%以下が好く、90%以下がより好い。
空孔率の高い多孔質金属の形成には、出発材料の合金10の金属M2の比率が高いことが
好い。合金10の金属M2の原子組成比M2/(M1+M2)は、65%以上が好ましく、
75%以上がより好く、85%以上がさらに好い。原子組成比M2/(M1+M2)は、
95%以下が好く、90%以下がより好い。特に、金属M1とM2がそれぞれ金と銀の場
合、原子組成比M2/(M1+M2)を65%以上にすることで、空孔率を75%以上に
できる。
また、多孔質金属は、図2(d)のように、孔径が異なる空孔12bや12cを備える。
空孔12c(第3空孔)は、空孔12b(第2空孔)以外の金属に形成した空孔である。
空孔12bの孔径は、30nm以上であり、例えば50nm以上である一方、空孔12c
の孔径は、30nmより小さく、例えば10nm以下である。
多孔質金属を正極として使用するリチウム空気電池を説明する。なお、リチウム空気電池
はリチウム酸素電池ともいう。
上図3は、リチウム空気電池の模式図である。図3に示すように、リチウム空気電池20
は、負極22、電解質24、正極26を主に備えている。負極22は負端子28に電気的
に接続され、正極26は正端子30に電気的に接続される。正極26には酸素ガスを含む
材料32が供給される。正極26は、多孔質金属を含む。多孔質金属は、例えば導電性材
料に保持されてもよいし、単独で用いてもよい。酸素ガスを含む材料32は、例えば、酸
素ガス、または酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスである。負極22は、例えばリチウム
(Li)を含み、例えば金属リチウムである。電解質24は、正極26と負極22との間
に設けられ、リチウムイオンLi+が伝導する。電解質24は、例えば有機電解液を含む。
リチウム空気電池の放電過程について説明する。負極22で、次の反応式のように、負極
22の金属リチウムLiがリチウムイオンLi+となり、電子e-が放出される。
Li→Li++e-
リチウムイオンLi+は、矢印34のように、電解質24を負極22から正極26に伝導
する。正極26内の酸素が供給される側の空孔内において、次の反応式のように、酸素ガ
スO2が電子e-を獲得し酸素イオンO2-となる。
O2+e-→O2-
正極26内の空孔内において、次の反応式のように、リチウムイオンLi+と酸素イオン
O2-とが反応し、酸化リチウムLiO2が生成される。
Li++O2-→LiO2
さらに、空孔内において、次の反応式のように、酸化リチウムLiO2から過酸化リチウ
ムLi2O2と酸素ガスO2が生成される。
2LiO2→Li2O2+O2
リチウム空気電池の充電過程について現在最も支持されている学説に基づき説明する。正
極26の空孔内において、次の反応式のように、過酸化リチウムLi2O2が酸化リチウ
ムLiO2とリチウムイオンLi+に分解し電子e-が放出される。
Li2O2→LiO2+Li++e-
空孔内において、次の反応式のように、酸化リチウムLiO2が酸素ガスO2と酸素イオ
ンO2-に分解する。
LiO2→O2+Li++e-
リチウムイオンLi+は、矢印36のように、電解質24を正極26から負極22に伝導
する。負極22において、次の反応式のように、リチウムイオンLi+と電子e-から金
属リチウムLiが生成される。
Li++e-→Li
このように、リチウム空気電池においては、空孔内にLi2O2を貯蔵する。こため、空
孔の体積を大きくすることで、充放電容量を増大できる。また、空孔の表面積を大きくす
ることで、高速な酸化還元反応を実現できる。よって、高速な充放電が可能となる。
多孔質金属は、空孔率が高いため、空孔の体積および表面積が大きい。よって、実施態様1
の多孔質金属をリチウム空気電池20の正極26に用いることにより、容量を増大できる。
さらに、高速な充放電が可能となる。
正極26には、O2-を発生させる反応における高い触媒活性と、高い電気伝導特性と、
を有する材料を用いることが好ましい。このため、多孔質金属として、金、ニッケル、銅
白金またはパラジウム等を用いることが好ましい。また、高い電気伝導特性には、多孔質
金属が一繋がりの構造体が好ましい。この観点から、多孔質金属は、脱合金化により製造
したものが好い。
● 実施例1
以下のように、多孔質金(NPG:NanoPorous Gold)を形成した。
ステップS10の合金工程として、金と銀との原子組成比が15:85の合金10を形成
する。
ステップS12の脱合金化工程として、1モル/リットルの硝酸水溶液を用い、合金10
中の銀をエッチングする。エッチングの際、合金10に、エッチング液中の参照電極(Ag
/AgCl)に対し+0.78Vを印加する。ステップS14の熱処理として、250℃
において、熱処理する。
ステップS16の脱合金化工程として、1モル/リットルの硝酸水溶液を用い、熱処理し
た合金中の銀をエッチングする。エッチングの際、合金10bに、参照電極に対し
+0.975Vを印加する。
各ステップにおいて、SEM観察を行なった。また、EDS(Energy Dispersive X ray Spec-
troscopy)法を用い金と銀との原子組成比を測定した。
上図4(a)は、脱合金化工程S12後の合金のSEM画像である。図4(a)に示すよ
うに、合金10aに孔径が10nm程度の空孔12aが形成されている。このときの金と
銀との原子組成比は62:38である。脱合金化前の原子組成比15:85に比べると銀
が脱合金化しているが、合金10a内にはなお多くの銀が残存している。
上図4(b)は、熱処理工程S14後の合金のSEM画像である。図4(b)に示すよう
に、合金10bに空孔12aが集積した空孔12bが形成される。空孔12aの孔径は
50nm以上で、金と銀との原子組成比は60:40であり、図4(a)とほとんどかわ
らない。
上図5(a)は、脱合金化工程S16後の多孔質金属のSEM画像である。図5(a)に
示すように、多孔質金属10cに空孔12bが形成されている。空孔12bの大きさは図
4(b)とほぼ同じである。金と銀との原子組成比は97:3であり、銀がほとんど脱合
金化されている。
図5(b)は、図5(a)の範囲Aの拡大図である。図5(b)に示すように、空孔12b
以外の多孔質金属10cに、空孔12bより小さい空孔12cが形成されている。空孔12c
の孔径は、10nm程度である。すなわち、多孔質金属10cは、比較的大きな空孔12b
を有す。空孔12b以外の領域に比較的小さな空孔12cが形成。多孔質金属10cは、
2重の多孔質構造を有す。
多孔質金属の空孔率は83%であった。ここで、空孔率は、合金工程S10後の合金10の
原子組成比と、二回目の脱合金化S16後の原子組成比と、から算出する。
比較例1として、1回の脱合金化による多孔質金を製造した。出発時の合金10の金と銀
の原子組成比を15:85とした場合、1回の脱合金化では、条件を最適化しても空孔率
は72%であった。このように、1回の脱合金化処理では、合金工程の銀の組成比を高め
ても、75%以上の空孔率は実現できなかった。一方、実施例1によれば、75%以上の
空孔率を有する多孔質金を製造できる。
● 実施例2
実施例2は、実施例1の多孔質金をリチウム空気電池の正極に用いた例である。以下に作
製したリチウム空気電池の各材料を示す。
・負 極: 金属リチウム
・電解質: 有機電解液(無水ジメチルスルホキシド、および過塩素酸リチウム)
・正 極: 実施例1の多孔質金をアルミニウム(Al)製のメッシュに保持させる。
なお、過塩素酸リチウムは、リチウムイオンの最初の供給源である。
比較例2として、1回の脱合金化処理で作製した空孔率が65%のサンプルAと空孔率が
72%のサンプルBとを正極に用いそれぞれリチウム空気電池を作製した。
上図6は、実施例2に係るリチウム空気電池の容量に対する電圧特性を示す図である。放
電レートおよび充電レートは500mA/g(単位金Au重量当たり)である。数字は充
放電のサイクルを示す。図6に示すように、1500mAh/g(単位金Au重量当たり)
の容量が実現。放電および充電を40サイクル行なっても放電および充電特性は大きくは
変化しない。
上図7(a)および図7(b)は、比較例2に係るリチウム空気電池の容量に対する電圧
特性を示す図。数字は充放電のサイクルを示している。図7(a)はサンプルAを11サ
イクル充放電した充放電特性である。図7(b)はサンプルBを2サイクル充放電した充
放電特性である。放電レートおよび充電レートは500mA/gである。図7(a)に示
すように、サンプルAにおける容量は500mAh/gである。図7(b)に示すように、
サンプルBにおける容量は800mAh/gである。
実施例2および比較例2においては、非特許文献1:Science Vol. 337, pp563-566 (2012) と
比べ、過電圧(放電過程の電圧と充電過程の電圧の差)が低い。多孔質金を保持するメッ
シュとして、アルミニウム以外のステンレス、チタン(Ti)を用いても、充放電特性は
ほぼ同じである。ステンレスは、4.1V以上の電圧で、反応するため、メッシュとして
はアルミニウムまたはチタンが好ましい。コストの観点からはアルミニウムが好ましい。
図8は、空孔率に対するリチウム空気電池の容量を示す図である。黒丸は、非特許文献1
の結果を示す。白丸は実施例2および比較例2の結果を示す。曲線は、計算曲線である。
図8に示すように、空孔率を大きくすることにより容量を増大させることができる。
以上のように、実施例2によれば、比較例2に比べ、正極26に用いる多孔質金属の空孔
率を向上させることにより、リチウム空気電池の容量を増大させることができる。
LEDライトを内蔵したUSB端子。それをタッチすると、やさしく点灯されていて、夜でも使
いやすい。コネクター類の防災・安全対策など、携帯タイプあるいは常設固定タイプなど
これの応用展開はかなら広がりがありそうだ。
● 今夜の記憶
出典:京都新聞
朝、急に彼女が愛東のマーガレットステーションに行きたいというので、車を走らせる。人出が多く
市場はほとんどのものが売り切れていて、しかたないので「愛東なし」と「きのこ&ごま」のジェラー
トを食べ帰宅するが、途中、全国の41図書館建築の魅力を特集した本「日本の最も美しい図
書館」に、甲良町立図書館(甲良町横関)が滋賀県の図書館として唯一、掲載された。同
館職員は「利用する町民からも反響があった」と喜んでいる一枚の写真が掲載されていた
ので立ち寄る。同図書館は総ヒノキ造りのモダンな建築が特徴。1933年に東甲良尋常
小学校(現甲良東小)として建てられた木造2階建て校舎の一部を利用している。92年
に小学校の建て替え計画が決まったが、町外の文化人らの保存運動を受け、99年に町立
図書館として開館している。係の女性職員に利用できるのかを尋ねると、町民の紹介があ
れば可能だという返事だったが、郷土史の調査に便利だからと、頭の記憶スペースにブッ
キングさせた。甲良町役場にさしかかると、、職員のムラタさんとの邂逅から悔悟の惜別までの思
い出が一巡した。そういえば夜遅く印刷をしていたころが懐かしい思い出された。